シナリオ詳細
<マナガルム戦記>月暈の湯
オープニング
●ドゥネーヴ領
幻想王国の片隅、美しい海を臨み、その傍らには聖教国ネメシスが存在するその場所は王都の喧騒より離れた穏やかな場所。統治すべき領主なるドゥネーヴ男爵は病に伏せ、前線を辞した。それ故に領内は荒れ放題であったのだが――
ベネディクト=レベンディス=マナガルム (p3p008160)ら率いる黒狼隊はドゥネーヴ領の『領主代行』として自身らの手腕を振るうと男爵に約束したのであった。
それはその、一幕である――
●『焔の幻想種曰く、』
温泉とは、大地が燃えておるのじゃ。つまりは、大陸の焔がその姿を現しているという事!
堂々たる宣言をしたアカツキ・アマギ (p3p008034)にリンディス=クァドラータ (p3p007979)は「成程」と何とも言い難い表情をした。
ドゥネーヴ領の領主代行となったベネディクトと彼を支える隣接するファーレル領の二女、リースリット・エウリア・ファーレル (p3p001984)を中心に此度はドゥネーヴの状況視察と領民への顔見せが為に一定期間はドゥネーヴに留まる事を選んだ黒狼隊。
彼らへと敏腕マネージャはこういった。
――なんでも、ドゥネーヴの領民達にとっては憩いの場となって居る温泉があるそうです。
オーシャンビューの素晴らしい場所だそうですが……滞在中に調査を行っていただけませんか?
観光資源として生かせるならば施策の一環として組み込んで見てはいかがでしょう。
「……つまりは温泉に観光しながらレポートを書けばいいって事なのです?」
首を傾いだソフィリア・ラングレイ (p3p007527)に秋月 誠吾 (p3p007127)は「多分」とだけ告げた。
元はと言えば海沿いの土地に温泉が湧き出たことが始まりなのだそうだ。美しい月を臨むことが出来る事で地域住民よりは『月暈の湯』の愛称で親しまれている。
「でも、温泉と言っても整備されているわけじゃないんだよな?」
「ま、そうだろね。皆も水着着用で入ってるみたいじゃない。
整備するかどうかなんかのチェックに行って来いって訳でしょう?」
に、と笑った燕黒 姫喬 (p3p000406)はその牙を覗かせる。温泉地と言っても休憩所などが併設されているわけではないそうだ。簡単に住民たちが拵えたベンチなどは存在するようだが――基本は水着を着用しているらしい。
「休憩所を併設する事や、本来の温泉の楽しみ方として水着の着用についても考えることが出来る、か。
成程、課題は山積みのようだが、それも領民が為。その手腕、とくと見せて貰おうか!」
『女性の方の』ベ卿――こと、ベルフラウ・ヴァン・ローゼンイスタフ (p3p007867)は堂々とそう笑った。
「準備は整っております」と温泉地へとでむく準備を整えてリュティス・ベルンシュタイン (p3p007926)は静かにそう告げる。
つまり、今回は――温泉回です!
