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シナリオ詳細

魁メタリカ女学園より、はないちもんめ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●恋する乙女は葬食系
 七草・ペン子は街のパン屋である。
 鉄帝国にて知る人ぞ知る名門学校『メタリカ女学園』の購買所にパンを卸すことから女学生たちにも知られるお姉さん的存在であり、かつて学園の『生徒会長』を務めた女でもあった。
 と、このように説明すれば知らぬ者にとって彼女はただの女にみえるだろう。品行方正で庶民的なだけの、女に。
 だがそれは、メタリカ女学園という場所を知らぬがゆえである。知っていたなら……。

「七草・ペン子様、ですわね?」
 パンを載せたワゴンを押す美女、ペン子。彼女の背後より声がした。
 ぴたりと足を止め、微笑みのまま、しかし振り向きはしない。
「どなたかしら。私の背後を許しも無くとるおばかさんは」
 糸のように細めた微笑みの目の奥で、ギラリと光る美少女力。
 ペン子はワゴンからプラスチックフォークを取り出し包装ビニールを剥がしフォークの先端を爪ヤスリで医療用メスのごとく鋭利に研ぎついでにキラキラのラメ加工を施した末真後ろの対象めがけてプロ野球選手の剛速球並の速度で投擲した。この間コンマ1秒。
「狙った獲物は逃さない。男受けする女子力で男を籠絡させたリバウンドパワーを美少女力へ変換する薺ダメンズ妖精拳……」
 声はやまない。
 放った直後のペン子は、目を見開いていた。
 なぜなら放ったフォークは少女のかざした二本指にて止められていたからである。
 首の位置までに整えられたショートの黒髪。深い黒のアイライン。そして黒いリップ。
「あなた、その容姿は――」
「パン屋の女となり男を籠絡させることをやめた、牙の折れた獣。
 けど、あなたの美少女力……きっと私たちの役に立つわ」
 次の瞬間には、全く同じ容姿をした少女がひとり、ふたり、三人四人――。
「グラコフィラス、推参」
「コリアケウス、推参」
「フランチェッティ、推参」
「フリキダス、推参」
「ホリゾンタリス、推参」
「ポルニニー、推参」
「ラクテア、推参」
 そして最初の少女はやっと、指の中でフォークをへし折って微笑んだ。
「『コトネアスター』虚偽咲・殊根、推参。あなたの力を、ちょうだいな」

 その日の朝。
 購買所裏の庭にて、七草・ペン子は無残な姿で発見され病院へと入院。いまだ退院のめどはない……。

●乙女力と美少女力
 『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子 (p3p001385)。
 『水蓮微睡抱擁拳』八田 悠 (p3p000687)。
 二人は畳の間にて膝をつき合わせ、間に置かれた二つのものを見下ろしていた。
 ここは鉄帝、美少女道場。
 悠が置いたのは、数日前に起きた七草・ペン子乙女的暗殺事件の調査書である。
 一方で百合子が置いた綺麗な白い便せん。湧き上がる静謐かつ強靱な乙女力から、これがメタリカ女学園現生徒会長月見草マツヨから送られたものだとすぐにわかった。
 先に開くべきは、暗殺事件の調査書の調査書である。
「調べてくれたか。ですわ」
「ええ百合子様、約束ですもの」
 二人はマツヨの便せんから湧き上がる乙女力におされてか、御嬢様口調で語り出す。
 調査書の封を開き、悠……いや乙女悠子はその内容を読み上げ始めた。
「■年■月■日、メタリカ女学園卒業生七草・ペン子が乙女的襲撃に遭遇。
 ペン子様は生徒会総戦挙にて並み居る強豪を爆発四散させかつては生徒会長の座についた非常に強力な乙女であるにもかかわらず、八名の不明な乙女による襲撃にあい敗北。
 全身数カ所をかじられる形で乙女性を喪失し、メタリカ付属病院にて療養中。乙女力は回復せず。
 監視乙女の報告によれば、不明な乙女たちは自らを『造花』と呼び、そのひとりは『虚偽咲・殊根(きょぎさき・ことね)』と名乗った――」
 ちらり、と悠子は百合子の顔を見た。
 眉間にちいさく皺を寄せる百合子。
「虚偽咲・殊根。確かにあのとき倒したはず。息の根を……」
「いいえ、止めていませんわ。生きている。それも、より強大な力をもって」
 そう二人は――いや正確には百合子はかつて虚偽咲・殊根と遭遇し、その命を狙われていた。
「彼女らは『造花』。在来種に美少女力を移植した人工乙女であると名乗ったが、その方法までは語られておらなんだ。いま、このときまでは」
 百合子がとりあげた封筒。それを開くと、その一枚目のレターシートに『葬食系乙女現る』と美しくも大胆な筆字で書かれていた。
 二枚目の手紙を広げ、読み始める百合子。
「拝啓、血しぶき凍る雪達磨――。百合子様、いかがお過ごしでしょうか。
 先日我が学園にて葬食系乙女が現れました。
 以前百合子様がお茶の席でお話になった、美少女を食らい美少女力を得る蛮族……これに全く似た乙女であったのです。
 あのお話との違いがあるとすれば彼女たちは本当に喰らった相手より乙女力を奪い、自らに蓄えているということ。
 『葬食系乙女』は手始めにメタリカ女学園A棟校舎の乙女たちを喰らい、たくわえた力でペン子様をも手にかけました。
 学園はこの急をうけ学級閉鎖状態となり、皆寮に籠もり身を守っております。けれどこれがいつまで保てるものか……」
 そこまで読んでから、百合子は既に立ち上がっていた。
 三枚目のレターに、赤い血でこう書かれていたからだ。
「『助けを請うものなり。至急』」

