シナリオ詳細
<根ノ国山>月満つる日まで
オープニング
●その身を捧げ示さんと
山を臨んで建てられたこの神殿、及びこの山自体が聖域、或いは隔絶された場所である。
根の国か、地獄か、はたまた極楽か――『根ノ国山』はこの世ならざる何処かへの路と言われているが、事実は長らく不明のまま。非常に霊的な場所なのは確かで、今日まで人々の信仰と畏敬を集めている。
しかし、どんな場所であっても穢れは溜まるもの。定期的に祓い清め、清浄に保たなければならない。
「――、――、……」
徹底的に外界を遮断した領域の中、幾重にも重なり響く祝詞が一種の興奮状態を喚起する。その中心には、巫女装束を纏った鬼の娘。此度の儀式の贄だ。
(イタイ、イタイ)
(ドウシテ、ドウシテ)
「……!!」
びくり。娘の身体が大きく跳ね、その視界が暗赤色に染まる。自身の目から噴き出した赤黒い色が、贄から光を奪う。
「い、た……」
ごきり、ごきり。背中の骨が外される痛みと、鋭い何かで腹を裂かれるような痛みが走る。骨が砕けるのが先か、腹ごと真っ二つに裂かれるのが先か。
(忌み子のせいだ)
(お前が生まれてこなければ)
(死ね、死ね。死んでしまえ)
贄が感じるのは、身体の痛みだけではない。無数の怨嗟が絶えず贄を襲い、その心をぐさぐさと無遠慮に刺してくる。無駄と分かっていても、目を閉じ耳を塞がずにはいられない。
これらのほぼすべては贄の錯覚。穢れを贄に集め祓い落とす儀式の過程で、穢れによる苦痛が贄を苛むのだ。命を落とす事まではないが、多大な苦痛を伴う。
「……次は……うごかなきゃ……」
穢れを集めた後は、正しい手順を以って祓わねばならない。儀式において、作法や手順は重要なもの。万一間違えでもしたら、きっと、もっと恐ろしい事になる。
大丈夫、どんなに痛くても錯覚だから。痛みを堪え、つとめて心を閉ざし。決まった回数だけ手にした鈴を打ち鳴らす。次に祭壇と、その向こうの山に向かって一礼。その後は――
「――月葉、立派だったぞ。今回もよく頑張った」
贄の少女、月葉が布団の上で目を覚ます。苦痛を伴う儀式の後はいつもこう、決まって意識を失ってしまう。
此処は代々神域を守る奥村の家。その当主と、数名の巫女が月葉を労う。巫女たちは皆、当主の妻か娘たちだ。
「……ありがとうございます、お義父様。私でもお役に立てるなら嬉しい、です」
「ああ。月葉は本当によくやってくれている。私の自慢の娘だよ。血が繋がっていなくとも」
月葉と奥村の間に、血の繋がりは無い。捨て子だった月葉は幸運にも奥村の家に拾われ、その娘としてすくすくと育ち、非常に優れた巫女としての才能をも開花させ、『もっともこの儀式に適した』彼女を中心として、たびたび祓の儀を行ってきた。
「しかし、最近はこと穢れが多い。……『結月の大祓』でなければ、清めきれぬか」
「はい、月葉もそう思います」
奥村の秘儀。新月より始めて月満ちる刻まで行う、半月掛かりの祓の儀。
中心の贄となる月葉の負担は甚大なものになるが、迷っている時間は無いと。月葉は急ぎ、儀の準備を進めさせた。
●土産の箱を開けるか否か
鬼の僧兵の錫杖が、山より降り来た怨霊を叩き伏せる。
「おー、新入りのボウズ。調子いいじゃねえか」
「まあ、丈夫さだけが俺の取り得だし。功徳も積めるってもんだ」
新入りの僧兵、暁月が流れ着いたのは根ノ国山の麓の村。特に穢れ多き地であり、殆どの民は進んで近寄らず、代わって自然と『訳あり』の者が集まる。怨霊や妖の対処に追われる日々にあって、暁月の腕っぷしは重宝がられた。
『……すまない、暁月。お前を守ってやれなくて』
『気にするなよ、おやっさん。ここまで育てて貰っただけで御の字、ってやつだ』
この『おやっさん』は有力なヤオヨロズでありながら鬼の暁月を保護し、獄吏、及び彼本人の警護をさせる名目で傍に置き、家族同様に扱ってきた。
『おやっさんに迷惑はかけたくないし』
暁月の片割れは遠い昔に何処かへ隠され『なかったこと』とされていたが、つい先日、その存在が露見してしまう。
忌み子(ふたご)それ自体も、忌み子の事実を隠す事も、その両方が禁忌である。彼の家からすべての権力を剥奪し、暁月を町から追い出す事で人々は一応の『禊』とした。
『随分と鍛えて貰ったし、一人でもまあ、何とかなるさ。おやっさんは、娘さんを守ってやってくれ』
『……ああ、ありがとう。どうか元気で』
鬼である上に双子でもある、二重の業。豊穣にあってはそう珍しくない出来事だった。
「それにしても、うーむ……動けるもんが減ってきたのう」
「だな……巫女さま方が頑張ってる上でここまで、とは」
神社からの戦巫女や寺社からの僧兵、村の有志による合同の自警団による連日の討伐と、奥村の家による祓い清めを以てなお、穢れは増え続ける一方だった。増え続ける負傷者に、治療が追い付かない。
「あの、『おっちゃん』」
どうしたものかと悩む隊長格の『おっちゃん』に、暁月がひとつ進言を行う。
