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シナリオ詳細

<FarbeReise>灰鉄精霊とドバーグの遺跡

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ドバーグ遺跡の先へ
 馬を駆り砂漠を走る傭兵の姿あり。
 革鎧とターバン姿の、年若い男である。
 腰にさした剣を抜き、雄叫びをあげて眼前の敵へと振り上げた。
 下ろす先は決まっている。黒い鉱石と木で加工した斧や槍を構えた小柄で醜い怪物たちである。
 背は丸く目は黒く濁り、皺のよった顔と干からびた石のような肌は彼らの特徴であった。
 ギャアガと汚く叫び、手斧をもって飛びかかる。それを、傭兵は剣のひとはらいによって切り裂き、振り払った。
 仲間の一人が斬り殺されたにも関わらず、いやそれだからこそか、怪物たちは手に手に武器をとり傭兵へと襲いかかる。
 彼らはドバーグと呼ばれる亜人系モンスターだった。
 本来洞窟や古い鉱山跡地などに住み着き石をはむとされていたが、どういうわけかここファルベライズ遺跡群の中に巣を作っていたようだ。
 傭兵は馬を巧みに走らせてジグザグに撥ねさせるとドバーグの追撃をさけ、長い剣で彼らを切り払っていく。
 だが次から次へと湧いて出るドバーグの群れを前に、さしもの傭兵もそれ以上先へと進むことは難しかった。
「一人では無理か。……っ!」
 つぶやきの直後、胸に放たれる木の矢。
 ドバーグの弓兵が現れ、彼にさらなる狙いをつけているのが見えた。
 傷こそ浅いが、長くこの場に留まるには苦しい。
 傭兵は弓兵達の更に奥。つまりはドバーグの群れの奥に鎮座する石の扉をにらみつけた。
「こんなにも近くにあるというのに、口惜しい」
 歯がみは悔しさかそれとも胸に刺さる矢の痛みか。傭兵は馬を反し、来た道を戻っていった。

●またの名を、アンドラ遺跡
 鈍色の宝石を手に、ラサの情報屋クリムゾン13はローレット・イレギュラーズたちの前に腰掛けた。
「ファルベライズ遺跡群の噂はもう知ってるるかい。
 願いの叶うお宝『色宝』が眠るっていう前人未踏の遺跡たちさ」
 情報屋がこんな話を切り出すのは、当然ローレットへその遺跡がらみの依頼を持ってくるためだ。
 現在ラサ傭商連合は世界的中立で知られるローレットに色宝の獲得と保護を依頼していた。保護するためにラサ首都にある施設が用いられ、ハウザーをはじめとする名の知れた傭兵や商人たちがローレットの支援のために動いている。というのも、大鴉盗賊団なる連中が他を出し抜く形で色宝を狙って動き出したという報告が広まったためでもある。
 いくつあるか分からないお宝のために無数の遺跡を一個ずつのんびり攻略している余裕がなくなってきた、ということだ。
「まあ慌てるな。あんたらは今まで通り依頼を受けてくれればいいだけさ。ラサってのは武力と金を正常にトレードするのが売りでね。どれだけの危機だろうとあんたらをただ働きなんてさせやしない」
 そう言って前払い分のコイン袋をテーブルに置くと、情報屋は依頼書を広げた。

 アンドラ遺跡。
 これもまたファルベライズ遺跡群のひとつである。
 内部に何があるかは分からないが、古文書によると宝石精霊が作り上げた遺跡だとされ、立ち入る者に試練を与え、その試練を乗り越えたならば遺跡に収められた色宝を授けるという。
「まあ、これだけならもっと単純で済んだんだが……遺跡の周りがすみかに丁度良いってんでドバーグどもが巣を作っちまった。まずはこいつらを排除してからじゃねえと遺跡に入れねえってわけさ」
 情報屋はやれやれといって、コイン袋をもうひとつテーブルに置いた。ぱちんとウィンクをしてみせる。
「というわけで、ドバーグの排除と遺跡の攻略。この二つを頼むぜ。もちろん正常なトレードでな」

GMコメント

 こちらはラリーシナリオです。
 全二~三章構成を予定しています。

●第一章:ドバーグ集落襲撃作戦
 採用人数:6~8人予定
 亜人種モンスター『ドバーグ』の群れと戦い、これを倒してください。
 彼らは木と鉱石を組み合わせた粗末な道具を武器として戦いますが、中には力あるドバーグも混ざっているようです。

