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シナリオ詳細

異国浪漫

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●異文化の交わり
 神威の果てには国があった。
 多くの精霊種と、邂逅した事の無かった鬼人種の住まう地……
 はたして此処では一体如何なる物語が紡がれる事か――

「ようこそお越しくださいました、特異運命座標殿」

 カムイグラ首都『高天京』
 その一角に訪れた特異運命座標を待っていたのは一人のヤオヨロズ――既知の混沌世界でいう所の『精霊種』であった。ヤオヨロズは鬼人種を虐げている傾向があるらしく、政治の筆頭格である天香・長胤など顕著なモノ。特異運命座標と初めて会った時の会話を直に聞いた事がある者がいれば、なんとなく察する事も出来よう。
 ともあれ、そうであるからしてヤオヨロズの存在には微かな注意を抱く者もいた、が。
「ああどうぞ気を楽に。少なくとも私は貴方達を歓迎しております。長胤殿は外からの来訪者である皆さんをあまり快く思ってはいないようですが……誰しもがそうではありません。――実際、『外』に興味を抱いている者も少なくはないのですよ」
 話を聞いてみればヤオヨロズであるからと言って、皆が『ああ』ではないらしい。
 言うなれば幻想国家であるからと言って全ての貴族が腐敗している訳では無く、鉄帝国であるからと言って一人残らず武に傾倒しているとは限らないのと同じ話だ。豊穣の国にも特異運命座標を素直に歓迎する者はいる。
 外に想いを馳せていたのは決して海洋だけではないという訳だ――
 元々、カムイグラでは此岸ノ辺より訪れし者達がいて、彼らが『外』の話をする度に。
「ええ、未知は輝かしきモノです。霞帝や巫女姫様……ああそれからカラカサ殿も外の世界の文化についてはお話してくださっていまして。まぁお眠りになられている霞帝には最近お会いできず、巫女姫様もお声しか聴いた事はないのですが」
 それでも確実に在るであろう『外』の話はカムイグラの永い歴史の中でもぽつぽつと。
 龍神様のご加護により隔絶されている故、永劫話だけで関わりはないと思っていた――夢が、あちらから繋がろうとは。あぁ……こう言ってしまっては、なんだが。
「子供心が擽られると言いますか……失礼。とにかく我々は『外』との関わりを求める者です」
 海洋王国が浪漫を求めて新天地を目指したように。
 豊穣郷もまた海向こうに夢を見たのだ。
 国家として目指したか、あくまで一個人の範疇に留まる程度であるかの違いはあるが――
「それで、俺達に何をせよと?」
「簡単な事です。外界の事をどうかご教授頂きたいのです。向こうには如何様な国があるか、如何なる特産品があるか……もし可能であれば、向こうの何がしかの『品』などをお持ちであれば見せて頂けると幸いなのですが……!」
 途端、息を荒くするヤオヨロズ。
 詰まる所、例えば天義の国の事や、かつて起こった戦いの話。海洋大号令の冒険譚や、深緑の珍しいアイテムなどを持っていれば見せてほしい、と。まぁ話をしたり武具やアクセサリーを見せたりするだけなら簡単な話であるが。
「無論、タダとは申しません。報酬はお支払いしますし御身らの名は他の者にも伝えましょう! 私、これでも七扇に務めておりまして、知り合いは多少以上いる次第でして……!」
「――失礼だが、貴方は?」
「おっと、これは申し訳ない。名乗るのを失念しておりました」
 と、咳払いを一つすれば。

「私、七扇が一枚『治部省』に務めておりますヤオヨロズの葉坂・智成と申します。お見知りおきを」

GMコメント

 新国家カムイグラ。その交流的な依頼となります。
 ご縁があればよろしくお願いします!

■依頼達成条件
 葉坂・智成に混沌世界の事を話してあげましょう。
 混沌世界由来のアイテムなどを持っていればソレらを見せる形でもOKです。

 幻想、天義、鉄帝……その他どこの国の事でも構いません。今まで辿ってきた戦いの事であったり、冒険譚であったり。純種であれば故郷の身近な事など、様々何でもOKです。面白おかしければ多少誇大に話して頂いても構いませんが、明らかな嘘は駄目ですよ!

