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シナリオ詳細

<神逐>希望、潰やすこと勿れ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ――大戦がはじまるとき、そこには必ず、無力な者の悲鳴が上がる。

 ばちばちと火が爆ぜる音がする。火事になった民家から這い出た住人が、待ち構えていた獣たちに襲われた。
 我が子を抱えて街中を逃げる父親には、他の獣たちがそれをいたぶるように少しずつ傷を与えて、その足が頽れるときを待っている。
 逃げ切れない老人や女性を守る者たちは、竹の物干し竿を振り回して大声で叫んでいた。それが何の脅威にも成り得ていないと気づいていながらも。
 時刻は、深夜。
 突如として現れたあまたの獣。穢れた「さる神」の影響を受けて暴れまわるあやかし達に、その地は、高天京の住人たちは、立ち向かうにも逃げるにも、余りにも無力すぎた。

「なぜですか、守り神よ」

 誰かがそう言う。一人が上げた悲痛な声は、しかし今襲われている者たちすべての叫びでもあった。
 眼前のあやかし達から目を背け、見上げた先には御所の天辺。
 そこには真白の狗神が、瘴気を湛えて襲われる者たちを見下している。
 助けを乞うものにも、或いは人々を襲うあやかしにも応えず、ただ其処に在るだけの神に声を上げる人々は、ゆえに、最早救いなど無いのだと確信してしまう。
 ……嗚呼、また悲鳴が上る。血飛沫が舞う。
 牙を突き立てられた者たちは、そうして絶望と共に涙を零すことしか出来ず――


「……だからこれは、唯、『救い続ける』だけのお仕事」
 一通りの説明を終えたのち、『色彩の魔女』プルー・ビビットカラー(p3n000004)がそう呟く。
 集まった特異運命座標たちに、疑問は誰一人としてない。すべきことが何かは一つだけ。それを教えてもらったのだから。

 ――『黄泉津瑞神』が、堕ちようとしている。

 呪詛、『大呪』。敵である魔種達が為そうとしている大規模呪術により、神威神楽の守護神である彼の神は現在、半ば暴走状態にあるという。
 この呪いを封じるのは特異運命座標しかなく、そしてそれまでの間、被害を抑え続けられるのもまた、特異運命座標を除いてほかには無い。
 ゆえにこそ、此度、特異運命座標たちに対し、幻想種の情報屋はこう言ったのだ。
「襲い来る敵を、斃し続けろ」と。
 戦場は高天京の中心部。天守閣を望める城下町に於いて際限なく湧き出し続ける妖怪――穢れる『黄泉津瑞神』の影響を受けた獣たちは、その本能に従い、其処に住まう住民たちを襲い、食らい続けている。
 特異運命座標達に与えられた役目は、これの撃退、乃至討伐であるとプルーは言った。
 住民の守りに戦力を割く必要は無い。潤沢な餌場に見えた明確な脅威がそこに在れば、妖怪たちはその対処を優先するため、必然と住民を襲う妖怪は減っていくだろうとのこと。
 ……最も。それは特異運命座標達が戦い続けている間だけの話。
 城下町に無限に湧き出し続ける妖怪たちの対処が追いつかず、その場から去ることを余儀なくされたとき、獣たちの牙は再び、逃げる住人たちに向けられることは必然だろう。
 つまり特異運命座標達は、『大呪』に蝕まれた『黄泉津瑞神』を止めるその時まで、決して倒れることも、退くことも許されず、戦い続けるしかない、と言うことだ。
 厳しい任務だ。
 難しい、戦いだ。
「――いいえ。貴方達は、それが出来る筈よ」
 それでも、プルーは笑って、言った。
「この世界そのものを救おうとする貴方達が、たった、一つの街を護るだけだもの」
 信じる仲間たちに向けた、確信の微笑みを。


 ――その腕から、食らいつく獣の、重みが消えた。
 襲われた人は戸惑う。痛む腕を抑えながら、淀んだ面持ちを上げると、其処には向かい立つ姿が在った。

 貴方だ。
 其処に居たのは、貴方たちだ。

 獣の牙を引きはがし、怯える町人を逃がした貴方に、相対するあやかし達は遠吠えを介し仲間を呼んだ。
 集う獣。闇夜に浮かぶ幾多の眼光を前に、しかし、貴方たちは恐れることなく、その武器を構え始める。
 尽きることない敵、底知れぬ脅威、いつ終わるとも知れぬ、永遠の戦い。
 多くの恐れを前にして、けれど、貴方たちは惧れる必要は無いのだ。
 傍らの仲間を、彼方の仲間を、信じ、戦うこと。それを続ければいいだけ。



