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シナリオ詳細

<至高の美味を求めて>願うは長寿、喰らうは卵

完了

参加者 : 20 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●温泉地の異変

 ボコリ、と音がする。
 ガルナック温泉郷に良質な温泉を提供する、その源泉たる場所。
 そんな大切な場所で、確かに何かがボコリと音を立てる。
 一体何なのか。
 ガボガボという音を立てて、それは源泉の中から……いや、違う。
 源泉が伸びあがり人型をとる。

 ああ、ああ。なんということか。
 何者かが源泉を魔法生物へと変えたのだ。
 何故、一体何故なのか。
 答える者はない。魔法生物と化した源泉はその輝く両目をギラギラと輝かせ……再び、元の源泉の姿に戻る。
 勿論、元に戻ったわけではない。
 湯煙で視界が覆われそうな高温の泉のその奥で……赤い何かがキラリと光る。
 それはまるで、宝石……のような……?

●ガルナック温泉郷へ行こう

「食べると一日寿命が延びるという与太話のある温泉卵があるです」

 与太話と言い切る『旅するグルメ辞典』チーサ・ナコック(p3n000201) であったが、実際に与太話だ。
 食べれば寿命が延びるのであれば金持ちがこぞって永住していそうなものだが、そうした話もない。
 ないということは……つまり、そういうことだ。
 しかしながら、それだけ美味しいということでもある。かもしれない。

「まあ、実際にガルナック温泉郷の温泉水は良質です。それで作られた温泉卵も蒸し料理も食べる価値はあるです」

 しかし、とチーサは言う。

「そのガルナック温泉郷周辺でコケトラスを発見したという情報が入ってるです。こいつは無視できねー情報です」

 コケトラス。それはニワトリにも似た大型生物だ。真っ黒な身体に赤いトサカを持つというコケトラスは、自身を他人に発見されにくくなる能力に長けているらしい。
 つまり、見つけるのはかなり難しく……相方となるコケトラスがいなければ無精卵となるその卵を、一日にかなりの数産み落とすという生態も持っている。
 その卵自体もかなりの隠蔽能力を持っているらしく……踏み割ってからそうであったと気付く事例も多数であるという。
 そんなこんなで「幻の食材」扱いされているコケトラスの卵が手に入る……かもしれないのだ。

「コケトラスの卵は濃厚にして栄養満点、温泉卵は勿論プリンにすれば濃厚固めプリンが出来上がるです」

 勿論他の卵料理にしたっていい。全ては手に入れたコケトラスの卵の数次第だ。
 そうして食べた卵料理の感想は、今回の依頼人へと届けられる。
 成功さえすれば、誰もが幸せになれる依頼なのだ。

「依頼人の好意で宿も確保してあるです。正直、こんな旨すぎる依頼は早々出ねーのです」

 参加する奴はさっさと準備するです、と。
 チーサはそう言って話を締めくくるのだった。

GMコメント

今回のスポット情報です。
1つのスポットに参加するのも複数のスポットに参加するのも自由です。
卵を無事にゲットすれば他に何が起こったとしても依頼は成功です。
なお、卵は自身を隠蔽する能力に長けています。なんだこの卵。

□ホテル・ミラトルテ(危険度不明)
今回の拠点となるホテル。2階建ての貸し切りです。
湯あみ着を着て入る混浴の露天風呂が自慢です。
卵が手に入るまで、特に指定が無ければチーサは此処でふやけています。

□ガルナック温泉郷(危険度:普通)
ここ数日、湯量が格段に減って住民は不安を抱いているようです。
ほぼ全ては温泉旅館か土産物屋。食材店もあります。
新鮮な野菜なども手に入るようです。
なお、何処かの私兵団の姿もあるようです……?

□ガルナック火山(危険度:高)
もうもうと煙を噴き上げる火山。噴火の心配はないという話です。
源泉も此処にあります。
なお、自然発生した野生のゴーレムも多数うろついているようです。
火山で発生したせいか火を放つ個体もいるようです。

□おまけ情報
ホテル・ミラトルテは貸し切りなので管理人のおばあさん以外に従業員はいません。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はD-です。
 基本的に多くの部分が不完全で信用出来ない情報と考えて下さい。
 不測の事態は恐らく起きるでしょう。

  • <至高の美味を求めて>願うは長寿、喰らうは卵完了
  • GM名天野ハザマ
  • 種別長編
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年04月25日 21時55分
  • 参加人数20/20人
  • 相談10日
  • 参加費100RC

参加者 : 20 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(20人)

