シナリオ詳細
<Weiß Krone>ホワイトグローリーデー~希望ヶ浜~
オープニング
●くすくす笑え
包むのがグラオ・クローネなら、ほどくのがヴァイス・クローネ
傷つきそうな柔らかな本音を幾重ものラッピングにくるんだグラオ・クローネ
リボンをほどき包装紙をひらき秘められた本音へ迫るヴァイス・クローネ
あまいあまいお菓子に諧謔のスパイス
きみは何をわたす?
八方美人のマカロン
そ知らぬふりのマシュマロ
いい人どまりのクッキー
恋患いのキャンディ
現状維持のバームクーヘン、強欲なマドレーヌ、ため息のキャラメル
本当に何が入っているのかこの包みには
開けるこっちの気分は地雷原ヒッチハイカー
●もう全部まとめてワンチャンありってことで
「じゃあ最中はなんの意味があるの?」
「……知らない」
「バタークッキーサンドはクッキーの範囲内?」
「……わからない」
「ういろうは? ねりきりは? らくがんは?」
「……なぜそのチョイスなの」
「チョコをもらったのならチョコを返せばいいのでは?」
「……」
『無口な雄弁』リリコ (p3n000096)はそろそろ頭が痛くなってきた。兄貴分である『孤児院最年長』ベネラー (p3n000140)の思考はロマンチックからは程遠い。本人はただ単に気になるから問うているだけで悪気がないのがまた始末に負えない。
「……ものに意味を持たせることで言葉より雄弁に伝えられる時もあるのよ」
「そんなの言ったもの勝ちじゃない? バケツプリンを作って僕の愛はこんなに大きいと言い張ったり」
なぜそこでバケツプリンなのだ。なんかこう、あるでしょ、いろいろと。リリコはそう思ったが残念ながらベネラーの思考回路は、リリコとは遠くかけ離れているので理解は諦めている。
「チョコの返礼がややこしいうえに根拠不明で面妖だよ」
「……いや、その、こう、もっと肩の力を抜いて、もらう側がうれしくて、あげる側も楽しいそういうイベント……」
「お菓子もらったら人はみんなそうじゃない? なのにどうして一部のお菓子ばかりもてはやされるのかな」
「………………手が汚れにくくてお茶うけに良くて安価だからよ」
「なるほど、それならわかる」
やはりこの兄貴分は情緒より論理を示したほうが速い。言いたいことはそうではないのだけど、説明するだけ無駄なのでリリコは口をつぐんだ。菓子をやり取りするときの心のときめきなど説明するのはくすぐったいし、相手が悪すぎる。すべったギャグの笑いどころを説明するようなものだもの。
ちょうどのその時、エスカレーターの頂点についた。やってきたのは希望ヶ浜のデパート最上階の催事場。定番のお菓子からマイナーなお菓子まで多種多様にそろえられ、人々が鵜の目鷹の目でためつすがめつしている。特に若い女の子たちの熱気はすさまじい。
売り場は例えるなら、甘味の花園。その量や種類はテーブルの上の大艦隊。私を食べてと甘い香りの飽和攻撃。甘党でなくとも目移りすること間違いなし。あなたはそこで……?
●生きるべきか死ぬべきか。定番か、新定番か?