 ――その果てにこそ。
 きっと夜明けは待っていると、貴方たちは知っているのだから。

GMコメント

 GMの田辺です。
 以下、シナリオ詳細。

●成功条件
・規定ターン数が経過するまで、戦闘不能者が8名以上にならないこと

●場所
 高天京の市街地中心部です。時間帯は夜。下記『妖獣』により、多くの町人たちが被害を受けている状態です。
 シナリオ開始時の時点で『妖獣』達は参加者の皆さんに気づき、そちらに意識を割くようになるため、町人たちへの避難誘導等のサポートは必要ありません。
 また、本依頼ではプレイング、装備、ギフト等のいずれか1つに光源等の用意が為されていた場合、行動に僅かな補正が入ります。
 シナリオ開始時、『妖獣』との距離は自由に設定してくださって構いません。

●敵
『妖獣』
 穢れた『黄泉津瑞神』の影響を受け、暴走状態にある妖怪です。外見は様々な動物の姿。
 シナリオ開始時の数は20体。陣形は扇状に広がっている状態です。
 戦闘開始以降、「ランダムなターン数」が経過するごとに、そのターン数に比例した数の『妖獣』が戦場のランダムな位置に発生します。
 敵の種別は以下の5つに分かれています。具体的な攻撃方法は不明。
 ターン経過で現れる妖獣は下記のいずれかから一定の基準をもとに決定されます。

【近距離】
「物理攻撃型(高威力、高防御)」
「物理防御型(高防御、高回避)」

【遠距離】
「神秘攻撃型(高命中、高威力)」
「神秘支援型(高威力、高回避)」
「神秘妨害型(高命中、高防御)」

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。



 それでは、参加をお待ちしております。

  • <神逐>希望、潰やすこと勿れ完了
  • GM名田辺正彦
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年11月18日 22時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

フェリシア=ベルトゥーロ(p3p000094)
うつろう恵み
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
鬼桜 雪之丞(p3p002312)
白秘夜叉
白薊 小夜(p3p006668)
盲御前
長月・イナリ(p3p008096)
狐です
天目 錬(p3p008364)
陰陽鍛冶師
クレマァダ=コン=モスカ(p3p008547)
海淵の祭司
金枝 繁茂(p3p008917)
善悪の彼岸

リプレイ


 血が迸った。肉が飛び散った。
 骨が、牙が砕け、臓器は弾ける。その度に絶命する獣たちの渦中には、たかだか八名の愚者たちが。
 況や、彼らは満身創痍。
 得物も防具も血に塗れ、呼気は荒いで、滴る汗を拭う気力すら飢える間際。
 それでも。彼らは、折れていない。
 未だ、希望の果てを見るまではと、信じ抜き闘うその様に、未だ絶えぬ獣たちは少なからず気圧されていた。
 ――ゆえ、今や此処は胸突き八丁。獣に呑まれるか、獣を食い破るかの瀬戸際に在り。
 なればこそ、此方に至る軌跡を、どうか始まりの刻から見届けてほしい。
 ありふれた戦いで、誰の口にすら上らぬ戦いで、それでも。