 また話すだけでなく交流……というかカムイグラの事に対する質問を智成にしてもOKです。智成が知っている範囲の事であれば素直に話してくれることでしょう。

■葉坂・智成(はさか・ともなり)
 ヤオヨロズ(精霊種)の一人。七扇の中の『治部省』に属する一員であり、外見的には若い男性の様に見える。外界(既知の混沌世界)の文化や技術に特に興味を抱いている様であり、話を聞くだけでも喜ぶ事でしょう。

■治部省(みんぶしょう)
 カムイグラの治世を司るナナオウギの一枚(省庁)です。
 治部省その役目は葬事・仏寺・雅楽・外交事務などなど。
 内政・外交関係の一部を担当しており、智成は此処に所属する一員の様です。

■備考
 本シナリオでは経験値・GOLDはEASY相当ですが、名声はNORMAL相応を取得できます。

  • 異国浪漫完了
  • GM名茶零四
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2020年07月10日 22時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

赤羽・大地(p3p004151)
彼岸と此岸の魔術師
メイメイ・ルー(p3p004460)
約束の力
白薊 小夜(p3p006668)
永夜
彼岸会 空観(p3p007169)
黒影 鬼灯(p3p007949)
やさしき愛妻家
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
戦輝刃
楊枝 茄子子(p3p008356)
虚飾
天目 錬(p3p008364)
陰陽鍛冶師

リプレイ


 『双色クリムゾン』赤羽・大地(p3p004151)は一度、瞼を閉じる。
 話題だけならいくつもあり、しかしだからこそ何を話すべきか。
「経験談ガ、一番リアリティーが伝わるかネ」
 ふと顔を見せた『赤羽』が顎に手を。
 さテ、よぉく聞くんだゾ? 二度は語らぬ。一度目に抱いた感情こそが至上なのだから。
 大地の言はある人物と――そして『己達』の事。
 カムイグラでもどうやら神社などに祈る風習がある様だが、それは大地達が元いた世界でも同じだった。験を担ぐ意味で社へと訪れる事はあり……そしてある日ある社にて。
「俺は『首狩り兎』に襲われ、この首を絶たれた」
「――『首狩り兎』?」
「あア。人も動物も魑魅魍魎も関係なク、首を狩る阿呆者サ」
 思わずさする己が首元。あの日の、視界が途端にズレた光景は今なお思い出せる。
 本来であれば死んでしまう所であったが――そうはならず繋げたのが『赤羽』であった。辛うじて繋がった首と命、そして紡がれたのは復讐心。
「だけどついぞ見つけ出す事は叶わなかっタ。隠れるのが随分と上手い兎でネ」
 転機が訪れたのは混沌への召喚だ。
 幻想で奇怪な事件。首無し死体が発見されたという話を耳にそして――再会を果たす。
「なんと世界を超えて会ったと!」
「ああ。運命と言うべきなのかな。『首狩り兎』だったさ、間違いなくね」
 そこからはもう執念だ。一度は再び取り逃してしまうも。
 月日は流れ『兎』の遊び場の情報を得れば急行し。
 思い出せば首元に幻痛が走る気がする。しかしだからこそ途絶えぬ想いをもって奴を追い詰めてやった。命懸けの戦い、油断すればもう一度首が落とされるやもしれぬ攻防にて――しかし。