鳶島 津々流(p3p000141)
四季の奏者
ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)
泳げベーク君
マルベート・トゥールーズ(p3p000736)
饗宴の悪魔
黎明院・ゼフィラ(p3p002101)
夜明け前の風
フルール プリュニエ(p3p002501)
夢語る李花
ミニュイ・ラ・シュエット(p3p002537)
救いの翼
天之空・ミーナ(p3p005003)
紅矢の守護者
グレン・ロジャース(p3p005709)
理想の求心者
ティスル ティル(p3p006151)
銀すずめ
茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)
音呂木の巫女見習い
ルクト・ナード(p3p007354)
蒼空の眼
ドゥー・ウーヤー(p3p007913)
海を越えて
リディア・T・レオンハート(p3p008325)
勇往邁進
晋 飛(p3p008588)
倫理コード違反
司馬・再遊戯(p3p009263)
母性 #とは
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
耀 英司(p3p009524)
怪人暗黒騎士
Я・E・D(p3p009532)
赤い頭巾の魔砲狼
日高 天(p3p009659)
特異運命座標
サーニャ=S=クライノート(p3p009771)
蒼玉

リプレイ

●ガルナック温泉郷にて

 ガルナック温泉郷。温泉地としては中の……まあ、中程度だろうか。
 悪いというわけではなく、どちらかといえば良い。
 温泉も良質で、その効果にも疑いはない。
 ない、が……なんかこう、イマイチ垢抜けないせいか微妙に人気がない。
 たぶん、本当に売りが温泉くらいしかないからだろう。
 良く言えば落ち着く、悪く言えば古臭い。しかし努力を欠かしているわけではない。
 なのに「そう」言われてしまう。
 そんな不遇の場所がガルナック温泉郷であり、それ故にイレギュラーズの面々以外の観光客の数はまばらだった。
 だからこそ、『行く雲に、流るる水に』鳶島 津々流(p3p000141)の姿は中々に目立っているが……そのせいか、店の主人たちは中々に好意的でもあった。
 何しろ、ホテル1個を貸し切るような20人を超える観光客の団体だ。
 当然、買い物も相当の量だろうと期待してしまうというものだ。
 そうでなくとも、そこから口コミで良さが伝われば儲けものだ。
 だからこそ津々流の質問への回答も、誠実そのものだ。

「はあ、コケトラス? よく知りませんなあ」
「いや、あれだろ? 凄く高いって卵。うちの店じゃ、とてもとても」

 立ち寄った店の人間の返答に、津々流は「ありがとう」と礼を言って店を出る。
 コケトラス。幻の卵を産む幻のニワトリであるソレについて、中々知っている人間に出会えない。
 幻の食材というだけあって、知っている人間も少ないのだろうか……と、思わずそんな事を考えてしまう。

「濃厚で栄養満点、とっても美味しい「幻の卵」かあ……」

 思わず、そんな言葉を津々流は呟いてしまう。
 コケトラスの発見者から話を聞いてみたかったのだが、どうやら「踏んでから存在に気付いた卵」があったことで、その存在が知れた……というのが実際のところのようであった。
 コケトラスそのものを見た人間は居らず、割れた卵だけがその証拠。今のところは、そんな感じだ。
 その「踏み割られた卵」が複数個、そして複数日の証言があることから、未だコケトラスがこの付近をウロついているのは確実であるようなのだが……そこから先の情報がない。

「詳しい人がいれば話を聞いてみたいんだけどねえ」
「まあ、幻というほどだ。そう簡単に見つからないのも道理だろうな」
「ここ数日、見えない卵を踏み割る事件が多発しているそうです。参考になるかは……分かりませんが」

『特異運命座標』日高 天(p3p009659)とアナトラに津々流は視線を向けて「ありがとう」と答える。
 何やら温泉饅頭らしきものを買い食いしている2人だが、いわゆるカップルという形で自然な情報収集を心がけた結果である。
 無論、息抜きも含んでいるが……結果としてそれなりの情報は収集できているようだった。

「やっぱり、見えないっていうのは不便だね。とはいえ……踏み割ってから気付く、ということは、割れたら見えるってことかな」
「ああ、それで合っているようだ」

 天は頷き、卵の殻のようなものを津々流へと差し出す。

「立ち寄った店の主人がくれたものだ。まあ、俺にというよりはアナトラにという感じではあったがな」

 美しいアナトラの外見が受けたのだろう。それ自体はあまりアナトラにとって良い思い出を想起させるものではないかもしれないが……それでも、天はこのヒントを得ることが出来た事実を深く感謝している。

