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シナリオ詳細

迫る殺意! ゴブリンスレイヤーキラー!

完了

参加者 : 12 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ゴブリンたちの屈辱
「このままじゃあ、兄弟たちが浮かばれないんだゴブ……!」

 ゴブリンたちは、300匹もの軍勢でガシャイヒ村――今は期間限定でシャカラカ村となっている――に押し寄せ、見事に返り討ちにあった。
 この軍勢を率い、死力を尽くしたホブゴブリンチーフも斃れ、すべて返り討ちとなってしまった。
 自業自得と言えば、それまでである。
 ゴブリンという種族の邪悪な本能が村を襲撃に向かわせ、これを守ろうとした冒険者たちによって退治された。
 人間からすると、そこに一片の同情の余地はない悪行でしかない。
 だが、だからといって復讐を思わないわけはない。

「特に、あの外来種なんかよう……。同じゴブリンだっていうのに」


 憎しみというものは、時に理不尽である。
 理不尽だからこそ、暴力は時として振るう甲斐があるのだ。こちらの味わった屈辱を、理不尽として返してやるのである。

「だが、正面からじゃあ勝ち目がないゴブ。あんだけかかっていったのに、みんな返り討ちにあったんだゴブ」

 もう一匹のゴブリンが言う。
 15匹の群れも、100匹の群れも、300匹の群れまで動員したというのに結果としてみんなやられてしまった。
 群れを増やしても、同じことになろう。
 何より、数を減らされてしまい、あれ以上の戦力を整えるのは旺盛な繁殖力を持つゴブリンたちと言えど、しばらく立て直しの時を要する。
 何より、他の群れも立ち上がったが、同じ目に遭っているとも伝え聞いている。

「ちくしょう、このままやられっぱなしなのかゴブ!」

 くやしさに、ゴブリンたちは地団駄を踏んだ。
 ただでさえ、人間たちからは数だけのザコモンスター扱いされている。種族としての矜持をかけた戦いにも敗北したのだからなおさらだ。
 しかし、彼らには狡猾さがある。
 どんなに追い詰められ、どんなに卑屈になろうが手段を選ばずに目的を果たせる雑草のような精神力があるのだ。

「いいや、ヤツらにひと泡吹かせる方法があるゴブ」
「そりゃ、なんだゴブ?」
「ゴブリンを殺したものを殺す者……。暗殺者を雇うんだゴブ――」

●ゴブリンスレイヤーキラー!!
「皆さん! た、大変なのです!」

 ギルド・ローレットの『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は慌てふためいていた。
 ギルドのメンバーを脅かす、新たな情報が入ってきたのだ。

「く、くわしくはショウさんから聞いてほしのです!」

 情報を察知したのは、『黒猫の』ショウ(p3n000005)だった。
 ユリーカから振られたショウが、さっそく危機について説明をする。

「これまで、さんざんゴブリンどもとやりあってきたと思うが、ヤツら自分たちを追い詰めた者を始末するために暗殺者を雇ったらしい」

 ゴブリンを殺した者を殺す者――。
 すなわち、ゴブリンスレイヤーキラーである。

「俺が掴んだ情報だと、ゴブリンアサシン5匹と、ハーモニアの腕利き5名だそうだ」

 ハーモニアの中にも、金次第でゴブリンにつく者もいる。

「5人のハーモニアは、肌の色の黒いダークエルフってやつだ。混沌じゃ邪悪ってわけでもないんだが、今回の連中は裏仕事を生業としているヤツらだ。シェイドも使役して、姿隠しの魔法も使えるらしい。結構強敵だな」

 シェイドというのは、影の国の住人、冥界の亡霊とも言われる闇の精霊である。影と闇を使う精霊を引き連れているとなると、相当に厄介だ。
 敵の戦力は、計10名と精霊1体。
 決して多い数ではない。しかし、暗殺というのは心休まるものではない。
 決して正面からは来ないだろう。
 いつ仕掛けてくるかわからず、どこに潜んでいるかもわからない。
 先の戦いで活躍したイレギュラーズのメンバーも狙われるはずだ。

「連中は、これまでゴブリンを殺した俺たちの仲間を恨んでいる。逆恨みも甚だしいが、そういう話が通用するような連中じゃないからな。賞金もかかっているだろうし、いつ狙われてもおかしくはないし、ずっと気を張って暗殺に備えるってのも、穏やかに過ごせない。そこで――」

 本題は、ここからだった。
 ショウは、メンバーたちを見回した後に言った。

「こっちから暗殺者を誘い出す。ゴブリンから狙われる覚えのあるヤツは協力してくれ。狙われる囮役をやってもらう。狙ってきたのを連携して、協力して返り討ちにする……そういう作戦でいく」

 危険な作戦だが、暗殺計画を放置しておくよりはましなはず。
 逆に言えば、暗殺には現状そのくらいしか打てる手がないということだ。

「この作戦のために、女騎士レディーナさんも協力を申し出てくれました」

 ユリーカは、かのシャカラカ村(旧ガシャイヒ村)の戦いを陣頭指揮した女騎士の名を告げた。
 危険を承知で囮役を買って出てくれたのだという。
 この作戦、果たしてうまくいくだろうか?