 最後はしっかりと、全ての元凶を断ち切ってやった。

「……残念ながら、彼女を倒した証拠は持っていないけど」
 兎は滅した。しかし悪意とは奴だけではない。もしかすればより悪辣な辻斬りがこの世に今も闊歩しているかもしれない。なら――『兎』の後継が現れるならば、その首を獲ろう。
 そして同時に、困る事があれば。
「その時は、俺達ローレットを頼って欲しい」
 仕事はしっかりやるゼと『二人』は紡いで。
 であればと続くのは『お嫁殿と一緒』黒影 鬼灯(p3p007949)で――だがその前に。
「失礼。その手に持たれているのは……」
「ん? あぁ智成殿は俺の話よりもまず嫁殿が気になるか?
 はは、無理はないな。嫁殿からお話ししてあげてくれないか?」
『わかったのだわ!』
 同時。鬼灯の腕元に収まっている金色の髪に美しき風貌を携えた『嫁殿』が反応。
 異国人形――カムイグラにはそうおらぬであろう輝きに智成は眼を輝かせている。ならばと嫁殿の身振り手振り。美を解する心は例え地が異なろうと届くものであり。
 語るは異国の魔物攻防。実際に在った依頼の物語。
『えっとね、少し前にね魔物さん……『対忍々』って言うのと戦ったのだけれどね!
 なんと服を食べちゃうスライムさんだったのだわ!!』
「たい・にん・にん!?」
 ノンノン。TAI・NIN・NIN。人差し指を横に動かし発音が違うと。
『それでね、戦ったんだけどとっても素早くて……十一月さんの射撃も簡単にかわしちゃうすごい子だったのだわ! こうびよよーんと体を変えてたのよ!』
 今度は嫁殿が手を広げて精一杯の表現を。かわいい。
 鬼灯もででーんと謎SEを発する技術と共に……え、どうやってるのか?
 それは舞台演出のあれそれで、これこれしてででーんしてるのです。つまり愛の力だ。
『でもねでもね! 最期にはなんと勝つことができたのだわ! 何故だと思う?』
 イッツ・ア・シンキングタイム。流れるSE三拍。さすれば!
『なんと! その時! スライムをやっつける――温泉が湧いたのだわ!!』
 ばばーんと山場の音が流れるのである! 愛!
「ええ、それは本当に真実で!?」
「信じられないと思うが、本当だ。俺も何故そんなことになったのか一切わからん。
 恐らくあれは神秘的な運命が重なった、奇跡の産物であったのだろう」
 だって事実なのでしょうがない……ともあれ様々な演出と優れた手振りを駆使する鬼灯の言は場を大いに盛り上げるものだ。
 さてさて。次は如何なる話が紡がれる事か――


 キュイー。屋敷の一角に響き渡るは動物の鳴き声で。
「は、はじめまして……メイメイ、です。
 あ、あの、お話するの、あまり得意でなくて……聞き苦しかったら、ごめんなさい……」
 それは『さまようこひつじ』メイメイ・ルー(p3p004460)が連れてきた『カピブタ』の鳴き声だった。それは彼女のペットであり、ピピさんと名付けられている。小さいお手手をぱたぱたと。抱きかかえているその子に視線をやりながら。
 慣れぬ会話。故に激しくなる動悸を深呼吸で――抑えて。
「ピピさんは、ラサという砂漠の国の生まれで、全体的にはカピバラ、鼻先と手足はブタに近いのですが、混血ではなく単独の種なんですよ。(キュイー)この小さなお手てがとてもかわいいのです(キュイー)」
 ピピさんははたしてメイメイの紹介を理解しているのかわからないが、会話に混ざる様に鳴き声を幾度も。構って構ってとお手手をぱたぱたー。
「なんとも愛くるしい限りですな! 海向こうには動物……!」
「はい。このような性質なので、向こうの方でもペットとして可愛がられていることが多いです。泳いだりするのも得意なのです――オアシスで無邪気に遊ぶ姿が見られます」
 毛並みはちょっとチクチクするが、毎日ブラッシングしているのでツヤツヤなのだとか。
 大人しく人懐っこく、日向ぼっこが好きで穏やか。
 動悸が再び蘇る前に喋りつくす。言が淀んでしまう前に魅力を伝えて。
「あの、その、宜しければ、抱っこしてみます、か? こういうのも、あります、よ?」
 智成が試しにとピピさんを抱きかかえながら、出されたモノを見据えれば――それはカピブタめざまし。キュイー、きゅいーと鳴き、時刻を表す様のなんと可愛らしい事か。
「ほほうこれは素晴らしい! カムイグラにもカムイイタチという愛玩動物がおりますが、勝るとも劣りませんな……!」
「カムイグラにも、特有の、生き物が、いるんですね」
 なんとか呼吸を整えながら智成と言葉を交わすメイメイ。
 カムイイタチ――特有の生き物がやはりこの地にもいるとは。
 どこぞで会えればいいのだがと想いを馳せて。

