PandoraPartyProject

シナリオ詳細

君に癒やされて眠れないSP~ボーナス・トラックで罵って~

完了

参加者 : 20 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●練達はすぐそういうのに乗っかる
「イレギュラーズに甘やかされるCD作品出版しませんか? というかそういう予定はありませんか?」
「無ぇと思うゆ」
 墨生・雪(p3p009173)は先日の依頼でどこかのブクロ系ハーモニアに渡されたと思しき「練達のなんかそういう言葉でアレすることを専門にした本」を手に、『ポテサラハーモニア』パパス・デ・エンサルーダ (p3n000172)に問いかけた。当然だけどパパスは秒で否定。そんなものをイレギュラーズに依頼して作ったら何を言われるかわからない。マジでそろそろ雪より「新人」なパパスの地位が危なくなりつつたるので避けたい。そう考えるのは必然だった。
 だったのだが。
 練達というのはどうにも世界情勢に敏く、ことローレット・イレギュラーズの動向を注視している傾向にあるのだ。だもんで、パパス宛に届いていた封書を見て彼女は呻いた。
「……今この瞬間までは無かったゆ」
 つまり今、この瞬間に生えてきた。そう理解した雪の目が輝き、パパスの目が曇った。
「うわ。手紙なのに速達要求してゆ。幻想の郵便なんてそんな融通利かな、うわー海洋のやべー運送屋に渡りをつけて送ってきてゆ! なんだこれやべー依頼じゃねえかゆ!」
 パパスが何故か練達にそれなりパイプを築いていることは知る人ぞ知る(つまり殆どのイレギュラーズは知らない)事実である。そうでなければ多分イレギュラーズを集めてほしいみたいな話が彼女向けに来るはずがない。というか、ローレット宛に(そしてパパス宛に)依頼するということはそれくらい集められるだろうという。そういうアレなのだろう。
「取り敢えずそれっぽい奴探すゆ……おまえも言い出しっぺなんだからついてこいゆ……」
 肩を落としたパパスに不吉なものを覚えたが、雪は多分これついていかないとエラい目に遭うなと思った。
 ついていってもエラい目に遭うのは半ば確定しているのだが……。

●というわけでここにマイクありますんで収録しましょうか
「……というわけで皆さんに来ていただいたんですけれども! ほらこちらに最新の防音室と最新式のバイノーラルマイクを用意したので! さあ!」
 さあ、じゃないが。
 イレギュラーズ達は通されたフロアに待っていた練達の担当者はそう言うなり録音確認用のブースに逃げていった。ブースの中でなんかサムズアップしてる。とっても殴りてぇなと一同は思った。
 一応、一同は予め説明は受けている。「ローレットの人達に甘やかされて眠れないCD」を作りますってことで呼び出されたのである。それもどうかと思うが……だが現実はどうだ。
 発注文には「おまけで若干名に罵倒音声を収録してほしい」「なんならASMRも撮りたい」だの好き勝手付帯されていたのだからたまったものではない。
 なお、パパスは一同を連れてくるなりトンズラこいた。
 この収録が無事で済むかというと……中々難しいんじゃないだろうか……。

GMコメント

 求められたのでそうしました。

●達成条件
 甘やかCDの収録を無事に終えて帰る

●甘やかCD
 甘やかしてくれる系の音声を収録したCDで、担当者はなんかCD〇枚組にするよとか適当ぶちあげた結果人を集めなきゃいけなくなったらしい。ボーナス・トラックもつけるよとか言っちゃったらしい。安請け合いってこういうことだよという好例。
 「甘やかす(癒やす)音声」、余録として「甘めの罵倒音声」「なんかいい感じのASMR」を希望している。
 余録は余録なので無くてもいいらしい。
 収録は万全を期した防音ブースで行うため他者に聞かれる可能性は低く(二人一組とかで収録するならともかく)、バイノーラルマイクのため集音性が高く割と何でもイケる。
 なお収録後にディレクターからの寸評が入るらしい。

●やってはいけないこと
 特にないですが、罵倒音声取る時は過激すぎるとお蔵入りになるのでご容赦下さい。
 小道具の使用等は割と有りです。
 さじ加減が結構難しいということでVERYEASYではなくEASY扱いとなっております。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 情報に誤りはありません。不測の事態があるとすれば各自のプレイングに因ります。

  • 君に癒やされて眠れないSP~ボーナス・トラックで罵って~完了
  • GM名ふみの
  • 種別長編
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2021年02月17日 21時55分
  • 参加人数20/20人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 20 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(20人)

