PandoraPartyProject

シナリオ詳細

人を喰らう巨大骸骨

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 豊穣という土地はその名の通り、農作による実り多き土地。
 その為、かなりの範囲で農作が行われており、あちらこちらに農村が存在する。
 この地方では、ソラマメ、大豆などの豆や、ゴボウ、大根といった根菜等をメインに育てている。
 その中の一つ、タマと呼ばれる村とその近辺、のどかな畑地が広がっており、人々が土にまみれて野良仕事に勤しむ。
 そんな中、村の地面の一部にどす黒いものが集まって。
 ガチガチ、ガチガチ……。
 骨が擦れる音と共に、地面からせり上がるようにして現れたのは、巨大な骸骨。人の上半身を思わせる姿をした怨霊が現れ、人々を威圧してくる。
 ――コノウラミ、ハラサデオクベキカ……。
「「うああああああっ!!」」
 突然現れた怨霊に怯え、恐怖する人々は我先にと逃げようとするが、怨霊は両腕を握りしめて地面を叩きつけ、人々を逃さない。
 ガチガチ、ガチガチ……。
 下半身を現し、しゃがんで歩き出すその巨大骸骨は、態勢を崩した人々をつかみ取って。
「や、やめ……!!」
 力の限り、骸骨はそれらの人々を握り潰す。
 赤いモノが大量に飛び散る中、骸骨は人だったモノを口の中に入れて食べてしまう。
「「「ひ、ひいいいいいいいいいっ!!」」」
 掴まれたら食われると、命からがらその場から逃げ出す人々。
 ――ニガサヌ、スベテ、クライツクシテクレヨウ……。
 口元に赤いモノを付着させた巨大骸骨は爛々と瞳を輝かせて逃げる人々を追い、村の中を彷徨い始めるのだった。
 

 カムイグラ此岸ノ辺。
 この場所で待っていた『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)がやってきたローレット、イレギュラーズ達へと丁寧に頭を下げる。
「怨霊事件の解決のお願いします」
 カムイグラ某所にあるタマと呼ばれる村。
 そこに集まる怨霊が多数の骨を使って巨大な骸骨を象り、人々を喰らっているのだという。
「情報によると、この怨霊はガシャドクロと呼ばれているそうです」
 並々ならぬ怨念が骸骨となったそれは、古く戦場であったこの地にて供養もされずに放置されたままとなっていた人々の成れの果てだと考えられる。
 人々に害なす存在となったこの怨霊は放置すれば、多大な被害をもたらすことは想像に難くない。
「人に敵意を抱いているようですから、皆さんを視認した地点ですぐに襲い掛かってくるものと思われます」
 タマ村の農民達はガシャドクロ出現を受け、近隣の村へと避難をしている。できる限り、彼らの住居を壊さないようこの怨霊の討伐を行いたい。

 事後、タマの住民達が戻ってきた後、お礼としてデザートを振舞ってくれる。
「玲瓏豆腐という食べ物だそうです。黒蜜ときな粉で食べると美味しいそうですよ」
 豊穣の地ならではのデザートはなじみがないこともあり、とても楽しみを感じさせる。普段と違った味を楽しむ為にも今回の事態を収拾させたい。
「見た目から威圧させる恐ろしい相手です。くれぐれもご注意くださいね」
 アクアベルは依頼に当たるメンバー達の身を案じながら、説明を締めくくったのだった。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 カムイグラの農村に現れる怨霊討伐を願います。

●概要
 ガシャドクロの討伐。

●敵……怨霊
○ガシャドクロ×1体
 全長5mほど。地面から上半身のみが露出した姿で彷徨っており、必要に応じて下半身も顕現させて移動するようです。
 睨みつけ、地面叩きつけ、暴れ回り、握り潰しと、その巨躯もあって遠近隙の無い相手です。

●状況
 豊穣某所の農村、古くは戦場だったようです。
 埋葬すらされることが無かった死者の怨念、骸骨が集まり、巨大な骸骨の姿をとって近隣の農村で暴れています。
 住民達は避難しておりますので、できるだけ家屋に被害が及ばぬよう配慮の上で討伐に当たっていただければと思います。

