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シナリオ詳細

<Spooky Land>スプラッシュ・ビビットナイト

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●Hello,my dearest guests!
 終わらない夜の遊園地『Spooky Land』。
 チープで不気味なメロディが流れる園内には、笑顔と悲鳴が溢れている。
 カボチャの王『キング』がマスコットのこの遊園地は、年中がファントム・ナイト――そう、まるでハロウィンのような空気。
 此処で働くキャスト達は、狼男に吸血鬼、透明人間。ゴーストやモンスターがゲスト達をもてなしていて――

「……ひゃっ!」
 横を歩くゾンビに脅え、母親の手をぎゅっと握った少年。すると、どこからか現れたキングは、頭上の冠を輝かせ楽し気に声を弾ませる。
「やあ、いらっしゃい。怖がらないで大丈夫さ、キャストは皆ゲストが大好きだから」
「本当に?」
「ああ」
 不安気な声で聞き返す少年の頭を優しく撫でると、少年は緊張を緩ませた。
 キングはぽっかりと開いた口の弧をにぃ、と深くして優しく続ける。
「『食べてしまいたい程だ』なんて悪魔も居るけれど、お客様のことを襲わないのはキャストの条件。だから安心して、終わらない夜を楽しんでいくといい」
「……え」
 聞き捨てならない言葉に聞き返そうとするも、キングはひらりと親子の後ろに回り込み、ぽんと背中を一押し。
「それじゃあ――行ってらっしゃい!」
 後ろを振り返れば、キングは大きくこちらに手を振り――その手を胸元に当てると、深い礼をしていたのだった。

●Spooky Summer!!
「……うひゃあ!」
『おいコラジャック、男が情けねぇ声出すんじゃねぇ!』
 賑やかな園内を、イレギュラーズと共に歩く小柄な一つ目のモンスター。一見するとキャスだが、れっきとした境界案内人の彼、ジャック・ディミトリは被った帽子からの声に「うう」と声を零す。
「だってグルート、あっちにゴーストが……」
 グルートと呼ばれた帽子はといえば、ケケッとジャックを笑い飛ばす。
『お前傑作だったぞ、遊園地で遊ぶって話に自分も! って着いて行った先がココだったって解った瞬間の顔』
 気弱なこの案内人は、以前この遊園地を怖いからと避けたのをすっかり忘れていたらしい。とはいえ怖がりながらも、輝くネオンの園内を大きな一つ目できょろきょろと眺めている。
「……あ、ここ。夏限定のおすすめだって」
 ジャックが足を止め指差した先は、色とりどりのウィル・オ・ウィスプが光るナイトプール。
 いくつかのプールと、奥にはスライダーもあるようで楽しげな声と――それに混じって、時々絶叫が聞こえる。
「水着とかは借りられるみたい、なのでゆっくり――」
『っしゃあジャック、行くぞ! スライダー百回だ!』
「うえ、ちょ、オイラ泳げないし嫌だよぉー!!」
 グルートの魔力に引っ張られ消えていくジャックを見送り――さて、とイレギュラーズも歩き出した。

NMコメント

 夏は外で肉とビールが恋しくなる、飯酒盃おさけです。

●目標
 ナイトプールを楽しむ。

●舞台
 明けない夜の、ポップで不気味な遊園地『Spooky Land』の夏限定ナイトプール。
 煌びやかなネオンと、色とりどりのウィル・オ・ウィスプが水面を照らしています。

●出来ること
 水着、その他浮き輪やフロート等は貸出自由。
 イラストがある方はその旨記載して頂ければ、その水着で遊んでいるように描写します。
 ない方は指定でもお任せでも。

・流れるプール
 ゆったり流れています。
 時々プールサイドから悪戯好きのゴーストが水鉄砲で狙ってくるかも?

・波のプール
 さざ波~荒波の繰り返し。
 波打ち際では陽気なスケルトン海賊が刀(ビニール)で一戦交えたがっています。

・スライダー
 ファニーコースは浮き輪で一人or二人乗り、程よいスリル。
 ナイトメアコースは身一つ。スタート地点の床が外れほぼ直角に落下します。
 
・プールサイド
 デッキチェアが並んでいます。
 バーではトロピカルなジュースからカクテル、目玉ゼリーや注射器でリキュールを注ぐような、ちょっと不気味なドリンクも。
 
 その他、ありそうなものはあります。
 モンスターお姉さんのナンパに挑戦するのもよし!
 恋人達が開放的になる夜ですが、お色気要素は全年齢の範囲内になりますのでご注意を!

