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シナリオ詳細

<神異>嘘つき色鬼殺人鬼!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●鬼さんだーれだ?
 テッテケテッテ。まあるいフォルムの小さな鬼が、希望ヶ浜の町をゆく。
 ふんふんと鼻歌混じりに歩く様は子どものようで、楽しげなかれを目撃した女子高生も声を弾ませた。
「あっ、見て見てあれ! 色鬼じゃない!?」
 彼女が指差した先を、友人たちが真っ先に見る。
 そこでは愛くるしさもあるキャラクターめいた小鬼が、跳ねるように歩いていた。
「本当だ! 色鬼、可愛いよね~。あたしいっつも黄鬼を選んじゃう」
「何体いるんだろ。私、あのゲームいっつもすぐ吊られちゃうんだよね」
 すると学生らの『色鬼』という言葉に反応した大人たちも、小鬼へ意識を引き寄せられて「おおっ」と声をあげる。
「ゲームまんまじゃないか! すげえ、どうやって作った着ぐるみだ?」
「イベントか何かか? 着ぐるみにしては精巧な……」
 騒然とし始めた人々も、いつしか異世界から染み出した気配にのまれていく。
 希望ヶ浜地区の人々にとって、怪異も神秘もすべてが非日常。
 決して許容できるものではないというのに、知らぬうちにゲームと現実を混同し始めていて。

 ピピーッ!!!

 耳をつんざくホイッスルが場に鳴り響くや、集められた人々の前には――いつからか、血にまみれた犬の死骸があった。ざわつく人たちの中で、一匹の赤鬼が女子高生を指差す。
「この人が噛むとこ見ました! いま噛んだんです、今!」
「えっ私?」
 突然ターゲットにされた女子高生がキョトンとしていると、今度は青鬼が元気良く挙手する。
「俺もその場にいたゾ。通報した赤鬼とは、俺ずっと並走してた。コイツには何もできない」
「じゃあこの娘か」
「私たちの後ろを歩いてたものね、気付かないうちにやっててもおかしくないわ」
「え? え、待って……私じゃない! ずっと一緒にいたでしょ、ねえ!」
 周囲の眼が『犯人』として集う中、女子高生は友人たちへ縋る。
 だが友人たちは、自分たちは前を歩いていたからと理由を述べて彼女を突っぱねた。
「議論時間がもったいないわ、投票!」
「追放だ、追放しろ!!」
「色鬼は追放ダ! 一匹消えれば後が楽になるゾ」
 待って、話をさせて、と繰り返す少女の叫びは誰にも届かない。
 人々をくるんで流れゆく空気が、少女を追放する方向へと進んでいく。
「私じゃないっ、私じゃないから赤鬼までローラーして!」
「そう? ローラーする必要はないんじゃない?」
「この娘で確実に一匹落ちると思うけどな」
 明らかに人々の様子は一変しているというのに、誰もがソレに気付かぬまま、票を集めた少女をこの一帯から――この世界から追放していた。異世界へと消えゆく少女の悲鳴にも、目をくれずに。

