シナリオ詳細
VR Wedding!!
オープニング
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どんな結婚式が理想ですか?
場所は、形式は。
清廉としたチャペルか。
海の香りと波の音を聞く船の上か。
緑と開放感溢れるガーデンテラスか。
はたまたカムイグラにありそうな神前式かもしれない。
では時間は。
明るい日中か。
茜色から藍色のグラデーションが見える夕暮か。
満点の星空が浮かぶ夜か。
思いを描けば目の前に見えることだろう。
しかし逆に言えば、思わなければ何も映らない。
さあ、どんな理想を描きますか?
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やあ、と気軽くローレットの門をくぐったのは、練達でよく知られる1人の女性だった。
「こんにちは! どうされたのですか?」
「イレギュラーズたちに試してほしいモノがあってね」
『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)に答えたのは『実践』の塔の塔主、佐伯操。彼女は眼鏡の奥にある瞳を細めると、背負う七つ道具が持っていた代物をテーブルへ置いた。
「これが試してもらいたいものだ」
「ヘルメット……? ですか?」
目を瞬かせるユリーカに、操はつけてみるよう促す。帽子を外し、ヘルメットらしきそれを装着したユリーカはわぁ、と歓声をあげた。
「すごいのです、チャペルなのです!」
「見回してごらん」
「左右もバッチリなのです!」
ユリーカは大興奮。その視界にはどうやらローレットではなく、結婚式に使用されるようなチャペルが映っているらしい。実際に使用する姿を見て操は満足げに頷いた。
「挙動はやはり問題なさそうだ。あとはデータ収集の繰り返しだね」
「データ収集?」
ヘルメットを外したユリーカは操を見遣る。ヘルメットに収まっていた髪がふわんと揺れた。
データ収集。それこそがイレギュラーズへの依頼である。
このヘルメットは練達の──つまり旅人(ウォーカー)の──女性陣が主体となって進めていた開発物。ジューンブライドなるものを少しでも味わいたいという、研究者ながら恋に恋する乙女の願望を押し込んだものなのだ。
装着するだけで理想のシチュエーションを見ることができ、寝転がって仮想空間により深く没入することもできる。
「より深く入っていけば中で動き回ることもできるよ。誰かと同じ空間に入りたいならそういう設定もできる」
「じゃあ、じゃあ、もしかして模擬結婚式もできるのです?」
頷く操にユリーカはパッと顔を綻ばせた。イレギュラーズに伝えたなら喜びそうだ。
「ただ、まだ精度が高くないんだ」
脳波を受け取って仮想空間に反映する仕組みであるが、どのような理想が思い描かれるかというケースはまだ多くない。こればかりは人海戦術で進めるしかないのである。
そういうわけでイレギュラーズを数十人ほど。モニターだ、そこまで大人数ではないが通常の依頼よりは遥かに多い。
頼めるかな、という操の言葉にユリーカは力強く頷いた。
- VR Wedding!!完了
- GM名愁
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2020年07月13日 22時05分
- 参加人数11/30人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 11 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(11人)
リプレイ
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望む世界を映しましょう。
考えて、思い浮かべて、目を開ければ──そこはあなたの理想が広がっているのです。
どんな形式でも、どんな場所でも再現しましょう。
だって仮想空間はどこまでも自由なのだから。
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目をあければ、そこには教会があった。茄子子はすぐに羽衣本教会だと察する。
(会長は会長だから牧師の役だね)
見下ろせば、ほら。理想を映し出した自身の姿は牧師服に包まれている。
そう、これは自身の結婚式ではない。知りもしない誰かの結婚式。羽衣教会が冠婚葬祭を支配した世界の結婚式。
教会の扉を開ければふわりと羽根が舞い降りる。無数の羽根が一体どこから降っているのかといえば天井だが、その原理はよく知らない。こうあればいいな、を描いているのだから然もありなん。
牧師たる茄子子は、壇上に立ってこう告げたいのだ。
「──病める時も健やかなるときも、死が二人を分かつまで愛し合い、ついでに翼を手に入れることを誓いますか?」
ロクがぱちりと目を開けると見慣れた場所。だってここしか有り得ないじゃない?
「さあ結婚式の準備をしようね! 白無垢着る? あっでもベールは被ってほしいな!」
そう語りかけるのは傍らの──ロリババア。こちらもイレギュラーズ当人ではなく他者、いや他ロリババアを結婚させるVRである。
広くなくとも愛情で満たされたロリババア牧場。頬を染めたロリババアが被ったベールを子ロリババアに持ってもらう。密です。
「ところであなた、なんで1頭だけで子供を産んできたの? 相手はいるの?」
コウノトリが運んできたのだろうか。それとも想い人ならぬ思いロバがいたのだろうか。そもそも何故あんなに短期間で産めるのか。
相も変わらず混沌は不思議に満ちていた。
はらはらと、はらはらと。降り積もるのは雪だろうか?