やったことは済んだことです。思い出積み重ねて少しずつ変わる関係。遠ざかるよりは深めたい。しあわせはたくさんあったほうがいいに決まっているので、本日の俺僕私はいつもよりちょっと勇気振り絞っていこう。
君へ一歩近づきたいな。あわよくばプレゼントが欲しいな。下心ブーストは天使の声援。うわついた気分はなかなかいいもので、踊っちゃいたいの、君の手を取って。
- <Weiß Krone>ホワイトグローリーデー~希望ヶ浜~完了
- GM名赤白みどり
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2021年03月25日 22時05分
- 参加人数18/30人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 18 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(18人)
サポートNPC一覧(2人)
リプレイ
●
だってこんなにあるんだもの、目移りしたって仕方ない。
ニルは浮かれた気分で歩き回った。体が羽のようには軽い。何を選ぼう。すぐつまめるもの。手にくっついたりしないもの。きっとあの人のことだから、お仕事に夢中な時はお菓子のことも忘れてしまうに違いない。となると乾燥にも強いもの。
ニルは迷いに迷って、店員へ声をかけた。
「贈るものに意味があるのですか? うーん……ニルは、その人が美味しいって言ってくれたらいいなって。その人の美味しい表情が見れたらいいなって」
「すてきな思いですね。でしたらこちらなどいかがでしょう」
ビタミンたっぷりカラフル野菜ドロップス。甘さは控えめ、栄養たっぷり。意味? それはね……。
さっそくそれを購入したニルはあの人の元へ駆けていった。はずむ胸もそのままに。
「大事ないか?」
「ええ、だいじょうぶ」
リュグナーの手をしっかりと握ったままソフィラは微笑んだ。
「目が見えなくても、標があるなら大丈夫」
今度はリュグナーが微笑む番だった。
「ふふ、迷子にしては嫌よ? ちゃんと握っていてね」
「安心せよ、人探しの仕事をするつもりは無いが故、手は離さぬ」
やがてリュグナーが立ち止まったので、ソフィラも足を止めた。
「ほう、蛍光色のバームクーヘンか。これはまた珍しい」
お客様、試食されますか?
店員にそう誘われ、リュグナーはうなずいた。一欠だけの儚い味わい。口の中へ広がってすぐに溶けて消える。
「ふしぎね、綿菓子を食べているみたい」
「ああ、この食感は珍しいな。バームクーヘンのようでいてそうでないとは」
それから餅のように伸びるキャラメルを試したり、噛むたびにギャーと鳴く怪獣グミを食べたり、ふたりは会場内のさまざまなお菓子を分け合って食べた。
「あっ」
ソフィラが小さく声を上げる。どうしたと寄り添うリュグナー。けれどソフィラは茶目っ気たっぷりに「見ないで」と言うだけだった。
会場を一周する頃には、さすがに甘いものに飽きてきた。
「さすがに腹がくちくなってきた。ソフィラはどうだ?」
「私もよ、情報屋さん、腹休めにカフェでもいかが」
「そうだな、コーヒーが飲みたい」
リュグナーはソフィラを伴ってエスカレーターを降り、下の階でカフェへ寄った。リュグナーはブラック。ソフィラはミルクだけ足した。
「リュグナーさん、これを。ワインにもあうはず」
そう言ってソフィラが差し出したのはオランジェット。
「グラオ・クローネとかぶってしまうけれど、このチョコレートとオレンジの相性が抜群でつい買ってしまったの」
ソフィラが自分の舌を信じて選んだものだ。リュグナーは破顔した。
「いただこう。では我もこれをソフィラに」
それは飴細工でつくられた薔薇だった。本物のように精巧な出来を、袋越しにも感じ取ることができる。
「ありがとう、大事にするわ」
「いや、食べてくれ」
茜さす帰り道。車道側に立って歩きながら行人はクッキーの重みに驚いていた。
「意外と買ってしまったな。生徒たちにももらったから。お返しを考えるのに付き合ってくれてありがとう、アントワーヌ」
