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シナリオ詳細

第一次天義ツリーギガント大戦・杉と桜

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●天義のお花見
 ツリーギガント、という精霊がいる。簡単に説明すれば、『意思を持つ樹木』である。
 人類に好意的……というか、植物らしく何を考えているのかよくわからない個体が多いのだが、過去から現在に渡って、この種族に人類が襲われたという前例はあまりない。なので、おおむね『まぁ好意的なんだろうなぁ』という扱いを受けていることが多い。
 さて、天義にもツリーギガントは生息していて、それは春ごろに綺麗な花を咲かせる。彼らはいわゆるチェリーブロッサム。桜のツリーギガントである。
 天義の中心街から外れて、緑多い平原へ。そこには多くの市民たちが、憩いの時を過ごしている。周囲には桜のツリーギガントがのんびりと日向ぼっこをしていて、市民たちは彼らがその身体に纏う桜の花を楽しむのだ。ありていに言ってしまえば、いわゆる花見のような光景が繰り広げれているわけだ。
 時折、桜のツリーギガントが身体を震わせると、穏やかに桜吹雪が舞う。花が散った後の枝には、すぐに代わりの花が生えてくるので、すぐさま枯れてなくなるという事はない。ツリーギガントの生態はまだよくわからないことが多いが、彼らはこの時期、まるで人に寄り添うように、人里にやってきては、その花を惜しげもなく提供してくれるわけである。
 さて、前述したとおり、ここには多くの桜のツリーギガントと、人々であふれかえっている。漂うのは、ほのかな桜の香り。それから、市民たちの持ち寄ったものや、屋台の食べ物の匂い――それからアルコールの香り。おおむね花見と聞いて想像するような光景が繰り広げられていたわけだ。天義は厳粛な地ではあるが、其れは其れとして、たまには息抜きも必要という事である。
「ん……?」
 ふと、花見客の一人が声をあげた。あたりの空気が、急に『黄色く見えた』のである。あたりを見回してみれば、花見会場を包み込むように『黄色い空気』が漂っていて、なんだか辺りは霞が買っているかのように見える――と、思った瞬間。
「はっくしょん!」
 と。
 出たのはくしゃみである。そう気づいた瞬間、目にはかゆみが走り、いかんともしがたい息苦しさが、胸を侵す。
「なんだ、何で急に……へくしょん!」
 気づいてみれば、辺りの花見客もくしゃみをしていた。どうやらこれは、ただ事ではない。何らかの疫病の類か――しかしてその原因は、花見客の前にすぐに顔を表す事になる。
「SUGI……!」
「HEY、SUGI!」
「SUGI,YO,YO!」
 ツリーギガントの群れである! 見てみれば、それは桜のツリーギガントとはまた違った種類のツリーギガントだ! 円錐状の形をしたその木は、見るものが見れば、杉であると気づいただろう! というか、自分たちでも「SUGI」っていってるしね。
 杉のツリーギガントは、ヘッドホンを耳(?)に当てながら、がっくんがっくんと首(?)をふる。その都度、頭(?)の葉がわさわさと揺れて、黄色い粉末状の何かが放出される! そう、それは花粉であった!
「しまった! これは花粉症だへくしょん!!」
 観光客の男が悲鳴を上げた! これは杉のツリーギガントの精霊の花粉を吸い込んだことによる『杉のツリーギガント花粉症』であった! それだけならよい! いや、よくない! 杉のツリーギガントたちは、突如として桜のツリーギガントたちをげしげしと蹴り始めたのである!
「はくしょん! 何故ツリーギガント同士がへっくしょん!?」
 くしゃみなどをしつつ、花見客たちは驚いた! 何故突如としてツリーギガント同士が仲間割れを始めたのか! もしかしたら虫の所が悪かったのかもしれない。だがなんにしても、このままでは桜のツリーギガントたちがどこかへと追いやられ、ここは杉の群生地になってしまう! そうなったら悲惨である。
「へ、へっくしょん! だれか、なんとかしてっくしゅん!!」
 花見客たちは悲鳴を上げながら、逃げ惑うのみであった――。