GMコメント

■シナリオについて
 皆さん、こんちわ。解谷アキラです。
 今まで、ゴブリンをスレイするシナリオをたくさん出してきた自負があります。
 もちろん、ゴブリンたちもやられっぱなしではなく復讐の機会を狙っていました。
 その復讐計画である、ゴブリンスレイヤーキラーが発動したわけです。
 もはや、種族の復讐に対し、ダークエルフまで雇うというなりふり構わない手段に出ました。
 そこで、これを返り討ちにする作戦が講じられました。

・囮役について
 これまで、ゴブリンをたくさん倒してきたという方に是非とも務めてもらいたい役となります。多く倒していればいるほど、狙われやすいのです。
 危険ではあるものの、誘い出す効果は高くなります。もちろん、護衛や自身が発見できねば暗殺をされるリスクはありますので注意してください。
 囮役は、どこか一ヵ所に集まると暗殺者たちを一網打尽にできるでしょう。
 暗殺者たちをおびき出す場所の選定も重要となります。
 もちろん、囮だけではなく返り討ちにすることも望まれます。
 この作戦には、女騎士レディーナも協力してくれます。基本的に、イレギュラーズの皆さんに従います。
 どの場所で囮をするか、どのように誘い出すかの連携の取れたプレイングだと成功率も上がります。
 

・護衛役
 囮役を守る役目となります。
 ゴブリンをたくさん倒している場合は、兼任しても構いません。
 護衛役は、囮を暗殺から守り、返り討ちにすることが望まれます。
 ゴブリンに狙われている覚えがある場合でも、身を隠すなどすれば暗殺の脅威から逃れることもできますが、身を隠志たり潜んだりすると囮の役はできません。

・ダークエルフアサシン×5
 混沌だと邪悪な種族というわけではありませんが、こいつらはゴブリンや魔種からの依頼も受ける悪党です。
 姿隠しの魔法が使え、ステルスキル能力を備えています。
 武装は短剣や音がしない革鎧などですが、不意を打つ能力が高く、油断ならない強敵です。
 さらに、暗視もでき、闇を扱う精霊シェイドも使役しています。

・シェイド
 闇の精霊で、アンデッド属性も持っています。
 影や闇を扱うので、明かりのない夜に現れると危険な敵となります。
 しかし、昼に囮となっても仕掛けて来ない可能性が高く、夜間の明かりのない場合の対策が必要でしょう。
 1体のみのようですが、使役者を倒すと暴走もしくは退散するかもしれません。

・ゴブリンアサシン×5
 忍び足や隠れる能力はありますが、それほど能力は高くはないです。
 ただし、暗殺に差し向けられる刺客ですので、捨て石になるくらいの覚悟は決まっています。
 斥候や補助戦力として活動するものと思われます。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

●Danger!
 当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
 予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。

 事前情報は、以上となります。
 それではどーんといらしてくださいませ。

  • 迫る殺意! ゴブリンスレイヤーキラー!Lv:15以上完了
  • GM名解谷アキラ
  • 種別EX
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2020年08月22日 22時05分
  • 参加人数12/12人
  • 相談7日
  • 参加費150RC

参加者 : 12 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(12人)

キドー(p3p000244)
最期に映した男
ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)
天穹を翔ける銀狼
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
業壊掌
マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)
無限陣
シラス(p3p004421)
竜剣
天之空・ミーナ(p3p005003)
黒花の希望
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ
伊達 千尋(p3p007569)
Go To HeLL!
ゼファー(p3p007625)
律の風
リンディス=クァドラータ(p3p007979)
夜咲紡ぎ
長月・イナリ(p3p008096)
狐です
晋 飛(p3p008588)
倫理コード違反

リプレイ

●ゴブリン殺したちの宴
 その飲み屋は、昼間から騒がしかった。
 大通りに面した空き家を新しく店舗に改築したもので、新装開店の売出しによって多くの客を呼び込んでいた。

「アイツらの大将なんてデカいだけの能無しだぜ、俺の相手じゃなかったね」
「私は逃げるホブゴブリンチーフを狙撃し、こう言いました『戦場の死は、将にも平等です』とね」

 そんな中でも、盛大に酒盛りし、武勇伝を語り合っているテーブルがやはり目を引いた。

「あそこの席の連中、いやに景気が良いけどどういう人たちなんだい?」
「あれだよ、ガシャイヒ村……今は期間限定でシャカラカ村っていうんだっけ? そこに押し寄せたゴブリンたちを撃退した“ゴブリン殺し”の英雄たちさ!」
「へえ! じゃああれがゴブリンスレイヤーって名高いお方たちか!」

 その盛大な宴会の様子を訝しんでいた客たちが、彼らのことに思い当たったようだ。
 幾度となくゴブリンたちの襲撃を受ける不幸な村を、そのたびに守ったという英雄たちの存在は、さまざまな経緯で伝達され、広まっていた。
 害虫のごとく湧き出し、荒らし回るゴブリンは蛇蝎のように嫌われるも、その規模の小ささから見逃されがちで国も領主もわざわざ正規軍を派遣しないという。
 討伐は冒険者に頼りがちになるのだが、襲われる集落も貧しい農村が忠心となるため、報酬も期待できない。
 何より、ガラの悪い下手な冒険者を雇ったら、返って追っ払った恩を売られて居座られ、報酬をけちったばかりに村を焼かれる、なんて話も聞き及ぶほどだ。
 しかし、ゴブリンスレイヤーたちは違った。
 困窮した人々が払うなけなしの報酬と腹一杯の飯で依頼を引き受け、300匹もの大群すら撃退したという。

