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シナリオ詳細

星迎ロマネスク

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 眺むるば、交叉の頃に天蓋を粧うは宝珠が如き星屑。煌めき流るる箒星を指先辿り篝火など必要ないと落ちる光の道を歩む。
 人工灯など存在しないと潮騒響く海へと向かえば、漣が静寂を攫い往く。
 誂えたと立て掛けられた笹の葉に飾られる短冊は人の願いを形に変えて、天に住まう者へと届けるらしい。
 嗚呼、けれど――愛しいと泣き濡れる恋人同士を穿ったその川は今日と言う日も反乱を見せる。今宵の空に立ち込める暗澹の雲は二人の逢瀬を邪魔するやうに。

 ある人がインスピレヱションを働かせて言ったそうだ。
 願いの短冊を込めて二人の架け橋になりませうと。
 戀ひ渡る逢瀬の邪魔はしてはならぬと唇に嘯くように揶揄い半分に。

「――たなばた、ですか」
 瞬く『聖女の殻』エルピス(p3n000080)は先程まで美しく空を仰ぎ天蓋の星を眺められたのにと、一層闇夜を落とした雲に落胆したようにそう呟いた。
「そ、エルピスに分かり易く言うならさ、御伽噺だよ。
 織姫と彦星は天の川で分かたれてるけど、七夕の日は逢うお許しが出て川を渡ってい受けるらしい」
 ロマンチックだろう、と告げる『サブカルチャー』山田・雪風(p3n000024)にエルピスはこくりと頷いた。けれど、美しいその空は曇天に覆われた、これでは星の川を渡ってゆくことは出来ないのではないか、とエルピスは不安を浮かべる。
「それで、さ――カムイグラの伝承の一つ。
 七夕の日は雨雲を生み出す妖が居るらしい。『短冊に願いを書いて』空へと届ければ、そいつを退治する事が出来るらしいんだ。だから、願いに行こう」
 雪風は、地方によって諸説ありけり、と付け加える。エルピスと雪風が向かう黄泉津のある地方ではそのように伝えられているのだそうだ。
 願いを認め、天の川へと届かすがために笹へと飾る。祈り、願い、そして天の妖(くも)を取り払わんと。
「……それで、障害は取り除けるのでしょうか」
「さあ。どうだろう。案外、雲が隠しているときに織姫と彦星は空の妖と戦っているのかもしれないね」
 そう、ですか、とエルピスは目を伏せた。
 空一杯の灯りを取り戻すべく――さあ、祈ろう。

GMコメント

 日下部あやめです。

●依頼の内容
 恋人たちの逢瀬の邪魔を取り払う事

●一章
 短冊に願いを込めて祈りませう。カムイグラから少し離れた辺境の浜辺です。
 漣響く美しい浜辺にて笹の葉に願いを込めることが可能です。
 浜の周囲には雲の妖が顕現したものも居ます。

 1章で出来る事
 ・短冊に願いを込めてお祈りする(空へ届ける)
 ・浜に『降りて』きた雲の妖を撃退する

●二章以降
 空が晴れれば、天体観測を楽しみながら。
 雪風の言う通り織姫と彦星は何かと戦っているかもしれませんね……?
 一章の結果を受けてその様子は変化致します。

●同行NPC
 山田・雪風
 エルピス
 がご一緒致します。エルピスは回復等を担当。山田はあまり戦闘能力はありません。
 何かございましたらお声かけください。

●同行者や描写に関して・注意事項
・ご一緒に参加される方が居る場合は【同行者のIDと名前】か【グループ名】をプレイング冒頭にお願いします。

  • 星迎ロマネスク完了
  • GM名日下部あやめ
  • 種別ラリー
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2020年07月19日 14時22分
  • 章数2章
  • 総採用数42人
  • 参加費50RC

