シナリオ詳細
殺人錬金術師の魔物化復讐劇
オープニング
●殺人錬金術師の逃亡劇
――我々の錬金術は黄金と云う物質の練成を目的としない。
殺人技術と云う名の冶金術の練成こそを目標とする。
――殺人錬金術の研究概説書
其の事件は熾烈な雨嵐が吹き荒れる深夜頃に突如起きた。
絶島に在る断崖絶壁の上で二人の男達が苛烈に言い争って居る。
「リチャード、今からでも遅くない! 研究所に謝罪しろ!」
取っ組み合いで争う男の内一人は研究施設警備隊の隊長である。
「嫌だジョン! もう此処には居たくない! 死んでも逃げ切ってやる!」
押さえ込む男の顔面を殴り飛ばすもう一人の男は研究部門の主任である。
要するに「リチャード」と呼ばれた男が脱走を試みたが追い詰められた所だ。
崖縁に立つ彼を警備隊が包囲して居るので逃げ道は正に絶たれた事だろう。
「……おい、早まるな! 荒波に飛び込んでも遭難して死亡するだけだぞ!」
血反吐を拭う「ジョン」が最後の賭けで友人とも云えた男に怒鳴り散らす。
リチャードは白衣のポケットから錠剤を取り出すと口内へ即座に放り込んだ。
「ありがとなジョン? だが、俺は……お前らなんて呪ってやるさ!」
別れ際の言葉を吐き捨てるとリチャードは決死の覚悟で大海へ身を投げた。
ジョンは旧友が自決を遂げた物と判断すると不覚にも泣き崩れてしまった。
――魔導理論研究所が俺に、そして俺の家族にやった事を決して許す物か! 俺は……アンデッドに成ってでも復讐してやる! 今に見ておけ、研究所の屑共め!!
リチャードは『練達』国内でも将来を有望視された篤実な研究者であった。
錬金術研究の腕を買われた果てに此の研究所へ拐かされたのである。
彼が任命された研究テーマとは犯罪に応用する為の「殺人錬金術」であった。
――所長は、研究と引き換えに俺の身分と家族の安全を保障してやると言っていた。だが、其れは全くの詭弁。俺自身は凋落した犯罪者に成った上、家族の方は皆殺しにされたと密偵の手紙から知った。俺は、此の研究所で全てを失ったのだ……。
●殺人錬金術師の復讐劇
「今回、皆さんにお願いしたい事は『リッチ』と云う魔物の討伐依頼です。『練達』海域の無人島に在る廃墟寺院を魔物軍が占拠して居るので排除して貰いたいのです」
『鉄騎学者』ロゼッタ・ライヘンバッハ(p3n000165)があなた方に依頼を提案する。
一先ず魔物討伐の依頼なのだが、今回は入り組んだ事情も有り難儀な様だ。
「もっとも、今回の目標は魔物の全滅と云うよりはボスである『リッチ』を撃破出来れば良いそうです。『リッチ』は今こそ魔物として跋扈して居ますが元は人間でした。彼は『リチャード・リチャーズ』と云う固有名を持つ有能な錬金術師だったそうです」
彼女の口調から察する所、問題と成る魔物には人として物語が有ったそうだ。
時に其の魔物討伐の依頼主とは治安を憂慮した『練達』三賢者辺りであろうか?