「この欠片からでも大分情報を得られた。よかったら使ってくれ」
「助かるよ。割れた欠片からでも匂いは辿れる。むしろ、これをどう入手しようか考えていたんだ」

 見えないというのならば、匂いを辿ればいい。山人の素養を活用するべく、津々流は殻を受け取る。

「さあ、始めようか」

 そう呟いた津々流の、そんな姿を……上空から『救いの翼』ミニュイ・ラ・シュエット(p3p002537)と『蒼空』ルクト・ナード(p3p007354)はしっかりと見ていた。
 歩いていると踏み割ってしまうとしても飛べば踏みはしないし、しかも俯瞰の視点からの情報も得られる。

「卵料理か。いいね。私は鍋物に生卵入れるのが好きだよ」
「ああ、悪くないな。しかし……随分と賑やかな街のようだな」

 ミニュイの呟きにルクトはそう答えながらも周囲の警戒を怠らない。
 ルクトは怪しい人物の監視を、ミニュイはコケトラス捜索と役割は分かれているが、それ故にそれぞれの役割に集中できているのだ。

「む、誰かが卵を踏み割ったようだな。やはりコケトラスは街にいるのかな?」
「可能性はあるな。見ろ、アレを」

 ルクトが示すのは、何やら数人で行動している武装した男たちだ。
 装備から見て、何処かの私兵か何かのようだが……明らかに「観光している」という雰囲気ではない。
 何を探しているように足元を見ているが、それが「何をしている」のかは、ルクトには明らかだ。
 見えない「何か」を探している。全員でそう主張する動きであり、そうであれば答えなど自然と分かってしまう。

「コケトラスの卵探し、か」
「相手が誰でも、戦闘は最大限避けるよ。今日はそういう気分じゃないんだ」
「戦闘にはならないだろう……卵が割れるからな」
「確かにね」

 あまりにも説得力のありすぎるルクトの台詞にミニュイは頷く。
 そう、探しているのは油断せずとも踏み割ってしまう卵。ならば、戦闘など誰もが避けたいのは間違いないのだ。

「別に私は寿命になど興味はないが。美味しい物の為、頑張るとしよう……」

 まあ、寿命の話は眉唾を超えたガセではあるが……美味しいのは確かなのだ。
 ルクトとミニュイの視線は一瞬ホテル・ミラトルテに向けられるが……そこでは、温泉を楽しむ『倫理コード違反』晋 飛(p3p008588)たちの姿があった。

「温泉もいいねぇ、温泉ときたら美人と混浴ってのが世のお約束だが……現実ってな厳しいんでここは一つ温泉を堪能ってな」
「混浴温泉でそれを言うのは中々おもしれーですが」
「その心は?」
「おもしれー男だぜ、です」
「そのままじゃねえか」

 言いながらも飛の視線は言葉の主……『旅するグルメ辞典』チーサ・ナコック(p3n000201) から遠くへと向けられる。

「何故視線を逸らすです」
「私って魅力ないんですかねー」
「許可も取ってない柔肌拝むのはエロ本だけにしてんのさ」

 一緒に入ってきた『ダメだけどヨシ!』司馬・再遊戯(p3p009263)もチーサも湯あみ着を着てはいるが、それはそれ。
 飛には飛なりのスタイルというものがある。

「あと数日あれば呑むことも出来たんですけど……」
「ジュースでも飲んでろです」

 何があったのか事情は知らないが、やさぐれている再遊戯にチーサはジュースを勧め……飛は視線を向けないままに苦笑する。

「酒に逃げるのは、あんまり良い逃避とは言えねえな。ま、俺に言われても説得力はねえかもしれねえが……」
「飛さん……て、わぷあ!?」
「ねぇねぇチーサちゃん! 今まで旅してきて美味しかったグルメの話とか聞いても良い~?」

 温泉にドボンと入ってきた『蒼玉』サーニャ=S=クライノート(p3p009771)に再遊戯が水しぶき……いや、お湯しぶきに襲われたのをそんもままに、チーサは「ふーむ」と思い出すような声をあげる。

「思えば色々調理してきたのです。ていうか、その『ちゃん』付けは」
「うん、私より年上だけど! チーサちゃん呼びで!」
「まあ、好きにするといいのです」
「はー……ダメだね。資料が一切ない。図書館はないにせよ、パンフレットくらいは期待してたんだけどな」

 言いながら温泉に入ってきたのは『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)だ。
 温泉郷の歴史や温泉卵の噂話の経緯といった点から探ろうとしていたゼフィラではあったが、見事に空振りして休憩にきたのだ。