「はっはっはじゃあ次は私かな! 向こうの方の宗教とか、知ってるかな!」

 意気揚々。言うは『羽衣教会会長』楊枝 茄子子(p3p008356)である。
 神。この混沌世界に確かに存在する高位意思。それを崇める天義の話。
「神様の存在を信じて、神の意思に従って、神の意思に背く人は断罪するんだって!」
 良くも悪くも『善き』事だけが全てだと。混沌では最も有名な宗教国家――だが。
「でもね、それだけじゃないんだよ。もう一つ宗教があるんだ」
「ほう、それは!?」
「そう――それが羽衣教会っていうんだよね! 見ての通り会長が会長をしてます!」
 えっへん。とばかりに胸を張る茄子子。
 『清きを続ければ、人は翼を手に入れ天へと至れる』――そんな教義を抱え、日々『翼』を手に入れる為に修練をする宗教である。将来は天義を引っ繰り返し、教会こそが唯一無二となるべくの野望もあるのだがそこは胸に仕舞っておいて。
「会長が知ってる宗教はその二つだけだから、多分ネメシス正教会と羽衣教会が混沌世界の特に有名な宗教になると思うよ! カムイグラの方にも何か、宗教はあったりするのかな? 神様とかを信仰してたりしてる?」
「ううむ成程。こちらの方では特に宗教と言うか……ヤオヨロズという枠組み自体が『神』であると称する者も多い形でしてな」
 一応茄子子は嘘を言ってる訳では無い。彼女の認識の範囲の話だから。一方でカムイグラはそも神を名乗る認識の者も多く、天義の様な一神教というよりも八百万的な方面が強いだろうかと智成は語り。
「そうなんだ! あ、ならお近付きのしるしにコレをどうぞ!ㅤ良かったらカムイグラの国教とかにしてください! 羽衣教会はいつでも新しい入信者募集中!」
 高ぶる言。扇動するかのように畳みかける茄子子。渡したのは免罪符――羽衣教会の名が入った独自の――翼が生えやすくなる御利益があるのだとか――
 一寸でもいい引っかかれ豊穣の地へ! 羽衣教会豊穣支部、お待ちしておりまーす!


 一つ。二つ。
 奏でられるは足音。無造作に非ず、それは『乱れ梅花』白薊 小夜(p3p006668)より。
 彼女は言より見せるモノがあった。
 剣扇舞。
 多くの話は他の者が紡ごう。なれば己は己に出来得る一端を。
「カムイグラには人と妖の恋物語はあるかしら?」
 一つ目の演目は『少女と蜘蛛の魔物の恋物語』
 好き合う少女と蜘蛛女、蜘蛛を殺そうとする貴族の話。動きで紡ぐ、一つのお話。
 伝承たればカムイグラにも似たような話はあるだろうか? 最後は少女と蜘蛛は一緒に遠くの地へと旅立つのだが……ああ。だが、彼女が持ち得る物語はこれだけではない。

 妹が魔種になってしまった兄妹の悲劇の物語――
 金持ちが温泉街を乗っ取ろうと雇った傭兵達と仲良くなって一緒に温泉に入った話――
 深緑国境で目撃された長耳好きの変態と交渉してハーモニアキャバクラを開いて怒られた眼鏡の話――いやちょっと待とう。最後のは海向こうの文化が誤解される!?

「これは……なんとも美しい。かような舞の技術をどこにて」
「ふふ――混沌に来る前は、旅芸人をしていたから。あちらこちらで色々と、ね」
 同時に伝えるのは小夜自身の事でもある。
 視力を失い、しかし生きる為に様々な事を生業とした折の産物。
 智成の様子を伺いながら話の起伏を付ける。されば彼が好む物語の方向性を感じ取り。
「では」
 話そう。
「数の差を物ともせず戦う卓越した技量も髑髏の鎧の辻斬り。
 そしてその辻斬りさえ歯牙に掛けぬであろう剣鬼、彼が見せた強烈な殺気と壮絶な剣技」
 かつて経験した『墓場に現れた辻斬りと剣鬼』の一筋を。
 あれほど魂に刻まれた場面があろうか。殺意の滝の狭間にて写し取った一端もあれば。
「かの剣鬼は未だ世に健在。かの剣鬼は殺人剣の権化であり」
 放とう。
 たった一瞬のみの顕現。殺意の再現。
 赤丹――あの夜に『見た』八つの赤き剣閃を此処に――
「むぅ……!」
 思わず唸るは智成か。真実斬る訳では無いが、その切っ先に乗った意思は本物であり。
 咲かせるは世界の広さ。
 海向こうでの彼女の物語。此処まで至った経験の全て……