「ううん、行人君が喜んでくれるなら、私も嬉しいよ」
身長差のある彼女の歩幅に合わせて、きもちゆっくりと行人は歩いた。アントワーヌもアントワーヌで、お返し用のお菓子を山程。
アントワーヌが顔を伏せる。
「残念だな」
「なにが?」
「袋で手がふさがってるから、お姫様をエスコートできないのが」
しばしの静寂、車道を一台の車が通り過ぎていく。
「……荷物なら持つけれども、どうだい?」
アントワーヌは足を止めた。
……ほら、そうやって手を差し出して私を女性として扱うんだ。ずるいな。なのに君の隣はやはり心地いい。離れがたい。傍に居たい。思いが膨れ上がって瞳から溢れそうになる直前、アントワーヌはいいことを思いついた。
荷物をしぶしぶ行人へ預け、空いた手でミルクキャンディを取り出す。ていねいに包装を剥き……。
「ハッピーホワイトデー。大好きだよ、行人君」
行人は軽く目を見開いた。
大好き。きっとまだ友人の域を出ない言葉。だけど、言わせた。言わせてしまった。
(受けなきゃいけないよなぁ。今、この時だけのことを考えるべきだ)
行人は首を伸ばして、ぱくりと指先からミルクキャンディをかすめ取った。ころころと口の中で飴玉を転がしながら、アントワーヌの表情を確かめる。
「私が食べさせるつもりだったのに」
なんとも残念そうな顔。行人は吹き出した。
「甘いな。とろけるようだ」
「そうだ、この後私の家に置いでよ。二人でお菓子を食べながらホワイトデーを過ごそうじゃないか」
「いいよ。俺のお返しは紅茶と合わせたほうが良いからな」
微笑んだ行人はゆっくりと歩き出した。
(クク……言うじゃないか。大好き、か)
ならばこの返礼にも重みが感じられるというものだ。彼女のために、マカロンを。
アントワーヌは思う。
君が、少しずつこちらへ歩み寄ってくれているのをかんじる。私に対してもう少し踏み込んでみたいと言ってくれたね。だけどね、やっぱりまだ怖いんだ。この思いをさらけ出したら君が離れてしまいそうで。今まで気づいてきたこの日だまりが崩れてしまいそうで言えないのさ。情けない王子様。君のせいだよ。君が私を「女性」として扱うから。恋の味を──覚えさせたから。
いつか、言わせてね行人君。「愛してる」と。
デパートの屋上へはペガサスの引く馬車で乗り付けた。
真っ白なテラス席を借りて、ヨタカと武器商人とリリコは腰を下ろした。おしゃべりの種は尽きない。
「でね…紫月も最近は…食べることも好きになってきたみたいで…色々料理をしたり勉強したりしてる…。」
「そうだねぇ、小鳥といるとどうしても朝昼晩用意しなくてはいけないだろう? そうなるとやはり我(アタシ)も味見はしなきゃいけないし」
美味しいものは我(アタシ)も好きだしねえと、武器商人は語尾を揺らした。
しかしその裏では、壮絶な腹のさぐりあいが続いていたのだった。
(紫月へのプレゼント……これではずしてないよな…?)
(今回もお互いに贈り物をするのだけど……さて、何にしようか? 二人で楽しめて、かつ新鮮でヨタカが喜ぶようなもの。悩ましいねぇ)
リリコは静かに微笑んでいる。
「小鳥」
「紫月!」
同時にお互いを呼び、番はどうぞどうぞとゆずりあった。
「これ、『月夜の宝石菓』、喜んでくれるかな……。」
あけてみるとそれはシックな箱だった。蓋を開けると、打って変わってまばゆいまでの琥珀糖が並んでいる。まるで星月夜。武器商人が一口もらうと、シュワっとサイダーみたいに口の中、弾けて消える。
「ああ、我(アタシ)の好きな味だ。『シュガーハーバー』を思い出すよ」
よかった……。崩れ落ちんばかりにヨタカは安堵した。
そこまで思いつめなくともとケラケラ笑い、武器商人もプレゼント。
「『セレナーデ・ドロップス』。お納め願うよ。のど飴としても人気があるみたいで音楽家の小鳥にはちょうどよかろ?」
そこに並んでいたのは豊穣風の飴玉。とろりと透明感のある色合い、色の違いは味の違いか。にぎやかで玉手箱のようだ。
「ありがとぉヨタカ。おいで、撫でてあげる」
