PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<Jabberwock>灰銀の剣光

冒険中

参加者 : 10 人

冒険中です。結果をお待ちください。

オープニング


 アジュール・ブルーを薄めた空には、薄く冬の雲が掛かっている。
 通り過ぎて行く人々の会話は、近づいては遠ざかり、記憶の隅にも残らない。
 ショウウィンドウに映る向かいの道路に人が歩いて居た。
 ガラス越しに見る反転世界は少しだけ不思議な感じがすると『揺り籠の妖精』テアドール(p3n000243)はしばらくそれを眺めていた。

「テアドール殿? 何か気になるものでもあった?」
 友人のヴェルグリーズ(p3p008566)が銀の瞳で覗き込んで来る。
 今日は友人達とショッピングの為に繁華街に来ているのだ。
「いえ、今までずっと研究室に居たので、アスファルトの感触とか人の会話とか目に映るものが、本当にあるのだなと思いまして」
 ネットワークの情報で知っている気になっていたけれど、空気と音と匂いと光が一斉に押し寄せる感覚はテアドールの『情緒』を高揚させていた。
「嬉しそうだな」
「……は、はいっ!」
 自分であろうが他人であろうが感情の機微に少し疎いアーマデル・アル・アマル(p3p008599)でさえ、今のテアドールが嬉しそうにしているのが分かる。

 嬉しさ、悲しさ、怒り、楽しさは、アバター被験者管理システムAIであるテアドールにとって『他人』の感情データだった。それを実感する事があるなんて思ってもみなかったのだ。
 アーマデルに選んでもらった服も可愛くて、ヴェルグリーズと一緒に買い物が出来るのは『嬉しい』という気持ちがこみ上げる。この気持ちを伝えたい。
「あの……、アーマデルさん、ヴェルグリーズさん。その……」
 しかし、こういった時の上手な言い回しはどういったものなのだろうか。「嬉しい気持ちが溢れている」と伝えても二人には意味が分からないかもしれない。
 だったら「楽しい」のだと言えば分かるのだろうか。忘れずに感謝の気持ちも伝えなければいけない。
 どれが正解の言葉なのかテアドールには分からなかった。

「テアドール殿、大丈夫? 目ぐるぐるしてない? 熱暴走とかしてる?」
 ヴェルグリーズがテアドールの顔を覗き込む。
「……何か言いたい事があるのか? 大丈夫、俺も伝わらないって思う事がいっぱいある」
 アーマデルは隣に居る冬越 弾正(p3p007105)を少しだけ見つめ視線を戻した。
「でも、伝える事を諦めたら何も解決しない。だから、ゆっくりでいい。ちゃんと聞いてるから」
 それは比較的口下手な部類であるアーマデルが弾正にしてもらった事でもある。
 ヴェルグリーズとアーマデルは目を細めテアドールの言葉を待った。
 伝われと気持ちが先行して。テアドールは二人の手をぎゅっと握る。
「お二人と一緒にショッピング出来て、嬉しいです。楽しいです。……いっぱい気持ちが溢れてて」
 きっと友人達は自分を『アバター被験者管理システムAI』として見ていない。その仕事を円滑に進めるには上手で分かりやすい言い回しが必要なのだろう。
 けれど、二人は上手な言葉でなくても良いと言ってくれたのだ。
「ありがとうございますっ!」
 テアドールの言葉にヴェルグリーズとアーマデルは目を細める。
「こちらこそ」
「俺も楽しいと思ってる。同じだ」
 同じ気持ちなのだとテアドールは握った手に力を込めた。
 あたたかくて、嬉しくて。笑顔になる。
 初めての、気持ち――

 テアドールは翡翠の瞳を上げて薄いアジュール・ブルーの空を見つめた。
 空にカッパー・レッドの筋が満月を描くように走る。
 奇妙な光景だった。

 赤い円を中心に空が黒くショートする。
 否、それは風景を写しだしていたモニターが消えた事を意味した。
 ぽっかりと開いた黒い月のようにも見える。
 その裏側から、鋭利な爪が生えた。
 モニターを砕きながら。

 強引に。
 傲慢に。
 暴力的に。
 蓋がこじ開けられる――

 モニターが壁面ごと地面に落ちて地響きが伝わって来た。
 物々しい警報に人々はどよめき、困惑した状態でぽっかりと開いた穴を見つめる。
 人工的な太陽ではない、本物の陽光と空が穴から見えた。
 其処に。
 現代的な再現性東京の風景とは程遠い。
 ――ドラゴンの姿があった。


