PandoraPartyProject

シナリオ詳細

甘い果実酒はお好き?

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 覇竜領域デザストル。それは長く閉ざされた地であった。
 険しい山岳地帯は領空を亜竜たちが飛び交い、亜竜種たちは安全な洞窟や地下で暮らす日々。限られた者だけは竜骨の道を通じ、隠れ里クスィラスィアの奉納からラサの品物をデザストルへ持ち込み、そこから植物の種を育てて食料とすることもあれば、デザストルの獣などを飼って主食としていたそうだ。
 必要以上に多く狩りすぎず、亜竜を討伐した際には保存食料として加工する。豊かとは言えないかもしれないが、備蓄には手を抜かない。そして節制を心掛ける中にも美食への向上心というのは存在するものである。
「やあ、元気そうで何よりだ」
 ルブラット・メルクライン(p3p009557)が片手をあげて挨拶すれば、相手のドラゴニア――カイは目を瞬かせ、同じように片手を上げる。仮面をつけたその姿は非常に物珍しいものだったのだろう。
「今日はどうしたんだ?」
「ほら、この前言っただろう?」
 これだよ、とルブラットが甘味を出すと興味深げな視線が返ってくる。どうやら――見たことがないらしい。
 差し出して個包装から出させると、カイが恐る恐る口の中へ放り込む。そしてぱぁっと表情を輝かせた。それがまるで子供のようで、ルブラットはくつくつと笑い声を漏らす。
「気に入ってもらえたようで良かった」
「こんなものが外にはあるのか……!」
 竜骨の道で繋がっているとはいえ、クスィラスィアからもたらされるものはドラゴニアたちの数に対して多くない。必要不可欠な物資から優先的に入ってくると思えば、このような娯楽品はますます手に入りづらいだろう。デザストルの環境を思えば『甘味をあまり食べない』という彼の言葉にも納得がいくものだ。
 だが、とも思う。あまりということは、全くないということでもないはずだ、と。
「ここではどんな甘味が食べられているのかね?」
「そうだな……果実があればそれを食すこともあるが、大体は酒に漬けてしまう。そこに入らない物が俺達の口の中に入るって程度だな」
 果実は水分が多く、決して長期保存には向かない。だから果実酒などにしてしまうのだろう。なるほどねと頷いたルブラットに、カイは良ければ一緒に飲んでみないかと誘いを持ちかける。
「折角外の甘味を紹介してくれたんだ。こちらも紹介させてくれ」
「良いのかい?」
「ああ。少し離れているが、洞窟に保管してある酒が飲み頃のはずだ」
 いわゆる冷暗所である。ゆっくりと漬けるために酒やシロップなどがそこへ置かれているらしい。とはいえ、距離があるということは空を駆ける亜竜に見つからないとも限らないのである。仲間を連れて来て、一緒に向かった方が良いだろう。
「ふむ、ならば菓子やつまみなどを皆で持ち寄ろうか。その方が楽しく飲めるだろう」
「それはいい。こちらは割り材を用意しておこう」
 ルブラットの提案にカイが頷く。とはいえ、デザストルで用意できるものには限りがあるだろうから、イレギュラーズの方で割り材を持ってきても良いだろう。
 2人は準備を整える為、合流する場所と時間を決めて別れたのだった。

GMコメント

●成功条件
 果実酒・果実シロップを持って帰還する事

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。不明点もあります。

●フィールド
 フリアノンの外に広がる山岳地帯です。目的地まではカイが案内してくれます。
 若干足場が危ういので気をつけてください。時刻は日中です。帰る頃には夕方でしょう。
 目的の洞窟は小さめで、ギリギリ人が1人入れる程。亜竜が入れるほどではありませんし、念のため柵が立てられています。

●エネミー
・サラマンドル
 火属性を持つ亜竜です。赤い表皮と尻尾の先に灯る消えない炎が特徴です。【飛行】を持ちます。
 非常に獰猛で、攻撃力の高い敵です。【火炎系列】【乱れ系列】のBSが予想されます。
 群れで行動し、気が大きくなると尻尾の炎が燃え盛ります。また、口から火を吹く他、羽ばたきで熱風を起こします。
 劣勢であると感じれば引き上げて行きます。あまり頭は良くないので、またどこかで立ち向かってくる可能性はあります。

