シナリオ詳細
ダンジョン前宿屋繁盛記
オープニング
●ダンジョン前宿屋の危機
砂漠に生きるラサの商人は、とても強靭だ。
売れるものは何でも売るし、その土地柄「水」も高値で売れたりする。
代替品となるワインやジュース、果物だって相応の値段で売れる。
善と悪だって金次第、いつだって簡単にひっくり返る。
昨日の奴隷が明日の奴隷商、何が起こるかわかりゃしない。
時たま不思議なダンジョンの類だって出てくる。
ならば、それだって商売の種になる。いやむしろ、商売にしない方が変なのだ。
たとえば、そう。ダンジョン前に宿屋なんか建てちまったら、そいつはきっと良い商売になる。
実際、お客さんは多数来る。
忙しい時期も乗り越えて、通常業務を流していけば普通に儲かる時期がやってくる。
問題があるとしたら、そう……食事に文句が多いってくらいかな。
「あー! くそっ! 誰だご当地グルメとか言い出したのは!」
ダンジョン前宿屋「フククル亭」の主人のヒコマは、思わず叫んでしまっていた。
フククルダンジョンと名付けられたこの不思議なダンジョンは未だ踏破者がなく、それ故にいつでも客が来る素敵な稼ぎ場となっていた。
しかし、砂漠の寒暖差がちょっと激しい事になるこの時期、客足は自然と落ちてくるわけだが……。
そんな中でもやってくる客は相当物好きだし、自然と泊り客も多くなる。
そして泊り客に渡された一冊の本が、ヒコマを苦しめていたのだ。
【フククル亭:総合評価:星2つ。ご飯のメニューがカレーしかないのは正直どうだろう。リピートを促すご当地メニューの開発をするべき】
「誰だこのアホな本出したの! そういう客は見込んでねえよ!」
しかし、自分の商売にケチをつけられれば「なんだこのやろう」とシミターを持ち出すのがラサ商人の心意気だ。
そしてヒコマもまた、そんな典型的なラサ商人だったのだ。
●ヒコマからの依頼
「新メニュー開発です」
チーサ・ナコックはそう言うと、1冊の本を机に置いた。
「つまり! ついに魔砲トレーニングが正式訓練メニューになるということなのですよ!」
「全然違ぇーです。本見ろです」
「マッスルマニアックス12月号なのでして!」
「その隣です。誰ですか、この本忘れてったの」
チーサがマッチョ本を隣の机に投げると、ルシア・アイリス・アップルトンはその本を視線で追いつつも示された本に目を向ける。
ラサグルメマスターガイドと名付けられた本の開かれたページには、ルシアにも見覚えのある宿屋の名前がある。
「あ、フククル亭なのですよ」
「どうも酷評されてご当地メニュー作る気になったようでして」
ご当地メニュー。
簡単には言うが、作ろうと言って作れるものでもない。
そもそも、砂漠でご当地メニュー用の食材など、どう用意しろというのか。
そしてそれは安定供給できるものなのか、それとも季節限定なのか?