- <マナガルム戦記>月暈の湯完了
- GM名夏あかね
- 種別リクエスト
- 難易度-
- 冒険終了日時2020年07月14日 22時10分
- 参加人数9/9人
- 相談8日
- 参加費---RC
参加者 : 9 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(9人)
リプレイ
●
ドゥネーヴ領の海沿いに存在する温泉地。暫くの領主代行としての滞在期間の間に民達の癒やしの場であるという『月暈の湯』の調査を行うようにと言う指令(?)を受けたイレギュラーズ達は現地に向かっていた。
「領民達の顔や生活をこの目で確かめねば、出来る事を一つずつ確実にこなして行くとしようか」
これもドゥネーヴ領を良くするための必須条件の一つだと言うように『ドゥネーヴ領主代行』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)はゆっくりと月暈の湯へ向け歩を進めた。
先んじて行うのはぐるりと周辺の民達の声を聞くための御用聞きだった。賊を倒したばかり、まだまだ観光資源と呼ぶべき存在があれどもその周辺の民達が困っていては仕方がない。
「成程……月暈の湯。素敵な場所ですね。領内が荒れていた時間も短くはなかったのに、よくも無事だったものです」
隣接するファーレル令嬢、『終焉語り』リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)がそう呟けば領主代行の連れてきた『仲間』の疑問に答えるように民達は「ここら辺は街から離れているから賊には興味が無かったんでしょう」と告げた。成程、温泉を売り払う事に考えが回るような賊立ちでは無かったのだろう。略奪略取があれども人々が『憩いの地』として集っている温泉地は賊達の興味を引かぬまま放置されていたようにも思える。
「観光産業の振興が領の財政と再建にも直結する問題である以上……
活用するなら、遠方からでも訪れやすいよう街道整備は必要かもしれませんね」
ちら、と見やれば荒れ果てた街道が広がっていた。この地向けて出発する際に、地図を確認し周辺情報を『地上に虹をかけて』ソフィリア・ラングレイ(p3p007527)はチェックしていたが『前情報』と比べても見るも無惨な様子である。これが、長らくの間の当主不在による被害なのかと改めて実感させられた。
「温泉……憩いの地、良いものです。観光地として各地にあるということもお伺いしますし、是非調査して民の方たちにとって良い方向へ導けると良いのですが……」
事前に『妖精譚の記録者』リンディス=クァドラータ(p3p007979)はガイドブックなどをあらかた収集していた。情報屋を始め、練達特有ネットワークの情報収集は功をなしていたのだろう。そうしたものを纏め直した資料を手にし、湯量、温度、周囲等の確認も怠らぬようにとくるりと見回した。
「それでは、付近の住民から話を聞きましょうか。彼らの憩いの場である以上、何かしら手を入れるのなら日常的に利用している、そして近隣に住まう彼らの意見はとても重要です」
「はい。可能であれば観光資源となる他に住民の皆さんが使用できる小さな湯なども準備できれば良いですしね」
リースリットへと大きく頷いたリンディスは一度の調査では分からないだろうがその分を近隣住民の声として繁栄で居れば、と土地の強みが効きたいのだとメモ帳を片手に微笑んだ。
「はい。まずは、温泉の拡張……客足の増加……そういったものに抵抗があるかどうか。
無いのであれば、街道整備と共に遠方からの客を目当てにした商売とその施設、宿場町――既にあるなら段階的な拡張、も検討は可能でしょう」
考えられることは様々だ――だが、腹が減っては戦は出来ぬ、のだ。
●
「妾、何となく強い熱が発する方向や部分が分かるのじゃ。
新しく湯が引ける場所があるかどうか探ってみるとするかのう」
