PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<ヴァーリの裁決>暁天の街道

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ごうごうと――
 燃える炎が岩肌を照らしている。
 からがらと――
 寄り集まって出来たひとのかたち。
 産声を上げるように、天に向かって咆哮する。

 昼下がりの炎上都市天城。
 暁天の街道には、王都メフ・メフィートへ向かう人々が行き交っていた。
 通り過ぎて行く行商人を見つめて、アカツキ・アマギ(p3p008034)はひとつあくびをする。
「平和じゃの」
 むにゃむにゃと目をこすり、お気に入りのロッキングチェアをギコギコと揺らした。
 アカツキの小さな身体には少しだけ大きいチェアはクッションを敷き詰めてお昼寝をするのに丁度良い。
 眠気のままにとろりと瞼を落とす。
 心地良いお昼寝の予感にアカツキは意識を手放し――

「ォォオ――――――――!!!!!!」

 天を裂く咆哮に飛び起きた。
「な、何じゃ!?」
 慌てて家屋の外へ飛び出せば、大炎鉱山から人々が逃げ出してくるのが見える。
「どうしたのじゃ!?」
「アカツキさん! 大変です! 鉱山に炎を纏った巨人が現われたんです!」
「何じゃと!?」
 大炎鉱山で採掘をしていた労働者が言うには、別の場所からやってきた巨人が、鉱山で出土する『ほのおのいし』や岩を取り込んで大きくなり、火を噴くようになったのだという。

「あ、あれを見ろ! 巨人がやってくるぞ!」
 誰かの叫び声に顔を上げると、大炎鉱山から巨人がこちらへと向かってくるではないか。
 動きは鈍いが、巨体で家屋を踏み潰しながら、暁天の街道の中心へ移動している。
 このままでは、炎上都市天城は炎の巨人に踏み潰されて壊滅してしまうだろう。

「執政官! とにかく、住民を避難させるのじゃ!」
「分かりました。こちらはお任せください。アカツキさんはローレットに救援要請をお願いします!」
 アカツキは執政官に「わかった」と言い放ち、早馬へと飛び乗った。


「大変なのじゃ! 妾の領地が巨人に襲われているのじゃ!」
 ローレットの前まで馬で乗り付けたアカツキは、入り口のドアを叩きつけるように開いて叫ぶ。
 息を切らして、倒れそうになる彼女を『旅の占い魔女』セスカ・セレスタリカ(p3p007979)が支えた。
「また、ですかー」
「どういうことじゃ? また?」
 最近幻想では大奴隷市が開催されたり、王家のレガリアが盗まれたりと大忙しらしい。
 その影で、アカツキと同じように領地を襲われる者が増えて来た。
「それで今ローレットには人が沢山居るんですよー。だから安心してくださいねー」
 セスカは「皆さんー!」とローレットのイレギュラーズに声を掛ける。
 ぞろぞろと集まってきた『仲間』たち。

「というわけでですねー、アカツキさんの領地に炎の巨人が現われたみたいなんですー」
「それだけではないのじゃ、その巨人に操られるように炎と土のエレメンタルも居るのじゃ」
 倒すべき相手は炎の巨人とエレメンタル達ということなのだろう。
 炎のハンマーを振り回して攻撃をしてくる他、踏み潰しや火炎放射も注意しなくてはならない。
「このままでは、住民に被害が出てしまうかもしれぬ。どうか助けてほしいのじゃ!」
 イレギュラーズたちは任せろとアカツキを激励する。

 相手が炎の巨人だというのならば、炎の魔女として負けられぬ戦いだ。
「――妾の全てを焼き尽くす地獄の炎を見せてくれるわ!」
 アカツキは拳を握りしめ、立ち上がった。

GMコメント

 桜田ポーチュラカです。炎の巨人を倒して領地を守ってください。

■依頼達成条件
 炎の巨人を撃退する

■フィールド
 幻想にある炎上都市天城。暁天の街道。アカツキさんの領地です。
 時間は昼です。広場があり、周りには家屋があります。
 戦闘には問題無いでしょう。

■敵
 炎の巨人×1
 赤い炎纏った巨人です。
 炎の技を使ってきます。炎系統のBSに注意です。
 ハンマーを振り回し、口から火を噴きます。
 踏み潰しは強力なので注意です。