 事後は、デザートとして玲瓏(こおり)豆腐などいかがでしょうか。
 某世界においては江戸時代に食べられていた絹ごし豆腐を寒天で包んだ夏らしくヘルシーなスイーツです。
 酢醤油と辛子、あるいはきな粉と黒蜜でお召し上がりくださいませ。リアルに作ってもおかずやおつまみにいけますので是非どうぞ。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • 人を喰らう巨大骸骨完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年08月16日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

マルベート・トゥールーズ(p3p000736)
饗宴の悪魔
武器商人(p3p001107)
闇之雲
ウィリアム・M・アステリズム(p3p001243)
想星紡ぎ
水瀬 冬佳(p3p006383)
水天の巫女
鹿ノ子(p3p007279)
琥珀のとなり
恋屍・愛無(p3p007296)
愛を知らぬ者
アカツキ・アマギ(p3p008034)
焔雀護
ユン(p3p008676)
四季遊み

リプレイ


 豊穣の地を訪れたローレットイレギュラーズはすでに具現化した悪霊を討伐すべく、現場へと急ぐ。
「妾調べによる『がしゃどくろ』とは……」
 深緑出身の長寿な箱入りロリ少女『放火犯』アカツキ・アマギ(p3p008034)が調べた今回の討伐対象は、『埋葬されなかった死者達の骸骨や怨念が寄り集まって巨大な骸骨になったとされる妖怪』とのこと。
「つまり、奴に喰われた犠牲者も仲間入りということかのう」
 そんな妖怪の在り方に、色に貪欲な獣の悪魔である『饗宴の悪魔』マルベート・トゥールーズ(p3p000736)は小さく頭を振って。
「食事とは本来楽しいものだよ。『恨みに任せて』なんての下の下にも程がある」
 相当、マルベートは今回の相手に嫌悪感を抱いていたようだ。
「人の無念が人の世に仇をなすか」
 地球外生命体であるという旅人、『餌付け師』恋屍・愛無(p3p007296)もこの状況は是とできぬらしい。
「悪しき流れは断たねばなるまい。それが髑髏や髑髏に殺された者達への手向けともなるだろう」
「怨念の結晶、骸骨の集まり、ガシャドクロ、か」
 長い赤茶色の髪を三つ編みにした魔術師、『神威の星』ウィリアム・M・アステリズム(p3p001243)はいつかの冠位魔種の不浄の群れを思い出すが、それと比べればちっぽけなもの。
「つまりは、油断なく行けば問題無いって事だな。怖がることは何も無い」
 会話の間にも現場に近づいていた一行は、人がいなくなったタマ村の民家の合間にいる巨大な骸骨を目の当たりにする。
 ガチガチ、ガチガチ……。
 全身の骨を鳴らす全長5m程の上半身のみ露わにした骸骨。それがガシャドクロだ。
 ――コノウラミ、ハラサデオクベキカ……。
 その状態のまま移動はできるようだが、移動速度は少し鈍いようである。
「ああ……惨いことをするね」
 頭から鹿を思わせる角を生やす『四季遊み』ユン(p3p008676)がその姿をぼうっと見て、大きな反応こそ見せないが、言葉の端々に音量の行いに不快感を示す。
「怨霊……そのような姿になってまで、現世に留まるほどの怒りがあるというのか」
 如何なる怒りを抱いて顕現しているのか、ユンがはかりかねていると、ガシャドクロがタマ村の住民を発見したらしい。
 ――ニガサヌ、スベテ、クライツクシテクレヨウ……。
「おやまあ、図体ばかりデカくて中身はカラカラと虚しい怨念ばかり」
 両目を前髪で隠す些か、いや非常に胡散臭さを感じさせる『闇之雲』武器商人(p3p001107)は自らの恨みつらみをぶつけてくるだけのガシャドクロを『ツマラナイ』と切って捨てる。
 無念という感情について、ユンもほんの少しだけ理解はできるとのことだが……。
「とうの昔に時が止まった者達が、今を生きる者を襲うというのは、僕には分からないけど」
「何かしら切欠になる事があったのではないかと思いますが……」
 ユンの言葉を受け、神事を司る家の娘『水天の巫女』水瀬 冬佳(p3p006383)にとってはさほど珍しくない妖怪の類に近いガシャドクロを見やって。
「ともあれ、怨霊を鎮めてからの事ですね」
 皆、冬佳の意見に相違はない。
「このような無体、次の犠牲者が出る前に止めなくてはならぬ。皆、張り切って行くのじゃー!!」
「やる気だね、炎の魔女」
 燃え上がるアカツキの様子に、武器商品が少し驚く素振りをみせるが、皆やる気になっているのは間違いない。
「無粋極まる亡者には、亡者の国にお帰り願おうか」
 マルベートが先頭になって飛び出し、皆彼女から少し間隔を開けて村へと近づく。
 過去の妄念を野放しにしていては、新たな妄執を生む。この悪霊はここで断ち切らねばならない。