ワルツ・アストリア(p3p000042)
†死を穿つ†
江野 樹里(p3p000692)
ジュリエット
アルテミア・フィルティス(p3p001981)
銀青の戦乙女
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
錫蘭 ルフナ(p3p004350)
澱の森の仔
華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
ココロの大好きな人
ローガン・ジョージ・アリス(p3p005181)
鉄腕アリス
ハンナ・シャロン(p3p007137)
風のテルメンディル
セレマ オード クロウリー(p3p007790)
性別:美少年
小金井・正純(p3p008000)
ただの女
ヴェルグリーズ(p3p008566)
約束の瓊剣
豪徳寺・美鬼帝(p3p008725)
鬼子母神
ジュリエット・フォーサイス(p3p008823)
翠迅の守護
チヨ・ケンコーランド(p3p009158)
元気なBBA
墨生・雪(p3p009173)
言葉責めの天災
ニル(p3p009185)
願い紡ぎ
マオ(p3p009193)
異形
グリジオ・V・ヴェール(p3p009240)
灰色の残火
しぐま(p3p009467)
カレー オイシーヨ(p3p009504)

リプレイ

●大体前半戦~想定外しかない~
「吾輩、悲しい。涙がちょちょ切れ、胸が張り裂けそうである」
 『鉄腕アリス』ローガン・ジョージ・アリス(p3p005181)は目元に手をやり、悲しげに瞑目する。
 これほどの人数、こんな企画が通った背景……そこにあるストレス社会の片鱗に、彼は悲しくなった。
「我が人助けセンサーに引っかかる気がする無数の嘆き、ばぶみの欠乏……! こんな多くの人々が苦しんでいたとは……待っているである、今助けるであるよ!」
 なおこの決意もマイクで収録されている事実をローガンは知らない。
「頑張らなくていい、君はそのままで素敵だ。実に、白々しい言葉であるな……そう思ってしまう時、自分への嫌悪がお主の心を締め付けるかもしれない」
 ローガンの言葉は、スピーカーの向こうの相手を見透かすようだ。褒め言葉を額面通りに受け入れられない、そんな相手への忠言。
「大前提を教えるのである。お主、疲れているのである。
 疲労は精神を病ませ、自分を思う言葉をささくれだった心で拒絶してしまう。
 りぴーとあふたみー、『今、イライラしてるかも』。
 辛い時、絶望する自分を己が本質だと思い込んでしまうのは、不幸な事である。
 ゆっくり、このCDを聞き、自分の傷を認めてやることから、初めていこうである」
 全ての甘やかしは相手が受け入れねば始まらない。つまり、このトラックが先頭に来たのは『聞くマインドセット』をさせるがためだ。
 それでも駄目なら……と、ローガンはボーナストラックの収録に入る。
「──それでは聞いてください、ママン・ララバイ……!」
 ママみの塊が耳に突き刺さる。

「出張じゃ!!! ラサから練達へ出張じゃ~~~~~~!!!! 出張費は出るかいのう!!!!!」
「勿論ですよ。ローレット直々の推薦ですから、練達支部の方の名誉にも繋がります」
「そうかいのう! 声量は自信があるでな、わしにおまかせじゃ~~~~~~!!!!」
 『元気なBBA』チヨ・ケンコーランド(p3p009158)の行動拠点は本来ラサなのだが、この度何故か呼び出されたので出張である。これは期待できそうだ。
「よう帰ってきたの~~~~今日は好物をたくさん夕飯に出すからのぉ。おおそうじゃ、風呂沸かしてあるからの。移動で疲れたじゃろ? の~~んびり休んでいきんしゃい。
 久々にこんなに料理を作ったの~。最近は簡単な料理で済ませてたからの、今日はご馳走じゃ~~!!」
 収録内容は「遠方にいる息子が帰省したときのもてなし文句」。台本通りなの? アドリブじゃなくて?
「今日はの~ええ天気じゃったから布団も太陽たっぷり吸ってふかふかじゃぞ! 敷いといたから夜更かしせんと早く寝るんじゃぞ!!
 ……ほっほ、またいつでも帰ってくるんじゃぞ。身体壊さんでな。何か困った事があったらすぐ連絡よこすんじゃぞ」
 何故か収録スタッフが涙ぐんでいる。
 Pも鼻をすすりながら一発OKだ。なんだこのスタジオ。
 そして次に「お叱りor罵倒ボイス」。チヨに可能なのか……?
「これ、しゃっきりせんかい! 背筋をピン! と伸ばして前を向いて深呼吸!! そしてじゃんじゃん働くのじゃ~~~~~~!!!」
 あ、うん完璧な収録風景だわこれ。

「音声作品……デスカ? 面白そうなキカクデスネー! 是非ワガハイも参加したいデスヨ!」
 カレー オイシーヨ(p3p009504)は嬉しそうな顔してスタジオに現れた。人間の姿をしている。そして、カレーの材料を用意してある。まあスタジオにはいざって時のためにキッチンもあr、いざって何。
「エーット、『君に癒やされて眠れないSP~ボーナス・トラックで罵って~』No.03『カレー オイシーヨのスパイシーASMR!』始まるデスヨー!!」
 食材を並べて攻め攻めのタイトルコールを始めたカレーは、即座にダミーヘッドの耳元で調理していく。小気味いい包丁の音、野菜を火にかける音、油の跳ねる音。調理が進めば鍋の中身が煮える音等も入るだろう。
「音っていうより見てる俺達がテロられてますね……」
「解説パートに入った途端カレー姿になるのホント音しか聞いてないとギャグだよな」
 音声担当とPは出来上がったカレーうどんの前で姿を変えたカレーの姿を見て乾いた笑いを漏らす。内容からなにから完璧に料理番組ASMR……否、これは「音フェチ」と呼ばれる日本という異世界国家で流行したアレだ。
「※つくったカレーは参加メンバー及び、スタッフ一同、今企画の関係者の皆様にて美味しくいただきました」
「作った量少なくて助かったな……」
 カレーが最後にぶちあげたお決まりの台詞は、両手鍋いっぱい程度だったので一同は胸をなでおろした。
 なおカレーは購入特典の付随を主張したがすげなく却下された。一部しか得しないよ。

