PandoraPartyProject

シナリオ詳細

年越しのアルストロメリア

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●とある昔の話
 深緑のある場所に、冬でも咲くアルストロメリアがある。一家に1輪、年を越してしまう前に玄関扉の近くへその花を飾るのだ。そうして年越し前の晩――大晦日には家族で外へ出て、花へ願い事をしながら家へ入っていくのだという。
「ふうん」
 ある妖精はそれを興味深げに眺めた。綺麗だけれど変哲も無い花だ。どうしてこのようなものに願い事をするのだろう。
「花には花言葉があるでしょう。アルストロメリアは『未来への憧れ』なのです」
 その時一緒にいた幻想種は花を慈しむ瞳で見ながら教えてくれた。未来への願いと思いを次の年へ託すにはぴったりなのだと。
「それならたくさん飾らないの? その方がすごく叶いそうな感じじゃない」
「多いことが良いことではありませんし……たくさん摘んでしまったら、来年咲かなくなってしまうかもしれません」
 この品種は多年草であるようだが、それでも受粉しなくては増えないだろう。何かあった時に受粉できず、そのまま絶えてしまったらそれこそ問題だ。
「妖精郷にはないのですか?」
「探せばあるかも。探してみようかな?」
 幻想種の言葉に妖精は首を傾げて、それからいい考えだと羽を広げた。
 妖精郷に春以外は存在しないけれどこういうのも楽しそうだ。妖精城や皆の家にこれを飾ったら? それはきっと、とても素敵に違いない!


●アルストロメリアに願う
 今年ももう残りわずか。混沌だってどこもかしこもシャイネンナハトの準備だったり、年明けの準備を行なっている。
「妖精たちも年越しの準備をするそうなのです」
「はいです! 交流の中で教えてもらったです」
 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)の言葉に小さな、羽を持つ少女――『女王の侍女』フロックスが頷く。
 彼女は精霊種であるが、その生まれは混沌ではなく深緑から繋がりし妖精郷だ。あちらにはこのような妖精や小人といった存在が有り、時たま深緑へ出てきては幻想種たちと交流していたというフェアリーテール(妖精伝承)がある。それは間隔こそまちまちであるものの確実に現在まで行われているものであり、フロックスの持ってきた依頼もそれに関することであった。
 深緑で教えてもらった年越しの準備。妖精郷は常春の世界だが、交流の一環として真似てみようということらしい。
「探して欲しいのはアルストロメリアというお花なのです。本来だと春に咲くそうなのですが……」
「あるです。妖精郷なら咲いてるです! それを取ってくるです!」
 フロックスの主張に顔を見合わせるイレギュラーズたち。妖精郷にあるならば、自分でとってくればいいんじゃないか?
「そういうわけにもいかないみたいですよ。この前の戦いで妖精郷は復興中ですから」
「大忙しです。手を止めるわけにいかないです。でも、年越しは待ってくれないです!」
 少し前になろうか。妖精郷は魔種に攻められ、一時とはいえ冬の寒さが妖精郷を覆った。戦いで傷ついたもの、寒さに負けてしまったもの、それらを少しずつ直して癒して元通りにしようという最中なのである。
「早い話、手が離せない妖精たちの代わりに道中のモンスターを倒して花を摘んでくる依頼なのです」
 アルストロメリアの花畑に着くまでには森を通ることになるのだが、最近はそこが悪いモンスターの溜まり場になっているという。妖精たちの生活にはまだ害のない範囲だが、ここでビビらせて森より出てこないようにするのも良いだろう。
「行ってくるです!」
「あちらは暖かいかもしれませんが、ちゃんとそこまでの防寒はしてくださいね。よろしくお願いするのです!」

GMコメント

●成功条件
 妖精郷のアルストロメリアを摘んで帰還する

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。不明点もあります。

●エネミー
・悪い子ピクシー
 悪いことが大好きな妖精です。そこそこ強いです。魔術で応戦してきます。防御技術はそこまででもありませんが、神秘適正は高いです。
 森を縄張りとしているようで、他者が入り込んだことが気に入らないようです。【飛】の攻撃で押し出そうともします。

