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シナリオ詳細

自分を欺くたった一つの冴えたやりかた

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 彼は山賊という存在が憎い。
 ソレを識った者はその山賊がお前だと十人いれば九人がそう云うことだろう。
 彼は「それ」にすべてを奪われた。
 家族、友人、家、居場所、これからの人生。そして――彼本人は気づいていないだろうが彼の根幹を担っていた『カミサマ』への『信仰』。
 
「なあ、ちょっと手伝ってくれよ」
 彼――グドルフ・ボイデル (p3p000694)は下卑た笑みを浮かべてあなた達に仕事の話を投げかける。
 「山賊」を滅するのに他人の手を借りるというのは業腹ではある。
 しかし、その偉業を一人でなすことは不可能であると彼は冷静に分析することもできる。その歯がゆさに眠れぬ日すらあった。
「ちょっとした山賊退治さ、あんたらにとっちゃ朝飯前だろ?」
 なんなら終わったあとにおれさまがモーニングを奢ってやるぜ? なんて彼は嘯く。
 あんただって同じ山賊じゃねえか、という茶化しはいつものことだ。
 彼はいつもどおりに答える。
「おいおい、おれさまの縄張りだぜ? それに山賊なんてのさばらせたらおれさまの獲物がへっちまうだろう?」
 それは詭弁だ。
 山賊を滅ぼすための大義名分。
 それは――彼の自己満足にも近い山賊という概念へのうちなる復讐。
 彼はそうすることしかできない。そうせざるを得ないほどに、歪んでしまっている。
 
「まあ、そういうわけで、頼むわ」
 言って彼は自らが情報屋から買った山賊の情報をあなた達に説明をはじめた。


 山賊のリーダーダグネルは怯える女を抱き寄せる。
 薄い布一枚の女はもう抵抗する様子すらない。抵抗すればそれは死を意味するから。
 少し前に女の姉が自分をかばって目の前で殺されたのだ。
 幾人もの山賊たちに乱暴され、無残に。
 姉は妹の命だけは助けてと懇願した。だから、今自分は生きている。
 女はダグネルにされるがまま。
 酒臭い息が気持ち悪い。だけれども抵抗はできない。
 随分と自分を気に入ったのか事あるごとに呼ばれるのだ。そのぶん他の女の子たちへの被害が軽減されるのであれば――そう思い込むしか彼女には救いの道はなかった。
「リーダー、そろそろ新しい女もほしいですね」
 下卑た声の山賊が声をかける。
 彼らに与えられるのはリーダーのお下がりだけ。
「そうか。じゃあいくか」
 ダグネルは立ち上がり「狩り」に向かう。
「そうこなきゃ、ダンナ」
 じゃり、と首輪の鎖を持ち上げる。女は無理やり立たされる。
「逃げようなんて思うなよ、そうなったら、どうなるか、わかるよな?」
 言われなくてもわかっている。自分たちはもうこのくらい洞窟から逃げることはできない。
 ――。だれか。
 だれか助けてください。
 その言葉は誰にも届かない。

GMコメント

 山賊ぬめぬめです。
 EXからのご縁ありがとうございます!

 山賊退治にいってもらいます。

 ■ロケーション
 山岳地帯。足場はあまりよくありません。時間帯については皆様で調整してくださってもかまいません。
 少数人の旅人(女子供であればベストです)を襲い、男は殺し、女はアジトに連れて帰り慰み者にします。
 囮作戦を取ることがスマートでしょう。
 囮作戦を取る場合一定以上の距離を開ける必要がありますので、本隊が囮部隊と合流するには4ターンほど必要です。
 4人以上だと彼らは襲いかかっては来ません。囮の抵抗が強すぎる場合には怪しまれる可能性もあります。
 全員一丸で行動となると工夫して山賊たちを探す必要があります。難易度は低くはありません。
 成功条件は盗賊のリーダーの撃退になります。
 全滅させる必要はありません。