「これから私がいーっぱい、楽しませてあげるからね……まずは耳かきから……」
 『紅の弾丸』ワルツ・アストリア(p3p000042)の収録は、割と順当に始まった……ように思われた。
 ASMR関連の情報をかき集めてきただけあって、小道具の量が図抜けて多い。次々と小道具を取り替えては音を聞かせようとする彼女の行為はなかなかに上手いように思われた。……思われたのだが。
「今度はもっと……うぅ……上手に……ひっぐ、出来ないわよぉ……」
「……プロデューサー、これは」
「ああ」
 どうやら、夜通しASMR音声を聞き続けても満足行く成果が得られなかったのか、はたまたネタ切れによる無力感か。突如として泣き出してしまったのである。音響担当は制作Pに目配せしたが、彼は「続行だ」と告げた。
 あまりにも酷い仕打ちだ。だが、ワルツも音響担当も知る由もなく、Pも半ば賭けであったが、彼女のトラック目当てで買う所謂「可愛そうな女の子で楽しみたい」勢が滅茶苦茶釣れたことは、付記しておかねばなるまい。

「甘やかされて眠れない……などと銘打たれていると、甘やかして眠らせたくなるのが人情ですよね?」
 『ジュリエット』江野 樹里(p3p000692)のどこか怪しく、何事か企んでいるかのような笑みは、防音壁の向こう側のスタッフ達の背筋をなぞるかのようだった。
 ダミーヘッド型マイクを興味深げに見やった彼女は、左右に息をふきかけてから、ダミーヘッドの耳をなぞるようにしてノイズを発生させる。
「……あ、この試行錯誤も収録するんです?」
 答えはイエス。なるほど、と頷いた彼女は唐突にマシュマロを取り出し、耳元で食べ始める。口内で静かに溶ける音が心地良い。
「さて。なんとなく加減とかもわかってきたような気がいたしますし、本格的に癒しの提供です」
 樹里は準備完了とばかりに耳元へと口を近づけた。彼女のギフトは、相手に対して高揚感を与えるものだ。
「えぇ、えぇ。よく頑張って発注文を書きましたね。
 今はその心地良い疲労感を抱えて安らかにお眠りなさい。
 朝起きて、確認すれば……きっと受理されていますよ。
 大丈夫。そのリク文に込めた想いはきっと伝わります。
 だから今は…ゆっくりと。この声に身を委ねて目を閉じてください」
 樹里の言葉は、肖像画家と縁のないスタッフ達には今ひとつ意味が読み取れなかったかもしれぬ。が、得も言えぬ多幸感だけは確かに伝わってきた。それだけの『凄み』があった。なお、
「あなたの発注文は不受理がお似合いですよ……?」
 この余録の攻撃力が高すぎてボーナストラックの最後の最後に追いやられたにもかかわらず、聞いた者達が過呼吸を起こしたのは割と秘密だ。

「任せてくれ。美少年(ボク)による癒しシチュならいくらでも考えてある。
 つまりボクがボクを落とすつもりでやればいいんだろう?」
 『性別:美少年』セレマ オード クロウリー(p3p007790)の発想は突き抜けたそれだったが、「自分が癒やされないものを相手に提供するのか?」という根本的疑問を思えば成程、道理であった。そんな彼の基本シチュは保健室に居合わせた美少年(からかい上手)が面倒見るついでに慰める……希望ヶ浜頻出シチュである。
「保健室に用事かい? 熱がある? それはいけないね、すぐ休眠(サボ)ろう。
 ……熱を馬鹿にしちゃいけない。ボクは本気で心配してるんだ。君にもしものことがあったら……いや、これは言い訳だね。ボクは話相手がほしかったのさ。
 たまに少し調子がよくないこともあるさ。そういう日は思い切って休んでいい。疲れてるんだからね。君はよくやっているんだからこういう時くらい、ボクの言うことを聞いておくれよ。寝付くまでは側にいるから、ね」
 フランクさの中に垣間見える気心知った者の心配りが心地よい。更に、ASMRも続いて収録すると。
 少年特有の無自覚でソフトな性的からかいとしての誘惑と、そこからくる男性として未成熟な声質に秘められた背徳を煽る性的魅力……これを文学作品の朗読で引き出すというのだ。
「ん……この(規制音)というのはどういう意味だい? 君の口から教えてくれないか。
 (数十秒のブランク)ふふ、なるほどね。勉強になったよ……続けようか」
 耳元で延々と朗読と悪戯を繰り返すこのトラックを聞いた者がどうなったかは、購入者のみぞ知るところ。