味はどうだろう。カレー一本絞りのヒコマと従業員でも作れるものがいい。
難題だ、実に難題だと言わざるを得ないだろう。
「前回の手伝いが好評だったようでして。また是非ローレットに……と声がかかったです」
つまり今回はグルメ気取りを唸らせる新メニュー開発というわけだ。
一見平和にも思えるが、ラサの商人はナメられたら終わりだ。
ナメられたら相手が勘弁してくださいと泣いて財布を出すまでナメかえしてやれ。
そんな言葉だって存在するのが、ラサという土地なのだから。
- ダンジョン前宿屋繁盛記完了
- GM名天野ハザマ
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年12月16日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●フククル亭新メニュー開発のために
「環境が厳しい中での経営で店長さんは大変でしたね、お疲れ様です……。少しでも店長さんの負担とお客様のクレームを減らすよう、私も皆さんと共に頑張ります!」
「ああ、助かるよ。正直皆さんなら良いアイデアが出るんじゃないかって期待してる」
「まあ、任せな。現地のモンで作るのは慣れてる」
『天狗』河鳲 響子(p3p006543)の気遣いにフククル亭の店主ヒコマが疲れたような声でそう答えて、『帰ってきた放浪者』バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)も多少気遣うような様子を見せる。
新メニュー。言うは易く行うは難しというが、まさにそういった感じのものだ。
特にラサの人里離れた場所に店を構えている以上、食材に依存しないカレーがメニューになるのは当然といったところ。
「確かにメニューが一つだけだと飽きちゃうのですよ。でもその一つだけで回そうとしても忙しいのです! ってことは殆どのお客さんには伝わらないものでして……」
「そうだよね。そもそも原因となったレビュー、フククル亭はカレーを売りにしてるのに、カレー以外のご飯物が無いのを正直どうだろうって言って、後半でリピートを促すご当地メニューの開発に言及してるから、どちらかに要点を纏めてないため筆者の重視してる点がご飯なのかご当地メニューなのかわからないし、あまりこういうの気にしてもしょうがないと思うけど依頼だし真剣に考えようか」
『にじいろ一番星』ルシア・アイリス・アップルトン(p3p009869)に『挫けぬ笑顔』フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)もそう頷く。
そういう類のレビュー本に踊らされたくはないが、こればかりは仕方がない。ラサ商人としてのプライドの問題なのだ。
しかし、仕入れの問題はやはり付きまとう。今この瞬間に美味いものが作れれば良いという話ではない。
つまり、今回作るメニューも現地で獲れるものを中心にすることになる。
具体的にはサンドワーム、砂サソリ、ホタルクラゲモドキ、赤サボテンの4種だ。
「地元民向けならともかく、来訪者にはちょっと勇気のいる食材だな。まあ最終的には味が良ければ定着するんじゃないか?」
『霊魂使い』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)は頷きながら、思い出したようにヒコマへと振り向く。
「ところで俺は料理があまり得意じゃない。以前カレーを作った時は食った友人が小さくなってな……あと生地を捏ねて種なしパンを焼いたら食った奴が病院送りになった。どうして……」
解せぬ、という顔をするアーマデル。なんか胡乱な顔の猫が通り過ぎた気もするが、きっと気のせいだろう。
「……まあ、それはいい。万一の事を考えて実際に作るのはヒコマ殿や従業員に頼むぞ」
そんなアーマデルのサポートだろうか、イシュミル・アズラッドの姿もある。
「よーし! ブランシュもお料理頑張るですよ! でも、あんまりお料理しないからそれっぽい物になるですよ」
『エルフレームTypeSin』ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)もメイスを握り元気よく叫ぶが、人体に影響がないのであればアーマデルよりはマシなのかもしれない。
「しかし、この食材リストは……」
『ワイルド・レンジ』ムサシ・セルブライト(p3p010126)が、少しばかり難しそうな表情になる。
「これで新メニュー開発……でありますか? これはまた……ええと……その……独創的な食材でありますね! 一応食べられるみたいで安心であります……」
「まあ、どうとでもなるじゃろ」
『天を見上げる無頼』唯月 清舟(p3p010224)はそう言って、カラカラと笑ってみせる。
「新メニュー新メニュー……宿屋の飯ってあれよな。その立地によって色々中身が偏ってる気がするわ。こういうダンジョンが近ぇとこなんかとかは野郎が多いんじゃねぇか? 潜る前なら体力作り、出てきた後なら失った体力戻すためーとかでガッツリしたんが喜ばれそうじゃ。実際稼ぎ場で客は来るらしいし、なーんかもう一押しありゃもっと話題にゃなりそうよなぁ?」
すでに一案ありそうなその姿に、全員が「おおっ」と声をあげる。
「ま、なんとかなりそうだな」
バクルドがそう言えば、代表するようにルシアが腕を突き上げる。
「まずは材料ですよ! 誰が相手でも破式魔砲でずどーん! すれば解決でして!」
ずどーんしたら食材が微塵になってしまうのではないだろうか、とはあえて誰も言わない。
しかし空気を読んだのだろう。
「あっ、トドメを刺す時は威嚇術で傷を少な目に、ですよ」
そんなことを言っていたので、安心である。
「ともかく! まず食材の確保からでありますね! 自分銃使いなので撃ったら体内に弾丸が残らないかとか火薬がついたりしないかちょっと心配でありますけど……ともかくサクサク倒していくであります! 処理はおまかせであります!」
「さあ、ご飯の材料の調達ですよ!」
再度ムサシとブランシュが号令を出し、食材確保に出発するのだった。
●作れ新メニュー!