GMコメント

■オーダー
 メタリカ女学園にて発生した乙女敵暗殺事件。これは『葬食系乙女』が乙女力を奪い蓄えるためのものであった。
 今やメタリカ女学園女子寮すらも陥落し、乙女たちはちりぢりに逃げるばかり。
 これを救援依頼とし、いますぐメタリカ女学園へと向かうのだ。
 新たなる乙女――『転校生』となって。

■転校生
 あなたはメタリカ女学園の転校生です。
 御嬢様口調で話し二人称に様をつけましょう。自分の名前を名乗るとき語尾に子とつけるのもお勧めです。
 男性にも安心な乙女メイク術によって完璧な女装もとい乙女装がなされます。

 また、この学園内で乙女らしさ、御嬢様らしさをロールプレイすることで乙女力を得ることができ、戦闘時のダイスロールにボーナスが与えられます。
 自分の乙女らしさを爆発させていきましょう!

■エネミー
・葬食系乙女
 虚偽咲・殊根をはじめとする八人の乙女たちです。
 彼女らは学園で喰らった乙女たちの乙女力を奪い取り、キメラ化した乙女戦闘術を用います。
 たとえばボクシング囲碁サッカー乙女や園芸百人一首眼鏡後輩乙女やタロット空手屋上青春乙女などあげればきりがありません。
 彼女らの戦闘能力は未知数であり、どんな技を使ってくるかもわかりません。
 毅然とした乙女力で立ち向かいましょう。

■フィールド
 メタリカ女学園女子寮が主な戦場となります。
 屋内で戦いますが、レンジその他の都合は考えなくてよいものとします。
 乙女のことにだけ集中してよろしくってよ!

■よくわかるメタリカ女学園
・メタリカ女学園
 鉄帝国にある名門お嬢様学校です。この学園を卒業した者は軍をはじめ様々なスカウトが得られることから、乙女たちはスカウトを求め学園にてその乙女力を鍛え続けます。
 そのため五回六回の留年は当たり前であり、五留で一流とすら言われます。
・『乙女力』
 メタ女の乙女たちが行使する力の源です。乙女たちはそれぞれの分野にて乙女力を高め、それを拳や銃弾など様々な乙女力にかえてぶつけ合わせます。
 そのためメタリカ女学園では日夜バトルが繰り広げられ、群雌割拠の乙女戦国時代が続いています。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 魁メタリカ女学園より、はないちもんめ完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年01月29日 22時00分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)
炎の守護者
八田 悠(p3p000687)
あなたの世界
※参加確定済み※
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
倫敦の聖女
咲花・百合子(p3p001385)
白百合清楚殺戮拳
※参加確定済み※
咲々宮 幻介(p3p001387)
傷跡を分かつ
ティスル ティル(p3p006151)
幻耀双撃
セレマ オード クロウリー(p3p007790)
性別:美少年
ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)
導きの戦乙女