 ――クラウ、クライツクシテヤル……!
 獲物を求める巨大な上半身の骸骨ガシャドクロは地面すれすれを
移動してくる。
「村を破壊されたら困るので、まずは離れたところにおびきよせましょうッス!」
 ラサ出身、トナカイの獣種である『黒犬短刃』鹿ノ子(p3p007279)が叫ぶ通り、このままガシャドクロと交戦するのは簡単だが、それだと村の家屋に多大な被害が及ぶのは間違いない。
「マルベートさん、誘導役を頼むぞ。武運と無事を祈るのじゃ!」
 この場は事前の打ち合わせの通り、アカツキが後方から声援を送るマルベートのみが突出する。
 相手が村落に迫っているこの状況。人を食うべく家屋すら破壊しかねない。
「さあ、君の怨む生者はこちらだ」
 マルベートは損害を抑えるべく、その背から獣の眼光で睨みつけて。
 ――ココニモイタカ……!
 ゆっくりと反転するそいつも負けじとマルベートを睨み返すが、相手の視線から逃れた彼女は術式を組み立てて魔光を放射する。
「握りつぶして喰らってごらん? 尤も、出来るものならね」
 ――ヌッ……ググ……!
 体に痺れを覚えるガシャドクロだが、強引にマルベートを握り潰そうとしてくる。
 それを彼女は寸でのところで躱し、相手の注意を引きつけ家屋の無い開けた場所へと誘導を試みる。
「1人で十分とは思うが……」
 相手の注意がマルベートから反れた場合を想定し、ウィリアムがフォローに回る。
「人は喰らわせない……代わりに、星の光を喰らいやがれ、ってな」
 相手から気力、呪力といったものを奪いつつ、ウィリアムはガシャドクロの気を引く手伝いをし、マルベートの頭上に星を輝かせて加護を与えることで体力回復にも当たっていた。

 マルベートやウィリアムが時間稼ぎと誘導を行う間、他メンバーは戦闘準備を整える。
 愛無などは田畑なども含め、被害が極力抑えられる開けた場所を確認する。
 その際、囮役より目立たぬよう、可能な限り身を隠して敵に視認されぬよう配慮も忘れない。
「恋屍、そっちはどうだ?」
 同じく、民家に被害が及びにくい場所を捜索していた武器商人の問いかけに、愛無が難色を示しつつも見ていた一帯にアカツキが目をつけて。
「お、あそこなどいいのではないか?」
 民家には影響を及ばさぬ程度に距離があり、かつ囮役が誘導するに遠すぎぬ場所。そこで彼女達はガシャドクロを迎え撃つことにする。
 冬佳もその場に控えて待ち伏せつつ、相手の様子を窺う。
「話と直に見る限り、私の知っているがしゃどくろと形状も性質も大方変わらない、ほぼ同等の存在なようです」
 囮が有効なのは見ての通り。待ち伏せの自分達に気づけば、より嬉々として突撃してくるだろうと冬佳は推察する。
 待機の間、鹿ノ子は眼力を使って注意深くこちらへと引き寄せられてくる敵を注視して。
「そろそろか」
 頷く愛無は匂いで、囮役が拘束されずに動いていることも把握する。
「来たぞ、おっかない顔をした巨大な骸骨……」
 近づいてくる敵を警戒するユン。アカツキもテンションを高くする。
 マルベートも仲間達の姿を視認しつつ、本格的な討伐に動くタイミングを計り始めたのだった。