「じゃあ、あの眼鏡の背広ヤツが狙撃手とプランを提供した新田って人か!」
「向こう少年がシラスなのか? ゴブリンたちの親玉を一緒に仕留めたっていう……」

 ゴブリンを倒した者たち、ゴブリンスレイヤーたちの名声は周辺にも響き渡っていた。
 『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)とシラス(p3p004421)は、中でも300匹もの群れを率いたホブゴブリンチーフを仕留めたという英雄でである。

「そんなお方の武勇伝なら、聞いてみたいもんだねえ」
「じゃあ、ちょっと隣の席に移らせてもらおうかな?」

 そのにぎやかな卓の隣は、さいわいなことに空いていた。
 様子をうかがっていた二人は、酒と料理を持って席を移って耳をそばだてた。

「そこで、私はギフトを使って菱の実を育てたのよね」
「さっすが~!」
「ガシャイヒ村……今、シャカラカ村だっけ? また戻るの? まあいいわ。いろいろ防御設備あったでしょ。あれ、前のときに用意したものなのよね」
「知らなかった~!」
「100匹でやってきたは私を入れて8人だったのよ。でも、なんとかなったわ」
「すご~い!」
「あの時も北側から駆け下りてきたわね。そこは狙ったとおりよ」
「センスいい~!」
「戦術のセンスは、そのときにみんなで磨いたのよね」
「そうなんだ~!」

 『狐です』長月・イナリ(p3p008096)が武勇伝を話すと、『Go To HeLL!』伊達 千尋(p3p007569)が「デキる男のさしすせそ」の合いの手を入れる。
 これがまた語り手を勢いづけて、語りを熱くして熱弁を振るわせる。

「イエ~イ、シラス飲んでるゥ~? 全然酒進んでねえじゃん! ……あ? 未成年? ガハハ!」
「もうキド―! 遅いよ~! ゴブリンキラーの大本命じゃん!」

 その場に現われたのは、『盗賊ゴブリン』キドー(p3p000244)である。
 外来種のゴブリンとして、これまで幾度となくガシャイヒ村――あらためシャカラカ村あらため新ガシャイヒ村――を襲ったゴブリンたちを駆逐してきたのである。
 ゴブリン退治に関しては、年季が入っているゴブリンなのだ。

「ほらさぁ、あの話しろよ。ゴブリンのボスをブッ殺した時の話ィ!」
「えー、さっき新田にしたよ?」
「何度でもすりゃあいいじゃんかよ。在来種をぶっ倒すのもおもしれえ話なんだし」

 キドーは勢いよくジョッキを空け、大きな声で騒ぎ建てる。
 テーブルの上には、数々の料理と瓶が並んでいく。
 さらに追加が入った。

「さあさ、ゴブリン退治の英雄さん方! お祝いの品をお持ちしましたよ」
「いよっ! 待ってました!」
「さしすせそぉ~!」

 豪勢な差し入れを運んできたのは、只野・O・サンであった。幻想首都郊外に大農園を持ち、さまざまな作物を育てている。
 そんな中でも、特約農場で育てた一級品の野菜、肉、さらに高品質のカルベネ種で醸造したワイン、香り高いホッブと小麦で作りあげたビールも樽でやってきた。
 玉ねぎはオニオンリングにするとしゃっくりとした歯ざわりで、ジューシーな甘味がほどばしり、フルーツトマトは果実のようである。
 豚肉もいい。牛肉もいい。
 茹で豚にしても肉質が固くならず、ぶるんぶるんのゼラチン質の脂肪も、豚足も味わえる。サーロインステーキもある。高原で育てたレタスとトマトは牛肉一緒に炒め、オイスターソースを利かせるとレタスとトマトの牛肉炒めの一皿となって卓に並んだ。
 つまりは、たいてい酒に合う料理に変わっていったのである。
 そして、なんと言っても新鮮なきゅうりをもろみ味噌を添えたもろきゅうつけるだろう。
 これを齧りながらビールで流せば、話も弾む。
 こういったものを食べながら、ゴブリン退治の武勇伝は盛り上がっていった。

「皆さん方に召し上がってもらえれば、私も育てた甲斐がありますよ。私も食べてもらうのを自慢したくて、ここに運んでくるまで宣伝したりしました」

 英雄ゴブリンスレイヤーたちが食する食材を扱っていると宣伝できれば、只野・O・サンの農場の評判もうなぎのぼりとなる。
 それほどの英雄たちがわざわざ取り寄せて宴会で飲み食いするのだから、さぞや豪勢に違いない。人々はそう思うものだ。

「今夜の宿は目の前です。派手に飲んでもすぐ寝れます。ジャンジャン行きましょう!」

 新田も、今日は羽目を外して騒ぐつもりのようだ。
 度重なる苦難に見舞われた村を救い、平和をもたらした。
 だからこそ、派手に宴を開いて自分と仲間たちを労うのである。

「いやあ、さすがはゴブリン退治の英雄方だ。盛大に祝ってるなぁ」
「そんな英雄豪傑になれたらいいだろうにねえ」

 その2人の客たちは、宴を開くゴブリン殺しの英雄たちに感心しつつ眺めていた。派手な飲み食いと、ゴブリンたちを相手にした血湧き肉躍る語らいに釘づけてあった。
 だから、気が付かなかった。
 もう1人、その店で席にいたことを――。

