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シナリオ詳細

<マジ卍文化祭2020>さかさまカフェ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 アルパイン・ブルーの空に一つ二つと昼花火が上がる。
 希望ヶ浜学園祭の始まりを告げる音が空へと広がった――

 俄に活気づく学園内部の放送。普段よりも人気の多い学園内。
 大きく翼を広げるスカイウェザーに、大道芸のように炎を出してみせるグリムアザーズも見える。
 人間とは異なる見た目のイレギュラーズも、この日ばかりは仮装として見做されるらしい。
 皆活き活きと目を輝かせていた。
 それでも、生徒達や来客が楽しく過ごせているかを見回る『大人達』も必要で。
 希望ヶ浜学園教師の一人、燈堂 暁月は模擬店の見回りをしていた。

「ここは……さかさまカフェか」
 男女の衣装を入れ替えて接客するらしい模擬店の前に立ち止まる暁月。
 他の催しに人が集まっているからだろうか、人はまばらでお客は数人しか居ない。
「あらぁ、燈堂先生じゃない。いらっしゃい。見回り?」
 にっこりと微笑んで近づいて来るのは豊満なラインを男装で隠したアーリア・スピリッツ(p3p004400)だった。さかさまカフェの店長兼監督であるアーリアは「どうぞ」と暁月を中へ誘う。
 ペール・ホワイトの陽光が優しく教室の中に降り注ぎ、居心地の良さそうな空間が視界を覆う。

 その中に、恥ずかしそうに佇むメイド服の少女が居た。
 否、さかさまカフェであるからして、彼は歴とした『男の子』である。
「廻……」
「えっと……、その」
 顔を真っ赤にした『掃除屋』燈堂 廻(p3n000160)は紫の瞳を逸らした。
 スカートが短いのかしきりに手で引っ張っている。
「何で居るんですか。暁月さん」
「私はこの学園の教師だからね。見回りだよ。……廻は何でそんな可愛い格好をしているんだい?」
 見知らぬ客に見られるのは、まだ割り切って対応できたものの。
 目の前に居る燈堂暁月は、記憶喪失になった廻を引き取った、いわば『家族』のようなもの。
 そんな暁月にまじまじと女装した姿――アーリアの手によってばっちり化粧もされた完璧な状態――を見られるのは羞恥の極みだった。
 恥ずかしさの余りだらだらと汗が出てくる。
「何でかっていうと、その。ここは『さかさまカフェ』なので……」
 俯いて語尾が小さくなっていく廻に暁月はくつくつと笑った。
「これは是非とも写真に収めて、白銀や黒曜にも見せてあげないとね」
「えっ、暁月さんっ……!」
 素早い動きでaPhoneを取り出した暁月は廻のメイド姿を写真に収める。
 今夜の夕餉の話題はこの写真で持ちきりだろうと暁月は微笑んだ。

 ――――
 ――

「いらっしゃいませ~!」
 アーリアの声が廊下に響き渡る。男装の上からでも分かる、溢れだす色香に引き寄せられるのは何も男ばかりでは無い。看板を持つアーリアを見つめる少女の視線。
 幼児とも取れる年齢の子供が一人さかさまカフェへと向かってくる。
「あら~、可愛い女の子ね。一人かしら? パパかママは何処かにいる?」
 困ってることは無いかと子供に尋ねるアーリア。
「ん。たのしそうだったから、きた、よ」
 何処か違和感を伴う拙いしゃべり方と仕草。もしかするとこの子供は『人間』ではないのかもしれない。
「ああ、今年も来てくれたんだね」
 アーリアの背後から暁月が現れ、子供の頭をぐりぐりと撫でた。
「燈堂先生この子とお知り合いなのかしらぁ?」
「そうだね。学園祭なんかの時に来てくれる『夜妖』だよ」
 撫で回された髪を小さな手で整えてにこりと笑った子供はぺこりとお辞儀をする。
「カナタです。よろしく、ね」
「この子は所謂、座敷童や妖精のような存在でね。食べ物を分け与える代わりにお祭りを盛況にしてくれるんだ。多分」
 決まってお祭りごとには現れ、毎年盛り上がるので確証は無いらしい。存在自体がおまじないのようなものなのだろう。
 アーリアも暁月に習いカナタの頭を撫でてみる。
 毛の長い猫を触るような心地の良い髪質。うっとりと撫でられているカナタと相まって、本物の猫のような錯覚を起こしてしまいそうになった。
「ふふ、あなたもさかさまカフェで休憩していく?」
「ん。おやつ。すき」
 アーリアの言葉ににこりと微笑んだカナタを連れて二人はカフェの中へと入って行く。