 ■エネミー
 山賊リーダー ダグネル
 ハチェット使いです。そこそこ以上に強く後衛から木陰に隠れつつ行動します。性格は狡猾。
 仲間がある程度以上消耗、若しくは自分が大きくダメージを受けた場合にはアジトに逃亡します。
 アジトは巧妙に隠されているので事前に見つけることは困難です。
 R3までの遠距離攻撃(斜線が通りにくいのでお互いに広義の遠距離は命中率が著しく下がります)
 近接範囲攻撃
 自己回復手段
 高火力単体攻撃を持っています。
 また逃げ足はとても早いです。

 山賊たち 10人
 ダグネル含め11人がこの山賊たちの全員になります。
 少人数を多人数で圧倒するという攻撃手段をとります。
 遠距離、近距離で攻撃してきます。地の利を生かした攻撃を得意とします。
 ダグネルが逃げると一緒に逃げるのは半分、邪魔をするのが半分という形になります。
 それほど強くはありませんが連携はしてくるのでご注意を。
 
 

 ■
 ある一定以上のダメージをうけると盗賊のリーダーはアジトに逃げます。
 この時点で撃退とみなし依頼は成功となります。
 リーダーはアジトに残した慰み者の女と宝物を連れて逃げることになります。
 アジトの入り口はリーダーの合言葉でのみ開きます。ソレ以外の方法はありません。
 リーダーを入り口を開ける前に殺すとアジト内部で幻想種含む数人の女性たちは脱出することもなく餓死することになります。
 あえて泳がして、合言葉を使わせたあとなら女性たちを助けることができますが、その場合リーダーは女性たちを盾に彼だけが知る秘密通路を使って宝物を持って逃げおおせることになります。
 彼を逃した場合持ち出した宝物をもとにまたどこかで山賊として徒党を組むことになります。
 女性を助けるか山賊を殺すか。どちらかの選択をしてもらうことになります。

 以上よろしくおねがいします。

  • 自分を欺くたった一つの冴えたやりかた完了
  • GM名鉄瓶ぬめぬめ
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年10月25日 22時11分
  • 参加人数8/8人
  • 相談9日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

フェルディン・T・レオンハート(p3p000215)
海淵の騎士
グドルフ・ボイデル(p3p000694)
山賊
※参加確定済み※
咲花・百合子(p3p001385)
白百合清楚殺戮拳
ヴァイオレット・ホロウウォーカー(p3p007470)
水底にて
グリム・クロウ・ルインズ(p3p008578)
孤独の雨
ラムダ・アイリス(p3p008609)
咎人狩り
グリーフ・ロス(p3p008615)
紅矢の守護者
蓮杖 綾姫(p3p008658)
厄斬奉演

リプレイ

● 私以外の山賊という概念が、この世界から消えるまで。

 それは全くもって無意味な慰撫にしか過ぎない。
 しかし、怒りと、悲しみと、そして――絶望を覚えている。
 絶望が叫ぶ。忘れるな、憎め、その歩みを止めてはならぬと。

「ワタクシどもはただの旅のものです」
 『影を歩くもの』ヴァイオレット・ホロウウォーカー(p3p007470)はことさら怯えるように体を『その色の矛先は』グリーフ・ロス(p3p008615)に寄せる。
「この方々を傷つけるものは赦しません!」
 『流離人』ラムダ・アイリス(p3p008609)の構える短剣の刃先が揺れる。
 か弱い女性が二人と、その頼りない用心棒の構図だ。山賊たちは下卑た目をむける。みな美しい顔立ちだ。
 グリーフが合図し少し後退しようとするが、ぐるりと周囲を囲まれている。気配を探りながら探索した。しかしいつの間にか山賊たちは『彼女』らを取り囲んでいたのだ。
 なるほど、こうやって逃げることもできないものを嬲るのが彼らのやりかたなのだろう。
「他の2人に触れたら許しませんよ。貴方たちにも屈しません」
 グリーフのそれを虚勢ととったのだろう。山賊たちは楽しそうに口笛を吹く。
(ヒッヒッヒ……力のままに力なきものを蹂躙し、我欲を満たす。ええ、ええ、とってもいい。実に良い悪です。この山賊たちが地獄に落ちる様はさぞ甘美でございましょう)
 ヴァイオレットは浮き上がる笑みを必死にこらえフードを深くかぶる。それがかえって山賊にとっても怯えているように捉えられたのだろう。三人を取り囲む山賊たちの包囲がまた狭まる。
「きゃっ」
 ラムダの細い腕が山賊のボス――ダグネルにとられ短剣を取り落した。
(ボクのたまの肌に傷一つでもつけたら絶対にゆるさないんだからね。それにしても山賊。随分とためこんでいるんだろうなあ。路銀もすくなくなってきたところだしちょうどいいね。
 噂では女性もたくさん連れ込まれているとか? 急いで助けないとだね)