●杉だって生きているんだと言われても迷惑なことに変わりはない
「へっくしょん、くしゅん、くしょんくうしゅん!!」
 と、眼鏡にマスクをつけたうえでくしゃみを連発するのは『小さな守銭奴』ファーリナ(p3n000013)である。ここは、杉のツリーギガントたちに襲われた平原からほど近い天義の街。件の杉のツリーギガントたちからの花粉が空気中を漂い、天義の街を杉の『ツリーギガント花粉症』患者で埋め尽くしているのである!
「くしょんくしょくしゅんくしゃん!」
(いまは練達製の鼻炎薬で抑えていますが)
 と、ファーリナが言った。
「くしゅんくしゅんくしゅ、ぐしぐし、くしゅしゅん、くしゅくしょん、へくしょん、はくしょん!」
(このままでは花見もできないですし、花粉症で天義の街が大変なことになります!)
 練達製のかゆみ止め目薬を差しつつ、ファーリナが続ける。
「くしゅん。くしゅくしゅへっくしょん、はくしょんはっく……っしゅん! ずる、くしゅん!」
(一刻の猶予もありません! 今すぐ杉のツリーギガントたちを追い払って、桜のツリーギガントたちを守ってあげてください!)
 そう言って、ファーリナはイレギュラーズ達を送り出しへっくしょん。

GMコメント

 はくしょん、洗井らっくしょん!!!!
 杉滅ばないかな。

●成功条件
 『杉のツリーギガント』を全滅させる。
 『桜のツリーギガント』を最低一匹以上生存させる。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●状況
 天義のとある平原。そこは、桜のツリーギガントという動く大樹の精霊が日々訪れ、人々と共存し、その花で人々を楽しませていました。
 しかし、そこに突然現れた杉のツリーギガントたち。杉たちは桜たちを攻撃し、辺りに自分の頭から杉のツリーギガント花粉をばらまき、天義の街を花粉症患者だらけにしてしまいました。
 練達製の薬で抑えられるとは言え、このままではよろしくありません。天義が花粉症の街になってしまいます。
 皆さんは、この広場へ向かい、杉のツリーギガントたちを撃退してください。
 作戦決行時刻は昼。周囲は開けていますが、花粉により、周囲は黄色くかすみがかっているため、視界があまりよくありません。

●エネミーデータ
 杉のツリーギガント ×16
  ツリーギガント(意思を持ち、動く大樹の精霊)です。こいつらは杉の精霊で、杉っぽい見た目をしています。
  パリピ気質で、ノリノリの音楽に乗りながらヘッドバンギングをし、周囲に花粉をまき散らします。
  また、なぜか桜のツリーギガントを敵視しており、桜のツリーギガントに攻撃を仕掛けてきます。多分、同じ時期の自然現象なのに、杉だけ嫌われているのが気に入らなかったんでしょう。。
  主に神秘属性の攻撃を仕掛けてきます。BSとして、『窒息』『痺れ』系統のBSを付与してくるでしょう。
  また、以下の特殊スキル持っています。

  杉ツリーギガント花粉
   パッシブ・特レ
   杉のツリーギガントがフィールドに存在する限り、毎ターンの最初に一度だけ、イレギュラーズ達はBS抵抗値補正0の特殊抵抗判定を行う。
   この判定に失敗した場合、特殊BS『花粉症』が付与される。

  特殊BS『花粉症』
   このBSにかかった場合、すべての判定にマイナス補正が付与される。
   マイナス補正は『マスクをつけたり眼鏡をかける』などの、花粉症対策プレイングにより軽減されるほか、通常のBS回復手段でも解除は可能となる。


