PandoraPartyProject

シナリオ詳細

悪党賛歌

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

 世の中、何もかもが金で買えると思ったら大間違いだが、金さえあれば買えるものは決して少なくはない。
 だから誰もが金の魔力に取り憑かれ、金のためなら良心だって売る――少なくともこのレガド・イルシオンと呼ばれる国の一部では。
 ああ。だとすればきっと『悪徳の魔女』極楽院 ことほぎ(p3p002087)も魔女らしく、その魔力に取り憑かれたのだろう。何故なら彼女は金のためなら、どんな依頼をもこなすのだから。

 ――だが、しかし。
 別にことほぎは、依頼で入った金だけでは満足しない。金の使い道なんぞこの世には数え切れぬほどあって、それと比べれば真っ当に入手できる手段の数など足りなさすぎるのだ。
「そういや、あんなところに銀行なんてのがあったねェ……」
 お金がなければ、たんまりあるところから奪えばいいじゃない。それが、ことほぎの生き方だ。
 ただ生憎、ローレットにも庇い切れない罪を犯すのでは逆に不都合だった。ローレットはローレットで役に立つ……その後ろ盾と、銀行に眠っている大金をパーッと使って得る快楽。どちらを優先すべきかくらいの計算をことほぎはする……だから。
「分け前は出す。襲っていい銀行があったら教えろ」
 そうやってローレット(正確にはその中の約1名)を味方につけて――。

「――サリュー興業銀行王都東支店076番金庫、ですわ!」
 『俗物シスター』シスター・テレジア(p3n000102)は、ことほぎの期待通りに“都合のいい”依頼を探し当ててきた。
「依頼人はさる貴族様。件の金庫に政敵が保管している書類を回収してこい、という依頼ですわ――しかも」
 ここでぎらりとテレジアの目が光る。
「依頼人によれば、誰が手を回したのか悟られないように他の金庫も存分に荒らしてほしいとのことですわ。さらに、彼はできれば政敵と蜜月の関係にあるサリュー興銀にも打撃を与えたいらしくて、夜間の盗みではなく、より世間の目を集めやすい白昼の強盗での解決をお望みでしたわ」
 そのリクエストのせいでリスクは多少上がってはいるが、それでも営業中なら人質を取れることとの差し引きでバーターというところだろうか。

 さあ、銀行強盗の時間だ。脅し、奪い、愚か者は見せしめしてやる時間だ。
 しかもバックにはローレットがついており、あまりに不必要な殺しをしすぎない限りは罪に問われることもない。
 これほどまでチャンスが訪れる機会はそうそう見つからぬであろう、今日は絶好の悪党日和だ。

GMコメント

 いいかい? これは(依頼だから一応は)人助けなんだ。銀行強盗ができて、人助けもできる。こんなに素晴らしい依頼はそうはないんじゃないかい?

●銀行のセキュリティ
・用心棒も何人かいますが、人質を取ってやれば動きにくくさせられるかもしれません。
・金庫室は地下にあります。解錠や破壊には時間がかかりますが、支店長をどうにかして開けさせればすぐです。
・誰かを銀行の外に逃がしてしまうと、騎士団に通報されてしまいます。そうなったらローレットも守ってはくれません。表口、裏口、窓あたりは注意しておくといいでしょう。

●注意事項①
 この依頼は『悪属性依頼』です。
 成功した場合、『幻想』における名声がマイナスされます。
 また、失敗した場合の名声値の減少は0となります。

●注意事項②
 強盗が成功した場合、皆様には合計で1万Gold相当の特別報酬を配布します……が、本シナリオでは特別に、強盗の成功後の仲間割れは(殺すなどしない限り)ローレットのハイ・ルールに抵触しないものといたします。
 全員で山分けするもよし、バトルロイヤルの勝者が全て持ってゆくもよし、相談卓で皆を騙した誰かが持ち逃げするもよし。
 銀行強盗は、分け前を手にするまでが強盗です。恨みっこなしで最後の“ゲーム”をお楽しみ下さい。

  • 悪党賛歌完了
  • GM名るう
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年10月18日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
夜乃 幻(p3p000824)
『幻狼』夢幻の奇術師
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
極楽院 ことほぎ(p3p002087)
悪しき魔女
※参加確定済み※
クーア・M・サキュバス(p3p003529)
雨宿りのこげねこメイド
すずな(p3p005307)
信ず刄
カイロ・コールド(p3p008306)
闇と土蛇
源 頼々(p3p008328)
虚刃流開祖