「俺にひとつ、心当たりがあるんだが……」
ギルド・ローレットと特異運命座標(イレギュラーズ)。
閉ざされたこの地に降り立った異物。暁月が町を出る間際、その名を耳にした事がある。
根ノ国は危険ばかりが多く、都――というより誰から見ても旨味が少ない土地のため、協力を仰いだところで袖にされるのは見えたこと。
しかし、彼らならどうか。鬼人種に対して友好的だった、という話さえ聞く彼らだったら。
「どのみち、このままだと押し切られそうだし。一か八か、俺がローレットに話してみる」
暁月自身の苦はそこまで気にならないが、この地では何故、鬼人というだけで虐げられるのか。何故、双子がここまで忌まれているのか。顧みようともしない多くの人間や、豊穣の地全体を覆う『変わらない』空気に、暁月はほとほと嫌気が差している。
だからこそ、新しい異物(かのうせい)に寄せる期待は大きい。
奥村の祝詞は途切れる事なく辺りに響き、穢れを打ち祓い続ける。この秘儀に村人の立ち入りは許されず、儀礼の様子を知る者は居ない。
根ノ国に来て日が浅い暁月にとって、奥村の家は『面識は無いが偉い人達で、言う通りにして満月の日まで耐えれば良い』程度の認識でしか、なかったのだが――
●幕間、雲の切れ間から
「我らの悲願まで、いよいよあと半月ほど」
「ええ、ええ。あなた。いよいよですわ。わたくし達の代で――」
「それにしても、時期が良かったわ。私の身代わりをしてくれる子が、あっちから来てくれるなんて」
「私とて、実の娘を贄に差し出すのは心苦しく思っていた所に。なんという僥倖であろうか」
「僥倖ですわね。楽しみですわ」
「ものすごい幸運よね。楽しみだわ」
嗚呼、月満つるその瞬間が待ち遠しい――!
新月の夜明け、日出ずる前に。
腕利きの情報屋たちによって、『根ノ国』からの便りが届いた。
- <根ノ国山>月満つる日まで完了
- GM名白夜ゆう
- 種別EX
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年08月21日 22時10分
- 参加人数10/10人
- 相談5日
- 参加費150RC
参加者 : 10 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(10人)
リプレイ
●目覚めの予兆
いつも通りの祓の儀。聞く者を平坦な高揚状態に誘う祝詞の中で、贄の巫女、月葉はゆっくりと崩れ落ちる。
鈍る感覚と意識の中にあってなお、無い筈の傷に身体が痛み、怨嗟の声に心が痛み、何がどうしてか分からない何かがずきずきと痛む。
やがて、いつも通りに意識は暗転。物心ついてからずっと繰り返し、明日もきっと同じ――
(――あれ?)
暗く沈む意識の中で、見慣れない、それでいて酷く異質なナニカを感じる。人の気配や穢れの残滓ではない、初めて見る異物。長い事果たしてきた務めの中でも、こんな経験は一度もない。
意識を失う前にそれを捉えんと、月葉は闇の中で目を凝らす。
『はじめまし、て?』
閉ざされていく闇の向こうで一瞬だけ、それと『目が合った』ような気がした。
●捨てる神に応える者
「暁月……! すまねぇ、ちょっと限界だ」
前衛を張り続けた僧兵がまたひとり倒れる。残り僅かとなった戦力で山の穢れを押し留めるも、いよいよ限界か。ただ一人残った暁月の目前には赤鬼と水蛇、それらに付いて回る餓鬼の群れ。赤鬼と水蛇はそれ一体でも厄介な上に、多勢に無勢が重ねれば。
「もはや、これまで……か」
『可能性』に賭けたのは一日も経たぬうちの事。幾ら何でも間に合わないか、はたまた『届かなかった』か――
暁月は死を覚悟した。どう考えても浄土には往けまい、やり直しはせめて畜生道から――などと、死後に想いを馳せたその時。
カラカラカラ。山辺に立つ無数の像が手にした風車が一斉に回り出す。
淀んだ空気の中に、一陣の爽風が吹き抜けた。
「お待たせーッス! 僕ら参上ッス!」
小柄な少女が元気いっぱいに飛び出して、暁月に纏わりつかんとした餓鬼に向けて黒の小太刀を振り抜いた。幾重にも重ねる斬撃で心の火を削る『黒犬短刃』鹿ノ子(p3p007279)の十八番だ。
続けて飛来するのは赤天狗、もとい『水神の加護』カイト・シャルラハ(p3p000684)。三又の槍を携え、風を切って赤鬼に肉薄。ひらめく赤い飾り布に赤い爆風、乱舞する赤い羽根が赤鬼の周辺を真っ赤に染めた。
間髪入れず、後方より白光が閃く。『双色クリムゾン』赤羽・大地(p3p004151)の放った神気だ。如何なる神威か法力か。神聖なものである事は明らか。
「すみません。少し……いえ、だいぶ遅くなってしまいましたね」
いつの間に――何の前触れもなく、暁月の目前に着物の女『月下美人』雪村 沙月(p3p007273)が現れ、すっと進み出る。埃でも払うような軽い所作の後、至近の餓鬼が呆けたように膝を折った。