●NPC
・ジャック・ディミトリ
 境界案内人。臆病な一つ目モンスターのジャックと、魔法の帽子のグルートのコンビです。
 泳げませんが浮き輪片手にその辺をふらついています。
 お声がけ頂ければ登場します。

●ラリーシナリオについて
・このラリーシナリオは一章完結です。
 8/16を目安に件数問わずそれまでに頂いたプレイングで完結予定ですが、完結までは積極的に執筆していきますのでお気軽にどうぞ。

・数人まとめての描写になる可能性があります。
 ソロ希望の方はソロと、同行者がいる方は【】やID等記載してください。

 それでは、ご参加お待ちしております。

  • <Spooky Land>スプラッシュ・ビビットナイト完了
  • NM名飯酒盃おさけ
  • 種別ラリー(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年08月24日 20時45分
  • 章数1章
  • 総採用数10人
  • 参加費50RC

第1章

第1章 第1節

コレット・ロンバルド(p3p001192)
破竜巨神

 モンスターに人間、多様な種族がぷかぷかと漂っていく流れるプール。
 調子外れな三拍子のワルツをBGMに、コレット・ロンバルド(p3p001192)はフロートに寝転がり流れに身を任せる。
 白と青でまとまったマリンルックの水着は、ボーダーのボトムがシンプルな分胸元のフリルとリボンの愛らしさが際立っている。
「これが流れるプール……結構いいかも」
 表情には強く出さないものの、コレットはこの穏やかな一時を気に入っているようで。既に何周目かに突入していた。
「……っと」
 垂直に進んでいたはずが、身体が斜めに傾いていたことに気付きコレットは身体を起こす。邪魔にならないようにと端を進んでいたはずが、気付けばプールの中央に来てしまっていたようだ。
「よっと……これでいいわね」
 人混みを縫うように手で水を漕ぎ、端へと戻る。そうしてもう一度寝転がろうとした瞬間。
「――ッ」
「ひゃひゃっ! やーい引っかかった!」
 衝撃を受けた顔を拭えば、どうやらそれはただの水のようで。視線の先では声の主であるゴーストがケタケタと水鉄砲を構え笑っていた。
「イヒヒ、ビックリしただろ!」
「……」
「イヒ……び、ビックリ……」
「……」
 濡れた髪をかき上げ、コレットはただじっとりとゴーストを見つめる。
 そのままゴーストの横を通過していくコレットに――
「す、スイマセンでした!!」
 耐えきれなくなったゴーストは、平謝りをするしかないのだった。

成否

成功


第1章 第2節

ヴァイオレット・ホロウウォーカー(p3p007470)
咲き誇る想いは
カルウェット コーラス(p3p008549)
旅の果てに、銀の盾

「んと……ボク、決めた、これ」
 貸出用の遊具が並ぶ店先で、『新たな可能性』カルウェット コーラス(p3p008549)はほら、と隣の『影を歩くもの』ヴァイオレット・ホロウウォーカー(p3p007470)に両手で掴んだ浮き輪を見せる。
「まんまる、穴。そっくりは、ドーナツ」
「浮き輪、ですね。ふふ、よくお似合いでございますよ」
 柔らかなピンクの髪を角の下でゆるくお団子に纏めたカルウェットは、その髪色と同じピンクを基調に、リボンとフリルで飾られたタンクトップとショートパンツの水着を纏い――カルウェットの大好きな、甘いドーナツ柄の浮き輪を手にしていた。
「やれやれ……カルウェット様が興味あると思って来てみれば、ナイトプールと来ましたか」
 愛らしい、あたたかい。そんな言葉が似合うカルウェットと真反対に、妖しく、冷たい空気を纏いヴァイオレットは小さく呟く。普段は雑踏と太陽から遠ざかった路地裏の一角に潜んでおり、水遊びに興じるなど滅多にないわけで。
 黒と紫の水着は、艶やかに光る彼女の肌を照らし―――羽織った長い上着を揺らして、アラベスク柄のフロートを手に取る。
「ヴァイオレット、いや? 夜、ヴァイオレットイメージ、思って。いつもお世話になる、してるし」
「……いえ、大丈夫です。こういう場はうだるような夏には有難いものですから」
 不安気な目線を向けるカルウェットに返せば「よかった」と声が返る。
(プール……たくさんの水は、初めて、だけど。だからこそ、一緒、したら楽しいはず)
 気分転換にと誘ったカルウェット自身も、初めての経験には少しの緊張と楽しみとが入り混じっていた。