ソレが本当かどうかは定かではないが直感を生かすかのように『放火犯』アカツキ・アマギ(p3p008034)は周囲をきょろりと見回した。一先ず情報収集と住民達に話を聞きながら食事処へ向かおうと言う案に従った訳だが――炎の申し子たるアカツキは「いろんな湯8のバリエーションがあると良いのじゃ!」とちら、と『黒狼の従者』リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)が抱えるポメ太郎を見やる。
「動物ふれあいの湯とか……作りたいのう」
「そうですね。やはり、動物と共に、というのは毛などの理由で難しいでしょうし別に準備できるのが良いのでしょう」
主人が視察に向かうのならば、とポメ太郎を抱えていたリュティスが小さく頷けば、ポメ太郎の頬をつんつんとしたアカツキが何かに気付いたようにはっと顔を上げた。
「おっ、あっつい感じの反応があるぞ、リンちゃーん! こっちじゃー!!」
「えっ、待って下さい!」
走り出すアカツキを追いかけるリンディス。元気が良いと快活に笑った『戦神凱歌』ベルフラウ・ヴァン・ローゼンイスタフ(p3p007867)の傍らで『虹を心にかけて』秋月 誠吾(p3p007127)の脳内では『ドキッ、湯煙殺人事件~ドゥネーヴ領の噂~special.2』と言うなどの言葉が浮かんでいた。
「……良く『湯煙殺人事件』とか一昔前のサスペンスであったよな」
「サスペンスなのです?」
首を傾いだソフィリアに誠吾は小さく頷いた。彼女含めて歴戦の戦士たるイレギュラーズが一緒だ。何があってもおかしくない――殺人事件が起きなければ良いな、なんて考えながら。
「観光開発するならば、大きな建物や旅館等を立て、ここで取れる海産物を売り出してやれば、当たると思うんだが……だがなぁ」
この素朴さも良い味を出しているような気がして何処までの開発を行うべきかが迷ってしまう。こぢんまりとした食事処に入り、迎え入れてくれる気の良い店主の笑みを見て誠吾はますます頭を悩ましたのだった。
●
(しっかしここなら、街んなるまで開発してもいいかもねぇ。
……多少の距離は期待感になり、それは温泉がばっちと受け止めるてぇなら、賑やかにしても悪かねぇんじゃないかね)
『猫鮫姫』燕黒 姫喬(p3p000406)はこの道中と温泉地特有のかおりを感じながらそう考えた。ドゥネーヴ領の中心地たる街よりは海へ向かうことで離れているがその距離が期待を感じさせる。そして美しい海に、荒れた土地を整備し直すことで苦にも為らぬ旅路を与えてやれば良い。
そう感じながら通された食事処は座敷だ。ポメ太郎へは座布団が一枚与えられ、その上で座っているようにとリュティスが――主人の命が無くとも主人の名を傷つけぬように犬のしつけはしっかりと――指示をしている。提供される刺身類は海洋王国でも口に出来るものだがたまり醤油と共に出された名も知れぬ魚を一口ぱくりと口に含み姫喬は「ん!」と声を上げた。
「旨い! これは何て魚だい? 海洋では見ないねぇ」
「これは……生で食するものなのですか?」
基本的なレシピの評価も大事であろうと踏んでいたリースリットは『いつも通りで良いですよ』と店員に伝えていたが――何時かの日に口にした天ぷらよろしく海の幸には余りに馴染みがない。海洋王国では刺身として食べられているらしいが幻想王国の淑女にとっては物珍しいのだろう。
「ソフィリア、こっちにいい刺身があるぞ。海のものは、そのまま頂くのが美味いんだ」
誠吾はテーブルの上に飲み物を追加し、空いた皿を側に置かれていた盆へと移動させながら誠吾はいつの間にか自身になついた小さな雛鳥に餌をあげるように勧め続ける。目を丸くしたソフィリアは「お刺身です?」とぱりちと瞬いた。
「誠吾さん誠吾さん、こっちの焼き魚も美味しかったのです!」