●カフェ・ローレット
「おしごと。これ、知ってる? ゲームなんだけど」
 イシコ=ロボウ(p3n000130)が最初に見せたのは、携帯端末やゲーム機などにダウンロードして遊ぶタイプのゲームだ。様々な色の可愛らしい鬼たちが、根城らしい石の城をテッテケテと駆け回っている。
「ライトな人狼系ゲーム、っていう認識みたい。私、知らないけど」
 小学生から社会人まで、手軽にガチにならずに楽しめると噂のゲーム。
 そこから飛び出したかのような敵キャラクターの鬼たちが、街なかをテクテクしているという。
 もちろん、そういう夜妖なのだ。
 この夜妖の行動範囲内こそがゲームの舞台となり、そこにいる生物はゲームのルールに縛られてしまう。とはいえイレギュラーズは正気を保ちやすく、怪異を受け入れられない住民たちは、惑わされやすい。
「ゲームのルール。人狼ゲームを知ってる人は、わかりやすいかもだけど」
 中には、この『色鬼』ゲームをプレイした経験があるイレギュラーズも、いるかもしれない。
 カラフルな色鬼たちの住む楽園に、殺人鬼とも呼ばれる『嘘つきの色鬼』が紛れ込んだ。
 このゲームでは、嘘つきの殺人鬼を除けば、楽園生活を満喫しているいい鬼ばかりなのだ。
 そしてプレイヤーは、『殺人鬼』か『いい鬼』のどちらかに割り当てられる。
 殺人鬼となったプレイヤーは、ぬくぬくと楽園で生きる鬼を、他の鬼にバレないよう殺していく。
 いい鬼は、殺人鬼が誰かを突き止め、投票で追放するのが目的となる――のだが。
「その殺人鬼役の色鬼が……夜妖になってる」
 本来なら、イレギュラーズが色鬼を片っ端から倒していくのが手っ取り早い。
 ただ、住宅地ではなく繁華街ゆえに、一般人も多いのが問題で。
「鬼との戦い、人に見られたら……通報されて、こっちが鬼扱いされる可能性も、ある」
「え!? さすがに私たちと鬼との見分けはつくんじゃ……」
 イレギュラーズが当然の疑問を紡ぐと、イシコがゆっくり首を横に振る。
「現場となる一帯の人たち、滲み出した異世界の影響が強い、みたい」
 怪異も神秘も受け入れられない希望ヶ浜の一般人は、夜妖の放つ気にも侵食されかけている。
 そこまでイシコが話すと、唸っていたイレギュラーズから声があがる。
「倒すなら住民に疑われない工夫が要る。追放へ持っていくにも票数が要る、ということか」
「そう。あと、異世界へ追放された人……この鬼を全部倒すか追放できれば、戻って来る」
 だから住民にせよ仲間にせよ、誰かが追放されても、解決できるなら安心していい。
「変な夜妖だけど、油断はしないでほしい。よろしく」
 最後にそれだけ告げて、イシコは席を立った。

GMコメント

 いつもお世話になっております。棟方ろかです。
 異世界が滲み出た町のなかで、楽しい楽しい鬼ごっこをしましょう♪
 ちなみに棟方はこういうゲーム、すごく下手っぴです。

●目標
 色鬼一派の殲滅または異世界への追放

●流れ
 誰かが倒れる→戦闘不能者を発見した人が通報→全員が召集されて、議論&投票タイム→評決によって、追放するかしないか、追放するなら誰が追放となるかが決まる→会議終了。
 それ以外の時間で色鬼を探し回ったり、策や罠に嵌めるなどする感じです。

 人々は異世界と夜妖の影響を色濃く受け、冷静な判断がしにくいです。
 ですが会話や説得はできます。味方にするのも良いでしょう。
 また、通報があったタイミングで、戦闘不能者は異世界へ送られます。
 すでにゲームは始まっているため、イレギュラーズも現場到着と同時にゲームの登場人物の色鬼として、参加することになります。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●敵(ぜんぶ夜妖です)
・赤鬼×3体
殺人意欲の高い色鬼。殺人鬼である色鬼の中では好戦的かつ他者を煽りがち。
金棒でぶん殴るのが好き。あとなぜか、青鬼に容疑をなすりつける傾向にある。

・青鬼×2体
自分がシロいと思われる言動を優先しがち。そのため周りへの説得力がある。
アリバイ作りやシロを取りにいきつつ、不意にグサーッと刺す傾向に。

・黄鬼×2体
仲間の鬼へ情報を与え、偽装工作を優先する。
そういう意味では、色鬼の中で最も嘘つき。武器は弓矢。

・白鬼×2体
ねえねえ迷子になっちゃったー! 道案内してー右いく後ろいく?
あっ僕殺人鬼なんだよ殺害カウントダウンするねハイ3、2、1……!
無邪気に駆け回ったり、議論や場を掻き乱して不安にさせる狂人タイプ。

●Danger!(狂気)
 当シナリオには『見てはいけないものを見たときに狂気に陥る』や『反転に類似する判定』の可能性が有り得ます。
 予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。

●侵食度<神異>
 <神異>の冠題を有するシナリオ全てとの結果連動になります。
 シナリオを成功することで侵食を遅らせることができますが、失敗することで大幅に侵食度を上昇させます。

●重要な備考
 <神異>には敵側から『トロフィー』の救出チャンスが与えられています。
 <神異>ではその達成度に応じて一定数のキャラクターが『デスカウントの少ない順』から解放されます。
(達成度はR.O.Oと現実で共有されます)