リプレイ

●乙女花園血風帳
 長いスカートと長い脚。膝下までかかるソックスの白さが太陽に優しくて、『幻耀双撃』ティスル ティル(p3p006151)はきびすを返して振り返る。
 花ふく風にスカートの裾と長い後ろ髪が揺れれば、小鳥たちが歌いながら踊り始める。
「葬食系乙女とは……メタリカ女学園にまたしても強敵が現れたのですね。
 きっと以前よりも強大な相手なのでしょうが、此度も超えて見せましょう?
 『ティス子』はここで散る花ではないのだと。示してみせますわ」
 長い睫。目を細めて、横に並び立つ乙女に手を差し伸べた。
「ね、チャロ子さま?」
 小柄な『ちゃろ子さんの方』チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)は長い髪をポニーテールにまとめ、リボンの髪飾りを結び直していた。
 そしてティス子の手を取ると、頬を赤らめて微笑み返す。
「葬食系……文字通り葬り食らう乙女ですのね。
 これ以上学園を食い荒らされぬよう、ここで散らせてさしあげましょう、お姉様!」
 そんな二人の後ろから、王子のような甘い風をはこび来る『艶武神楽』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)。
 低く、そして艶めかしいほどの声で、片目を隠した前髪を撫でた。
「さぁ、そろそろダンスのお時間かしら?
 それにしても葬食系乙女……でしたか? 乙女力とは自身で磨いてこそ輝くもの
 誰かから奪ったところで仮初の輝きしか得られませんわ。そのことをお教え差し上げましょう」

 ここは鉄帝名門校、私立メタリカ女学園。立ち入る者は乙女のみ。
 故に、イレギュラーズたちもまた、乙女となるのだ。
「この日の為に姉上様から耽美なお着物を貸して頂いて来ましたの。
 如何で御座いましょうか、この反物……私、制服の用意が手違いで間に合わず……やむを得ず此方を着付けた次第で御座いますが……どうで御座いましょう」
 黒い和装に身を包み、長い髪を淑やかに分け流した『血道は決意とありて』咲々宮 幻介(p3p001387)。
 紅をさした唇が、どこか恥ずかしげに歪んだ。
 っていうか。
 脳天のあたりからふわーって魂が出てた。
「美少女として乙女言語を操り乙女道に遊ぶは当然のことでございますわ。
 そしてうら若き乙女を守り、導くのも美少女として正しい姿と言えましょう」
 そんな乙女立ちを育て導くのが種族美少女『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子(p3p001385)である。
 初めてメタリカ女学園へ訪れた時とは次元の違う美少女さを振りまく彼女。一説によれば美少女力と乙女力は同じものでもあるという。ある意味でメタ女に最も適した人間と言えるだろう。
 そんな彼女の指導を受け、このたび乙女入りしたのが『金色のいとし子』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)。通称マリア子さま。
 長く淑やかな髪をフィッシュボーン編みにして、コホンと小さく咳払いをする。
「黄金の花咲く乙女、マリア子でございます。やさしくご指導くださいましね、お姉様……」
 そんな彼女たちの視線が注がれる先。そう、『性別:美少年』セレマ オード クロウリー(p3p007790)――もとい『性別:乙女』セレ子・黒百合である。
 鏡を見つめ『ボクは乙女』と繰り返し途中百合子にぼそっと『お前は誰だ』って吹き込まれながらもなんとか絶えきったセレマ一流の自己暗示によって、セレ子さまは夏の空のごとく長く涼やかな青髪をたたえた乙女へと仕上がっていた。
「ボク……いいえ、私にとっては、これもまた美の魔法……」
 頼もしい乙女たち。一部では乙女八拳将とも呼ばれるローレット乙女チームが再び結成されたのだ。
 『水蓮微睡抱擁拳』八田 悠(p3p000687)――伝説の乙女『悠子』は微笑みの中で思いを巡らせた。
(葬食系……都市伝説の類かと思っていましたが、実在したのですね。
 となると、裏にはそれを為した者達が居るはずです。こちらに来ている方々は末端、或いは実験体の可能性が高いでしょう。
 果たして、どのような勢力が邪法を形にしたのか、気になるところですね)
 確かめるための方法など、ひとつだけ。乙女にとっては、一つ以上の選択肢はない。
「アン(探し出して)、ドゥ(見つけ出し)、トロワ(殺す)――」

