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シナリオ詳細

再現性東京2010:深淵の音色

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 どろどろと歪んで見える月の輪郭は、まるで目から落ちる涙のようだ。
 濃い闇の気配にひたひたと冷気が漂う。
 恐ろしいまでの死の音色があたりを覆っていた。

 赤い服を着た少女は自分の手首をナイフで切りつける。
 ポタポタと血が地面に落ちた。
 電灯の光が少女の影を映し出す。
 すると少女の影からぞろぞろした手が地面に現れた。
 びたり。べちゃり。
 少女が血を落とすたびに。
 手は伸びて頭が出現し、胴体が姿を現す。

「さあ、起きて。お仕事の時間よ」
 人の影に隠れて潜んでいるだけだった、何者にもなれなかった者たちに命を与えるのだ。
 絶対服従の名の元に揺り起こされる亡霊達は、奇しくも『何者でも無かった』過去の自分と同じで。
 きっと、自分を傅かせたあの男もこんな優越感に浸っていたのだろうと思う。
「もう少し」
 少女の声に応えるように亡霊が実体を帯びた。
 少女が一歩前に踏み出す度に、一人また一人と亡霊が姿を現す。
 ポタポタと落ちていく血を触媒に亡霊は新たな命を得るのだ。

 その様子を野口隼人は見てしまった。
 たまたま、夜の散歩に出てしまったばっかりに。
 変な音がする方に行ってしまったなっかりに。
『非日常』を目の当たりにするなんて思いもしなかった。

「――ねえ、一回死んでみる?」
 耳元で愛らしい少女の声がした。


「昨夜、一人の男性が警察に保護されました。とても錯乱状態で支離滅裂な事を言っているそうです」
 カフェ・ローレットのテーブルに座った音呂木・ひよの(p3n000167)はイレギュラーズを向いた。
 男性の名前は野口隼人、21歳。他校の大学に通う生徒らしい。
 警察の調べでは薬物の類いは検出されず、夢を見ていたのではないかという結論に至った。
「発見当時、傍には少女が居たということなのですが……」
 ひよのの隣には赤い服をきた少女が座っている。
 ぺこりとお辞儀をした少女は「はじめまして」と可愛らしい声でイレギュラーズに微笑んだ。

「私はアリスと申します。皆さんと同じイレギュラーズです」
 アリスと名乗った少女は昨晩起ったことを説明する。
「偶々通りかかった公園で、亡霊に襲われてる男性を見つけたのです。私にはとても対処出来る数ではありませんでしたから隙を見て男性だけ何とか連れ出したのです」
 よく見れば、手首に包帯を巻いている。男性を守る為に怪我をしたのだろう。
「逃げることに必死だったので、敵の事はあまりよく覚えていませんが、亡霊を使役する死霊術系の能力だと推測されます」
 この少女も一般人を連れて逃げることが出来るぐらいには実力はあるのだろう。
 しかし、彼女が居なければ男性は死んで居たかも知れない。
 今後もその公園に亡霊が現れるのなら退治しなくてはならないのだ。
 この希望ヶ浜の住民は『非日常』を許容しない。それを守るのがローレットに課せられた役目なのだ。

「私も同行します。情報は多い方が良いとおもうので」
 現場に居合わせたアリスが一緒に居てくれるのであれば心強い。
「いつ、被害者が出るか分かりません。希望ヶ浜の住民の安全のためによろしくお願いします。」
 ひよのがイレギュラーズにぺこりと頭を下げた。

 ――――
 ――

「ふふ、怖かった? 大丈夫、お前は殺さないよ。殺したら意味が無いんだ」
 赤い服を着た少女は野口隼人の頬を撫でてクスクスと微笑む。
「でも、いっぱい怖い目にあって欲しいんだ。亡霊に襲われてうんと怖い目にあって貰わないと」
 だから、と少女は男の背を押して逃げるように急かした。
 野口隼人は自分を追いかけてくる亡霊に怯え逃げ惑う。
「止めろ! 来るな! くるなぁ!」
 夜の公園に男の叫ぶ声が響いた。