そうして食材は揃った。これだけ実力者が揃えば、何も難しいことはない。
「ま、とりあえずドタマぶち抜けば生きてるのは死ぬしな」
そんなことを言いながら、バクルドが鍋をグツグツと沸かしていた。
その中にあるのは……砂サソリ、だろうか。
「まずはサソリを煮込んで出汁を取る。 下処理? まあ水洗いしてぶつ切りにして血抜きとモツ抜きしとけばいいだろ。出汁に調味料で味を整えたら……氷室ぐらいねぇか? まあスープを冷やすんだ」
そうして冷えたスープが出来上がれば、バクルドはクラゲモドキの処理に移っていく。
「そんでここにあるクラゲモドキを、頭が邪魔だなさっき狩りに使った刀で……衛生面? 洗って火で炙ったから大丈夫だ。まあこれも放浪メシってことで、それで頭を切り落としてこの足を茹でる、つまり麺代わりだ」
なるほど、クラゲモドキはコリコリした食感にも柔らかな食感にもできる。
それを麺にするというのは、実に良いアイデアだろう。
「さっき冷やしたスープと麺を深皿に入れて、サンドワームで具になるチャーシューもどきを作って出汁をとった後のサソリの身も乗せて真ん中にアカサボテンを擦った、大根ならぬサボテンオロシを乗っけりゃ……よし、冷製ラーメンの完成だ」
そうして出来た冷製ラーメンに、全員が拍手する。
「放浪の飯は旨いかどうかはともかくまともに食える出来にはなってるから不味いってことはないはずだ、多分。そこまでうまくないにしてもアレンジを加えりゃ食えたものにはなるはずだ」
「いえ、これは美味しいですね。なるほどラーメンとは……」
「後は余りのおろしたアカサボテンを凍らせてシャーベットにすりゃ人気が出るんじゃねぇの?」
「なるほど……」
バグルドの冷製ラーメンを試食すると、響子も立ち上がる。
「では次は私の番ですね!」
一気に調理しても、ヒコマたちが覚えられない。
それ故に、1人ずつ調理手順を示していく方式となっているが……バクルドのラーメンに刺激されたのだろう、響子の目は輝いていた。
「では私からは幾つかの料理をご提案しますね」
そう、何パターンかあれば飽きも来ないし食材の状況にも対応可能だ。
「鍋ならばサンドワームの肉をミンチにして つみれ鍋を作ります。昼夜は寒暖差が激しい場所らしいので夜限定で販売してみてはいかがでしょう?」
事前にヒコマに渡されたメモには、幾つかのポイントも記載されている。
つみれ鍋の出汁は薄味にして何種類かのソースまたはポン酢(醤油+酢+レモン汁)があればお客様の食も進みます。
私の感想ですが、つみれにクラゲモドキを刻んで混ぜると食感が増しますのでオススメですよ。
こういったことが書かれた響子のメモと実際の調理手順は、実に真似しやすくアレンジもしやすいものだろう。
「肉の備蓄が無い時はアカサボテンをステーキにするのも悪くありませんよ。ただ、甘めの味なので調味料やソースで調整する必要はありますね」
じゅわっとフライパンで立つ音はアカサボテンの水分の高さゆえだが、それもまた心地の良い音だ。
「それ以外ですとクラゲモドキと毒サソリを刺身にしたり、トルティーヤにすると新鮮味があると思います。カレーもキーマカレーやカレーパンとして出してみれば再評価してくれるに違いありません。クレームはメニューの数であってカレーの味ではないのです、自信を持ってカレーを作り続けてください!」
そうして出来ていく料理は、実に見た目も楽しい。
まさか砂漠のど真ん中で刺身というのも、面白い視点だろう。
「あとはダンジョン攻略の常備食として、アカサボテンのドライフルーツを店頭に並べてもらうよう相談しましょう。簡単に作れるかつ、水も砂糖も不要なのでお店の利益になると思いますよ!」
