＜FarbeReise＞灰鉄精霊とドバーグの遺跡

オープニング

●ドバーグ遺跡の先へ
　馬を駆り砂漠を走る傭兵の姿あり。
　革鎧とターバン姿の、年若い男である。
　腰にさした剣を抜き、雄叫びをあげて眼前の敵へと振り上げた。
　下ろす先は決まっている。黒い鉱石と木で加工した斧や槍を構えた小柄で醜い怪物たちである。
　背は丸く目は黒く濁り、皺のよった顔と干からびた石のような肌は彼らの特徴であった。
　ギャアガと汚く叫び、手斧をもって飛びかかる。それを、傭兵は剣のひとはらいによって切り裂き、振り払った。
　仲間の一人が斬り殺されたにも関わらず、いやそれだからこそか、怪物たちは手に手に武器をとり傭兵へと襲いかかる。
　彼らはドバーグと呼ばれる亜人系モンスターだった。
　本来洞窟や古い鉱山跡地などに住み着き石をはむとされていたが、どういうわけかここファルベライズ遺跡群の中に巣を作っていたようだ。
　傭兵は馬を巧みに走らせてジグザグに撥ねさせるとドバーグの追撃をさけ、長い剣で彼らを切り払っていく。
　だが次から次へと湧いて出るドバーグの群れを前に、さしもの傭兵もそれ以上先へと進むことは難しかった。
「一人では無理か。……っ！」
　つぶやきの直後、胸に放たれる木の矢。
　ドバーグの弓兵が現れ、彼にさらなる狙いをつけているのが見えた。
　傷こそ浅いが、長くこの場に留まるには苦しい。
　傭兵は弓兵達の更に奥。つまりはドバーグの群れの奥に鎮座する石の扉をにらみつけた。
「こんなにも近くにあるというのに、口惜しい」
　歯がみは悔しさかそれとも胸に刺さる矢の痛みか。傭兵は馬を反し、来た道を戻っていった。

●またの名を、アンドラ遺跡
　鈍色の宝石を手に、ラサの情報屋クリムゾン13はローレット・イレギュラーズたちの前に腰掛けた。
「ファルベライズ遺跡群の噂はもう知ってるるかい。
　願いの叶うお宝『色宝』が眠るっていう前人未踏の遺跡たちさ」
　情報屋がこんな話を切り出すのは、当然ローレットへその遺跡がらみの依頼を持ってくるためだ。
　現在ラサ傭商連合は世界的中立で知られるローレットに色宝の獲得と保護を依頼していた。保護するためにラサ首都にある施設が用いられ、ハウザーをはじめとする名の知れた傭兵や商人たちがローレットの支援のために動いている。というのも、大鴉盗賊団なる連中が他を出し抜く形で色宝を狙って動き出したという報告が広まったためでもある。
　いくつあるか分からないお宝のために無数の遺跡を一個ずつのんびり攻略している余裕がなくなってきた、ということだ。
「まあ慌てるな。あんたらは今まで通り依頼を受けてくれればいいだけさ。ラサってのは武力と金を正常にトレードするのが売りでね。どれだけの危機だろうとあんたらをただ働きなんてさせやしない」
　そう言って前払い分のコイン袋をテーブルに置くと、情報屋は依頼書を広げた。

　アンドラ遺跡。
　これもまたファルベライズ遺跡群のひとつである。
　内部に何があるかは分からないが、古文書によると宝石精霊が作り上げた遺跡だとされ、立ち入る者に試練を与え、その試練を乗り越えたならば遺跡に収められた色宝を授けるという。
「まあ、これだけならもっと単純で済んだんだが……遺跡の周りがすみかに丁度良いってんでドバーグどもが巣を作っちまった。まずはこいつらを排除してからじゃねえと遺跡に入れねえってわけさ」
　情報屋はやれやれといって、コイン袋をもうひとつテーブルに置いた。ぱちんとウィンクをしてみせる。
「というわけで、ドバーグの排除と遺跡の攻略。この二つを頼むぜ。もちろん正常なトレードでな」