 ――ねえ、兄さん。もうすぐ会えるね。

GMコメント

 桜田ポーチュラカです。よろしくお願いします。

■依頼達成条件
・夜妖を退治する

■フィールド
 夜の公園です。広いです。電灯がありますので、視界に特に問題は在りません。
 深夜十二時を過ぎると死霊やアンデットが現れます。
 住人の不安をこれ以上煽らないためにも、早急に退治しなければなりません。

■夜妖『死霊』6体
・窒息:物至単の攻撃【不吉】
・呪怨:神遠範の攻撃【狂気】

■夜妖『アンデット』6体
・叩きつけ:物至単の攻撃
・毒まき:神近扇の攻撃【毒】

■アリス
 ウォーカーのイレギュラーズです。
 赤羽・大地さんの関係者です。
 実は死霊とアンデットを作り出した首謀者です。
 見た目は可憐な少女ですが、中身は男性(青刃)です。
 死霊とアンデットを公園に配置し被害者を怖がらせることで兄である『赤羽』をおびき寄せる作戦でした。カフェ・ローレットの時点ではアリスの中身が青刃だということを誰も知りません。
「青刃か?」と問われると嬉々として「そうだ」と応えるでしょう。

・青刃について
 赤羽の双子の弟。悪辣な死霊術師。ねじ曲がった愛を持っています。
 元が男性なので、現在の華奢な少女の身体は使いにくいと思っています。
 固着された少女の身体という制約を解く方法を探しています。
 今回の事件を目論んだのは、兄に会うため、そして制約を解く方法を探すためです。
 イレギュラーズの実力を見てみたいという単純な好奇心もありました。
 現時点では『悪』ではありません。


●再現性東京2010街『希望ヶ浜』
 練達には、再現性東京(アデプト・トーキョー)と呼ばれる地区がある。
 主に地球、日本地域出身の旅人や、彼らに興味を抱く者たちが作り上げた、練達内に存在する、日本の都市、『東京』を模した特殊地区。
 ここは『希望ヶ浜』。東京西部の小さな都市を模した地域だ。
 希望ヶ浜の人々は世界の在り方を受け入れていない。目を瞑り耳を塞ぎ、かつての世界を再現したつもりで生きている。
 練達はここに国内を脅かすモンスター(悪性怪異と呼ばれています)を討伐するための人材を育成する機関『希望ヶ浜学園』を設立した。
 そこでローレットのイレギュラーズが、モンスター退治の専門家として招かれたのである。
 それも『学園の生徒や職員』という形で……。

●希望ヶ浜学園
 再現性東京2010街『希望ヶ浜』に設立された学校。
 夜妖<ヨル>と呼ばれる存在と戦う学生を育成するマンモス校。
 幼稚舎から大学まで一貫した教育を行っており、希望ヶ浜地区では『由緒正しき学園』という認識をされいる裏側では怪異と戦う者達の育成を行っている。
 ローレットのイレギュラーズの皆さんは入学、編入、講師として参入することができます。
 入学/編入学年や講師としての受け持ち科目はご自分で決定していただくことが出来ます。
 ライトな学園伝奇をお楽しみいただけます。

●夜妖<ヨル>
 都市伝説やモンスターの総称。
 科学文明の中に生きる再現性東京の住民達にとって存在してはいけないファンタジー生物。
 関わりたくないものです。
 完全な人型で無い旅人や種族は再現性東京『希望ヶ浜地区』では恐れられる程度に、この地区では『非日常』は許容されません。(ただし、非日常を認めないため変わったファッションだなと思われる程度に済みます)

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • 再現性東京2010:深淵の音色完了
  • GM名桜田ポーチュラカ
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年10月22日 22時01分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

