PandoraPartyProject

シナリオ詳細

人は、それを愛と呼んだ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●とある連絡
 幻想貴族ハイマール家。
 事情により息子1人以外の子供が出来なかったその家には、1人の娘がいた。
 こう分けるのは、その娘が実の娘ではなかったからだ。
 しかし夫婦は息子と娘を一切の区別なく愛情を平等に注いで育てた。
 2人の子供は互いを兄妹と疑わず育ち、それでいいと。素晴らしい日々が続いていた。
 だからこそ、届いたその手紙は夫婦にとって衝撃的だった。
 ようやく娘を迎える準備が整った。娘を引き取りたい。
 内容としては、ただそれだけに要約できるもの。
 本来であれば考えるべき事なのだろう。
 しかし「今更何を」という感情と同時に、引き渡すわけにいかない事情もあった。
 何故ならば。
 かつて自分たちに娘を押し付ける形で姿を消したのは……ハイマール家当主の姉。
「要らない」と捨てて行った娘にやはり愛情が湧いたという事情であったとしても腸煮えくり返る想いではあるが。
 実のところ、そうでもなさそうだ。
 何しろ当主の姉は、犯罪組織のトップとして君臨していたのだ。
 どういう事情があったかまでは探る気すら起きなかった。
 しかし、どうして今更娘を欲しがったかは探ることができた。
 ……当主の姉は、自分の力を更に強くするコマとして娘を欲していたのだ。
 婚姻政策。犯罪組織にもそういうものがあるということだ。
「……あなた……」
「このことは、あの子は」
「たぶん知らないはずよ。でも……」
「手は打つべきだ。今更あの子の未来に、闇など持ち込ませたくはない」

●1つの依頼
 ヘルミーネ・フォン・ニヴルヘイム (p3p010212)が受け取ったのは、とある依頼書だった。
 人目を忍ぶように渡された依頼書。
 信頼できる人と中を見てほしい。そう言われた依頼書を、ヘルミーネは悩んだあげく1人の情報屋に持っていくことにした。
 チーサ・ナコック。そう呼ばれる情報屋はヘルミーネから受け取って依頼書の封を切ると、小さく溜息をつく。
 それが少しばかり薄暗い依頼であると、理解できてしまったからだ。
「……これは、依頼です。ただし、あまり正義であるとは言えない部類の」
 依頼人は幻想貴族のハイマール家当主。
 そして討伐対象はハイマール家当主の姉にして犯罪組織「蛇の目」の首領、ニキータ。
 蛇の目は最近代替わりし、勢いを増している犯罪組織だ。
 それはニキータの手柄であるらしく、怪しげな薬などを富裕層に売りさばくことでかなりの利益をあげている。
 激増していく「あがり」を更に強固な力で守るため、他組織との強い繋がりを画策しているようだった。
 その1つが、婚姻政策。
 かつて自分が捨てた娘を取り戻し、それに使おうとしているのだろうと依頼人は予測している。
「……なのですが、ここで問題が1つ」
 どうやらニキータは別ルートで娘……アイルというその子に部下を通じて接触し、「実の母が会いたがっている。しかし貴方の育ての親はそれを望まないかもしれない。こっそり会いたい」という旨を伝えていたようなのだ。
 幸いにもその場はつけていた護衛が、行きつけの店の店員に化けていたそいつを追い払ったようなのだが……「実の親」というワードが、アイルに刻まれてしまったのだ。
「そんなものは居ない」とアイルに伝えはしたものの、多感な年ごろだ。
 自分の婚約者である別の家門の少年に相談し、会うだけ会ってみようと脱走する計画をたてているようだった。
 ならばどうするか。答えはそう多くはない。
「依頼内容は2つ。ニキータ、ならびに蛇の目の壊滅。証拠の隠滅。これらをアイルに気付かれる前に速やかに行い、実母が会いたいだとかどうとかというのは噓だったというカバーストーリーをでっちあげること」
 そう、たとえばすべて罠であり、アイルを殺そうとする者の策略だった……など。
 それっぽい寸劇を演じて「終わり」にしてやればよい。
 2度と、闇がアイルに近づかないように。
 それが、正義と呼べない行いであったとしても……依頼人は、それを望んでいる。