 又、『R.O.O側の<神異>』ではMVPを獲得したキャラクターに特殊な判定が生じます。

 『R.O.O側の<神異>』で、MVPを獲得したキャラクターはR.O.O3.0においてログアウト不可能になったキャラクター一名を指定して開放する事が可能です。
 指定は個別にメールを送付しますが、決定は相談の上でも独断でも構いません。(尚、自分でも構いません)
 但し、<神異>ではデスカウント値(及びその他事由)等により、更なるログアウト不能が生じる可能性がありますのでご注意下さい。

  • <神異>嘘つき色鬼殺人鬼!完了
  • GM名棟方ろか
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年11月02日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
蒼穹の魔女
アリア・テリア(p3p007129)
いにしえと今の紡ぎ手
散々・未散(p3p008200)
魔女の騎士
天目 錬(p3p008364)
陰陽鍛冶師
ライ・リューゲ・マンソンジュ(p3p008702)
あいの為に
ブライアン・ブレイズ(p3p009563)
鬼火憑き
ヴィリス(p3p009671)
黒靴のバレリーヌ
御子神・天狐(p3p009798)
鉄帝神輿祭り2023最優秀料理人

リプレイ


 町には大勢の人。そこへ紛れ込んでいる殺人鬼。それを撃退に来た自分たち。
 手の平に拳を打ち付けて、『鬼火憑き』ブライアン・ブレイズ(p3p009563)は口端をあげる。
「そも最終的に色鬼どもを除外しきれば、勝ちなんだろう?」
 なるほど単純だと改めて考えれば、ブライアンのテンションも上がるばかり。
(残ると厄介そうなのから排除しねーとな)
 生き残りつつ作戦を遂行する仲間が多い中、彼は特攻を担う男。
 早速キシシと不気味に嗤う影ひとつ。黄色い体の鬼を発見し、ブライアンの眼光がキラリと光る。
(ビンゴだぜ)
 わざとらしく睨みつけて、黄鬼の動きを追いはじめた。
 一方、『希望の蒼穹』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)と『L'Oiseau bleu』散々・未散(p3p008200)だは、青鬼を探し回る。
「色鬼、聞き及んでおりますよ」
 繁華街特有の豊かすぎる色彩に手の平を透かして、未散がぽつり。
 けれど隣のアレクシアは、ちょっとばかり困り眉。
「私、あんまり得意じゃないんだよね……」
 がっくり項垂れるも、途端にぴょんと跳ねる。
「おーい、青鬼くーんっ」
 明るく手を振る彼女に気付き、単独行動中の青鬼が近づいてきた。
(さすがアレクシアさま……打ち解けるのも早くなりそうです)
 二人の会話を目の前にしながら、未散は相槌を寄せていく。
 ――こうして話を弾ませつつ動く人もいれば。
「敵か敵ではないか。それだけ人を見るのは……悲しいと思うのです」
 はじめから『あいの為に』ライ・リューゲ・マンソンジュ(p3p008702)は人々へ説いていた。
 殺される前に民へ伝えたいことが、彼女にはある。
「すべて受け入れろとは……申しません。ただ……拒まないで頂きたいのです」
「かんたんに言うなよ! どこに殺人鬼が潜んでるか判りゃしないのに」
 らあめんと書かれたエプロンをつけた男性が、反論する。
「安らかに終えられるよう……わたくしが努めます」
 心置きなくお過ごしを、と答えたところで彼らは顔を突き合わせて。
「しかしよ、そういうシスターさんが殺人鬼ってことも……」
「てなコトになったらコワイねぇ、痺れるネェ!」
 ――気付けば、いつのまにか輪に白鬼が混ざっていた。
 愉しげに掻き乱すや白鬼は、路地へと飛び込んでいく。それでもライはうろたえずに。
「私が貴方がたを裏切るなど……有り得ません……」
 背筋を伸ばして紡ぐライの話と眼差しは、清らかに人々を射抜く。
「共に信じ合い、乗り切っていきましょう」
 美しい銀を靡かせて話す彼女の姿を、声を、誰もが記憶に色濃く留めた瞬間だった。
 ワクワクが止まらないし『至高の一杯』御子神・天狐(p3p009798)の足も止まらない。
 爆裂疾走ガールの反応力(はやさ)についていける者は――。
「可愛い巫女サン、お話したいことがアリマス私」
 いた。にたりとした顔の黄鬼が。
「なんじゃ、情報をくれるのかえ?」
「エエその通り。赤鬼青鬼のツートップは騙しやすいデスカラ、上手く活かしてクダサイね」
 にししと笑った黄鬼が、猫背のまま立ち去るものだから。
(やはり早々に仕留めるべきじゃのう)
 天狐は決意した。
 そのとき近くを歩いていた『黒靴のバレリーヌ』ヴィリス(p3p009671)に電流が走る。
「ハッ……どこかで誰かの助ける声がするわ」
 雑踏に紛れながらもヴィリスは動き出す。
 そんな彼女を視界の隅で捉え、『いにしえと今の紡ぎ手』アリア・テリア(p3p007129)は雑踏をゆく。足取りは周囲の一般人同様、普通だ。
(まずは信頼を得て、味方を増やさないとね)
 殺人鬼に暗殺されるのを避けるため、アリアは慎重さへ天秤を傾けていて。
 生存班も銘々任務を遂行している頃、とある路地で響くのは。
「アァン!? ナンダこりゃ!」
 赤鬼が困惑する声。
 生存班の一人、『陰陽鍛冶師』天目 錬(p3p008364)だけでなく、居合わせた民衆も動揺していた。
 何故なら、素行の良くない赤鬼に殴り殺された学生グループの一人が、溶けるように消えたのだから。
「ゲームのように一方的にやれるとでも思ったか?」
 錬は赤鬼へそっと眼差しを向けた。物品へ情念や属性を篭めるのは、錬にとって慣れたもの。
 錬の練達上位式で生まれた式神が、只人を模っていたのだ。
 そうと理解した赤鬼は輪をかけて顔を赤くするが、対抗手段を手にした村人は――つよい。
「憐れな人狼、詐欺師、殺人鬼……いずれも世界の藻屑となれ。現行犯だ!」
 倒れた学生たちを元に、会議が始まる。