彼女たちを含め、来訪者は十人ほど。瞬きほどの出来事に、暁月の認識が遅れて追い付く。彼らこそが――
「……イレギュラーズ、か?」
「如何にも!」
さらり、風に黒髪が靡く。『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子(p3p001385)が背筋を伸ばしてゆったりと、真っ直ぐに暁月の近くへ歩み寄る。寄り付く餓鬼も意に介さず髪をかきあげたと思った次の瞬間、餓鬼の動きがぴたりと止まり、後ずさる。
常人の目には優雅な仕草としか映らない、彼女の後の先。容易に触れる事は叶わぬ、清楚可憐な花の棘。
「申し訳ございません。もう少し早くに着いていれば」
辺りに転がる僧兵たちを見て、沙月が唇を噛みしめる。
「ですが、我々が来たからにはもう好きにはさせません」
まだ息がある者も多い。守ってみせんと、沙月は凛と怨霊を見据えた。
「……しかし、どうしてここまで? 頼んだ俺が言うのも何だが、こんな場所まで」
『そうだナ! ずいぶんと空気が淀んでいるゾ!』
暁月の問いに、『赤羽』が愉快そうに答える。大地と赤羽、『ふたり』とも死に対しての嗅覚が鋭い。この場にある無数の死の気配は、異能を使わずともすぐに分かった。
「声が……? いや、お前、分かるのか? 此処がどういった場所か」
「まあ、一応。大なり小なり抱えているのは、何処でも誰でも同じ事だろうが」
この場のイレギュラーズや『彼ら』自身とて同じ事。叩けば埃も出ようが、突っ込んで探るのは後回しだ。
「僕が来た理由は……僕も双子ッスから! 他人事と思えないッス」
鹿ノ子は当然、といった風に答える。彼女の生まれは砂漠の地だが、もし豊穣に生まれていたら――そう考えると、首を突っ込まずにいられなかった。
「私も公には言えませんが、忌み子、だったらしいので……」
この地に生まれた『禍津日』禍津日 那美(p3p008759)にとってはまったくの自分事である。双子に生まれたというだけで、精霊種の彼女でさえ忌まれ疎まれ、罪咎穢れをすべて負わされ。カムイグラではよくある事だが、暁月は改めて腹立たしく思う。
「雁首揃えて、ぞろぞろと!」
『特異運命座標』篠崎 升麻(p3p008630)が大きく踏み込み、本殿にすり抜けようとした餓鬼に向けて掌を打ち込む。少し変わり種ではあるが、彼女もまた双子。もし母国に忌み子の習慣があったら、恐らく己は存在できず――姉にも禍が及んだだろう。
抑えきれない幽鬼の群れが本殿の方向、升麻の元へと向かってくる。
「多勢に無勢か。いいぜ! 纏めてぶっ飛ばしてやらぁ!」
「その、有り難いが、あまり生き急ぐな……!」
前のめりが過ぎる升麻のもとに、暁月と『見たな?』コスモ・フォルトゥナ(p3p008396)がすかさず援護に入る。
「囮にするようで申し訳ございません、暁月様。よろしくお願い致しします」
何某かの神の力を降ろしたコスモは、ふわりと浮かぶように手近な木の上に立ち、不可視の神の手で一体の餓鬼を握り潰した。
「助かったぜ、コスモ! ……僕とて死にてぇ訳じゃねえ。逆だ」
「死地に近づくほどに輝く生もある、って事か」
「そんな感じだ! 多分!」
黄泉に限りなく近づいたが故か。修羅場を潜った者特有の空気を、暁月はそれとなく感じ取った。
異世界の冥府より来たる『猫神様の気まぐれ』バスティス・ナイア(p3p008666)がこの地に抱くのは、懐かしさに似た感情。詳しい事は分からないが、この世ならざる山、というのはあながち嘘ではないかも知れない。
ミズチの穢れた水が毒となって生者たちを襲うが、穢れを寄せ付けないコスモと、そも穢れより生まれた那美にとってはただの水。しかし、威力自体は相応だ。
「支援は任せて!」
バスティスがすかさず癒しを送り、一手で体勢を立て直す。
「ぶはははっ、防衛戦ってわけだ」
ここまで、イレギュラーズ達の初撃が上手く入ったのは『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)の警戒の賜物。
ゴリョウ本人は分厚い鎧と聖域を纏い、万全の態勢で最前線へ進み出る。本殿から絶えず響く祝詞を背に、怨霊の群れを誘い、待ち構えた。
「さぁ、喧嘩しようぜ!存分になぁ!」
●鬼退治に祭り囃子を
「戦争は数って言うしな。まずは、テメェ等を速攻で潰すぜ!」
升麻が餓鬼を掌で打つのと同時、体内で気を練り上げ流し込む。死霊だろうが何だろうが、カタチあるものを内側から破壊する、『組み立て』と真逆の技術だ。
「暁月さんの様な方が居てくれたからこそ、生きられる命があります」
那美と暁月は共に忌み子だが、歩んできた道はだいぶ違う。暁月が歩んできたその道に、那美は思いを馳せて言った。
「なに、俺は大した事ぁしてない。『おやっさん』に『おっちゃん』に、この村の……たまたまのご縁あっての事だ」