・オーガ
 3mほどの巨人です。強いです。石斧を振り回してきます。動きは鈍いですが一撃はとても重いです。あまり頭は良くなさそうです。
 妖精を捕食対象としているため、もしかしたらイレギュラーズも捕食対象に認定されるかもしれません。

●フィールド
 妖精郷にある森です。道なりに行けばアルストロメリアの花畑が見えてくるでしょう。天気は快晴で暖かいです。花畑はそれなりに広く、たくさん摘んでなお余ります。
 お手伝いついでに自分用に摘んで、願いを込めても良いでしょう。

 道中では横合いからの接敵が予想されます。場合によっては奇襲となるでしょう。木々があるため見晴らしはそこまで良くありません。
 花畑までくればエネミーたちは出没しなくなりますなりますので、そこまでの道中を撃退しながら進むことになります。

●ご挨拶
 愁と申します。
 妖精郷も年越し準備をするみたいですね。皆様ならどんな願いをかけますか?
 それではご縁がございましたら、どうぞよろしくお願い致します。

  • 年越しのアルストロメリア完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年12月23日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

エメリア・エメラ・グリュメーア(p3p002311)
飛び出し注意
ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)
月夜の蒼
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
ルチア・アフラニア・水月(p3p006865)
鏡花の癒し
アルヴィ=ド=ラフス(p3p007360)
航空指揮
ロロン・ラプス(p3p007992)
見守る
グリーフ・ロス(p3p008615)
紅矢の守護者
ラヴィ(p3p009266)
魔法少女