リプレイ

●手を上げろ!
 その日、サリュー興銀王都東支店の投資部長は困り果てていた。
「しかしですね夜乃様――いえ、夢幻の奇術師様。確かにこれほどの公演ともなると資金はお入用でしょうし、その調達元として私どもをお選びいただいたことは嬉しく思います。
 ですがこの規模の投資話を個室ではなく窓口で、しかも支店長と、などと仰られても、私どもとしてもどうしたものか……」
 いつしか幻想でも屈指の特異運命座標として名を上げていた『『幻狼』夢幻の奇術師』夜乃 幻(p3p000824)が、これほど我侭な人物だとは思わなかった。この時すっかり幻滅してしまった投資部長と彼の隣で所在なく縮こまる窓口担当役ではあったが、その後に起こったさらに困った出来事によって逆に腑に落とされてしまったことは、彼らの上司である支店長にはどうか秘密にしてあげてほしい。
 つまり、何やら自分絡みのトラブルが起こっているらしいと聞いた支店長が様子を見に来た直後、行員の誰もが幻の我侭が彼女の本心からのものでなく、それを誘うための依頼上の都合に過ぎなかったことを理解するわけだ。
「貴様ら大人しくするのである! こうなりたくなければなぁ!」
 待合室の中で『虚刃流開祖』源 頼々(p3p008328)が鞘『頼守』より抜き放った柄が、罰当たりにも隣に“いただけ”の神官の首筋を空想の刃にて薙いだ。その威は哀れな神官の首だけでは飽き足らず、ソファーを、床を、観葉植物と壁の絵画を滅多切りにする。その場にいた誰もが息を呑む。神官は――『果てのなき欲望』カイロ・コールド(p3p008306)は御神の加護であろうか首を押さえたまま呆然とするのみで済んではいるが、強盗は次なる無の刃を構えたままで、めきめきとその筋肉を膨らます。その姿はまるで悪鬼羅刹の如し……そんな感想を頼々に伝えたら、ますます暴れて手をつけられなくなりそうではあるが。
 たちどころにパニックに陥った客たちが、我先にと出入口へと殺到しはじめた。彼らは我が身可愛さのあまり、頼々の言葉の意味さえ理解していない。そればかりか大の大人らが、入口付近の童女を押し退けてでも行内から逃げ出そうとするのである……本来であれば罪なき人々が。各々の表情に恐怖を浮かべ。
 その光景は童女――『愛娘』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)にとって、こういった依頼もあるものだという現実を改めて刻み込ませるものになっていた。でも、マリアはやらねばならない。押し退けようとした人々の手足を、金色の豊かな髪が捕獲する。彼らが必死にもがくのを、彼女はその動きに合わせて逆向きに引っ張ってやる。……あれ? なんだか思ったよりも楽しいな??
 だがそんな銀行強盗たちの好き放題を、用心棒たちは許しておくわけにはゆかぬのだった。
「そこまでだ、武器を捨てろ!」
「無駄な抵抗をしなければ、罪も多少は軽く済むだろうさ」
 わらわらと奥から現れた武装警備兵たちの無意味な警告を受けて、けれども動揺を隠せなかったのは『血雨斬り』すずな(p3p005307)。
(えっ……これは人助けだったんじゃ……? これは決して犯罪ではない……違うのですよ、彼らの言葉に耳を貸してはいけないのですよ、すずな……!)
 必死に自分に言い聞かせようとするけれど、どう見ても犯罪です。本当にありがとうございました。それでも依頼を請けてしまった以上は仕事のために全力を尽くさざるを得ず、そうでなくとも武器を向けている相手に何もせぬわけにもゆかず、ただの竹刀袋を装って持ち込んだ妖霊刀『竜胆』を抜く。そして用心棒たちを窓から逃さぬように立ち位置を変え、逆に用心棒たち相手に啖呵を切ってみせる!
「あなたたちこそ武器を捨ててください……あなたたちの行動如何で、人質の命がどうなるかが決まるんですよ!」
「助けてください! 私は預けていたお金を卸しに来ただけなんですよ……!? 何故私がこんな目に遭わねばならないのですか……嗚呼、今日は最悪の日だ!」