「こっちじゃデカブツ、妾達に注目するがよい」
 アカツキが声を荒げ、皆が広場に姿をさらせば、ガシャドクロも曲をゆらりと近づけてくる。
 マルベートは仲間と合流地点で、フォークとナイフを模した槍で切りかかると同時に黒炎を浴びせかける。
 ウィリアムも素早く距離を詰めるが、近づきすぎぬようある程度距離をとり、激しく瞬く星の輝きを顕現させる。
 光は天の裁きとなり、ガシャドクロだけを灼き払う。
 ――グウ、マトメテ、クラッテクレルワ!
 まずは地面を叩きつけ、自分に近寄るイレギュラーズ達の動きを、敵は止めようとしてくる。
「おおっと、巨体による攻撃は範囲が広いのう……皆、巻き込まれぬようにある程度距離を取るのじゃ」
 アカツキが警戒を行うが、近距離攻撃を得手としているメンバーもいる。
 そこで仲間の庇いに当たるのは武器商人だ。
「範囲攻撃持ちだね。なら……」
 武器商人は近距離から攻撃を仕掛けようとする鹿ノ子の守りに当たる。
 彼の展開するルーンシールドは物理障壁を完全遮断することができる。冷静に相手の攻撃を見て、防御態勢をとったまま仲間の攻撃を受け止める盾となっていたのだ。
「助かったッス!」
 鹿ノ子は改めて敵を見据える。攻撃直後のガシャドクロは隙も大きい。
「的が大きいほうが僕は戦いやすいッス! いくッスよ! 雪の型「雪上断火」!」
 繰り返し、繰り返し、深々と。彼女は巨大な骸骨の体へと斬りかかり続け、骨を断ち切らんと刃を振り下ろしていく。
「一撃が軽くても甘くみることなかれ! たとえ小さなダメージでも積もり積もれば大きなダメージになるッス!」
 ユンも距離をとりつつ、ガシャドクロの巨体を見上げて。
「下半身が無いなら、上を狙わないとだな……」
 空中戦はできないユンだが、重い一撃を確実に相手へと叩くべく飛ぶ斬撃で敵の頭を狙う。
 徐々にメンバー達がガシャドクロの周囲へと位置取り、包囲陣形が組み上がる。
「一斉攻撃を加えて撃破しましょう」
「うむ、総攻撃なのじゃ!」
 冬佳が『神』の呪いでガシャドクロを侵せば、アカツキも気合を入れて討伐に動く。
「仲間をよくも追い回してくれたのう。骨の髄まで塵にしてやるのじゃ」
 炎を模した両腕の刻印から、アカツキは連続して燃え上がる炎を浴びせかけていく。
 炎の妖怪を燃やす機会はアカツキとて貴重とあって、遠慮なく派手に敵を燃やし続けていた。
「敵は範囲攻撃を得意としているようだね」
 仲間の状況を確認しながら、愛無は刹那全盛期の力を発揮して甲殻類を思わせる鋏で敵の骨を握り潰そうとしていく。
 再び攻撃に出るマルベートは、今度は黒いキューブを出現させる。
 さすがに敵が巨大な為か、その大きさもそれ相応なものとなるが、規模が大きくなっても内部の苦痛は変わらない。
 ――グウ、ヌウウウウウ……!
 身悶えするガシャドクロも両腕を激しく動かして暴れ、抵抗してみせるが、鹿の子が素早く迫り、またも刃で幾度も切りかかる。
「繰り返し繰り返し、何度も何度も……!」
 確実に狙いを定めて攻撃していく鹿ノ子。すでに、悪霊の身体は目に見えるほどに傷が増えてきていた。

 包囲するイレギュラーズ達の囲いの中で、ガシャドクロが唸る。
 ――ワガウラミ、トクトミヨ……!
 威圧する眼光で見据えたメンバーへと骨とは思えぬ怪力で掴みかかり、殴打してくる。
 武器商人が丁寧に仲間を庇い、マルベートも敵の力を見極め、適切な対応を取りながら交戦する。
「この面子ならば攻めるが勝ちだ」
 勝利を疑わないマルベート。ともあれ、相手に特異な戦いをさせぬよう交戦を続ければ、勝機を逃すことは無いはずだ。
「ぬ、炎の効きが悪いか……? ならば……光の槍よ、あの骨を打ち砕くのじゃ!」
 その時、アカツキが攻撃パターンを変え、一気に光で構築された槍を投げ飛ばして敵の巨体を穿つ。
「戦術は柔軟に行かんとのう」
 交戦状況を見ていたマルベートは敵が彼女へと迫るのを見て、すぐさまカバーへと入る。
 そして、相手の握り潰しを凌いだマルベートは返す攻撃で魔光を放出し、骨だけの巨大な相手を十全に行動させぬよう枷を与えていく。
 ――グ、ヌウウウウ!!
 囲いの布陣の一部に突っ込んできた形のガシャドクロが暴れれば、イレギュラーズにも被害は出るウィリアムは暴れる敵の殴打を受けた仲間達の頭上に希望の星を瞬かせて、加護の力を与えていた。
「こっちだ。僕が相手になろう」
 そのタイミング、愛無が一時的に引き付けに当たる。多少のことなら、カバーし合うことで悪霊討伐を進めるイレギュラーズ達だ。