 ピピーッ!!!
 ホイッスルがけたたましく鳴り響き、大勢の人が一斉に召集された。
 初回はしかし簡単に票が集まるだろうとの確信が、錬にはある。現場にいた人の中心は、繁華街をブラつく若者たち。式神云々を話題に出さずとも、赤鬼の凶行を目にした者たちはさくっと投票を済ませていて。
「ドーセ青鬼の奴がヤッタンだろ?」
 別の赤鬼から突如名指しされ、青鬼が「えっ」と目を見開く。
「そうなのですか?」
 ふとライが尋ねると、青鬼はふるふるとかぶりを振ったものだから、未散が長い睫毛を震わせて紡ぐ。
「青鬼さまとは、片時も離れずおりましたので」
「そうだよ!」
 勢いよく席を立つ時の調子で、アレクシアが腹から声を出す。
「未散君も青鬼君も、今回私と一緒にいたんだから。そんな暇なかった筈だよ」
「そもそも目撃者が沢山いるのよね? 意識を逸らすにしてはちょっと雑じゃない?」
 ヴィリスも加勢したところで、ハッ、と明らかな嘲りで赤鬼が踏ん反り返る。
「乱暴モンだから怪しいっテカ? ヒトは見た目デ判断すんなッテ教わらなかったのカヨ?」
「ヒトじゃねーけどな」
 ブライアンが冷めた眼差しで赤鬼へ射るも、相手は動じない。
 ふむ、と唸っていた錬が上面図を広げ、皆が見えるよう宙へ映し出す。
「何なら各自のルートを具に教えてもらってもいいが」
 合間に作っていた上面図だ。目撃情報からアイコン代わりのピンまで、自由に動かせるようになっていて。
 煙に巻こうとした赤鬼が、舌打ちする。
 結局、錬や一般人の目撃証言により、掻き回されることなく赤鬼が吊られ――追放された。