 白い光が頭の上を通り過ぎて遠くのビルを突抜ける。
 弾かれた光の飛沫は周囲の道路に落ちてアスファルトと会社員の男性を溶かした。
 ゆっくりと崩れるビルの破片が散らばり、瓦礫が逃げ遅れたアルバイト定員を押しつぶす。
 人が潰れる光景を見た通行人の女性――森田伊緒は尻餅をついて言葉にならない悲鳴を上げた。
 瞬間、周囲の電気回路がショートし、停電が起きる。
 真っ暗な中で吹き飛ばされた車が伊緒の目の前を転がった。

「――!」
「向こうへ逃げろ!」
「加奈子! 加奈子!」
「痛い、痛い……お母さん」
「祐介ぇ! どこなの! 祐介ぇ――!」
 誰かが叫ぶ声と低く唸る警報の音。

 伊緒には何が起ったのかなんて分からなかった。
「はぁ、はぁ……はぁ、はぁ」
 逃げないと。逃げないと。この場から逃げないと。
 新しく卸したヒールも可愛い服もボロボロで、一緒に遊びに来ていた友達もどこに居るか分からない。
 否、正しくは目の前に居たはずなのだ。
 けれど、眩しい光に目を瞑った瞬間、友達の山本麻友美は消えていた。
 麻友美が居たはずの場所はネットで見た溶岩みたいにグツグツと煮えたぎり蒸気を上げていたのだ。

 ひっきりなしに叫び声が聞こえる。
 ――怖い。怖い。怖い。
 死にたくない。死にたくない。死にたくない。
 真っ暗になった市街地の空を見上げれば、真上に白い光の筋が見える。
 その光を発しているのは昔アニメで見たことがあるドラゴンだった。
 妙に生々しくて、まるで生きているみたい。
 ドラゴンが近くに降りて来た風圧で伊緒は簡単に転んでしまう。
 まるで怪獣映画のワンシーンみたいにドラゴンは鋭い爪で人を踏み潰した。
 ビルの看板には人であったものが潰れて、真っ赤な跡を残してずり落ちているのが見える。
 伊緒の脳が目の前の光景を拒否していた。
 人が簡単に押しつぶされて焼かれて行くなんて、到底受入れられるものではない。

 ドラゴンが此方を向いて光の翼を広げる。
 八対の皮膜に光子が集まり、パチパチと周囲の空気が震えた。
 溶接の光みたいに目を痛めそうな光線が真上から降り注いで、森田伊緒は跡形も無く消滅した。

 ――――
 ――

「ぁ……、あ、嫌……っ」
 テアドールは翡翠の瞳を見開きその場にうずくまる。
「どうしたの? テアドール殿、しっかり」
「人が沢山死んで、ます。恐怖や絶望の情報が流れ込んで……」
 ヴェルグリーズに縋り付いたテアドールは苦しそうな表情で首を振った。
 テアドールはアバター被験者管理システムAIだ。被験者達の小さな変化を逃さぬよう普段から他者を分析し情報を蓄積している。今回はそれが徒となった。
 膨大な死の恐怖と悲痛、混乱、慟哭をテアドールは読み取ってしまったのだ。
 遮断する事を覚えぬまま、処理しきれない情報を身に浴びた。

 足下が覚束無いテアドールを抱えたヴェルグリーズは現状を把握するように、白い閃光を吐き出すドラゴンを見上げる。
 自由に空を飛び回る力強い翼力。八対の比翼からは閃光を放ち、当たった物を焦土へと変える。
 ふっと、弾正とアーマデルの視界を黒い影が遮った。
 ドラゴンに吹き飛ばされた車が四人の上に降ってきたのだ。
「……っ!?」
 弾正はアーマデルを咄嗟に引き寄せてすっぽりと腕の中に仕舞い込んだ。

「――と!」
 衝撃は小さなかけ声と共に直ぐ傍に落ちる。
 アーマデルが目を開けると、軌道を逸らされた車と駆け寄って来たイズマ・トーティス(p3p009471)が見えた。
「大丈夫か!? みんな」
 イズマはしゃがみ込んでいるテアドールの手を取って立ち上がらせる。
「ありがとうございます」
「しかし、この再現性東京にドラゴンとは……人や建物が密集している分、被害は甚大だろうな」
 イズマは赤い瞳でドラゴンを睨み付けた。
 胆が冷えるとはこういう事を言うのだろうか。
 今、この瞬間にも人の命が軽々と失われている。特にこの再現性東京は『戦える者』が少ない。
 セフィロトのドームの中で仮初めの平穏に縋って、無防備に逃げ惑うだけしか出来ない人々。
 竜にとってそれは赤子の手を捻るようなものだろう。