 すずなの啖呵に合わせてカイロが喚き散らしてみせたので、用心棒たちの手が一瞬静止した。その隙を逃さず武器を持つ手を峰打ちしたすずなの心の内では、ごめんなさいという謝罪が繰り返される……けれども後顧の憂いは確かに断った。手の骨くらいは折ってやり、戦意を喪失させたところを縛める!
 それを見てまたカイロが錯乱したように喚きはじめたせいで、マリアに捕まっていた客たちは逆に冷静になってくれたようだった。ダメ押しにもう一度カイロを斬って黙らせた頼々。でもこんにゃろ、平然と虚刃流秘奥を耐えるんだよな。悶々とした感情とともに窓口の中へと睨みを利かせれば、行員たちは打って変わって、交渉の姿勢を見せてくる。
「えー……皆様、当行に何をお望みでしょうか……?」
「そんなの決まっておりますわー! 酒代……もとい、理想を実現するには原資が必要なのですわ! ええ、出すものさえ出していただければ、人質にこれ以上の危害は加えず解放致しますわ……約束は必ず守ると神に誓いましょう。私、司祭ですもの」
 『百万回出禁になった女』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)が答えたが、司祭は酒代を求めて銀行強盗なんかしないし、それを「普段は手が出ない高級酒を飲めば布教のやる気が出るから実質必要経費」なんて言い訳もしない。普通にエセ神官のカイロよりよっぽど信用ならないって一体どういうわけだろう?
 だが行員はその部分には敢えて触れようとはせずに、金銭の支払いには合意しつつもその金額を少しでも減らそうとあの手この手で懐柔しはじめた。その度にヴァレーリヤは「罪のない人質を見捨てて金を大切にしたなんて噂が立ったらどうなってしまうかしら?」やら、「銀行が客の命さえ値切るようなら、客は預けた財産も奪われるんじゃないかと気が気じゃないんじゃなくって?」やら脅す……そんな時、行員の交渉態度のおかしさに気がついたのは『めいど・あ・ふぁいあ』クーア・ミューゼル(p3p003529)だ。
 ボンと、書類を保管する棚の一角が燃えた。
「交渉の進めかたが怪しいのですよ……もしかして、何か企んでませんか?」
 行員の様子は支払いを渋っているというよりも、渋る素振りをすることでわざと押し問答に持ち込んでいるようにもクーアには見えた。これは時間稼ぎという名の敵対行動だと考えていいだろう……改めて要求してみせる。「逃げるな」「怪しい動きをするな」「抵抗すれば焼き尽くす」――もっとも、クーアにとっては銀行が要求を突っぱねてくれても構いはしないのだ。サリュー領主クリスチアン・バダンデールの食客、死牡丹・梅泉には、愛する人を斬られかけた仇がある。クーアがクリスチアンの庇護下にあるだろうサリュー興銀で暴れたところで、ちょっとした意趣返しということでいいだろう。そして同じ梅泉に、同じ恋人を救われた恩もある……行員たちを焔色の末路に導いたとしたら、それはちょっとした“恩返し”にもなるはずだ。
 クーアの指摘に行員が押し黙ったその直後……スタッフ用通路の奥から、身も凍るような笑みを浮かべた女が姿を現したのである。それから肩に担いでいた気絶した男を行員たちの目の前に放り投げてみせた女は、つまりはこういうことだったんだろと、行員たちの意図を推理してみせる。
「アァ、確かにコイツが無事に逃げ果せていれば、アンタたちが時間を稼いでる間に騎士団なり何なりが助けに来てくれただろうねェ? だけど残念ながら企みはそれまでだ。それともオレと戦ってでも、無理矢理押し通ってみるとするかい? この国で大金を扱うなんて悪事と隣合わせの仕事をしてて、まさかオレの顔を誰も知らないってこたァないよなァ?」
 『悪徳の魔女』極楽院 ことほぎ(p3p002087)――女の顔を見た支店長の口から洩れた名前は、彼の降服宣言だと言っても過言ではなかった。頼みの綱の連絡要員まで封じられたと知った今、悪党どもの機嫌をこれ以上損ねるくらいなら、抵抗したフリをして殴られて金庫室の鍵を奪われるほうが幾分マシな結末であろう。他人の命と金なら金を選ぶ価値はあっても、自分の命となら話は別なのだ――。