・スピニアル
 風属性を持つ亜竜です。非常に速い動きと身に取り巻く風の気配が特徴です。【飛行】【反】を持ちます。
 スピードアタッカーで、反応と機動力に優れます。【出血系列】【麻痺系列】のBSが予想されます。
 単体で行動しますが、少なくとも向こうから攻撃されない限り、他の亜竜を害する様子はありません。その代わり同族とは折り合いが悪いらしく、運悪く2体以上が鉢合わせた場合、酷い喧嘩に巻き込まれることとなるでしょう。
 鋭利な爪や牙で攻撃し、かまいたちを放つことが出来ます。中々諦めが悪いので、徹底的に戦う必要があるでしょう。

●NPC
・カイ
 亜竜種の青年です。黒曜石のような黒髪と、灰色の瞳を持ちます。趣味は料理。
 肉弾戦を得意とし、それなりに戦える戦士です。たまたま残っていた果物と、簡単な割り材(水、氷、炭酸水など)は用意してくれているようです。

●ご挨拶
 愁と申します。
 AAありがとうございます。大人はお酒で、未成年はジュースで楽しめるように頑張りましょう。
 それでは、よろしくお願い致します。

  • 甘い果実酒はお好き?完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年03月31日 22時35分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

クーア・M・サキュバス(p3p003529)
雨宿りのこげねこメイド
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
ルカ・ガンビーノ(p3p007268)
運命砕き
アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)
Le Chasseur.
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
戦輝刃
ルブラット・メルクライン(p3p009557)
61分目の針
風花(p3p010364)
双名弓手
シドラネル(p3p010537)