●待ち受け迎撃するもの
「あー……、あのゴブリン……。良い勉強になったよ……。師匠からの勉強だけど」

 『策士』リアナル・マギサ・メーヴィン(p3p002906)は、精霊から伝わる声を聞いていた。キドーの語るゴブリン退治の顛末は、彼女の師匠からも伝えられている。

『……アンダケ騒ゲバ食イツク、ダロ。十分囮ヤッタンダ、カラ、ソッチ方ハヨロシク頼ムゼな? 旨イ酒奢ルカラサ』

 たどたどしい口調で、精霊がキド―の言葉を伝える。
 中の様子から、囮役の皆がうまそうなものを飲み食いしているのは外を担当する者たちにも伝わっている。
 お土産には、期待したいところである。
 獣種のリアナルだが、今は尻尾と耳を引っ込めて周囲を警戒している。

「獣種に不意打ちは効かぬと知られていても困るしね?」

 そう、超反射神経を磨き上げて青き血の本能を持つリアナルには、まず奇襲は通用しない。
 暗殺者を返り討ちにするには都合がいいので、これを悟られないようにせねばなるまい。

「やれやれ。自分たちだってさんざん他の種族を食い物にしてきただろうに。そのうえで暗殺者を雇うとは、なんとも自分勝手な話だな」

 この依頼を受けたときから、『天穹を翔ける銀狼』ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)は、ゴブリンたちに思うところがあった。
 襲撃を撃退された復讐のために暗殺者を雇うなど、逆恨みもいいところである。

「まぁ、下手に他の無関係な人間が襲われないだけマシではあるが」

 それに関しても、たまたまと言うだけのことかもしれない。
 無差別だと、標的を仕留める点に絞ると非効率である。
 ゲオルグは、野外での警護を担当するが、本格的に行動を開始するのは夜と決めている。

「うまく誘き出せりゃあいいがな」

 宴会場から、宿泊に利用する宿は確保している。
 『朱の願い』晋 飛(p3p008588)は、その仕掛けがうまく言っていると期待するしかなかった。
 なにせ、暗殺というのは仕掛けてくるタイミンの主導権は敵側が持つ。
 こちらはひたすら守りの姿勢を取らされる。
 もっとも、仲間たちと同様、警戒と罠の準備は怠らない。

「小馬ちゃんよ。今回はマジで骨折りそうだからAGを通して周囲のオペレーターに避難誘導頼んでいいかい?」

 晋飛は、そのサポートドールに連絡を入れた
 AG(アームドギア)に随伴するため、改造脚部に換装しているシャオマー(仔馬)である。
 足が太いというと起こってその鉄の足で蹴ってくるらしい。

「ウチにそういう雑用投げるとは相変わらずいい度胸です。もうちょっと有益なサポート任務はないですか」
「いや、避難誘導って大切だろ?」
「それはそうですが、反論されるのは気に入らないです」

 いちいち晋飛に反抗的なシャオマーであるが、結局AGを通じて戦術地図を確認し、一般人が巻き込まれぬよう避難ルートの確保を割り出している。
 仕事の速さに、やはり晋飛は感心した。
 その戦術地図には、他の仲間たちが罠を仕掛けている宿屋も映し出されている。

●カウンタートラップ
 囮役たちが盛大に宴会をしている間、彼らが止まることになる宿に罠を設置する手はずになってる。
 罠設置の作業をしながら、差し向けられる“ゴブリンスレイヤーキラー”をどう迎え撃つかがポイントとなるだろう。

「ゴブリンが人を雇ってまでとはねえ……ま、それだけ本気ってことなんでしょうけど」

 『never miss you』ゼファー(p3p007625)は、罠を用意しながら呟いていた。

「ゴブリンが幻想種を雇うなんてゴブリンにあるまじき動きだよね」

 蝶番の様子を確かめ、『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)は思う。

「本当だよ。暗殺者まで雇うとはなぁ。そこまでの知能があるんなら、最初っから共存持ちかけろっつーのは無理な話か」

『天駆ける神算鬼謀』天之空・ミーナ(p3p005003)が手伝いながらイグナートの呟きに答えた。
戦いの場と設定されるのは、新田が手配した宿泊予定のこの宿屋である。
 罠の設置は、陣地構築も得意とするゼファーの意見を中心に行われた。完全に防ぎ切るのではなく、一部安全な進入路をあえて用意したうえで誘い込み、そこを狙う。

「やっぱり、ゴブリンも経験を積んでレベルアップして行くもんなのかな?」
「どうだろう? ……でも、どんなにレベルアップしても、時には諦めも肝心、なんて言っても馬の耳になんとやらかしらねぇ」

 ワイヤートラップの貼り具合を確かめながら、ゼファーもぼやく。
 ゴブリンたちもなのはわかる。だが、その執念にはいささか辟易しているのだ。

「さて、こっちも設置した。いくら暗視ができるとはいえ、暗闇にある黒が見分けられるかな?」

 ミーナが張ったロープは。闇に紛れるよう黒く塗られている。彼女のような元暗殺者を出し抜くのは、生半なものではない。
 外見は幼い少女の姿をしているが、本人曰く自称1023歳ななので、さまなざま経験があるらしい。