●味方NPC
 桜のツリーギガント ×5
  桜のツリーギガントです。戦闘は苦手ですが、近くにいると、桜の花のリラックス効果による少量のHP・AP回復援護を行ってくれます。
  とはいえ、基本的には守るべき対象なので、敵から攻撃を受けないようにしてあげてください。

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加とプレイングをお待ちしております。

  • 第一次天義ツリーギガント大戦・杉と桜完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年04月22日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ウェール=ナイトボート(p3p000561)
永炎勇狼
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
ディバイン・シールド
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
ハロルド(p3p004465)
ウィツィロの守護者
メルトリリス(p3p007295)
神殺しの聖女
ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)
私の航海誌
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
Я・E・D(p3p009532)
赤い頭巾の魔砲狼

リプレイ

●それは地獄のごとし風景
 黄色い。
 黄色い。
 黄色い!!!!
 世界が黄色い! 空気が黄色い! 空が黄色い! 広場が黄色い! 街が黄色い!
 これは何か、と尋ねるものがいれば、皆は頭を振って、こういうだろう。
「へっくしょん!」
 『流麗花月』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)がくしゃみをした。
 突如現れた杉のツリーギガントなる精霊たち。彼らは頭をノリノリに振って周囲に強力な花粉症を引き起こすスギ花粉をばらまき始めたのである!
「よし、殺そう」
 と、結構本格的なガスマスクなどをつけつつ、そう言うのは『赤い頭巾の悪食狼』Я・E・D(p3p009532)である。こんなこともあろうかと、ポッケにギリ入っていたガスマスク……それは明らかに毒ガス対策用のそれであったが、
「花粉ってよく考えなくても毒ガスみたいなものだよね。
 終わったら服の上からシャワーを浴びて洗い流さないと(シュコーシュコー)」
 との事なので花粉対策である。
 さて、一行は花粉症対策をとりながら、黄色くかすむ街を進む。目指すは町はずれの広場で、そこには杉のツリーギガントが桜のツリーギガントたちを攻撃しながら、花粉を飛ばしまくっているという事であった。
「いやぁ、流石に健康優良児の俺でも、この光景にはまいっちまうな! 見てるだけでなんだかかくしゃみが出るような気がしてくるぜ!」
 まっ黄色の大気の中に、映える黒の全身鎧に身を包み、いつもと変わらずぶははははっ、と豪快に笑う『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)。ゴリョウは健康なのだ。
「確かに。俺でもなんだかむずがゆくなってくるな」
 同様に健康優良児、『聖断刃』ハロルド(p3p004465)が言う。簡易なマスクをつけているが、それで済む程度にはハロルドも健康である。
「それよりも問題は……」
 ハロルドはふと背後へ視線を向ける。その先に居たのは、『神殺しの聖女』メルトリリス(p3p007295)だ。
(メルトリリス、か……いや、俺がやる事は一つだ。平和を乱すものを殺す。それだけのはずだ……)
 静かに胸中で呟くハロルド。メルトリリスはその視線に気づき、小首をかしげる。
「どうかされましたか……はっ、鼻にティッシュは詰めませんよ!? 事務所NGですので!」
「ええっ! 詰めないんですか!? ティッシュ!」
 と、大げさに驚いて見せるのは『私の航海誌』ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)だ。
「いえっ、ウィズィさまの気持ちは汲みたいけど、あのあの、ウィズィさまがかっこよく活躍したらメルト、やりますッッッッッ!!」
 はわわ、と慌てるメルトリリスが何やらとんでもない事を言うが、
「本当ですか! きっとハロルドさんも喜びます!」
「俺かッ!?」
 なんかハロルドに飛び火した。
「ハロルドさん! それは不正義ですよっ、不正義っ!」
 顔を赤く抗議の声をあげるメルトリリスに、
「ち、違う! 何とか言ってくれ、誰か!」
 ハロルドは助け船を求める。が、