「雪、みたいですね」
隣でそう答えるヴィクトールは小さく笑う。王子のような装いに、白いマントをはためかせていた。
まさか2度目のVRが結婚式だったなんて思わなかったけれど、触ってみると意外にも面白い。ごっこ遊びにしてはあまりにも上等な玩具であった。
「本当に良く出来ている。感触までヴィクトールさま其の物だ」
未散も雪に負けないくらい純白のドレスを纏い、ちょいと触れたヴィクトールの感触に感心している。
開けたチャペルの空は鈍い銀色で、どこを切り取っても白く見える。未散へ手を差し出し、乗せられた手はどちらが冷たいのかもわからなくて。
嗚呼、この場所も、この服装も。
「「似合わない」」
言葉が被って視線を交錯させ、笑う。本当に似合わないものだ。けれどとやはり2人は視線を合わせ、笑みを浮かべる。
「本気のごっこ遊び……悪巫山戯をしてみとう御座いませんか?」
「ええ。悪ふざけも悪くない」
口上を述べる神父はおらず。
誓いの証人となるゲストもおらず。
ここにはただ、2人がいる。
とんでもない嘘を互いの唇から滑り出させて、もはや感触もなくなった指先にいつのまにやら用意されていた指輪を嵌めて。勿論その感触ですら感じられない。
相手の顔を見れば血色も悪くて、仮想空間だというのにここまで再現できてしまうのか──なんて思って、笑ってしまう。
その唇に伸ばした指先をあて、未散は内緒と囁いた。
この誓いは、この空虚な世界だけの言葉。
(結婚式……鳴も憧れはするのだけど)
相手がいない、と思いかけた鳴はぶんぶんと頭を振る。その頬は林檎のように真っ赤だ。
幼きその心が、その感情に名前をつけるには早いと告げている。けれど一緒にいて幸せで、胸の内がぽかぽかと暖かくなる人は、1人だけ。
もしその人とこんな場所で式を挙げられたなら。
「……わぁ!」
目を開いた先には荘厳な教会が建っていた。純白の建物に目を奪われていたけれど、ふと自身を見下ろせば建物に負けないくらい真っ白なドレスを着た鳴がいる。
「可愛いの……それに大人っぽいの」
ドキドキと高鳴る鼓動も、ここにあの人がいたらと思えば更に加速する。教会内へと足を踏み出せば、なおさら。
そんな、芽生えていた想いの名前は──。
汰磨羈が思い浮かべたのは神社──神前式の結婚式だった。
「まずは……服装と髪型か」
この者、依頼の趣旨をこれ以上なく理解していた。想定しうる結婚式を想定通りに行えるか、そのためにはまず新郎新婦が着る服や髪型からチェックしなければならない。
男性は紋付き羽織袴で良いが、女性は種類があるのだ。且つこの手の文化で育った旅人やカムイグラの者でもない限り、詳細はよく分からないだろう。
(コンソールに見本を表示して、気軽に切り替えたり弄れたり出来ると良いかもな)
想像だけでの補佐は難しい。チュートリアルがあっても良いだろう。練達へのフィードバックは多そうだ。
「あとは神社の様式と……ああ、神前式の流れも確認できる方が良いだろう」
やることだらけだ、と汰磨羈は仮想神社へ足を踏み出したのだった。
感じたのは暖かな光だった。仮想空間なのだから感じるというのも変な話かもしれないが、確かに『感じた』のである。
目を開ければ抜けるような青空。視線を移せば緑と花々が、そして人々が楽し気に過ごしている。
タキシードを纏ったゼファーの腕の中ではいつだって彼女の唯一無二、お姫様であるアリスがちょこんと抱きかかえられている。
ふわふわと膨らんだ綿飴のような真っ白ドレスにきゅっと締められたサッシュベルト。抱えられていて歩くことは少ないだろう華奢な足には、ゼファーの瞳を映したようなハイヒールが飾られている。
ゼファーが歩けばフラワーシャワーと風船が青空に舞って、飛んでくる祝いの言葉になんだか面はゆくなってしまう。
「まるで天にも昇る心地ね、あなた!」
くすくすと笑うアリスはまるで天使のようで、今日はずっと離すものですか──なんて。
格式ばった進行も使い古しの誓いも全部抜き。ただ2人とゲストが楽しむための開放的な空間で、一同はデザートビュッフェへと移る。きらりとアリスの瞳が輝いて、自然とティアラを被った頭が彼方、此方と揺れてしまう。
「うんうん。蜂蜜ちゃんはそんなお年頃ですものね?」
くすりと笑うゼファーに強請って食べさせてもらえば、周囲からは冷やかす声。そのまま囃し立てられてするキスはほんの微か、触れるだけだ。
「ほんとにお楽しみのデザートは、この後ですものね?」
もっともっと、チョコレートより蕩けるような甘いゼファーはアリスだけのもの。ここではまだ、ふわふわとほんのり甘い幸せを堪能しよう。
(相変わらずすごいな)
式に参列するための衣装をまとった大地は不躾にならない程度、辺りを見回す。こういった場所に明るくはないが、少なくとも違和感を感じるような何かはない。
こんな場所に座ったのも、赤羽と大地──2つの意識が「式に呼ばれるくらいあるかも」と意見をまとめたからで。
未だ恋愛事に明確なイメージなどなく、すっかり夢物語ではあるけれど。生きている以上はそういった可能性もあるわけだ。
(しかし、もし俺が結婚、した場合……どっちだ?)