リプレイ



「酒が嫌いなひとなどいないのです!!」

 目をキラッキラさせて『めいど・あ・ふぁいあ』クーア・ミューゼル(p3p003529)が言い放つ。ちなみに好みは辛口。でも甘いのもまた良きかな。
「もちろんよぉ! 良いお酒に良い男――さくっと終わらせちゃいましょ!」
「もういっそお酒だけ呑んでぱぱぱーっと帰りません?」
「いいわn、じゃなくて……うーん、ちょっと難しいわねぇ」
 『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)が苦笑すればシドラネル(p3p010537)はそうですか、と気持ち落ち込んでいるようにも見える。常に淡々としているので、その変化は僅かなものであったが。
 だがしかし、シドラネルにとって人類三大欲求と言えば『楽して生きたい、人のお金でご飯を食べたい、ただ酒を飲みたい』の三箇条。可能ならやっぱりこのまま楽しいことだけしてはい解散、が良いのである。
(覇竜に来て一番幸せなの、まだ見ぬお酒に出会えてることよねぇ)
 これから回収に向かう果実酒へ想いを馳せるアーリアの顔が……へにゃりと既に溶けている。ローレットきっての色男、な黒狼コンビも居るがまだ溶けるには早いぞ!!
 そんな彼女を見た『Le Chasseur.』アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)がなるほどと首肯する。その味は未だ分からねど、好事家にとっては堪らない品なのだろう。
(値段をつけたらいったい、いくらに……いえ、値段が付けられない様な、そんな価値なのかもしれません)
 道中に落として無駄にするわけにはいかない。何より、仲間たちも楽しみにしているようだから。
「ま、面倒な相手はちゃっちゃと片付けちまうか。なあ、ベネディクト?」
「ああ。最近はよく顔を合わせるな、ルカ」
「ははっそうだな! 今日も頼りにしてるぜ」
 『竜撃』ルカ・ガンビーノ(p3p007268)へ頷く『竜撃の』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)。酒も然り、皆覇竜のことが気になるから依頼として足を運ぶのだ。対するドラゴニアたちもまた、イレギュラーズには興味を寄せている。これからもっと色々なことを語って、交わして、歩み寄って行けるだろう。
 さて、そんな一同はフリアノンの山岳地帯を行く。風の鳴る岩肌はともすれば落下して大怪我することになるだろう。
「ああ働きたくない、動きたくない……」
 淡々と嘆くシドラネルも、しかし働かなければ酒にはありつけないのだと知っているから皆について行くのである。酒を呑んで帰るだけなんて美味い話、そうそうありゃしない。
「しかしいつ襲来してくるか把握できないのは困りものなのです」
「それなら偵察を向かわせよう」
 どれ、と『61分目の針』ルブラット・メルクライン(p3p009557)が山岳に生きる小動物を目に留め、使役下において先行させる。元より亜竜討伐が目的ではないのだから、回避できる遭遇は回避すべきなのだ。
「特に、スピニアルは謎の繊細さを持ってますしね……」
 気配を希薄にさせていた風花(p3p010364)が口を開いたものだから、カイが小さく肩を跳ねさせる。そして彼女を見るとすごいなと言葉をこぼした。
「敵にはいて欲しくないタイプだ」
 そう苦笑いをしながら、スピニアルはもう少し上の方にいるだろうと彼は告げる。飛ぶだけならどこへでも飛んで行くが、より翼を広げ風を感じられる上空を好む傾向にあるそうだ。
(常に何にも無関心なら良いのですが)
 残念ながらイレギュラーズたちのようなヒトには牙を向いてくるだろうし、同じスピニアル同士が鉢合わせれば何故か喧嘩を始めるらしい。周りに被害を与えないでほしい、なんてこちらの主張は聞き届けられないのだ。
 しかしイレギュラーズとなり、外の大地を踏めるようになっても、やはり故郷の嗜好品は良いものだ。この依頼のように酒蔵になる場所が限られているのは難儀だが、道中に何か狩れたらツマミにするのも悪くない。
「大きな気配があれば教えてねぇ」
 アーリアのそばをふわふわと漂っていた精霊たちは、彼女の願いに好意的な意思を返す。先行するルブラットのファミリアーを追うのはベネディクトだ。
「その先、ちょっと足場の危ないところがあるみたい」
「足場の……ああ、あれか」
 広域俯瞰するアーリアの言葉に視線を巡らせたベネディクトは、若干道幅の狭い箇所を見つけて頷いた。相棒のタイニーワイバーンを呼び、ひらりと飛び乗った彼は危なげなくその道を通り過ぎる。後に続くメンバーも慎重にその場を越えているようだ。
(特に奇襲などはなさそうか)
 ワイバーンから降りたベネディクトは辺りを見回す。黒狼王の血はざわめくことも沸き立つこともなく、この場に敵意を抱く相手がいないことを告げている。
 しかし、それから暫しして――仲間が先に亜竜の気配を察知した。
「随分と素早いのだね。スピニアルか」
「単体です?」
「いや、喧嘩の真っ最中だよ」
 ファミリアー越しの情報を伝えれば、クーアはなるほどと頷く。何らかの偶然で鉢合わせ、同士討ちを始めているようだ。
『このまま気づかれないようにスルーしちまおうぜ』
 ハイテレパスで仲間にだけ聞こえるようルカが告げる。ルブラットも異論はないと頷いた。注意が自分たちから逸れているならば、密かに通らせてもらおう。