●レッツ山分け!(?)
 ――まあそれでもことほぎは、派手なドンパチもできなければ金貨風呂を楽しむこともできなかったのではあるが。
 あまり持ち場を離れることで新たな客が訪れては異常に気づかれる。そういった奴らを魔眼で追い返すためにも、彼女は外にいなければならないのだ――が。

 ようやくそれも報われる時が来たようだった。
「……あ、回収終わりました? じゃあ撤収しましょうか」
 あれほど錯乱して怯えていたカイロがスッと背筋を伸ばして歩き去った時の、行員たちや客たちの呆気に取られた表情は実に可笑しかったほどだ。頼々に散々痛めつけられた体もとうの昔に自己治療済みだ。さぁて、あとは金庫を漁ってきた仲間たちから自分が運ぶぶんの荷物を受け取れば――その時袋を渡す素振りを見せたヴァレーリヤに浮かんだ強烈な感情を察知して、カイロは彼女が預けようと差し出してきた戦利品の袋に逆に飛びついてゆく!

「どうして私が渡すと見せかけて持ち逃げしようと考えたのがバレたんですのー!?」
「そんなことは簡単な話です……あなたが何かしらを企んでいることだけは、感情探知していて丸わかりでしたからね。おや? やはり持ち逃げのご予定だったのですね? 奪われる前に対処するという判断は間違っていなかったようですね」
 お前ら、幾ら何でも仲間割れするの早すぎね? これまでの緊張感を嘘のように解かしてゆく人々の様子を感じつつ袋を巡って揉み合いながらも、けれどもカイロは心の中で悪態を吐く。分け前が自分の元に届く以前の段階で独り占めを目論まれては、とっとと奪って逃げる選択肢すら取らせては貰えぬじゃあないか。
 だが幸いにもカイロには、少ないながらも味方がいることもまた探知できていた。
「……え? ちょ、最初に山分けって言ってたじゃあないですかああああああ!?」
 動転するすずなは本当に心から自分がきっちり1/8を貰えるものと信じて疑っていなかった様子だし、クーアもわざとらしいぶりっ子ポーズをしながら、私はか弱いねこなのでまさか分け前の独り占めのために攻撃なんてしてこないですよねアピールをしてばかり。悪意に反応せぬ辺り、頼々も分け前に関してはきっちりするつもりなのだろう。
「事前の取り決め通りにできないというのは悲しいことです。さあ、悪の手から分け前を守りましょう!」
 そんなカイロの煽動に呼応して、さくっとクーアがヴァレーリヤを焼いた。
「せ、折角テレジアを買収して私専用の隠れ家まで用意してましたのにー!?」
 もっともその隠れ家が当のテレジア自身の手で当局に通報されており、のこのこと向かえばテレジアにヴァレーリヤの取り分全て……とは言わずとも報奨金が入る仕組みになっていたことをまだヴァレーリヤは知らないのだが。
 それはそうと、だがヴァレーリヤはまだ袋を手放そうとしない。それでは無益な殺生を好まぬすずなとて、『竜胆』を一閃(峰打ち)させねばならぬ。
「本当に、争いたくなんてなかったんです……! でも、目の前で約束を反故にされたら仕方ないじゃないですか……!」
 ようやく意識を失ったヴァレーリヤの手から、カイロが自分の袋をもぎ取った。すずなとクーアも自分のぶんを奪い取り……そこでふと、とあることに気がついたクーア。
「約束を破った悪い人には、ペナルティが必要なのですよ」
 カイロとすずなにアイコンタクトすれば、容認、とも言うべき目配せが返された。つまり……こうだ。金庫が開いてもロビーに残って人質などに対処する役目のクーアたちは、そのぶん金を手に入れるのが遅れるのは当然のこと。それゆえに金庫荒らし役は戦利品の取り扱いには真摯にならなくてはいけないのであって……破れば分け前を減らされても仕方ないよね?
「では、これ以上誰かに分け前を狙われる前に、素直に退散するとしましょうか」
 そんなカイロの号令とともに、一同は(約1名を残して)退散しようとしたわけだが――その時だ。