何事も縁故。どれかひとつでも欠けていれば、今の己は無かったと暁月は返す。勿論、その縁の中には那美との出会いも含まれる。
「それでも……ありがとうございます」
数えきれないほどの虐げられた者たちに代わって、今、この場を護ろうと。災禍の化身は前を向き。
「――私も頑張りましょう」
ぬるり、ずるりと。那美の周りの空気が赤く歪んで、渦巻いて。彼女自身も赤黒く捻じれ爛れて、本来の異形、禍つ神の如き姿となる。
常人ならば正視に堪えない姿だが、この場の仲間や、暁月も含め誰一人恐れる者が無く、那美の方が戸惑うほど。
「あ、あの……この姿……」
「全然怖くないよー? 何ならあたしも、本当はね……」
あっけらかんと返すバスティス。何しろ彼女も永遠の死者、本来の姿はリビングデッド。
「……なるほど」
「那美はいい子っぽいし。猫神様はお見通しだよ」
だから、隠れる必要なんて何処にも無い。バスティス以外も含めた、仲間たちの総意である。
「あ、あの。ありがとうございますっ」
優しくされるのは慣れないが、その想いには答えなければ。
「さあさ、我は禍津日…災厄を齎すものなるぞ」
那美の打ち鳴らす弓が怨霊のそれをも凌駕する呪いとなって、蔓延る穢れを大いに貫いた。
「ところで暁月! 儀式ってなんだ? 祭りかな、祭りなんだな?」
「まあ、儀式には祭りが付き物だし……うんまあ、大体合ってる」
「理解した! 楽しいことを邪魔する奴はぶっ飛ばすぜ!」
緋色の翼を大きく広げ、縦横無尽に飛び回り、赤鬼を沈めんと空より迫るカイト。
彼が赤鬼と打ち合う傍ら、腹を空かせた餓鬼の群れがわらわらと集まりその動きを阻む。お腰に提げた美味しい焼き鳥、ひとつわたしにくださいな。或いは、持ち主もろとも喰らうべく、か。
「お、おい!? 俺を食っても美味しくないぞッ!?」
「ぶははっ、焼き鳥はともかくカイトは食わせねぇぞ!」
群れる餓鬼とカイトの間に、ゴリョウが強引に割って入る。足止めを喰らった餓鬼たちが、ゴリョウに次々と牙を剥いた。
「問題ねぇ! 耐える凌ぐは専門分野ってやつよ!」
「……豚の兄さん、あれか! この前の夏生で、俺らの同胞が世話になった……」
鹿ノ子、升麻、大地、ゴリョウの四名は先日の大祓に参加しており、暁月も噂を耳にした。一見悪そうな獣憑きが、新兵を親身に指導したとか。
「ああ、んな事もあったなぁ! ……さて、暁月! 俺一人じゃあちとキツいから、ここは一緒に頼むぜ!」
「了解だ!」
二体のミズチもがゴリョウに迫り、そのうち一体をがっちりと抑える。もう一体の方は、暁月が引き受けた。
「助かるぜ!」
壁となって敵を引き受け、攻撃手が全力で動けるよう場を整える。ふたりの役割と戦い方は、ほぼ同じだ。
「こっから先を通りたきゃあ……」
「俺たちを沈めてから行くこった!」
『……沈められれば、の話だがナ!』
『赤羽』がミズチを取り囲むように、鮮やかな花をひらりと咲かせる。気力をも奪い去る儚い絶望の花は、霊的なミズチに堪えたようだ。毒の身体が震え波打つ。
「ボクも行くッスー!」
鹿ノ子の愛刀、黒蝶での斬撃は一撃必殺。カイト背後の餓鬼を葬った。
後顧の憂いを断ったカイトは少しだけ後ろに飛んでから、爆発的な加速を伴って赤鬼に迫り、速力を乗せて思い切り貫く。辺りに広がり舞い上がる緋色の羽根が、赤鬼を惑わせた。
「うーっし! 上がってきたぜ!」
残像さえも伴って飛び回り、赤鬼の金棒を往なし続ける。
「捕まえられるもんなら捕まえてみろ!」
捕まりっこないけどな、と調子づくも、後方や他所からの支援は手厚い。勢いがある時は、波に乗るのもまた肝要だ。
混戦で取り零した餓鬼が一体、本殿へ向かっている。暁月とゴリョウはミズチ相手で手一杯の様子。百合子が本殿の方を振り返ってから、瞬きほどの間に。
「――吾の足の方が、少しばかり早かった様であるなぁ!」
彼我の距離など無かったかのように、餓鬼の前に立っていた。
「タイマンだ! 存分に打ち合おうぞ!」
立ち姿は芍薬、歩く様は百合のよう、放つ打撃は鳳仙花。
「暁月殿! そちらは大丈夫か!」
「問題ない! 丈夫が取り柄だからな」
バスティスの癒しも届く今なら、耐えるのみなら遅れは取らぬと。餓鬼の残りに赤鬼とミズチ、魑魅魍魎は休みなく迫る。
「穢れより来る妖怪を真正面からちぎっては投げよ、とは絵巻物のようであるな!」
「同感です。時に、事実は絵巻物より――かも知れませんね」
さらなる援護に進み出た沙月。緩急を付けた殺しの技術をもって、無拍子からの流れるような踏み込み。まず一打、返す手でもう一打。死者をも殺す殺しの技術だ。
「ほほう! やるではないか! 相変わらず、殺気が無いとは恐ろしい事よ!」
「百合子さんも。以前打ち合った時よりもずっと――お見事です」
優雅に強く、美しく。近いタイプの『美少女』ふたりが、互いの拳闘を称え合う。返り血で汚れてなお清らかに、されど歩む修羅の道。般若か花か、どちらも女の顔である。