・下級ドバーグ
 粗末な武器を使い攻撃する貧弱なモンスター。
 群れで襲いかかりその勢いで外敵を排除するという稚拙な戦法をとり、これの対処はかなり簡単。なかにはわずかに弓を使って射撃をするドバーグもいるようです。
 群れに取り囲まれて身動きがとれなくなったり引きつけすぎて帰って身動きがとれなくなったりといった状況にだけ注意してください。

・上級ドバーグ
 通常のドバーグと異なり2mほどの身長と重鎧を装備した選ばれしドバーグ。
 剣や斧やハンマーなどそれぞれ得意とする武器での戦闘を行う模様。
 集落を壊滅させるには戦わなければならない敵であり、油断せずにあたりたい敵です。

 基本的には下級ドバーグをなぎ払い、挑みかかってきた上級ドバーグに得意な戦術でぶつかる……といった作戦でいくのがスムーズでしょう。
 ドバーグを倒しきることができれば章クリアとなり、第二章へと進みます。

■オマケ解説
●色宝(しゅほう、ファルグメント)
 小さな小さな願いを叶える宝物群です。
 真っ青なクリスタルや黄のマントなど、大きさや形状は様々です。どれも1つの色に染まっていることが特徴です。
 願いを叶えると言われていますが、個々が持つ力は微々たるものです(かすり傷が治る程度)。
 多く集めればそれだけの願いが叶うと言われていますが、詳細は定かでありません。
 ラサ傭兵商会連合トップたちの話し合いにより、見つけ出された色宝は報酬と引き換えに、首都ネフェルストで管理されることとなっています。

  • <FarbeReise>灰鉄精霊とドバーグの遺跡完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別ラリー
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年11月10日 00時34分
  • 章数2章
  • 総採用数26人
  • 参加費50RC

第2章

第2章 第1節

 アンドラ遺跡。
 それはファルベライズ遺跡群のひとつであり、ドバーグというモンスターが周囲を巣にしていたことで簡単には侵入できなかったポイントである。
 邪魔になっていたドバーグたちを倒し門扉に触れると、まるであなたを歓迎するようにそれは開いた。
 磨かれたタイルの上で石の像を引きずるような、ごりごりという音をたてて内側へと両開きする大扉。高さはおよそ3mほどだろうか。
 屋内はぼんやりとしたオレンジ色の光に照らされており、続く通路の床タイルは光を照り返すほど綺麗に磨かれていた。
 内部に入ってみると今度は、両サイドに石を彫って墨入れしたタイプの壁画が続いていた。
 言葉がわからなくても、絵の内容を見ればわかる。

 むかしむかし、この遺跡を訪れたドバーグの集団。
 彼らは疲れ果て食料もなく死ぬ寸前にあったが、それを哀れんだ精霊が彼らに二つの『祝福』を施した。
 ひとつは、石と砂を食うことで生きられるという力。
 もうひとつは、死してもすぐに同じ肉体が土からはえいずるという力。
 だがその代償も大きかった。
 ドバーグたちは石以外を食べることができず、新たな知性や記憶を後に継承できなくなってしまった。
 彼らは遺跡の外に自分たちの子孫を輩出しこの『呪い』を解く方法を探させた。
 だが、誰も戻ってくることはなかった。
 解呪方法を見つけ出せないばかりか、アンドラ遺跡のありかや先祖たちの記憶や知識すら継承することができず、移った土地に根付いてしまったのだろう。
 遺跡の中にはいつまでも変化しない小さな小さな『ドバーグの王国』だけが残り、彼らは永遠に外へ出ないことに決めた。
「読んでくれた?」
 褐色肌の、髪の長い女性がするりと壁画をすりぬけて現れた。
 彼女の姿は半透明にかすんでいて、胸にネックレスをさげていた。
 誰何の問いに彼女は、胸に手を当て小さく頭を下げてみせる。
「私に名前はないの。このことを、『侵入者』に教えるためだけに、私はいるんだから。どうしても名前を呼びたかったら……そうだね」
 ネックレスに飾られた美しい宝石を指でつついて――。
「『アンドラ』って呼んでね?」

 イレギュラーズたちが色宝を求めて遺跡へやってきたことを告げると、アンドラは小刻みに頷いてから再びネックレスの宝石を指でつついた。
「これがソウだよ? この遺跡に収められた色宝なの。私があげてもいいって決めるまで、誰もつかめないようになってるんだ」
 ほら確かめてみて。そういってアンドラはあなたの手を取って自分の胸に押し当てようとした。あなたの腕はまるで霧でもつかむようにアンドラの身体も、そしてネックレスをも通過していってしまう。
「あげるには条件があるの。聞いてくれるよね?」
 アンドラはちょっとだけもったいつけて。
 そして、ごくごく簡単に言った。
「ドバーグの王国を、滅ぼしてほしいの」