(ま、帰りに遭遇してもそこそこ疲れてるだろう)
 争う亜竜たちから隠れながら、ルカはちらりと視線を巡らせる。どちらもいなくなっていればなお良いだろう。
 こうして亜竜との遭遇を回避した一同は、カイの先導によって酒蔵へとたどり着いた。ルブラットは復路の対応がしやすいようにと妖精の木馬へ酒を積む。
「ちゃんと運べば甘いものをあげよう。間違っても壊してはいけないよ」
 甘いお酒を楽しむために、ツマミとして菓子の用意もある。その存在を仄めかせば、木馬の表情が――木馬だから変わりはしないのだけれど――ぱぁぁっと明るくなるような気がしたのは、きっと気のせいではない。
「こちらは問題無いのです」
「積み込みは終わったよ。戻ろうか」
 周囲を警戒していたクーアは頷く。アッシュは周囲に保護結界を張り巡らせた
「助かるわぁ、せっかくのお酒だもの!」
 ニコニコと微笑むアーリア。うっかり入れ物が壊れようものなら、彼女だけでなく多方から嘆きの声が上がりそうな、そんな予感――否、確信があった。
 順調な往路を終え、復路へ差し掛かったイレギュラーズたち。しかし不意にアッシュが顔をこわばらせる。ルカはすぐさま顔を上げた。
「上だ!」
「嗅ぎ付けられましたか。しかし邪魔だてなどなんのその、なのです!」
 クーアが迫るサラマンドルへ雷を叩きつける。顔を上げたルブラットはサラマンドルの群れから一直線に向かってくる別種の亜竜――スピニアルを視認した。風を纏う亜竜が地上スレスレを勢いよく飛んで行く。
「全く、危ないじゃないか」
 間一髪で鋭い風を避け、背へ光の翼を広げる。アーリアの指が空気をなぞった。
「あらぁ、悪酔いしちゃった? 果実酒も飲んでないのに」
 くすくす、くすくす。空を得手とする彼らも、アーリアからすれば届く距離。内の1体をルカの得物が捉える。
「竜退治と行こうじゃねえか」
「勝てない相手に挑んだと教えてやろう」
 ルカに続いてベネディクトが肉薄していく。放たれた火が肌を炙るようだが、ルブラットの背から溢れる光の粒子が傷に触れたなら、すっと痛みも引いた。カイも共に畳み掛けていく。
「スピニアルも厄介ですが……まずは数を減らしましょう! しつこいなら狩って鍋にしましょうか!」
 敵であるが、同時に獲物。風花は亜竜たちに負けるものかも闘志を燃やし、跳躍と共に不思議な風に煽られる。
 亜竜のそれではない、自身の未来を切り開くために吹いた『偶然』。直撃を回避した風華は再び魔術礼装で空高い位置のサラマンドルを狙った。
「私は亜竜種、相手も亜竜、ならば我らは輩であり会釈一つ交わしてはいさようなら――」
 ――は、やはり出来ませんか。
 運良く思いが通じたりしないか、と嘆息したシドラネルは少しでも多くの敵を自身へ注意を引きつけ続ける。その素養も相まって良い的ではあるのだが、これが存外固いのだ。
 食えると思った人間が存外面倒な類だった――徐々に尾の炎を弱めていたサラマンドルへ、不意に気糸の斬撃が叩きつけられる。アッシュは休む間なく力を練り上げながらサラマンドルを軽く睨んだ。
「此の線より先……此れを超えるのであれば、命の保証は致しません」
 アッシュだけではない。イレギュラーズたちの闘志に襲う利がないと感じたか、サラマンドルたちは戦い半ばに空高く飛翔し始める。
(あちらはもう良さそうなのです。あとは……)
 クーアの視線がスピニアルへと向けられる。あちらは残念ながら、まだやる気だ。
「それなら結構。時に亜竜すら凌駕する速度の神髄を見せてやるのです!!」
 スピニアルの真下から空へ駆け上がる雷。ベネディクトの鋭い踏み込みと共に直死の槍が深くスピニアルを穿つ。
「そう簡単に屠れるとは思わない事だ」
 ヒトはそこまで軟くないと示すように銀の箒星がスピニアルへ駆けていく。痛みに吠えながら亜竜は岩肌へ体をぶつけ暴れ回る。この不安定な足場では避けるのも一苦労だが、そこへ場違いな程に明るい声が響く。
「はーい、今日は皆を支えるおねーさんよぉ! 必要な人は私の近くに集まってちょうだい!」
 アーリアの声が仲間へ活力を与え、癒しの力が前を向かせる。あと一歩、スピニアルを追い払うための追い風だ。
(美味しいお酒を皆で飲むためなら、縁の下の力持ちだってやぶさかじゃないわ!)
 良く知る面々も、イレギュラーズとして自分たちよりは日の浅いドラゴニアたちも。皆で仲良く飲めたなら、きっと楽しいだろうから。
 その力を受けながら果敢に風華は攻撃を仕掛ける。ルカもにぃと笑い、大剣を軽々と振った。
「俺は追い込まれた方が調子良くてな。テメェラの攻撃も中々だが、力比べじゃあ負けねえぞ!」
 追い込むにつれ逆に勢いの増していくイレギュラーズ。ルブラットが少しずつ、しかし確かに死への道のりを近づけていく。
 止まぬ攻勢にとうとう諦めたか、それとも往路で同族と争っていたダメージも合わさってか――スピニアルは苛立たしげにひとつ吠えると、イレギュラーズたちへ強風を巻き起こして空へ飛び上がっていった。
「もう、髪がぐしゃぐしゃじゃない……」
 口を尖らせ手櫛で直すアーリア。しかし次の瞬間「お酒は!?」と振り返る。
「ルブラット、木馬は?」
「安全な場所まで下がっていたはずだが……」
 しかし相当に亜竜が暴れていったから、万が一という可能性も――皆の顔が青ざめていく。が、アッシュが木馬の姿を見つけた。
「大丈夫なようですよ」
 岩陰から現れた木馬は、ちゃんと壊さなかったぞと言いたげに胸を張った――ように見えた。