 くん、と『誰かの為の墓守』グリム・クロウ・ルインズ(p3p008578)が鼻をならす。
 追いかけていた囮たちの匂いに異臭が紛れこんだのだ。
 墓守と青年は仲間たちに短く「かかったみたいだ」と告げる。
「では!」
 誰よりも早く動きをみせたのは『放浪の騎士』フェルディン・T・レオンハート(p3p000215)だ。
 少女たちを囮として先行させるのは心苦しかった彼は彼女らと別れる際になんども気をつけてと気づかい、みなに苦笑されたほどだ。
「さあて、山賊がりの始まりだぜえ! 演技でしおらしいおめえさんも見たかったんだがな」
 『山賊』グドルフ・ボイデル(p3p000694)が凄惨な笑みを浮かべ『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子(p3p001385)に水をむける。
「何を言う。吾には「こちら」のほうが似合うて。さて、蓮杖殿、吾らは先に行くぞ」
「はい、失礼して。女性をかどかわし狼藉を働くなど到底許せるものではありませんね」
 百合子におぶられた『放浪の剣士?』蓮杖 綾姫(p3p008658)がそう宣言すれば百合子がジェットスタートで地面を蹴って走り出す。
「そりゃあ、こわいことで」
 グドルフが綾姫の宣言に苦笑し、百合子の後を仲間と走りだした。
 さても報われない死。
 ソレを迎えるのが墓守の仕事だ。棺におさめ墓の下に埋葬する。アンダーテイカー。
 とはいえ悲惨な死を黙認するつもりはない。
 グリムはフェルディンの背をみつめ走る。

 一方ヴァイオレットたちは迫真の演技力も駆使して、か弱い女性たちを演じきることに成功していた。
 完全に信じ込んだダグネルたちは、ことさら彼女たちを猫科の動物が獲物で遊ぶように嬲る。
「はなしてください」
 レアリティアップにつられた山賊たちがグリーフの腕を掴み上げ、顔をよせ舌なめずりをする。感情を理解することが不得手なグリーフではあるが、自分に向けられている快楽の感情がよいものであるとは思えない。
「お嬢ちゃん、こんな危ないものをもってちゃあダメだぜ」
 奪われた短剣でラムダの胸元が切り裂かれていく。
「ああ、命だけはお許しを」
 両腕を拘束されたヴァイオレットがことさら大げさに騒ぎ立てれば山賊は「もちろんだ。だが無事とはかぎらねえよなあ」とヴァイオレットの全身をなめるような視線でみつめる。
(なんとも下卑た瞳。ぞくぞくしますね。この瞳が恐怖に歪む瞬間が訪れるともしらずに。ヒヒヒヒヒヒ。まあ、そろそろですかね?)
 ドォン。
 轟音が響く。
「なんだぁ?!」
 ヴァイオレットたちに注目していた山賊たちは突然の介入者に対応が遅れる。
「おまたせいたしました!」
 世界を騙し瞬きの時間を演算しここに到達した百合子が煙をたててそこにいた。ほんの数秒前にはいなかったはずなのに。その背中から飛び降りた綾姫が彼女らに到着を告げる。と同時に綾姫は剣を抜き山賊たちに大斬撃を打ち込んだ。
「まってたよ~~! ここから反撃! おっけー?」
 百合子が飛び込んできたその隙を逃さず、ダグネルの手を払ったラムダはバク転をしながら距離をとる。
「クハ、クハハハハハハッ」
 極限を超える演算の代償は己の血と肉。自動的なその搾取に百合子は気づいていない。否、気づく必要はない。
 煙をたてながら笑う百合子に山賊たちは一歩後ろに下がる。
「山賊をボコッって報酬がもらえるとは良い仕事であるな!」
 美少女は白百合清楚殺戮拳の構えをとると、タン、と地を蹴り手近にいた山賊に邪剣を奮った。
「グドルフ殿の縄張りに居をかまえたのが貴様らの不幸だ」
 ここからは攻勢だ。ヴァイオレットとグリーフもまた演技を終了し、イレギュラーズとしての顔を見せる。
 百合子と綾姫に続き、ヴァイオレットが本来の姿を顕現し、彼女の影が動き始めた。
 しかして山賊たちの混乱もダグネルの叱咤によりすぐに収まりをみせた。
 この中でも最も華奢な綾姫に山賊たちの攻撃の手が迫る。
 ガキィン!
「乙女への攻撃、このグリーフ・ロスが赦しません」
 名乗り口上と共に、その攻撃を防ぐのはいつの間にか武器を装着していたグリーフだ。
「グリーフさん、感謝します!」
「いえ、当然のことです」
 綾姫は短く礼を告げ、再度大斬撃の構えをとる。