「今回の依頼主は『練達』海域の絶島に在る魔導理論研究所からです。実は『リチャード』は彼らのかつての幹部です。彼は犯罪に利用する『殺人錬金術』と云う禁忌の術を研究する主任者でした。お察しの通り、黒い噂が絶えない胡乱な研究所ですね。
紆余曲折あって組織と決裂した彼は、脱走した挙句の果てに魔物と成って無人島の廃墟寺院へ逃げ延びたそうです」
要するに今回の件は、悪徳研究所から逃亡した裏切り者の始末依頼とも云える。
錬金術に長けた彼は島の崖から身投げする際に魔物に成る薬物を盛った様だ。
「先日、私達情報屋が事前に調査した時、『リチャード』は其の寺院を研究拠点にした上で魔物の練成をして居ました。彼は魔物軍を率いて魔導理論研究所に対する復讐でも企てたのでしょう。
廃墟寺院を攻略する際には、建物が古びて居る上に魔物が屯して居る事が予想されます。危険な冒険に成るかもしれませんが、どうかお気を付けて下さいね」
敵地は廃墟と雖も魔物軍の研究所と成る今では彼らに地の利があるのだろう。
だが流石に元仲間の討伐は始末が悪い為、此処は特異運命座標の出番である。
- 殺人錬金術師の魔物化復讐劇Lv:20以上完了
- GM名ヤガ・ガラス
- 種別通常(悪)
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2021年04月27日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●道中
『練達』海域沖に在る無人島には太古の魔術文明に栄えた廃墟寺院が点在する。
特異運命座標達は殺人錬金術師の研究所と化した其の寺院で本日討伐に臨む。
「ふむ? この柱は建材の色に差異がありますね? しかも何かを動かして隠した痕跡も地面にあるようですが。……間違いなく、罠でしょうね」
隊列を先導する『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)は細心の注意を払い乍ら仄暗い廃墟寺院の攻略に歩みを進める。寺院には数多の罠が仕掛けられて居る為、黒傘に仕込まれた愛銃で爆発物を処理して皆の安全を確保する。
「おや? これは……?」
罠解除の道中で寛治は銀色に輝く懐中時計を拾い上げた。時計の蓋を開けると其の中には幸せそうな家族写真も有る。戦術が閃いた寛治は遺失物を懐に収めると微笑した。
「全く、その魔導理論研究所とやらも殺人錬金術とかもだが……人様に迷惑はかけんで欲しいな。……練達でたまに見かける魔術文明跡のようだが、何かの研究施設だったのか? いや、まぁ、今は考えないようにしておこうか」
『こむ☆すめ』マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)は罠解除に励む寛治の後ろから扇を振るい仲間達に聖魔術の加護を授ける。魔物が屯する寺院では何時襲撃されるか分からないので参謀である彼女は戦力面の強化を図る。
「おっと!? そこの壁の背後と新田の足元付近に魔物がいる! 奇襲に注意だ!」
マニエラはケモ耳をぴくりと微動して獣の本能で察知した不意打ち情報を周知する。
「錬金術って脚作れたりとかするんですかねー? いや、仮に作れたとしても私は生きた者から頂く方が好みですがねー。今回は名のある方を始末して良いとの事なので張り切っちゃいましょー」
敵襲に備えるマニエラの傍らで『《戦車(チャリオット)》』ピリム・リオト・エーディ(p3p007348)が五感を総動員し乍ら壁の崩れた曲がり角や奇怪な実験機具に警戒して前進する。
「おや!? こっちにも魔物が潜んでいるのですねー? 私にお任せですー!」
大百足の本能から奇襲を紙一重で回避したピリムが紅き柄の妖刀で迎撃に出る。
快楽殺人鬼の血塗られた奥義で黄金殺人蜂の脚部を鮮やかに解体した。
「オラオラ! 雑魚の頭数を潰すのは俺に任せろ! マニエラとピリム、仲間達を頼むぜ! 特に後衛な! 俺が前に出っからよ!」