「ぶはははっ! まぁ色々な趣味があるわな!」
 豪快に笑うゴリョウに、
「ねぇよ! 誤解だ! どうしてそうなってるんだ!?」
 思わず頭を抱えるハロルドである。とはいえ、愉快なじゃれ合いもここまで。広場に近づくにつれて大気は濃密な黄色さを醸し出しており、まるで濃霧の中にいるかのような気持ちになってくる。
「こいつはひどいな……」
 ゴーグルにマスクで顔を覆った『霊魂使い』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)はいう。
「むぅ……確かにこれでは。梨尾は……息子はつらかっただろうな……」
 どこか遠くを見つめながら、『揺るがぬ炎』ウェール=ナイトボート(p3p000561)は言った。
(思い出すな。息子も、梨尾も花粉症だった。
 俺は花粉症ではなかったから、その辛さを理解してやる事は出来なかったが……。
 幼い頃の息子は、梨尾は涙と鼻水が止まらなくて。
 泣いてる姿も可愛いが……少しでも良くなるよう近くの山を燃やしに行こうとしたら、
 駄目って止める優しい息子。成人した今でもやっぱりつらいのかね……)
 ウェールはぐっ、と手を握りしめた。
「復讐しよう」
「いや、今の間に一体どういう思考の変遷があった?」
 思わず尋ねるアーマデル。ウェールはうむ、と頷くと、
「とにかく杉は滅ぼす。これは梨尾の鼻水と共に散って行ったちり紙の弔い合戦でもあるのだ」
「……そうか」
 アーマデルは思考を放棄した。目の前を包む花粉を見ていたら、なんか肌がかゆくなったので、そっちに気をとられたのだ。
 と――。
「SUGI! SUGI! OH,SUGI!」
 ずんちゃかずんずんというような、ノリノリの音楽。その合間に聞こえてくる、『SUGI』なる奇声と、ばっさばっさと何かを振るう音。
「杉かッ!!」
 ウェールが口元(マズル)をマスクで覆いながら、声をあげる。そう、奇声と音楽の主は杉である! 厳密に言えば、杉のツリーギガント! 彼らは街の広場に現れ、思うまま狼藉を振るっていた! 杉のツリーギガント、その総数、16体!
「数 が 多 い」
 呆れたようにアーマデルが言う。多い。イレギュラーズ達のジャスト倍。それらが一斉にノリノリで頭を振って、花粉をばらまいているのである。
「嫌になる光景ですね……」
 メルトリリスが若干ひきながら言う。厳粛なる天義よ、神聖なる天義よ、どうしてこの国はたまに変な生き物がわいてくるのですか? 神の試練でしょうか?
「しゅこー、しゅこー(でも、身体は建築材料になるから。再利用はしやすいんじゃないかな)」
 ガスマスク(Я・E・D)が言った。確かに杉は材料になる。燃やしてもいい。
「しゅこー、しゅこー(正直今回の戦力って過剰戦力じゃないかなぁ?)
 しゅこー、コーホー(まぁ、でもこの世の全ての悪の根源である杉の人達が消し炭になっても世界の平和のためだよね)」
 ガスマスク(Я・E・D)は不敵に笑う(外からはマスクに隠れて見えなかった)。敵の数は多いし、嫌になるくらい花粉は飛んでいるが、其れは其れとして、イレギュラーズ達に怖気づくようなそぶりはない。当然だろう。もっととんでもない修羅場を潜り抜けてきたのだ。修羅場の質がちょっと違うような気はするが其れも其れで。
「っとと、所で、桜のツリーギガント皆さんはどこですか?」
 ウィズィが目を凝らして辺りを見回す。そう、依頼によれば、保護すべき桜のツリーギガントたちもいるのだ……。
「お、アレですね!?」
 ぴっ、と指さすウィズィ。見てみれば、広場の隅に縮こまる様に、桜のツリーギガントたちの姿があった。周りには杉のツリーギガントたちが等間隔でマイムマイムを踊っている。花粉を飛ばしながら。
「よし、あの間に割って入りましょう、皆さん!」
 ウィズィの提案に、
「ぶははっ、心得た!」
「気を取り直して、杉共は皆殺しにしてやろうじゃないか」
 ゴリョウ、そしてハロルドは頷き、各々武器を構える。合わせるように、イレギュラーズ達もまた武器を抜き放った。
「助けにきましたよ、桜の皆さん!」
 ウィズィは叫び、駆けだした。イレギュラーズ達も続く。濃厚な花粉を切り裂き、両ツリーギガントたちの間へ。
「やれやれ、暫くは焚き付けに困らずに済みそうだぞ」
 アーマデル蛇剣を鞭のようにしならせ、杉を威嚇する。
「杉どもよ。梨尾の鼻水、そして散って行ったちり紙たちの仇……討たせてもらおう」
 ウェールも妖刀を抜き放つ。ぼう、と燃える黄色い炎が、周囲の花粉を巻き込んで激しく燃え盛る。粉塵爆発でも起こりそうなものだが、この花粉は特殊な花粉なのでそう言う事は起こらない。ルールにもない。
「さあ、Step on it!! さっさと終わらせますよ!」
 ウィズィが叫び、ばっ、とその手を掲げる。その手に輝くのはHeart of it to you.――じゃなくて、マイクだった!