「たとえどんな形の想いであるとも、向かい合って、そして悪意は打ち砕きましょう。未来を綴るのは――私たちです」

 設置を手伝っている『妖精譚の記録者』リンディス=クァドラータ(p3p007979)は、部屋の中をあらためて見回した。

「なるほど、ここなら……」
「クローゼット? 身を隠して不意打ちするにはいいかもしれないわね」
「感づかれたら、逃げ場がないからな。気をつけるんだぞ」
「はい、わかっています」

 敵の動きを何度もシミュレートし、襲撃に備えている。
 設置された罠から考えれば、護衛するためのベストポジションなのである。

●そして夜が始まる
「ふー、うまかったぜぇ!」
「いや、美味しい料理でした」
「やっぱ、ゴブリン倒すといいことあるな」

 ゴブリンスレイヤーたちの宴は終わった。
 キド―、新田、シラス、千尋、イナリらは派手に騒ぎ、十分に人目を引いたはずだ。
 宿に入る際に、外で待機しているリアナルやゲオルグ、晋飛らとわずかに視線を交わし、合図する。
 町に夜がやってくると、徐々に明かりが灯っていく。

「ああ、あいつらかな?」

 さっそく、リアナルが気づいた。
 フードを目深に被り、物陰に身を潜めている。
 子供の背より、少し高いくらいの人影がまず3人……。
 雑多な種族がいる混沌の町中では珍しくないが、妙に足取りが軽い。
 おそらく、ゴブリンの暗殺者だ。
 尾行して、仲間に知らせたものと思って見ていい。
 今はそれでいい、ゴブリンスレイヤーキラーとしてやって来る暗殺者を返り討ちにするためだ。

「さぁて、と」

 囮役のメンバーが用意された部屋に戻ると、それぞれが配置につく。

「まずは暗闇対策の目薬を使だな。……クゥー! 沁みるゥ!!」

 千尋は、目薬を指し終わるとベッドの下に潜り込んだ。
 もたらされた情報では、ゴブリンスレイヤーたちは闇の精霊シェイドを召喚するという。その対策は、事前にせねばならない。

「う~、飲みすぎたぜ。そろそろ寝ようぜ」

 キドーは、あえてナイフを枕から離して置き、無防備のままベッドに寝っ転がった。
 しかし、十分な覚悟をしたうえのことだ。
 向こうには、プロの暗殺者がいる。釣ったつもりで喉笛を掻っ切られることもあるのだ。

「……ま、みすみす死んでやるつもりはねえがな!」

 ひとひらの思い出に触れ、眠りにつく。

「私は、夜の風にあたってくるわ。ちょっと飲みすぎたみたい」

 イナリは、さり気なく宿の軽快につく。
 裏口からは、あえてゼファーたちのトラップに誘導するためのルートになっており、罠はない。
 ファミリアーの子犬を連れて、警戒を新たにする。

「さて……」

 新田はそのまま背を宿の壁に預ける。
 まるで溶け込むかのように、同化していく。
 戦闘状況でなければ、新田のギフト『ストレンジ・カメレオン』は周囲の背景に溶け込む効果を持つのだ。

(ダチコーたちに背後を探らせましたが、元はどこぞの暗殺結社の幻想種だったとか。雇われで、今現在はバックに組織がないのがさいわいですが……)

 事前のリサーチに抜かりはなかった。
 ゴブリンスレイヤーキラーたちは、暗殺結社からの脱走者らしい。
 今はその結社も壊滅し、フリーとして仕事を請け負っているものと思われる。

「じゃ、そろそろ明かり消すからな」

 ベッドに寝っ転がったシラスがランプに手を伸ばし、消灯する。
 ワイヤーツールセットの感触を確かめつつ、クローゼットに身を隠しているリンディスに視線を送った。

●闇夜の暗殺者
「じゃ、そろそろ見張りにツクよ。ゴブリン殺しの英雄サマを狙うゴブリンもいるダロウしね」
「でも、見張り役なんて存外にヒマねぇ」

 松明を持ったイグナートと、罠の設置を終えたゼファーが、これみよがしに見張りにつく。
 ここまであからさまなのは、裏口への誘導のためだ。

(さあ、引っかかるカナ……?)
(昼間、囮役のキド―たちが派手に騒いだから、きっと引っかかるはずよ)

 イグナートと小声で囁き合い、ゴブリン殺しの英雄たちに差し向けられた刺客の油断を誘う。
 そのしばらくの間、夜が更けるまで異変は起こらなかった。
 それは、深夜に差し掛かり、月が雲に覆われたときに起こった。

「来たな――」

 まず、異変に察したのは、ゲオルグである。
 周囲に闇が染み出すように広がっているのだ。
 さっそく、宿屋の周辺を警護する者たちも身構える。
 何匹かの小さな影が、はしっこく滑るように動いてくる。
 5つ、ゴブリンだ――。
 月の光は闇に覆われ、明かりを塗りつぶしていく。
 塗り潰されていく闇の中で、赤々とした松明がくっきりと浮かび上がる。
 標的は、イグナートだった。
 ひゅんっ、と風切り音を立てて、スローイングダガーが放たれる。