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●第二章:亡国の宝
 アンドラに案内されて通路を通り抜けると、そこには大きな宮殿と城下町が広がっていました。
 どうやら特殊な空間であるらしく、遺跡内であるにも関わらず空があり風があり太陽の暑さがありました。
 城下町では下級ドバーグたちが商売をしたり立ち話をしたりとなにげない日常を送っており、ときおり鎧と槍などを装備した等身の高い上級ドバーグが石の馬に乗って街を見回りしているようでした。
 どうやらここは、ドバーグの城下町であるようです。
 街の奥にはこじんまりとした宮殿が建っており、単純な模様の旗がたっています。
 宮殿というからにはあそこに王がいて、それが死することでこの王国は滅びてしまうのでしょう。
 つまりは――あなたは今からこの日常を破壊しなければならないようです。

・エネミーデータと特殊ルール
 この空間内でのみ、PCたちは通常よりも格段に優れた能力を獲得します。
 あなたはドバーグ兵士が束になっても叶わないような強者であり、『探索』や『聞き耳』といった非戦スキルの効果は過剰なまでに高まり、『飛行』や『アクロバット』や『ドリームシアター』といった行動的な非戦スキルに至ってはそのまま戦闘利用効果を持ちます。
 つまりは、いつもの枠を大幅に飛び越えて、あなたはスーパーな存在として振る舞えるのです。

 ドバーグ王国は沢山の兵士と沢山の市民を抱える王国です。
 宮殿には王がおり、精鋭の近衛兵たちが守っています。
 宮殿は緑豊かで様々な木々や花がさき、召使いたちも沢山雇っているようです。
 また宮殿には塔が二つあり、片方にはドバーグのお姫様が、もう片方には王様の居住エリアがあり、普段は中央の堂最奥にて王様が執政にあたっているようです。

 城下町の構造はあえて決めません。あなたはその気になれば街の構造や人々の様子を深く把握することができますし、それを最大活用することができるでしょう。


第2章 第2節

アルトゥライネル(p3p008166)
バロメット・砂漠の妖精

「これからこの手で壊さなければならないものも確と見ておかなければならないが……俺はまずアンドラ、君と話がしたい」
 行動に出る前に、もとい通路の先の空間へ至る前に、『砂山鼬鼠』アルトゥライネル(p3p008166)は振り返って宝石精霊アンドラへと問いかけた。
「望む望まざるに関わらず、何かを変える『力』とは大きければ大きい程に齟齬や破綻も生まれる。
 だから生きるためだけの形に歪んでしまった彼らも、そうしてしまった精霊も、誰も悪くない……そう俺は考えている。
 ここは既に滅んでいた筈のものが生きる場所なんだと、な」
 ただ一言『滅ぼして』とだけ言ってきた精霊に対して、これはどんな意味をもつ質問だろうか。
 だが、聞かずには居られない。
「何処にも進めなくなった行き止まりの彼らに、終わりを与えるのが俺達の仕事……そういうことで良いのか?」
「そう、なのかもね」
 両手を後ろにやって、アンドラは笑顔なのか泣き顔なのかわからない顔をした。
「そうなのかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
 どのみち、色宝の無くなったこの場所に彼らは生きてなんていられないだろうから」
「……?」
 言い方にひっかかったアルトゥライネルだが、それ以上の質問を許さない雰囲気がアンドラにはあった。
 だから、開きかけた口を閉じざるを得ない。
 本当はこう尋ねるつもりだったのに。

 ――アンドラ、君がドバーグ達を救おうとした壁画の精霊なのか?