ここまでの事が全てメモに書かれているが、やはり目の前で調理されると説得力が違う。
ヒコマは何度も頷いて、メモをコックに渡していた。
「さて、次は俺だが……ちょっと待ってくれ」
アーマデルは、隣のイシュミルと何事かの打ち合わせをしていた。
「イシュミル、あんた薬効とかには詳しいだろ。今日は素材が薬草じゃないから……え、サボテンが精神安定と生活習慣病の予防にいい? ほんとか? それならジュースでもいいか。だがいいか、薬じゃないから味と食感は大事で……だからスムージーはやめろって……乾燥させたら日持ち&携帯しやすくならないか? 砂漠の長旅用に……水分を多く含むならそれで水分と風味を賄う赤サボパンとかどうだろう。食い合わせと栄養……頼むぞ……人類の範疇で」
何やら打ち合わせが済んだらしくイシュミルが赤サボパンを作り始めるが、きっと安心だろう。
そしてシェフとヒコマ、響子のサポートによりアーマデルのメニューのお披露目が始まっていく。
「鍋だ、鍋はだいたいの問題を超越する。薄切りサンドワーム肉でBUTA-SUKI(SUKIYAKI)風とか砂サソリで海鮮風とか。鍋+シメ用のライスのセットにすればいいんじゃないか」
超越するかはさておいて、鍋は確かに拡張性の高い料理だ。
それは響子も示した可能性であり、アーマデルはその可能性を更に広げる提案であった。
「そして鍋といえば勿論あれだろう、数多の勇者の前に立ちふさがる暗黒の鍋、即ちYAMI-NABE……まあ、本気で客に何でもぶち込ませると食用にならないものをぶち込む不心得者が出るし、あれはダメ、これはやめろと禁止食材を列挙するのも風情が無い」
闇鍋。ちゃんとルールを決めないとリアルファイトに発展しかねないので、難しいところではある。
「こちらで用意したものをセレクトするのでどうだ。基本のスープ+基本食材を記号から規定数セレクト+ひとつだけ食材を指名投入できるとか。安く上がる端切れ食材パックとか、どんなやばそうな組み合わせも大体カバーする万能の激辛スパイシーカレースープとかのオプションも用意して……完食したら割引クーポンとかのサービス、残したらペナルティつきチャレンジメニューとか……
これなら食べ物を粗末にする者も居るまい。あとはそうだな、赤サボ入のタレで味付けしたワームジャーキーとか……」
言っている間に完成した赤サボパンがアーマデルの口に詰め込まれるが、とりあえず問題はなかったらしい。
「じゃあ次は私だね!」
続けて立ち上がるのはフォルトゥナリアだ。
「という訳で私のレシピだけど、まあ複雑なのは他のメンバーが良い感じのを出してくれてるし、比較的単純な物で攻めよう」
赤サボパンはその筆頭だろうが、さておいて。
「秋冬のご当地メニューとしてサソリが使えるのであれば、サソリの殻で出汁を取ったサソリ汁をサソリ使ったメニューにつける。カレーにつけても良い。余談だけど作る時に溶き卵を入れると更に美味しくなると思う。レビューの筆者の胃の調子が悪くてカレーに苦言を呈したと想定するなら、雑炊系の柔らかくて胃に優しいメニューを追加することである程度解決を図れると仮定して、サソリ汁雑炊。別に夏でもサソリ汁以外で雑炊やリゾット足す手もあるかな」
言いながらフォルトゥナリアの調理は進んでいくが、確かにご飯はカレー用のものが安定供給できている。
ならば雑炊やリゾットが出来ない理由もない。流石の料理勘である。
「カレーが強みならそこを押し出すメニューで通年としてサンドワームのカツカレーはご当地メニューとして強そうだし、アカサボテンのジュースはスッキリした飲みごたえでカレーと相性が良いと思う」
実に素晴らしく堅実な案と提供されたメニューは素晴らしく、そんな中、用意された台に乗ったルシアが胸を張る。