鋼鉄のAG(アームドギア)に武装した『倫理コード違反』晋 飛(p3p008588)が起動音を轟かせると迎撃に現れた魔物群と勇敢に対峙する。
作業を妨害する殺人骸骨兵、罠を張る黄金スライム、鋭利な針の黄金殺人蜂を往なし乍ら、飛のAGが炸裂爆弾の如く廃墟寺院に戦火を吹き荒す。
「……過去に何があったか知らねぇし興味もねぇ。依頼だってんならやるだけだ。……まぁ、依頼主の方も気に入らねぇがよ。いつか、そっちの相手をすることもあるかもしれねぇな」
銀城 黒羽(p3p000505)が中衛で呟き乍ら寺院の罠を探る。
遊撃隊で暴れ回る飛が撃破した魔物達の痕跡を辿り罠の類を看破する。
「連鎖爆発したら無事ではすまねぇよな。味方の為にも各個撃破して進むしかねぇ」
「殺人錬金術の研究か。冶金関連で俺も嗜んでいるがこれまた胸糞悪い話なことだ。とはいえ、魔物と成り果てた以上は止めなくてはな」
黒羽の傍では錬金術に造詣が深い『陰陽鍛冶師』天目 錬(p3p008364)が罠の解体作業に精を出す。
職人魂が逞しい彼は錬金罠の反応を精査して自爆装置を除去する。
「さて、明らかに黒い『研究所』とやらではあるが、さりとてリチャード氏を放置するわけにも行かず……やれやれ、貧乏くじというやつかな。ま、引き受けた以上、仕事は遂行するさ」
後衛では『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)が進路の指揮を執る。
リチャードが潜伏して居るだろう最奥の研究室を目指して予測し乍ら行軍する。
「なんかイロイロ裏事情あるらしいな? ま、オレは金貰えりゃいーや」
ゼフィラの隣では『悪しき魔女』極楽院 ことほぎ(p3p002087)が索敵を手伝う。
五感が繋がる鼠の遣い魔を放ち周辺情報を把握してゼフィラに詳細を報告する。
「……そうか、ありがとう、ことほぎ。マッピング作業が捗って助かるよ」
「おう! んじゃ、次の要所の地形や罠も引き続き探っとくな!」
ゼフィラはことほぎ経由の情報を手元の電子端末に記載して地図を描く。
彼女は抜群の方向感覚と記憶能力も活用して寺院の攻略路を割り出すのだ。
●集会場
ゼフィラの周到な地図作成術に誘導されて一同は寺院の集会場へ辿り着く。
広大な集会場の最奥に現研究室が在る為か魔物の迎撃が激化して居る様だ。
「げっ、魔物が増えたな? 後衛のオレらにまで手が回るかよ!?」
ことほぎは絶海の呪い唄を奏でると殺人剣を振り被る骸骨兵共を迎え撃つ。
魔女の妖しい呪いで魅了された魔物共は殺人剣で同士討ちに明け暮れる。
「ほらよ、もう一発オマケだ! 地獄に還れ、骸骨!」
更なる追撃で真紅色の煙管を吹くと暗黒の魔煙が亡者共を呪術で蝕んだ。
「ふぅ、流石に目的地に近付くと魔物が多いか?」
ことほぎが骸骨兵を撃退するのと背合わせにゼフィラが聖光を詠唱する。
地面で蠢く黄金スライムが粘液を撒いて足止するが神気で浄化された。
だが順調に撃破する二人の背後から黄金の魔法陣が殺意の稲光で劈いた。
「なっ、なんだ、今のは!? って、まさか、キミは……リチャード!?」
「そうさ、俺は錬金術師のリチャード。さては……あの研究所が放った刺客か!?」
リチャードは物質透過の術で古壁を擦り抜けると危うい炸薬を投擲する。
ことほぎから治癒の光で援護されてゼフィラは魔導砲撃で反撃の一手に出る。
「やるな、リチャード……。ふむ、そこか!?」
物質透過が封殺不可でもゼフィラの全力砲撃は歪な壁を破壊して敵将を貫通する。
「くくっ、やるなお前ら? だが、これなら……どうだ?」
殺人錬金術師は黄金魔法陣を中空に連続練成して不可視の線から罠を爆ぜる。
道中から罠解除に傾注して居た黒羽は危機感を募らせて前衛に駆け付けた。
「恨みたいんなら勝手に恨め! 死にたくないなら殺してみせろ!」
対する黒羽の方も黄金の気概で睨み付け乍らリチャードを挑発する。
(俺はともかく、今戦力を失っている余裕はないからな。それに、発動したとしても、罠の張り方の癖からどこで爆発するか予測も出来る!)