成否

成功


第2章 第3節

カイロ・コールド(p3p008306)
闇と土蛇
蛇蛇 双弥(p3p008441)
医神の双蛇

「悪戯好きな精霊が暗躍する……何というか、そんなイメージばかりですね。色宝探しの依頼って」
 ドバーグ王国の城下町。その中央通りを堂々と歩きながら、『果てのなき欲望』カイロ・コールド(p3p008306)は『マジック・インゴット』を懐から取り出した。
「……まあ、請け負った依頼を投げ出しはしませんよ。気は進みませんが始めるとしましょう」
 滅多に露出されることのない彼の真価ともいうべきアイテムから、黄金の光りが辺り構わずまき散らされた。
 彼を珍しげに見やる者たちも、周囲の建物も、たちまちの内に燃えていく。
 その様子に、流石のカイロも眉尻を下げる。
「気味が悪いですねぇ、本来の実力とはかけ離れた戦闘能力は。
 圧倒的な力と言えば聞こえは良いですが、これはあまりにも不相応な力
 おかしい……乱戦は楽しい筈ですのに」
「細かい問答が必要かい? 与えられた依頼に忠実に、求められた要求を為し、差し出された首を落とす」
 『蛇に睨まれた男』蛇蛇 双弥(p3p008441)は抜いたMESDを路上へと向けた。
 衛兵たちが槍を手に駆け寄ってくるも、双弥がトリガーをひくだけで巨大な魔方陣が銃口の先に多重展開。錬成された弾丸が拡散されて発射される。
「だがなァ、アンドラ……あいつらは俺達とお前との身勝手で死ぬ。魂には報いてやれよ」
 まるで鎧袖一触。双弥たちを止められるものなどいなかった。
 双弥はほんの一瞬だけ目を伏せると、わざと目を見開いてドバーグたちへ笑って見せた。
「ハハハ、仲間思いでいい奴らだぜェお前ら! 涙が出るほどいい奴らだ!
 だが残念、蛇野郎の下らねえオアソビで散る命だ!」
 ただ拳銃を突き出して歩くだけ。引き金をひくだけで、王国の城下町はたちまち血の海へと変わっていく。
「……だから誓え。死ぬ前にせめて『悪い人生じゃなかった』って誓えよ」
 自分には、こんな役回りがお似合いだ。双弥は舌打ちをして、声を上げて笑って見せた。

成否

成功


第2章 第4節

ウォリア(p3p001789)
生命に焦がれて
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
フラーゴラ・トラモント(p3p008825)
星月を掬うひと

 平和な城下町が燃えていた。ケーキ屋さんもパン屋さんも、靴屋さんも服屋さんも、みんなみんな燃えていた。
 道ばたには物言わぬ死体ばかりが転がり、そこに身分も職業も関係なかった。街を警備する兵士達でさえ、赤子の手をひねるように殺されていた。
「そう、貴女達が外に出て暴れていたのも……『呪い』を解くためだったのねぇ」
 『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)は箒に横乗りし、薄手の手袋を脱いで指輪を晒した。
 城へさしかかる頃、高所からこちらを指さすドバーグの兵隊が見えた。こちらに弓を向け、次々に矢を放つ。
「寂しくて、悲しくて、小さなドバーグさん達。
 貴女達から見たら私達は侵略者で、破壊者。
 ごめんなさい、どれだけ恨んでくれてもいいわぁ」
 しかしその矢のことごとくがアーリアの展開する魔術障壁によって消去され、それを哀れむように優しく指輪に口づけをした。
「私からの呪いはね、貴方達が次に産まれる時美味しいお酒と食事に恵まれて……もう食べ切れない! 飲めない! ってなること」
 空中にワインレッドの雲が生まれ、紅の矢が文字通り雨のごとく降り注いだ。
「……とっておきの呪い、受けてちょうだいねぇ」
 降り注ぐ死の雨が、悲鳴を連鎖した鈴のように広げていく。
「『死は救い』……そんなことを言う人もいるけど……嫌な役回りだね」
 『恋の炎に身を焦がし』フラーゴラ・トラモント(p3p008825)は民家の屋根からそれを眺め、ゆっくりと首を振った。
 刀をひとふり抜いて天にかざすと、天の雲が晴れ渡り巨大なオーロラが生まれた。
 降り注ぐ光がさらなる死となって、ドバーグたちを埋め尽くした。
「もうここの住民は生きられない……。
 いいよ、遅く死ぬか早く死ぬかの違い……。
 ワタシが終わらせてあげる……」
 きっとそれは残酷な光りだけれど。
 きっとそれは優しい光りでもあった。