第2章

第2章 第1節

 眺むるば、交叉の頃に天蓋を粧うは宝珠が如き星屑。煌めき流るる箒星を指先辿り篝火など必要ないと落ちる光の道を歩む。
 人工灯など存在しないと潮騒響く海へと向かえば、漣が静寂を攫い往く。
 誂えたと立て掛けられた笹の葉に飾られる短冊は人の願いを形に変えて、天に住まう者へと届けるらしい。

 その願いが妖を浜へと落とし、神使が滅したと――天蓋で泣き濡れた乙女はいとしい人へとその歩を進めたことであろう。
 さあ、今宵の星を楽しもう。
 溢れるような輝きの下、星を迎え、ロマンチストと笑われようと此度の星屑を飲み干して――

=====
★イベントシナリオの如くお楽しみ下さい。
★同行者や描写に関して・注意事項
 ご一緒に参加される方が居る場合は【同行者のIDと名前】か【グループ名】をプレイング冒頭にお願いします。雪風やエルピスにご用事のある場合はお気軽にお声かけ下さい。

【1】星見酒/星見
 様々な酒類を持ち込み、美しい星と共に楽しむことができます。未成年はジュースなどでごめんなさい。
 素麺や軽食、星を模したお菓子など様々な物を楽しめます。
 星をもしたお菓子はこの地方に伝わっており、【星屑】と称され甘い金平糖を思わせます。
 雪風曰く、晴れの日に空より降る星を見ながら、ぼんやりとするのはオツなものだそうです。

【2】短冊に願いを
 短冊に願いを綴れます。もしもお願い事があれば笹へとどうぞ。
 筆、万年筆、ペンなど様々なものをご準備しております。

【3】海へ
 静かな夜の海へとゆっくりと歩を進めることができます。
 浜にはもしかすると雲の妖の残党がいるかもしれませんね……?


 それではどうぞ、お楽しみ下さいませ――


第2章 第2節

鹿ノ子(p3p007279)
琥珀のとなり
黒影 鬼灯(p3p007949)
やさしき愛妻家
マギー・クレスト(p3p008373)
マジカルプリンス☆マギー
星影 向日葵(p3p008750)
遠い約束

「この地方に伝わる、星屑っていうお菓子も気にならないと言えば嘘になるんだけど……やっぱり、オキナ的にはこの季節なら短冊だと思うんだよねー?」
 黒髪を揺らし、朝顔はそう唇に乗せた。手慣れた筆を、とそっとつかみ取り上げて、天の色の短冊に願いを描く。遙かなる天蓋の色は自分の中で唯一、美しいと、好ましいと思える色だから。
「……さて、問題は何を願おうかな。
 やっぱりイレギュラーズとしては、早く一人前になれますように? とか。
 それとも――魔種とか、世界の敵が一刻も早く居なくなりますように?
 オキナ、滅びのアークとか自分の戦闘方法とかいまいち分かってないけどね?」
 ふむ、と悩んだ彼女の胸の奥に芽生えた感情は演じる必要も無く真の言葉を綴りたくて。
 筆がぴたり、と止まった。願うのは只の一つ――