 お祭りには、こっそり夜妖たちも集まってくる。
 さかさまカフェでゆったりした一時を過ごすのも悪く無いだろう。

GMコメント

 もみじです。ようこそ『さかさまカフェ』へ。

●目的
 さかさまカフェでたのしく過ごす

●ロケーション
 教室の硬い椅子にクッションを敷いて。
 机には手作りのテーブルクロスが掛けられています。
 可愛らしく小さなお花が飾られています。
 学祭ならではの手作り感溢れるカフェをお楽しみください。
 人間に紛れて大人しく友好的な『夜妖』も遊びに来ているようです。

●出来る事
 適当に英字を振っておきました。字数節約にご活用下さい。

【A】軽食
・サンドウィッチ、フランクフルト、おにぎり、焼きそば、スープなどの軽食が楽しめます。
・ジュース:オレンジ、アップル、コーラ、ミルク、カフェオレ、コーヒー、ココア、紅茶、緑茶など。
 OPに出てきた夜妖の『カナタ』はここで食事をしています。
 他にも人間の形から大きく外れない夜妖が遊びに来ているかもしれません。

【B】さかさま衣装を着てみる
 男女さかさまの衣装を着ることが出来ます。
 どんな衣装でも出てきます。すごい。

【C】接客してみる
 さかさま衣装を身に纏った店員になれます。
 優雅な着こなしと給仕でお客さんをもてなしましょう。

【D】休憩中
 隣の教室で休憩できます。
 聞こえてくる学園祭の雰囲気を味わう事ができます。

プレイング例:
【C】
暁月さんに恥ずかしい所を見られてしまった。
晩ご飯の時に白銀さんや黒曜さんに写真を見せるつもりだと思う。
はっ! いけない。今は接客に集中しないと。
「いらっしゃいませ!」
最初ははずかしかったけど段々と慣れてきたような……いや、慣れたくない。
スカート短いし、長い靴下はずれてくるし。
すごく衣装バシッと決まってるのに、靴は上履きなんですよね。
なんていうか学園祭って感じがしますね。

●NPC
○『掃除屋』燈堂 廻(p3n000160)
 希望ヶ浜学園大学に通う穏やかな性格の青年。
 裏の顔はイレギュラーズが戦った痕跡を綺麗さっぱり掃除してくれる『掃除屋』。
 今回はメイド服で【C】にて接客中。【D】の休憩中にも話しかける事が出来ます。

○燈堂 暁月(とうどうあかつき)
 希望ヶ浜学園の教師。裏の顔は『燈堂一門』の当主。
 記憶喪失になった廻や身寄りの無い者を引き取り、門下生として指導している。
 今回は【A】で食事をしているか、【D】に廻と居ます。

  • <マジ卍文化祭2020>さかさまカフェ完了
  • GM名もみじ
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2020年10月15日 22時12分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
祈りの先
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
アオイ=アークライト(p3p005658)
機工技師
恋屍・愛無(p3p007296)
獏馬の夜妖憑き
ソフィリア・ラングレイ(p3p007527)
地上に虹をかけて
シルキィ(p3p008115)
繋ぐ者
浅蔵 竜真(p3p008541)
彼岸 月白(p3p009118)
此岸より臨む

リプレイ


 涼風が教室のカーテンとふわりと揺らす。
 教室の窓から入り込んだ陽光に何処か懐かしい温もりを感じた。

「いや、あの、ちょっと待ってくれ。いやダメだって。なんで俺がさかさまに……。ほら、筋肉ついてるし背は高いし、どう考えても向いてないだろう?」
「ふふ、大丈夫よ」
『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)はふんわりとした笑顔で『一刀暁明』浅蔵 竜真(p3p008541)の衣装を選んでいく。
「やっぱり、すらっと足が長いからチャイナ服が似合うかしらね?」
 深いスリットから覗く足が魅力的な衣装だ。
「はい。なんでなんだ……俺がそんな格好して、誰が得をするんだ……?
 しかもこのまま接客? 殺す気なのか? 俺の羞恥心を舐めるなよ?」
 動揺してぶつぶつと独り言を繰り返す竜真へ手際よく化粧を施して行くアーリア。問答無用である。
 ここまで来ればもう覚悟を決めるしか無い。竜真は素早く接客をしようと意を決し視線を上げた。
「マスカラ塗ってるんだから動かないで!」
「あ、はい」