寺院内の罠が錬金術を切欠として前方から起こる連鎖爆撃を黒羽が受け止める。
「おらぁ! どうした殺人錬金術師? 俺はこの程度じゃ殺せねぇよ!」
黒羽は主にマニエラを庇って居たが、猛爆撃を其の一身で被爆しても啖呵を切る。
奥義の炸裂ではあったが、仲間達の罠解除も功を奏して被害は最小限に抑えられた。
「皆、大丈夫か? 誰一人落ちてないだろうな?」
マニエラは護戦扇で生命の舞いを踊り乍ら天使の福音で傷付く仲間達を癒す。
参謀の指揮力を発揮して味方方々に回復を送り届けると即座に態勢を立て直した。
「黒羽、ありがとう! でも傷だらけじゃないか! 無理はするなよ?」
「あぁ、わりぃ。頼むな、アンタの回復が必要だ」
錬金術の秘技で被爆した黒羽がマニエラを庇った訳は回復の要で在るからだ。
マニエラは的確な分析力で黒羽の状況を見切ると更なる鼓舞で彼を活気付けた。
「邪魔だけはしないで頂けますでしょうか?」
必殺の錬金爆破で方々に被害が散る中で寛治は魔物配下を蹴散らして居た。
黒傘から鋼の驟雨とも云える銃弾を連続射撃して友軍の被害を食い止める。
「寛治も無茶はするなよ? さあ、受け取ってくれ!」
「すみません、恩に着ます」
マニエラ指揮下の神秘効力で健闘する寛治に聖なる加護が降り注がれた。
実力を跳ね上げた寛治は魔の凶弾を装填すると銃口から死神の狙撃で必殺を放つ。
「ち、強敵揃いだな……。ここは一時退くか……」
熾烈な狙撃術を浴びたリチャードは壁や柱を透過して後方へ退く。
猛速度で逃走する彼に対して百足の如く速度が素早いピリムが追跡する。
「どうして逃げるんですかー? せっかくの命の取り合いを放棄するなんて勿体ねーですねー」
リチャードの背後から殺人剣を繰り出すと居合の一太刀で胴と脚を斬り捌いた。
リッチには脚がない為に切断は難儀であったが、斬撃の重みは確実に叩き込んだ。
「おい、お前ら! 俺が逃げる退路を塞げ!」
ピリムからの痛恨の追撃で逃げ惑うリチャードが魔物配下を召喚して楯を造る。
骸骨兵の部隊や殺人蜂の群れが退路で援護すると其処にAGが割り込んだ。
「おいコラ! どけよ、魔物! なんだったらよ、俺と殴り合おうぜ?」
AGは余計な武装を取っ払うと裸の拳を剥き出しにして鋼鉄の打撃で挑発する。
飛は気合で身体能力を向上させると骸骨兵や殺人蜂を憤怒の闘争に巻き込んだ。
「すまない、ここは任せていいな? 俺は奴を追う!」
錬は魔物の壁との激闘を引き受けた飛に礼を述べて殺人錬金術師を追跡する。
式符から無数に鍛造された錬金木槍が魔物を薙ぎ倒すと敵将に強刃が届く。
「錬金術で勝負、とも思ったがこんなナリではな? あくまで錬金術は復讐の手段でしかないか?」
「ふん、お前に何が分かる? あの悪徳研究所に復讐するのが今の俺の錬金術さ」
リチャードは悪態を吐くと炸薬の劇薬を撒き散らして錬を苦闘させた。
錬は歯を食い縛るが、錬金鍛冶師の矜持と底力で敵将を錬金槍で追い詰める。
「……創造の秘術の学ぶ方向が壊すためだけとは哀れな事だ」
「ふふ、若造め。今に分かるさ、お前も悪漢に裏切られてみればな……」
殺人錬金術師は不気味な嘲り笑いと共に透過飛行で後退して消え去った。
●決戦
特異運命座標達は集会場で魔物群を撃破すると後退するリチャードを追い駆けた。
最奥の研究室へ辿り着くと殺人錬金術師と決戦の火蓋が切って落とされた。
