シナリオ詳細
How do you get to ――?
オープニング
●わたしのせかい
私は正しい。
私は間違ってない。
この世界で、私だけは。私だけが。
私だけが"正常"なんだ。
●行き着く先は
――逃げる者は違う。殺さないで。
「どういうこと……」
――逃げて、戦うよりも生き延びて。
「いきのびて……それから……?」
結月 文は何度も読み返したその言葉を思い返し、呟きを落とす。彼女からのメッセージは、すべきことは分かってもその意図がわからない。
この歪な世界には嫌な事に慣れてしまって、動き回るのもこの世界を訪れた時からすればずっと楽になった。同じ姿をした者は誰ひとりとしておらず、その中には確かに逃げるものもいた。増援を呼ばれないように、全て仕留めたけれども。
化け物を倒して、倒して、倒して。同じ姿をした生き物を探して、時間と比例するように独り言が増えていく。考えて、それを吐き出さなければ、何もできなくなってしまいそうだった。
立ち止まれない。正気でいなければならない。
「いきていたら……また、会えるのかな……」
逢いたい。逢いたいよ。
その願いを胸に文は只々歩き続ける。どこをどう歩いたのかなんて定かでないけれど、ひどくひどく寒くて、それでも彼女をつき動かすヒトがいる。
「詩織ちゃん」
その名を、よすがに。
●行き着くべきは
「――あなたにとってライムイエローなお知らせ。結月 文の足取りが掴めたわ」
『色彩の魔女』プルー・ビビットカラー(p3n000004)の言葉に夢見 ルル家(p3p000016)は目をまん丸に見開き、その向かい側に座っていたヴァイオレット・ホロウウォーカー(p3p007470)は腰を浮かせた。
「今、どこに!?」
「幻想の北方よ。一面ムーングレイに染まっているでしょう」
それにね、とプルーが付け足した言葉にルル家は眉根を寄せる。
「イエティの群れですか……見つかったのなら文殿を保護したいところですが、鉢合わせたら厄介ですね」
「ええ。あなたたちが接触する前に、彼女が群れと遭遇しないとも限らないわ」
結月文――それはヴァイオレットと故郷を同じくするウォーカーの少女である。但しその心は正常でなく、この世界へ降り立った文は無差別に殺戮を繰り返していた。これが少し前の話である。
「文ちゃんがワタクシのメッセージを読んで、戦わずに逃げ延びているのなら……この機会を逃せばまた、足取りは掴めなくなってしまうでしょう」
「バーミリオン……なんて、知ってのことでしょうね」
ヴァイオレットの言葉にプルーは小さく肩を竦めた。
以前戦った折に握らせたメッセージ故か、文の目撃証言は減っている。次に位置が知れるのはいつのことか、なんて待っていられない。早く保護し、深緑で借り受けた『心覗の球』で彼女を狂気からすくい上げなければ。
「大丈夫ですよ、ヴィオちゃん。拙者も、皆もついてます!」
「……ありがとうございます」
にぱっと笑うルル家にヴァイオレットは視線を向ける。彼女の言う通り、頼もしい友人も、仲間もいる。
果たして彼女を保護できるのか。どのように保護するに至るか。そしてイエティの群れの脅威に――文とどう向き合っていくか。まだ不安要素は大きいが、まず足を踏み出さなければ始まらないのだ。
●辿り着く場所は
「……さむ、い」
寒さは段々酷くなっていた。北の方なのだろうか。いや、こんなおかしな世界で『北が寒い』なんて常識は通じるのだろうか?
がちがちと歯が鳴る。向かう道を変えようか。寒くない方向に。
(それは……どこ?)
地図も持っていない、土地勘もまるでないこの状況で、向かう方向を変えて何になると言うのか。せめて出来るのは道を戻るくらいだが、戻ればまた化け物たちがいるだろう。
(あれは、逃げて行った……それは『違う』んだよね……?)
詩織からのメッセージにそう書いてあったから、怖かったけど殺さなかった。この後どうなるかもわからないけれど、あのメッセージに従って、幸いにしてまだ生きている。
(生きたい。死にたく、ない……化け物に殺されるなんて、いや……!!)