●伐採! ツリーギガント大戦!
「なーむなーむ、あーむだ、みょんみょんきょー」
 ウィズィがマイクに何事かを吹き込む! 周囲に響き渡るはスピーカーボムの影響か!
「おい、ウィズィ、それは」
 ハロルドが困惑した表情で告げるのへ、ウィズィは胸を張ってこたえた。
「お経です!」
「お経」
「宗派はよくわかりません、適当に調べた奴ですから!」
「適当に」
 ハロルドがオウム返しする。困惑しているのだ。
「いいですか! パリピに必要なのはテンション! そのテンションを下げるのが攻略の糸口と私はにらみました! そこでお経! 読経!」
 ばっ、とウィズィは胸を張った。
「これぞテンションブチ下げ作戦! さぁみなさん、私に続いてください、ゆっくりお経を読み上げるのです!」
「えっ」
「さぁ、みなさん! いきますよ! なーむなーむあーむだー、みょんみょんきょー」
『な、なーむなーむあーむだー、みょんみょんきょー……』
「声が小さいです! もっとテンションを引きずり下ろすような感じで!」
『なーむなーむ、あむだー、みょんみょんきょー!』
「いいですよいいですよ、もっと世界全てに絶望する感じで! いいですか、皆さんは陰キャです! 陽キャは憎い! 陽キャは憎いのです! 陽キャの足を引っ張る読経! 陰キャができる唯一の抵抗! テンションブチ下げマジ閉口! これが読経のパワーだチェケラ!」
 なんか韻を踏みながらウィズィが読経を促す! 怨念を込めてお経を読み上げる陰キャたち! 本職の僧侶がいたら本気の説教待ったなしである!
 ぶち上げられるノリノリの音楽! その足を引っ張る呪いのような読経! 異次元のような戦いがここに繰り広げられていた! 危うくパリピミュージックと読経が融合して新しいミュージックシーンを生み出しそうになるほどの強烈なセッションが繰り広げられる中、先に根をあげたのは杉だった!
「SU、SUGI~……」
 だんだんしんなりとしていく杉たち!
「見てください! 効果はてきめんです!」
「ええ、本当ですね……?」
 胸を張るウィズィと、困惑の表情を向けるメルトリリス。
(というか、信仰厚い天義の街で、読経って異端審問沙汰なのではないでしょうか? これって不正義なのでは……)
 むむむ、とメルトリリスが唸るが、
「まぁ、深く考えなくていいんじゃねぇかな!」
 ゴリョウがそう言うので、
「そうですね!」
 メルトリリスがにっこり笑った。
 さて、テンションが下がったとはいえ、敵が逃げ帰ったわけではない。しんなりしながらも杉たちは頭を振りながら、花粉を飛ばしてくる! 花粉は神秘的な力を持ち、イレギュラーズ達の身体を叩いた! うちに毒素が流れ込むような感覚。体内の抵抗力を低下させ、身体を花粉が侵蝕するような異常。相手は珍妙でも神秘的な生物なのだ! 決して戦闘能力は侮れない!
 杉たちがバタバタと根を動かしながら迫りくる! 振るわれる、鞭のような枝が、イレギュラーズ達を、桜たちを襲う――だが。
 その最前線に燦然と立ちはだかる影。
 それは、黒の装甲。そして黒の聖剣使い。
「ぶはははッ、喧嘩を売りに来たってこたぁ喧嘩を売られることも覚悟の上ってことだよなぁ!」
「はははは。ああ、貴様らはここで死んでおけ。安心しろ、死後は建築資材にでも使ってやるさ。遠慮はいらん。俺があの世に送ってやろう」
 片や、鎧の中でにぃ、と笑みを浮かべるゴリョウ。
 片や、笑い声は上げつつも『目は笑っていない』本気の殺意をぶつける聖剣使い、ハロルド。