「ふふ。吾どもを頼ったのはのは正解であった! と思っていただかねばな」
「そういうこった! ブチ抜くぜ!」
升麻の左腕が餓鬼を砕く。彼女は向こう見ずに見えて、なるほど戦場をよく見渡している。敵すらも盾に利用しており、多数の餓鬼を相手取る中でも、赤鬼や水蛇への警戒も決して怠らない。
(ゴリョウさん達の状況が、ちょっと悪そうですね)
その中で最も状況をよく見ていたコスモが、ゴリョウと暁月の不利を察して『手を差し伸べる』。概念の手は何処までも届き、横槍を入れんとした餓鬼を遮った。
「大丈夫? 今治すよー!」
間髪入れずに届くバスティスの歌が、傾いた戦況を五分へと戻す。
(それにしても、嫌な気配が妙に濃いなぁ……ちょーっとキナ臭さ感じるね)
この場の穢れは多いだけでなく、溜まり方が不自然に思える。何もありませんようにと、冥府の猫は祈りを込めた。
●黄泉返しの雨
(か、掠っただけでもかなり痛ぇが!)
赤鬼の攻撃は見た目通り苛烈。手にした金棒の射程は長く、ひと振りする度周囲の木ごと薙ぎ壊される。もし好き勝手に動かれたらば、これ一体だけでも被害は甚大。赤鬼も隙あらば本殿に向かわんとするが、機動力はカイトが勝る。
「逃がさねぇぞ?」
道を阻む餓鬼ごと巻き込んで、自身の可能性をも燃やしながら放つ爆炎、爆翼。自身を更なる不利へと追い込む一撃だが、ここで引いたら男が廃る。
「猛禽の執念、舐めんなよ!」
再び、赤鬼はカイト目掛けて棍棒を振り下ろした。
餓鬼の多くを倒したところで、ミズチの毒が本格的に牙を剥く。。
ミズチと相対するゴリョウの防御技術は非常に高く、緑の護りは猛毒を弾く。それでも、水の身体が絡みつけば思うように身動きが取れず、仲間の多くは毒の耐性を持たない。じわじわと蝕み続ける穢れの水は、時間が経つほど響いてくる。
「……まだまだぁ!」
逆境にきて、ゴリョウはますます力を漲らせる。彼がこのミズチを止めていなければ、穢れた水は後方で一心に治療を行うバスティスに及び、大きな被害が出ていただろう。
同じく後方より、コスモが片方のミズチを指差す。不可視の神威に穢れた水は大いに爆ぜて、無害な水に変じて地に落ちた。
「やってくれるぜ、コスモさんよ!」
「討ち漏らすなと申しつけられております、ので」
コスモがぺこりと頭を下げる。全身全霊をもって術を放てるのは、前線の盾があってこそ。
「ああ、いいねぇ――僕もアガってきた!」
逆境で輝くゴリョウの姿と強敵打倒の報せに、升麻の闘志もますます燃え上がる。しかし彼女も満身創痍、毒も回っていよいよ限界か――
「いや、信じて賭けてくれた奴が居るんだ! そう簡単にくたばるかっての!」
運命を捻じ伏せ放つ災厄の一撃が、残ったミズチの生命力を奪う。
「生憎。僕はここからが本番でね……! 粘ってやるとも!」
「無理はだめだよーっ」
バスティスが太陽神の威光を掲げ、仲間が受けた毒や出血、あらゆる穢れを照らし焼き尽くす。これで升麻も、傷以外は元通りだ。
「『腐っても』女神だもん。雑霊風情には負けないよっ」
「……これなら、全力で打ち込めそうですね」
ミズチの呪詛が抜け、万全となった沙月が予備動作なしにすっと踏み込む。夢か幻か、そんな一瞬の出来事だった。舞うような美しい動作は、ミズチをも惑わせた。
高度な技ゆえに反動も大きく、蓄積した傷や疲労も小さくはないが、それら全ては覚悟の上。死地に踏み込まずして、殺しの技は完成しない。
更なる追撃。頭部に喉。複数の急所を一突きに。百合子の真骨頂が、残ったミズチを追い詰める。
「――喚くな、これで終いぞ」
三つ目の急所へ放つ一打をもって風雅点睛とし、瞬天の絶技がここに成る。
大地とバスティス、鹿ノ子は暁月の状態に気を配るが、思ったよりも余裕がある。早期に数の有利を得た事と分厚い支援が功を奏したか。イレギュラーズ達は、ここで攻め切る事にした。
しかし、長らくカイトと打ち合っていた赤鬼はいまだ健在。無数の刺し傷を追ってなお、その勢いは止まらない。
「あれだけ打たれて……正真正銘の『鬼』ってやつだな」
『祓ってやろうゼ!』
大地が邪悪を祓う神気を放ち、光と共に百合子が迫る。
指先でつい、と軽く触れただけ。ただそれだけで、赤鬼が大きくよろめいた。目に見えるほど大量の気、破壊の力を、一瞬にして流し込んだのだ。
「確かに歯応えはある、が。戦士ではないな」
異界の戦闘種族、百合派が一つ。白百合清楚殺戮拳。雑兵相手に負ける道理なし。
「――雪の型『雪上断火』!」
機を伺っていた鹿ノ子が更に追い打ちをかける。何度も、何度も。その刀傷は、燃え滾る赤鬼の身体をしんしんと冷やす。百合子が送り込んだ気と鹿ノ子の太刀が共鳴し、体力までをも大きく奪う。如何ほどの喪失感に襲われたのか、鬼が情けない悲鳴を上げた。
(まだだ、まだ油断はできねぇ)
赤鬼はすぐに体勢を立て直し、可能性を砕いたばかりのカイトに迫る。
(どれで来るか……?)