 一つの街を。多くの命を。
 十に至らぬ数を以て、守り続けた、愚者(せんし)達の物語を。


 りんと、鈴を転がすような音が響いた。
 抜き放たれたは『贋作・天叢雲剣』。担い手、『狐です』長月・イナリ(p3p008096)はひうと呼気を継いで後、絡めた祝詞に魔力を込めた。
 刹那、爆発。
 突如現れた闖入者。倒すべき八体の獲物を相手へ、その場に居た二十の獣たちが次々と襲い掛かる。
「人懐っこい動物だこと――ゴリョウさん!」
「ぶははははッ、応よ、任せときなァ!」
 真っ先に攻撃を放ったイナリへ。或いは、手近な標的へ。
 恐らくは最前線での格闘戦に向いているのであろう、殊に動きの速い獣たちが接近するよりも早く、喚笑と共に籠手と大盾を構えた『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)が、朗朗と声を上げた。
 招惹誘導。肥大化した彼の気配に言い知れぬ脅威を感じた獣たちの挙動が、瞬間、その対象を食らうべく動きを変える。
 否、より正確に言うならば。
「倒れるわけには行きません。同様に、倒されるつもりもありません」
「うんっ、ハンモたちがたくさん注意を引いて、戦えない人たちを護るんだよ!」
『玲瓏の壁』鬼桜 雪之丞(p3p002312)の火鈴。
『神ではない誰か』金枝 繁茂(p3p008917)による、幸せ色の花畑。
 二人の『鬼』による、異なった呼び手に獣たちは大きく態勢を崩される。そして、その少なからぬ隙を見逃す者が居る筈も無い。
「指示、を……届けます!」
 平時よりも幾らか強い語気で。『うつろう恵み』フェリシア=ベルトゥーロ(p3p000094)が、後方からの視点を以て素早く戦況を頭の中に構築する。
 ソリッド・エナジー。二次行動、英雄叙事詩。敵味方を含めた全員が其々の行動に移るよりも早く付与を飛ばせたのは、スタートダッシュとして申し分ない。それは――
「まったく、数えるのも嫌になるわね……」
『名残の花』白薊 小夜(p3p006668)の動きを見れば、否定するものも居ないであろう程度には。
 担う得物は鞘込めしたまま。ゴリョウが真っ先に止めた牙持つ獣に対し、一歩をすれ違った彼女の背後には、少なからぬ赤い徒花が咲き誇っている。
「まあ、獲物に困ることは無さそうで何よりだわ」
 初動より機能を十全以上に引き上げられた彼女の『圏』は獣たちの想定以上に広かった。
 それでも、未だ開戦直後。意気が衰えるには些か早いと言わんばかりに、大口を開いた獣が再び特異運命座標らに食らいつく。
 ――否。食らいつこうと、した。
「嗚呼。長い……夜に、なりそうじゃな」
 空を仰げば昏い月。
 視線を下ろした『海淵の祭司』クレマァダ=コン=モスカ(p3p008547)が、見据えた獣たちにゆらりと唄を紡いだ。
 静かな歌い口。何を無駄なと人であれば笑うであろうその歌に対し、だから獣たちは、気づく時を失した。
 歌声に惑う獣たちが互いを傷つけあう。或いは、傷病に傷む身体が加速する。
 拡散する被害を目の当たりにして、当の本人は、クレマァダは、静かな瞳でそれを見やりながら、言う。
「……望むところよ」
 突如現れた冒険者に、獣たちは総じて足並みを乱される。
 ともすれば、僅か一、二度の交わりで倒れた敵すらいるほどに。
 けれど……それだけだ。
 先の先を取り、動きを狂わせ、そして倒し。
『たかがその程度』で、この戦いは終わらない。
 情報屋をして無限と言わしめた数は、倒れた数に応じて即座に次の個体が現れる。
 一合の交わりを終えた彼らに、最早一切の慢心も油断も無いと、喉を鳴らす獣たちに、しかし。
「市街地にもこれだけの妖獣が出るとは。全く世話の焼ける神なことだ」
 空を舞う式符。
 それに――獣たちが気付いたときは、もう、遅い。
 術式が顕現する。即席の銅鏡は自らに湛えた光を惜しみなく撒き散らし、それに灼かれた獣たちの叫び声が特異運命座標らにとどくまで時間はかからなかった。
『魔剣鍛冶師』天目 錬(p3p008364)に驕りは無い。既に次の式符を手挟んで放つ用意を整えた彼は、ふと笑いながら始まりを告げるのだ。
「陳腐だが明けない夜はないんだ、援軍を待つ防衛戦と行こうじゃないか」
 夜明けを迎えるための、永き戦いを、と。