GMコメント

目的は2つ。
ニキータの暗殺、および蛇の目の壊滅、証拠に繋がりそうなもの全ての隠滅。
アイルに「実母の存在は嘘だと思わせる事」です。
以下、必要情報です。

依頼開始時点は朝。
アイルと婚約者の少年カインは、「遊びに来た」という名目で昼頃ハイマール家にて会う予定です。
もし何らかの形で彼等の内容を盗み聞ければ、「夜にこっそり窓から木を伝って降りる。そのまま裏門から出て相手の指定した待ち合わせ場所『かじりかけ林檎亭』に向かう」といった情報を聞けます。

●アイルとカイン
甘酸っぱい相思相愛の婚約者たち。
カインはアイルの実の親がどんな人であろうと大丈夫と心に決めています。
しかし、現実はそうもいかないでしょう。
この2人に真実を気付かれないようにしなければなりません。
アイルは簡単な束縛魔法、カインは剣を使います。

●ニキータと蛇の目
ご禁制の薬の売買で勢力を伸ばしている組織です。
思いっきりパブリックエネミーです。
証拠を掴ませない方法でやっていますが、その行いは極めて「悪」です。
ニキータは最近代替わりしたボスで、アイルの実の母親。
彼女なりにアイルに母親として「いい目を見させてあげよう」と考えています。
まあ、それがアイルの幸せになりはしないでしょうが。

蛇の目構成員は20人。武器は様々ですが、戦いに長けているわけではありません。
技能は暗殺者寄りで、ナイフなどを使い戦闘を仕掛けてきます。
ニキータの武装はシミター。他にも電撃により相手を一時的に動けなくする魔法を使用します。

●蛇の目アジト
裏通りに存在します。徹底的に秘匿されていますが、何かしらの強力なコネクションがあれば見つかるかもしれません。
また、『かじりかけ林檎亭』は蛇の目が運営する店です。こちらは聞き込みをすれば見つかるでしょう。
戦闘となれば、常駐の戦闘員7名ほどとの戦闘になります。
全員が様々な武装を持っています。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

●注意事項
 この依頼は『悪属性依頼』です。
 成功した場合、『幻想』における名声がマイナスされます。
 又、失敗した場合の名声値の減少は0となります。

  • 人は、それを愛と呼んだ完了
  • GM名天野ハザマ
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年12月26日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
……私も待っている
極楽院 ことほぎ(p3p002087)
悪しき魔女
クーア・ミューゼル(p3p003529)
めいど・あ・ふぁいあ
ピリム・リオト・エーディ(p3p007348)
《戦車(チャリオット)》
チェレンチィ(p3p008318)
青き砂彩
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
霊魂使い
ライ・リューゲ・マンソンジュ(p3p008702)
あいの為に
ヘルミーネ・フォン・ニヴルヘイム(p3p010212)
呑まれない才能
※参加確定済み※