赤羽・大地(p3p004151)
彼岸と此岸の魔術師
※参加確定済み※
アルヴィ=ド=ラフス(p3p007360)
航空指揮
ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)
薄明を見る者
雨紅(p3p008287)
愛星
ボディ・ダクレ(p3p008384)
アイのカタチ
秋野 雪見(p3p008507)
エンターテイナー
有栖川 卯月(p3p008551)
お茶会は毎日終わらない!
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切

リプレイ


 寒いほどの風が夜の街に吹き込んでいく。
 こんな夜は人恋しくなると『『Dr.』マッドハッター推し』有栖川 卯月(p3p008551)は溜息を吐いた。
「イベント帰りにこんな時間になるのはよくあるけど、なーんか不安になるんですよね、この時間帯」
 日も暮れ、頼りになる明かりは電灯だけ。どこか不気味な雰囲気に肩を擦る卯月。
「それにしても『アリス』かぁ。でもなんか違う気がするんだよねぇ……。
 こういうのは三月うさぎてゃんじゃなくて、スモーカーな青虫の役割なんだけどなぁ」
 卯月は人差し指を口元に当て、首を傾ける。
「まぁいいか。ちゃんとしてる『アリス』だったらあとでお茶会に招いてお詫びしましょう」
 一人ごちた卯月は仲間の元へ走り込んだ。

『遺言代行』赤羽・大地(p3p004151)は先ほどから沈黙を保ったままの相方に頭を掻く。
 死霊が相手とあれば赤羽が張り切るかと思ったのだが、沈んだように出てこないのだ。
 話しかけても答えはなく。おかしいと首を傾げる。
「大地さん?」
「あっ……ごめん皆、少し考え事してた」
 俯いたまま歩こうとしない大地へ『騎士の忠節』アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)が心配そうに顔を覗かせた。
「仕事には何も問題ない」
「そうですか? 無理しないでくださいね。それにしても、夜の公園に死霊とアンデットか……」
 大地の肩にそっと手を置いたアルヴァは気分を落ち着けるように深呼吸をする。
「現れるってわかってるから怖くないけど、突然現れたら怖いですよね。
 住人に迷惑掛かるのはダメなので、さっさと倒しちゃいましょう?」
「ああ、そうだな」
 アルヴァの問いかけに大地が同意した。

「肝試しは夏の風物詩だと思っていたが……」
 小さく呟いた『ミス・トワイライト』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)は掌を上に向けて肩を竦める。ブレンダの頬を撫でていく風は冷たい。もう秋も深まっているというのに自分達は今から公園で肝試しと洒落込むのだ。
「少々時期外れだがお化け退治といこうではないか。なに、斬って斬れるのならば私が恐れる理由はない」
 剣で切ることが出来るのならば、それは倒せるということだ。
 当たるのならばブレンダの剣は敵をねじ伏せるだけの力を持っている。
「そうですねぇ」
 ブレンダの隣に立った『刑天(シンティエン)』雨紅(p3p008287)は普段の服装とは違ってライダースジャケットを羽織っていた。再現性東京では一応大学生ということになっているらしい。
「この再現性東京における『非日常』ですし、何より危険なものですね。
 目的はわかりませんが、再び被害が出る前に止めなければ」
 雨紅の決意に「ああ」とブレンダが剣を抜く。
 公園の入り口は直ぐそこだ。
「死霊やそれに関わる諸々に明るいわけではないのですが、依頼で関わった経験はあります。
 たとえ、死しているからといって、他者が身勝手に、一方的に扱って良いものではないと思うのです」
 戦槍を構え公園へと入っていく雨紅。その後ろを『ニャー!』秋野 雪見(p3p008507)が着いていく。
「お化け退治の依頼にゃ! 詳しいことはわからん!わからないけど、とりあえず悪い奴はぶっ倒す!
 そうすれば物語はまるっと解決ビクトリーにゃ!」
 雪見の元気な声が公園に響いた。