●世界の中心
 扉が外から叩かれている。
 隙間から流れ込む血は、誰のものだろうか。
「お姉様……」
「もはや、これまでね」
 部屋の隅で身体を寄せ合っていた二人の乙女は目を瞑った。
 寮がたった八人の乙女によって喰らい尽くされていく様が、まぶたの裏に焼き付いて離れない。
 それがこれから自分に降りかかる運命であると告げるかのように。
 ベキン、という音と共にドアノブが吹き飛び、扉が開かれる。
「ごきげんよう、お姉様方」
 血にまみれた制服で、造花の乙女は美しく淑やかに礼をした。
「そして――いただきます」
 無数の卓球用ラケットが刃のように鋭く回転し、乙女たちへと飛ばされる。
 身を固く目を強く瞑った乙女に――しかし、予想した痛みはやってこない。
「お姉様方! よかった、無事でしたのね!」
 背後で割れた窓。吹き込む風。
 ポニーテールの長い髪が割れたガラス片とともになびいて、乙女はラケットを両手で掴んでへし折っていた。
「あなたは、まさか……チャロ子さま!?」
「苺のケーキを用意しましたの。無事終わりましたらお茶をいただきませんこと?」
 フッと微笑み、両手に燃え上がる炎の乙女力を吹き上がらせる。
 対する造花の乙女もまたボードゲームの駒を大量に握りしめ、チャロ子へと乱射していく。
 飛来するすべてを手刀によってたたき落とし、チャロ子は歩を進めた。
 乙女がすべて、そうあるように。

「より強い乙女力を発揮すれば、相手は自然と此方へ攻めてくるでしょう」
「であれば、やるべきことは一つだけ」
 花園の真ん中で、マリア子様と悠子様はスカートをつまみ、向き合っておじぎをした。
 どこからともなく現れた銀のフルートに、唇を添える悠子様。
 まるで世界を書き換えるような音色が、花々をゆらし始めた。
 麗しい乙女のように、目補細め踊り始めるマリア子様。
 マリア子様がステップを踏むたびに、長い髪がハープのように空気をふるわせていく。
「校内の至る所に届く程、高らかに。造花の方々の悲鳴も加われば、更に良い曲となりますわね」
「ええ、全く」
 『あなたもそうおもわなくて?』
 二人はまあるく見開いた目で、同時に振り返った。
 花園に立ち、一輪の花を踏みつけにする乙女がいる。
 花は一秒たらずで枯れ果て、周囲の花々もゆっくりとしおれていく。
 裸足にボロボロのジャージ。ファスナーの壊れた上着はだらしなくずれ落ち、陸上選手のようなタンクトップから肩を露出させている。
 ポニーテールを束ねた蝶のバレッタが、毒々しい紫色に光った。
「造花乙女――コリアケウス、推参」
 ぺろりと上唇を舐めるコリアケウスに、マリア子さまと悠子さまはさらなる演奏の構えを取った。
 が、それも一瞬のこと。
 コリアケウスはすさまじい瞬発力で走り出し、どこからともなく木刀とテニスラケットを二刀流の構えで抜いた。
 ステップをふむマリア子さまが雷のボールを次々に放つも、それをラケットによって超人的に打ち返していくコリアケウス。
 木刀に空を断つ乙女力を纏わせると、悠子様の首めがけて振り込んだ。
 ギン、と髪を両手の間に張ったマリアが割り込んで受け止める。
 柔軟かつ頑丈な髪を、コリアケウスは愛おしそうに見つめた。
「まあ。まあ。なんて素敵な艶髪。きっと甘い味がするんだわ」
 美しく微笑み、斬撃を更に重ねていく。
 それをマリア子さまは髪を振り乱し舞い踊ることで打ち払っていく。
 勝負は一進一退。かと思いきや、キラリと背後はるか遠くで光ったレンズの気配に、悠は素早く振り返って手のひらをかざした。
 長距離狙撃用ライフルの弾が手のひらを破壊させる。
 流し込んだ乙女力によって急速修復を試みるも、不思議な干渉によって治癒は阻害されていた。
「これは……」
 40メートルほど遠い茂みの中。
 ライフルを構えたうら若き夏服の乙女が目を細めた。
「フランチェッティ、推参」