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第1章

第1章 第1節

「ふふん、こういう荒事ならお任せッス！」
　誰よりも素早く現場に到着、そして突入したのはイルミナだった。
　青い稲妻のごとくドバーグ集落へとチャージアタック。彼らが防衛のためにたてたであろう粗末な木の柵を粉砕しながらぼうっと歩いていたドバーグの一人を『撥ね』た。
　回転しながら宙を舞い、それを見上げた別のドバーグを撥ねた。
　立て続けの物音にドーム型の巣から這い出てきたドバーグをもまた撥ねた。
　こうして突如として三匹のドバーグを亡き者にしたイルミナは……。
「――テネムラス・トライキェン」
　振り抜いた手刀姿勢のまま砂をあげてブレーキをかけた。
　電光石火の登場にドバーグたちは慌て、手斧や金槌を手に集まるがイルミナはそれを目にして不敵に笑うばかりだ。
「さぁさぁ、どこからでも掛かってくるといいッスよ！」
　両手を突き出して手のひらをかえし、くいくいと『come on』のジェスチャーをしてみせる。
　それを挑発とおったドバーグが『ギャッ』と叫んで跳躍す――否。気合いを入れて叫んだのではない。今のは、悲鳴だ。
　仲間が飛びかかったかと思ったその時には既に巣のドームを突き破って吹き飛ばされていた。そう気づいたドバーグは戦慄しイルミナから後じさり――したところで、手にしていた金槌と首を同時に切断された。
「……残念ッスけど、イルミナのターンはまだ終わってないんッスよ」

成否

成功

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第1章 第2節

　突然の乱入に混乱し、しかし巣の防衛のためそして己の生存のために声をだしあい集まったドバーグたち。
　彼らがナイフを握り仲間を取り囲もう――としたその時。
「お宝！　換金！　お酒よぉー！」
　アーリアの色っぽい、そして元気のいい声がした。ビアガーデンで『とりあえず生ー！』て叫ぶときと同じテンションで叫び、そして手のひらサイズの小瓶を三つ立て続けに放り投げた。
　まるで香水瓶のように整った六角柱に月のようなガラス蓋。それがただの美術目的でなく、呪術目的だとドバーグたちに察することができるだろうか。
　それが砕けるということが、月と酒を写し込んだドバーグたちの魂を砕く呪術であるなどと。
「ギッ――！」
　突如血を吐いて倒れるドバーグたち。
　こらえたドバーグも目の色を変え、すぐ近くの仲間へナイフを突き立て始めた。
「色宝とかあんまり分かってないんだけど飲み代稼ぎよぉ！」
　くすくすと笑い、指をついっと上級ドバーグへ向けるアーリア。
「ほら、あっちにも敵がいるわよぉ」
　ドバーグたちは目を酒の色に変えて、上級ドバーグへと襲いかかった。

成否

成功

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第1章 第3節

　まさか味方に襲われると考えていなかった上級ドバーグは群がる下級ドバーグを斧で振り払い、怒声をあげて蹴り飛ばした。
　ギャッと叫んでバウンドし転がってくるドバーグを見下ろし、鬼灯は面覆布ごしにはあとため息をついた。
　わずかに揺れる布。そんな彼に人形の章姫がかくんと頭を預ける。
「どうやら、お茶会は出来なさそうねぇ……」
「そうだね、章殿。誠に残念だ、さあ、舞台の幕を上げようか」
　きゅきゅう、と空いた手で何かをたぐり寄せるような動作をすると、上級ドバーグの脚が突然ぶつんと切断された。
　突然のことに驚きつつもそこは上級ドバーグ。鬼灯のしわざと気づいて地についた両手と片足だけで食らいついてくる。
「黒衣……いや、忍を見るのは初めてか？　まあ二度目はないだろうよ」
　だがそれまでだ。
　突然ドバーグは燃え上がり、ばたばたと三秒ほど暴れたのちに息絶えた。