「んわ、紫月…へへへ…。」
嬉しそうに微笑むヨタカ。その耳元へ唇を寄せる武器商人。
「帰ったら二人でゆっくり楽しもうねぇ」
「ふふ…勿論だよ…。」
こっそりと言葉をかわし合う二人。リリコはその様子を微笑ましく見つめていた。
「そう、そう、リリコにも贈らないと。二人で悩んで、桜のアイシングクッキーを買ってきたよ」
「春をお届けするよ…。可愛いお嬢さん、いつもありがとう…。」
「……うれしい。みんなで分けて食べるわね」
レベリオは少しだけ早めに待ち合わせをした店へ向かった。オープンカフェのテラス席で、あの子は本を読んでいた。
「待たせてしまったか」
レベリオがそう声をかけると、メイヴィスは本へ金色のしおりをはさみ、うれしげに微笑んだ。
「ううん、いま来たところよ。これ、面白いわ。ありがとう」
とある経緯で用意した本が、いま彼女の手元にある。その経緯を思い出してレベリオは若干頭痛がした。
「あなたが私のために選んでくれたのが、一番嬉しい」
「ならいいんだが」
明るい笑顔に心も救われる心地がした。
ふたりで料理を待つ間に、レベリオは買ったばかりの菓子を彼女へ渡す。
「これが俺の気持ちだ。言わなくても君ならわかるだろう?」
包みを開くと、そこにはマロングラッセ。メイヴィスはちょっと意地悪そうに微笑んだ。
「あなたがアレキサンダーなら、私はロクサーヌになれるのかしら?」
「……」
レベリオは眉間に手をやってうつむいた。頬が熱いのは、きっと気のせいだ。
さて、お菓子売り場で店員を巻き込んで10も年下の少女に贈るホワイトデーのプレゼントを真剣に考える強面の大男の姿をご覧ください。
仕方がない。天は学生時代からこの混沌へ至るまで女っ気に乏しい生活を送ってきたのだ。これはむしろ彼の誠実さ。
(しかしホワイトデーがこの世界にもあるとはな)
天はそのことに少しばかり驚いていた。だがこれはアナトラとの距離を縮めるいい機会になるだろう。彼女と楽しく生活を贈るというウィンゲートさんの意思にも沿うし、年頃の娘なら菓子は好きなはずだ。
戻った天はさっそくアナトラのもとへ足を運んだ。
「アナトラ、これを君に。口にあうと良いのだが」
色とりどりのマカロン。天と少女は友達という関係ではない。彼女の境遇も……幸せとは言い難い。ならばせめて、特別だという思いだけでも伝えたい。
「ご主人様、わたしにはもったいのうございます」
「そんなことはない」
天が断じると、アナトラはおずおずと受け取った。うれしそうにほほえみながら。
「またこんなに本を買い込んで!」
「そう言うな、私を本屋へ放置したキミが悪い」
アーマデルはイシュミルから本の山を奪うと小脇に抱えた。ふたりはそのまま進み、机と椅子が並んでいる場所で足を止めた。
「フードコートって言うらしいぞ」
「学生だからあまりお金をかけずに……と見せかけいい距離で座る、若い子のデートコースだね?」
「そんなんじゃない。あんた何やらかすかわからないから、ちゃんとした店選ぶの怖いだろ。出禁になったらどうするんだ」
ぶつくさ言いながら席をとり、アーマデルはブツを机の上に置く。菓子の詰め合わせだ。ホワイトデーの趣旨的には……優柔不断セットである。
「まあ、何だかんだで世話になってるし」
アーマデルの言葉にイシュミルはなにか感じ取ったのか、生暖かい笑みを浮かべた。
「ならこれの意味を言ってみたまえ」
イシュミルはマシュマロをアーマデルの口へねじ込んだ。
「むぐ、むごっふ! げっほ! 知らん!」
「じゃあこっちのキャラメルは?」
「知らんっつーの! これでも食ってろ!」
「ああ、これは知っているよ……マカロンだったね?」
「だから知らんっつーに!」
自分で選んで渡してもいいんだけど、一緒に行って落胆させてから本命を渡したほうが楽しいよね。焦ってる君の顔は可愛いし。
なんておもわれてるとはつゆ知らず、ブレンダはシルトの菓子選びにつきあわされていた。
(一緒に来てほしいとは……シルトの奴は何を考えているんだか。い、一応告白も了承は貰っているはずだぞ?)