「個人的には、例の温泉卵の噂がある場所に、幻の食材と呼ばれる卵を生むコケトラスが現れたという話が出来すぎだと思うんだけどな」
「あー、言いてえことは分かるな」
「確かにタイミングとしては相当出来過ぎてるよね。でも誰かが追い込んだわけでもないだろうし」
「食えれば気にしないのです」

 飛やサーニャたちの言葉にゼフィラも頷き、思考を巡らせる。
 やがてコケトラスの話に移行していくサーニャたちだったが……その姿を見ないようにしながら飛は空を見上げる。
 青い空、白い雲、空を舞うミニュイにルクト。

「賑やかだなあ……しかし男連中は1人も来ねえな」
「コケトラスの卵で作ったケーキとか絶対美味しそうだよね~♪」
「クリームの材料の調達が問題なのです」
「売ってないんでしょうか」
「売ってると思うですが……量が足りるかどうか」
「あ、そういう……」

 ワイワイと騒がしい温泉は、静かで、暖かくて。
 ガルナック火山に向かった者達とは真逆に、実に平和な光景を作り出していたのだった。
 そしてそれ故に、誰も気にしなかった。この温泉郷を静かに離れていく、1人の男がいた……そんな、比較的どうでもいいとかしか思えない事など、誰も。

●ガルナック火山

 ガルナック火山。ガルナック温泉郷に引かれている温泉は全てこのガルナック火山の源泉からのものであり……それ故に、此処に何かあれば温泉郷全体の問題となる。
 しかし、幸か不幸か……ガルナック火山にはどういう理由からか、野生のゴーレムが多数生息していた。
 自然とガルナック火山の守護者となっていたゴーレムたちであったが……それ故に、今までガルナック火山の地図などというものは1度も作られたことがなかった。
 だからこそガルナック火山がどうなっているかなど地元の者ですら知らず……しかし、こんなこともあろうかと『赤い頭巾の悪食狼』Я・E・D(p3p009532)はガルナック火山とその周辺の地図を用意していた。

「正直、捜索範囲が広すぎて困るよね……特に相手は隠れるのが得意みたいだし。でも、何だか温泉の湯量が減ってるって話だし、何か関連があるかもだから行ってみようか」
「オーダーは卵探しだが……温泉街で重要なメイン観光資源が減るっつーのは死活問題だろうしな」

 温泉卵やプリンも良いけどオムレツが食べたい。卵を手に入れて帰ったら何を作ってもらおうか。
 そんな事を考えながらЯ・E・Dは源泉へと迷いない足取りで向かっていく。
 ちなみに隣を歩くのは『我が身を盾に』グレン・ロジャース(p3p005709)。
 同じく源泉を目指す仲間の1人だ。特に約束していたわけでもないが、自然と同行していた。
 それも良しと思わせる、そんな雰囲気をグレンは纏っている。

「そうだな。それに虎穴に入らずんば虎子を得ずとも言うし、単純に火山散策というのも面白そうだ」
「依頼を受けた身としては仕事の範疇を超える越権かもしれないが、卵探しの障害排除ってことなら依頼の範疇だろ?」
「そうなるな。ま、観光気分なのも否定はしないがね」

そして、もう1人は『饗宴の悪魔』マルベート・トゥールーズ(p3p000736)。やはり源泉を目指すということで同行しているが……とりあえずお互いに協力できる仲間だというのがЯ・E・Dの偽らざる感想でもあった。

「ま、その恰好は火山散策といった風ではないがね」
「確かに……」
「なあに、火災現場の燃え盛る炎と黒煙に比べりゃ、ぽかぽか陽気にいい湯気ってなもんよ」

 そう嘯くグレンにマルベートもЯ・E・Dも、それぞれの表情を浮かべたまま何も言わない。
 男の子には我慢しなければならない時がある。それを、なんとなく感じたからかもしれない。

「……それにしても、またも幻の食材か。いやはや、この世界は私の舌を飽きさせないね。尤もその名に能う味であるのかどうかは……まあ、実際に確かめれば分かる事か」
「持って帰りたいね。オムレツ……」
「ハハッ、まあ頑張るとするか!」

 そんな事を話す3人であったが……やがてマルベートが、その動きをピタリと止める。
 
「おや、早速ゴーレムだね。こっちに来るようだ」

 マルベートの警告にグレンが戦闘態勢を整える。警告通りにズシン、ズシンと大きな人型が近づいてきており……焼けた石で構成されてでもいるのか、真っ赤に赤熱しているのが分かる。