 ファイヤエレメンタル×6
 炎の魔法を使います。近~遠を攻撃してきます。
 炎系統のBSに注意です。

 アースエレメンタル×6
 土の魔法を使います。近~遠を攻撃してきます。
 体当たりは結構痛いです。

■同行NPC
『旅の占い魔女』セスカ・セレスタリカ(p3n000197)
 世界中を旅して占いなどをしている魔法使いの女の子。
 旅の路銀も少ないため、もっとギルドに顔を出そうと決意した。
 魔法を使って攻撃や回復を行います。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●ブレイブメダリオン
 このシナリオ成功時参加者全員にブレイブメダリオンが配られます。
 ゴールド、ミスリル、アダマンタイトとメダルごとにランクがあり、
 それぞれゴールド=1p、ミスリル=2p、アダマンタイト=5pとして扱われブレイブメダリオンランキングにて総ポイント数が掲示されます。
 このメダルはPC間で譲渡可能です。

  • <ヴァーリの裁決>暁天の街道完了
  • GM名桜田ポーチュラカ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年03月30日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

クロバ・フユツキ(p3p000145)
深緑の守護者
スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女
フルール プリュニエ(p3p002501)
夢語る李花
天之空・ミーナ(p3p005003)
貴女達の為に
アカツキ・アマギ(p3p008034)
焔雀護
笹木 花丸(p3p008689)
堅牢彩華
クルル・クラッセン(p3p009235)
森ガール
マグタレーナ・マトカ・マハロヴァ(p3p009452)
彼方への祈り

サポートNPC一覧(1人)

セスカ・セレスタリカ(p3n000197)
旅の占い魔女

リプレイ


 イレギュラーズはギルドローレットから馬車を走らせる。
 バカラバカラと馬の蹄が街道の土を巻き上げていた。
「くっ、街道沿いに宿場町を建設してそこからの収入でぬくぬく生きる妾の平和が脅かされるとは……!!
 何かよくわからんけど許さんぞ巨人とやら!」
 一番先頭で『焔雀護』アカツキ・アマギ(p3p008034)が腕を振り上げ雄叫びを上げる。
 馬も連動するようにヒヒンと鳴いた。
「後、炎を纏うのは妾の方の特技であるからして権利の侵害というやつじゃ! 多分な!!」
 炎を纏う巨人がアカツキの領地炎上都市天城。暁天の街道に現われたのは、きっと運命なのだ。
「不届き千万! 目のもの見せてくれるわ! はいやぁ!」
 馬のお尻をペチンと叩き、速度を上げていくアカツキ。
 その後ろを走るのは『リインカーネーション』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)だ。
「今日はアカツキさんの為にも頑張らないと! それに罪もない住人が巻き込まれるのも忍びないしね」
 手綱をぎゅっと握り、馬の振動に合わせて身体を動かすスティア。
 長い髪が後ろにさらさらと流れて行く。
「うんうん。アカツキさんが助けを必要としているなら花丸ちゃん頑張っちゃうよ!
 今日この場に駆け付けられなかった皆の分までねっ!」
 元気よくウィンクしてみせるのは『はなまるぱんち』笹木 花丸(p3p008689)だ。
 アカツキの為に手助けをしたいと考える者は沢山いた。
 けれど、皆、幻想各地で起こっている事件に右や左の大騒ぎなのだ。
 何処も人が足らず、今日ここにイレギュラーズが集まったのも運命なのだろう。
 張り切るぞと花丸は拳を空へと突き上げる。
「そうだね。街も人も、焼かれちゃったら大変、大変! わたしの領地って訳じゃないけどー
 ……こう言う時は助け合いだよね!」
『森ガール』クルル・クラッセン(p3p009235)は同じ馬に乗っている『旅の占い魔女』セスカ・セレスタリカ(p3p007979)に同意を求める。
「はい。皆で助け合えば、被害も抑えられますしねー」
「今回もお仕事、がんばろー! セスカちゃんもよろしくね!」
 にっこりと微笑むクルルにセスカもつられて微笑んだ。ふんわりと和やかな雰囲気に包まれる。
「炎の魔女さんの元に炎の巨人というのも偶然なのか。もし意図的だとすれば中々挑戦的ですね」
 ふむ、と『永久の新婚されど母』マグタレーナ・マトカ・マハロヴァ(p3p009452)は先頭を走るアカツキを見つめる。
「そうじゃろ! なんて挑戦的なヤツなのじゃ!」
「誰のどんな思惑があろうとなかろうと、人の未来を奪おうとするものは許し難い行為もの。
 特に子供達には同じ光でも街を焼く炎でなく未来へ向かう灯火を見せてあげたいものです」
 祈るように瞳を伏せたマグタレーナ。
「皆でどーんとやっつけて、子供達も救うのじゃ!」
「ええ。そうですね。先を急ぎましょう」
 アカツキの号令と共に、イレギュラーズはいざ炎上都市天城へ馬を走らせるのだ。