「さて、今回は死霊とアンデッド退治ですね」
「亡霊を使役する死霊術系の能力か……」
 『痛みを背負って』ボディ・ダクレ(p3p008384)と『蛇霊暴乱』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)が状況の整理を行っていた。
「早急に事を為さねばならないというのなら、全霊で依頼を遂行しましょう。
 しかし、こうも死霊とアンデッドの数が多いのは何故でしょうか。気になりはしますね」
 ボディの問いかけにアーマデルはこくりと頷いた。
「おそらく何者かに喚び出されたんだろう」
「成程。だから、こんなに多く集まったんですね」
 ボディは公園に集まった死霊とアンデットを見つめる。
「無理に呼び出されて迷える霊なら、逝くべきところへ還れるように送ってやりたい
 ……ここに俺の神はいないが、生と死の境界を分かち、保つのが務めだ」
 アーマデルは同行しているアリスに振り向いた。
「アリス殿だったか、目撃者が同行してくれるのはありがたいが。
 怪我した状態で大丈夫か? 無理はするなよ?」
「ええ。お気遣いありがとうございます。一応イレギュラーズですので、自分の身は自分で守ります」
「良かった。じゃあ行こう」
 アーマデルはアリスの怪我の具合を注意深く観察しながら公園の中に入っていく。


 開始一閃。
 蒼き彗星がボディを包み込み一陣の光となって戦場を駆け抜けた。
 目にも止まらぬ速さで加速するボディの身体は星の輝きでアンデットへと飛んで行く。
 速度を攻撃力に変えて、閃光の如く加速し、拳を叩き込むのだ。
「死霊もアンデッドも私と似たような物ですが、これらに意志は無く」
 ならば全力をもって撃滅をするのみ。
 ボディの拳は一度の攻撃では止まらない。
 蒼き彗星が駆け抜けたあとにやってくるのは超新星のスピードだ。
 至上の破壊力として君臨する閃光。ボディは疾く、拳を叩き込む――

「数が多いのが少し厄介ですね。死霊はこちらで食い止めます、回復は任せました」
「ああ、任せろ」
 アルヴァは仲間がアンデットに集中出来るように死霊を引きつける。
 攻撃力はあまり期待出来ないからと言いながらアルヴァはこの役を引き受けた。
「さあ、来なさい! 生きた人間は嘸かし美味しそうでしょう!」
 戦場に飛び込んだアルヴァに敵の意識が集中する。
 それは勿論アンデットや死霊関係無く引きつけるものだ。
「仕方が無いので一緒に相手してあげます」
 回避力と抵抗には自信がある。しかし、多勢を相手取る場合、回避は下がっていく一方なのだ。
 歯を食いしばり、毒に耐えるアルヴァ。
「受けっぱなしはちょっと腹が立つので……」
 お返しだと言わんばかりに毒の薬瓶をアンデットに投げつける。
 大地はアルヴァに大いなる天の使いの救済をかけ続けた。
 その間に仲間が敵を屠っていく作戦。
 大地とアルヴァの二軸によって支えられる戦線なのだ。
(おい。いい加減手伝えよ)
 悪態を吐きながら大地は自分の中に存在する赤羽へと語りかける。
(……たく、返事も無ぇ。何なんだよ。一体)
 赤羽の存在自体は感じるから消えてしまった訳では無い。周りを警戒する事に集中しているようだった。
 それは、敵以外に警戒しなければいけない者の存在を示唆していた。

「私は死霊をやる。呪怨による狂気が厄介だが私は左眼のおかげでその手のモノに耐性がある」
 ブレンダの黄金の左瞳に刻まれた魔術式は精神汚染を寄せ付けない。
「共に攻撃をこちらに引きつけるとしよう」
 アルヴァを攻撃していない死霊目がけて剣を振るうブレンダ。
「死者が生者に迷惑をかけるものではない。安らかに眠れ」
 二つに別たれた死霊の身体が崩れ落ちていく。
 それを数度繰り返し、ブレンダは汗を拭った。
「ふぅ、中々に数が多い……。だがやってやれんことはない!」
 振るわれる剣は嵐となり。閃光をその身に纏うのだ。