温かい場所を求めて文は彷徨い歩く。彼女はまだ、気づいていない。
――詩織のメッセージには、逃げる『者』と。ヒトを指し示していることに。
- How do you get to ――?Lv:20以上完了
- GM名愁
- 種別通常
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2022年01月10日 22時22分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●
吹き荒ぶ雪と風はあたりを取り巻き、心まで冷たい空気に侵されてしまいそう。
「こんなとこを彷徨ってるなんて……心細いだろうね」
寒い、と口にすれば余計寒くなりそうで『優しき咆哮』シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)はその言葉をグッと堪える。何かを探すには吹雪く音が邪魔だ。
ここは鉄帝にほど近い場所である。かの国ほどではないが、寒いのは道理だ。"彼女"が風邪をひかないうちに、暖かい場所まで連れ出してやらねばならない。
2体のファミリアーをシキが探すのと別の方へ放った『斬城剣』橋場・ステラ(p3p008617)は荷物を背負い直す。防寒具というのは嵩張るが、身ひとつで彷徨ってあるであろうことを思えば用意しないわけにはいかなかった。
(空は……非常に視界が悪いですね)
ステラは空へ放ったファミリアーの視界に、ほんの少しばかり顔を顰める。地上も似たところだが、地面に近い分手がかりも掴みやすいだろう。
「ここに出没するイエティたちは個で動くことはあまりなく、基本的には群れ単位で行動するそうです」
餌を分け合うらしいですよ、と言う『離れぬ意思』夢見 ルル家(p3p000016)。ここで言う餌は人間だ。
吹雪いてなくともこの雪だ、通りかかる人間は決して多くない。故に群れで確実に仕留め、分け合うのだと。
「では複数の音が聞こえればイエティの可能性があり、この状況で発信源がひとつなら……」
「はい! 文殿の可能性が高いでしょう!」
『蒼剣の弟子』ドラマ・ゲツク(p3p000172)にルル家は頷いた。発見できれば保護をしたいが、そう簡単にはいかないだろう。8人のイレギュラーズとも渡り合える手練れだ。
(だからこそ……我々にしか務まらない。手荒な真似になるとしても、それが役目です)
「――誰かあっちにいるみたいなのです!」
不意に声を上げたのは『流れ込んだ悲しみと』ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)だった。誰かへと助けを求める声がビビっと流れ込んだのだ。
鋭敏なドラマの聴覚が争うような音を聞き取る。
「文殿でしょうか!」
「はい。恐らくは、ですが」
ならば迎えに行こうと『挫けぬ軍狼』日車・迅(p3p007500)は一番槍に駆け出していく。その後に続きながらドラマは音へ耳を澄ませた。この吹雪の中、向かうべきを誤らないように。
(……私は報告書に目を通しただけ。今回の目標のコトは知りませんが)
ちらりと『影を歩くもの』ヴァイオレット・ホロウウォーカー(p3p007470)を見やって、再びドラマは視線を戻す。
彼女と今回の目標には、浅からぬ因縁がある。思うところもあるのだろう。特に相手は心を病んでいるというから、尚更。
(願わくば、彼女の『レベリング』が止んでいますように)
自分たちのためにも、彼女自身のためにも。『竜剣』シラス(p3p004421)はそう願う。
彼女――結月文は、シラスが仕留め損なった標的"だった"。今は保護対象であるからこそ、これ以上の人殺しを重ねていて欲しくはない。
だが彼女の情報を読んで、思ってしまう。
――人間は、どうあれば正常なのだろう?
正常かと問われた時、大半の人間は正常だと返すだろう。しかし実際、本当に正常なのだろうか。あくまで自身にとっての正常で、他人から見れば異常かもしれないのに。
(……これ以上はよそう。余計なことを考えている場合じゃない)
相手の立場が変われども、それが依頼だと言うのならこなして見せよう。それがローレットのイレギュラーズなのだから。
「それにしても、北の冬は美しくも厳しい。……彼女とお話ができるようになったら、次は南をおススメしてみましょうか」
ね? と迅はヴァイオレットへ目線を向ける。向けられた彼女は一度、二度と目を瞬かせる。
文の狂気は自身が原因で、治るかもわからなければ狂気によって犯させた罪も消えない。ここで保護し、救おうとすることが彼女にとって良いことなのかもわからない。
ここまで、そんな思いを足取りに滲ませていた。
(……それでもルルは背中を押してくれた)
救うため、共に進む仲間がいる。
1人で背負うにはあまりにも大きすぎるそれを、共に背負ってくれると言う友人がいる。
「ヴァイオレットさん」
視線を向ければ、ドラマが小さく頷いた。
「早急に、保護しましょう。……ここはとても寒いから」
「……ええ」
冷たくて暗いひとりぼっちの場所から、彼女を連れて帰ろう。
●
寒い。冷たい。体の芯まで凍ってしまいそう。どこまで行っても変わらない。
しおりちゃん、と言葉がこぼれ落ちる。あのメッセージをもらってからずっと、ずっと、呼んでいる。
その声へ応えるように音がしたから、文は目を見開いた。
「詩織ちゃん……?」
この寒さの中にいるのだろうか。音は近づいてくる。けれどひとつではないから、誰かといるのかもしれない。
絶望の世界に見つけた希望。それに胸を膨らませ、音の方へと振り返った文は巨体の影に固まった。
大きな、大きなモンスター。複数体のそれらは明らかに自分の探す詩織ではなく、逃げる様子もなく。
「っ!!」
咄嗟に武器を構えて発砲する。浅い? そんなわけはない。けれども化け物は痛いそぶりも見せず腕を振りかぶる。逃げようとしても、ここはひどく体が重い。化け物たちを撒いて逃げるのは至難の業だろう。
戦わねば。怖くとも、気持ち悪くとも、そうでなければ殺される。死ぬのは一番怖いことだ。
それでも祈らずにはいられない。どこからかメッセージを託してくれた、彼女に。
(詩織ちゃん……たすけて……っ!)