「おいおい、おれさまの縄張りでいい度胸だ。てめえら、このグドルフさまに今までのツケを払うか死ぬか。どっちか好きな方を選ばせてやるよ。
 まあ、ツケはてめえらの命だけどな!」
 遅れてやってきたグドルフが最前衛のグリーフの隣にたつ。
 山賊と言いながらもカソックを身にまとい、ロザリオを首に下げるこの男がグリーフには理解ができなかった。
 奪うことを生業にする粗野な存在。それが山賊。
 だが、この男からはそれだけではないように思える。だが今はそれがなにかは解らない。
「白銀騎士! フェルディン・T・レオンハート! 参る!」
 囮班への注意を惹きつけるように、ことさら大きな超えで名乗り口上をあげ馳せ参じるは白銀の騎士。
「ヴァイオレットさん、グリーフさん、ラムダさん、無事ですか?!」
「おっけー、大丈夫だよ」
 ラムダの明るい言葉にフェルディンはこころをなでおろす。多少の擦り傷はあるものの、三人に目立つ負傷はない。
「じろじろ見すぎ!」
 心配で無事を確認するフェルディンの視線に少々割かれた胸元を隠してラムダがピシャリといいはなつ。
「えっ?! いやそんなつもりはない! すまない!!」
 本人もそんな無遠慮な視線にきづいてなかったようで、フェルディンは顔を赤く染めて目を離した。
 祝福のブローディアを発動しながら、口の中で敵の背に存在する精霊に話しかけるグリムがその様子に少しだけ口角をあげたが誰も気づくことはないだろう。
 全員がこの場に揃い、戦闘が始まる。
 イレギュラーズたちは、目配せしながら、効率的に手前のダメージを追っている敵から仕留めていく。
 まずは配下から。
 しかしダグネルの行動からは目を離すことはない。
 狡猾な敵とグドルフは言った。逃亡の可能性は誰しもが想定している。
 山賊たちもまた華奢な者から狙おうとはするものの、グリムの開戦のタンジーによる怒りの付与、ラムダの混乱、ヴァイオレットの苦痛に加え、フェルディンと綾姫、百合子の猛攻。
 攻めるにもグリーフとグドルフの守りが阻む。
 山賊たちが浮足立つたびにダグネルが叫びなんとか場が持ち直すという状況をなんども繰り返すが、疲弊していくのはどうしても山賊の方だ。
「これは慈悲であるぞ、悦んで逝け」
 百合子の首落山茶花により山賊の一人の首が飛び、地面をバウンドしてころがっていく。
「おお、こわいこわい!」
 グドルフが軽口をいいながら、斧をふれば、山賊が吹き飛ぶ。
「あと7人っ!」
 フェルディンが強烈なカウンターを叩き込み、人数を皆に伝えた。
 グリムは目を伏せ、後にあの首を弔わねばと思う。死すれば皆平等。墓の下は静寂でなくてはならない。
「あははっ! 腕や足の一本くらいは覚悟してください! 残滅こそがあなた方の妥当な罰です!」
 剣姫は舞うように剣を煌めかせる。
「ヒヒヒ、物騒ですねぇ。いいですね、いいですね」
 ヴァイオレットは嬉しそうに己が影を広げ山賊を食い散らかしている。
「見えず聞こえずの狂フツキ、心身ともに折ってあげるよ♪」
 ラムダも舞う。
 たまのお肌に傷をつけた代償はそうそう安くはない。
 徐々に山賊たちは倒れていく。
「くそう! てめえら、アイツラを足止めしろ。ケツまくるぞ!!」
 ついにダグネルが逃走を決める。数人の部下を引き連れ、アジトに戻るのだろう。
 それこそがグドルフの狙いだ。
 ダグネルたちは狡猾だ。何人も女を浚い、今だアジトは割れていない。泳がせればやつはアジトに向かうだろう。それを追う。
「グドルフさん!」
 そんなグドルフの内心をしってか知らずかフェルディンが叫んだ。
「わかってる! やつの逃げる先にさらった女どもがいるだろうよ!」
「ではワタクシにおまかせを」
 ヴァイオレットがヒヒヒと笑う。グドルフの意図を察したのだ。
「ワタクシを嬲り、散々愉しんで下さったのです……ワタクシにも愉しませて下さい、アナタ方の苦痛を」
 ヴァイオレットは伸ばした影を元にもどすと、今度は土壁を形成し、グドルフの足止めをしようとしていた山賊を生き埋めにする。
「応、いい手だ!」
 さあ、屍霊よ。彼らを逃すな。狼煙を上げろ!笛を鳴らせ!
 グリムは百合子の足を止めようとしていた山賊の気をひく。
 グリーフも追撃に参加したいところではあるがこれは得手不得手もある。
 仲間に任せれば、間違いは起きないだろう。
 フェルディンもまたその場に残る。足止めの山賊たちは3人。逃走した山賊はダグネル含め3人。
 ならばここで足止めを確実にし、できることなら捕虜をとりたい。
 彼は蹴り技に攻撃方法をシフトし、目の前の山賊に叩きつけた。