リプレイ

●阻止せよ、それもまた愛ゆえに
「……正直、今回の依頼は共感は出来ねーのだ」
『呑まれない才能』ヘルミーネ・フォン・ニヴルヘイム(p3p010212)は、そう呟いた。
「娘の為にと娘の実母の暗殺依頼出す依頼主も、愛してくれる両親が居るのに実母の存在を気に掛ける娘も……自分の欲望の為に娘を使おうとする実母も……理解出来ねー……醜悪で吐き気がするのだ」
 ヘルミーネの言うことは、至極もっともだ。
 しかし、感情というものは酷く複雑だ。
 どれだけ愛されていても実の親という存在に惹かれる子供も少なくはない。
 大切な人のためであれば忌避される行為も厭わないという者もいる。
 そして、それらは……「愛」と呼ばれている。
 愛ゆえに、愛したからこそ。
 それらは、当事者以外に理解できるはずもないだろうし、理解する必要もない。
「……ま、依頼は完璧にこなすだけ…何か感傷に浸る必要はない…そうでしょ?『私』」
 だからこそ、ヘルミーネはそう自分の中で区切りをつけて。
「まー幸せなんて人によるしなァ。その時幸福だと思ってもあとで後悔したりとか、その逆とかも聞かないハナシじゃねーしぃ? だから不幸があるとすりゃ、親と子の思惑が噛み合ってねェトコだな。うん」
「そうだな。それに……例え実の親とは言えど、見るに堪えないものならば、見せず知らせず、というのはわかる話、だ。実際に育て、愛してきた親心ならば、尚更だろう、な。なんにせよ、依頼を受けた以上は、十全に果たすとも」
『悪しき魔女』極楽院 ことほぎ(p3p002087)と『……私も待っている』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)も頷きあう。
 今回の仕事の根幹は簡単だ。
 娘を「実の母親」に会わせず、殺し、実の親という証拠を隠滅する。
 そしてその為には「実の母親」である犯罪組織『蛇の目』を壊滅、最低でもボスであるニキータの暗殺の必要がある。
 その為のヒントは蛇の目の運営する『かじりかけ林檎亭』にあった。
「ふぅん……蛇の目、ですか。
婚姻で他の組織と強く繋がり、利益を守りたいというのは分かりますが、かつて置いていった娘をそのために使いたいというのは、些か自分勝手が過ぎますよねぇ。……ええ、母親というのは勝手なものなんですよ。全くね」
「……かもしれないな」
『青き砂彩』チェレンチィ(p3p008318)に『霊魂使い』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)が頷きを返す。
 身勝手を愛と呼ぶのであれば、その通りなのだろう。
 それが響くかはさておいて。
「ええ、ええ……この世は何処も、嘘で塗り固められています。醜いものをひた隠し、そんなものは無かったと嘘を吐いて綺麗な世界という幻覚を作るんです。ひた隠しにされるものとは……そう、敗者の事を言います、綺麗な世界とは勝者の世界の事を言います。ニキータ女史も蛇の道でそうしてきたのでしょう……順番が回ってきただけの事」
「ん……あー、親……ですかー。ふーん、まーどーでもいいんじゃねーですかー? 私は脚さえ頂ければなんでも構わねーですー」
『あいの為に』ライ・リューゲ・マンソンジュ(p3p008702)に『《戦車(チャリオット)》』ピリム・リオト・エーディ(p3p007348)はそう答えるが、こればかりはもう仕方のないことだ。
 愛とは部外者には非常に理解しがたいものだ。
(さて…今回はいつも通り……いえ、いつも以上に重要な事ですが敬虔で優しいシスターである……と、【演技】して【嘘】を吐きましょう。得意ですよ……【フェイカー】ですから)
 ライは「敬虔で優しいシスター」であるかのような表情で、近くにいたクーアへと笑いかける。
「どうです? 結構【演技派】でしょう?」
 ライにクーアも、肯定するように頷いて。
「ニキータとやらに特段の恨みがあるわけでなし。私自身彼女を表立って謗れるほどに清い生き方をしてきたわけでもなし。さりとて若い二人が不幸の道へ引きずり込まれるような状況は、どうにも看過しかねるのです。故に、蛇の目とニキータの命運はここで終わるのです。我々がここで終わらせるのです」
 そんな『めいど・あ・ふぁいあ』クーア・ミューゼル(p3p003529)の言葉を合図に、全員が情報収集のために散っていく。
 いざ行動に移す時は一瞬だ。
 その為には綿密な情報こそがモノを言うのだ。