 攻撃回数でガシャドクロを攻め続ける鹿ノ子。
 気力が尽きようとも相手の精神力を奪い、なおも切り続けて。
「傷がつかずとも、血が流れなくとも、繰り返される攻撃に行動を阻害される気分はどうッスか!?」
 ここぞと追い討ちをかける鹿ノ子の攻撃を受け、ガシャドクロは不意に下半身を現して。
「チョウシニ、ノルナ……!」
 脚力を持って跳躍するガシャドクロが彼女を狙う。
 威力は間違いなくこれまで以上の殴打。だが、それすらも武器商人が涼しい顔で受け止めてみせる。
 全身に傷を負うガシャドクロの身体には大きな反動もあったようで、その巨大は少しずつ追う買いを始めている。
 まだ下半身を出現させたままの敵へと冬佳は迫る。
 自らの与えた呪いは確実に仲間の与える異常の効果を高めている。後は展開した結界に敵の半身を捕らえ、無数の氷刃でさらに刻み込んでいくだけだ。
「早く彼処へ還るんだ。もう其方たちは十分戦ったのだろう」
 ユンも相手が下半身を現したことを好機とみて、刺突と斬撃を繰り返す。
「もうこれ以上何もしなくて良いではないか」
 如何なる無念がそこに蹲っているかはユンも計り知れない。
 だが、過去の妄執が現代の人々を束縛するなど、許されてはならない。
 同じく、肉薄してくるウィリアムも前衛へと出て、星の魔力を凝縮した蒼光の剣を創り出す。
「この星の剣で、断ち斬ってやる!」
 ウィリアムの繰り出す一閃は箒星にも似て。
 一筋の流れる星が巨大な骸骨をも落としてしまう。
 ――グ、ウウウオオオオオオオッ!!
 全身の骨が崩れるガシャドクロ。だが、それらは一片たりとも地面に落ちることなく消えてなくなっていったのだった。


 悪霊の姿が消えたところで、アカツキは大きく息をついて。
「ふう、終わったのう」
 まずは、戦場跡で、犠牲者の遺品などが見つかる可能性も踏まえて探索に当たる。
 とはいえ、タマの村では被害者はほとんどなかったこともあり、目につく物はほとんど発見できない。
 ただ、すでに半壊以上の被害のあった別の村などは被害状況を確認する必要があるとのこと。
 そこで、愛無はちょっとした縁で知り合った宮内省所属の鬼人種女性、愛染・国永を呼ぶ。
「被害の確認と、慰霊碑の建立……被害の遭った村の生き残りだけでは負担も大きかろう」
「……だろうな」
 2人の出会いは敵対してではあったが、互いに利する立ち位置という打算的な考えもある。
 ここは管轄の問題などもある為、役人の方が自分達より融通が利くだろうと愛無は国永へと頼む。
「亡くなった者達と合わせ、弔ってやってはくれまいか」
 大規模な戦場の跡地から怨霊が出たとあっては、国としても無視できぬはず。こんな時だからこそ民の不安を取り除き、協力者を増やすべきと愛無は訴える。
「分かった。ぬしの訴え、上に伝えておく」
 勤勉な国永のこと。事態を真摯に受け止めてくれ、多大な被害を受けた他の場所の再興に最善を尽くす構えのようだ。