 ダグネルは追われているのは気づいていた。
 あのアジトはもうおしまいだ。
 アジトの奥には自分だけが知る逃げ道がある。金目のものをまとめて逃げて再出発すればいい。
 ついてきた手下にもまた足止めをしろと命じる。

 ここは私が、と綾姫とラムダが残ることになった。
 二人は目配せし、手下をブロックする。
「恩にきる」
 百合子とグドルフは礼をいうとダグネルを追う。

 巧妙に隠されたアジトの入り口は開け放たれていた。
「おい、これ以上近づくと女は殺す」
 ぐったりとした女の首輪につながる鎖をひきあげながら宝が入っているだろう麻袋を抱えながらダグネルがアジトに突入した二人に脅迫をかける。
 麻袋の中にはもう一度山賊団を再建する金は十分にあるだろう。
「グドルフ殿?」
 百合子がどうすると言外に尋ねる。
 ここで逃せば、ダグネルはまた山賊としてグドルフの縄張りを荒らすだろう。
 それは山賊を殺すことを命題としているグドルフにとっては耐え難い屈辱のハズだ。
「放っておきな。また同じ事をするってんなら、何度でも何度でも見つけ出してぶちのめしてやるさ」
「ほう、なるほど、そういうことか」
 百合子は目を細めた。
 逃さずにその場で仕留めておけば憂いはなくなる。しかしこのアジトの様子をみるに手下はいない。見張りがいないのならば女達はその隙にアジトから抜け出せばいいのにソレをしない。ソレはなぜか。内側から脱出することはできない。入り口は何らかの方法で管理されているのだ。
 その入り口の管理ができるのはダグネルのみなのだろう。逃げられる心配もなければ宝が奪われる心配もない。だから山賊たちは全員で動く。
 狡猾なダグネルのことだ。軽く見た限り隠し通路のようなものは確認できないが、ないわけがないだろう。
 今踏み込んでダグネルに止めを刺すにも女が邪魔だ。女にかまけるうちにダグネルは簡単に逃げることはできるだろう。
 ダグネルを殺して、アジトに入ることができなければ女達は暗いアジトから二度と出ることはできなくなる。泳がせて入り口をあけさせれば、女達を救出できる。
 しかして山賊は逃げる。グドルフの命題は果たすことはできない。
 それでも――。
 なるほどなるほど。彼は選択したのだ。百合子はニヤリと笑みを浮かべる。
 悔しげな表情をするダグネルは何らかの仕掛けのスイッチを押した。
 ダン、と背後で音がする。二人はつい罠かと、振り向くが何もおきない。
 ダグネルは一瞬目を離したその隙にいつのまにか姿を消していた。隠し通路なりなんなりをつかったのだろう。