「追い詰められて青褪めているのですかー? まー私には関係ねーので先制攻撃、頂きますねー」
魔導機具で溢れる乱雑な研究室に立ち入るとピリムが跳躍して妖刀を振り翳す。
安全域の限界速度を突破したピリムが四肢損尊の殺人術を抜刀して斬り込んだ。
「良き顔ですねー、何か辛いことでもあったんでしょーかねー?」
「ぐはっ、厳しい一撃だな……? 反撃の覚悟はいいな?」
リチャードは殺人魔法陣を詠唱練成すると黄金の刃がピリムを鮮血に染める。
ピリムは運命の欠片を手放すが、其の侭敵将の懐に潜り込むと更なる斬撃を繰る。
「いてーですねー。そっちこそ再反撃は受けてくれますよねー?」
刹那に煌めく真紅の刃から華麗な殺人斬撃と殺害拳法の連撃を神速で浴びせる。
確実な殺人術で着実な先手必勝を遂げたがピリムは深手を負って一時退却する。
「リッチのホームなんで、逃げ回られると不利じゃん? 怒らせてここで戦ってもらおうっつーハラ」
研究室では亡き家族の報復に向けた研究レポートの数々が雑多に散って居た。
ピリムがリチャードと激烈な攻防戦を交わす中、ことほぎは研究室を悉く破壊する。
「こら、お前! 俺の貴重な研究を荒すな!」
ピリムとの一戦を終えた殺人錬金術師がことほぎを牽制するべく炸薬で狙い撃つ。
ことほぎは血塗られた殺人魔法陣で運命の断片を奪われても愉快に苦笑して居た。
「へへっ、監獄島の魔術って味わってみるか? ……逃がさねーよ?」
ことほぎは煙管で魔煙を吹くと悪意に充ちた魔女の黒き魔弾を撃ち放つ。
地獄の業火と悪魔の猛毒で魔物の身体を蝕みつつも悪夢の魔弾が窒息を狙う。
だが流石に此れ以上の反撃は厳しいと判断したことほぎは脱兎の如く後退した。
「オラオラ、逃げてっとどんどん破壊しちまうぞ!」
飛は怪しげな研究道具や自爆装置の罠をAGの拳で叩き潰して挑発して居た。
ことほぎらが殺人錬金術師との対戦中は彼が配下魔物との戦闘を担当する。
「へへ、俺の相手はテメェらってとこか? どっからでも来いや!」
多勢に無勢であったが飛が怒りの鉄拳で敵勢を往なしたお陰で戦況は好転した。
だが飛の活躍が目覚ましかったばかりに殺人錬金術師が彼の前に立ちはだかる。
「ふぅ、また鼠が沸くか? おいお前、自爆装置は何処にあると思う?」
「さあな? ま、テメェがどこでなにを守ろうとしているか、だろ?」
飛は空笑いし乍らも実際に物理的罠の大半を破壊し尽くして居たが……。
殺戮の魔法陣連鎖が炸裂すると意外にも魔物其の物が自爆装置で大爆発した。
「な、バカな……!?」
飛は魔物自爆で運命の欠片が散るとAG稼働率の残量を暗算して撤退する。
「……ふむ。錬金罠の解体はこんなもんか?」
錬金術の装置や細工が仕掛けられた研究室で錬は一個ずつ解体して居た。
道中の罠や魔物を解析した結果、薬学化学の知性で自爆装置も無効化する。
「さて、俺も戦闘に加勢するか!」
錬は式符に祈りを込めると氷結された薙刀を鍛造して払い技を繰り広げる。
殺人蜂やスライムが錬の快進撃で薙ぎ倒されるがリチャードは冷笑する。
「先程の錬金術の若手か? そら、此れが俺からの回答だ!」
禍々しい黄金方程式が発動すると魔物其の物が意外にも連鎖自爆する。
爆破された錬はパンドラの閃光が砕けつつも反撃と云う回答を諦めない。
「はは、なかなかの威力だな? だが、アンタの錬金術は間違っている!」