 ――どうか、あの人が彼のままで居てくれますように。私はそれだけで十分なのだから。

「星屑という名前のお菓子があると聞いて……」
 そわり、とマギーは飾り皿の上で天蓋の光を返す小さな『星屑』を手に取った。
 イレギュラーズとして歩み出したその時に『一番星みたいに輝けるように』と誓ったことを思い出す。ローレットに所属して、海洋王国での戦いを経て、漸くほ、と息を吐く。
 怒濤の毎日と、荒れ狂う波濤を越えた先の穏やかな空の色。胸に浮かんだのは、僅かな逡巡。
(ボクは、少しは一人前に近づけたでしょうか……?)
 いつもならば目標(いちばんぼし)を探すけれど、今日は――天ノ川の辺で語らる恋星を探すようにころりと星屑を腔内に転がした。
「仄かに甘くて……」
 この甘さは、天の二人が過ごす時間なのだろうか。
「こうして見ると、お星さまって本当に綺麗ッスねぇ。
 お星さまの形のお菓子も可愛くて甘くておいしいッス! 僕、お星さまにはちょっとした縁があるんスよねぇ」
 鹿ノ子はにまりと微笑んだ。その言葉を聞きながら雪風は「どんな?」と興味を持ったように彼女を伺う。手にした綺羅星は幸運のお守りだけれど――星に願いを、というのは何処の国でも何処の大陸でも、何処の世界でだって同じと思えば感慨深い。
「さ、流れ星とか流れないッスかね! お願いごと、したいッスね!
 もちろん願うだけじゃなくて、そのための努力は惜しまないつもりッスけど!」
 快活に、そう笑う。その笑みに僅か、滲んだのは自身の前より姿を失せた主人の事。心を痛め、出奔した彼の事を思い鹿ノ子は流れる星に祈り捧げる。
「……ご主人、ご主人、早く会いたいッス。絶対に、連れて帰るッスからね」
 ちょこり、と。膝の上には嫁殿が。鬼灯は好物は米酒であると豊穣の地で造られる酒に興味があったと杯を傾ける。
 手元の星屑と夜の星、其れを見比べ首を傾ぐような――そんな仕草を見せた嫁殿に「どうかしたか」と鬼灯は愛おしげに語りかける。
『綺麗ね!』
「ああ、そうだな」
 彼女は美しい物が好きだ。握る星も、空の星も、どちらも美しい。硝子玉の瞳に箒星を追いかけて髪を優しく梳けば鈴転がすように笑みが返される。
『ねぇねぇ鬼灯くん! このお菓子はお空から降ってきたのかしら!』
「そうだなぁ、もしかしたら嫁殿に逢いに来てくれたのかもしれないな」
『まぁ素敵! ねぇ、お星さま。私のお願い叶えてくださる?』
 答えるように星が降る。すてきね、すてきと繰り返す。さあ、お願い事をその駒鳥の唇で囀って。

成否

成功


第2章 第3節

古木・文(p3p001262)
文具屋
如月=紅牙=咲耶(p3p006128)
夜砕き
只野・黒子(p3p008597)
群鱗
アシェン・ディチェット(p3p008621)
玩具の輪舞

 短冊に願いを一つ。黒子は自分のことは自分で何とか熟していけるから、と短冊をまじまじ見つめる。自分のことを願うというのはままあること、だけれど――『天は自ら助くる者を助く』と言う諺があることが頭に過る。
 ――なら、と黒子は筆を握る。自分ではどうすることもできない、縁の無き他人様のあれやこれ。もしくは天候。神のみぞ識るエトセトラ。自身以外となれば、そうした『縁もゆかりも無いけれど』と言うことを天に願うも一興か。
「明日が今日よりは多少は良くなりますように」
 そうやって願いを込める。影ながら尽力もするけれど。願うことは悪くは無いだろう。
「いやぁ、空も綺麗になって満足満足! これなら話に聞く織り姫や彦星とやらも安心して星の河を渡れよう」
 折角の『星空掃除』を終えたのだからと敷物衲衣で咲耶は杯を傾ける。天蓋飾った星屑のきらめきに杯の美酒が仄かに揺らぐ。ごろり、と横になれば眩いばかりの星が咲耶をテラス。
「もう少しで手が届きそうで―――……むぅ、やはり掴めぬか」
 すか、と虚を握った掌に空が落ちる感覚に咲耶羽目を細める。旅人の話によればあの星々は一つ一つが大きな岩と語る物も言う。『宇宙』と呼ばれたその世界に只ならぬ神秘が内包されていると声高に語る者達を思い出し咲耶は再度手を伸ばした。
「今は宙の向こうへは行けぬらしいが皆が力を束ねた結果カムイグラにも妖精郷へも辿り着いた。
 ならば諦めずに歩み続ければいづれあの星々へも手が届こう。ふふふ、楽しみになってきたものよ……」
 人はコレをなんと呼ぶ? そう――「これこそ『ろまん』、という奴でござるな!」
 空の上では今頃、織り姫と彦星が逢瀬を楽しんでいるのだろ王と文はそうだと良いなと顔上げる。
 ざざん。ざざん。打ち寄せ、逃げる波の音に心地よくもめを細め、杯を仰げばその視界に星が散る。眼鏡にちかり、と返した気配に思わず瞬いて文は地上の星を腔内へと放り込んだ。
(この年になって堂々と金平糖――というと恥ずかしかったけれど)
 一度気になれば、その菓子が、その星が気になってしまうと文はこっそりと掌の上で転がした星屑に笑みを零す。これだけ暗いのだから――天蓋の星がこうも明るく照らしていても――誰が取ったか、は星が秘密にしてくれるはずだろうとやや赤らんだ頬を隠すように一気に杯を呷る。
 ざざん。ざざん。
 波の音を追いかけて、視線をそっと天蓋へ。アシェンは何処までも続く夜空を眺めれば、そのままこの体も吸い込まれてしまうのではと感じる。
 きれい、と口にするのもこの静寂を切り裂くようでつい、戸惑って掌は唇へ。
 この静けさを楽しみたい――けれど、邪魔立てする雲が落ちるときが来るならば、ささめきごとの如く人々に合図して。お散歩に、星見に無粋なものは必要も無いのだから。
 けれど、必要ならばその手を差し伸べることはいとわない。暗雲はどこかへ逃げて、きらめく星がアシェンを照らすようにゆっくりと、静かに降り注ぎ続けた。