 ゴリョウはその身体で敵の攻撃を一身に受け止める! 苛烈なる攻撃に、しかし不退転にして不倒のオークは笑ってみせた。
「花粉云々以前に人様ん所まで来て迷惑行為してっから嫌われんだよ! 頭振り過ぎて思考能力も飛ばしちまったかぁ!?」
「杉に脳があるという話は聞いたことがないがな」
 光、雷、闘気……輝きが聖剣を包み、振るわれた刃が杉を上下に伐採する。ハロルドは獰猛な、殺意の笑みを浮かべながら、
「聖断刃、ってな――おら、いい加減に死に晒せやァ!」
「ハロルドさんに負けていられません!
 天義の見習い騎士メルトリリス、伐採します!!」
 ハロルドの背後から、メルトリリスが武器を構える。攻撃の気配を悟ったハロルドが飛びずさると同時、メルトリリスの放った魔の砲撃が、杉をまとめて貫き、撃ち飛ばした! ぼう、と極太の光線めいた魔力が杉の頭部を消し飛ばし、胴体だけになった杉たちがバタバタと材木へと変わる。
「これも天義のため……一線を超えたら、断罪されちゃうんだからね!!」
 イレギュラーズ達の反撃に、杉たちは次々と圧されていく。
「しゅーしゅしゅこー(花粉症なんてものがあるからこの世から戦争が無くならないのは世界の真理なので)
 しゅしゅこーほーこー(この世の杉花粉の全ては消滅しなくてはならない)」
 ガスマスク(Я・E・D)が放つ魔術砲撃、その収束弾丸が杉の身体を貫いてへし折る。真ん中から折られた杉が地に落着し、その反動で頭から花粉を舞わせた。
「しゅこしゅここーほー(やっかいだね、花粉は。あれ、頭を燃やしたら上昇気流で上空へ飛ばないかな)?」
「なるほど……試してみよう」
 ウェールは静かに構えをとり、意識を集中する。途端、その身に纏うは焔。それは己の命を燃やした証。その焔は変容し、虎と狼へと姿を変える。
「食らいつけ……前門虎狼!」
 突き出した手と同時に、炎の虎狼は疾走した。目指すは杉の頭部、その生い茂る葉。貫通する一撃、虎狼の爪牙が、次々と杉の頭を切り裂き――炎上させた!
『SU、SUGI~~~!!!!????』
 杉たちがわたわたと走り回る。炎上した頭から花粉がふわふわと空へと飛んでいく。神秘的な現象故、こちらを狙って放たれる攻撃を食い止めることはできないものの、辺りを無意味に浮遊するタイプの花粉は、風にまかれて上空に飛んでいったらしい。
「ふ、てきめんのようだな。なら貴様らの頭、まとめてアフロにしてやろう」
 放たれる炎が、次々とアフロを作り上げていく。アフロツリーが悲鳴を上げて走り回るのへ、
「お前達のバカ騒ぎもここまでだ。次はもみじギガントあたりにでも生まれてくるんだな」
 ( ・◡・*) みたいな顔を杉たちがしたかどうかは知らないが、アーマデルの放つ呪王の腕は、燃え盛る杉たちを捉えて離さない。呪いが杉を次々と打ち倒していく。やがてノリノリのパリピミュージックが途絶えた時、杉はその全てが材木へと姿を変えていた。少しずつ空気が澄んで行って、やがて黄色い空気は何処かへと消え去っていく。
「やれやれ、元凶は倒したが――」
 アーマデルはマスクを外しながら、言った。空気が美味い。美味いのだが。
「……この地面に積もった花粉は、掃除しないといけないのか……もうひと働きしなければならなさそうだな……」
 げんなりした様子で、そう言った。こんな時にアライグマでもいたら、掃除してくれるのだろうか、とふと思ったが、なんだか役に立ちそうもなかったので、肩をすくめるのであった。