 ――――
 ――

 雨紅は戦場を見渡しながら仲間を鼓舞する舞を踊る。
 彼女が視線を送るのはアンデットだ。
「アンデットを優先して排除……いえ、開放します」
 操られているだけの生きた屍。それは他者が眠りを妨げているということ。
 アンデット一体を槍で集中攻撃していく雨紅。
「一体一体確実に、早く終わらせられるように」
 それが死して尚、術者に縛られている亡骸の解放につながるのだから。
 雨紅は舞うように戦槍を振るう。
「私も手伝うにゃ!」
 事前の作戦通りにアンデットに攻撃していく雪見。
 しかし、一瞬の隙を突かれ敵の毒に侵されてしまう。
 身体を蝕むアンデットの毒の攻撃に為す術もなく崩れ落ちる雪見。
「負けないにゃ!」
 雪見の魂の叫びが戦場に響き渡った。

 アルヴァが死霊を引きつけている間にアンデットを倒しきると卯月は真剣な表情で敵と対峙する。
 アンデットを纏めて倒しきるには。
「遠距離からロベリアの花でまとめて攻撃する形で行った方が良さげですかね?」
 敵が集まっている場所から一定の距離を保ちつつ、心の底に渦巻く悪意を殺傷の霧に変える卯月。
 一体のアンデットが卯月に近づいて来る。
「群れを離れちゃだめですよ!」
 卯月は近づいてきたアンデットをノーモーションで吹き飛ばした。
「火力があまりなく、戦闘経験も浅いので心配なことはいっぱいありますが、足を引っ張ることにはならないようにしませんと!」
 決意を込めた瞳で卯月は戦場を駆け抜ける。
 アーマデルは戦場となる公園に何か痕跡が無いか確認していた。
 霊魂疎通で会話出来る霊を探し、話を聞いてみるのだ。
「流石に全然関係ない別件の遺体が埋まってるとかはない……はず……
 霊が溜まるような、大きな事故や事件のあった場所ではないんだよな?」
 アーマデルの問いかけに『巻き込まれなかった』霊達が頷く。
 そして、ゆっくりと腕を持ち上げ指し示すのは、戦場を見守っているアリスだった。
「彼女がどうしたって?」
 霊はアンデットと死霊を指さしたあとアリスを再度指し示す。
 それが意味する事は、この死霊とアンデットがアリスによってつくられたということ。
 アーマデルは奥歯を噛みしめる。
「なるほどね」
 アリスに真意を問いただす前に、この戦いを終わらせるのが先だとアーマデルは蛇腹剣を振るった。

「やれ……」
 アルヴァは傷だらけになりながらも立ち続けていた。
「同情するわけではないですが、既に死んでしまっているあなた方は元居た場所へ帰るべきでしょう」
 仕込み杖を携え、攻撃を叩きつける。
「次はきちんと生命を得て生まれ変わるのですよ」

 ボディの閃光は戦場を駆け抜けて敵を穿った。
「今です!」
 ボディは声を張り上げ、ブレンダと連携技を繰り出す。
「任せろ!」
 輝きを纏った剣は空気を切り裂き、敵を分断した。
 残る死霊をアーマデルが捕える。
「これで――!」
 打ち込まれる不吉の足音。狂熱的なダンスで敵の運命を弄ぶアーマデルの攻撃。
 最後の死霊を回し蹴りで切り裂いたアーマデルは、戦場に敵が居なくなったのを確認して息を吐いた。