 ふわりと広がる金色の波を、頼々は視界の隅に見て取った。なるほど、エクスマリア殿が我に併走しているのだな――そう理解して安堵しようとした頼々が異状を把握したのは、致命的な一瞬が終わった後のこと!
「ないっ!? 我の袋が……むむ、エクスマリア殿の髪の中に!」
 彼女は銀行の外に待たせておいた馬を駆り、マリアとすずな以外を警戒して単独行動していた頼々を追ったというわけだ。そして折角なら“おこづかい”は多いほうがいいと考えて、馬上からするりと髪を伸ばした……結果は、先程見たとおり。
 そのまま何事もなかったかのように追い抜いてゆく後姿に虚ろの刃を向けれども、無警戒だった相手に取り分を奪われたという動揺が刃の形を失せさせる。振るえば勝つはずの剣が届かない。
「まさかエクスマリア殿が我の金を奪うなど。金に頓着するようには見えなかったのだが!?」
 思わぬ伏兵に地団駄を踏んだ頼々は恐らく知らぬのであろう……実はマリアの帽子の下には、髪が固定化されたような角が2本、確かに生えていることを。
 すなわち、鬼である。頼々が決して見た目に惑わされて心を許してはならぬはずの、鬼である。だが今更自らの失態を悔いたところで、頼々はマリアに追いつけはしない。

 ――が、そんなマリアの天下もやはり、すぐに終わりを告げるのだった。
「……なぁ? そんな目立つモンに乗ってたら追っ手にバレやすいだろ。オレのほうが脚速ェから預かってやるよ」
 間近から聞こえてくる声にマリアが振り向けば、そこには生身でありながら余裕で馬に併走することほぎの姿。こうして馬を目立たせておき、どこかで自分だけ降りて式神に馬を駆けさせる――そんな囮作戦もぴったり追ってくる相手には通用しないし、かといってこの作戦があるから追っ手の心配なんてないとことほぎに説明したところで、最初から全部奪う気満々の悪党が聞いてくれるわけもない――ならば。
 マリアの髪は広がって、ことほぎをこの場で仕留めんと伸びてゆく。……が、髪が悪女を捉えるより早く、ことほぎはマリアの荷物を奪い去る!
「あばよ!」
 マリアを置いてけぼりにしたはずのことほぎだったが……しかしその目の前に佇んでいたのは、今度は蜃気楼のようにいつの間にか回り込んでいた幻だった。
「これはもっともなことを仰いますね、ことほぎ様。でしたら逃げ足は僕の方が速いのですから、ここは僕が預かるのが筋でしょう」
 荷物の一部だけをバラ撒いて逃げようとしたことほぎは――しかし次には、もう、自分でもそれが叶ったのかどうか判らなくなっていた。何故なら彼女の見る景色は現実とは異なった、夢のようなものへと変わっていたからだ。奇術師を敵に回すということは、その白昼夢に囚われるということに他ならぬ。

(ふふふ、愉快でございます。ただでさえクリスチアン様に次にお会いした時になんて嫌味を言って差し上げればいいのか楽しみだと申しますのに)
 奇術師はひとつ指を鳴らして、絹布で自らの姿を覆い隠した。次の瞬間には絹布はその場に落ちて……勝者は、夢だけを残して消え失せた。

成否

成功

MVP

カイロ・コールド(p3p008306)
闇と土蛇

状態異常

ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)[重傷]
願いの星

あとがき

 以下、PvP部の結果報告となります。()内は追加報酬の取り分。

・幻(3人分)
 逃げに徹するなら反応と機動力は大切よね。
・ことほぎ(1人分)
 反応も機動力も上には上がいた。ただし自分の分だけは簡単に奪えないところに隠してあったので確保成功。
・カイロ&すずな&クーア(各4/3人分)
 なーかーよーくー分配しましょ。端数はちょっとオマケしておきます。どうせこの分け前っていろいろ資金洗浄とかした結果の相当額だし。
・エクスマリア(0人分)
 機動力勝負に持ち込まれさえしなければ……。
・頼々(0人分)
 鬼に騙されるな。あとファンブるな。
・ヴァレーリヤ(0人分)
 残念ながら当然。

 なおMVPは上記の結果とは無関係に、一番身体を張った人に差し上げておきます。

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