成否

成功

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第1章 第4節

　早速ドバーグ集落への襲撃が始まったなか、貸しパカダクラから下りた『山賊』グドルフ・ボイデル（p3p000694）は鼻をほじっていた指をぴんとそのへんにはじいた。
「ちっ……サーティーンの野郎。このおれさまにクソ面倒な仕事回して来やがって。で、何すりゃいいんだ？　とりあえずあのギャーギャーいってる連中をぶっ殺せってことでいいのか？」
「オイオイ山賊ぅ、依頼書見てこなかったのかよ」
　後ろから声がして、振り返ると背の低いパカダクラから『盗賊ゴブリン』キドー（p3p000244）がぴょんととびおりる所だった。
「宝石精霊が作り上げた遺跡へ入るのにドバーグ連中が邪魔だからまずは排除しろってハナシだ」
「あぁ？　分かってンだよそんなこたぁ」
　情報屋と昔をなじむいとまもなし。
　さてどうしてやろうかねと顎をなでて考えていると、キドーがなにやらそわそわとしていた。
「おい、ションベンならその辺でしてこいよ」
「ちげえよおめえ……宝石精霊って聞いたことあるか？」
「さあ？」
「んー」
　話を進めるでもなく、まあいっかという顔で山賊刀を抜くグドルフ。
　キドーも深く考えてもしょうがないとばかりにククリナイフを抜いた。
　二人でこっそりと遺跡側面からたどり、武器の準備に忙しくしているドバーグをのぞき見る。
「よ、っと」
　小瓶を放り投げ、『妖精の霧』を引き起こすキドー。
　頭にかかる霧にクラクラして、振り返りつつも派手に転倒するドバーグたち。
　そこへグドルフは雄叫びを上げて突撃。ドバーグたちの首をいっぺんに切ってとばした。
　次はどいつだぁ！？　と叫んで走って行くグドルフをよそに、キドーはドバーグたちがかき集めていた小さな石のナイフをひろいあげた。
「こいつは……アンドラダイトか？　なんでまたこんなもんをナイフにしてんだ」
　よく見れば他のドバーグたちも同じようにこの鉱石を刃部分や鎧の要所に使っているようだ。
「ま、進んでみればわかんだろ！」
　それこそ深く考えてもしかたない。キドーはナイフをポケットにいれ、他のドバーグたちへと挑みかかった。

成否

成功

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第1章 第5節

「『立ち入る者へ試練を与え、乗り越えたなら宝を授ける』かぁ……何だかわくわくしてくるフレーズだよねぇ！」
　ドバーグ集落へ次々に突入していく仲間達に続く形で、『la mano di Dio』シルキィ（p3p008115）は指から発した糸をくるくると巻くように伸ばしていく。
　そんな彼女を見つけたドバーグが手斧を振りかざし叫びながら走り出す――が、先んじてシルキィが糸玉を発射。ドバーグの脚に張り付いた糸玉は弾けるように周囲へ広がった。まるで蜘蛛の巣のように綺麗な幾何学模様を描いたと思ったら、それ自体が魔方陣となって吹き上がる熱砂の竜巻を作り出してしまった。
「ギャッ！？」
　これに巻き込まれたのはドバーグひとりだけではない。自分は安全だと思って横を通り過ぎようとしたドバーグたちまで巻き込まれ、天高く放り上げられていく。
「吹き荒れるは熱砂の嵐、ここで使ってこそ映えるってものだよねぇ。
　遠慮なく行くから、怪我しない内に帰った方がいいと思うよぉ……！」
　ピッと指鉄砲を構えてみせるシルキィ。ドバーグたちがどさどさと落下し、頭をおさえてごろごろと転がった。