●
「――文ちゃん!」
ヴァイオレットがイエティたちと戦う文に叫ぶ。言葉は理解できなくとも声は届いたのだろう、文はイレギュラーズたちの方を向いて顔を強張らせた。
「文殿の手を引くのはヴィオの役目です。その手助けならいくらでも、ですけれどね」
ルル家はヴァイオレットににっと微笑みかける。イエティとも同時に遭遇した今、ルル家がすべきは文の保護に回ることではない。『文と他に向かう仲間たちを護ること』だ。
「ヴィオ、必ず救い出して下さいね!」
両手に握られる拳銃。ルル家はイエティたちへ無数の弾丸を乱射する。同時に別方向から回り込んだドラマの声が響き渡った。
「言葉を介さないモノに名乗る名もありません――が我々の目的の為、討たせて頂きます!」
小柄で柔らかそうな人間にイエティの目が向く。文がその様子に困惑しているうちに、迅とシラスは雪へと伏せ、不意打ちのため備える。シキもまた、吹雪へさらに幻影を重ねて同化した。
気配を殺し、そっと囲むように動く3人。ブランシュは文を誘導すべく弾丸を敢えて外し、挑発する。
「さあ、こっちに来るですよ!」
ブランシュの攻撃に文は怯えを滲ませながらも、意を決したのか勢いよく肉薄した。そしてブランシュごと、じりじり近づいていたシラスや迅も巻き込むように弾丸を放つ。
「っ!?」
伏せた状態から一転、飛び退くシラス。這うようにして進んだ跡が視界へ入る。
(気づいたのはこれか……!)
吹雪いているとはいえ、そうすぐさま足跡が消えるものではない。もしかしたら雪に同化する服装も、正しく見えていない文には関係なかったかもしれないが。
しかしまだ一部の不意打ちを防がれただけ。畳みかけんとヴァイオレットは第三の眼を開眼させる。
「ごめんなさい」
少しでも傷つけてしまう事。怖がらせてしまう事。金色の光を幻視させながらヴァイオレットは呟く。まだ、きっと、彼女には届かないだろうけれど。
「いや……こないで!」
見せられた錯覚に文が後ずさる。ステラはその差も詰めるように鋭く肉薄した。
(多少の衰弱等はあるようですが、手加減は難しそうですね……)
正しくこちらを認識できていないとなれば、その恐怖から抜け出せぬままがむしゃらにでも逃げ出そうとするかもしれない。保護をオーダーとする以上、逃がさないためにはこちらもそれ相応に戦わねばならないだろう。
しかし躊躇している暇がないのも事実。ステラはちらりと後方を見やった。
「いい感じですね!」
「ええ。とはいえこの相手にこの数、捌ききれるか」
イエティたちを相手取ったルル家とドラマが、文たちを巻き込まないようにと距離を置く。守勢になり、自らを癒しながらの持久戦だ。文の保護に時間がかかればかかるほど、あちらにも負担となる。
(少々分が悪いのは事実ですね)
それでも、とルル家は全力で身を守りながら歯を食いしばる。そう簡単に負けてなるものか。倒れてなるものか。親友の為ならどれだけでも頑張れるのだ。
(あの手紙が功を成したと言う事は……彼女はまだ、"私"の事を覚えてくれている)
その可能性にかけて、文の前へ立ちはだかるヴァイオレットは集中する。ステラのテスタメントの力を感じながら、その眼を開いた。
「――!」
文の身体が強張る。その身に巣くう狂気を塗りつぶすほどの催眠を、とヴァイオレットは念じた。この姿が化け物ではなく、かつての"私"になるように。
「……文ちゃん、もういいの。一緒に帰ろう」
ヒュッと文が息を呑む。その瞬間、迅とシラスがほぼ同時に動いた。武器に頼らぬシラスの一撃、そして迅の突き技に文が翻弄される。
「保護の為に殴るとは、流石の僕でも違和感が凄いですね!」
「でも、残念ながら優しくってわけにはいかないんだよねー……」
迅に苦笑いするシキ。人間の、特に女の子だ。気が進むということは決してない。
「それでも……殺戮も、絶望も全ておしまいにするですよ」