「わ、わ、ぷかぷか。動く、わわ!?」
 意を決して流れるプールへと入ったカルウェットは、水流に目を丸くする。
 両手でぎゅっと浮き輪を抱え込み流されるのを、ヴァイオレットはフロートの上で穏やかに見守っていた。
(カルウェット様が楽しんでいるようで何よりでございますね……おや、少し離れて――)
「隙あり!」
「わ、え、あ――!」
 ばしゃん、と何かが落ちる音。顔に飛んだ水飛沫をカルウェットが拭ってみれば――そこに居たはずのヴァイオレットの姿はなく、その帽子が水に浮かんでいるではないか。
「大変、ヴァイオレット、助ける。しなきゃ」
 流れに逆らい必死に足を動かせば、帽子の下からはびしょ濡れのヴァイオレットがのそりと上がってきて――恨めし気にゴーストを見るその顔に、カルウェットの心は躍る。
(……ずぶ濡れのヴァイオレット、ちょっと、面白い)
「……プールは初めてなのです、勝手知らぬは仕方ないでしょう?」
 視線を逸らし唇を尖らせるヴァイオレットの顔には、不本意さが滲み出ていて――はい、と浮き輪に捕まるよう招いて、カルウェットは笑う。
「ひっひー、落ちてきたら、仕方ないぞ」
 一緒に水を楽しもうと誘えば――ヴァイオレットももう、観念するしかなかった。

成否

成功


第1章 第3節

サイズ(p3p000319)
妖精■■として
フゥ・リン(p3p008407)
戦う行商人

「お、酒が飲めるって聞いてきたのに、お化けだらけなんて聞いてないヨ!?」
 プールサイドに『戦う行商人』フゥ・リン(p3p008407)の嘆きが響く。お酒がタダで飲める、そう聞いて喜び勇んでやってきたというのに――辺りを囲むのはゴーストばかりで、震えて右の手足が同時に出る始末。
(でも、飲まずに帰るわけにもいかないし……イザ!)
ビタミンカラーの水着に身を包み、飲んで体が冷えても大丈夫なようにと上に真白のTシャツを羽織ったリンは、バーカウンターの椅子にひょいと腰を下ろす。ドリンクを作るマスターはこちらに背を向け仕事に勤しんでおり、リンはその背へ注文を告げる。
「マスターサン、とりあえず一杯頂戴ネ!」
「ハァイ、ビールでいいかい?」
「はいネ、キンキンのをたの――ギャアアア!」
 響くリンの叫び声。振り向いたマスターは、口元が赤く濡れた吸血鬼で――乙女にあるまじき声を上げてしまったものの、落ち着いて口にしたビールは中々イケる味。ならば、叫んだ喉を潤す為にももっと飲むしかなく――リンはそれ、とマスターの手元の瓶を指す。
「その赤いお酒も貰えるカナ?」
 差し出された真っ赤なカクテルを飲めば、どろりと粘度の高い液体が喉に落ち――トマトだろうか、この酸味は癖になる。
(ちょっと血みたいな色は気になるケド……きっと気のせいヨー!)
 盃が進んだリンはといえば、ふにゃりと楽しげに微笑んで。
「マスターサン、これだけ美味しいカクテルが作れるなら、もっと皆にも飲んでもらうべきネ!」
 すっくと立ち上がりグラスの底の一滴を飲み干し、シャツの裾を羽織るとずんずんとカウンターの中へと歩を進める。
「私が手伝ってあげるヨ! いらっしゃいマセ、ご注文をドウゾ!」
 燃えるリンの瞳は、辺りへの怖さなど忘れ。
 明けぬ夜のこの空間で、一人の臨時店員が生まれ――その日、このバーが記録的な売上を見せたのは、また別の話。

(……賑やかだな)
『妖精の守り手』サイズ(p3p000319)は、楽しげに声が上がるバーを一瞥するとデッキチェアにごろりと寝転ぶ。
 泳げるわけでもなく、別段賑やかな空間が好きなわけでもなく――何の為にここに来たかといえば、それは休息を取る為で。何せここ最近は、サイズにとって心労が嵩む――妖精の平穏を脅かす出来事が多かった。
「……痛」
 パーカーの下の素肌には、まだ癒えぬ傷も深く。だからこそ、今この瞬間だけは存分に身を休めると決めたのだ。
「……はぁ」
 ごろりと寝返りを打ち、サイドテーブルに置いたジュースを一口。酸味の強いはずのオレンジは、今のサイズには甘みしか感じず――これが疲労か、と口元が歪む。
 覗きこむゴースト達にも無視を決め込み、今は一人にしてほしいと跳ね除けて。
(俺は、俺は――やらなければいけないんだ)
 喧騒を耳に、目を閉じたサイズは来るべき戦いへとただ身を休めていた。