塩味が美味しいと頬を緩めるソフィリアは幻想王国の中心、レガド・イルシオンで食事をするよりも美味しく感じるのだと笑みを零す。海が近いから、魚が新鮮なのだろう。
刺身や海鮮類を使用したつまみを口にしながら『何かの相談』をしていたベルフラウがにい、と小さく笑みを零していることに誠吾はふと、気付く。彼女のことだ――晩酌についての良い案でも得ているのだろうか。一応は傭兵である誠吾は働かない訳にもいかぬかと給仕を買って出ようかと考えるがリュティスは首を振った。
「お店の方にお任せいたしましょう。お酌が必要ならば私が担当いたします」
「それじゃ、頼もうか」
シャンパングラスを傾けたベルフラウにリュティスは緩やかに頷く。白身魚のカルパッチョとドゥネーヴ領で細々と販売されるシャンパンはよく合う。その様子を眺めながらリュティスは「こちらの品は少し工夫が凝らされているようですね」と瞬く。
勿論、主人やその客人が好ましいと感じる料理のレシピは『交換』の形式で共有したいというのがメイドの嗜みだ。自身の知っているレシピとの交換を置こうな事で内地側の野菜を使用するなどの料理の幅が広がることでメニューも豊富になるはずだ。リュティスの提案に大きく頷いた店主は楽しげだ。
「うーん……煮魚やカルパッチョ、蒲焼きに照り焼き…お魚に合わせた調理法はありそうですけど……。あっ、焼き魚の身をほぐしたフレークや、お魚の干物なんかはお土産にできそうなのです。
観光地なら、お土産も必要なのです!」
「内地の方で流行の調味料なども良いかもしれませんね」
ソフィリアの提案に頷くリュティスはメモを取る店主に様々な案を教授し続ける。
「ふむ。泉質を利用した温泉卵とかも妾的にはおすすめじゃぞ。
先日依頼でマグロ漁をしてきたんじゃが、超美味かったのじゃ」
「マグロ漁……?」
アカツキの言葉にリンディスが息を飲むが――まあ、破天荒な彼女ならばそういうこともあるだろう。
「炙ったりしたら酒の肴にぴったりじゃったぞ! ベルフラウちゃんも一献どうじゃ、お酒行ける口かのう?」
「いただこうか」
「ほれほれ、リースリットちゃんも、アカツキ手ずからのお酌じゃぞ。今日は気分がいいのでお酌係じゃ」
酒を呷り豪快なるベルフラウの傍らで遠慮がちながら――押せばおずおずと応じてしまう――リースリットがアカツキに小さく頷く。
「アカツキさん、無理強いはだめですよ。しかし……、海老を焼いていただいたりお刺身を頂きましたが絶品ですね」
リンディスが海老や刺身を指定した際に店主は自慢気出会ったことを思い出しベネディクトは小さく笑う。
「うん、美味いな。流石は評判になるだけはある――この店の歴史はもうそれなりに?」
「ええ。代々の領主様にお褒め頂きながら細々と……」
その言葉に、ベネディクトはそうか、と頷いた。ドゥネーヴ伯が倒れてからと言うもの、領主のことを心配し続けたであろう店主がベネディクトたちのを訪れを歓迎してくれた理由がそこにはある。この味を今後も守って行くためには自身の努力も必要であろうか、とベネディクトは決意を新たに食事の箸を進める。
「野菜も良いが、俺はもう少し肉があっても良いな。だが、色々扱い過ぎてもアレか」
「ならば、私が様々な提案をいたしましょう」
ベネディクトのオーダーに答えるようにリュティスが柔らかに微笑んだ。その様子を眺めながらリンディスは「そうだ」と何かを思いついたように立ち上がる。
「今後なのですが、お店の中はお魚を楽しむそのままにしながら温泉の蒸気を利用した蒸し料理や炭をご用意して海鮮の串焼き、というのを店外などでされてみてはいかがでしょうか?
体験型にすることで人件費をだいぶ抑えることもできますし、この海鮮のおいしさでしたらすぐに有名になると思いますよ」
それは良い案だと店主は試作品も是非食べて欲しいとリンディス達へと提案したのだった。
●
お待ちかねの温泉回である――
「事前に聞いてたけど、混浴しかないならばスパみたいなもんか?