 ――くそっ、こうなれば仕方ない。本当の接客を見せてやろう。早々にに切り上げるためにな。

 だが、しかし。
「……あの、やっぱり裏に戻っちゃダメか? だってこれ足が落ち着かないし、周りの視線がその、なんか変だし……元々は着るつもりもなかったわけだし」
 竜真の深いスリットは注目を集めるだろう。
「ええいままよ!やってやるしかないな! 俺にできる最大の接客を、俺にできる最高のさかさまで!」
 物珍しさも相まって好奇の目が竜真に向けられる。
 その視線に竜真の顔に紅葉が散った。
「待てやっぱり今のはなしだ、恥は捨てろというが捨てられないし。俺はなにを口走っているんだ……?」
 気が動転して、最早訳が分からないと頭を振る竜真。
 何か気が紛れるものをと視線を上げれば『掃除屋』燈堂 廻(p3n000160)のメイド姿が見えた。
「あれは? 燈堂廻? ……あれが、か……? いや……可愛いなと思っただけだ」
 教室の端に所在なさげに佇む廻の姿がどこか自分に重なる。

「さかさまカフェ……面白いことを思いつくものですね」
 月色の瞳を細めた『此岸より臨む』彼岸 月白(p3p009118)は男女逆さまの衣装に思い馳せた。
「装いをさかさまにするだけで、いつもとは違うひと、違う場所に見えるというのも楽しいです」
 カフェに立ち寄りのんびりお茶でも飲もうかと思っていた月白は、特異運命座標が働いている事に気が引けて自ら手伝う事にしたのだ。
 あまり役に立てるかは分からないがと言う月白にアーリアは快く迎えてくれる。
「大丈夫よ。ささ、この中から好きな衣装を選んでね」
 ハンガーに掛けられた衣装は準備の際に仕立て担当が用意したものだ。
 どれも手が込んでいて美しく種類も多い。悩みながら月白が選んだのは。
「……女性用の着物と、給仕もしますからエプロンを」
「良いわね! すごく似合うわぁ!」
 アーリアの声に首を振る月白。
「似合うわけではありませんが、華やかな『さかさま』は他の方にお任せして、見て笑える『さかさま』も良いものです。多分」
「大丈夫よぉ! 月白くんだってとっても素敵よ」
「アーリアさんは美しい方ですが、他のひとにお化粧をするのもお上手なんですね。皆さん準備も賑やかで何よりです」

 着替え終わり、テーブルを並べていく月白。
 教室の中には竜真と廻が居た。
「着替え終えた店員の方々、皆さん素敵です」
 特に廊下から覗き込んでいる生徒が見て居るのは廻だろうか。
 廻自身は恥ずかしがっているようだが「似合っている」と頷く月白に廻は頬を染めながら。
「月白さんも似合ってますよ。綺麗です」
 そう応えた。


「さて、準備も終えてさかさまカフェ本番!」
 優しい声色声を上げたアーリアは集まった仲間に微笑む。
「先生も生徒もお客様も、皆で楽しい一日にしましょうねぇ」
 アーリアの声に頷いた『機工技師』アオイ=アークライト(p3p005658)はさかさまカフェの看板を持って教室を出て行く。校門の宣伝役というわけだ。
 アオイを見送ったアーリアはポニーテールに黒い燕尾服を着ていた。
 白い手袋がモノクルを押し上げる様は正しく男装の麗人といった風情。大人の魅力だ。
「カナタちゃんや燈堂先生達、他のお客様を接客していきましょ……じゃなかった、していこうか」
「はい。お出しするたべものと飲み物、値段は覚えました。私も一働きしに参りましょう」
 アーリアの声に月白が頷く。