「ワタクシ、よく声だけは良いと褒められるんですぞ! ……よく考えると失礼な話ですぞ。 しかし、今回の依頼にはぴったりだと自負してます、ぞ……?」
 『異形』マオ(p3p009193)、本来の姿でスタジオに入ろうとするなり即座に止められた。練達ですら。音だけなんだからいいじゃないか。いいや駄目だの押し合いの末、彼が折れる格好となった。ガッデム。
 ちなみにシチュエーションはなんかこう小悪魔後輩的な誘惑のソレだ。
「お、アンタか。なーんか疲れた顔してんな。そうだ、ちょっとこっち来いよ……」
 衣擦れの音とマオが近付くような音圧がかかる。
「こうやってハグするとストレスが軽減される……らしい。
 はぁ~……癒される……じゃなかった。アンタが癒されなきゃ意味ないな。
 ん? 『もう少しこのままで』? 仰せの通りに。
 あったかいな……それに柔らかい……なんか変な感じだけど、悪くはないな」
 吐息に僅かにリラックスしたような調子が入ると、マオは堰を切ったように話しだす。
「……オレってさ、擬態なわけ。これは仮の姿で、本当はベリベリ格好いい『ワタクシ』なわけ。
 でも……アンタと、同じ歩調で歩けて、同じものが見れて……そういうのには感謝してる。
 異形のこの姿もアンタと似た姿だと思えば愛着わくしな。……なぁ、今度の休みはオレにくれよ。デートしようぜ」
 本来はここで一旦カットを入れて罵倒は別撮りなのだが、Pはこれぞという顔で継続収録のゴーサインを向けた。マオは頷く。
「オレに罵られたい……? 難儀な奴だな……ばぁか。誰がやってやるかよ。
 癒されて眠れないとか訳わからないこと言ってないで、欲しがりさんは一人でねんねしな。仕方ないから寝付くまでは居てやるよ。
 ほら、早よ寝ろ直ぐ寝ろ3秒で寝ろ……寝たか? 寝たな? おやすみ」
 この素材の味だけを丹念にお届けしたトラックは若年層に好評だったらしい。疲れてるんだなあ。

「甘やかす、なぁ。言葉だけでとはまた難しい話だな」
 『灰色の残火』グリジオ・V・ヴェール(p3p009240)は依頼の趣旨をたっぷり数十秒かけて理解し、そしてなかなか難儀なものであると認識した。
『狂わせるなら得意なのよ』
『溺れさせるのは楽しいのだわ』
「いやお前らはマイクに音声として入らないだろ」
 グリジオは耳元に囁きかける双子姫――ギフトとして寄り添う燐光に対し小声で反論する。普通なら、聞こえまいと。
『電波に愛を流すのだわ!』
『素敵な夢を見せるのだわ!』
「……頼むから止めてくれ」
 これが聞こえ、これに魅了され、これを求めるようになったら最悪もありうる。グリジオはこれを宥め賺し、本来の収録へと移る。先ずは、通常の癒やしから。
「お疲れさん。
 今日も1日頑張ったな。飯はちゃんと食べたか? 風呂でゆっくり温まったか? 今ホットミルク淹れてやるからな。
 何だよ……仕方ないな。今日は特別に蜂蜜も淹れてやろう。明日もまた頑張れるように。
ああ、でも無理はするなよ。心配するに決まってるだろう。アンタの元気がないと気になるからな。ほら、飲んだら布団に入って目を閉じるんだ。眠るまでここにいるさ。おやすみ、良い夢を」
 つらつらと、しかし情感いっぱいに読み上げた彼の技術は卓越したもので、壮年の男らしい声はF1層の心をがっちりつかみにいったとか。
 ……ただし、彼の収録前の一幕を録った部分は聞き直す前に本人の強い希望で破棄されたという。

「お金を出してまで他人に褒められたい、だなんて本当に業が深いというか、度し難いというか。まあ、いいよ。救いがたい人の心を救うのも仕事なんだろうし」
 褐色高齢ショタとかいう属性デパートこと『澱の森の仔』錫蘭 ルフナ(p3p004350)は人というものの業の深さに嘆息する。だが、それも依頼だ。割り切ることにかけて、彼ほど手慣れた者もいない。
 『ホラー映画か何か見て眠れなくなったあなたを寝かしつけてくる年上のショタ』。提案した当人の業がとても深い。スタッフ一同唸った。
 収録開始――その直前にルフナは部屋から出て、合図をかける。はじまりは、ドアの軋む開閉音。
「やっぱりまだ起きてたんだ?」
 遠間から響いた声は、スリッパを擦る音と共に近付いてくる。
「怖い夢を見そうで眠れない、って、なら最初からあんなの見なきゃいいじゃん。……あーはいはい、むくれない。拗ねると面倒くさいんだよ君」
 遠くから近くへ。声のコントラストと呆れたような声が心地良い。耳元で、ため息と陶器のぶつかる音。
「ホラ。何って、コーヒー牛乳。わざわざ君のために準備したんだよ。正しく飲めばむしろ、睡眠を助けてくれるんだから。……これで、眠れそう? ば、ばーか。心配なんてしてないし」
 そんな事をいいながら衣擦れの音を耳元で。そして、言葉が続く。
「眠れるまで、僕がここにいてあげるから、早くおやすみ。なんなら羊でも数えてあげようか?」
 ゆっくりと、羊の数える声が入り……そして消える。
 なお、ボーナストラックはこの年上クソガキショタ罵倒プレイ完全版である。買いでは?