「擬態もなしってか。こいつらが湯量減少の原因だったりしてな!」
「分からないけど……」

 Я・E・Dの身体から、黒いオーラが噴出する。

「がおー。食べちゃうぞ」

 戦闘が始まる。
 そしてそれは、この場に限ったコトではない。
 ガルナック火山を登る別のチームでも、同様に戦闘は発生していたのだ。

「やれやれ……こんなに炎系のゴーレムに襲われるとは。卵よりこっちが先に蒸し焼きになってしまいそうだな」
「それを言うなら僕は温め直しですかね?」
「自信を持てよ。ベークはそんなに冷たいたい焼きじゃないさ」

 『怪人暗黒騎士』耀 英司(p3p009524)と『人外誘う香り』ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)の、そんな緊張感のないやりとりが繰り広げられているが……これでも戦闘直後だったりする。

「それにしても野生のゴーレムってなんなんでしょうね……いえまぁ、襲い掛かってくる分には抵抗するだけなんですが……」
「ゴーレム、ゴーレムねえ。その辺の地面とかに埋まってたりして。石投げちゃお」

 『奏でる記憶』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)が適当な場所に石を投げるが、そこにはゴーレムはいなかったらしく何も反応はない。

「ダメですよ、そんなことしちゃ。何かあったらどうするんですか」
「あ、リディアちゃんウェイウェーイ! 準備できてるぅ? これ終わったら温泉、思いっきり楽しんじゃおー!」
「勿論です!」

 凄まじくテンションの高い秋奈ではあるが、リディアとて負けてはいない。

「苦労して手に入れた食材を口にする……これが最高なんですよね! だから頑張りましょう!」
「コケコケかー。習性とか分かればラクなんだよねー。卵温めるってのなら暖かいところと、あと巣? あるのでは?」
「可能性としてはありますね。まあ、探すのはやはり難しそうではありますけど」
「ムムッ! 隠し場所って考えるとゴーレムの上って見方もアリかっ! アレ火吐いてるし」
「火を噴くゴーレム、なんのその! 我が剣技で、全て打ち倒してご覧に入れましょう!」
「卵を割らない程度にね!」

 盛り上がる秋奈とリディアだが、確かにその可能性も否定できはしない。

「どう思う、イズマ?」
「そうだね……卵を探すと言っても、形状、色、大きさ……何もわからない状態で探すのは難しい。最初は踏み割ってしまっても仕方ないと思う」

 代わりによく観察するべきだ、と『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)は英司に返す。
 たとえ割れてしまったとしても、そこから得られる情報は無数にある。

「卵の特徴がわかれば次から探しやすくなるだろう。コケトラスは大量に卵を産むというし、1つ見つかったらその周辺を重点的に探してみるのもアリだな」
「ああ、賛成だ。それに……卵自体よりも、卵の周囲の状況を見るべきって考え方もあるな。割れた殻、光の当たり方、見え方、風の通り方、匂いの変化、卵を産み付ける巣として最適な場所。そういう情報を見逃さないようにしようぜ」
「しかし、それもコケトラスが此処に居るという前提ではありますけどね」
「うーん……コケトラスの見た目なら火山の景色に溶け込めそうだし、こっちに居るんじゃないかなー?」

 イズマ達に言いながら上空を舞うのは『幻耀双撃』ティスル ティル(p3p006151)だ。
 リディアの懸念はまさにその通りであり、だからこそチーム分けをしているわけだが……どの可能性もあり得るだけに、全ての可能性を考慮しながら進むのが正しい行動といえるだろう。

「幻の卵……どんな卵なんだろう? きっとすごく美味しいんだろうな……いっぱいとってきて、いっぱい食べたいよね……!」
「分かるよ! 私も、おいしースイーツが食べられると聞いてやってきたからね! そう、私こそ頼れるみんなのJK、秋奈ちゃんだ! じゅるり!」

 すでに卵を使ったスイーツが頭の中に浮かんでいるのか秋奈はそんな事を言うが、『海を越えて』ドゥー・ウーヤー(p3p007913)とてワクワクっぷりでは負けていない。
 何しろ、火山に来るのは初めてなのだ。人間誰でも、初めての場所でのワクワク感というのは凄まじいものだ。

「そうそう、水分補給は大丈夫? 此処は暑いから、しっかり補給しないと」
「ありがとうございます、戴きます!」

 ドゥーの差し出した水筒から水を飲み、リディアは快活に微笑む。

「無理はよくないものですが、今回は、こうして頼りになるお仲間も沢山いらっしゃいますしね、ふふっ……!」
「俺としても危険な場所を一緒に行動できる仲間がいるのは助かるよ」
「僕は正直いって勘以上のもので探索ができるような人間ではありませんから……その辺は助かりますね」
「……じゅるり」
「えっ」