成否

成功

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第1章 第6節

「アレは……イルミナにアーリア！　クッ、他にも見知った面々が続々……これは出遅れたか！？」
　こうしてはおれん！　と握りこぶしを胸に打ち当て激しい金属音を鳴らすと、『彷徨う赤の騎士』ウォリア（p3p001789）は剣をとりドバーグ集落へと切り込んでいった。
　下級ドバーグを次々に切り払い、目からぶわりと魂の炎を湧き上がらせる。
　と、そこへグレートソードを装備した上級ドバーグが突撃。鎧で防がれたとはいえ大剣による打撃は常人を吹き飛ばすほどの威力があるという。
　屈強なウォリアといえど押しのけられてしまうのではと思うほどの強力な打撃に、強く脚を踏ん張った。
「宝に加え、まさにオレ向きの戦いが出来るまたとない機会だ、足踏みしているわけにはいかん！　死にたい奴から来い！」
　構えるウォリア――の背後から素早く飛び出した飛燕（p3p009098）。
　背負った刀を抜くと、ウォリアとの戦いに気を取られていたドバーグの膝を撫でるように切りつけ背後へと回り込む。
「悪いが利用させてもらう。この世界では初陣なんでな」
「ほう……」
　目を細めたかのように鎧から炎を引くウォリア。
「いやはや、面識の薄いながらも偶然居合わせた混成チームというのも悪くないものですねぇ」
　『果てのなき欲望』カイロ・コールド（p3p008306）が胡散臭い笑顔をうかべながら二人の間に入ってきた。というより、飛燕たちに向けられたドバーグ弓兵の射撃をぱしりと素手でキャッチしてみせた。
　どこかさび付いた錫杖をずんと砂地に突き立て、周囲の仲間と自分に向けて付与効果を浴びせていく。
「これは……」
　混沌へ召喚されて後大きく能力の制限された飛燕だが、カイロの与えた『加護』によっていくつもの制限が解除されていった。
　体力は倍加され攻撃力をはじめとする様々な性能が大幅に向上。
「有料……と言いたいところですが依頼料を頂いてますので、サービスですよ。
　私の名前を売るチャンスでもありますねぇ。
　それに乱戦は大好きです。楽しくやりましょう」
　グッドラック！　と胡散臭い笑顔で親指を立てられ、飛燕はフンと鼻を鳴らした。ガスマスクの内側で笑った……ようにも見えた。
　矢が迫るなか、それを次々に切り払いながら接近。ドバーグ弓兵の腹に刀を突き立てる。
　その一方で、足を斬られた上級ドバーグめがけて『砂山鼬鼠』アルトゥライネル（p3p008166）が急接近。
「ラサに身を置く者として問題解決に協力させてもらおう。
　お歴々に顔を売る良い機会でもあるからな」
　『この大物は任せておけ』とばかりに距離を詰め、剣によるスイングをスライディングで回避していく。
　踊るように回るように立ち上がりを見せた後、いつの間にか抜いていたナイフでドバーグのあちこちの筋を切り裂いていく。
「道を開けて貰おうか」
「ぐぶ……！」
　ぐらりとバランスを崩し、仰向けに転倒しそうになるドバーグ。
　その隙を逃すウォリアではない。
　全身の鎧の隙間から炎が噴き出すほどの気合いをのせ、ドバーグの胴体をずばんと輪切りにしてしまった。
　回転しながら転落する上半身。
　カイロは『お見事』といって手を叩いて見せた。

成否

成功

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第1章 第7節

「この間の色宝を見つけた遺跡とは随分と趣が違いますね……いえ、これは棲んでいる魔物のせいでしょうか」
　『麒麟の加護』シフォリィ・シリア・アルテロンド（p3p000174）はワビからのサビによるアルテロンド突きによってドバーグのみぞおちを打った。
　読者諸兄に裏サドー有段者はおられようか。おられるなら今の動きが理解できよう。アルテロンド流サドー裏有段者にのみ扱えるというサホーによりドバーグが高速で横に三回転したのちアルテロンド手刀により首を狩られるという一連の動きが。
　そんな彼女を取り囲む無数のドバーグ。
　シフォリィは構えを整え、キッと周囲を見回した。
　充分に身体の温まったシフォリィに隙は無い。次々に飛びかかるドバーグを次々と掌底、手刀、蹴り、気合いによる衝撃波によってはじき返していくさまを。ディモールト・オテマエ・サホー。
「女の身だからって、油断しないことです！」