錬は式符から夜空に煌めく火炎の如き星々を召喚して最大威力で撃ち放す。
近衛兵ごと敵将を灰燼に帰すが如く焼き尽くして爆発させた。
錬金爆破対決で負傷した錬は此処で退いたが敵将には確実な打撃を与えた。
「……くっ、皆で努力はしたが、黄金の殺人連鎖術は発動されてしまったか?」
飛と錬の付近で魔物配下を聖魔術で撃退して居たゼフィラが苦言を漏らす。
彼女の頑張りで魔物数を削れたが魔物自爆は起こるべくして起こってしまう。
「皆、無事か!? だが、大事なのは……今、皆を立て直すことだ!」
運命の破片も共に爆裂しようともゼフィラは治癒の光で先ず己を奮い立たす。
痛烈な錬金術奥義で被害を受けた仲間達に癒しの光を分け与えた。
「まずは最低限の生命線の確保。そして、継戦能力の維持は……妥協しない」
ゼフィラが皆を癒し鼓舞したお陰で友軍の活力と活動は持ち直せた。
「へっ、効かねぇよ、そんな下手な錬金術! ……殺ってみろよ?」
「ふふ、ふはは! そんなに満身創痍に成って迄、まだ立ち上がるのか?」
リチャードに対峙する黒羽は魔物自爆を避けたものの黄金の殺人術に苦戦する。
黒羽は後衛を庇う為こそ黄金の刃を刻まれても不屈の闘志で立ち上がり続ける。
「ならば……。これでどうだ?」
「ま、まさかお前も黄金を遣うのか!?」
不殺を基本信条とする黒羽は一切攻撃せずに幾ら打たれても楯の役目を護り切る。
剛毅の型から黄金闘気を解き放つと攻撃直後で油断したリチャードを絡め取った。
「黒羽、どうかそのまま立ち続けてくれ!」
黒羽が庇うべき後衛であるマニエラは彼の背後から天使の癒し唄で援護する。
「新田も無事か? 行動力は確保出来ているか?」
更にマニエラの後衛に居る寛治には強化援護の術で彼の反撃へと繋ぐ。
「黒羽に新田、私の傍から離れないでくれ?」
マニエラは星廻の領域の統率力を維持して仲間の実力の底上げもする。
彼女が献身的に援護する事で長期戦も最後迄戦い抜ける事だろう。
「貴方が化け物に成り果てて、亡きご家族はさぞお嘆きでしょう。名前は、ええと……?」
撃ち合いをする寛治は黒羽とマニエラの背後で援護され乍らも駆け引きに出た。
寛治は事前に「ジョン」から仕入れたリチャードの家族情報を利用して焚き付ける。
「な、何故、俺の家族の……名前を知って居る!?」
寛治が揺さ振りを掛けるとリチャードは意表を突かれた様に動揺した。
効き目を実感した寛治は更なる動揺を狙うべく道中で拾った懐中時計を開く。
「これが何かお分かりですよね? 家族を守れなかったのは、偏に貴方の責任でしょう。研究以外に何もできなかったのですね。お悔やみ申し上げます」
「そ、其れは……俺の家族の時計だ! 返せ! 返してくれ!」
殺人錬金術師が取り乱して隙を見せると寛治は勝負があったと微笑する。
寛治は死神が嘲るかの如く愛銃から魔弾連撃を放ち哀れな錬金術師を始末した。
●事後
――こいつは、俺の下らない自己満足だ。アンタの今までの痛み、苦しみ、哀しみ……全部俺がもらっていく。……だから、大人しく眠っとけ。
殺人錬金術師を破った直後、黒羽は其の死骸の肩に手を添えて黙祷する。
挺身の闘気がリチャードを包み込むと敵同士で在った二人は苦痛を分かち合えた。
――全く、混沌でも人同士の殺し合いの技術が磨かれているとはな……。