「あ、いらっしゃいませー!」
 元気な声で挨拶をした『地上に虹をかけて』ソフィリア・ラングレイ(p3p007527)は教室に現れた新たな客にお辞儀をする。
「まずはそこの赤毛のお嬢様を追い出しましょう!」
 アーリアの視線の先、『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)が教室のドアを潜らんとしていた。
「えっ!」
「ええいあれは教師とはいえカフェにはふさわしくない!」
「なんでですのおおおおお!!!!」
「摘み出せ、ええいしがみつくな!」
「ちょっと、私の顔を見ただけでつまみ出そうとするだなんて、あんまりではありませんこと!?」
 教室のドアの前で騒ぎ立てるヴァレーリヤに何だ何だと注目が集まる。
 突然の事にソフィリアが目を白黒させた。
「入った途端摘まみだされそうになってる人が居るのです……あの人、何かしたのです?」
 ソフィリアは小声で傍に居た廻に耳打ちする。
「えっと……」
 言い淀む廻。先日は行きつけのバーを出禁になるぐらい暴れたのだが。

「ぜぇぜぇ、あのですね、いくら私がお酒好きでも場ぐらい弁えていましてよ?
 私だって、教師ですもの! アーリアと可愛い生徒達が一生懸命に作ったカフェを、ぶち壊しにするような真似をするような女に見えまして?」
 ヴァレーリヤのエメラルドの瞳がキラキラと輝く。アーリアは小さく溜息を吐いて中に案内した。
「商品は何にするです?」
 ソフィリアの笑顔にヴァレーリヤはにっこりと頷く。
「裏メニューの般若湯をお願い致しますわー! 度数50度以上でー。できればアテになるようなおつまみも付けて」
「ふむふむ…50℃以上のはんにゃとう……あてになるおつまみ」
 ヴァレーリヤの無理な注文に真剣な表情で悩むソフィリア。
 はんにゃとう……。ふにゃふにゃしたお菓子だろうかと視線を上げれば。
「がああああああああ!!!!」
 アーリアにつまみ出されそうになるのを、机を掴んで必死に抵抗する英語教師ヴァレーリヤ24歳、T〇EIC300点が居た。
「うわ……机にしがみ付いて……凄いのです……」
 思わず声が漏れるソフィリア。

「……仕方がない、終わったら打ち上げで赤提灯行くから今はこれで我慢、ね?」
 アーリアが用意したロシアンティーとクロテッドクリームを添えたスコーンをソフィリアはヴァレーリヤのテーブルにそっと置く。
「どうぞごゆっくり、なのですよ!」
「うっうっ、アーリアのお店だからあると思いましたのに……」
 悲しげな表情で用意されたジャム付の紅茶を飲むヴァレーリヤは次の瞬間には力強い意志で瞳を上げた。
「でも皆、さかさまな衣装似合っていますわねー! 写真を撮ってもよろしくて?
 おほほほほ、ばっちりカメラに収めましたわーーー!! さあ、この写真を全校にばら撒かれたくなければ、私に酒代を貢ぎなさい!!!」
「えっえっ」
 真っ赤な顔をした廻がヴァレーリヤにお金を差し出す。

「ヴァレーリヤ先生、ちょっと職員室まで行きましょうか」
 和やかな笑顔をヴァレーリヤに向ける『希望ヶ浜学園教師』燈堂 暁月。
「あ、燈堂先生、ちょっと、私まだ紅茶が残っておりまして……あぁああああぁぁぁぁ!!!!」
 問答無用で回収されていくヴァレーリヤの断末魔が廊下に響き渡った。


「ふぅ。気を取り直して、さかさまカフェなのです!」
 ソフィリアは男性用のウェイター服を着て振り返る。
「誠吾さんは席を外してるけど、大丈夫、うち一人でもきっと何とかなるのです!」

 ――そう、思って居た時期が、うちにもあったのです!

 涙を滲ませながらソフィリアは唇を噛みしめた。
「注文、全く覚えられる気がしないのです!
 お一人様ならなんとかなるですが、三名様以上はもう全く無理なのです!」
 なぜ、他の皆はあんなにスラスラ覚えられるのだろうと首を傾げる。
「もしかしたら、覚えた振りして適当にお茶出したりしてるです?」
 きっと適当に雰囲気で出しているのだろうと考えたソフィリア。うろ覚えに注文をオーダーして気まぐれに紅茶とケーキをお客に持って行く。
 ソフィリアの少し不安げな笑顔に、職員室から戻って来た暁月は複雑な表情で頭を撫でた。
「あ、間違ってましたか? ごめんなさいです」
「私は大丈夫だよ。そうだね……整理するためにメモを取ってみるのはどうかな?」
 暁月の声にアーリアもフォローに回る。
「そうね。メモが必要ね。大丈夫、一つ一つ確認をしてゆっくりやっていこうね。頑張れば、いつもの彼もきっとあとでお店に来てくれるはず!」
 メモとボールペンをソフィリアに手渡したアーリアは彼女の肩をぽんぽんと撫でた。