これまで見せた攻撃は、いずれも痛打。油断をしてもしなくても、一撃当たれば持っていかれる。その手前。
「――見えました!」
赤鬼の怒号がわんわんと反響する中、沙月が鬼の予備動作、特有の癖に気づいた。こと爆炎を纏う前、決まってこの怒号を上げる。となれば、次に来るのは――
「カイトさん、炎が来ます!」
「うおっ!?」
沙月の声を受けて、カイトがひらりと横に飛ぶ。炎を纏った金棒は、カイトが立っていた場所を焼きながら大きく抉った。どの手で来るかさえ分かれば、避けられる確率は格段に上がる。
「あ、ありがとな沙月! 助かったぜ!」
「いえ。ご無理はなさらぬよう。気を引き締めて参りましょう」
赤鬼の一撃はなおも痛いが、バスティスが直ちに癒して立て直す。
「ちょ、ちょっと疲れてきたかもー……」
戦線を支え続けた広域の癒しは、冥府より送られる力をもってしても術者の負担が大きい。
「大丈夫、ですか?」
気付いたコスモが直ちに力を分け与え、バスティスに魔力が巡って来る。
「ありがとう! 皆、もうちょっとだよ! 多分!」
頑張ろう、と。世界そのものからの声援に、冥府の猫も声援で返した。
「……っ!」
バスティスからの癒しで持たせていた升麻だったが、いよいよ限界が訪れる。その前に一発くれてやろうと、残った力を左腕に込め、殴り抜け。赤鬼と差し違える形で、どさりと倒れ伏した。
「……どうだい、暁月。アンタの期待に応えられたか?」
「ああ。まったく、充分すぎる……ありがとう、升麻さん」
随分と粘ってくれた、あとは大丈夫。と。暁月も残った力を振り絞り、赤鬼と相対する。
「ここは、私も。畳みかけるべきです、ね」
コスモも前に進み出る。額の奥の第三の瞳、見てはいけない黒の聖杯が至近に赤鬼を捉えた。
「あとはお任せください」
那美が纏う禍が無数の弾丸となって一帯に降り注ぎ、残った怨霊たちを一気に濯ぐ。
死は穢れであり、那美は穢れ負わされし者。怨念返しのような、これもまた巡る因果か。
「ええ、ええ。我が死の一撃からは逃れようがありませんとも――」
怒涛の攻め立て。頑健を誇った赤鬼のすぐ目前に、避けられない死がいよいよ迫る。
「――これで、終わりだっ!」
幾度目か、蒼の三又をカイトが振るう。三叉から放たれる魔炎が、赤鬼の憤怒を弾いていよいよその心臓に迫る。
「効かねえよ! 焼き肉になるのはてめえだけだぜ!」
水竜の加護をも得た炎鷹の瞬撃が、いよいよ赤鬼を沈めきった。
●朧なる月の影
「怪我人さん、集まって。治療するよ」
周囲の怪我人を集め、バスティスが治療を施していく。怪我が癒えた僧兵がありがたや、と、猫神に手を合わせた。
「ねえねえ。おくむらの儀式、ってなあに? 知ってる?」
「うーん、俺も詳しくは知らないんだが……なんでもあの山には物凄い穢れがあって、奥村が大掛かりな儀式でそいつを祓い落とす、としか」
「俺たち仏道の人間とはモノの捉え方や作法がだいぶ違うようだが、その力は確かなんだ……俺らじゃあ、抑え込みさえ上手くいかなんだ」
「治してもらった礼にもなってねえな。すまんな、お猫さん」
「ううん。ありがとう」
僧兵たちの話から、おおよその雰囲気は掴めた。それにしてもやはり、濃厚な死の気配が気になる。異界とはいえ、一度冥府より戻った神の直観が不吉を囁き続けていた。
「暁月さん。我等「浄國一揆」にいらっしゃいませんか」
「一揆、とはまた穏やかじゃないが……」
つまりは世直し集団か。禍(けがれ)の化身たる那美が国を清める最先鋒に在るとは、なんという皮肉だろうか。
「ええ、我等はこの国の差別に対して真っ向から戦うモノ。勿論、無理強いはしませんが……いえ、何かあればいつでも私達をお呼びください。お力になりましょう」
「そいつは助かる。色々とすまないな」
「うむ! 金子は頂くが望みを叶えるのがローレットである!」
この稀人たちは暁月にとって、思った以上の希望となった。そういえば、家――寺の方に蓄えはあっただろうか。あのお人よしな『おっちゃん』に蓄えがあるかというと……
「何回かに分けて、でもいいか? 本当、何度も申し訳ないが……」
いつの間にやら祝詞が終わり、辺りは不気味なほど静かになっていた。
「……?」
今は風ひとつ吹かず、蒸し暑さが重く纏わりついてくる。そんな中で、ちらりと本殿を伺うカイト。
「うーん、何か嫌な感じ……?」
「カイトもか。俺も同感だ」
淀み渦巻くヒトの感情がを感じる。厄介なパズルめいたそれの解読を、ゴリョウが試みた。これは、少し時間がかかりそうだ。
「俺も。やはり気になるな」
大地が掌に花を咲かせる。死人を誘う魔性の花に誘われ、様々な思念が寄り集まる。先ほども地に還したが、子供の霊が多い。やはり時間を要しそうだが、多少の意思疎通は出来そうだ。