成否

成功


第2章 第4節

夜乃 幻(p3p000824)
『幻狼』夢幻の奇術師
ジェイク・夜乃(p3p001103)
『幻狼』灰色狼

 いい夜だ、とジェイクが唇に乗せれば幻も「ええ」と肯く事だろう。晴れ渡った星空は覆い隠した雲をもどこかへと流す人々の願いと祈りがお陰であろうかと手が届きそうな程に眩い星を眺める。
「織姫様と彦星様も逢瀬を楽しまれている所でございましょうか?」
 そう、唇に乗せた揶揄う言葉にジェイクもきっと、と幻に杯を差し出した。夫婦が共に過ごすが如く、天でも地でもともにある時間は愛おしい。ゆっくりとジェイクが幻へと酌をすれば、真似るように幻もジェイクへ濯ぐ。互いの恋情で満たすかのように杯を大きく揺らがせて杯を持って腕を絡め合う。互いにその杯を飲ませ合う――そうした『豊穣』に伝わった誓いは共に生きると誓った自身らにはぴったりに感じてジェイクはそっと、彼女のその深い色彩の瞳を覗き込んだ。
「俺は幻を二度と離さない。いついかなる時でも幻の夫として、幻を支えることをこの星空に誓う」
「僕は嫌と言われようとも決してジェイク様から離れません。いついかなる時でもジェイク様の妻として、ジェイク様を支えることをこの星空に誓います」
 言ノ葉が重なり落ちる。そのかんばせに美しく笑みを乗せた幻の頬にそっと触れて、ジェイクはそのぬくもりを離さぬように掌を髪へと滑らせる。
 側に彼女がいる。その喜びはどのような美酒よりも甘美に酔い痴れる事ができるのだから――ぐい、と杯を呷り彼女の唇に重ね、苦く感じた酒をその喉へと落とし往く。
「愛しているよ、幻。もう二度と――離さない」