 「逃げたか……まあいい、このおれさまの縄張りで好き勝手したんだ。たった一度ぶち殺すだけじゃあ気が済まねえのさ!」
 「そのとおりだ」
 ダグネルが消えたあたりの壁を見つめ、そういうグドルフに百合子は同意する。
 彼が再度業を重ねれば、また依頼としてダグネルは浮き上がってくるだろう。ならばそれでいい。


● 私の選んだ選択に後悔は無い。未来ある彼女たちの人生をいいように奪われてはならない。

 彼らイレギュラーズはアジトに集結する。
 フェルディンが捉えた山賊は下っ端でアジトの開け方はおろか宝の隠し場所もなにもわからないとのことだった。後ほど彼は然るべき機関に送られるはずだ。
 自らのマントを傷ついた女性にはおらせる。
 女性たちは心神耗弱はあるが命に別状はないだろうとヴァイオレットは言う。
 しかし――。
 ここでダグネルを逃すことは近い将来こんな悲劇を繰り返すことになるのは想像にかたくない。けれど目の前の不幸を見逃せるほどにフェルディンは薄情ではないのだ。
 正しい選択をしたのかは今はわからない。だが、すっきりとした顔のグドルフを見る限り間違ってはいないのだと思う。
 もしもまた同じことがあったのならば。自分が不幸をとめると、青年は唇を噛んだ。
 
 グリムはついてはこなかった。死んだ山賊たちを弔うというのだ。グドルフはお人好しなこったと笑った。

 ことの顛末を聞いたグリーフはわからなかったことが一つだけわかった。
 この不思議なグドルフという男はきっと「やさしい」のだ。ソレを口にすれば否定されるどころか、仲間にも笑われることだろう。だから自分の胸にだけとどめておく。
 「もう大丈夫」
 やさしいあのひとがたすけてくれたのだから。
 と寄り添うように傷ついた女たちにグリーフは微笑んだ。

「んじゃ、パーッと祝勝会といくか。ゲハハハ!」
 グドルフが終わったと快哉をあげる。
 山賊然とした彼がそう叫べば女達がびくりと体をすくめ、ラムダがグドルフさん! こわがらせないでよ! と頬をふくらませればそりゃあすまねえとグドルフはまた大きく笑った。
 綾姫は大丈夫ですよと女達をなだめる。綾姫は彼女らが回復したら自らの料理を振る舞おうと心に誓った。
「ヒヒヒ、高い料理でもいいですか?」
「あ、私もたかいのがいいな!」
 ヴァイオレットの要求にラムダも乗ってくる。


「ああ、かまわねえ。そこの女どもの分もまとめておれさまがもってやる!」


 グドルフは思う。
 あの男が足を洗えばそれでいい。
 だが立ちふさがるなら何度でも潰す。
 そう。私以外の山賊という概念が、この世界から消えるまで。

 今はこの女どもが無事なのを祝えばいい。


 死んだ山賊たちの遺品を整理し、持っていたダガーを墓標に、アンダーテイカーは埋葬する。
 グドルフでなくてもお人好しだというだろう。
 それでも男は役目を果たす。平等なる死と安らぎのために。
 
 「看取られなかった死よ、無念残りし死よ。此処に墓守たる俺が見送った。
安らかなる眠りあれ、そして次なる生に祝福あれと願わんことを」

 ちりん、と鎮魂のベルが静かな森に響いた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

ご参加ありがとうございました。
ダグネルは逃げましたが、またどこかで姿をあらわすかもしれません。
女性たちはしばらくの間病院で心と身体の傷を癒やすことになります。

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