PandoraPartyProject

シナリオ詳細

糖紡ぎのエアツェールング

完了

参加者 : 16 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ブックカフェ『Book Bird Cage』
 幻想王国のとある街からほど近い森にある、大木。
 大雷に打たれ一度その木は死にかけたが、人々が手を掛け時間を掛け、今尚枝葉を伸ばし続けている。
 雷で穿たれたために出来た空洞に世話をするひとが住むようになり――そうしていつしかそこで物語を集め、訪う人へ茶や菓子を提供するようになった。
 ――『Book Bird Cage』。
 其処は、知る人ぞ知るブックカフェである。
 このカフェに集められている本は『普通』とは違う。
 店主が扱う魔法にて、語られた物語が『本』の形に編まれている。
 物語を綴る書の頁は、愛らしく囀る小鳥たち――。

「先日、『鳥』たちが逃げてしまったのだけれどね」
 男がローレットで口にするのは、そのブックカフェの話。
 鳥というのは逃げ出してしまった『物語』で、先日イレギュラーズの協力で『本』をもとに戻したばかりである。
 うっかりを起こしてしまった店主は反省し、暫くの間店を閉め、ひとつひとつの本を開いて読んで周り、おかしいところはないか、足りていないものはないかと、一層本たちへ心を傾けて過ごしていた。
 つまり、『浮草』劉・雨泽(p3n000218)が何を言いたいのかと言うと。
「営業再開するようだから、お茶をしに行かない?」
 日々依頼をこなすイレギュラーズにも休息は必要だ。
 秋らしく読書をしながらお茶を飲み、のんびりと過ごすのもいいだろう。
「僕のお勧めは、ケーキかな」
 Book Bird Cageで提供されているケーキ、『糖紡ぎのエアツェールング』。
 常連客たちからは『物語ケーキ』と呼ばれるそれは、少し変わったケーキなのだと言う。
 ふわふわなスポンジの上にたっぷりと生クリームの載った、一見開いた本のような見た目のケーキだ。けれど心に好きな物語がある場合、それは少し普通ではなくなる。
 フォークと一緒にガラスペンに似た小さなピックが供される。それを手に好きな物語を思い浮かべ、生クリームの表面を軽くなぞれば――、
「物語の一節が浮かび上がるんだ」
 そのケーキを口にすれば、きっと懐かしい味がすることだろう。
 触れて楽しく、目で見て楽しく、食べても美味しい。
 三拍子揃った素敵なケーキなのだと雨泽は笑った。
「ねえ、どうかな。食べに行かない?」

GMコメント

 ごきげんよう、壱花です。
 木の中にあるブックカフェへのお誘いです。

●できること
 読書、お茶、軽食……辺りを楽しむことが出来ます

●Book Bird Cage
 幻想の森、大木の中にあるブックカフェです。
 書の鳥たちが逃げ出し、イレギュラーズに依頼を出して解決してもらいました。
 https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/6679 ※読む必要はありません。

 内装は木造の家具で揃えられ、木肌の壁一面が書架となっています。
 座席は2~4人掛けの席(それ以上の人数の場合は机を合わせます)とカウンター。カウンター内では店主が珈琲サイフォン前に居たり、暇な時は読書をしています。

●Menu
 珈琲や紅茶と言った、喫茶店にありそうかなと言った飲み物や軽食があります。
『糖紡ぎのエアツェールング』の他にも食べたいもの等あればご注文ください。

●迷子防止のおまじない
 同行者が居る場合は一行目に、魔法の言葉【団体名+人数の数字】or【名前(ID)】の記載をお願いします。その際、特別な呼び方や関係等も二行目以降にありますととても嬉しいです。
 また、同行者の方とは送る日にちを合わせてください。

●NPC
 『浮草』劉・雨泽(p3n000218)が居ます。
 カウンター席でのんびりと読書をしています。お声掛けがありましたら反応します。

 それでは、素敵な一日となりますように。

  • 糖紡ぎのエアツェールング完了
  • GM名壱花
  • 種別イベント
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2021年10月18日 22時05分
  • 参加人数16/30人
  • 相談6日
  • 参加費50RC