「しかしなぜこんなところに死霊たちが発生したのかは気になる」
 ブレンダは腕を組んで戦場となった公園を見渡す。
「どう考えても自然発生によるものではないだろう……一度に現れる量が多すぎる……」
 詳しく調べる手段を持ち合わせていないブレンダは首を捻るばかり。
「というかなぜそもそも死霊が公園に現れたのだ? 普通は墓地ではないのか?
 うーん……わからん」
「そうですね。もし、首謀者がいるならこれは命への冒涜では?」
 ブレンダの疑問にアルヴァが同意する。

「……どうしてモ、死霊共の出処が気になル」
 戦闘中、沈黙を保っていた大地の中の赤羽が言葉を発した。
「気になってたのはそれか」
 大地は首を擦りながら溜息を吐く。
「誰にどのようにして呼ばれたカ、コイツ等が最初に出てきた時の状況を知る霊魂が居ないか調べよウ
 死霊術に関しちゃア、この赤羽は欺けなイ」
 赤羽の言葉にボディも一歩前に出た。
「夜妖と言えども、これらは死霊とアンデッド。召喚などによって作り出される物です。でしたらこれを召喚した術士などもいるのではないでしょうか。犯人は現場に戻るなんて言葉があるくらいですので、案外近くにいるのかもしれません」
 ボディは『楽しい』や『期待』などの感情に目星をつけて辺りを探る。
「この現場をそうした感情で眺める者がいるのなら術士の可能性が存在すると思考します」

 ボディやアーマデルの調査。赤羽の探索。
「ねぇねぇ、あなたはだぁれ? 貴方が本当に愛しい『アリス』ならもっと私の心が躍るはずなの」
 そして、卯月の感は戦場を見守っていた『アリス』に向けられた。

「お前モ、ただの小娘(アリス)じゃねぇんだロ。青。……俺の事が分かってるのカ?」
「あは、バレた。……ようやく会えたね。兄さん」

 赤い唇をゆがめて。アリスは笑う。
 イレギュラーズは懐疑的な目でアリスを見つめた。
「そうだよ。僕はアリスじゃない。本当の名前は青刃。その少年の中に入っている赤羽の弟」
「何故、こんな事をしタ? 回りくどい事をしなくてモ、普通に逢いにくれバ良いだろウ」
 赤羽の問いかけに青刃は少しだけ悲しい顔をする。
「だって、確証が無かったんだ。兄さんがそいつの中に居るって。でも、こうして逢えた。僕はね嬉しいんだ兄さん。兄さんが死んでから僕はずっと一人ぼっちだったから。だから、兄さんや兄さんの仲間はどんな実力を持っているのかを試したかった。ただ、それだけだよ」
「……それだけのために、遺体を持ってきたというのですか! 死者への冒涜です!」
 憤慨したのはアルヴァだ。
 青刃の関与に雨紅は動揺していた。
 疑うという考え方を自分は怠っていたこと、わざわざ『連れて逃げた』ことへの疑問で。
 理由なんて有ってないようなものだった。ただ、イレギュラーズの腕試しがしたかった。
 そんな事の為に眠りを妨げられた死者たちがいたのだ。理解が出来ないししたくもないと雨紅は思う。
 目の前の青刃は今後警戒しなければならない存在なのだと認識させられた。

「僕は死霊術師だ。それを生業として生きてきた。周りから見れば、冒涜に見えるのだろうね」
 それは否定しないと青刃は頷く。
「死んでしまった者は、既にその辺の物と同じなんだ。そこに魂なんて無い。
 まあ、今回はこの位でお開きとしようか。そこの水色の髪の少年や金髪のお姉さんに殺されてしまいそうだからね」
 それじゃあ、またねと青刃は笑顔で去って行った。

 公園は何も無かったかのように、静けさの中に包まれていた。

成否

成功

MVP

ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)
薄明を見る者

状態異常

秋野 雪見(p3p008507)[重傷]
エンターテイナー

あとがき

 イレギュラーズの皆さん、お疲れ様でした。
 楽しんで頂けたら幸いです。
 MVPは敵の殲滅に貢献した方にお送りします。
 それでは、またのご縁をお待ちしております。

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