●人は、それを愛と呼んだ
 蛇の目アジトはご禁制の薬の売買という危なすぎる橋を渡っている自覚があるせいか、徹底的に秘匿されている。
 依頼主の幻想貴族でも場所を掴めなかったほどだ。
 しかし、表は表。裏は裏。
 そちらに身を落とすことを恐れないのであれば、いくらでもやりようというものはある。
 たとえばエクスマリアは、比較的穏当な手段を選択していた。
 まずは、蛇の目のアジトの特定だ。コネクションを用い、可能な限り探してみようとしていた。
「こう見えてマリアも、それなりに悪名も知られたイレギュラーズ、だ。蛇の道だろうと、虎穴だろうと、洗い浚い、だ」
 そう、エクスマリアは……表の名声の方が高いが、悪名もそれなりに響かせている。
 蛇の目の構成員以外にも、尻尾を掴まんとする情報屋、過去に被害に遭い復讐を狙う輩など、辿る線は多岐に渡る。
 ニキータが頭角を現すにも、富裕層の顧客獲得には、ハイマール家由来のコネクションを使っていた可能性も、当然ある。
 そして、横の繋がりを欲すということは、今はまだ蛇の目を邪魔に思う他組織も居る、ということ。
「あらゆる痕跡を探し……それでも見つからなければ、林檎亭で情報を搾り取る、か」
 どれだけ内部秘匿が徹底していても、必ずどこかに隙はある。
 その隙を探して、エクスマリアは動いていく。
 クーアもまた、比較的穏当な手段をとっていた。
「こういうときにこそ先立つものが便利なのです」
 クーア自身、そこまで人探しに長けているわけでもない。
 だからこそ、賄賂となりうるシオンシャインを用意してきていた。
「裏社会の情報通だとか、このへんの地理に詳しい人だとか、めぼしい相手を探して交渉してみましょうか」
 秘匿された建物とはいえ、物理的に消えているわけでもない。
 クーアの交渉は、やり方次第では結果をあげるだろうと思われた。
 そしてピリムだが……それなりにダーティな手段での情報収集を開始していた。
 具体的には……丁度、脅していたチンピラが這う這うの体で逃げていくところだった。
「んーと、情報収集とかはよく分かんねーですが。この調子でそこら辺のチンピラを脅したり、収奪で手に入れた金品で買収したりで、とりあえず聞き出せそうなとこから私なりに頑張ってみましょーか」
 ピリムはそれなりに幻想での悪名は高い方だが、それを更に高める事に一切の躊躇いがない。
 完全に「裏」の手法で情報を集めていたが、そうでしか手に入らない情報も当然あるだろう。
 あとはその合間に情報収集に長けた仲間の繋ぎの役割として機動力や簡易飛行を活かして飛び回り、情報を伝令したり皆を呼び集めたりと、そういった役割も果たすつもりだった。
 そしてこれは勿論事前に同意済だが、全員の位置を把握する為に予めピリムのギフト「明鏡肢遂」も使用していた。
 勿論、外部の探索ばかりではない。
 チェレンチィは【闇の帳】でアイルの近くに潜み、情報を探ることにしていた。
(アイルには、ニキータが部下を送り込んで接触したということですし、会ってみたいと考えるのは自然なこと。脱走計画を立てているようですし、その内容が分かれば「蛇の目」との接触方法も分かるでしょうか)
 そう考えていると、婚約者の少年カインがアイルに会いに来る。
 事前に情報を仕入れていたので、すぐにそうだと分かったが……メイドを下がらせると、2人はコソコソと何やら話し始める。
「そこの木を使うんだ。枝が多いから降りるのは難しくない」
「でも、そこからどうするの? 門番だっているのよ」
「大丈夫。裏門はカンヌキさえ開けてしまえば通れる。巡回の隙間をぬえば難しくはない」
 なるほど、カインは騎士見習いのはずだが……それなりに作戦を練っているようだとチェレンチィは感心する。
「あとは『かじりかけ林檎亭』に向かえばいい。相手の指定先はそこなんだろ?」
「うん……でも、上手くいくかな」
「いくさ。大丈夫、僕がついてる」
(……ふむ。『かじりかけ林檎亭』で待ち合わせですか)
 それ以上の情報は得られないだろう。
 チェレンチィは隙をみてここを脱出し、仲間と合流することを決める。
 此処はアーマデルの派遣した霊魂「酒蔵の聖女」も見ているので、まあ平気だろうという判断もあった。
 まあ、間違いなく荒事になるだろうが……。
 ちなみに、酒蔵の聖女を寄越していたアーマデルだが……裏通り付近を歩き霊を探していた。
(相当恨みを買っていそうだし、関わりのある霊が彷徨っていそうだ。徹底的に秘匿されているなら決定的な情報は難しいかもしれないが……むしろ余計な事を知った為に消された者もいるかもしれん)
 そう、裏社会には粛清や死は付き物だ。
 そうして秘匿された情報も当然あるだろうし、それ故に消された者の霊から得られる情報もあるかもしれないとアーマデルは考えていた。
 だからこそ様子を見つつ、非業の死を遂げた様子の霊を探して接触してみようと。アーマデルはそう考えていたのだ。
 ……そして、霊絡みではもう1つ。
 ヘルミーネが、出来るだけハイマール家に縁のある霊達に頼んでアイルとカインの監視を頼んでいた。
 彼女らが今回の件に関する言動をしたら逐一報告してもらおうと、そういう狙いだった。