赤羽と、大地と。どちらが結婚することになるのか。そして苗字はどうしたらよいのか。ミドルネームだろうか。
そんなことを考えていれば、式が始まる様子。
(きちんト、礼儀よく座ってねぇとダ)
ぴっと背筋を伸ばした自身の鼓動は、当事者でもないのに早かった。
「──アイラ」
ラピスと彼の名を呼んで。彼から返される声は、今までで最も優しい声音だった。まだ始まったばかりなのに、目元が熱くて、喉が震える。
真白のチャペル。空を見上げれば星屑瞬く天蓋が静かにアイラとラピスを見下ろしていることだろう。
その下で2人、これまた真白い衣装に身を包んで立っていた。偶然だとすれば出来過ぎている。
「ゆめ、みたい」
「夢じゃないよ」
ラピスの言葉にまたアイラはきゅう、と喉を詰まらせた。今の私は魔術師じゃなくて、この人のおひめさま。それがまるで夢のようだったから、どうか覚めないでと頬を濡らす。ほろほろと零れ落ちた雫は彼の指で拭われた。
「大丈夫。君を愛し、君が愛してくれる今は真実だ」
だからとラピスが跪く。涙も美しいけれど、笑顔が見たいのだと言って。
「僕のお嫁さんに、なってくれるかい?」
その返答に躊躇など必要ない。
「……はいっ! キミの『およめさん』に、してください」
その腕の中に飛び込んだアイラは子供っぽいかもしれない。けれど、これがキミの愛してくれたボクだから。触れる熱が遠ざかってしまうのではないかと怯える必要はもうなかった。
ボクはキミのために、僕は君のために。
誓いのキスは温かくて優しくて、とけていくように甘い幸せを感じて2人は微笑む。
もうここが夢であろうと現実であろうと構わなかった。2人で歩むスタート地点はこの場所なのだから。
──未来のふたりに、幸あれ。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
お疲れさまでした、イレギュラーズ。
これで練達の研究も進むことでしょう。
良き思い出になったことをお祈りして、またのご縁をお待ちしております。
GMコメント
●理想の結婚式場を見る【見】
ヘルメットをかぶって理想の結婚式場を見ます。どのような場所が良いか明記下さい。
こちらでは意識を現実に残したまま、結婚式場を見ることができます。見渡したり動いたりすれば仮想空間でも同じように動けますが、ヘルメットのせいで現実空間が見えていません。怪我をしないようお気をつけ下さい。
誰かと同じ場所が見たければ同行者として記載をお願いします。また、離れてヘルメットをかぶるとうまく同期できませんので、近くで一緒に試してください。
●理想の結婚式場で過ごす【入】
意識を深く没入させることで、理想の結婚式場にて過ごすことができます。どのような場所が良いか明記下さい。
こちらでは寝転がり、意識を完全に仮想空間へ飛ばします。現実世界では眠っているような状態となり、仮想空間のみで動けるようになります。
こちらも同行者記載すると同じ場所で過ごせます。模擬とはなりますが実際に結婚式をして頂いても構いません。その場合、服装は良い感じのものになっています。だって仮想空間だもの。
こちらも離れるとヘルメット同士の同期ができませんので、近くで試すようにして下さい。
●イベントシナリオ注意事項
本シナリオはイベントシナリオです。軽めの描写となりますこと、全員の描写をお約束できない事をご了承ください。
アドリブの可否に関してはNGの場合のみ記載ください。基本アドリブが入ります。
●ご挨拶
愁と申します。
いわゆるVRです。混沌肯定『不在証明』によりそれっぽいなにか、になっているかもしれませんが。
さあ、理想をイメージしてみましょう。
ご縁がございましたら、よろしくお願い致します。
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