 吹き抜ける青空のパレットが、切ないくらいにきらめいて。ブレ子は竹刀を床につけ、両手を柄頭に重ねて立っていた。
 そんな背中にかかる声。
「ごきげんよう、お姉様」
 ガラスをひっかいたような甲高い、そして奇妙なほど耳障りな声だ。
 ブレ子はあえて表情を変えずに振り返る。と、和服の上から上半身分のフルプレートメイルを纏った乙女が、ハルバートを手に立っていた。
「……ごきげんよう」
 異質さに、いびつさに、滑稽なくらい冗談めいた格好に、油断はしない。
 ここはメタリカ女学園。そして相手は、造花葬食系乙女。
「これまで何人喰らったのかしら?」
「さあ? 三つから先は数えていませんわ。けど、そうですわね……今はあなたが、とっても恋しい」
 円柱型のかぶとの奥で、ギラリと目がハート型に光ったのを確かに見た。
 そして感覚が狂うほどのさりげなさで、意識の死角をつくようなみすぼらしさで。
「――フリキダス、推参」
 ハルバートの刃が既にブレンダへと命中していた。
 気合いだけでダメージをこらえ、しかし吹き飛ばされる。
 屋上のフェンスに激突し、おおきく歪むフェンスに身体を埋めた。
「なんてたくましい方。大好きよ。……食べちゃいたいくらい」
 飛びかかるフリキダスに、ブレ子さまは竹刀をまっすぐに突き込んだ。
 否、突撃するであろう場所に剣を置いておいたのだ。
 自ら刺さりにいった形になったフリキダス。身体がくの字に曲がる。

 三味線を弾く。
 広い音楽室で二人。背を合わせて立つ幻子さまとティス子さま。
 ビアノは血にまみれ黒板は黒く汚れ、楽器類や机の散乱したその部屋に、二人。
 ティス子と幻子の弦楽が重なり、テンポを高めていく。
 それらが最高潮に達したその時。バァンと音を立てて教室の扉が開いた。
 片手にエレキギター、もう片方の手には六法全書が握られ、服装はマーチングバンドのそれであった。あべこべな、しかし奇妙なほどに混じり合ったその格好で、わかる。
「ホリゾンタリス、推参」
「ポルニニー、推参!」
 加えて窓を破壊して飛び込んできた柔道着のスポーツ少女。足にはローラースケートをはき、ゲーミングヘッドホンを装着し七色に光らせている。
「「お命、頂戴!」」
 同時に飛びかかるホリゾンタリスとポルニニー。
 対する幻子さまとティス子さまは三味線の首を掴みねじると、仕込まれていた刀を同時に抜いた。
 風をすり抜けホリゾンタリスのギターと刀をぶつけ合う幻子さま。
 その反対側、ポルニニーのローラーキックを雷と炎の剣で受け止めるティス子さま。
「まだ踊れますわよね? ティス子の技、きっと満足していただけますわ」
 テクニカルなブレイクダンス風のキックを刀で打ち払い続けるティス子。
 一方で幻子の刀は六法全書の打撃によって無理矢理へし折られてしまった。
「刀なくして、いかに戦うおつもりですの?」
「いやですわホリゾンタリスさま」
 幻子は『しな』を作って袖を口元に当てるようにして隠すと、その袖よりすらりと一本の扇子を取り出した。
「乙女はいつでもどこにでも、刃を研いでいるものですわ」
 開いた扇子がもつ異様な『刀らしさ』に、ホリゾンタリスが本能的に飛び退く。振り込んだ扇子はそこに置いてあった音楽家のポスターをすぱんと斜めに切断してしまった。

 体育館の真ん中。レコードプレイヤーから流れるクラシックミュージックにあわせて、百合子さまとセレ子さまは華やかなワルツを踊っていた。
 いわゆるところのウィンナ・ワルツ。厳かで華やかで、そして煌びやかな音楽をまるで身体に溶け合わせたように、うっとりと笑いながら回るセレ子と、歯を見せて爽やかに笑う百合子。
「その、ご学友の前でお姉さまとこんな風に手を重ね合うだなんて……いえ、姉妹ですもの」
「わたくしがエスコートいたしますから何も心配いりませんのよ、セレ子様。戦場というホールで踊りましょう」
「なにも恥ずかしいことなんてないはずですわよね……そう、ですわよね……」
 優しい時間はしかし、いつまでもは続かない。
「前にも増して美少女力を上げたようね」
 わざとらしいゆっくりとした拍手の音と共に、彼女は体育館のホールへと現れた。
「コトネアスター……虚偽咲・殊根、推参」
「同じくラクテア推参」
 隣にドレス姿の造花乙女をしたがえ、殊根は百合子を指さした。
「今日こそ、その力……もらい受けるわ」
「あら、こわい」
 笑う百合子。ラクテアはドレスの裾から二丁の拳銃を滑り出すと、髑髏のシルバーリングだらけの指に握り込んだ。
 圧倒的連射。
 たちまちセレ子さまが穴だらけになっていく……が、ダンスはそれでも止まらない。
 熟練のダンサーはたとえ全身を激痛に苛まれようと、うっとりとした笑顔を崩すことはない。セレ子とて同じだ。全身が穴あきチーズになろうとも、美しい笑顔を絶やしたりなどしないのだ。
「どうなさいました? 弾切れかしら……」
 くすくすと笑うセレ子。向きになって追撃をはかろうとするラクテアを、殊根が手をかざして止めた。
「聞いたことがあるわ。不老不醜の『美少年存在』の噂……クロウリーの魔術、感性していたのね」
「さあ、どうかしら?」
 まだくすくすと笑うセレ子さまに、殊根は急速に接近、セレ子様を無理矢理押しのけ、今度は百合子さまの喉元へと鋭い爪を打ち込んだ。
 すんでのところでのけぞって交わし、目を瞑って爽やかに風を流す百合子。なびいた髪が一瞬背景にきらめきをおこし、レース生地のように光が編み込まれていく。
「ようこそ――私たちの乙女時空へ」
 見開いた百合子さまの目に光る宇宙。
 途端体育館が内側から吹き飛び、寮の庭へと殊根たちは吹き飛ばされていった。