「では、いよいよ調理なのでして!」
ルシアはそれなりに品数が多いようで、響子が手伝い調理していく。
まずはワームを時間を置いて熟成させ、塩漬けにして「熟成サンドワーム肉のベーコン」、それを用いた「肉野菜炒め」。
まあ、今回は熟成させる時間がないので即席ベーコンで代用である。
砂サソリは身をほぐしてスープに入れたり、カニ爪ならぬサソリ爪をつけた「冬限定スープとカレーのセット」に。
フォルトゥナリアの雑炊もあれば、更に幅は広がるだろう。
ホタルクラゲモドキは調味料で和えて前菜に、アカサボテンは小さく切って生地に混ぜ込んで焼く「パウンドケーキ」に。
更にはシンプルにそのまま煮詰めてりんご煮ならぬ「アカサボテン煮」。
これはアカサボテンがリンゴに似ているから出来る技だ。
そして薄めに切ってパリッとなるよう加熱し塩等で軽く味を調えて出来上がるは「アカサボテンのチップス」だ。
「ベーコンとチップスは旅客よりも迷宮へ挑戦する人向け想定で、そのままでも食べれるようにしておくと良いのでして!」
さて、次はムサシだ。
「ふふ、手間がかからない料理方法……思いついたでありますよ……オーラキャノンの光柱で相手を丸ごと焼いてしまえばまさに丸焼きであります!! これで調理の手間も省け……え? 量が多いし丸ごとは食べられない……? ほらこう……大食いのチャレンジメニューとかで……駄目であります……?」
ムサシ、なのだが。ヒコマにダメだしされたので第2案である。
「このアカサボテンがリンゴみたいな感触ならば……いっそのこと変に弄くらずただトゲトゲした表面だけ剥がして、本当に皮をむいたリンゴみたいにサッと出せるようにすればおつまみとか付け合わせとかでいいんじゃないかなーと思うであります」
「サラダにも合いそうなのでして!」
「それでありますな!」
意気投合したムサシとルシアの手により即席サラダが完成し、ブランシュの番がやってくる。
「さあ、ブランシュのお料理開始ですよ! 下処理として血抜きとモツ抜きをしたら、砂サソリとホタルクラゲモドキを茹でるですよ。そうしたらクラゲの足を麺代わりにして、砂サソリと和えるですよ。お手軽一品! 砂サソリソースのホタルクラゲモドキパスタの完成ですよ!これはすぐに作れそうだから、グランドメニューにして安値で出すですよ」
「クリームパスタも出来そうなのでして!」
なるほど、バクルドもラーメンにしたが、ブランシュはパスタである。
「続いてもう一品作るですよ。これはバクルドさんの案になるですよ。すりおろしたアカサボテンを凍らせてシャーベットにするですよ。あつーいひには丁度いいかもしれないので、季節限定メニューとしてお勧めするですよ!」
ブランシュが出したのは、バクルドの提案したシャーベットだ。確かに砂漠ではこういったものは人気が出るだろう。
「さらーに、思いついたのでもう一品作るですよ。サンドワームをパン粉、卵などに溶いた液につけて高温の油で揚げるですよ。これにソースとアカサボテンのすりおろしを入れた特性ソースで味付けして、サンドワームカツの出来上がりですよ! 食パンとかあれば、これを挟んでサンドにするのも宿屋のメニューらしくて良いと思うですよ。これらはグランドメニューにして大量生産できるので、安値ですよ」
カツはカレーとも相性がいい。サンドも手軽にお弁当に出来るし、素晴らしいといえる。
「さーて……最後は儂じゃの」
カツを頬張りながら立ち上がるのは清舟だ。
「ぐらんどめにゅー……カレーは確かに美味い、がこれだけだとパンチに欠けるんちゃうか。カレーを軸に、色々種類を増やしてみたらどうじゃ」
そう、清舟が提案するのはカレーの強化だ。