リプレイ


「普段は春に咲く花なんだよね」
 冬でも咲くなんて、と感心する口ぶりの『騎士の忠節』アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)に、妖精郷へ行ったことのあるイレギュラーズはくすりと笑う。冬でも妖精郷なら咲く、と言うわけではないのだけれど、彼もアーカンシェルをくぐったらすぐにわかることだろう。百聞は一見にしかず、と言うのだから。
 妖精に案内されて深緑と妖精郷を繋ぐ門、アーカンシェルを抜けた一同。頬を撫でる温かい風にアルヴァ
目を瞬かせた。
「……春?」
「常春の世界だよ。以前は冬に呑まれかけたけどね」
 『月夜の蒼』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)は以前より復興が進んだ妖精郷の風景に目を細める。冬もいいがここは暖かくて過ごしやすい。ここまで身に纏っていた外套も必要ないだろうと各々脱ぎ始める。
「年明けはどこも忙しいから、それこそ猫の手も借りたいってやつかな」
「そうですね。……私もそろそろ準備をしないと」
 頷いた『魔法少女』ラヴィ(p3p009266)は自室のことを思い出して小さく呟く。そう、イレギュラーズだって同じように年末年始――年越し準備が控えているのである。
「まずは花畑に向かおうよ! 忙しい妖精さんの代わりにたくさん摘んであげよう!」
「うむ。新しい年の準備じゃな!」
 『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)の言葉に『飛び出し注意』エメリア・エメラ・グリュメーア(p3p002311)が頷き、一同はそろって教えられていた場所へと向かい始める。道中の敵は任せて、と先頭を行くのは鍛え上げられた獣種の血を持つアルヴァだ。程なくして入った森は、天候の良さで視界は明るいもののどことなく不気味な雰囲気が漂う。木々で見晴らしがよくないのもあるだろうが、おそらくはここに住まう魔物たちによる雰囲気でもあるのだろう。
「まあ、この程度で遅れは取らないけれど」
「はい。私はこちらを警戒しますね」
 ルーキスとラヴィは透視を用いて木々の裏を見通し、そこに何者も潜んでいないことを確認する。
「アルストロメリアって、どんな味がするんだろう」
 ぽてん、ぽてんと水まんじゅうのようなフォルムで『ひとかけらの海』ロロン・ラプス(p3p007992)は進む。こちらの方が楽だけれど、花を積む時は人型だ。その時に味見してもいいかも――なんて思ったけれど、仲間たちに一応やめておいたらどうかと言われた。植物の中には毒のある種も存在し、時には少量で命を奪われるのだからと。本来ロロンは汚染されたものを飲み込む役目を持っていたから大丈夫だろうとは思うけれど、召喚によりどうなっているかわからないのは事実。調べて、問題がなければ次こそは味見しよう。
「そうそうにお出ましね」
「そのようだね。後方は大丈夫?」
「こっちはまだ何も見つからないよ」
 『「Concordia」船長』ルチア・アフラニア(p3p006865)のエネミーサーチにイレギュラーズたちへの敵意が浮かび、同時にルーキスがかさりと音を聞く。焔は後方を見回っている動物の視界から、まだ魔物らしい姿は見ていないことを確認した。
「む、逃げてしまったか」
 エメリアは使役していた小動物が逃げていったことに気づく。魔物と出くわしてしまったか。こればかりは本能なので仕方あるまい。
「準備は万端です。いつでも」
 『その色の矛先は』グリーフ・ロス(p3p008615)が魔神黙示録を展開する。あたりを警戒していたアルヴァは、不意に血がざわつくような感覚を覚えた。
「……きた!」
 不意打ちに素早く反応したアルヴァは奥から飛んできた攻撃を避け、2体の悪い子ピクシーに接敵する。
「僕は騎士です。仲間を攻撃したいなら、まずは僕を倒してからですよ!」
 宣言と共に2体へ立ちはだかったアルヴァ。キィキィと嫌な響きをピクシーたちが立てる。
「通してほしいだけなんだけれど……ごめんね!」
 焔の飛ばした斬撃が木々の間をすり抜け、ピクシーへと命中する。悲痛な声と共にアルヴァへ鋭い攻撃が飛び、彼の体は後方へと押しやられた。すぐさまエメリアが治癒を施し、アルヴァは再びピクシーらを抑えるために前へと出ていく。
「これくらいなら押し切れるわ! 片方へ注力するわよ!」
 ルチアの号令――オールハンデッドに仲間の意思が集まっていく。ピクシーたちは不利と見るや否や、森の奥へと逃げ出していった。仲間の怪我の具合を確認し、一同は再び道なりに歩き始める。
「それにしても、アルストロメリアって飾るものだったのね」
「不思議な花だよね」
 ルチアの言葉にアルヴァは同意しながら進む。花を、アルストロメリアを飾るという行為は自然豊かな深緑独自のものかもしれない。特に、花言葉が――。
「『未来への憧れ』でしたか」
「お花に未来の願いを込めるなんて、素敵な風習だよね!」
「ええ。そういう風習はなかったけれど、ちゃんと準備して年越しをきちんと送りたいものよね」
 グリーフの言葉に焔がにっこり笑い、ルチアは視線を前へ向ける。まだ花畑まではありそうだろうか。
(……焦がれ、憧れるだけでは、何も変わらない)
 故にとグリーフは思う。花言葉にあやかって憧れるだけではダメなのだと。憧れの『形』を知ることで、叶えるための未来に繋がるのかもしれないと。
 視線を巡らせればこの森にも冬の残滓が残っている。気候はすっかり元通りだけれど、まだ戻りきれないまま年を越してしまうのだ。
(せめて、最後は例年通りの日々でありますよう。そして次の年へ何事もなく繋がると、いいですね)
 今も妖精たちは復興作業に勤しんでいる。きっと来年はさらに成果が見えてくることだろう。
「――皆、また来るわ。数が多いから気をつけて」
 ルチアの声が警戒を帯びる。構えた一同の前へ現れたのは大きな、とても大きなオーガだった。手にした石斧を振り抜くが、その動きは豪快だ。
「そんな鈍い攻撃、当たらないですよっ!」
 アルヴァはひらりと軽やかにかわし、オーガの注意を引きつける。しかしほぼ同時に一同の背後からも新たな影が現れた。
「ピクシーですか」
 ラヴィが素早い詠唱で破式魔砲を撃ち、そのすぐ後にグリーフが立ちはだかる。ピクシーたちはキィキィと耳障りな音で鳴きながらグリーフへ魔法を放つ。そこには何か悪しきものが込められているようだったが――。
「いくらでもかかってきて構いませんよ」
 グリーフは顔色ひとつ変えずに彼らを挑発する。そこへ焔が炎でできた爆弾を投げつけた。焦げつく肌へあわてる彼らを間髪入れず熱砂が取り囲む。
「砂嵐は珍しいかな?」
 敵のみへ絡み付いたそれは苦しいことだろう。けれどもこれも仕事だ。ルーキスは手加減などなくピクシーを叩きのめさんと魔力を練る。対する彼らは怒ったようにあちこちへ魔術を飛ばしたが、小さな奇跡たちと、ルチアとエメリアのヒールが仲間たちを掬い上げた。
 前にはオーガ、後ろにはピクシー。どちらを対応するものにも治癒が届くよう、ルチアは天使の歌を奏でる。エメリアは彼女に回復を任せ、聖なる光で持ってピクシーへ援護攻撃を放った。
 アルヴァはオーガの攻撃を避けつつもレジストクラッシュを放つ。石斧の影に次はあちら、と足に力を込めて――その足元がぐらりと揺れた。足裏に石の感触。迫る石斧。
(まだ……まだだ!)
 倒れるものかと言う意思が奇跡を帯びる。石斧は空を切り、次いでロロンの作った氷槍がめり込んだ。
「キミ、食べ応えがありそうだね?」
 ロロンはぷるぷるボディを揺らしながらそう問いかける。オーガに言葉を解するほどの知性があるのか定かではないけれど。
 やがてボコボコにされたピクシーが逃げ帰り、それに気づいたオーガもまた森の奥へ去っていく。エネミーサーチが敵を感知しないことを確かめた一同は、再度花畑へ向かって出発したのだった。