●お花見の時
 かくして、イレギュラーズ達、そして街の者総出による掃除が始まった。メルトリリスなどは、空を飛びながら花粉を巻き上げて、上空の風にのせてどこか遠くへと飛ばしたりしていたので、思っていたほど時間はかからなかった。
 桜のツリーギガントたちは、多少傷ついたもののどれも健在で、生命活動に支障はない様子だった。彼らは口をきけるわけではないが、礼を言うように身体を震わせてくれた。
 ……かくして危機が去ったのならば、これまでと同様に、ここでお花見をするべきである。というわけで、広場はかつての賑わいを瞬く間に取り戻していた。
「ぶはははっ、皆お疲れさん! 今日は花粉症対策って事でな、蓮根料理を食おう!」
 ゴリョウが用意した食材セットには、沢山の蓮根が詰め込まれていた。ゴリョウ曰く、抗アレルギー効果があるらしい。
「ゴリョウさん、お手伝いします!」
 メルトリリスがゴリョウについていって、料理の下準備を手伝う。しばらくして、出来立ての様々な蓮根料理が、メルトリリスの用意したレジャーシートの上に並べられた。イレギュラーズ達はシートの上に皆で座って、踊る桜を眺めながら、ゴリョウの蓮根料理に舌鼓を打つ。
「この緑のは……青汁か?」
 ハロルドが不思議気に尋ねるのへ、ゴリョウが言う。
「おう、桑の葉の粉末だ! 腸内環境を整えるんでな。同じ効能でヨーグルトも持ってきたから、好きな方を飲んでくれ!」
「わたしはレンコンの天ぷらね。デザートは花見団子が良いかなぁ」
 Я・E・Dがねだるように言うのへ、
「ちゃぁんと作ってあるぜ! 熱々の内に食べてくれよ!」
 ゴリョウが差し出した皿の上の、蓮根の天ぷら。Я・E・Dはいただきます、とひと齧り。美味しい。
「ゴリョウさん、よかったら作り方を教えてくれないか……?」
 ウェールがそう言うのへ、ゴリョウは笑って頷いて見せた。帰って家族へ作ってやりたかった。
「やれやれ、妙な依頼だったけれど」
 蓮根のはさみ揚げを齧りながら、アーマデルは呟いた。
 周囲には笑い声が満ちて、桜は彼らを祝福するように踊っている。
 この光景を守れたのなら、苦労した甲斐はあったかもしれない。
 そんな事を思いながら、報酬たる蓮根料理を楽しむ一行であった。

成否

成功

MVP

ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)
私の航海誌

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございまっくしゅん!!!!

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