「右からだ! 避けろ、イグナート!?」

 シェイドが作り出した闇にまぎれて飛んでくるナイフを、リアナルが警告した。
 指示を受けてイグナートが飛ぶと、数本の刃が掠めていく。

「ああ、やっぱり毒塗ってあったノカ……」

 掠めた瞬間に感じる、痛みと違和感。
 刃に毒を塗るとは、ゴブリンらしいやり方である。

「……敵の位置はわかった、迎え撃つ」

 すぐにゲオルグも動き出す。
 昼のうちに周辺の地形は把握している。暗闇に紛れようとどう動くかは予想がつく。そして刺客を塞がれても、ゲオルグには嗅覚がある。
 まして、毒を使うとなればその匂いは居場所を報せるようなものだ。

「そこだろ!」

 リアナルも、イグナートの毒を解毒すると反撃に移った。
 絶対冷気の魔法、アブソリュートゼロを気配のした方向に打ち込む。
 「ぎゃ……!」と短い悲鳴が上がり、暗闇の中でも凍りつかせた手応えを感じっとった

「よし、光るぞ!」

 続いて、合図とともに、リアナルが二種の花火によって闇の中で閃光を発生させる。

「ぐぎゃああああ……!? 目っ、目がぁぁぁっ!?」

 開ききった瞳孔に光が飛び込んでくれば、網膜が焼きついてしまう。
 ゴブリンアサシンたちは目がくらみ、悶え出した。
 その隙を予測していたイナリは、二匹目を確実に仕留める。

「こっちに来たのは、残り3匹ね」

 イナリは、この状況を把握していた。
 一緒につれてきた子犬の反応もその手助けとなっている。
 しかし、視覚に頼れないという不利はいまだ続いている。

「闇の中でも、熱源ならば探知できるのだぞ。生きている限り生き物は熱を発するのだ」

 内部の罠を仕掛けた後は、ミーナも表側の護衛に回る。
 彼女は、風読みの娘によって味方のいる位置なら暗闇の中でも何となくわかる。このギフトに混戦での同士討ちを避けられるうえ、さらに温度を色彩によって熱源探知する感覚も併せ持つ。
 混戦でこそ、力を発揮するのだ。

「聞くがよい、絶望の海の歌を――」

 よく澄んだ、冷たい声が響き渡った。
 ミーナが歌う呪いの歌、ディスペアーブルーである。
 ゴブリンアサシンたちを、冷たい海底に引きずり込むように魅了した。

『ふーっ、上手く引っかかってくれたぜ!』

 そのタイミングで、少年らしき声がそう言った。
 襲撃者たちが、何人か動いたようだ。
 答えを先に言えば、晋飛がシラスの声色を真似たのである。
 標的がここにいると敵を誘うための演技だ。

「派手などんちゃん騒ぎをしていたのは、やはり誘い出す罠か……」
「やはり、ゴブリンどもを捨て石に探らせたのは正解だった。裏手に回るぞ」

 ゴブリンたちの潜んでいた影は、ふたつ。
 下っ端のアサシンを指揮する幻想種のものだ。
 魅了されたゴブリンたちを残し、その場から気配を消した。
 仕掛けられた鳴子にも掛からなかったようである。

●裏口の攻防
「……やはり、罠は正面に固められていたか」
「我らが狙っているのを察知し、逆手に取って誘い出した、というところだろう。表口は厳重だが、裏口はまるで無防備だ」

 闇の精霊を使役し、宿屋の内部を闇に染めた幻想種のアサシンたちが、標的が眠る部屋を目指して廊下を進んでいく。
 さいわい、表口はゴブリンたちを捨て石にしたおかげで、返り討ちにしよう待ち構えられているのはわかった。
 ならば、ゴブリンたちを陽動として戦力を固めているうちに、手薄な裏口から侵入するという作戦だ。
 侵入者は、全部で四人――。
 しかし、ここで一人が何かを察したのである。

「いや、待て。それほどの策を用意する頭のいいやつが、裏口を手薄にするのは、返って不自然ではないか? 鳴子のひとつも設置するはず。まるで忍び込んでくれと言わんばかりではないか」

 この疑問に、もう一人がはっとする。

「まさか、この裏口こそ本命だと……!?」

 しかし、誘い出されてしまった以上、後の祭りである。
 四人のダークエルフアサシンが焦り、身構えると背後はAGに乗った晋飛と随伴するシャオマーに塞がれていた。

「気づきやがったか! だが、逃がしゃしねえ!」
「チッ! ここは我らで引き受ける! お前たち二人で始末しろ! 罠など気にするな、食い破れ!」
「「応っ!!」」

 殿二人が残り、二人が部屋に向かう。

「行かせるかよっ!!」

 晋飛は、炸裂榴弾を投射し、その爆発直後に全力機動で追撃を試みる。
 宿屋が派手に揺さぶられるが、お構いなしだ。
 残った二人はこれを躱し、足止めする。

「な、何っ!? 何が起こったの……!?」

 騒乱に戸惑い、飛び出したのは、同じ階に部屋を取った女性の宿泊客だった。

「おい! 危ねえからでてくるな!」

 女性を傷つけるのは、晋飛の流儀ではない。
 まして巻き込んでしまったとなると、寝覚めが悪いことこのうえない。
 だが、待っていたのはその動揺であった――。
 その女性客の目つきが鋭くなり、油断した晋飛のパートナー、シャオマーに視線を定める。