錬は寺院に残存する錬金術資料をゼフィラ、マニエラ、ピリムと共に回収する。
彼らは研究所に関する情報を纏めた後、三塔主に提出して報告する積りだ。
――俺はこいつを笑えねぇわ、次は幸せになるこった。……なんせ俺も裏切られてちっと理解出来ちまったからな……。
飛は破壊された寺院を墓標にして持ち込んだ麦酒を寛治やことほぎと呑む。
殺人錬金術師を追悼する事で彼は自身の在りし日も投影して居たのかもしれない。
了
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
シナリオ参加ありがとうございました。
今回は練達海域を舞台にした悪属性の始末依頼でしたが、
皆さんのダークヒーロー(ヒロイン)ぶりが輝いていました。
GMコメント
●注意事項
この依頼は『悪属性依頼』です。
成功した場合、『練達』における名声がマイナスされます。
又、失敗した場合の名声値の減少は0となります。
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
●目標
殺人錬金術師リチャードの討伐
(リチャードが敗北すると配下の魔物達は消滅します)
●ロケーション
『練達』海域に在る無人島の廃墟寺院に殺人錬金術師が潜伏して居ます。
彼は其処を改造して組織打倒の為に魔物軍を練成する研究拠点にしました。
寺院内は広いですが廃墟の為、足場が悪くて障害物も有ったりします。
現研究所と成った寺院内は魔物も多数潜伏して居ますのでご注意です。
●敵
殺人錬金術師のリチャード×1体(ボス)
魔導理論研究所の殺人錬金術研究部門を仕切って居たかつての研究主任です。
現在は組織から逃亡してアンデッド系魔物の「リッチ」と成りました。
研究者の高い知能を備えて居る上に魔物の力も手に入れた強敵です。
戦闘方法は以下。
・危うい炸薬(A):
フラスコで投擲攻撃です。神中単ダメージ。BS致死毒、炎獄。連。
・魔物の練成(A):
魔物の配下を練成して創造します。神特レ。ダメージなし。
・黄金の殺人術(A):
殺人魔法陣を練成して放ちます。神遠域ダメージ。識別。万能。
BS失血、魔凶、呪い。弱点、災厄。
・EX 黄金の殺人連鎖術(A):
通路、壁、障害物、魔物に仕掛けた錬金術の自爆装置で爆破させます。
付近に居ると大ダメージの被爆か戦闘不能と成ります。神特レ。必殺。
・再生錬金術(P):
HAが常時若干再生して居ます。BS回復も若干早いです。
・魔物再生術(P):
神自域に居る魔物配下のHAを若干再生させます。
・透過飛行術(P):
壁や障害物等を透過します。常時飛行中です。
殺人骸骨兵×10体程度
殺人錬金術で錬成された魔物のアタッカータイプです。
リチャードの近衛兵で至近から中距離の物理攻撃をします。
黄金殺人蜂×10体程度
殺人錬金術で錬成された魔物のアサシンタイプです。
寺院内に潜伏して高CTの素早い奇襲攻撃を放ちます。
黄金スライム×10体程度
殺人錬金術で錬成された魔物のトラップタイプです。
寺院内の通路等からBS足止系攻撃や麻痺攻撃の罠を放ちます。
●GMより
今回は珍しくも『練達』HARDの悪属性依頼だったりします。
所謂、裏切り者始末の為の純戦ですが、相手は其の道のネームドです。
皆さんが知略を駆使して無事に討伐される事を祈って居ます。
Tweet