「……で、何を買うのだ?」
「ん……クッキーとか? 好きだろ?」
クッキー、おともだち、か。ブレンダは少なからずショックを受けた。いやでも、と思い直す。
(こいつのことだから、贈り物の意味を知らない可能性がある)
だんだんそんな気がしてきた。どうせならおいしいのが食べたいので、ブレンダはシルトへおすすめの店を教えてやった。そしたら買ったその場で渡してきた。満面の笑みと一緒に。
(はぁ……期待したわけではなかったがここまで風情がないとはな……渡してきただけ良しとするか)
デパートを抜けた帰り道、ブレンダはため息ばかりで、シルトが、持っていた袋から中身を取り出すのにも気づかなかった。
「はい、これも。俺は君に幸せってものを知ってほしいんだ」
渡されたのは、バームクーヘン。
「さ、最初からこっちを渡せ!」
真っ赤な顔をはきっと夕日のせい。
「お菓子! お菓子のパレードよ鬼灯くん!」
「ふふ、この会場いっぱいすべてお菓子だからな。章殿、うれしいか?」
「うん、すてきな光景! わくわくしちゃうのだわ、ね、長月!」
「せやな。まあ奥方が楽しいなら来たかいあるんちゃいます?」
他人事を装いながらも長月は気を抜いていない。周囲を警戒しているのだ。
章姫が自分で選ぶと言いだしたので、鬼灯は(不本意ながらも)彼女を手放した。
「ところで長月、俺から章殿には何の菓子の贈り物がいいと思う? どれも章殿に似合う可愛らしいものばかりだ。いつも愛はこれでもかというくらい囁いているし、章殿からもたくさんの愛を……」
「その話千回聞いたわ、おっさん。俺より睦月連れてくるほうが正解だったんちゃう?」
「睦月は、くわしいが……買い物はなんでも睦月がしてしまうからな」
たぶんコスパのいい菓子の詰め合わせ一択だ。
そうこうしているうちに章姫がてちてちと帰ってきた。大きなバウムクーヘンをよいしょよいしょと抱えながら。
「これがいいのだわ! 鬼灯くんも私も暦のみんなも! みーんないつまでも幸せでいられますように!」
「天使か? (天使か?) 天使か?」
「頭の中だだもれやぞ、おっさん」
「お、お菓子が沢山……!」
「これだけ揃うと壮観だね」
イーハトーヴと文は思わずため息を漏らした。
催事場を歩き回る二人はマシュマロコーナーへやってきた。
「マシュマロってこんなに可愛いのに、お菓子言葉で損してないかな?」
「そうだね、お菓子言葉を知ってしまうと、少し迷ってしまうね」
「俺は大好き!」
「ふふ、じゃあお茶請けに少し買っておこうか」
ほほえみながら文は思う。
(そういえばイー君に仕立ててもらったシャツのお礼がまだだった)
……アイシングクッキーとドラジェをこっそり買って、あとの反応が楽しみ。それをこっそり眺められているとも知らずに。
(お誕生日のお祝い、嬉しかったなあ。ふさわしいお礼を考えなくちゃ)
「おや、マドレーヌだ」
文が反応する。
(ひとりなら箱買いするけど、ふたりで食べるならこっちのカップケーキのほうが華やかでいいかな……)
(カップケーキ……ティータイムのお菓子が好きなのかな)
だったらクッキーもいいけど今日はマドレーヌ。思いを込めて。
イーハトーヴは文の視線を追い、その隣に並んでいたものに目を奪われる。
「こ、これは!」
「『保存食、非常食に! 一粒でパワー全開! 熱量爆発キャラメル!!』。イー君、このキャラメル彼へのお土産にどうかな」
「うん! お買い上げ決定だね!」
「グラオクローネのお返しをする日か……」
「馴染みのない風習だけれど良いわねぇ」
ウィリアムとアルテミアは催事場を物珍しげに見て回っていた。
そういえばね、とアルテミアは内緒話をするときのように声を潜めた。
「広場の噴水にコインを投げると願いが叶うっていう噂があるんですって。せっかくだから一緒に願い事をしてみましょうよ!」
「……願い事が叶う噴水? 良いね、やってみようか!」
「それじゃ30分後に集合ね」
「はーい」
買い物を済ませたふたりは、現地集合した。ウィリアムはひとつ深呼吸をしてコインを投げ入れた。
「僕の願いは、健やかで楽しい日々が多く訪れますように、かな。これからたくさんの事件や戦いが興津路思うし、その解決に全力を尽くすつもりだけど。それと同じくらいのんびりできる日は思い切り楽しみたいと思う。君とこうして、いろいろな場所にでかけたりしてね」