「彼女、アサシンです。宿泊客背景とデータは地元のダチコーによって調査済みです――」

 暗視ゴーグルの役目を兼ねる眼鏡を直しつつ、新田は冷静に告げた。

「何だとぉ!?」
「チッ……!」

 一般人を装っていたが、先に乗り込んでいたダークエルフの一人であった。
 シャオマーを狙う刃を、身を挺して止める。

「くそおぉぉぉぉぉっ! 死ねええ!」
「俺のこた後から後ろから刺してもいいから今は大人しくしといてくれ! 必ず助けてやる」

 フックロープで拘束しながらも、いまだ短剣を振り回す女ダークエルフに晋飛は言った。それでも、大人しくなるそうもない。
 殿に残った二人は、新田に向かい合うとふと口元を歪めて呪文を唱える。
 その途端、すうっと風景に溶けるように姿が消えていった。
 姿隠しの魔法である。

「消えましたか……」

 闇に紛れるシェイドを使役しながらも、姿を消す魔法までも用意する二段仕掛けであった。
 暗視能力があっても、姿そのものが消えてしまうと見通しようがない。
 新田はとっさに飛び退くも、短剣を受けて手傷を追う。

(万全を期したつもりが、少々油断したようです……)

 その万全の策が仇となった形である。
 闇の精霊への対策と、裏口への誘導に固執しすぎたのかもしれない。

「ククク、どこから殺られるかわからぬ恐怖は格別だろう……?」

 まるで、獲物をなぶる獣のようであった。舌なめずりの音までもがが聞こえてきそうである。

「新田さん、後ろ……!」

 鋭いゼファーの声であった。
 寝室前に設置した警戒用のワイヤーに架かったのか、一瞬鳴子が鳴った。

「――むっ!」

 ゼファーのSweetBloomと同時に、新田は振り返らずにオレンジキスの曲撃ちで背後に魔銃を放つ。
 同時に攻撃が命中し、どさっと何かが倒れる音が聞こえ、仕留めたことを確信した。

「残念、此処はおしまいの袋小路なの。今生は諦めて頂戴な?」

 見えぬもう一人に、ゼファーが終わりを告げる。

「ほざくな! そうそう、まぐれ当たりが続くものか」

 姿を見破られたわけではない、ダークエルフは仲間がやられても、まだ有利はあると踏んでいた。
 しかし、そこにもう一撃――。

「やはり、本命のアサシンを送り込んできたか」

 ダークエルフの侵入を予想していたゲオルグだった。
 ゴブリンを囮とするのは、襲撃前からある程度は予想していた。
 姿隠しの魔法によって消えても、聴覚、さらには嗅覚に優れたゲオルグならば対処できる。寸前の機転と長年の勘による読みによって仲間を救い、新田の傷を回復させる。

「すみません、助かりました」
「なあに、囮役と君の作戦あってのことだ」

 礼を言う新田に、ゲオルグは返した。
 残り2人の刺客は寝室に向かっている。

●寝室での戦い
 寝室の明かりはすでに消えている。
 キド―、シラスがベッドに眠っている。
 いや、裏口での戦闘ですでに気づき、狸寝入りしているに違いない――。
 ダークエルフ二人はそう踏んだ。
 気づいていても、躱しようのない暗殺というものがある。
 姿隠しの魔法によって姿を消して闇に溶け、音も立てずに一気に殺す。
 まずは、憎き外来種から。

 ざり――。

 それは、ほんのかすかな音であった。
 新田が、姿隠し対策としてあらかじめ撒いて置いた砂を踏み締め、噛み合わさって立てる音――。
 その瞬間、キドーは素早くベッドから転がり出る。
 寝ていた場所に、日本の短剣が突き立てられる。

「くっ……!」
「ハッ! 不意を打ったつもりかよ!」

 飛び起きたキドーは、そのままナイフを暗殺者に突き立て、壁際まで吹っ飛ばす。

「ちくしょう、もう一人の方だ!」

 残る一人は、シラスが寝ているベッドに迷いなく短剣を突き刺す。
 シーツごと深々と突き立ったが、まるで手応えがない。

「……まさかっ!」

 しまったと舌打ちし、シーツを乱暴に捲りあげても、そこには何もない。
 幻影だと気づいたときには、すでに背後に気配があった。

「おっと、初めからここにいたぜ?」

 やはり、シラスであった。
 彼もまた、ミーナのように温度を色彩で捉えることが可能だ。
 姿は隠せても、晴明たちとして発する体温までは隠せない。
 背後のシラスに向かおうとした瞬間、足首にじゃらりと鎖が巻き付いていた。

「チェーンデスマッチって奴だ。姿は見えねえだろうか、鎖に手応えはあったぜ。逃がすかよ!」

 ドンピシャでヤマカンを当てた千尋がベッドの下から這い出してくる。
 無論、千尋は勘だけの男ではない。
 新田が撒いた砂の上に浮かび上がる足跡を見て巻きつけたのである。

「やったな、千尋! ばっちり捕まえてるぜ。俺には見えるぜ」

 姿が見えなくとも、鎖の先にはいる。
 確実な方法だ。

「惜しいところまで言ったが、襲撃は失敗だな。しっかし惨めだねぇ、在来ゴブリン共に雇われて働くなんてよ!」
「黙れ、無思慮な外来種がっ!」
「……あいつが使役者か?」