 ――――
 ――

 街道の向こうに見えてきた炎上都市天城。
 赤々と燃えているのは建物だろうか。
「いや、あれは……巨人じゃ! もうここまで来ておったか!」
 アカツキは駆け寄って来た執政官に状況報告を受ける。
「お帰りなさいませ、アカツキ様。住民の避難は一通り完了しております。あとはあの巨人を倒すだけなのですが……」
 言い淀む執政官にアカツキは怪訝な表情を向けた。
「私達の力では及ばず、こんな所まで引き寄せてしまいました。申し訳ございません」
「なぁに。大丈夫じゃ! その為に妾達が居るのだから。心配せんでもよいのじゃ! 執政官は引き続き避難者が居ないか確認して回るのじゃ。巨人は妾達に任せるのじゃ!」
「はい! よろしくお願いします。では、ご武運を!」
 アカツキに一礼をして去って行く執政官。炎を纏う巨人にアカツキは向き直った。
「さあ、行くぞ!」
「おおー!」
 暁天の街道にイレギュラーズの声が響き渡る。


「こっちは危ないのじゃ! すぐ逃げるのじゃ!」
「向こうに避難してる人がいるよ。転けないように行って! ここは私達が絶対に守ってみせるから身の安全を第一に考えて!」
「お願いします!」
 アカツキとスティアは逃げ遅れた人を誘導しながら巨人から彼等を庇うように注意深く観察していた。
「どこで戦うんだ?」
『死神二振』クロバ・フユツキ(p3p000145)の問いかけにアカツキは街道に続く広場を指差す。
「戦う場所はそうじゃのう……開けた場所が良いと思うのであの辺の広場じゃな。
 建物の被害はある程度は仕方がないとは言え、なるべく減らしたいところじゃからのう、これからの妾の収入に賭けて……!!」
 街道から広がる広場は周りに建物があるが、十分に戦える場所だろう。
「よし、じゃあ俺とクルル、スティアで保護結界を張れば、あの広い広場も何とか守れるだろ」
「なんと有り難い! じゃあ結界は任せるのじゃ!」
「おうよ!」
 クロバとクルル、スティアは先に広場へと走り保護結界を張り巡らせる。
 これで、戦いの余波で広場にある建物が壊れる心配は無いだろう。
「うん。三人で力を合わせれば結構広範囲に張れるね」
 クルルはクロバとスティアを見つめて笑顔で声を掛ける。
「このまま巨人を怒りでコントロールして、広場に引っ張り込めば大丈夫だね。広い場所なら、余り他に気を取られずに戦える……はず!」
「ああ、これで思う存分暴れられるというものだ!」
 クロバは剣を掲げて気合いを入れる。その様子をマグタレーナは頼もしいと微笑む。
「それにしても炎の巨人……炎の巨人かー。
 巨人まで炎を纏ってやって来るとかなんと言うか……アカツキさんって感じだよね」
 花丸はくすりと笑って巨人の前に走り込む。
「襲われてる時に考えるような事じゃないけどさ。よーし! 花丸ちゃんは炎の巨人の引き付け役を担当するねっ!」
「任せたのじゃ!」
「うん! まかされたのじゃ! なんてね」
 軽い動作で飛躍した花丸は一直線に暁天の街道を走る。
「セスカさんには状況に応じて攻撃と回復を使い分けるようにお願い!」
 攻撃優先はスティアが怒りで引きつけられていないエレメンタルから。
「範囲攻撃が使えるなら範囲で纏めて、単体のみなら皆と攻撃先を合わせる様に!」
「は、はい!」
 花丸の的確な指示に、セスカは身を引き締める思いで戦場に臨む。
「巨人の方は花丸ちゃんが何とかするから先ずはエレメンタル達を優先して!
 って事でスティアさん、そっちは任せたよ?」
「了解! エレメンタルの抑えは私にお任せあれ!」
 保護結界があるとはいえ、不測の事態は想定しておくにこしたことはない。
 スティアは花丸が巨人の下に滑り込み、その拳を叩きつけたのをじっと見つめていた。