 城壁から次々と転落するドバーグ兵たち。
「……アンドラ。此処は『行き止まり』なのだな」
 『彷徨う赤の騎士』ウォリア(p3p001789)は塔の上でだらんと腕をさげ、滅び行く王国を眺めていた。
「その善意を……『手を差し伸べた』事を、恨まれたのでは無いか?
 そして、色宝が無くなれば。祝福が、呪縛が解けて……彼等はやはり、死ぬのだろう。
 故に、お前は……『滅ぼして』と依頼した……始末をつける為に……」
 ウォリアはまるで深呼吸するように内なる炎を膨らませると、かぶとの目がある部分を細めた。
「請け負った。『終末の騎士』として与える救済はただ一つ……!」
 振りかざした剣は炎を纏い、炎は天を突くほどに燃え上がり、彼の斬撃は城を切断していった。
「行き止まりの国を力の限りに蹂躙し、不死に縛られた全ての魂を、この胸の焔に焼べ、喰らい尽くす。
 閉じたままになった……お前と、ドバーグの道。オレの焔で……今照らそう!」

成否

成功


第2章 第5節

ラダ・ジグリ(p3p000271)
灼けつく太陽
イルミナ・ガードルーン(p3p001475)
まずは、お話から。
エルス・ティーネ(p3p007325)
祝福(グリュック)

 あまりにも華麗で、あまりにも戦列で、そしてあまりにも冷徹にドバーグを狩る姿から、彼女は――『ドバーグ狩り』ラダ・ジグリ(p3p000271)と呼ばれた。
 しかしこの呼び名にはもう一つの意味がある。
「アンドラ、何故この国の滅亡を願う?」
 瓦解した城壁をジェットパックで超え、こちらを見上げ弓を引くドバーグ兵たちへライフルによってなぎ払うような射撃を浴びせていく。
 まるで弾ひとつひとつに意思があるかのようにドバーグをの頭部を撃ち抜いていき、まるで指でなぞったかのように的確にドバーグたちは倒れていく。
 一通りの兵を殲滅しおえたところでラダは物陰へ隠れ、気配を消しながら移動を開始した。
 彼女の脳裏にあるのは、かつて消え去った小さな王国。ゲヴェーアコボルトの王国である。
 彼らの環境は、どこかドバーグに通ずるものがあるように思えた。
 違いがあるのは、彼らは外に出られたということだ。
「最もシンプルな呪いの終わりを受け入れるか、未来を信じ抵抗するかは自由。
 だが私自身や私の暮らす土地の為、どんな結論でも滅ぼす。
 だが滅びてなお残るものがあるなら……」
 『ドバーグ狩り』――その意味するところは、『冷徹であっても冷酷ではない』。

 一方で、自身をあえて冷酷な怪物に仕立てた者もあった。
 かつては吸血鬼の王、その娘として世界の災厄そのものであった『砂食む想い』エルス・ティーネ(p3p007325)である。
 それも、国滅の災厄であった。
「初めてじゃない……それも、最初に滅ぼしたと言う国は、自分の国だったもの、ね……」
 指輪に触れると、天空に何百という数の大鎌が出現、そのすべてが降り注ぎ城門から城内にかけての庭へと降り注いでいく。
 美しいバラ園がたちまちの内に鎌だからけの無残な地となり、そのうちの一本を抜いて勇ましく挑みかかる王国騎士たちを小蠅でも払うように次々に斬り捨てながら歩いて行く。
「世界の全てが敵で、世界の全てが見えなくなってしまったから。
 『憤怒』を起こし、全てを斬り裂いた……。
 過去を振り返るのは未熟な証拠かしら……? けれど……」
 あのときも、こんな風だっただろうか。
 エルスは巨大な……城を切り裂けるほど巨大な鎌を作り出し、城壁もろとも切り裂いていった。

 崩壊していく城の瓦礫を軽々とかわしながら、『蒼騎雷電』イルミナ・ガードルーン(p3p001475)は空中へと飛び上がっていた。
 発光するブレード型のパーツによって推進力を得ると、イルミナは美しくうねったラインを描いて落ちる瓦礫の中をすいすいとくぐりぬけ飛んでいく。
 目指すは王の間。
 王国でも最強の近衛兵たちが国に伝わる伝説の武具を身につけ挑みかかるが、イルミナにとってそれは児戯に等しかった。
「精霊も良かれと思ってやったことでしょうが。……いや、ほんとにそうッスかね、だいぶ意地の悪い加護のような気はしますが。そこはその精霊さんも生き物のことはよくわかっていなかったんスかね……」
 王国最強のひとりに数えられる大柄な剣士の斬撃を素手で止めると、イルミナは相手の腹を手刀で突いた。
 衝撃が戦史の身体を突き抜け、豪華な部屋の絨毯を切り裂きその後方にひかえる兵達までもを切り裂いていった。
「謝りませんよ。お仕事ですから」

成否

成功


第2章 第6節

キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)
社長!
セララ(p3p000273)
魔法騎士
シルキィ(p3p008115)
繋ぐ者