「ふふっ、言うじゃないの。私の願いはこんな心安らぐ穏やかな日がまた訪れますように……。因縁のことだとか、幻想での騒動だとか、決着をつけないと駄目なことが多いけれど、またウィリアムさんと一緒におでかけしたいから、ね?」
ふたり、笑い合う。思いは同じだ。戦友で友人で、ちょっと心配で、いっしょにいると楽しくて、いっしょにいると安らいで、でもどうしてだろうか、まだ理由がわからない。
「それじゃお菓子の交換ね。ウィリアムさんは何を選んだのかしら」
「バウムクーヘンを、受け取って欲しい」
「まあ、ありがとう」
「幸せというか喜びをいつまでもという感じかな。アルテミアとお出かけするのはとても楽しいからね。この年輪のようにこれからも積み重ねていけたら良いな……と思うよ」
「お返事はキャラメルで。ウィリアムさんは優しいですし、一緒にいると、なんだか安心できますからね」
「リリコ様!なぜお逃げになるのですか、リリコ様ーー!!」
デパートの中へ見た目だけならいい男の声が響き渡る。
「私は心を入れ替えました。幼気な貴方を全力で追いかけ回してしまうなど、まさに野獣! ですから今回はお詫びの印として、マドレーヌを持って貴方を追う事にしました……競歩で!」
「ちょっとちょっと、馬の骨! 貴方さては何も学習していませんね!? リリコ様が怯えていらっしゃるでしょう」
「何だ悲劇野郎、また俺の邪魔をするのか? プロポーズ対決なら受けて立つぜ!」
「見ていてくださいご主人様、しもべは必ずや姫を守り抜いてみせます!」
リリコを追う冥夜の前にクロサイトが立ちふさがる。
「リリコ様、メガネ売り場へ行きませんか」
売り場でほっそりしたラウンドタイプのメガネを選んだクロサイトは、それをリリコに試させた。
「いかがですか、リリコ様。最近は伊達眼鏡の需要も伸びています。アイウェアなどと呼ぶこともありますね」
トリビアでリリコの興味を引いたクロサイトは、両手いっぱいのキャンディーを彼女へ見せた。
「鮮やかな色彩を、貴方に」
(受け取られた……どうです馬の骨。これが年上のスマートな告白というやつです!)
ついでリリコが連れて行かれたのはキャンプ用品を扱う売り場だった。冥夜は訳知り顔で次々と説明をしていく。
「リリコ様、一度キャンプへ行きませんか。マシュマロを焼いて食べると美味しいですよ。先約の証として、これを」
冥夜はマカロンを送った。
(受け取った! よし、一歩前進だな!)
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
おつかれさまでしたー!
それぞれのホワイトデー、いかがでしたか?
またのご利用をお待ちしております。
GMコメント
みどりです。
ホワイトデーだよ!お買物しよう?
さて、皆さんはデパートへお菓子を買いに来ました。
あるいはもう買ってあとはあげたり交換するだけです。
さあどこで渡しましょう。デパートの休憩用ベンチで?居心地のいいカフェで?おしゃれなレストランで?コインを投げると願いが叶うという噴水広場で?それとも茜さす帰り道?
書式
一行目:【同行タグ】または空白
二行目:プレ本文
定番のお菓子とその意味を置いておきますね
マシュマロ=あっかんべー
クッキー=お友達
キャンディ=好き好き
マカロン=特別
バームクーヘン=幸せをいつまでも
マドレーヌ=親密度アップ希望
キャラメル=安心できる
その他=あなただけが見つけたお菓子であなただけの特別な意味を込めて送るのもありだよ
※1・このイベシナではEXプレイングを利用して関係者を呼び出すことができます。
※2・呼び出しに応じてNPCも登場します。
リリコ:両親を失ったトラウマで無口無表情な女の子 好意は素直に表す 「だって明日が来るかなんて、わからないから」
ベネラー:天義の辺境出身の男の子 礼儀正しくおとなしい、頭はいいがちょっとずれてる 「あなたに神の御加護がありますように」
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