ブランシュが真っすぐ突っ込んでいく。辛うじて文は衝撃を受け流したものの、皆一様に足場は悪く、何をするにもやりづらい。
(きっと、彼女は何も信じられない状態ですよ)
全てが正しく見えない世界で、ひとりぼっちで歩き続けて。こんなに近くにいるというのに、知人の1人にすら本当の意味で会うことだってできやしない。少しでもその手助けがしてあげたいから、ブランシュは頑張るのだ。
「そろそろ眠ってもらえるといいんだけれどっ」
シキの一撃が昏倒を促す。しかしそのレベルの高さ故か、未だ彼女が膝をつく様子はない。
「さっき……詩織ちゃんの声が、聞こえた。どこにいるの……? あなたたちが、なにかしたの……!?」
文が銃をヴァイオレットへ突き付ける。そこまで深い催眠にはかけられなかったようだが、錯覚にも似た形で声は届いたのか。しかしそれは『友人に危害を加えた可能性がある』として敵意を燃え上がらせることとなったらしい。
(それならそれで、構いません)
ヴァイオレットは銃弾を避けながら文の前に立ち続ける。
自身へそれをぶつけてくれるのなら、逃げずにいてくれるのなら。それは文を保護しやすくなるということなのだから。
「もう少しでしょうか」
ステラは武器を構え、文の様子を窺う。ギリギリまではその体力を削っていきたいが、線引きは重要だ。早過ぎればその後の保護までが長引いてしまう。
「そっちには行かせませんよ!」
ルル家の声が聞こえ、続いて複数の銃声。イエティたちを必死に引き留めている様子だ。しかし横目で見れば、その状態は芳しくないことが見て取れる。
(未だ怯懦の心は去らずとも、今この場で逃げ出す程弱くもありません)
その胸に、ひとひらの勇気を抱えて。望むハッピーエンドを掴むべく、ルル家のパンドラが苛烈にその力を発揮する。
「ルル!」
「大丈夫です! ヴィオの為なら、拙者はまだまだ頑張れますよ!」
分かれて戦う前と同じ笑みを見せて。ルル家は再びイエティたちを引き付け、攻撃をいなす。そこへ飛び込んだシラスは的確に攻撃を撃ち込んだ。
「あちらはそろそろ決着がつきそうだしね」
「助かります」
自身の強化を改めて付与しつつドラマが返す。こちらが瓦解してしまえば一気にあちらの戦場が混沌と化すだろう。蒼い刀身を持つ魔術礼装を構え、魔力の流れを読み、ドラマは『攻撃は最大の防御』というように突っ込んでいった。
「こちらも負けていられませんな!」
迅の突き技にブランシュが続き、シキが慈悲の一撃で追い詰める。かくんと傾いだ文の身体をヴァイオレットは慌てて受け止めた。
「文ちゃん!」
「ホロウウォーカーさん。こちらを、結月さんに」
ステラが素早く荷物を預け、イエティの方へと身を翻す。荷に入っているのは文のための防寒具だ。ヴァイオレットはそれで文を包みこむと、そっと抱きしめる。
伝わる脈の音が、彼女がちゃんと生きていることを教えてくれていた。
「此処からは、心置きなく全力です!」
ステラの斬撃がイエティたちへ飛び込んでいく。仲間たちの加勢にルル家は小さく口角を上げた。
(文殿は保護できたようですね)
ならば攻勢へ転じよう。ルル家の銃弾は死神が撃つが如く、避けられぬ『死』をイエティに大きく近づける。
「全部刈り取ってやるさ。行くよ!」
シキの一撃がシラスを狙っていたイエティへ直撃し、敵が後ろへと後ずさる。シラスはその隙に自らを回復させ、自らも畳みかけに肉薄した。
「まったく、体力が有り余ってるようで厄介だ」
未だ残る4体は多少の怪我があるもののピンピンしている。とはいえ、仲間が1体倒されたことに多少の動揺は見られた。
「1体ずつ集中攻撃ですよ!」
ブランシュと迅が同じ敵を殴り込みに行く。圧倒的な火力だが、近くにいたイエティが腕を大きくぶん回し、何人かが跳ね飛ばされた。素早く受け身を取ったステラが再び距離を詰める。
(攻撃力が高い? 体力が多い?)