「これだけ満開だと、さすがに壮観ね」
 目を細めたその先まで広がる花畑。ルチアはほぅ、と感嘆の声をこぼした。流石は春の国とルーキスも頷く。
「摘みすぎなんて心配もないかな。あ、でも同じ場所からは摘まない方がいいか」
 花を同じ場所からいくつも摘んでしまうと穴ができる。景観は壊さないほうが喜ばれるだろう。
「そうじゃな。それでは分かれて摘むとしようか」
 エメリアの提案に頷き、一同は花畑へ広がっていく。各々が見える程度の場所へ分散したらあとは摘むだけだ。
(皆が摘むのであれば、わらわはこの程度であろうか)
 一輪ずつ丁寧に摘んでいくエメリア。同じ作業をしている者が自分を合わせて8名いるのだから、1人あたりの作業は持ち帰る量の8分の1で良いはずだ。だとすれば――こんなもの、だろうか。
 摘みながら移動していたエメリアは近くまで来ていたルーキスへ摘む量について確認を取る。うん、大丈夫そうだ。
「何か願ったりするの?」
「わらわか? そうじゃな、」
 ルーキスからの問いかけにエメリアは視線を落とし。ゆっくりしゃがむと最後に一輪摘んで目線まで持ってくる。
「皆が健やかでありますように――というところであろうか?」
 其方は、と今度はエメリアからルーキスへ問いかける。必要分を確保したルーキスもまた、自分用にとアルストロメリアを摘んで。
「次の1年も変わらず楽しく過ごせるように、かな」
 そう言って、笑った。