 ベークが殺気……もとい食気を感じてゾクリとするが、振り返った先にいた秋奈はいつも通りだ。
 きっと気のせいに違いない。

「あ、来るよ! ゴーレム2体! 皆、警戒を!」

 ティスルがダンス・マカブルの準備を整えると同時に、全員が意識を戦闘へと切り替える。
 どうやら、ゴーレムの戦闘意欲は旺盛。戦いが避けられないのは……間違い、ない。
 そして、此処ではない別の場所でもやはり戦闘は発生していた。

「あっちこっちで戦う音が聞こえるわねー?」

 そんな、何処となくふわふわした雰囲気を纏う言葉を放つのは……『夢語る李花』フルール プリュニエ(p3p002501)だ。
 フルールの近くにはゴーレムの残骸が落ちており、此処でも戦闘があったことを伺わせる。
 そして実際、戦闘を終えたばかりでもあった。

「美味しい美味しい希少な卵。見つけるのがすごーく難しいのでしょう? どうやって探せば良いのかしらねー?」

 その戦闘に参加していた、もう1人……フルールの側に立つ『黒花の希望』天之空・ミーナ(p3p005003)が、周囲を見回しながら小さく息を吐く。

「そういえば卵を探さないといけないってことだけど……参ったね。さっぱり見当つかないや。本物かどうか見極めることはできるだろうけどさ」

 方法を求めてミーナはパカダクラの砂駆を見るが、すぐに首を横に振る。

「何故か姿を隠してる卵ってことだけど……パカダクラの砂駆の嗅覚……アテにならなさそうだなぁ。草食だもんなぁこいつ」
「ふふ、ある程度は見当はついてるのだけど」
「へえ、そうなの? それはマジで凄い」

 本気で感心したように言うミーナに、フルールは軽く胸を張ってみせる。

「火山の方なら源泉があるでしょう? 温泉の人は湯量が減ったって言ってるし、もしかしたら源泉辺りかそこから少し下った辺りに何かあるのかと思いまして」
「……ああ、なるほど。温泉の通り道に詰まってる可能性か……いや待て。それだと調理する前に既に茹だってしまってるじゃん。温泉卵じゃないじゃん」
「温泉で茹でてるなら温泉卵なんじゃない?」
「それもそうかも……しかし、それで源泉を見に行きたいって言ってたのか」
「そういうことね」まぁ卵じゃなかったとしても何かしら解決できれば温泉郷の人達も喜ぶでしょう」

 納得した風のミーナとフルール、そしてフルールの指令を受けて散っていく精霊たち。
 こうして、それぞれのチームは源泉に向けて進んでいくのだった。

●源泉にあるモノ

「此処が源泉ですか……」

 居るだけで熱々のたい焼きになりそうな熱気に、ベークは思わず後ずさりそうになる。
 いくら防御役に適した準備を整えてきているとしても、あまり長居したい場所ではない。

「こんな所に卵を産み落としても、すぐにゆで卵になりそうよね……」
「そうですね。流石にこんな場所にコケトラスも居ないでしょう」

 ティスルもリディアも、こんな場所にコケトラスは居ないと結論付ける。
 この場は、命を育むような場所ではない。それが来てみてハッキリと分かったからだ。

「いやあ、でも源泉の辺りって程よく湿気てて…もしかしてイケるか!? ここを重点的に探してみるー!」
「あ、ちょ、もう!」

 四つん這いで卵を探し始めた秋奈をどう止めようかと考えたリディアではあったが……。

「あ、なんかある」
「えっ」
「すごい卵っぽい。触ってるのに見えないとかすげー」
「え、あ、ほんとですね。此処にも何かありますよ」
「わあ、ほんとに見えない……」

 リディアが、ティスルが……コケトラスの卵らしきものをそれぞれ拾い上げる。

「こいつは思わぬ収穫だったな。まさかコケトラスの好物が温泉卵だったとはな」
「そういうわけでもないんだろうけど……」

 苦笑しながらイズマは「温泉の湯量が減った」という話を思い出す。
 源泉……この場所に何かがあったのは、恐らく事実なのだろう。
 しかし、何があったというのか?
 