成否

成功


第2章 第5節

ヨハン=レーム(p3p001117)
おチビの理解者
太井 数子(p3p007907)
不撓の刃

「お疲れ様です、ミィちゃん。飲み物とかお菓子がもらえるようですよ」
 にんまりと微笑んだヨハンに数子――ミーティアはその紅色の瞳に嬉々とした色を乗せて肯いた。
「ヨハンくんもお疲れ様! 無事晴れてきたようでよかったわ」
 たくさんたくさんお願いしたものね、とミーティアが微笑めばヨハンは肯いて彼女を手招いた。
「ほら、ミィちゃん。、僕たちはジュースですね。
 この青いジュースと赤いジュース、僕たちみたいじゃないです? ……なんて。
 ほら、『星屑』とかいうのもいくつか貰ってきましたよー!」
「わあ! じゃあ私は青いジュースをもらおうかしら。ヨハンくんは『私』を味わってね!」
 グラスに注がれた青色と赤色。どちらもどこか互いを思わせるから心が躍る。ミーティアの言葉にヨハンは「ミィちゃん味ですね!」と微笑んだ。
「星屑って金平糖? ここでは金平糖は星屑って言うのね。名前も可愛くて良いわ! この時期にぴったり!」
「はい。それにお星様の味ですが――いろいろ味や形が違っているのも趣ありますね」
 ヨハンが飾り皿の上で転がした星屑にミーティアは「甘くて美味しいわね」と微笑んだ。
「美味しいものもたくさん楽しめて、ヨハン君と一緒で幸せだわ! ―――あ、」
「あ、最後の一つですね。最後に残ったひとつは……もちろんミィちゃんにあげましょう。……ミィ、あーんしてください?」
 ひょい、と摘まみ上げた星屑に、ミーティアは「お、お外なのに」と慌て頬を赤らめる。
「お口開けないとあげませんよ?」
 意地悪――ミーティアは「あう」と俯いてから意を決して「あーん」と口を開く。
 ああ、最後の一粒だったのに。味もなんだか分からなくって。また遊ぼう、と俯いたままの指切りは、仄かにすき、の響きが乗った。

成否

成功


第2章 第6節

ミディーセラ・ドナム・ゾーンブルク(p3p003593)
キールで乾杯
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯

「まあ、まあ……すっかり遅れてしまって。待たせてしまったかしら?」
 ミディーセラがぱたり、と尾を揺らして浜へとたどり着けば杯を手にアーリアはそのかんばせに喜色を乗せた。
「ふふん、ぱぱっと妖をやっつけたからミディーくんを呼んじゃった! 待ってたわよぉ」
 手招きに、小さく手を振り替えしてからミディーセラはアーリアの傍らにそっと寄り添う。今日は近すぎるくらいの気分だから、ぺたりと肌を触れあわせて。彼女の掌の上で揺らいだ杯をぱちりと眺める。
「これ? ――やっぱり地元の物が一番でしょ?
 あのね、ここはとっても綺麗に星が見えるって聞いたから……一緒に見たくて、先走っちゃった」
「まあ」
 大好きなお酒を手に微笑んだあなたの笑顔を見るだけでうれしいのに、とミディーセラはぬくもりを感じながらそのかんばせを見つめる。先走った、なんて。――其れでたくさんの仕事を熟したのでしょうとミディーセラはぎゅ、と彼女を抱きしめた。
「暑いかしら」
「そんなこと無いわぁ。私ねぇ、いつもミディーくんが待っててくれるって思うととっても頑張れるのよぉ」
 お帰りなさい、お疲れ様。頑張ったね。その言葉がアーリアにとってのちからになるから。
 今日もきっと楽しい夜になりますね、と囁く彼の唇にアーリアは星屑をころりと放り込んだ。
「ふふ、びっくりした?」
「まあ、まあ、星を食べてしまうだなんて……あ、甘い。
 じゃあ、わたしも。――アーリアさん。ほら、わたしに食べさせられるのです」
 指先から運ばれた星が、願いを乗せたようにこんなにも甘い――