参加者 : 16 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(16人)

ドラマ・ゲツク(p3p000172)
蒼剣の弟子
アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)
灰雪に舞う翼
ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
【星空の友達】/不完全な願望器
チック・シュテル(p3p000932)
赤翡翠
ジルーシャ・グレイ(p3p002246)
ベルディグリの傍ら
ヒィロ=エヒト(p3p002503)
瑠璃の刃
十夜 蜻蛉(p3p002599)
暁月夜
ロゼット=テイ(p3p004150)
砂漠に燈る智恵
美咲・マクスウェル(p3p005192)
玻璃の瞳
ヴィクトール=エルステッド=アラステア(p3p007791)
懐中時計は動き出す
散々・未散(p3p008200)
魔女の騎士
ブラッド・バートレット(p3p008661)
0℃の博愛
ルーキス・ファウン(p3p008870)
蒼光双閃
エドワード・S・アリゼ(p3p009403)
太陽の少年
囲 飛呂(p3p010030)
君のもとに
杜里 ちぐさ(p3p010035)
明日を希う猫又情報屋

サポートNPC一覧(1人)

劉・雨泽(p3n000218)
浮草

リプレイ

●木の中のブックカフェ
「幻想の森に、こんな素敵なカフェがあるなんて……!」
 木特有の温かみに、沢山の本たち。それらに幸せそうに視線を送った『希う魔道士』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)は、席に着くと『糖紡ぎのエアツェールング』と珈琲を注文した。
(召喚前は、自由に本を読む事はできなかったんだよね……)
 思い浮かべるのは、愛らしい猫が沢山出てくる本。
 生クリームの表面に肉球マークまで現れて、ヨゾラは思わず破顔した。
「ハァイ、こんにちは。アタシのこと、覚えていてくれたのね」
 開いた本からチチと響いた囀りに挨拶を送って暫し待てば、注文した紅茶とケーキはすぐに『月香るウィスタリア』ジルーシャ・グレイ(p3p002246)の眼前に置かれる。
「――『私の愛は永遠に、貴方の瞳の中に』……懐かしいわねぇ」
 文字を見つめれば鼻歌は鳴りを潜め、痛みを覚えた右目を手で覆う。
 約束を忘れた日はない。
 誰かへの呟きは、紅茶の湯気に紛れて消えた。
「へぇ~!! 綺麗な内装だな~!」
 一度訪れたものの、改めてそう思った『ドキドキの躍動』エドワード・S・アリゼ(p3p009403)は壁一面の本棚を見上げた。綺麗に本が並ぶ様は、見方を変えれば鳥たちがとまり木に止まっていることだと知っている。
「エド、声大きいにゃ」
「いけね」
 感慨深く瞳を煌めかせるエドワードに『少年猫又』杜里 ちぐさ(p3p010035)がすかさず注意をし、エドワードは慌てて口を両手で押さえる。ここはブックカフェ。ゆっくりと本を読みながら過ごす人が多い場所だから、図書館みたいに静かにしなくては。
 また会えて嬉しいと微笑んだ『埋れ翼』チック・シュテル(p3p000932)の傍らで『特異運命座標』囲 飛呂(p3p010030)があの席に座ろうと指をさすのは、四人がけのラウンドテーブルだ。
 注文を取りに来た店主と軽く言葉を交わし、四人は揃ってケーキを注文した。
「これが、『物語ケーキ』か」
 早速、とピックを手にした飛呂が開いた本の形をしたケーキをなぞる。
 すると、『彼女がはじめて僕の名前を呼んだ』と小さな文字が浮かんだ。
「お、本当に出た」
「それはどんなシーンなんだ?」
「少し前に読んだ恋愛小説の一文なんだけど……『名前を呼んでもらう』って、すごい嬉しいことなんだなぁって思ってさ」
「飛呂って恋愛小説を読むのにゃね?」
 明るく笑い合う姿に、チックがくすくすと笑みを零した。
「皆のはどんなのだ?」
「オレのは……こないだ話したラストの所のだな。ドラゴンとみんなが仲良くなってるところだ」
「おれは、おばけが、おばけが、色んな人と……友達になる、話」
「おばけの話にゃ?」
「おれの……友達に、おばけの子達……いて。あの子達も、そんな風になれたら……嬉しいなって」
「俺たちもチックの友達と友達になれるか?」
 俺たちがそうなれたみたいにさ。
 飛呂の言葉にチックは瞳を瞬かせた。
「ちぐさのは?」