成否

成功

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第1章 第8節

　突如現れ集落をみるみる壊滅していくイレギュラーズという存在に、ドバーグたちは恐怖するもレミングス連鎖自殺のごとく突き進み、そしてそれ上に壊滅の速度は増した。
　だがいつまでも破壊に身を任せる彼らではない。
　鎧を纏った上級ドバーグが剣やハンマー、頑丈な弓をとり集まってきたのである。
「ラサの仕事なら私に任せて。
　さぁ、今日もバッサバッサ暴れるわよ！」
　そんな上級ドバーグに対応したのが『砂食む想い』エルス・ティーネ（p3p007325）。
　指輪にやわらかく口づけすると大きな鎌へと変化。
「ラサが注目するファルグメントへの道を塞ぐ敵ならば、私はラサの為にあなた方を薙払わなくちゃね！
　さ、覚悟を決めてちょうだい……！」
　剣を振り込むドバーグをそのひとふりでもって打ち払うと、踊るようにドバーグの周りを走り連続で斬り付けていく。
　くらりと意識と心を奪われたドバーグは訳も分からず味方のドバーグへと攻撃。
　ハンマーをもったドバーグが怒り狂ってそんな彼を殴り倒すと、それに乗じたように『清楚にして不埒』ミルヴィ＝カーソン（p3p005047）が躍り出た。
「確か連中前々から遺物みたいのが散見されてたけどなんで衰退しちゃったんだろーね？　ま、なんにせよアタシに任せて！」
　ねずみのカットを忍ばせて様子を見ていたミルヴィは絶妙なタイミングで死角から襲撃。ドバーグの首を美しい曲刀で切り裂いていく。
「多少でかくたって、急所は一緒！」
　吹き上がる血がかからないように飛び退き、エルスと共に構える。
　というのも、弓ドバーグが力強い射撃を浴びせてくるからだ。
　空中で分裂した無数の矢を軽やかに回避し、直撃コースの矢を剣で切り落とすミルヴィ。そんな彼女を盾にするようにサッとかけるエルス。
　ハンドサインで後方へ合図を出すと、一発だけの銃声が戦場を支配した。
　というのも、障害物に身を隠していた『剣砕きの』ラダ・ジグリ（p3p000271）がたったの一瞬で弓ドバーグに狙いをつけその額に綺麗に風穴をあけてしまったからだ。
　正確無比なスナイパーというものは場に恐怖を植え付ける。
　今度ばかりはと冷や汗をながしたドバーグたちに、ラダは絶え間ない射撃を与えて次々に撃滅していく。
　足を止めてしまったドバーグたちも、例外なくミルヴィたちの餌食となった。
「試練前のウォーミングアップ、とは油断せずにな」
　などとつぶやきながらも最後の一発を撃ち込み、ラダは障害物から顔を出した。

成否

成功

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第1章 第9節

　アンドラ遺跡の門前はドバーグの死体で山が築かれていた。
　遺跡探索に役立つ情報はないかと、イルミナ・ガードルーン(p3p001475)たちが彼らの巣を徹底的に探索していたためだ。
「そういえばこいつら、なんでこんな場所に住んでるんスかねえ。食べ物とかないでしょう？」
「まあ、俺なら間違いなく住まねえな。酒場も近くにねえし」
　キドー(p3p000244)がドバーグたちの扱う武器を一通り並べ、その材質について調べていた。
「考えてみりゃあ不自然なことばっかだ。俺が言うのもナンだが、こいつらの武器、刃部分とかハンマーのインパクト部分が全部アンドラダイトで出来てやがる」
「なにかおかしいのか？」
　鉱物のことはわからん、と言った様子で振り返るウォリア(p3p001789)。
　ラダ・ジグリ（p3p000271）がナイフのひとつをとりあげてしげしげと眺めた。
「強度からしても非効率すぎる。その辺の石を使った方が武器の強度があがるだろう。
　何かしら特別な魔道具触媒になっているか、宗教上の理由でこうしたかだな。
　そもそも、砂漠の真ん中だというのに柄の木材はどこから調達したんだ？」
　ううむ、と唸るように考えるラダ。
　厳密にはドバーグというモンスターを見るのは初めてではない。
　彼らは幻想ラサ間の廃坑に巨大な巣を作るモンスターとして知られ、内部で一定の序列をもち『ドバーグの星』という特別な鉱石を生成するすべをもつ。
　当時は特に意識していなかったが、あのとき下級ドバーグが装備していた道具もいまここにあるものと同じ素材でできていたように思う。
「妙だな。外と交易している様子はないし、出所があるとすれば……」
　ラダたちは一様にアンドラ遺跡の扉を見た。