「まあまあ…練達と言う所は初めて来たけどこんな事も出来るなんて……外国は進んでるわね。
 と言っても……この『甘やかししーでぃー』? の収録と言うモノはどういった事をすればいいのかしら? ごめんなさいね、ママこういう類いのは疎くて……」
 『鬼子母神』豪徳寺・美鬼帝(p3p008725)の困惑の表情に、スタッフ達は慌てて説明を始めた。声を聞かせて欲しい、甘やかすことに全力を傾けたママの声を。だからスカウトしたのだ、と。彼は今回の優先誘致枠である。逃がすわけにはいかない。
「とりあえず普段通りの様子を撮らせてくれたらいい? うーんと…良くわからないけど分かったわ。ママに任せて!」
 話が亜音速だった。
「はーい、朝よ。全く君もお寝坊さんね。でも仕方ないのかしら。普段から頑張っているものね。ママ知ってるんだから。フフ、いい子いい子(頭なでノイズ)」
「でももうすぐご飯の時間だから起きて欲しいわ。ママの愛情手料理、いっぱい食べて欲しいわ。
 ハイ、それじゃあ……召し上がれ。フフ、いっぱい食べれて偉い偉い。元気になってね」
 野太い感じなのにママとしての風格が凄まじい。目の前に素晴らしい食卓が見える。
「うんうん、その調子で今日も一日頑張りましょうね……ママ、応援してるからね。それじゃあ、気を付けてね。いってらっしゃい」
 なお、これが罵倒になると。
「……ママは怒ってます。もうどうしてこんな事をしたのですか? ママは悲しいですよ……そういう悪い子にはお仕置きをしなきゃいけません。反省しなさい」
 という声とともに拳骨の音がノイズとして響き、「こんな事をしては駄目ですよ?」と続くのだ。
 ところで、ご家族の感想は……?

●まだやるぞ後半戦~癒やしというか、その……~
「ママみを感じる容姿ととても良い声だから是非!! と頼み込まれた結果断り切れなくて受けてしまったわ……」
 『ママみ騎士?』アルテミア・フィルティス(p3p001981)はどうやら練達の街中でスカウトされた格好となるが、それにしてもスカウトの文言が死ぬほど怪しい。よく受けたな。そんなんだからアルテミアバトルが始まるのでは?
「録音されるのはちょっと、いえ、かなり恥ずかしいけれど受けたからにはしっかりとやるわ!!」
 そんな事を言いながら寝間着と布団と硬めの抱き枕を確保してきたのは絶対『しっかり』どころではない。
 コンセプトは添い寝だし。
「ふふ、予め布団は敷いておいたの……驚いた?
 よいしょ……、ほら、そんな所で立っていないで……こっちにおいで?」
 衣擦れの音と布団を叩く音が響く。それから抱き枕が擦れる音。
「……はい、つ~かま~えた♪
 ふふ、顔真っ赤にしちゃって……可愛いんだから。
 さ、私の事もギュってして? んぅ……よしよし、いい子いい子。
 ……どう?安心する? ……ふふ、よかった♪
 ん? どうしたの? ……ふふ、良いよ。もっと、力いっぱい、ギュ~して?
 ん、ぅ……ふふ、力強いギュ~だね。やっぱり男の子なんだなぁ……んふ、よしよし。
 いいよ、気持ちが落ち着くまで、たくさん、ギュ~してあげる」
 ここまでド甘い囁きやら慰めやらと寝息がセットでたったのワントラック! なおこの間凄く布の擦れる音が入りまくって居たため青少年のなんかがあぶなかったらしい。