「にゃ。まだ決めてないのにゃ。って、あ――」
 悩んでいる間にピックが触れてしまったちぐさは驚いた顔でケーキを見て、猫の話だったにゃと笑った。
「んああ! 食べるの勿体ないぜ~~っ」
「ん、わかる……」
 でも、食べないのも勿体ない。どちらの方が勿体ないかを天秤にかけて頬張れば、口いっぱいに広がるのは幸せの味。友達といっしょだからだろうか。いつもよりずっと楽しくて、とても美味しかった。
 カウンターへと足を向けた『散華閃刀』ルーキス・ファウン(p3p008870)は、そこに座す見知った姿へと声を掛けた。お隣宜しいでしょうか? への是は短く返り、カウンター越しに店主と挨拶を交わして『けーき』と紅茶と軽食とを注文すれば、他の人の見様見真似でピックを手に取った。
「君の話ではないんだ?」
「あれは、その……」
 それは流石に恥ずかしい。
 楽しそうに笑った雨泽が白いままのケーキを食べようとしている事に気がついて、ルーキスは良ければと声を掛けてみることにした。
「逃げ出した『書の鳥』たちを捕まえる時、雨泽さんならどんな物語を話したのでしょう?」
 そうだね……と悩むように首を傾げた雨泽は、少し間を置いてからピックへと指を伸ばす。
『そうして世界に、花の雨が降りました』
 それは、誰もが救われる話だ。
「ヴィクトールさま……半分こ、しませんか」
 そっと袖を引いての囁きに店内を見渡した『決死防盾』ヴィクトール=エルステッド=アラステア(p3p007791)は『L'Oiseau bleu』散々・未散(p3p008200)へと「そうですね」と言の葉を落とした。
 物語を綴るケーキに興味はあれど、普段食事を摂らない未散と殆ど口にしないヴィクトールにはたっぷりの生クリームは重たすぎる。ふたりでひとつで十分だ。ヴィクトールと未散のふたりは、ケーキをひとつと珈琲をふたつ注文した。
「あなたさまのベッドの隅で寝ている推理小説を覚えていらっしゃる?」
「誰かに頂いた本……という記憶はあります」
 然れども内容はどうであっただろうか。
 書き出しは、確か――ガラスペンめいたピックを未散が動かせば、柔らかな生クリームの上に文字が踊った。
『少し侘しい、秋の事――』
 ああ、そういえば。確かにこんな書き出しだった。
 この機に読み直してみるのも良いかも知れない。
 紅茶を注文した『言霊使い』ロゼット=テイ(p3p004150)は琥珀色の水面を見つめ、ゆっくりと時を過ごしていた。砂糖をかき混ぜ、ミルクをとろりと垂らし、渦巻状のミルクが瑪瑙模様に解けてゆくのを眺める。
 スプーンを動かせば香りが満ちて、茶葉の香りがより柔らかに、甘く甘く胸を満たす。
 カップを傾けること無くただ香りを楽しんだロゼットは、立ち上る湯気が薄くなってからやっと指を添えた。
「うん、ちょうどいい具合」
 のんびり上手もいれば、そうではない者もいる。
 『0℃の博愛』ブラッド・バートレット(p3p008661)にとっての休息は必要な範囲で身体を休め、食事も体に必要な栄養を摂取するものだ。そこに趣味嗜好が介入することはなく、如何に効率的であるかが優先される。
 しかし、甘味好きな友人曰く『ケーキはこころの栄養』なのだとか。
「なるほど、美味しいですね」
 どう作用するのかは解らないが、ただ確かに、そう思うのだった。
「ボクこのお勧めのケーキね!」
 ふたりで並んで座ったカウンター。肩を触れさせあいながらひとつのメニューを覗き込んだ『激情の踊り子』ヒィロ=エヒト(p3p002503)は、メニューの文字を指差した。『あの虹を見よ』美咲・マクスウェル(p3p005192)はカステラを選び、ふたりでシェアしようと持ちかければ、笑顔と大きな頷きが返ってくる。
「ねねね、せっかくだから二人で一緒にピック握ってみようよ!」
「一緒に? ええ、やってみようか」
 そうすれば、浮き上がる物語がどうなるのか解らない。
 指を触れさせながらふたりでピックを摘み、ケーキをなぞって、現れた文字に笑い合う愛しいひととき。
「美咲さん、あーん」
「……ん、美味しいね。はい、ヒィロ、あーん」
 愛しさと美味しさで、ほっぺが落ちてしまいそう。
 『狐』は幸せに頬を抑えて微笑んだ。
 洋菓子にあまり馴染みのない『ひまり』は、メニューの文字を辿っては『暁月夜』蜻蛉(p3p002599)にこれはどんなものかと尋ねた。
「どれも甘うて美味しいはずよ」
「では、これにしてみます」
 ふたりの間に甘い香りが広がれば、蜻蛉がピックを手にとって。