「まさかコケトラスが湯治してたり……しないよな」

 此処からでは、源泉の中に何かがいるかはイマイチ分からない。
 しかしとりあえず卵は手に入れたのだ。

「お? アンタ等も源泉を目指してきてたのか」
「ああ、なるほど。そちらも卵を見つけたようだね」
「この辺り、結構落ちてるよね」

 その時、やってきたのはグレン、マルベート、そしてЯ・E・Dの3人組だった。
 どうやら結構な数の卵を拾ったようで、その手の中には隠蔽が解かれた黒い卵があった。

「数少ない卵を奪い合う、という訳ではないんだ。出来る事なら、この調子で皆で出来る限り沢山の卵を手に入れて、後で盛大に宴会でもしたいものだね」
「うん、それは良く分かる。でも……」
「ああ、何か……よくない雰囲気だ」

 ドゥーとマルベートがそう呟いた直後。白い湯気の向こうで、ボコリと音がする。
 まるで何かが盛り上がるような音。
 そこにあるのは源泉。ならば、もしや。
 そう考えたその時には……それが姿を現している。

「源泉が!?」
「へいへーい! 秋奈ちゃんはここだぞ! 鬼さんこちらーってね!」

 それが敵である、と。そう素早く察した秋奈は武器を構えて走る。
 ボコリ、ボコリと。源泉が盛り上がる。
 2つの、赤い目が輝く。
 嗚呼、嗚呼。なんということなのか。
 源泉が魔法生物に「されて」いる。噴出された超高温の湯がティスルを狙い……グレンが天来聖盾ルキウスを構え、それを見事に受けきる。

「魔法生物? スライムの一種かなぁ、それか水精霊タイプかも」

 放たれた破式魔砲が源泉に命中し、しかし源泉はすぐに元の姿に戻っていく。

「再生能力、か。でもまあ、喰えないやつなら大して興味もないよ」

 マルベートの運命選別が発動し……英司が後衛をフォローできるように前衛へと飛び出していく。

「私の出番ですね……!」

 リディアが七星極光『蒼炎斬』を放ち、それに続くように秋奈の猪鹿蝶が繰り出される。
 高威力の攻撃の乱打は源泉の中の何かの輝きを削っていき……イズマの黒顎魔王が更なる一撃となって叩きこまれる。

「……? アレって、宝石……?」

 そんな最中、ドゥーのハイセンスが源泉の中にある「赤い宝石のような何か」を捉える。
 すでに輝きを失いつつあるそれは、ティスルの破式魔砲で砕けて消えて。
 そして、そのまま源泉は形を失うように……いや、元の源泉のあるべき姿となって崩れ戻っていく。
 恐らくはアレが源泉を魔法生物と化した核であり、回収は元々無理な代物であろうことは簡単に想像できた。
 しかし、だからこそ。その確かな悪意を……ドゥーは、確かに感じていた。

●卵を食べよう、そこに長寿の効果はなくとも

「チーサさん、プリンをお願いします!」
「チーサさーん、わたしはオムレツが食べたいから、お願いできないかなぁ?」

 空からティスルが、地上からЯ・E・Dがチーサへと突撃していく。

「ぷりんたべたい」

 戦闘の疲れからか、プリンへの渇望からか……微妙に言語能力を失いかけている秋奈も加わり、厨房にて待機していたチーサが全員に順番に顔を近づけて嗅いでいく。

「とりあえず、全員風呂に入ってこいです」

 蒸し風呂の如き環境での源泉での戦闘。そこでの戦いは乙女の大敵であることに変わりなく。
 そうしてお風呂タイムが終わったころには、厨房では調理という戦いが始まっている。

「そっち、プリンにすが入るです! そこ、そろそろ卵を引き上げるです!」

 バタバタと忙しく動き回る調理班の面々だが、どの表情も喜びに満ちている。
 当然だ。各探索班の努力により、卵は予定を遥かに超える数が手に入っている。
 温泉卵にオムレツ、プリンに茶碗蒸し、カルボナーラにたい焼き。勿論ベークではないが、それはさておいて。

「誰か上手い人に手伝って貰いたい、というか任せたいところだけど」
「いいから手を動かすです!」
「皆で楽しく料理して美味しく食べるって、すごく幸せなことだだよね。ふふ、楽しいなあ」


 ミニュイもバタバタと動き回り、ドゥーが本当に楽しそうにカルボナーラの準備を整えていく。
 英司がドゥーの料理を楽しみにしていたが……この様子なら、きっと素晴らしい味になることは間違いないだろう。

「獲って、調理して、食べる! これ即ち、自然を制するという事ですね!」
「温泉でゆるりと寛ぎながら冷やした白ワインで喉を潤して……湯上りには幻の卵料理も味わえたら最高ってね」
「出てきたなら、一足先に味見させるから手伝えです」

 温泉から出てきたマルベートをチーサが厨房に引っ張り込んで。

「卵料理に合いそうな食材を買ってきたよ!」
「よし、私に任せて! この位余裕なんだから! ……フラグじゃないからね!」
「僕を掴むのはやめましょう! フラグを回収しかかってますよ!」