「あらあら大きな巨人さん、配下のエレメントを連れてどこ行くの? どこから来たの?」
『夢語る李花』フルール プリュニエ(p3p002501)は巨人に問いかける。
 答えが返ってくるとは思って居ないけれど、意味を成さない雄叫びに溜息を吐いた。
「エレメント達、操られているだけなら、巨人を倒してハイお仕舞いってならないかしらね」
 操られているだけなら精霊達は悪く無いのだから。何とかならないものかと首を捻るフルール。
「炎の巨人が相手と来たか。まぁ、炎なら俺の剣も負けてないというか」
 クロバは双剣をビシっとかっこよく引き抜く。片方の剣は爆発するタイプらしい。
「全部まとめて斬って吹き飛ばす!!」
 花丸に続いて巨人へと走り込むクロバ。
「あ、そっちに行ってる。クロバさん、押し返して!」
「おう、任せろ!」
 クロバと花丸がスイッチをしながら巨人を誘導していく。
 その周りをウロウロしているエレメンタルはスティアが引きつけていた。それでも漏れる敵はマグタレーナがクラッカーを打ち鳴らし注意を引く。
「人の命が助かっても、街の被害が大きければ帰る家もありませんものね。そちらも含めてしっかりと守りたいものです」
 引き寄せられるようにマグタレーナの元へゆっくりと近づいていくエレメンタル。
「巨人だなんだと本当に騒がしいな」
 紅い天使の翼を広げて『黒花の希望』天之空・ミーナ(p3p005003)は近づいて来る巨人を睨み付けた。
「悪いが木偶の坊ども、こっから先は立ち入り禁止だぜ!」
 広場に踏み入った巨人目がけて奏でられる歌。絶望の海を歌うその声は冷たい呪いを帯びているのだ。
「同士討ちでもしてくれりゃ、こっちとしては楽なんだがね」
 ミーナの歌は巨人の近くにいたファイヤエレメンタルを魅了する。同士討ちを始めたエレメンタルを見てミーナはしてやったりと嗤う。


 広場からは地響きが鳴り響いていた。
「一箇所に纏めてからドカーンじゃ! 頼むぞスティアちゃん!!」
 アカツキの声に任せてと手を上げるスティア。
 ゴロゴロと音を立てながら付いてくるアースエレメンタルと、轟々と炎を燃やしながら追いかけてくるファイヤエレメンタルを一箇所にまとまるように誘導していく。
「よーし! 今だよ! まとめて倒しちゃおう!」
 スティアのかけ声と共に、エレメンタルへと集中攻撃が重なった。
 アカツキの轟音を轟かせる雷が戦場を揺らす。
 クロバの双剣は残影を帯びてファイヤエレメンタルを二つに割った。
「続け!」
 手を空に掲げたマグタレーナの手の中に輝くのは闇の月。
 敵を暗い運命で照らし出す月夜の光だ。厄災がエレメンタルに流れ込みブルブルと震える。
「クルルさん!」
「うん、一緒に行くよセスカちゃん!」
 セスカとクルルはタイミングを合わせて魔法を繰り出す。
 グルグルとらせん状に絡まった二人の一矢は広場に轟音を響かせた。

「私は巨人を相手にしておこうかしら。危険だけれど、精霊達をあまり傷付けたくはないですからね」
 フェニックスたちを撫でながらフルールは巨人へと照準を合わせる。
「まぁあの巨人も元は精霊、というならどうにかしてあげたいけれど。そうでもなさそうね。さてさて、巨人が出てくるお伽噺はあったかしら? さぁ、精霊達。ひとつになりましょう。
 ――精霊天花、私を焔で彩って?」
 フルールの周りに轟々と炎が燃え上がる。ふわりと飛び上がるフルールはまるで不死鳥の様に美しい色彩をみせていた。
「誘導や被害抑制はお任せするけれど。私は私で巨人を相手にする。
 人も魔種も動物も、魔物だって私は仲良くしてくれるなら嬉しいと思っているけれど。
 仲良くできないなら、私はイレギュラーズの使命を全うしましょう」
 フルールは巨人への攻撃の手を緩めない。
「私の爪はどこにでも届く。鬼さんこちら、手の鳴る方へってね」
 一刻も早く巨人からエレメンタルを解放してやりたいのだ。
 そうすれば『被害は最小限』となるのだ。倒されてしまうのは仕方の無いことだけれど。それでも一人でも精霊が助かって欲しいと願うのはフルールの優しさだろう。
「だから、早くたおれてください!」
 苛立ちを叩きつけるように巨人へと攻撃を打ち出す。

「おっと、こっから先は通行止めだぜ?」
 ミーナは広場から離れようとするエレメンタルの前に立ちはだかる。
 押し戻すようにエレメンタルを広場へとはじき返したミーナ。
 あとこの一体で雑魚共を一掃できそうだと戦場を見渡す。
「じゃあ、これでしまいだ! 雑魚どもめ!」
 ミーナの攻撃はアースエレメンタルに命中し、バラバラと分解した。
「よし! 残るは巨人のみだ! いくぜー!」
「おー!」