 ――『叶わぬ恋と分かっていたけれど、月が綺麗だったの……今もずっと』。
 浮かび上がる文字は、一匹の黒猫が人間の男の人に恋をするお話。
「……ねぇ、ひまりの頼んだお菓子も、ひと口頂戴?」
「はい、どうぞ。けれど蜻蛉さん、猫さんの恋はどうなるのです?」
「さぁ? どうなったのやろか」
 蜻蛉は淡い笑みをかんばせに浮かべ、答えをはぐらかしてケーキを一口。
 はぐらかされたことに気付いたのだろう。ひまりは瞬いて、けれど敢えてそれを口にはしない。
 けれど――、
「また……蜻蛉さんがこちらへ来てからの物語も、聞かせて下さい」
 良ければ、また。
 ひまりもまた、頬にまつ毛の影を落として紅茶を口にした。
「ふたりへのお土産はどうしようか?」
「ワガハイ、ケーキの隣にテイクアウトのクッキーが売られているのを見たニャ」
「流石ソマリ! 買って帰ろう!」
 エアツェールングと珈琲とミルク、それぞれひとつずつ注文した『灰雪に舞う翼』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)は、一緒に席についたツナ缶海賊団の海賊船長『ソマリ』へと笑顔を向けた。ソマリ曰く、本の形のクッキーだったとのこと。今日はお留守番のふたりも、きっと喜んでくれることだろう。
「物語かぁ」
 歌になっているのしか知らないアクセルが「ソマリは?」と尋ねれば、船長だけあってか知識豊富な様子。
「海の冒険の物語ならいくらでも出てくるニャ」
「本当!? どんなのかな?」
 ピックを手にした船長の手元に、アクセルの瞳は釘付けとなる。
 しかし、小さなケーキには一節しか現れない。
「ねぇソマリ、続きも聞かせてほしいな」
「うむ。あれはワガハイがまだ船長ではなかった頃の話ニャ……」
 歌にできそうなくらい、とても長い話となりそうだ。
 店内に静かにポコポコと響く、サイフォンの音。
 時折はらりと響く、誰かが頁を捲る音。
 注文を済ませた『蒼剣の弟子』ドラマ・ゲツク(p3p000172)は落ち着く音に耳を澄ませながら、書架を見て回った。ここに集められている本は『誰か』が話した物語ばかりで、ドラマの知らない物語で溢れている。
 ひとつ手に取り、席へ戻る。
 景色の一部になって、はらり、捲る。
(そういえば、あの本は……)
 文字を追えば、ドラマは或る王子様の物語を思い出して。
 人々は、書の、心の、思い出の、物語を辿る。
 CLOSEDの看板が掛けられ、明かりが落とされて。
 物語の舞台の幕が静かに、優しく降りるまで。


 ――【CLOSED】――

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

素敵な一日となっていたら幸いです。
きっと、全ての出来事がみなさまという本の中の一頁。
これからも沢山綴っていってくださることを、楽しみに。

ご参加、ありがとうございました。

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