 一面の花畑に座り込んでどこまでも続く景色にうっとりとするルチア。その手元には持ち帰る分のアルストロメリアがある。
(私も……少しばかりなら、貰っていっても大丈夫かしら?)
 だってこんなに咲いているんだもの。きっと一輪くらいなら問題ない。例え8人が8人とも同じことを思っていたって、この花畑を駆逐してしまうほどは摘めないだろうから。
(お家に帰るくらいならもつかな? 枯れちゃうかな)
 焔は頼まれていた分を摘み終えて、自分のためにとさらに摘む。もったいないから生花ではなくて、枯れる前に押し花として使いたかった。そうすればいつだって見られるし、それを見ることできっとこの光景も蘇るだろう。押し花がうまく、綺麗にできるかどうかはわからないけれど。
(妖精さんたちに聞いてみよう! 花を長持ちさせるようにしてくれるかもしれないし)
 水を含ませた綿などがあれば、そのまま持って帰るより長持ちするハズだ。妖精たちもなんらかの方法で花を保存することもあるかもしれない。
 アルヴァもまた花を持ち帰ろうとする1人。けれど彼は少し用途が違う模様だ。
(好きな人へのプレゼントになるかな?)
 小花が一緒になって咲いている様は可憐で、こういうものを好んでくれるだろうかと想いを馳せて。ああ、この想いは届いてくれないだろうか。届いてほしい。
(――この想いが、届きますように)
 なんて、やっぱり少し恥ずかしい。けれど純粋にこれは渡したいと思った。自分が今見たこの美しい景色を、ほんのちょっとでも共有できたら、と。
 グリーフの保護結界は各々が花を積む間も揺らぐことなくそこに在る。その中をロロンも進んでいた。ただし、深く考え事をしながら。
(本能的欲求とは異なるなら、ボクにあるのだろうか?)
 咲く花を摘んで願いを込める。願いや望みなんてものはこれまでないように感じていた。だって召喚当時、ロロンにはそこまで深い知性が『なかった』から。持っていたそれは元の世界で失ってしまったのだ。
 けれど混沌での経験を積み、学習し、観察し。人と共にあるための実践をすべく動き始めたロロンには、以前に及ばずとも少なからず知性が戻ってきているはずでもあり。
(望みを見つけることが、今の望みなのかもしれない)
 ロロンはイレギュラーズとして生きるのだと意思を定めた。けれども在るだけでは大した影響にならないだろう――それが唯一パンドラを貯められるイレギュラーズであったとしても。
 動かなければならない。求められたことに応えなければならない。そうなるためにはおそらく強い動機が必要なのだとロロンは考察していた。
 強い動機、というのもあまり良くわからない気がしたけれど。
 ロロンはプルプルとした体を人型へ変形させ、花を摘んでは腕に抱える。時たま自らの内に吸収、もとい溶かしてしまうこともあったがロロンはどうにか沢山の花を抱えたのだった。
 グリーフもまた、保護結界を維持しながら一輪のアルストロメリアを手に取る。不確かな願いは、けれど確かにソコへ存在している。
(私自身の何かを、見つけられたら)
 グリーフは造られた存在だ。製作者の願った在り方はずっと他者を看続ける日々。かの願いのその先に、グリーフの唯一が見つけられるかもしれない。
 あとは、とグリーフは顔を上げる。日差しは暖かく、常春の陽気は心地よい。けれどもこの世界が冬に包まれかけた時を知っている。あの時生み出された偽りの生命がこの地で散っていったことも知っている。
(どうか、彼らが安らかに眠れるように。そして……彼らのような存在が、これ以上生まれないように)
 そう願いを込めた瞬間、横合いから春一番のような突風が抜ける。花畑は大きく揺れ、その拍子にグリーフの手から願ったアルストロメリアがなくなった。
「あ、」
 視線で追えばそれはもう空高く。グリーフは手を伸ばすことなくそれを見送る。
 空に舞ったアルストロメリアの花弁は、まるで雪のようだった。

「これで十分ですね」
 ラヴィは集まった花々に頷く。花畑はここに集めた比でないくらいに広がっているけれど、妖精たちなら――あのサイズ感からすると――この量でも多いと言うかもしれない。
(帰り道も気をつけないといけませんね)
 花畑から出てしまえば、また厄介な魔物たちが襲ってくるかもしれない。花を奪われてしまわないように帰る必要があるだろう。
 一同は道中の警戒を怠らず、魔物の住まう地を抜けていったのだった。

成否

成功

MVP

グリーフ・ロス(p3p008615)
紅矢の守護者

状態異常

グリーフ・ロス(p3p008615)[重傷]
紅矢の守護者

あとがき

 お疲れ様でした、イレギュラーズ。
 妖精たちはこの花に何を願うのでしょうね。

 それでは、またのご縁をお待ちしております。

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