 ――――
 ――

 炎の巨人が拳を振り下ろす。その下に居るのはセスカだ。
「危ない!」
「……!」
 スティアが咄嗟にセスカを突き飛ばし、拳の下敷きになる。
「スティアさん!」
「……大丈夫、だよ! 誰一人倒れさせるわけにはいかないんだから!」
 巨人の拳を押し上げるスティア。
「問題無いのじゃ! スティアちゃんは強いのじゃ!」
「うん! 私は強いんだから!」
 アカツキの言葉に拳をぶんぶんと振り回すスティア。
 自分が下敷きになっていれば重傷を負っていただろう攻撃を難なく受け止めはじき返したスティアに感嘆の声を上げるセスカ。
「エレメンタルが居なくなったから、巨人へ総攻撃だよ!」
 花丸の声に皆が巨体へと視線を上げる。
「家屋の周りで暴れられて被害を拡大されたらアカツキさんのトコの人達も困るだろうし、そろそろ終わりにしようか!」
 花丸の拳が連打を炸裂させ、炎の巨人がぐらりと傾ぐ。
「――今だよ!」
 バランスを崩した今がチャンスだと花丸は叫んだ。
「偶然だが、どうも私はあんたには強いみたいでなぁ!」
 ミーナには巨人の炎が届かない。希望の剣を真っ直ぐに構え突撃する。
「この一撃をお見舞いしてやる!」
 邪悪なる剣が巨人を更に押し倒す。
「地獄の業火ならこちらも持ち合わせていることを思い知るんだな、この”死神”の焔と二刀で!」
 ミーナと交代するようにクロバが駆け出した。
「焔って奴は一度火が付いたらすべて燃やし尽くすまでは止まらないのさ、って誰かが言ってたな。思い違いかもしれないが――!」
 切り裂かれる巨人の炎。
「わたしいくよー!」
 続けざまに放たれるクルルの雷矢が巨人の身体を撃ち貫く。
 轟音が鳴り響く最中、マグタレーナの声が微かに聞こえた。
「暗い運命は平和に暮らす人々よりそれを乱す者たちにこそ訪れるのが相応しい」
 刹那の疑似生命は光を帯びた天使の姿で巨人へと飛来する。

「妾の前で炎の巨人などと名乗ったことを後悔させてやるぞ……」
「名乗ったんだっけ?」
 アカツキの言葉にスティアが首を傾げる。
「え、名乗ってない? えーっと、それはそれ、これはこれじゃ!」
 とにかくと、アカツキが咳払いをして。
「紛らわしい外見をしてるやつはお仕置きというやつじゃな?」
 炎を模した刻印から光の球が生み出される。
「これでお終いじゃ――!!!!」
 巨人の大きな身体をも撃ち貫く破滅の光が戦場を駆け抜けた。


「あーっと、終わったぁ」
 クロバは崩れ落ちる巨人を見つめて、肩の力を抜く。
「念のため被害がどうなってるのか確かめるか。修理が必要になるのならここまできた次いでだ、手伝っていくとしよう。なんだったら木材とか深緑に領地があるので送ってもらえそうだしな」
「おー有り難いのう」
 クロバはアカツキにハイタッチをしてメラメラと燃える屋根に気付く。
「あわわ!? 消火活動のお手伝い! 火の用心ー!セスカちゃん手伝ってー!」
「分かりましたー!」
 クルルとセスカが水の魔法を使って火を消し止める。
 フルールは地面に転がった精霊達のお墓を作るために、核となっていた宝石を拾い集める。
 誰も知らない場所で静かに眠らせてあげるため。

「今日はありがとうなのじゃ! 皆のお陰で領地が守れたのじゃ!」
「えへへ。皆で頑張ったからだね!」
 アカツキがぺこりとお辞儀をして花丸が微笑む。
「花丸ちゃんも来てくれてありがとなのじゃ。我が都市で何か食べていくとよいぞ、妾の奢りじゃ!」
「やったー! じゃあ美味しいものいっぱい食べようっと!」
 わいわいと、花丸とアカツキの声が炎上都市天城に響き渡った。


成否

成功

MVP

笹木 花丸(p3p008689)
堅牢彩華

状態異常

なし

あとがき

 イレギュラーズの皆さん、お疲れ様でした。
 無事にアカツキさんの領地を守る事が出来ました。
 MVPは奮闘した方にお送りします。
 それでは、またのご縁をお待ちしております。

PAGETOPPAGEBOTTOM