 会議の後、図をしまった錬は粘つく視線に気付いた。
「……何か用か」
「イエ、ヒヒッ、大丈夫かなァと見てただけですカラ」
 不快な笑い声を漏らして、黄鬼は錬の視界から外れていく。
 ふ、と浅い息で錬は笑った。
「村の勝利を掴むまで、油断はできないな」
 何せ数と、人を惑わす夜妖という点で言うなら――敵の方が有利だ。
 目撃者の多かった会議を終え、散開した仲間たち。
 そのうちブライアンは、初手で標的としていた黄を追っていた。
「シツコいなぁ」
 策を弄するにもブライアンが邪魔だと判断し、黄鬼が飛び込んだのは。
 丁度一般人を殴り倒したばかりの、二体目の赤鬼の背中。
「大胆じゃねーか」
 ブライアンの一声に、赤鬼が乱暴ものの象徴らしい煽りボイスを鳴らす。そして。
「安心シナ、てめえモあの世に送ってヤルカラヨ!」
 宣言を終えるより早く、ブライアンへ殴りかかった。ひと気が無いのをいいことに、赤黄のタッグが彼を屠ろうとする。二種の技をぶつけられるも。
「残念だなァ、こっちにはパンドラっつーエースカードがあるからよォ」
 何度だって蘇る気概のブライアンからの殺人拳(プレゼント)は、鮮やかな轟音と共に標的へぶつかる。
「ハッハー! どっちが狩られる立場なのか教えてやるぜ!」
「ヒッ、ヒィィ、なんじゃコイツ強!」
「アンタも月までぶっ飛びなァ!」
 流れ作業のように慣れた手つきで、ブライアンは二体をぶちのめした。
 流石に騒ぎに気付いた人の目が入ったものの、彼に後悔はない。
(吊るされたって構わねえ)
 あとは――。
(残った仲間が上手いことやってくれるだろ)
 任せたぜ、と云う代わりの眼差しを仲間へ寄せたブライアンは、評決によって異世界行きが決まり、片手を軽く掲げながら旅立った。

 会議後も熱狂し始めそうな雰囲気で、誰が殺人鬼かと話し合う人たちへ、ヴィリスがウインクを贈った。
「安心して頂戴、私たちが無事終わらせてあげる」
「おおそうか!」
「殺人鬼はさっさと追放したいしな!」
 そこへ、ライも連ねる。
「皆で……尽力しますので」
「頼んだぜ、信じておくからな」
 そんな会話が為されている脇には、路に面したこの立食うどん屋がある。
 アデプトフォンの通話を切った天狐は、注文しておいたうどんへ箸をつける。
「ぷはあ、至高の一杯じゃ。ご馳走様じゃったぞ、ご主人」
 うどんを堪能した天狐が再び街なかへ歩を運べば、聞こえてきたのは。
「火が、火がついてる! 消化器は!?」
「今持ってく、おい群がるな邪魔だどけって!」
 騒然となる現場の近くで、さぁて、と天狐が深い赤の瞳を爛々と輝かせる。
 曲がり角の先で発生させたボヤが、注目の的となったらしい。ならば、この間に。
「いくぞい!!」
 超絶加速により、逃げる余裕も与えず彼女は黄色を轢く。
 アレクシアと未散からの連絡で、かれの位置を把握していたのだ。
「きっキミは……!」
 だが運が良いのか悪いのか、一人の青鬼――未散とアレクシアが一緒にいるのとは違う――がそこに居合わせて。
 すかさず天狐は、戦闘不能の黄鬼でレポートを入れる。
 召集された中で様子を窺う目撃者をよそに、天狐は淡々と場所と色を報告した。
 報告が終わるまでだんまりだった目撃者の青鬼が、そこで訴える。
「僕見たんだ。彼女が黄鬼を殺した瞬間を!」
 ほお、と天狐は片眉をあげて。
「急にわしを狙うとは驚きじゃな。ま、ローラーでもええぞい」
 天狐も慌てず推奨する。
「ローラー……悲しい事ですが、平穏の為にもやらねばなりません」
「必要ならしょうがないね!」
 そっと口許を抑えたライと、空気が沈みすぎないよう声を大きめにしたアリアも同調して。
 青鬼追放後の会議では、天狐も異世界へと追放された。