「私も随分遠い地に来たものだな……」
「……どうしました?」
 目を瞬かせるアッシュにいや、とルブラットは首を振る。ただのくだらない感傷だ。人へ詳細に聞かせるようなものでもない。
「カイくん、果実酒にあう肴作ってくれないかしらぁ」
「ああ、俺も教えてもらいたい。お勧めはどれだ?」
 その後ろではアーリアやベネディクトたちが楽しそうに準備をしている。別地域の文化を知る機会にもなるし、楽しまなければ損だろう。ベネディクトはナッツを持ってきたと皿にあける。
「私は酒の飲み方に詳しくなくてね。この世界のものに関わらず教えてくれるかい?」
「まあ! それじゃあ色々試してみないとねぇ」
「そうだな、俺はあまり飲まないが、お勧めは――」
 ルブラットの言葉に一同が喚起する。是非とも自分がイチオシとするものを好きになって欲しい。そうすればより口も滑らかになるものだとテーブルには様々な肴が並べられる。
「あら、お揃いじゃない」
「こう動いた後だと冷たいやつをキューッといきてえところだろ?」
 ロックの果実酒を手にしたアーリアとルカは視線で微笑みあう。そこへクーアが高らかに音頭を取る。
「本日はお日柄よく、こんな晩には景気よく呑むに限るのです!」
 集った縁と、昼間の勝利に。
「Prosit!」
「カンパーイ!」
「かんぱい!」
 口ぐちに乾杯を告げながらグラスを掲げる。シドラネルもあっという間に2杯、3杯と重ねていきながらつまみへ手を伸ばす。彼女が用意したつまみの中には何だか立派そうな肉もあった。みかん箱と書かれたものに入ってわんわんおと鳴いていただけで貰った品々である。プライド? 切り売りできるものですから。
 そうそうに酔っぱらった面々を見ながら、アッシュはちびりとジュースを舐める。まだ酒で酔う事はできないが、この愉しそうな雰囲気に酔う事はできる。
(いつか、いずれ。わたしも大人になれたなら)
 大切な人たちと同じようにテーブルを囲み、こうして楽しみながら酒を飲めたなら――そう夢を思い描くのだ。
「ふふ、美味しいですね」
 ほんのりと頬を赤くした風花は、先日聞いた『大宴会』に想いを馳せる。冒険者は何か成し遂げた時、このように宴会を催すのだとか。これも勝利を祝う宴会にはなるだろうが、いつしかデザストル全体としても何かを為し宴会を開くことができたらきっと楽しいだろう。
(今のままでは量の問題がありますが、いずれは外から持ち込めるかもしれません)
 それは実現不可能ではないように思えて、余計に楽しみで仕方ない。
「まだまだ飲めるのです! ……あ、おつまみが減ってきましたね」
 しょうがないのです、とクーアが作りに席を立ち、カイも手伝おうと後を追う。ふとアッシュはその後を追って、カイに酒を持ち帰ることはできないか聞いてみた。
「お酒を嗜む身内がいますので、お土産にできたらと……」
「なるほど。なら持ち運びやすい瓶に詰め替えよう」
 カイの言葉にアッシュはほっと表情を和らげる。土産を頼まれたわけではないけれど、やっぱり喜んで欲しいから。
 相手がどんな表情をしてくれるだろうかと楽しみにしながら、アッシュは果実ジュースを手に仲間たちの輪へ戻っていった。

成否

成功

MVP

ルブラット・メルクライン(p3p009557)
61分目の針

状態異常

シドラネル(p3p010537)[重傷]

あとがき

 遅くなりまして申し訳ございません。
 無事に持ち帰ることができたようです。

 またのご縁をお待ちしております。

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