 今回、戦線の構築は通常特異運命座標達が取るものとは若干の差異が見られる。
 初動はほぼ変わりない。防御専従型としてゴリョウが。他の役割を一時的ながらも兼任できる雪之丞と繁茂が敵のドローイングとブロックを担当、集まった敵に対して小夜が物理、錬が神秘とダメージの種別を分けながらの複数対象攻撃。
 それらをサポートするのがフェリシアであり、対して敵に対する妨害を主とするのがクレマァダである。
 ではこの先、何が違うのかと言えば、それはこの戦いの最終目標が故の行動だ。
「オイオイ、豚一匹も仕留めきれねぇとか気合が足りてねぇな!」
 空を割く牙は、角は、幾度目になろうか。
 高速度で動く相手にゴリョウの騎士盾は些か取り回しが悪い。自然、大半の攻撃をいなしているのは双腕の籠手となるのだが、エルフ鋼――彼の故郷から持ち込まれた独自の金属による防具は、細かな傷跡を幾重に残しながらも、その耐久性能には未だ損耗が見受けられなかった。
「数の暴力に酔って牙でも抜けたか、腑抜け共ッ!」
 殊更、怒りをあおるような語調で。
 人語を介さぬ獣とて、愚弄は本能で察したのか。尚も効かぬ牙を突き立てようとした獣の一体は、しかし、其処で彼によって付与されていた偽りの怒りを解き、即座に距離を取る。
 相手の傷は浅くなかった。後一、二撃で倒れるであろう敵が遠ざかるのを見ながら、ゴリョウは、否、他の仲間たちも、遠距離攻撃を得手とするものを除いては積極的な追撃には移らなかった。
 そう、それこそがこの戦いに於ける差異。『動かない』ということ。
 その理由は二つ。そもそもこの戦いが「今在る敵を殲滅することで終わりを迎えるもの」ではないということと、それに付随して、終わりのない戦いの間、戦場の存在する味方全員がフェリシアの指揮による恩恵を最大限受ける環境を維持するためだ。
「悪いけど、態勢を整える隙は与えないわよ?」
 古剣が振るわれれば、次いで爆発が。
 先ほど退いた獣の一体が、それで力尽きた。それを確認したイナリの表情に、けれど安堵は無く、次に襲い来る敵への対策を取ることで既に頭の中は埋め尽くされている。
(少しでも時間稼ぎしないとね……!!)
 この戦闘にとって、フェリシアの存在は明確なリソース源……キーパーソンであり、同時に味方の行動を封じる枷としても機能してしまっている。
 彼女の指示が届く効果範囲内、中距離内に仲間がほぼ全員存在するという状況は、良くも悪くも範囲系のスキルに収まりやすいという特徴がある。
 それが回復や付与に於いては味方にとって恩恵であろうが――逆に、敵方の範囲攻撃には。
「ガルァァァァァァッ!!」
「っ! 皆さん……こちらを見てください!」
 咆える獣が付与する怒り。渦巻いた不合理な感情を撥ね退けたフェリシアが、返す刀と言わんばかりにクェーサーアナライズを発する。
 自己の指示を以て狂乱する味方の平常心を取り戻した。一先ずの苦境を抜けた彼女の面立ちは、しかし流れる汗を見れば『未だ』であることは自明。
「やれ、些か奔放が過ぎますね……!」
 苛立ち紛れに呟く雪之丞。担う双刀、二条の黒が、その輪郭をとらえきれなかった獣から順に切り伏せていく、が。
「キィィィィィィ!!」
「!!」
 甲高い鳥の声。その一瞬後に脇腹を貫いた呪詛に対し、彼女は返す言葉も無く、唯歯を食いしばるのみ。
 遠距離型に仲間が怒りを付与できないと見るや、自身が突出して強引に怒りを付与しようという決断の速さは見事だが、それを見逃すことも獣にとってもあり得ない。
「倒れぬことが、今の拙にできる戦い方であればこそ」
 しかし、彼女は折れず。
「拙は少し。この都の風景が好きなのです。
 それを、荒らし、壊すというなら、相応の対価を頂きましょうか」
 ――戦況は推移する。敵は纏まりを欠いた総力戦で、特異運命座標らは連携を重視した持久戦を。
 そして、彼らは気づかなかった。
 この状況下が続けば見えてくる、陥穽があるということに。
「全く夜行性の妖怪ばかり集まりやがって、日光浴でもしてお帰り願おうか!」
 撃ち込んだ式符は何度目だろうか。徐々に、しかし確実に近づく種切れに対する不安をおくびにも出さず、錬の金槍が数体の獣を刺し貫いた。
 だが、獣たちの威勢は衰えない。
「ガァッ!」
「ちっ……!?」
 腕に食いつく牙。とっさに振り払ったそれはブロッカーたちによる攻撃誘因によって再び離れていったが、戦闘が続く間、こうした事態は増えつつあったのだ。
 無効戦力、と言う言葉がある。
 存在しながらも本来の目的通りに運用することができない。言ってしまえばお荷物の戦力と言うこと。今回の戦いに於いて、最も重要視すべきは手数で勝り続ける敵方へ『これ』を如何に発生させるか、そしてその量を増やすか、と言う部分にある。
 特異運命座標らはこの問題に対する解決策を、最もシンプルな方法――敵が十全に動くより前に倒し続ける――で対処し続けてきたが、これは時間と共に軈て衰え始める。
 事実上無限である敵に対し、特異運命座標らの気力は有限だ。充填効果や、フェリシア、錬によるクェーサーアナライズも使える回数が限られている。
「……我らは守護者。
 周く人に仇為せし者らよ。疾く己の棲家に逃げ帰るが良い。」
 これに対し、常に敵方の『対処できる個体数』を制限し続けていたクレマァダの手法は、間違いなくこの戦いのターニングポイントと言えた。
 経過時間に比例して、夢見る呼び声による魅了の比率を高める。動ける敵の数を減らすことで味方の攻勢、守勢に割くリソースを最小限に保ち、出来た余裕は回復や態勢の立て直しに振り分けることができた。
「集まれ、もっと集まれ。我らが居てはならぬと思わせろ。
 逃げるものは討ち、逃げても無駄だと思わせろ……!!」
 そして、これはクレマァダに限った話ではない。
「みんな、まだまだ頑張れるよ!
 ハンモもお手伝いするから、絶対に負けないでね!」
 此方はクレマァダほど意図を兼ねてでは無かろうが、ブロッキングの合間を見てのコイアイの花は、他に遠距離対象へ向けて行動阻害系のバッドステータスを持たない特異運命座標達にとっては救いの光だ。
 戦闘中、回復を飛ばす敵も居た。仲間たちの付与を解除する敵も。
 倒す優先順位の都合上致し方ないとはいえ、対処しづらかった敵の行動を乱すハンモの動きは特異運命座標らの確かな一助であり、
「そろそろ、百は超えたかしらね?
 だというのに、まあ獲物に困ることは無さそうで――」
 何よりだわ。そう言った小夜の空花乱墜が、最早何体目と知れない獣の首を切り落とす。
 遠近を問わぬ射程。単体への高威力と複数体への行動制限を有し、気力の消費も総じて高くはない。
 無論、これは今回の戦いの方向性と、他の役割を担当する味方の援護あってのものだが、それでも彼女の活躍もまた、この終わりの見えぬ戦いに大きく貢献したものである。
「キ、ィ――――――!」
 忌々しげに獣が叫ぶ。叫べば、再び現れる幾多のあやかし。
 指揮と回復を飛ばすフェリシアの息は荒く、ゴリョウも攻撃を引き付ける傍らの回復スキルで、気力の足並みが乱れ始めてきた。
 そう、どれだけ最善を突き詰めようと、『その時』が訪れるまで絶えぬ敵を前に、この場の特異運命座標らが、自らの力のみで勝利を手にすることは不可能。
 それでも。
「この、明かりを……」
 手にした携行照明を強く握りしめて。フェリシアは、声高に言ったのだ。
「……この光が要らなくなるまで。
 私たちと、皆で……耐えて……みせます!」
「ああ……」
 見据える彼女に、応じる錬。
 それを基点に、再度、一斉に襲い掛かった獣たちへと、彼は確かに、こう言ったのだ。
「イレギュラーズの底力を、甘く見るなよ?」