「相変わらず練達には面白い文化がある国だね? えーと、甘やかせばいい?なるほど?
「詳しくは分からないけれどとりあえずこのマイクに話せばいいのかな?」
 『全てを断つ剣』ヴェルグリーズ(p3p008566)はダミーマイクを前に首を傾げた。喉を何度か鳴らし声を作る。どうやらイントロダクションから入るらしい。
『最近重要な仕事を任されていた貴方! 睡眠時間まで削り進めていた仕事も今日でおしまい! 貴方はふらつきながら玄関の扉を開けたのでした!!!』
 これは期待できそうな滑り出しだ。スタッフがガン見する。
「おかえり、今日は早かったね。……へぇ、大きなお仕事が終わったの? 毎日遅くまで頑張っていたもんね……お疲れ様。よく頑張ったね」
 明るい声で迎え入れると、話を聞いて即座に柔らかい労いの声へと切り替える。デキる男の声だ。
「明日は休みなんだろう? じゃあ今日はゆっくり休めるね。
 とりあえず夕食の準備とお風呂の準備は出来てるよ。先にどっちにする?
 そういえば君の大好きな苺も今日は準備してあるんだ。……お仕事を頑張ったご褒美、だね」
 時折、ドキリとするようなタイミングで声音を変えてくるヴェルグリーズ。どこに何を置けば響くかが分かっている。食器の打ち合う音が交じる。
「…おや、眠くなってしまったのかい? 無理もない、最近よく眠れてなかっただろう。
 でも、ソファで寝るのはよろしくないな。風邪をひいてしまう。
 ちゃんとベッドでお布団にくるまって寝るんだよ。……そう、いい子だね」
 スタッフ一同は思った。このママみでF1層はイケると。何度狙われるんだF1層。

「この錚々たるメンツ……うーんこれぞケイオス。恒星が燃えよと言っております。
 そういうしぐまも文字通りやきうしか経験がないので……CD収録は未知の領域……やる事はハッキリしてますので? のでので大丈夫です! たぶん!」
 しぐま(p3p009467)は居並ぶ面子(主に『地上の流れ星』小金井・正純(p3p008000)とかその辺)のヤバさにドキドキしていた。やきうの申し子は色々と理解が追いつかない。そして、彼女はバイノーラルマイクを「音割れしないマイク」だと誤解した。
「なら手加減は要りませんね! パッションで行きますよぉーっ! かっとばせー!!」
 マイクが1つ壊れました。あーあ。お前のせいだよ。
 そして、収録が始まる……かと思いきや、彼女は方針に悩んでいた。
「うーん、どういうのが求められてるんでしょう。バブちゃんに話かけるみたいによしよしする?
 それとも通勤シャトルで揺られる青い顔の社畜さんたち向けみたいなおつかれさまの言葉?」
 取り敢えず混ぜてみればいいんじゃないだろうか、とPは考えた。ので、伝えた。ところで通勤にシャトルis何。
「今日も一日おつかれさまです、ご褒美に膝枕してあげます!
 ほらほら、寝っ転がって~よーしよし。大丈夫ですよ~あなたが沢山頑張ってるのはわたしがわかってますからね~」
 ‥‥あれ、普通にいい声じゃん……?
 なお、罵倒だが。
「飛び込んで来たボールを見逃すのは上手いのに女子アナの隙は見逃せないんですねぇ~流石です!」
「ざ、ざぁーこ♪ 制球ざぁーこ♪」
 ……罵倒の温度差が酷い!

「CDも甘やかすのもニルは初めてなのです。
 甘やかす……帰ってきた人にお疲れ様ですってして……元気になってもらう……?
 マイクを人だと思って話しかけたらいいのですね?」
 『はらぺこフレンズ』ニル(p3p009185)は新しいものに興味津々の様子だった。通り一遍の説明を受けると、首を傾げつつも理解したらしい。飲み込みが早い。スタッフはSEのボタンに手をかけた……スリッパで駆ける音だ。
「……おかえりなさい」
 衣擦れ。矢も楯もたまらず抱きついた、そんな様子だ。
「ぎゅうってされると、気持ちがほっとするのです。ニルも最近知ったのです。
 こうしていると、ぽかぽかするでしょう? 疲れた気持ち、少しは楽になりませんか?」
 心からホッとしたような声で話しかけられると、『確かに』という気持ちになる。この辺りの声は本人の素直さが強く出ている。体を離す音がまじり、声が離れる。
「今日も一日お疲れ様です。
 いっぱいいっぱい、がんばったのですね。 なら、ご褒美においしいものを食べましょう。
 おいしいものを食べると、元気になるのです。前に向かって進めるのです。
 あなたの好きなもの、用意してあるのですよ。明日もがんばるために、ニルと一緒に食べましょう。
 ……一緒に食べたら、きっと、とってもおいしいのです。ね?」
 ニルの最後の甘え声に落ちたのは、一体男女どちらなのか……。