まー外国では水着着用で入るのが、当たり前らしいし、こっちの世界でもそうなんだろう。だから脱ぐなよ?」
そう釘を刺した誠吾の傍らで、水着姿のソフィリアは「似合います?」と首を傾いで笑みを浮かべている。温泉自体をもっと広げることが出来るのならば、そうすることで様々な湯の入り方が出来るのに、と感じながら美しく月の光のビル温泉へと脚を進めていく。
「湯じゃ!」と水着を着用したアカツキは傍らに桶を抱えている。ポメ太郎用の『ぷち温泉』は準備万端だ。
「ほれポメよ、お主用のぷち温泉じゃぞ。今日は皆から構われててお疲れかのう、ゆっくり浸かるのじゃぞ」
水着を着用したリンディスは「海の音と風がほど良く、心地よいですね」と微笑み、ポメ太郎の桶へと湯を汲み温泉作りに一躍買う。
「あまり大きく大きく、ではなくこの自然の景色を楽しめる……そんな場所に出来るととても良いかもしれませんね」
穏やかに目を伏せたりんでぃすはがぎょっとしたのは姫喬が「んふふ」とうれしそうに笑っていたからラダ。潮が近い。この辺りも領主代行の『領地』だと効けば「良い仕事だねぇ」とつんつんとつついていたのだ。
「おまけにこの顔と身体じゃあ夜叉も乙女に変わるってもんだ。さぁて、温泉だーーー!」
「わあ!?」
とりあえず、全裸為ろうとした所へリンディスが水濡れOKの書物をばさりと投げる。隠す気なんて更々無い。だが、センシティブだ! 勿論その様子に「水着を着用して風呂に入るのは抵抗があるな」と頷いたベルフラウ以外は水着の着用を進めているのだ。
「え、やっぱ駄目かい? そんじゃあ水着は……今年のやつ? 去年のもあっけど」
「ふむ。駄目か。恥じる所など無い体をしているつもりなのだがな……」
ベルフラウに姫喬も同じように頷いた。それでも、男女混浴である以上は水着を、慌てて告げるリンディスに「視察ですしね」とリースリットは微笑んだ。
「ふむ、では先にしっかりと身体と髪を洗っておこう。湯に入る前に身を濯ぐのは最低限のマナーであるからな! その後、水着を着用し馳せ参じよう」
堂々たるベルフラウ。美しい金の髪を揺らした戦乙女の身体は何も恥じることは無い。多少の洗浄の傷さえローゼンにスタフ家にとっては勲章だ。美しい彼女の言葉に従って男女別々に身を洗ってから集まりましょうと提案したリースリットの背中へと、そっとリュティスが近寄った。
「遠慮されなくても大丈夫ですよ。このリュティスにお任せください」
「えっ、あ、は、はい……」
押せば流されるリースリットであった。リュティスはずずいとスポンジを手に近寄る。常の通りのメイド服を着用し――だが、下は水着である。此は此でセンシティブコスチュームだ――従者であるという笑みを見せたリュティスはささっとリースリットの背中を流した後「ご主人様」と男湯側へと行き――誠吾の叫びを聞いたのだった。
「ベー君の目が若干死んでおるからそこの二人、お世話はほどほどにしておくのじゃぞ……っと言ってる側から……言っても分からぬメイドには後で、アカツキ流水鉄砲をお見舞いするからのう」
ぼやいたアカツキの声を聞きながらリースリットは小さく笑う。温泉自体が楽しみであるから昼にも訪れたがやはり夜の方が格別だ。身体の疲れがすべて流れる感覚が何とも落ち着くのだ。
バスタオルを思わせる水着を着用したベルフラウはゆっくりと温泉へと向かい噴出口の湯を一口分掬う。
「成程、弱酸性か。であれば湯に浸かれば肌は滑らかになり低刺激によって多少の腰痛などにも効くだろう……」
「詳しいのかい?」
「いや、適当だ」
姫喬はそりゃ、面白いとからからと笑う。ベルフラウは蒸気風呂やサウナの方が馴染みが深い。息苦しい程の熱と凍える程の水風呂を往復する――それに勝る者は無いが、今は違う。
先ほど『相談』していたのは彼女が手にした盆の上に答えが合った。簡単なつまみと酒をのせ、湯に浮かべたそれにアカツキが「おお!」と声を上げる。
「何でも神威神楽ではこの様な楽しみ方があると聞いてな。成程身も温まり悪くない」
「月見酒じゃな! 昔からお湯に浸かりながら酒は絶対に呑むなと言われておるが、まあ平気じゃろう」
わくわくとした調子のアカツキにベルフラウは「どうだ?」と差し出す。酒を飲まないもののためにもと冷えた果汁を準備し、定期的に水分を取りのんびりとするのも悪くは無いだろうと提案したベルフラウは桶の中でちゃぽちゃぽと揺れているポメ太郎に「湯加減はどうだ?」と微笑んだ。