 イズマとサーニャ、ベークがそんな寸劇を繰り広げたり。

「美味しい物の為、だ……」
「……長寿の源、か。そんな効果はないんだろうけど……マジでうまいってことなんだろうなぁ」
「本当に、どんな味なのでしょうね。さぁ、もうひと頑張りよ♪」

 ルクトが、ミーナが、フルールが……それぞれ準備を進めていく。
 貸し切りのホテル・ミラトルテの食堂に所狭しと並べられていく卵料理は、どれも素敵な香りを放っている。
 全員が温泉から出てきてホッカホカになった頃には、それらは綺麗に並べられていて……誰かが知らず知らずのうちに「おお……と感動したような声をあげる。
 絶対に美味しい。誰に言われずとも、それが理解できたからだ。
 
 お疲れ様、そしていただきます。

 そんな合図と共に、全員が思い思いの料理を口に運んでいく。

「美味しい、ですね……」
「ああ、旨いな……幻と言われるだけはある」

 アナトラと天が口に運んだのは、温泉卵だ。
 濃厚なその味は何もつけずとも素晴らしく、「寿命が延びる」と噂になるだけの……いや、それ以上の味を天たちの中へと運んでくる。2人の旅行の一つの思い出としては、及第点以上のものだろう。

「オムレツ……美味しい……」

 Я・E・Dもまた、口に運んだオムレツの滑らかさと濃厚さに語彙を失いそうになる。
 ケチャップのいらないオムレツ。それがЯ・E・Dの感想だった。
 美味しい。それ以外の言葉が必要なくなる、そんな味。
 そしてそれは、プリンでも同様のようであった。

「おお……」

 リディアは、自分で作ったプリンを見てそんな事を呟く。
 硬めのプリンが出来上がることは分かっていた。
 しかしまさか、スプーンで突いても震えもしない程のプリンが出来上がるとは予想していなかったのだ。
 試しに皿を揺すってみても、プリンは不動。その内に秘めた重量感を誇示するかのようだ。

「……」
「……」
「……」

 リディア、ティスル、そして秋奈は無言で頷きあうと……プリンにスプーンを刺し入れる。
 プリンとは思えぬ抵抗力を貫き、スプーンに一口分を載せる。

「いただきます」

 誰が言ったか、そんな言葉が自然と口から出て。
 3人は同時にプリンを口に運び……一瞬にして驚愕の表情になる。

「な、なんですかこれ……!」
「濃い!」
「美味しい……!」

 口の中に伝わる濃厚な……確かな卵の味。かけられた、たっぷりのカラメルの……その味ですらプリンそのものの味を封じ込めるには至らない。
 あくまで自分はプリンなのだ、卵なのだと伝えてくるその味たるや!

「確かに……これは凄いね。幻と呼ぶに相応しい」

 同じようにプリンを食べたマルベートがそう呟き。

「食べると寿命が伸びる、か……闘病中は藁にもすがる心境でその手の話に飛び付いたものだが……今回は素直に楽しめるね」

 温泉卵を齧ったゼフィラが、楽しそうに微笑む。

「ポーチドエッグも美味しいね」
「うーん、確かに濃厚だ。大満足だよ……」

 ミニュイが、そしてイズマがそれぞれ卵料理に舌鼓をうつ。
 
「いや、本当に美味いなコレ」
「うん。それに、こうして皆で楽しめてるってだけでも素敵だよね」

 英司も、ドゥーも笑顔で卵料理を食べ進めていく。

「皆でお腹いっぱい食べられるだけの量が手に入って、本当によかったよ」
「こういう雰囲気も悪くはないですよねえ」

 津々流が、そしてベークがそんな事を言いながら見守る雰囲気を出して。

「すごーく美味しいわね、ミーナ」
「ああ。物好きに付き合った甲斐はあるってことかな」

 フルールとミーナが、互いに冗談めかしながらも微笑みあう。
 
 そうして、コケトラスの卵料理の宴は楽しい雰囲気を纏ったままに進んでいく。
 結局コケトラス「そのもの」の姿は誰も見つけられなかったし、このパーティーが終わればまた、コケトラスの卵は幻の食材として中々口に入らないものとなっていくのだろう。
 けれど、今は。今だけは。
 この素晴らしき瞬間に、そしてこの素晴らしき仲間たちに祝福あれ。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

コングラチュレーション!
不穏の種は芽吹くことなく、素晴らしい結末となりました。

それでは皆様、また次回のお話にて!

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