成否

成功


第1章 第4節

イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)
キラキラを守って
マルシエラ=クラウジェ(p3p008792)
神威を超えし神使

「こんにちは……こんばんは、かな?」
 ふわり、闇に浮かぶウィル・オ・ウィスプに『おもちゃのお医者さん』イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)が挨拶を。
 この光は何だろうかと近付けば、淡い光達は今宵のゲストを歓迎しようと彼を優しく出迎える。
 イーハトーヴの選んだ水着は、この終わらない遊園地では決して見られない空のオレンジ色。散らばる白の水玉模様は、まるで彼ら灯火達がくっついてしまったようで。
「初めてのプール、わくわくしちゃうなぁ」
 手の中に大事に抱えたうさぎ――大事な友人、オフィーリアにそっと目配せをすると、オフィーリアは『ないしょばなし』で自分も楽しみなのだと声を弾ませる。
 お揃いのオレンジ色の水着を着たオフィーリア(防水加工!)も、この夜を楽しむ気十分で。その姿にふふ、と頬を綻ばせたイーハトーヴの目は、一人立ちすくむ少年の姿を留める。
(あれ? あの子、どうしたんだろう?)
「むむ……」
 色鮮やかな幾何学模様のハーフパンツにオーバーサイズのパーカーを羽織り、きょろきょろと辺りを見渡す『神威を超えし神使』マルシエラ=クラウジェ(p3p008792)。
(どうしよう、何をすれば良いのかさっぱりわからないんだよ……)
 カムイグラ出身の彼にとっては、海は身近なものであれどプールというものは初めての体験。いざ、と更衣室を出てみたものの、人混みに心が挫けそうで――
「ねえ、そこの君!」
「わっ!?」
 突然声を掛けられ、マルシエラがそちらへ目をやれば――頭ひとつ高い位置で、目を丸くする男の顔。
「あっ、ごめんね、驚かせちゃって……えっと、きょろきょろしてたから、お友達と逸れちゃったのかなって思って」
 背丈こそマルシエラより随分と高いが、ごめんね、と謝る男――イーハトーヴは眉を下げ穏やかに笑っている。
「き、急に声を掛けたら驚くんだぞ! それに僕は逸れたわけじゃないんだぞ」
 口を尖らせるマルシエラに、イーハトーヴは「違うの?」と口にし――そうだ、とマルシエラの顔を覗き込む。
「あのね、実は俺、プールって初めてで。だから、君さえよければ、一緒に回ってくれたら嬉しいな」
「えっ!ホントに!? 一緒に回ってくれるの?」
 尖らせた口をぱっと開き、イーハトーヴを見上げるマルシエラの目にはもう不安の色はなく。
「うん、どうかな?」
「もちろん! ありがとなんだよ!」
 ――実は初めて来た場所だからちょっと戸惑ってたんだよ、とマルシエラが恥ずかし気に告白すれば、イーハトーヴも「俺も」と告げる。
「ふふ、そしたら俺達、初めて仲間だね……そうだ! 俺の名前はイーハトーヴ!」
「僕はマルシエラ、よろしくなんだよ!」
「うん、よろしくね、マルシエラ!」
 流れるプールに、波のプール。二人でスライダーに挑戦も捨て難い――けれど大丈夫、夜はまだまだ長いから。
 初めましての二人が仲良くなるには、きっと十分すぎる夜!