 希望ヶ浜の人に対して赤鬼が行った、理不尽な惨劇。
 一匹の猫が塀の上からそれを目撃したのと、同じ頃。
「……私、見たんだ」
「な、何ヲ?」
 神妙な面持ちのアレクシアに、序盤からずっと同行する青鬼が狼狽した。
「赤鬼君が……いろんな人を、キルするとこ」
「ホント!? えっでも僕キミたちと一緒に行動してたのに、イツ目撃……」
「だから後々、会議で赤鬼君を追い詰めたいんだよ。協力してくれる?」
 勘繰らせないようにアレクシアが言い募る。
「お願いいたします、青鬼さま」
 未散も大きなまなこで彼を見つめて。
「わ、ワカッタ、信じるヨ」
 耳を真っ赤にさせて、青鬼が必死に肯った。

「あんたミタイナたいぷ、早めに消えて貰いたいんダッテサ」
 白鬼から突然の死刑宣告を受け、なるほど、と錬は目を眇める。
 黄鬼から自分の位置情報でも得たのだろう。白鬼はニッコリしたままで。
「残念だ」
 ちっとも残念がらずに錬が溜息をついた絶妙なタイミングで、別所から死体報告があがる。
 再び一堂に会した中、錬は平常通りに図面を広げ、死体位置の報せを聞く。
 そして「最終位置は何処か」と彼が仕掛けた相手はもちろん白鬼。尋ねるだけで、人々の意識は傾く。
「僕電気屋から本屋の方へ行っタヨ? 猫以外誰もイナカッタね」
「おかしいな、このルートなら、俺とかが目撃されてないはず無いんだが……本屋近くで見たか?」
 錬が確認を取ったのはライとアリアだ。
「見かけていませんね」
「目立つ場所だから、通ったらわかると思う!」
 二人の反応が、錬の発言へ更なる説得力を持たせた。
「ヒドイよぉ、僕たのしく遊んでただけナノニ……」
 涙を滲ませた鬼へ、今度はひそひそと哀れみが集まり始める。
 雰囲気を察し、ヴィリスはこくりと喉を鳴らしてから、穏やかに言う。
「でもその経路を通ったのよね?」
「あっそうだ、そこのシスターが嘘ついてるんだよ!」
 ヴィリスからの質問を撥ね、白鬼は突然ライを指差した。
「このシスターさんはいい人だ」
 するとラーメン屋の男性が、すかさずライを庇う。
「言葉がキレイだからよ、人を手にかけるのも騙すのもしねーと思うぜ」
 そう評価した彼を、ライはただただ微笑んで認めるだけだ。
 結局、白鬼へ向けられた怪しさは拭えず、かれは吊されることとなった。
 その会議の終わり、アリアからの目配せを受けて、アレクシアと未散は頷いた。
 議論が終わるや、未散はアレクシアへ耳打ちする。
「参りましょう」
 二人は足並みを揃えた。今度は、常より一緒だった青鬼を置いて。
「ねえ青鬼君、あの辺がちょっと怖いから一緒に動いてくれる?」
 銀糸をゆらめかせてアリアが願うと、青鬼は気の良い人の素振りで快諾する。
 だから彼を連れて、ひと気が薄れる方へとアリアは進んだ。
「殺人鬼がこっちに来ていないと良いけどね!」
 知らない振りで混じり気ない歩みを連ねてみれば、ソウダね、と頷きつつ青鬼もついてくる。
(殺す隙を窺ってそうだから、早いうちに行動しておかないと)
 ビルの陰へ差し掛かったところで、アリアは用意していた血糊パックを――切り裂く。
「きゃーっ!」
 響くのは、青鬼が固まるぐらいの大音声。ストリートライブの賜物だ。
 響き渡ったそれに導かれて、なんだなんだと人が集まり出す。
「うう……あの人が、青鬼がいきなり凶器を振り回してきて……」
「えっ、え!?」
 青鬼はある意味、おいてけぼりとなった。