「今日は待ちに待ったマジ卍文化祭! ホントにこの名前になるとはねぇ……投票した甲斐があったよぉ」
 にやりと口の端を上げた『la mano di Dio』シルキィ(p3p008115)はしてやったりと悪い顔をする。
「折角のお祭り、先生だって楽しませてもらうよぉ!
 という訳で、"さかさまカフェ"のお手伝いに来たよぉ。準備に続いて本番も頑張らせてもらうから宜しくねぇ!」
 シルキィの愛らしい声が教室の中に響けば、場が華やかになる。

「そういえば」
 シルキィは廻に歩み寄り優しく微笑んだ。
「廻君のさかさま姿……わたしは凄く良いと思うけど……うん、これフォローになってないよねぇ!
 暁月先生きっちり写真に残してるみたいだしねぇ、ドンマイだよぉ……」
「はい……っ」
 肩をぽんぽんと叩かれた廻はシルキィの言葉に頬を染め眉を苦しげに寄せた。
「さて、それじゃあ接客準備開始!」
 執事服とモノクルを身につけ、髪を纏めたシルキィ。
「語尾を伸ばす癖も今日は封印! できるかなぁ、できるよねぇ、できる!!!
 今日のわたしは――執事さん!!!」
 意気揚々とシルキィは背筋を伸ばす。

「いらっしゃいませ、お客様」

 お決まりの一言と共にシルキィは接客をスタートする。
 夜妖も人間も旅人も、此処では等しくお客様なのだ。
「心地良い一時を過ごせますよう、心からのおもてなしを!」
 居住まいを正し、柔らかな微笑みと共に注文を聞き取り、正しく給仕する。
 やることはシンプルなのだ。
 そう、語尾にさえ気を付けていれば何の問題もないはず――
「お待たせ致しました。こちら、ご注文の紅茶だよぉ……ごほん、紅茶でございます」
「だよぉ……って、いった」
 クスクスと笑い出す夜妖のカナタにウィンクを投げるシルキィ。
「……ふふ、お戯れをお客様。普段の話し方に戻ってなどいませんよ!!」
 シルキィの照れた表情に教室の空気が和む。
「じゃあ、フロートのアイスや、クッキーを一枚おまけしちゃう」
「やたー!」
 アーリアはカナタや人ではないお客様に特別サービスを提供する。
 夜妖と聞けば怖かったり悪さをするイメージがあるけれど。カナタみたいな可愛い子も居るのだと知ることができて、この街に愛着が湧いてくるとアーリアは小さな夜妖に語った。
「なにか困ったことがあれば、いつでもご用命くださいね、お客様? 執事で先生な私に、お任せあれ!」
「はーい! あっ!」
 勢い良く手を上げたカナタのティースプーンがカランと床の上に落ちる。
「僕が拾いますよ」
 おもむろにスプーンへと手を伸ばす廻を瞬時に止めるアーリア。
「あ、スプーン落としたからって無防備に拾わない! 履いてるとはいえ色々あぶなーい!」
 スカートの下にドロワーズを履いている。しかし、いけない。いけないのだ!
「廻く……いえ、廻ちゃんも流石、私がメイクしただけあって美少女!
 でも、だからこそ気を付けないといけないわ」