 またタマ村近辺に関しても、メンバー達は気にかけていて。
「この村、昔は戦場だったんスね……」
 鹿ノ子は、死者の怨念や骸骨で生まれたガシャドクロがまた同じように生まれる可能性を懸念する。
 すると、冬佳がゆっくりと前に出て。
「我が神水の術法を以て洗い浄め、祓い鎮めましょう」
 清き水を呼び寄せた冬佳は自らの世界における作法に従い、この地に眠る魂を鎮める。
「この地に揺蕩う忘れ去られし全ての魂よ、御霊安らかなれ」
 どことなく、ピリついていたような感もあった空気が和らぐ。そんな気がした。
「……これで、当面大丈夫だとは思います」
 冬佳が二の句を継ごうとしたところで、彼女が言いたいことを鹿ノ子が代弁する。
「鎮魂の意味を込めて、石碑か何か建てるとかどうッスかね?」
 悪霊が纏わりついていた影響か、ガシャドクロとなっていた骨などは全て消え去ってしまったが、せめて戦場のなった広場に石碑を建てるべきと鹿ノ子が訴える。
「此度の出来事が供養しない事が原因なら、しっかり弔わないとだろう」
 同意したユンは、事態の解決を受けて避難先から戻ってきた村の男達にも協力を仰ぎ、石碑の建立について話す。
 この場は間に合わせで大きな石を組み合わせて簡素な慰霊碑とし、後日ここに立派な石碑を建てるとのこと。
 ユンはギフトで角に生えた紫陽花を手向けようとしたが、村人が首を振る。
「こっちがいいですじゃ」
 仏花としては小さめの向日葵は問題ないとのことで、村人の勧め通りにユンはそれを墓前に供えることにしていた。

 武器商人やアカツキは村の女性メインと住居の被害をチェックし、破損がほぼないことを確認する。
 その後、感謝の言葉を口にする女性達は、デザートを振舞ってくれるという。
「タマの村の人達よ、持て成し感謝するのじゃ」
 人々の好意に感謝するアカツキ。
 一仕事終えて集まるメンバー達は、村の女性達が振舞ってくれ料理が楽しみなようで。
「玲瓏豆腐……だっけ? どんな感じなのか気になるよな」
 ウィリアムがそんな疑問を口にすると、丁度運ばれてきたのは透明な寒天に包まれた絹ごし豆腐。その見た目は実に涼しさを感じさせる。
「玲瓏豆腐、素敵ですね」
「まさに、こおりのとうふ、と言われるような見た目じゃな」
 これには、冬佳も目を奪われ、アカツキも冷ややかな見た目もあって夏にぴったりのスイーツだと感じたようだ。
 いただく際は、デザートとしてなら、きな粉と黒蜜で頂くといいのだとか。
「……おお、美味いのじゃ!!」
「これがカムイグラ風スイーツ、って奴か。……うん、中々イケるじゃないか」
 絶賛するアカツキの横で、ウィリアムも寒天と豆腐の食感の違いを楽しむ。
 その傍では、鹿ノ子や愛無もほんのりとした甘さに舌鼓を打っていた。
「実は依頼を受けた時から気になってたんだよね」
 なお、美食家のマルベートはこんな時でも通な食べ方を。
 自邸の蔵から持ってきた極甘口のデザートワインと合わせ、玲瓏豆腐をじっくりと味わう。
 慰霊碑などの建立について語っていた男性村民や仲間達にも、望む者に少しだけワインのお裾分け。
「喜びは皆で分かち合いたいものだからね」
 玲瓏豆腐をツマミに、マルベートは地元の酒も頂きながら、会話を交わす。こうした場もいいものだ。
 また、アカツキは友達にも味わってほしいとのことで、作り方を教わる。
 といっても、容器に絹ごし豆腐を(適度な大きさに)切って入れ、溶かした寒天(味付けしてもOKだが、ひんやり感を出すなら何も入れず透明で)を流し込んで冷やすだけ。
 アカツキはふむふむと頷きながら、製法をメモしていた。
 武器商人は味見だけして、仲間達の食べっぷりを眺める。
「こういう、郷土色の強い品物を卸してみるのもいいかもなァ」
 彼は逆に、自身の承認ギルド、サヨナキドリで販売中のみつまめを村民へとお裾分け。
「順次こちらの地でも売り出しているから、気に入ったらぜひ他の村にも広めておくれね、ヒヒヒヒヒ!」
 着々と豊穣でも商売の場を広げていく武器商人はともかく。ほとんどのメンバーはのんびりとデザートを食べて。
「また食べに来たいな」
 素朴ながら爽やかな甘さを楽しみ、ウィリアムは完食したのだった。

成否

成功

MVP

マルベート・トゥールーズ(p3p000736)
饗宴の悪魔

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPは悪霊を翻弄しつつ仲間のカバーをし、村人とデザートを楽しんだあなたへ。
 今回はご参加、ありがとうございました!

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