 この辺りはアーマデルとの協力作戦という形になっている。
 そして、それとは別に蛇の目に関しての情報を裏組織に精通する情報屋にあたっていた。
 勿論、快く渡してくれるとは限らないのでライと共に行動して事にあたっていた。
 そうして集まった情報を元に、ことほぎを中心として『かじりかけ林檎亭』へと向かう。
 明らかに堅気の酒場ではない、その場所で。
 ことほぎは眼光で威圧しつつ、クスリに興味あるフリをしてみせる。
「イイ商売やってるらしいじゃねェか。一枚噛ませろよ!」
 ことほぎの幻想での悪名は、今回集まったメンバーの中でも最高峰だ。
 だからこそ話がスムーズに進むかもしれないし、進まないかもしれない。
 どちらにせよ、構わない。
 そして結局のところ、『かじりかけ林檎亭』は廃墟同然と化した上で火事になった。
 これは仕方のない話だ。後始末を考えれば、一切の証拠は残せないのだから。
 そして……『手に入れた』情報を元に、即座に『蛇の目』アジトの襲撃は敢行されていた。
「手筈通りだ。お前ら、やっちまえ!」
 ことほぎの監獄魔術『インスタービレ』によって起こった混乱と、仲間割れを疑わせるような掛け声。
 元より後ろ暗い利益で繋がった仲間だ。正しい意味での絆など、あるはずもない。
 エクスマリアも娃染暁神狩銀を振るい、切り込んでいく。一切の容赦はない。
 敵の口から、アイルとカインに要らぬことが伝わる可能性は、排除する。
 全力で、迅速に、容赦なく叩き潰すのだ。
「いざとなれば、証拠になるものごと、燃やすことも考えておこうか」
 後からこんな資料が見つかった……などいった事態になっては片手落ちだ。
 その手法の善悪を問いさえしなければ、確実な手段だった。
「そうですねー。ひとまず全部始末すれば良いでしょー。後はわざとらしく証拠諸共血のシャワーで部屋中を真紅に染め、それでもまずそうなら燃やしちまいましょーか」
 ピリムも、なんでもないかのようにそう言い放って。
「てめぇは母ちゃんと別ベクトルでムカつく……死ねよ、糞女」
 ヘルミーネが今回の目標であるニキータにトドメを刺し、蛇の目のアジトに火が放たれる。
「ひいふうみ……全部で16本ですかー。悪くねーですねー」
 ピリムがやっている「何か」を止める者は居ない。
 ことほぎが金目のものを懐に入れても同様だ。
 元よりコレは紛れもない悪なのだから。
 そうして……全ての証拠が隠滅された「元」かじりかけ林檎亭の前で呆然と立つ2人の男女に、ライが駆け寄っていく。
「あぁ……恐ろしい思いをされましたね。もう大丈夫……神が、そして貴女のご両親が貴女を護ってくださいました」
「お、お父さんたちが……? どういうことですか?」
 ああ、なんたる純粋さ。
 ライはその騙しやすさに「仕事の簡単さ」を悟る。
 エクスマリアとクーアも、互いに目線だけで「何のフォローも必要ない」と頷きあう。
 確かにこれであれば、蛇の目の面々も彼女たちをおびき出すのは簡単だっただろう。
 ライの用意したカバーストーリーは、スラスラと並べ立てられていく。
 その「嘘」を暴く者など、何処にも居はしない。
(もう綺麗に片付けて覆ってしまいました。何も疑うことは無いでしょうね)
 そんなチェレンチィの想像通り、少年少女には疑っている様子はない。
「そう……貴女は彼らに騙されかけて、攫われかけていたのです。ああやって人を誑かし誘い出し攫い売り払う組織……あぁ…悲しい……恐ろしい事です……」
(近隣への延焼はなし。証拠の焼け残りに注意が必要だが……)
 アーマデルもシレッとした表情で状況を確認していくが……何の問題もなさそうだ。
 そうして、ライのカバーストーリーは完全に、余さず少年少女に浸透して。
 そんな2人に……いや、アイルにヘルミーネは一言だけ問いかける。
「君の両親達は君の事を本当に愛してる……それが真実だ……それじゃあ、不満かい?」
「それでも」
 アイルは、そう呟く。
「本当のお母さんなんて人がいるなら、会ってみたかったの」
 若者故の無軌道さなのか。
 それとも、「真実の親子愛」といったようなものに憧れたのか。
 分からない。
 そんなものが「あった」かどうかも、すでに灰となって消えた。
 そしてそれもまた、アイルを思う両親の心により依頼となって達成された。
 流れた血と炎の果てに、アイルはやがて幸せを掴むだろう。
 アイルも、そして婚約者のカインも、それを知らないままに真実は墓場に叩き込まれた。
 善か悪かでいえば、間違いなく悪に分類されるであろう、この所業。
 決して表に出せるものではない。
 けれど……その「悪」ですらも。
 人は、それを愛と呼んだ。

成否

成功

MVP

ライ・リューゲ・マンソンジュ(p3p008702)
あいの為に

状態異常

なし

あとがき

蛇の目を叩き潰し、全ての証拠を焼き払いました。
用意されたカバーストーリーは1人の少年と1人の少女を幸せな未来に導くことでしょう。

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