「いいだろう。ここはひとつ、イケない課外授業を施してやろうじゃないか。シチュは放課後の課外授業だ!」
 『流麗花月』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)、希望ヶ浜ガチ勢らしく教員姿でのエントリーだ!
「どうした、集中できないのか?」
 汰磨羈が耳元で囁く。間近で聞こえる布の擦れる音が、明らかに勉強どころじゃない距離感を演出する。
「ふふ。その問題を解く事が出来たら、頭をなでなでしてやるぞ。それとも……膝枕がいいか?」
 ぺちぺちと皮膚を叩く音が交じる。膝か? これは膝か?
「二人きりなのだから、遠慮はするな。なんなら、胸に顔をうずめて甘えてもいいんだぞ。もっと教えてください先生……とな。ほら♪」
 鼻にかかる甘い声。スタッフの何名かが目元を手で覆った。
「まったく、出来の悪い生徒だな。てんでダメではないか。
 私がいないと、この程度の勉強も出来ないのか? 私の事をもっと必要とするのか? ほら、言ってみろ……」
 シームレスに始まる罵倒。トラック移行は多分スタッフがやるだろう。それにしても声が近い。先程よりずっと近い。罵倒が脳に響くが如く。
「だらしのないヤツ。この私が、隅から隅まで教え込んでやるからそう思え? ふふ、この出来損ないめ……♪」
 ここからどんどん罵倒が続く……そして、まさかのASMRだ。
「そぉら、ご褒美をやろう♪ ……「何を驚く。猫が頬を舐めて何が悪い?」
 耳舐めから頬舐め、そして尻尾での頬撫で……ホワイトノイズが如き毛の擦れる音は、流れるような甘やかしコースすぎた。収録できるのか……?

「甘やかしCD……ですか。弟に接する様な感じで宜しいのでしょうか?」
 『淑女の心得』ジュリエット・フォン・イーリス(p3p008823)は依頼内容を反芻して、ひとまず「それらしく」できるシチュエーションを選び取った。故郷の世界の弟を想いながら。なかなか深いものになりそうだ。
「お帰りなさい。遅かったで……まぁ、どうしたのですか? 転んだのですね?
 傷がこんなに……。痛かったでしょう? 手当をしますから、ソファーに大人しく座っていて下さいね?」
 驚きの声の演技が上手い……というか自然だ。恰も事実をなぞるかのように。
「まずは消毒ですね。染みますが、我慢して下さいね。……これでいいでしょう。
 薬を塗りますね。……はい。お終いです。良く大人しく治療を受けましたね。
 大きめの傷もあってだいぶん辛かったでしよう? 我慢して偉いです。他に痛む所はないですか?」
 優しく問いかけるジュリエットになら、素直に応える者も多そうだ。素直でなくとも、だが。
「……頭が痛いのですか? 傷はありませんから、ベッドで休みましょう。大丈夫、貴方が眠るまで側に居ます。
 眠るまで何か物語を話しましょうか? ふふ、貴方の好きな騎士の物語ですね。昔々………寝てしまいましたか? おやすみなさい。楽しい良い夢が見られます様に」
 枕元での寝物語。緩やかに流れる声音を考えれば、まぶたがおちるのもすぐだろう。最後に響いた唇の音が優しくも艶めかしい。なお、同時収録のASMRも破壊力こそ高かったが幼い少年の姿がちらつくと評判だったとかなんとか。

「またこの手の仕事。……ふふ、ええ。やる以上は本気出しますとも」
 正純は完全に『このテのしごと御用達』の状況だった。シチュは「仕事でミスをした同棲相手を甘やかし癒す」内容らしい。スタッフ一同に緊張が走った。
「はい、今日も一日お疲れ様でした。……どうしたんですか? 暗い顔をして。
 なんでもない、って。なんでもない顔してませんよ ?ご飯食べてる時からずっと暗い顔されてたじゃないですか。
 分かりますよ。貴方のことならなんでも」
 近い関係ならではの洞察力を感じさせる。声が、声が甘い。
「ふふ、仕方ありませんね。……さ、おいで? よしよし。それじゃ、何があったのか聞かせてください」
 膝枕で待ち構えるように音を交え、受け入れる体制を整える正純。手慣れている。
「ふむふむ、なるほど。お仕事でミスをしてしまって怒られてしまったと。それでそんなに暗い顔なさってたんですね?
 そんなに落ち込まなくてもいいんですよ。結果的には上手くいったのでしょう?
 そうやって反省できるのなら大丈夫。周りの皆さんも、許してくださるでしょう。
 ……仕方ない人。
 ほら、私の胸を貸して差しあげますから。はい、ぎゅーっ。今日は沢山甘えて、明日また頑張りましょう?」
 ここまでは本当に素晴らしい母性なんだけどなあ。ボーナストラックいってみよう。
「ふふ、なんて言うと思いましたか? だらしない人。歳下の私みたいな女に甘えて。
 情けないと思わないのですか? 恥ずかしい人、なーんて。
 大丈夫。ダメダメで、甘えん坊な貴方でも。私がこうして甘えさせてあげるからね」
 あ、これ駄目な大人量産機だ。