成否

成功


第1章 第5節

リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣

(うん、夜のプールは雰囲気が一風変わってワクワクするな……)
『白獅子剛剣』リゲル=アークライト(p3p000442)は、タオルで髪を拭いながら周囲の賑わいに目を細める。
「さて、ひと泳ぎもしたことだし……ん?」
 休憩をと白いパーカーを羽織りかけたリゲルの耳が、騒がしい声を拾う。
 そちらに目をやれば、プールの波打ち際で、骸骨同士が戦っている様子。
「店主、あれは?」
「ああ、このビニールの剣でしょっちゅうチャンバラ騒ぎさ。兄ちゃんも腕に自慢があるなら、遊んでやってくれ」
 肩を竦めた遊具屋の店主に、リゲルはそれは、と頷き――ビニールの剣を手に取ると、波打ち際へ駆け込む。
「うお!? なんだお前、やるのか!」
「いかにも、俺はリゲル=アークライト! いざ尋常に、勝負!」
 ケタケタと笑う海賊姿の骸骨へと剣を突き出し、波の打ちつけと同時に低い姿勢で飛び込む。
「うお、やるなお前!」
「そちらも。だが――踏み込みが甘い!」
 振り下ろされる刀を、軽い捻りで交わし一閃。
 バラバラと崩れ落ちる骸骨にぎょっとするが――すぐにその骨は元の形に戻り。
「おお、すごいな君!」
「お前だって! よしお前ら、全力でいくぞ!」
 あっという間に骸骨に囲まれるリゲルだが、異世界での楽しい手合わせに心を躍らせるばかり。
「よし、全員まとめて相手だ! 行くぞ!」
 そうして繰り広げられた大立ち回りは、その日の目玉イベントとなったとか――。

成否

成功


第1章 第6節

グレイシア=オルトバーン(p3p000111)
勇者と生きる魔王
ルアナ・テルフォード(p3p000291)
魔王と生きる勇者

「……ッ!?」
 突然肩へと柔らかい衝撃を受けた『知識の蒐集者』グレイシア=オルトバーン(p3p000111)。
 グレイシアが小さく息を吐き傍らを見れば、そこには今にも泣きそうな少年が震えていた。
「ご、ごめんなさい……」
 まだ幼い少年は、浮き輪に身体を通したままプールサイドを駆けていたようで。勢い余って衝突したその相手が壮年の紳士とくれば、少年が恐縮するのも当然の事。
 グレイシアはグラスをサイドテーブルに置くと、空いた手で少年の頭をぽん、と撫でる。
「怪我はないか?」
「うん」
「なら良い。ああ、ただし滑りやすいから走るのはこれきりにするのだぞ」
「はい!」
 今度は走らず去っていく少年の背を見送り、手元のグラスを手に取る。
「ルアナに誘われたから来たものの……どうしたものか」
 溜息を零すも、一先ず喉を潤すかとストローに指を掛けると――
「何でプールに来て寝てんのよ」
 そのグラスは、細くしなやかな指に奪い取られた。
「……ルアナ」
「それにしても今の貴方、随分と様になってたわよ? 流石『おじさま』ね」
 グラスを奪い取った犯人――『絶望を砕く者』ルアナ・テルフォード(p3p000291)は、隣のデッキチェアに腰掛けると、奪ったグラスで喉を潤す。
 おじさま、と慕う子供の姿ではなく――目の前のグレイシアを『魔王』であることを理解する女性の姿。
 それを横目に、通りがかるウェイターへと「同じものを」と口にする。
「戦闘とプールでは勝手が違うだろう。必要であれば泳ぐが……」
 それこそ子供でもない以上積極的に遊びまわる歳でもなく、水に入らねば耐えられないわけでもないこの夜。
「……私とじゃ遊ぶ気になれないって顔に書いてあるわよ?」
 グラスを持ったままの手でこちらを指し笑うルアナに、グレイシアは深い溜息をひとつ。
「……何故吾輩を誘った」
 見透かしているのならば、尚の事――困惑する姿を見て楽しむ趣味があるのか。
 不機嫌さを隠そうともしないグレイシアに、ルアナは「そうね」と前置きして。
「水着を見せたかったのが半分。……あと半分は『私にも分からない』」
「水着か……似合ってはいるが」
 飾り気のない水着を纏ってなお華やかなこの女は――敵ながら、美しいと思う。
(……しかし、半分とは)
 グレイシアの怪訝な目から逃げるように、ルアナはグラスへと目線を落とす。
 口から出かけた言葉――残りの半分は『単に貴方と話がしたかった』。
 けれどそんな言葉、言えるはずもない。
 いつかは殺す、その相手に。
「ありがとう、お世辞でも嬉しいわ」
「世辞ではないのだがな……まあいい」
 グレイシアが今度こそやってきたグラスを手に取る。
「ね、飲んだら少し歩きましょ? 散歩くらいはできるでしょう」
「そうだな……折角来たのだから、散歩くらいならば」
 それじゃ、とルアナの掲げたグラスにグレイシアも応えて――同じ味を喉へと流し込んだ。

成否

成功

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