 城下町が炎をあげ、悲鳴すらも聞こえなくなった頃。
 王城は瓦礫にまみれ、玉座の上に煙る空が見えていた。
 王冠をかぶったドバーグが玉座についたまましっかりと手すりを握りしめ、それを守るように親衛隊が武器を構える。
「王には指一本ふれさせは――!」
 勇敢にも斬りかかるドバーグ親衛隊が、しかし一瞬にして糸に絡め取られ石の柱まで吹き飛ばされた。
 『la mano di Dio』シルキィ(p3p008115)が伸ばした無数の糸がたちまちの内に部屋のあちこちを覆い尽くし、親衛隊はおろか非戦闘員にいたるまでが糸に絡め取られていく。
 ただ、シルキィがパチンと指を鳴らしただけで、彼らに走った電撃が残らず意識をそぎ落としていくだろう。
 残っていたのは王、それのみであった。
「教えて欲しい。石しか食べられず、死しても蘇り続ける呪い……この国の人達は、あなたは、それをどう思ってるの?」
 シルキィの問いかけに、ドバーグ王は歯を食いしばり、『侵略者め』と絞り出すようにつぶやいてから……肩を落として息を吐いた。
 これだけの破壊。
 これだけの圧倒。
 もはや恨むことすらむなしいと、感じたのだろう。
「お父様!」
 そこへ、ドバーグの姫が駆け寄ってきた。
 糸の上を走り、王に覆い被さるようにしてシルキィへと振り返る。
「おやめください! なんでもしますから、お父様だけは……!」
 ドバーグ姫の。
 いや、王も、親衛隊も、近衛兵も、街の住人も。
 みんな。
 みんな。
 まるで『人間と変わらないような姿形をした』彼らを想い、シルキィは首を振った。
「王、答えて」
「『ただ生きているだけ』になっちゃったのかもしれないね」
 話を引き継ぐように、『魔法騎士』セララ(p3p000273)が現れた。
「知性や記憶を継承できないってそういうことだもの」
 その言葉に肯定するように、王は姫をそっとどけた。
 玉座の手すりから手を離しゆっくりと立ち上がる。
「異界からの侵略者よ。我々は、確かに生きていた。生きていたが……我々ですら、それを覚えてはおられなんだ」
「うん。せめて、君達がここで王国を作っていたことだけはボクが覚えておくから」
 ちらりと見ると、石の柱のその上に、気配をほぼ完全に殺していた『盗賊ゴブリン』キドー(p3p000244)が潜んでいるのが見えた。
 セララはあえて剣を振りかざし、王と姫が本能的に身構えたその瞬間――キドーが彼ら二人の命をフッと消し去った。
 蝋燭の火でも、消すように。

 それからだ。
 王国の空はよどみ、城は溶け、世界は幕を引くかのように縮まっていく。
 気づけばキドーたちイレギュラーズはみな、やや広いだけのまっさらなホールに集まっていた。
「これは? ドバーグの王国は?」
「幻だ。だって混沌では、死者は絶対蘇らない」
 キドーの言葉に、セララはハッとなって口に手をやった。
 ホールの端。遺跡の入り口とは反対側の場所に、白骨がいくつか転がっている。
 そのそばに精霊アンドラは立っていた。骨を見下ろすように。墓を見下ろすように。
「これで良かったのか?」
「どうだろ。私、頭よくないから。最善手とかわかんないや」
 振り返るアンドラ。
 彼女は首飾りをとると、キドーたちのもとへとゆっくりと歩いた。
 ふんだつま先が水面の波紋のように光りを散らし、一歩すすむたびに彼女の姿を透明に近づけていく。
 差し出したネックレスを掴もうとすると、スッと彼女は引き戻した。
「あ、もうひとつ、お願い、いいかな」

 ――あの子たちのこと、覚えていてあげてね

 言葉が言葉になる前に、アンドラは姿を消した。
 色宝のネックレスだけが、床に落ちる。
 あとに残ったのは石の遺跡と、見知らぬ白骨と、ドバーグの死体たちだけだった。

成否

成功


第2章 第7節

 こうして、イレギュラーズたちはアンドラ遺跡から色宝を無事回収することができた。
 なぜ遺跡の周りにドバーグが巣を作ったのか、遺跡に残された白骨はなんだったのか。力を失いただの石のホールと化したこの場所がなんだったのか。
 それを知っているのは。
 もはや、あなただけとなったのだ。

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