「まあ、見た事無い機械がたくさん。これが全てろくおんの機械なのですか……すごいですね!」
 『武の幻想種』ハンナ・シャロン(p3p007137)は録音機器、マイク、そして台本……と並べられた汎ゆるものに興味津津だった。気になるが、まずは依頼だ。溢れる好奇心を義務感で追いやり、マイクに近づく。
「まあ、おかえりなさいませ! 今日も一日お疲れ様でした! あら……今日はちょっと元気がありませんね。どうしましたか?」
 元気に迎え入れてからの心配そうな声色。起伏のある声は深い憂慮を思わせる。柔らかい声がそれに続く。
「いつも頑張っていてとてもえらいですけど、辛くなったら無理をせずにゆっくり休んでくださいね。
 大丈夫。あなたが元気になるまでそばにいます。あなたが笑顔で過ごせる事が、私の喜びですもの。
 さあ、ご飯になさいますか? お風呂でしょうか。それとも……うふふっ」
 総じて包容力と甘やかしの調和した素晴らしい音源だった。罵倒もそんな感じだ。
「……あなた。これは何ですか。またこんなものを……いけないひとですね」
 何かを責めるような声。妻帯者が聞いたら萎縮しそうだ。このCDとか持ってても指摘されそうな、そういう感じ。
「こんなものより私の方がずっと良いでしょう? 最近はご無沙汰だったから忘れてしまいましたか……それでは思い出させてあげますね」
 何を思い出すんだろう、とは敢えて言わないが、こう。これ深夜番組の朗読コーナーじゃん……?
「ふふっ……泣いて謝るまで許してあげませんからね?」
 もうマジでギリギリで読むの止める朗読コーナーだよこれ……。

「ASMR……? 甘やかす……? つまり子供を寝かしつけるCDなのだわ……? え、眠れないCDなの……? どういう事なのだわよ…………?」
 練達の依頼を多く受けてきた『嫉妬の後遺症』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)でも、この依頼には首を傾げざるを得なかった。だが説明が難しいんで台本を読み上げてもらおう。それで大丈夫だ(丸投げ)。
「良い子……良い子ね……。力を抜いて目を瞑って、楽な姿勢になりましょう」
 華蓮は優しく、聞くものを誘導する。導入音声的なサムシングだ。何故かSEもないのに膝枕されている気分になる。
「毎日いっぱい頑張ってとっても偉いのだわ。このCDを聞いている間は、ゆっくり休みましょうね。良いのだわよ…‥眠ってしまっても。私は何時でも何度でも、お話をしに来るのだわよ……」
 ゆっくりとした語りで入眠させにくると、目覚まし音声を別トラックで収録する周到さ。これが強者の風格か。
「さあ……起きる時間なのだわよ。ゆっくり休めたかしら……?
 目が覚めたらもうひと頑張りして、疲れたらまたここに来て欲しいのだわ。では、目覚ましを鳴らすだわよ……」
 最後に目覚ましのSEを挿入する辺り芸が細かい。
 罵倒も収録してあるのだが。
「ああ……妬ましいのだわぁ…毎日ちゃんと起きてお仕事に行く自立心……妬ましいのだわぁ……」
「ふうん……ちゃんとお野菜沢山食べたのだわね……健康そうで妬ましいのだわぁ……」
 明らかに嫉妬という名の賛美だった。どこまでも甘やかし度が高ぁい!

「収録、結構長くなってしまいましたね。ですのでこちら、部分抜粋のサンプルになります。フルは今度販売しましょう」
 『言葉責めの天災』墨生・雪(p3p009173)、まさかのサンプル商法宣言。何を言い出すのかと動揺が走るスタッフ一同をよそに、発声練習を始めた。マジでやる気だ。というか収録済み音源流す気だこの子。
「おかえりなさい 今日も一日お疲れ様です。さ、疲れてるならまずはマッサージからですね……」
 右側から声が流れてくる。体を添えてのストレッチらしい。
「ぐっと腕を大きく上に伸ばして…おろして……そうそう、いい感じですよ。ではつぎに……」
 フェードアウト。そして次……クロスフェードだこれ?!
「眠いですか? なら、こっちに来てください。こう、横になって……。
 温かいでしょう? 私の太もも。ついでに耳も掃除してあげましょう。大丈夫です、これでも……」
 耳元に近付く音。囁き声が交じる。
「けっこう、上手なんですよ? さあ、まずは右耳からいきますね……」
 フェードアウトした。トラックが変わっている。
「こうしてゆっくり過ごしてると、ウトウトと気持ちよくなってきますよね。私もそうです、こう…ふあ……穏やかに過ごしてると、神使……あ、特異運命座標のことを豊穣ではそう呼ぶんです……そんな身の上であることも忘れてしまいそうになりますね……」
 穏やかな声。落ち着いていること前提の音声らしい。ゆっくり休めそうだ。
「このまま、あなたとずっと穏やかに過ごせればいいのに。世界なんてどうなっても……ずっと、静かに……あっ、ごめんなさい。今のは……忘れてください。ちょっと、本音が出てしまいましたね。それより……」
 訂正。闇深で気になって眠れない。
 なお罵倒音声は宣材音声だったのでカットされた。

 こうして、ローレット・イレギュラーズ各位による音声CDの収録は無事幕を下ろした。
 再び彼等に収録の依頼が舞い込むことはあるだろうか? それとも、彼等がサンプルを持ち込むだろうか?
 今はまだ、知る由もない。一つだけ言えるのは、今回の収録は十二分な成果を得られた、ということだけだ。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 全員分なんかしゃべる部分がちゃんとあるから今後のボイスコンテンツの参考にしてくれよな!
 ※抜け漏れなければ全員にプロデューサーレター(個別あとがき)がついています。

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