「上等ですとも!」
この程度を斬れずして、何が斬城剣か。その気迫がイエティたちを圧倒していく。イエティは不利と見たか、1体、また1体と逃げ出した。
「追う必要は……」
「ええ、今はないでしょう」
シラスに迅が頷く。彼らの討伐はオーダー外。今回は何よりも、保護対象を安全な場所へ連れて行くことを先決とすべきだろう。
一同は文を守るヴァイオレットと合流し、吹雪が穏やかになる方向へと向かう。シキがぶるりと震えた。
「寒いよねぇ、やっぱ」
言ってしまった。だって言っても言わなくてもやっぱり寒いのだ。少しでも落ち着ける場所までついたら、火にあたって温まった方が良さそうだ。
「文殿は大丈夫そうですか?」
「ええ……とはいえ、一刻も早く休ませてあげなければ」
ステラの防寒具によって寒さはマシだろうが、それでも横になれた方が良いだろう。医者にも見せて傷の治療をしてあげたい。
「目覚めたら、温かいものを食べさせてあげたいですね」
ずっと寒い場所にいたから、とドラマ。ブランシュも頷いて運ばれる文を見上げる。彼女の狂気が晴れて、会いたい人に会えますようにと願う。
どうか――これからの彼女の可能性に幸あらん事を。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
お疲れさまでした、イレギュラーズ。
無事に文を保護することができました。
それでは、またのご縁をお待ちしております。
GMコメント
●成功条件
メイン:結月 文の保護
サブ :イエティの撃破
※サブ条件は成功の正否には関わりません。
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
●フィールド
幻想の北方。雪が積もっており、足場は悪いです。
また、本来であれば見晴らしの良さそうな場所ですが、軽く吹雪いているため、イエティ以外の全員に毎ターンBS【氷結】の必中判定が入ります。
文とイエティが開戦済みであるかは不明です。探してください。
●エネミー
・結月 文
ヴァイオレットさんの関係者。彼女と元の世界を同じくするウォーカーの少女であり、この世界に依らない重篤な狂気を抱えています。そのため、彼女から見た生き物は全て化け物に見えていますし、言葉も届いてはいないようです。
例外として、以前ヴァイオレットさんが残したメッセージは視認できているようですが、今回の戦場において文字で何かを伝えられるほどの余裕は無いでしょう。また生存執着が強く、隙があれば逃げる可能性があります。
武器は魔力銃で、命中と特殊抵抗に優れています。また、通常攻撃に【防無】【流血】が付与されます。
非常に怯えた状態ですが、戦闘力は高いです。戦う場合は注意して立ち向かってください。また、彼女を保護するためには気絶させる必要があります。
・イエティ×5
ずんぐりむっくりした人食い巨人。獰猛な性格です。言葉はわからないようですが、仲間内では何かしらの意思疎通を行っているようです。同じものを狙う、逃がさないように取り囲むなどの連携を取る可能性があります。
全長5mほどの体躯で、基本的に二足歩行します。拳や爪で戦う他、その握力は大きな脅威です。また、四足歩行の方が移動速度は速く、突進技なども使ってきます。【凍気耐性】を持ち、乱れ系統や痺れ系統のBSを付与してくる可能性があります。
彼らはその突進ひとつで大木をへし折ると言われるほどに攻撃力が非常に高く、次いでHPが高いです。他の能力は不明ですが、軽んじてはならない相手でしょう。
彼らを野放しにしておいた場合、今後近隣の村落で被害が出る可能性があります。但し、今回のオーダーに関しては扱いについて触れられていないため、撃退としてOKです。
●ご挨拶
愁と申します。さあ、彼女を迎えに行きましょう。
どうぞ寒さにお気を付けて。
それでは、いってらっしゃい。
関係シナリオ:
『Alice in ...』https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/4721
『Almost everyone is mad here.』https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/5304
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