 さかさまカフェの隣の教室。
 着替えの為に廊下側から見えない様に、窓には布が掛けられていた。
 休憩の為に隣室の扉を開けた廻は先客に視線を向ける。
「愛無さん」


「やあ、休憩かな?」
 手を上げた『双彩ユーディアライト』恋屍・愛無(p3p007296)は衣装を選んでいるようだ。
「さかさまカフェ。人は、己と異なるものに憧れを抱く生き物なのだろう。特に、このような日は」
 何度か会ったことのある愛無を廻は『女性』として認識していた。
 水着も女性のものだった。しかし、愛無が今選んでいるのは女性もの。
 逆さまの衣装を選ぶのがさかさまカフェのコンセプトなのだがと廻は首を傾げる。
 もしかして、愛無は『男性』なのだろうか。
「まぁ、僕に性別は無いのだが」
「……そうなんですね。あ、そうかあの黒い姿が本当の?」
「そう。でも、折角の機会だし、廻君とお揃いがいいな。めいど服というのだったか?」
 同じデザインのメイド服を選び出す愛無。着ていた服を遠慮無く脱ぎだした所で廻は慌てて反対を向く。
 性別が無いからといって着替えを見るのは憚られるだろう。
「シンプルで機能的だが可愛らしい」
「もう着替え終わりましたか?」
 大丈夫だと言う愛無を振り返れば、自分と同じ衣装を身に纏った愛らしい姿が現れた。
「わぁ、可愛いです」
「廻くんも、実によく似合っている。うむ。素晴らしい。この素晴らしさは独り占めしておきたいが、それは罪という物だろう。是非もなし。アーリア君に、写真を送ってくれるよう頼まれたしな。撮った物は送っておこう」
 廻の恥ずかしがっている表情や触り心地の良さそうな絶対領域を、のべつ幕無しに遠慮無く写真に収めて行く愛無。

「それにしても。祓い屋。燈堂家。彼が件のアカツキという御仁というわけか」
 丁度、廻の遅めのお昼ご飯を買って来た暁月が教室へと入ってくる。
 テーブルの上に焼きそばと飲み物を置いた暁月は愛無の言葉を聞き逃さなかった。
「愛無君だっけ、私に何か用かい?」
 夏のプールで廻は『アカツキ』という人物に世話になっていると言った。
「夜妖を滅し、夜妖憑きを保護する一族。守護者にして管理者か」
 廻が信頼する彼の『家族』。好青年といった風ではある。されど、実際そうなのだろうか。
 人は理由と力さえあれば、道を誤る生き物なのだからと愛無は暁月に懐疑的な視線を向ける。
「ふふ、保護者にして管理者か。随分な言いようじゃないか。でも――」
 一歩近づいた暁月は愛無の隣に立っている廻の首筋を指でなぞった。
「それは、間違ってない。愛無君はとても慧眼だね。特に廻は私の大切な『家族』なんだ」
 保護者にして管理者。飼い主と首輪を与えられし者。
 底知れぬ暁月の意図を表すように瞳が黒から赤へと変わる。
 されど、それは一瞬だった。廊下の喧噪に掻き消され既に暁月の目からは色が失われる。

「時にお義父さんかお義兄さん。どちらでお呼びすれば?」
「ふふ、それは愛無君が廻のリードを取る時にでも決めようか」

 二人の間に入っていた廻が両方の頬を軽く引っ張る。
「僕の意見とか……、そういうの在ると思うんですけどっ!」
 凍り付いた場の空気を和らげるように廻はわざとらしく拗ねた様に振る舞った。
「冗談だ。うぃっとに富んだ地球外じょーく。さて、場も和んだところで、みんなで写真というものをとるのはどうだろうか。こういう時は、皆で写真を撮るモノだと聞いた」
 暁月も一緒にと手招きする愛無。
 この先の未来など知れないけれど、この瞬間はきっと綺麗な思い出になるだろうから。

「それはそれとして、廻君とのつーしょっとも欲しい。あと廻くんだけのも。この日のためにえすでぃーというのを買った。256Gって書いてあるの」
「え、さっき撮ったじゃないですか」
「もっと……」

 ――――
 ――

「終わり際には、折角だからスタッフとお客様皆で集合写真を!」
 シルキィのかけ声にさかさまカフェで給仕したメンバーは集まってくる。
「この格好のままなのは不本意だけど、折角だし撮るか……頼むからどこも漏れ出さないようにだけはしてくれ……」
「あ、愛無ちゃんは廻くんの写真後で送ってねぇー!」
「任せろ」
「今日という日が、皆にとって素敵な思い出になりますように」
 スマートフォンのカメラをセルフタイマーでセットして。
 皆で並んで。

 ――はい、チーズ!








成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お疲れ様でした。如何だったでしょうか。
 思い出に残る一日でありますように。
 ご参加ありがとうございました。

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