●恋する乙女
 か弱き乙女と侮ったのか。造花たちは皆吹き飛ばされ、花咲く庭へと転がった。
 だが、その服にも髪にもまして肌にも、土のひとかけらたりとも汚されはしない。
 しかし、その表情には深い曇りがあった。
「この乙女……強いわ」
「これまで喰らってきた乙女とは、段階が違う」
「真に乙女足らんとするのでしたら、その魂にまで刻みつけた真の乙女力と、その身で練り上げた以て、挑んでほしいものですわね」
 髪をはらい、はかなげに目を細めるマリア子さま。
 その傍らにたち、そっと肩を寄せる悠子様。
 空とぶティス子さまにつかまって庭へとおりたつ幻子さま。
「この幻子、未だ未熟な身では御座いますが……貴女方にそう易々と殺られる程、安くは御座いません事よ?」
「荒々しい踊りも、心得ていましてよ」
「ごめんあそばせ! 私たちがきたからにはこれ以上の『お食事』は無粋かと……。
 乙女ちゃろ子、お姉様方の『演奏』に合わせ、ひとつ踊りを披露させていただきますわ」
 更にはチャロ子様、ブレ子が集まり、造花乙女たちを取り囲んでいく。
 いや、それだけではない。
 彼女たちの戦いを見た乙女たちが、庭へと現れたのだ。
 声をあげるブレ子さま。
「皆様は何をしていらっしゃるのかしら?
 磨き上げた乙女力はこういう時に使うものではないのですか?
 お披露目するのは今ですわ。造花の方々に魅せてあげましょうではありません!」
 乙女心は伝播する。乙女たちの心に、瞳に、炎が宿った。
「参りますわよ!」
「「打ち払いますわよ!」」
 ブレ子さまの扇動によって一斉に飛びかかる乙女たち。
 虚偽咲・殊根の号令によって一斉に迎撃にかかる造花乙女たち。
 マリア子さまはそこへ割り込んで天使の音色を響かせ、カウンターヒールで押し込んでいく。
 更には悠子様が群衆へと混ざり、その力を自らの世界観で浸食、拡大、増強していった。
 圧倒的乙女力に押しつぶされていく造花たち。
 幻子さまとティス子さまの斬撃が造花たちを切り裂き、ブレ子さまとチャロ子さまの剣が造花たちを貫く。
 そして手を取り合った百合子さまとセレ子さまが、虚偽咲・殊根へと迫った。
「ヒッ――」
「悲鳴をあげたら、乙女は終わりですわ」

 レース模様の爆発。
 空に浮かび上がるは、百合子。彼女の腕に抱かれた。セレ子。
(あなたと、今この瞬間だけおそばに居られれば……。
 ああ、けれどどうして。
 12時の鐘なんて鳴らなければいいのになんて)
「セレ子は本当に悪い娘になってしまいました」
「まぁ、セレ子様。例え12時の鐘が鳴ってもわたくし達が姉妹であったことは消えないのですよ。
 俯かないでわたくしの可愛い菫草。愛らしい顔をみせてくださるかしら?」
 頬にかかる百合子さまの髪。
 セレ子は目を瞑った。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――依頼完遂
 ――メタリカ女学園女子寮は守られました

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