「暁月さんも、お疲れ様。……しかし奥村の人も、儀式の為とはいえ、外部に丸投げとは」
「仕方ねぇさ。奥村の人が頑張ってくれなかったら、今頃はもっと……」
『頑張ってこのザマとはナ! 一体どんな事を本殿でやってるんだカ』
今回の儀は公開されず、暁月の厄介先である寺の住職『おっちゃん』でさえ細部は知らされていないが、寺では手負えないという。
『しかしまァ、これだけ向こうも多所帯で来るってこたァ、そんなにここが欲しいのかねェ』
「うーむ……俺も来たばっかりだし非才の身でだが、『神社に何かある』のは、何となく分かる、って位か」
神社の周囲で状況を伺っていると、古びた鳥居の向こうからじゃりじゃりと足音が聞こえてくる。何奴かと、百合子と沙月が身構えた。
「お疲れ様です。……まさか、神使様方にお越し頂けるとは」
姿を現したのは、狩衣を纏った男。
「む? ……ああ! 貴殿が奥村の」
「左様でございます。宮司を務めております、伊久郎と申します。どうかお見知りおきを」
百合子と沙月に向けて、伊久郎はゆっくりと深く頭を下げる。
「伊久郎さん。早速で申し訳ございませんが、満月の儀式とはどのようなものですか? お伺いしても?」
宮司に直接聞けるなら都合が良い。閉ざされた儀式について、沙月が疑問を投げかけてみる。
「私には馴染みのない領域のお話ゆえ、興味がありまして。可能な範囲で教えて頂ければと」
「僕も気になるッス!」
鹿ノ子もひょいと顔を出す。
「では、お話を……」
その昔、ひとりの巫女が穢れ多き根ノ地に降り立ち、命を賭して穢れを清めた。禊を経て神そのものとなった山を護る為、始まりの巫女は子孫に命じて社を建てさせた――まずはこれが、奥村神社の成り立ちであり。
『結月の大祓』は、始まりの巫女が行った始まりの祓に倣い、霊力に優れた巫女を立てて行う儀式である。そのように、伊久郎は語った。
「なるほどっスー……あ、そうそう! 僕は海の向こうからきたッスけど、双子の片割れッス。僕のことも、忌み子として扱うッスか?」
「僕もちょっと気になるな。……僕の国だと、双子は片方がもう片方を『食っちまう』のが拙いとか何とか、昔は言われてたような、そうでないような……?」
双子である鹿ノ子と升麻にとっては他人事でなく、これを機にと身を乗り出す。
「忌み子の件、ですか。これはカムイグラの……此岸の巫女様方に由来するものでして、特に海向こうの方には、当てはまらないものと存じます。それぞれ、生まれた地の習慣などもありましょうが」
伊久郎はあくまでゆっくりと丁寧に返していくが、ゴリョウが見るに、肝心要の部分はどうにもはぐらかされているような気がする。何か力が働いているのか、感情もぼやけて読み取れない。
升麻やカイト、沙月自身を始めとして、戦闘で受けた傷も決して浅くなく。この場での深い詮索は難しそうだ。
「……さて。誠に申し訳ございませんが、儀式の続きがありますので……本日のところは、これにて失礼致します。落ち着きましたら改めて、歓迎をさせて頂ければと」
再び深く一礼をして。狩衣の裾を引き摺りながら、伊久郎は本殿へと戻って行った。
●半月の映し鏡に
いつものように、月葉は柔らかな布団の上で目を覚ます。
意識を失う前、一瞬だけ交わした誰かの視線が脳裏に焼き付いて離れない。徹底的に外界から遮断された社にあっても、外の喧騒は多少聞こえる。
いつも通り、降りてきた怨霊と村人が戦っているようだ。その中にやはり、見慣れない何かが存在している。十数ほどの、村人たちとは明らかに違う魂のかたち。
「……何だろう?」
やはりこの目で確かめたい。まだ思うように動かない身体を引き摺って、寝室から社の外へと向かう。小間使いの静止が幾度かあったが、気に留めない。
そこで再び、月葉とそれの『目が合った』。
「知的好奇心というものですが、なるほどコレは」
月葉が見たものは、額に第三の目を持つ神人が行使する見えない第三の眼の権能(ギフト)。
『――悲願まで――半月――』
『――いよいよですわ。わたくし達の代で――』
『それにしても――私の身代わりをしてくれる子が――』
『――なんという僥倖――』
「……何となく見た感じ、でしたが……あの本殿では、良からぬコトが起こっているようです、ね」
「コスモも見えたか。俺も同感だ」
ゴリョウが探った感情の渦と、大地が集めた怨霊の断片が、少し纏まった形を得てくる。
「何か分かったのか? ……いやすまん、俺はそういう方面はさっぱりで」
今、この内容を暁月に伝えるべきか。大地は少し迷い、コスモも首を傾げる。
得られた情報を纏めて出した、大まかな結論はこうだ。