 議論の参加人数が、明らかに減っている。
 鬼に倒された一般人も多いからか、凄まじかった人いきれは薄れていて。
(でも味方は残せているわね)
 しかも町の人を味方に引き入れた仲間もいる。
 これなら、とヴィリスはほんのり頬をもたげた。
(こんな状況じゃなければ、楽しいゲームだったのでしょうね)
 仮面の奥でどのように瞳が揺れたか。それは本人にしかわからない。
「今回こそ青鬼ダロ」
「赤鬼さんは……青鬼さんに大切な方を殺されたのでしょうか?」
 潤んだ眼差しで率直にライが尋ねる。半ば煽りも含めて。
「ナニ言ってヤガル」
「先ほどから青鬼さんへの感情が……言い表せない程のもので」
 気まずそうな素振りでライが結うと、確かに、と民衆もざわつく。
 ライが有する扇動力は強い。彼女の言動も相まって。
 ここでヴィリスが、くすりと笑む。
「ここは素敵な舞台の上。踊りましょ、傷害の現場を抑えられた鬼さん?」
「今まで僕、真っ白ダッタんだよ? だよねキミたち」
 青鬼はアレクシアと未散へ助けを求めてきた。
 あまりに必死な形相だったもので、アレクシアが固まっている分、未散がかぶりを振る。
「今回はご一緒しておりませんでしたので、証拠を提供できません」
 事実を話した未散に、青鬼はへなりと座り込む。
「さっきまでの事もあるし、あの子らは白よね」
「どう考えても殺人鬼じゃない」
 アレクシアと未散に対する、希望ヶ浜の人たちからの信は厚い。
 しかし青鬼も折れなかった。
「白鬼くんダッテ、今回アリバイないよね?」
「そーなんだよー、僕殺すのつまんなくなってさー」
 なんとも緩んだ顔の白鬼だが。
「此方の白鬼さまへの白出しなら、ぼくが可能となります」
 つい、と挙手した未散がアリバイを結わえた結果、青鬼は綺麗さっぱり追放となる。
 これぞ、アリアのキャー私ってば鬼に襲われちゃいました大作戦!
「事件の被害者が、一番信頼と同情を買いやすいからね!」
 実に見事な作戦だ。

 会議が終了し、がらんとした町の通りで、白鬼は未散の隣へやってきた。
「いいのぉ? 僕ナンカに白出しして」
 確かめるような物言いに、未散が肯う。
「事実を述べたまでですから」
「ふうん、まいっか。ちゃんと殺したげるから、コンゴトモヨロシク!」
 気にするでもなく告げた白鬼は、行方を眩ませようとした赤鬼へ近付く。
 だがそんな二体の前へ、ライとヴィリスが立ちはだかる。
「お疲れ様……でした」
「残念だけれど、お遊びの時間は終わりよ」
「どゆこと?」
 首傾ぐ白とねめつける赤へ、ヴィリスは微笑む。
「さようなら、鬼さん。今度はただのゲームで遊びましょう」
 シャラリラ――。
 鬼二体の後方では、煌めくメロディと彩りが未散を包み込んでいた。
「すっごーい! 変身シーンだ!」
 はしゃぐ白鬼をよそに、変身バンクはカメラワークもバッチリで行われた。
「幕を落としましょう、鬼さま」
「僕の言動に対して、怒りも爆笑もしてくれないんダネ」
「……詰まらなかったでしょうか」
 未散が瞬ぐと、白鬼はうーんと考え込む。
「逆に新鮮かも。うん、こーゆーのもイイネ」
 少しだけ残念そうに呟いた彼と、舌打ちした赤鬼への手向けはただひとつ。
 三者三様の攻撃だけだった。

 異世界から一般人たちとブライアン、天狐が戻って来る。
「すげー所だったぜ異世界」
 嬉々として――というより苦々しそうにブライアンが皆へ言う。
「ああ、アレが色鬼たちの楽園って奴なんだろうなと思ったな」
「不思議な体験じゃったな」
「そういや、希望ヶ浜には出てこなかったけどよ、黒鬼もいたんだよな」
 ゲームだから居たのだろうかと、ブライアンは顎を撫でて唸る。
「いずれにせよ、げーむくりあ、じゃろう?」
 天狐がふふんと笑ってみせれば、ブライアンも不敵さを刷いて。
「ああ、後はスタッフロールを見物させてもらおうじゃねえか!」

成否

成功

MVP

散々・未散(p3p008200)
魔女の騎士

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様でした!
いろいろな作戦や行動をありがとうございます!
ハイパーでグッドな連携プレーや、個々のアクションの積み重ねなどで、華麗にリアル人狼風ゲームを制した感じとなりました。
ご参加いただき、ありがとうございました!

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