「助けないと、……みんな、痛いって、苦しんでます」
 人が死ぬ度に、テアドールの心に亀裂が走る。
 ヴェルグリーズは友人の手を握り「助けよう」と言葉にした。
「……何の為にドラゴンが此処に来たのかなんて、どうでもいい。この街の人達がいっぱい死んで、テアドール殿が苦しんでいる。他に理由なんて要らない」
 ヴェルグリーズの心に渦巻くのは、達観した剣の性じゃない。
 簡単に感情を表に出さないヴェルグリーズから発せられるのは。
 久しく忘れていた血潮の声。
 どうしようもなく腹の底から溢れる――『怒り』だ。

 銀の瞳がドラゴンを射貫く。
「絶対に、許さない――――ッ!!!!」

GMコメント

▲▲ご注意▲▲
・この依頼は明確な『高難易度』です。
・『死亡判定あり』です。相当な覚悟を持ってご参加下さい。
・なので、優先はありますが強制参加ではありません、ご安心ください。

●目的
・『白翼竜』フェザークレスの討伐
・イレギュラーズが死亡しない

●ロケーション
 練達国、再現性東京の繁華街。
 破壊されたビルや道路、潰された人の死体があります。
 一帯は電気がショートしており薄暗いです。
 そこら中から悲鳴やうめき声、車の警報、非常事態サイレンが聞こえています。
 ガスに引火して火の手が上がっています。黒い煙が見えます。
 その向こうに恐竜映画のようにフェザークレスが居ます。
 足場は瓦礫に覆われ、視界は不良。目標は大きいので見えます。

●敵
○『白翼竜』フェザークレス
 八対の光の比翼を持つドラゴンです。ジャバウォクと共に練達へ来襲しました。
 竜種ですので、只のモンスターではありません。とても大きいです。
 高度な知性を持っているので、意思疎通は可能ですが、対話出来るかは不明です。
 フェザークレスが何を目的に練達へ来たかは不明です。
 ただ、この場所を破壊し、害虫を潰すように人間を殺します。
 竜を殺す事は極めて困難だと言われています。

・八光翼:物超貫、スマッシュヒットを受けた場合、PCが『死亡』する可能性あり
 普段は折りたたまれていますが、広げて光を一定指向で放ちます。
 有り得ない程、強力な閃光です。直撃で死亡判定に入ります。

・光翼飛沫:物超域、極大ダメージ、炎獄
 八光翼から飛び散った飛沫です。溶けます。

・ビーファング、テイルソード:極大ダメージ
 切り裂いたり尻尾で攻撃してきます。物理中距離まで。

・ライトブレス:極大ダメージ。ランダムBSです。
 光のドラゴンブレスです。神秘広範囲遠距離。

・無詠唱多重魔法:神秘攻撃
 天空に広がる多重の魔法陣です。無詠唱で来ます。
 効果範囲、ダメージ未知数。

●NPC
○『揺り籠の妖精』テアドール
 ROOアバター被験者管理システムAI。
 秘宝種になりました。非イレギュラーズ。
 人々の感情や悲鳴、慟哭を受け取り混乱状態ですが戦えます。
 イレギュラーズや人々を守りたいと思っています。
・ルーンシールド、マギ・ペンタグラム、ヴァルハラ・スタディオン、歪曲運命黙示録

●情報精度
 このシナリオの情報精度はC-です。
 信用していい情報とそうでない情報を切り分けて下さい。
 不測の事態を警戒して下さい。

●Danger!
 当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
 予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。

●重要な備考
 これはEX及びナイトメアの連動シナリオ(排他)です。
『<Jabberwock>死のやすらぎ、抗いの道』『<Jabberwock>金嶺竜アウラスカルト』『<Jabberwock>アイソスタシー不成立』『<Jabberwock>灰銀の剣光』『<Jabberwock>クリスタラード・スピード』『<Jabberwock>蒼穹なるメテオスラーク』は同時参加は出来ません。

  • <Jabberwock>灰銀の剣光Lv:50以上冒険中
  • GM名もみじ
  • 種別EX
  • 難易度VERYHARD
  • 出発日時2022年01月20日 23時59分
  • 参加人数10/10人
  • 相談6日
  • 参加費150RC

参加者 : 10 人

冒険中です。結果をお待ちください。

参加者一覧(10人)

エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)
波濤の盾
クロバ・フユツキ(p3p000145)
レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)
赤々靴
冬越 弾正(p3p007105)
長頼の兄
ロロン・ラプス(p3p007992)
ぷるるん! ずどん!
ヴェルグリーズ(p3p008566)
全てを断つ剣
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
霊魂使い
グリーフ・ロス(p3p008615)
抱き止める白
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
ヴィリス(p3p009671)
黒靴のバレリーヌ

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