 そして。
 そして、今に至る。
 倒れた仲間の姿は五つ。フェリシア、雪之丞、小夜と錬、そして繁茂。
 時と共に数を減らし、気勢を削がれ、命の灯も掻き消える間際となった獲物を前に、終ぞ、獣たちは勝利を確信する。
 だが、それを嗤う者が居た。
「……未だ、仕事は終わっちゃいねえ」
 血に塗れ、それでも、ゴリョウは笑う。
「この背に仲間居る限り、そう簡単には倒れるわけにはいかねぇな!」
「ええ。それに、諦めるなんて選択肢、最初から私達には存在しないのよ」
 言葉を継いで、苦笑するイナリ。
 戦いを好むわけでもない。自由な暮らしを続けることで満足している自分が――この戦いだけは退きたくないと、そう思うのはなぜなのか。そう思いつつ。
「……我らはずっとこうやって、”絶望の青”……いや、”静寂の青”を護っていた」
 そうして、最後の一人が。
「こういう戦いは――慣れておる」
 満身に傷を負い、それでも自らの足で立ち続ける、クレマァダこそが。
 戦場を満たす血と、獣の亡骸、そして倒れた味方たち。
 その果てに残る者たちが、最後の一合をと。そう決意した瞬間。

 ――――――!!

「……ッ!」
 空気が、変わった。
 それと共に、混乱を始める獣たち。或るものは霧のように空気に溶け、或いは知性を喪った本当の動物のように何処かへと駆け出していく。
 それが……何を意図するのかなど、特異運命座標達には分かり切っていて。
「………………ああ」
 感嘆の、或いは悲嘆の言葉は、果たして、誰からこぼれたものだったのか。
 見上げた先は高天御所の頂上。狂うた神が『居た筈』の場所。
 ――その果てに、見えたものとは。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

フェリシア=ベルトゥーロ(p3p000094)[重傷]
うつろう恵み
鬼桜 雪之丞(p3p002312)[重傷]
白秘夜叉
白薊 小夜(p3p006668)[重傷]
盲御前
天目 錬(p3p008364)[重傷]
陰陽鍛冶師
金枝 繁茂(p3p008917)[重傷]
善悪の彼岸

あとがき

ご参加、有難うございました。

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