同じカレーでも種類があれば、それは多様性という大きな武器になる。
「サンドワーム、砂サソリ此奴ら二つでもそれぞれぶち込めば肉カレーと海鮮風味のカレーになりゃせんかな。サボテンを煮込む過程で入れてやりゃ甘みが良いアクセントになるかもしれん。こういうのはカレー一つでも良いが、色々な客の好みに合うように何通りか作るのがミソじゃねぇかな。素材調達の手間はあるが、カレーというベースは同じだから他より楽じゃろ。素材は他の季節限定メニューに使ってもええしな。大量生産でこれまでのカレーと同じ値段でだしてやろうぜ」
言いながら作られていくカレーは、中々手慣れている。
もしかすると作り慣れている可能性がある。男飯の上位はカレーというアンケート結果もある。
「後は……もう案も出とるが鍋はどうじゃ。これの良い所はなんと言っても調理に手間が少ない事じゃ。煮え加減は客に任せることになるからの。砂サソリで取った出汁でサンドワームとクラゲ、その他野菜をぶち込んでタレを何個か用意してやりゃあ満足感もある! これは限定で出してやりゃあこれ求めてリピーターもつきそうじゃね?」
「……なるほど」
清舟の作ったカレーを口に入れ、ヒコマはスプーンを置く。
「皆さんの提案した料理はどれも素晴らしい……全て採用したいと思う」
「おお、そりゃ豪気じゃのう」
「これだけ多様性があれば、あのクソ本を書いた奴もぐうの音も出んってわけだ! ふわはははは!」
「ま、確かにな」
バクルトも笑い、そんな中ルシアがてこてこと用心棒たちのところへ歩いていく。
一切の邪気のないその笑顔から放たれた言葉は。
「用心棒のみなさん!今後のことを考えるともっと強くなればお店も安泰だと思うのですよ。そこで! ルシアは魔砲トレーニングをおススメするのでして! 魔砲が使えるようになれば今までよりもより遠くから! より早く倒せるのですよ!! だから……」
この後、魔砲トレーナーはフォルトゥナリアに回収された。
こうして、フククル亭のメニューは一新され……忙しさは増しつつも、かなりの高評価を得たらしかった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
コングラチュレーション!
皆様の料理熱、とても素晴らしかったです!
GMコメント
というわけで新メニュー開発です。
ポイントは幾つかございます。
・グランドメニューか、季節限定メニューか?
・個数限定品か、大量生産か?
・安値か、高値か?
そして食材候補は以下の通りです。どの食材も宿に常駐している用心棒の皆さんが頑張れば勝てる程度の強さです。
・サンドワーム
全長5mくらいのでっかいミミズみたいなモンスター。砂の中を移動してきます。春夏秋冬、いつでも出ます。
得意技は噛みつき。肉質や味は豚ヒレ肉に似ています。
・砂サソリ
全長2mくらいのデカいサソリモンスター。毒の尻尾針とハサミによる攻撃。秋~冬の昼に出ます。
肉質や味はカニです。
・ホタルクラゲモドキ
全長3mくらいの空中浮遊するクラゲみたいなモンスター。周囲に相手を吹っ飛ばす衝撃波を放ちます。夜に集団で緑色に点滅しながら浮遊しています。季節は問わず、何故か夜だけに発見できます。
・アカサボテン
真っ赤なサボテン。大きさは様々。ラサのあちこちに生えています。水分を多く含み、果肉はリンゴのような味と食感です。
何品作ってもOKです。幸いにも実験台になるお客様たちもいますし、ヒコマや従業員の皆さんも食べてくれます。
ガッツリ狩ってメニューを開発して、フククル亭に更なるお客様をもたらしましょう!
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
Tweet