成否

成功


第2章 第7節

鬼桜 雪之丞(p3p002312)
白秘夜叉
笹木 花丸(p3p008689)
堅牢彩華

「ふっふーん、短冊にお願い事は書かなかったけど、花丸ちゃんのお願い事はしっかり叶ってラッキーだねっ!」
 にまりと笑った花丸は両手にたくさんの食べ物を抱える。『おなかいっぱい!』を掲げたならば星屑の煌めき詰めた小さな袋も揺らがせて。
「よーしっ、このラッキーを早速お裾分けしにいかなきゃっ!」
 るんるんとその足はこぶはエルピスのもと。さっきはともに戦ってくれたから、とその快活なかんばせに笑み乗せてえへへっ、エールピースさーんっ!」と手を振った。
「よければ星見をご一緒させてもらってもいいかな?
 一人で星を見るのもいいかもしれないけど今日は七夕なんだもん。
 だったら一人より二人、二人より沢山…って、悲しいことにまだまだ知り合いって言える人はあんまり居ないんだけどさ」
「わたしが花丸さまのご友人……というのは烏滸がましいですか?」
 首傾いだエルピスに花丸はぱあ、とその笑みを輝かせ「お友達もできちゃったね」と微笑んだ。
 金平糖は懐かしくて。『召喚』前には口にしたことはあるけれど、と星屑をエルピスへと差し出した雪之丞は「星をかたどった砂糖菓子なのですよ」と説明を交える。
「余りたくさん食べると口が甘くなってしまいますから。お茶も飲みながら。口に含んで転がしても、噛んでも。美味しいです」
「そうなのですね。星をたべるのは、とても不思議です」
 瞬くエルピスのほころぶ笑顔に雪之丞は肯いた。海を越える一線を経て、こうして話しエルピスの笑みが見れることに安堵を感じ息を吐く。
「エルピスは海遊びには興味はありますか? カムイグラでは夏祭りがあるようですし、よければ」
「ええ。……雪之丞さまがよろしければ。ぜひ。あそびたいのです」
 指を絡めて指切りを一つ。夏祭り、楽しみですね、と言葉にすればエルピスはぱあと笑みを零した。

成否

成功


第2章 第8節

エーリカ・メルカノワ(p3p000117)
夜のいろ
恋屍・愛無(p3p007296)
愛を知らぬ者

 海は良い。愛無はその足先を波に浸して視線で追いかける。泳ぐのは余り好まないが、生き物も多い。故に、いのちが芽吹き帰る場所。その『響き』を聞いていると心地よいのだ。遙か、生き物は母のその身のうちでいのちを得たらしい。その回帰本能であるかは分からないが――それでも、と愛無は目を伏せた。
 辺境とはいえど、妖への対処を怠りたくは無い。戦闘は得意だから、と本格的な星見を眺めて、息を吐く。さあ、この星の下で『秘密』を踊ろう。
 指先に乗せた甘い毒の如く、愛無の刃は曇ることは無い。『散歩』のついでに波の音遮る喧噪の魔物を切り裂けば、小さな息が漏れた。
「さて、大物なんぞは残っていないか。――鬼が出るか蛇がでるか」
 まだ、探すその足は止まらない。

 夜のいろ。疎ましかったもの、おそろしかったもの、なくなればいいとおもっていたもの。
 けれど、エーリカはエルピスの手を引いた。
「みて、つきのいろ、ほしのひかり。うみにふたつが映って鏡みたい」
「本当に。わたしはいま、地上に立っているのですよね?」
 問いかけたエルピスにエーリカは肯いた。地と天が交わるように『さかいめ』さえ曖昧で。
「ね、ちょっぴりだけ足をつけてみない?」
 指先浸せば冷たさがじわりと感じられる。けれど、星の海を泳ぐのだって悪くは無いでしょうとその手を取ればエルピスも真似るようにそっと靴を砂の上へ。
 寄せては返す波にさらわれないように手を握ってくれませんか、と。不安げなエルピスと手を繋ぎ、揺れる星のひかりに歓声零す。
「エーリカさま。星を踏んでしまいました」
「ふふ、エルピス。だいじょうぶ。星は空で見ているから」
 星を仰いで、願いを口にして。かなえるのは、わたしたちだと掌を強く握りしめた。

 潮風に乗せた夏の足音は――もう、すぐそこまで来ているから。

成否

成功

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