「しかし、こうなれば、上がる前にどうだ? 今一度全員で背中を流し合うのは。相手の背中しか見えないなら問題なかろう!!」
「いっひひ! いいねぇ!」
ポメ太郎の手をぎゅ、と握りちゃぽちゃぽと湯の中で遊ぶ姫喬の同意を聞きベルフラウは「どうだ?」と問いかける。メイド服を着用した儘、水着が透けているセンシティブなリュティスは「ご主人様のお背中ならばお申し付けいただければ流しましょう」と常の通りだ。
「リュティス、お前も風呂を楽しめば良いだろうに」
「いいえ、ご主人様の湯浴みを邪魔するわけには行きません。このリュティス、しっかりとサポートさせていただきます」
「いひひっ、いいねぇ。メイド付きの温泉も悪くは無い!」
姫喬が笑い、ベルフラウが盆の上のつまみを一口放り込む。盆の上の酒やつまみが足りなくなれば給仕を怠らぬリュティスが常に供給を続けてくれるのだ。此は悪くは無い。月を見ながらゆったりと過ごせるのだから――しかし……。
「おや、何だかいい気分になってきたのじゃ……うーん、何だか熱いのう……よし、脱ぐか!!!!」
「ア、アッ、アカツキさんんんんん!?」
がばり、と水着を脱ごうとしたアカツキにリンディスの叫び声が木霊したのであった……。
――尚、アカツキはこの時のことを覚えては居ない。
「しかし絶景だねぇ……なぁ、男・子・た・ち」
そうやってにぃ、と笑う姫喬に「俺や誠吾には目の毒だな」とベネディクトは返す。たまにはこういう日が合っても良いのかもしれない――黒狼隊の者達は皆、思い思いに楽しげだ。
(……こうしてみると、どこにでも居る若者の集団なんだよな。
戦う意思が持てない俺はここに居ても、良いんだろうか……?)
茫とその様子を眺めて居た誠吾の腕をくい、と引いてぷかぷかと泳いでいたソフィリアは「誠吾さん?」と首を傾げたのだった。
「しかし……成程、景色が素晴らしいと聞いていたがそう言われるだけはあるな」
「ええ。いい湯です……少しは……心が安まればよいのですけど……ベネディクトさん」
囁くリースリットの声へとベネディクトはこれからも課題は山積みだという様に大きく頷いた。
まだまだ喧騒の月暈の湯――此度の調査では『とてもよかったのじゃ! 覚えとらんけど!』というアカツキのレポートが堂々と目立ったのであった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
お疲れ様でした! サーモンの昆布締めが食べたくなりますね……。
ドゥネーヴ領の統治頑張ってくださいませ。
GMコメント
アニメなら7話くらいですかね。夏あかねです。
●成功条件
・温泉を楽しむ!
・ご飯を食べる!
以上だ!!!!!
●ドゥネーヴ領・月暈の湯
海沿いに存在する自然に出来た天然温泉です。オーシャンビューでとても素晴らしく地域住民たちの憩いの場だそうです。
今回はこの月暈の湯を満喫してください。思う存分、心の儘に。
・夜に利用すると月がとっても綺麗なのです。
・観光地ではないので休憩所などは存在していません。
・お風呂に区分けはないので混浴です。水着着用でも着用しなくてもOKです。
(水着着用の場合はその旨を書いてください。記載を忘れたら取り合えず脱いでもらいますね。何となく……)
・利用時は領民達は居ませんが、もし必要なら居るという設定でもOKです。
尚、視察ですが実際に楽しまなければ何も得るものはないので、心して温泉を楽しんでください!
すさまじく楽しんだら何だかレポートをまとめた事になります。
●お食事処
月暈の湯の程近くで経営される小さな食事処です。月暈の湯を利用する住民たちの憩いの場でもあるみたいです。
海の幸がとてもおいしく料理の腕も高い事で評判の食事処のようです。
しかし、家族経営なのでレシピ等が少なく、食べたいお料理などを提案してあげると喜ばれるでしょう。喜ぶだけなので提案はなくてもOKです。
こちらでは美味しくご飯を食べいってくださいね。また、給仕のお手伝いなど何でもしてもOKです。
何故ならばドゥネーヴ領の領主代行を行っている皆さんなので。
箸休めにでもどうぞ!
それでは、風呂です!!!
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