――――この儀式は間違っている。
定期的に祓っていると聞いてはいるが、この儀式はむしろ穢れを集めてはいないか。
怨霊たちが目指していたのは、やはり奥村の本殿。更に言うと、儀式の中心に据えられた巫女らしい。彼女に吸い寄せられるかのように、彼らは山から這い出したのだ。
加えて、コスモの視た不穏な会話の断片。これはある程度、突っ込んで調べた方が良いかも知れない。大地が思案していると、小さな気配に感づいた。
少し皺が寄った千早を纏う鬼の少女が、鳥居越しにこちらを伺っていた。年の頃は十代半ばか。
一瞬吹き抜けた温い風が、からからと辺りの風車を回す。
少女の長い黒髪も風に吹かれて、その顔かたちが露わになる。
「……!!」
少女の顔を見た暁月が息を詰まらせる。視線の先の少女、月葉も同様に息を呑む。
映し鏡とまではいかないが、男女の違いを差し引いても、赤の他人にしてはあまりに似過ぎたふたりの姿。そして何よりも、お互いの魂が痛烈に訴えている。
鳥居を隔てた先に居るのは、魂を分けた双子であると。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
あとがき
ご参加、誠にありがとうございました!
背景部分にもいろいろアプローチかけてくださって、ありがとうございます。
皆さんの行動を踏まえて続きのシナリオを作りますので、それまで少々お待ちください。
それにしても、EXAとMアタは強いですね……! ギャンギャン回っておりました。
ちょっと足かけ長くなりますが、お付き合いいただけましたら幸いです。
GMコメント
カムイグラ好き。という訳で、ちょっと趣味に走ったのをひとつ……
後におかわりもう一本で、前後編になります(片方だけでもOKな感じです)
・・・・・・・・
●目標
・下記の怨霊・妖怪の全滅
・かつ、奥村本殿の邪魔をさせない(怨霊をあまり向かわせない)こと
以上の2点が揃って成功です。暁月の生死は条件に含みません。
●ロケーションなど
都から遠く離れた根ノ国山のふもとです。
時刻は昼で場所は広く、戦闘に支障が出る要素はありません。
●今回のエネミー
根ノ山から漏れ出してきた妖怪・怨霊たちです。
〇赤鬼大将×1
憤怒の化身と思われる大将格です。非常にタフで力も強いです。
・金剛棒:物近列or物中単/やや大ダメージ
・怒号:物自域/小ダメージ【ショック・Mアタック50】
・爆砕:物至単/大ダメージ【業炎・邪道50】
〇小ミズチ×2
穢れた水の化身と思われる蛇姿の妖怪です。
・巻き込み:物近範/小ダメージ【麻痺】
・鉄砲水:神遠単/中ダメージ【窒息・スプラッシュ3】
・水毒:神中範/中ダメージ【猛毒・災厄】
〇幽餓鬼×10
飢えた子供のような姿の妖です。赤鬼かミズチに付いて回ります。
上記2体と比べるとだいぶ弱いですが、EXFがやや高いです。
・ひっつく:物近単/小ダメージ【泥沼】
・喰らう:物近単/中ダメージ【HP吸収・与ダメージの50%】
・石投げ:物遠単/小ダメージ【出血】
目の前の生者を我武者羅に襲いますが、すべてが本殿に向かっているようです。
奥村の本殿(護衛対象)は、山の入り口から直線距離で50mの場所にあります。
●NPC
〇暁月(友軍)
今回の依頼主、鬼人種の僧兵です。錫杖をぶん回す物理型。
耐久が高くそう簡単には死にませんが、限度はあります。
イレギュラーズに期待を寄せており、指示があればきっちり従います。
主なスキルは所持スキルは名乗り口上、煉気破戒掌、ハイ・ウォールなど。
〇奥村の人間&本殿(護衛対象)
月葉を中心に、家を上げての大祓で今現在も手いっぱいです。
最低限の戦力はありますが、敵が多く向かってしまうと準備が
中断されてしまい、満月の儀式に影響する恐れがある、との事です。
怨霊の討伐が無事に終われば、事後の接触も可能です。
●補足
OPの文章中、暁月の部分は生い立ち含め、最初からPC情報として利用可能です。
月葉と奥村の情報はメタ(PL)情報になりますので、その辺りに言及する場合は
誘導の仕方など、ある程度の工夫が必要になります。
●情報精度;A
実際に現場で戦った僧兵(暁月)からの情報で、とても正確なものです。
想定外の危険は絶対に起こりません。
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色々盛ってみてますが、要はシンプルに妖怪退治です。
個人的趣味突っ走ってますが、よろしければ一緒に遊んでください!
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