 いきり立つアサシンに対し、キドーは邪妖精フーアとの盟約に従った魔力を発した。
 水辺で威力を発揮する魔法であるが、ここでの目的は精霊を使役する者を特定するためである。
 かすかな囁きが、キドーの問いを肯定している。

「お、おのれ! 闇の精霊よ! 暗黒の力で敵を撃て!」

 暗黒が、寝室を満たしていく。
 どうやら、こいつがシェイドの使役者のようだ。
 しかし、同時にばんっと勢いよくクローゼットが開く。
 いままで潜んでいたリンディスであった。
 ちょうど、鎖で動きを封じられた暗殺者の真後ろである。

「えいっ!」

 未来綴りの章・継によって自身に加護を与え、後頭部を殴りつける。ちょうどよい位置にあったのだ。

「うぐっ!? ぐうう……」

 そいつはよろめき、床に崩れ落ちる。
 だが、使役者が倒れたことにより、召喚された闇の精霊は自分をコントロールするものを失ってしまう。
 闇の力を集中した精霊は、手に入れた自由に歓喜した。
 その歓喜は、制御を失った暴走である。
 闇の塊が質量を持って無差別に吐き出だされ、キドーとシラスをかばうリンディスを横殴りに吹き飛ばした。

「……あうっ!?」
「おい、大丈夫か! くっそ、邪魔だぜ!?」

 駆け寄ろうとした千尋には、気絶したダークエルフがチェーンで結ばれている。こうなると、逃すまいと結びつけた相手は重りになってしまう。

「アサシンは片づけたってのに!」

 毒づきながらも、瞬時に法則を計算したシラスは聖躰降臨によってその身を聖なるものとし、熱狂の毒をシェイドに打ち込む。アメーバのように伸縮を繰り返す闇の精霊を、毒が蝕んでいく。
 いまだ暴れるシェイドを、まばゆい電光が射った。
 栄光を掴み取る、イグナートの絶招・雷吼拳の一撃である。
 闇は、雲散霧消していき、周囲は光を取り戻した。

「……なんとかなった、カナ?」

 戦いの終わりを、イグナートは感じ取っていた。

●戦い終えて
 ゴブリンスレイヤーキラーの襲撃は、こうして撃退した。
 捕虜は、3にん。
 ゼファーが不殺に留めた一人、気を失わせた闇精霊使い、そして今も晋飛のフックロープに捕縛されながらもがく女暗殺者である。

「ゴブリンたちも片付いたわ」

 野外組とイナリも合流する。

「技術力などの提供ルート等、聞きたいことはたくさんあります。然るべき対処を行う前に、後の動きの可能性も含めて貴方たちの情報を――記録させて貰いましょう」

 リンディスには、この襲撃にまつわる諸々を記録として残し、後世に伝えたいとの思いがあった。
 いつまでも襲撃受ける受け身でいては、結局ゴブリンの襲撃はなくならない。
 傾向と対策として、冒険者やシャカラカ村の人々に託すのである。

「元はと言えば身から出た錆。いや、これも生存戦略の一つか……。だが、敵対者を生かす程儂らは甘くなくてね。『さあ選べる、降伏か、死か』まぁ降伏も即ち死、だけどな?」
「…………」

 その捕虜たちに対し、リアナルが厳しい選択を突きつける。

「あー、やっぱ女を殺すのはなしにしてほしいわ。幻想種の美人だしよ」

 いまだ幻想種の女暗殺者は抵抗の気配を見せるものの、晋飛は仲間たちに告げた。

「シャカラカ村がまた襲われたらたまんないし、止めはきっちり刺して起きたいかな」

 この辺りがシラスの懸念である。
 このゴブリンスレイヤーキラーを雇ったゴブリンは、逆恨みの復讐心によって村への加害を諦めてないと思われるのだ。

「その辺には、手を回してあります。縛り首になるよりはましなはずですよ」

 新田の瞳は、今は眼鏡の反射によっていかなる感情を映しているがうかがいしれない。
 ただ、それなりの懲罰を考えているようだ。

「じゃあ、女は領地に引き取る手配をしてくれ。男は知らん、進んで殺しやしねぇから上手くやってくれ」
「ご随に――」

 捕虜たちの処遇については決まった。
 ゴブリンスレイヤーキラーも、結局返り討ちとなった。
 これでまた、彼らが冠する称号は更新され、“ゴブリンスレイヤーキラーハンター”となる。
 そして、またゴブリンたちが狙ってくるかどうかは、今のところわからない――。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)[重傷]
業壊掌
新田 寛治(p3p005073)[重傷]
ファンドマネージャ
伊達 千尋(p3p007569)[重傷]
Go To HeLL!
リンディス=クァドラータ(p3p007979)[重傷]
夜咲紡ぎ
晋 飛(p3p008588)[重傷]
倫理コード違反

あとがき

お疲れさまでした。
実は筆者初のEXシナリオであったりします。
ゴブリン退治をスケールアップしていく中、ふと思いついたんですが通常シナリオに収まらないと気づいてこんな形になりました。
ゴブリンを狩る者を狩る……者を狩る、みたいな感じです。
プレイングについては、ガチ目に吟味し判定しましたが、死亡者なく依頼は成功となります。
それでは、今日はこの辺で。またの機会にお会いしましょう。

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