 さすれば。

 物語は更に語られる。彼岸会 無量(p3p007169)は、鬼の歩む道を。
 それは鬼人種の事に非ず。ただ、どこかにいる鬼の物語。
「――ある時代、飢饉疫病と言った災害が蔓延り人々を蝕みました」
 ある家族では一人を除き疫病を患っており。
 残った一人は、これ以上苦しまぬ様にと家族を殺します。
「そして此の世に救いは無いと、彼岸へ到る事が救済であると人を斬る様になりました」
 救済とは優しさである。あぁ、あぁ。かの優しさを携えし者にはいつしか額に角が生え。
 鬼は人々から『酒呑童子』と呼ばれたそうな。
 カムイグラ。この地では鬼に属する者は迫害される立場だそうだが――無量の語る鬼は異なる。
「そこでは世に仇なす恐るべきモノで御座います」
 人を斬り、殺め、喰らい。
 恐れ。畏れ。怖れ。
 畏怖される。
 どれだけの時が流れたか。どれだけの感情を喰らったか。
 ――しかし鬼の物語は終着を迎える。ある僧兵の手によって。
 戦い敗れ角折られ、立つ事も出来ぬ鬼へ僧は述べた。

 ――殺めはせぬ。されど鬼の娘よ、お前は目を啓かねばならぬ。

 瞼伏す。無量は止まり、一拍の後。
「次に目を覚ました時、そこは鬼の知る己の世界ではありませんでした」
 語る。何もかも忘れた鬼の旅を。
 ある集団に属し己の名と人を斬る想い以外を忘れ。
 しかしかの大号令の折に――ある少女と出会い、物語は急転を迎えるのだ。
 真実を映す少女、鏡の魔種。最後は竜へと共に往き、最期は花畑へと至った少女。
 彼女と出会い、己を取り戻し、己の行いを思い出し。
 それは鬼を苛んだ。
 想起しなくて良い事を想起させた少女を――殺そうとして、しかし。
 大号令の成功に寄与し最後は見守られながら亡くなった、彼女の在り様を視て。
「業を背負おうが救われる術がある、そして他者を救う術もあるのだと……鬼は悟ったのです」
「――して。その鬼はそれから……?」
「それから……ええ」
 鬼がどうなったのかは、またいつかお話いたしましょう。
 鬼の物語は未だ途上。その御話は未完故に。
 いつかいつか――完成の折を、得た時にでも。


「ふむ……では、俺も経験談を幾つか話すとしようか」
 そして『ドゥネーヴ領主代行』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)も言葉を紡ぐ。彼自身、この世界に来てまだそこまで長き時を経た訳では無いので多くの事は語れないが……
「そうだな。この国と最も近い海洋での出来事を話すか」
 無量も少し語った、大号令の一端。
 彼がこの世界に顕現した時から既にかの国と神使は隔てる海に挑戦していた。
 あの海に存在する魔種――そして更に数段上の『冠位』なる強大な存在――
「あれは死闘だった。無論、戦う理由はそれぞれであっただろうが……」
 大号令の悲願を叶える為。己が独自の目的故。友の為。
 それでも、望む先は一つだけを見据えて戦った。
 その結果が、今に繋がる訳だが――さて。
「俺は俺で、ただ必死に槍を振るっていただけだからな……はは。ああ、ほら。後は天目の語る内容こそがより具体的なモノとして語られるだろう。彼の話は間違いなく本当だと、俺も保証するよ」
 だから彼に期待しておいてくれと、視線を寄こして。
「あぁ……それと、幾つか聞きたい事があるのだが、この国は怨霊といった存在が問題を起こしている様な事件を幾つか見るが主に事件を起こしているのはその様な存在なのだろうか?」
「ふむ。そう考えて頂いて構わないかと……かような悪意、災いをもたらす存在をこそ怨霊と述べている次第。そうでない例えば中立や善良なる存在と言うと……ううむ」
 例えば長き時を生き、大きな力を持っている動物や、あるいはその延長線上にある特別な存在と言うのはいてもおかしくはないと智成は語る。ただそういう存在は滅多にいないというが……
「それと、帝という地位に関してだが、かの御仁は神人だと聞いた」
「ええ。昔、訪れた御方です。神使、特に神人は真実、神に近い存在とみられますから」
 なんでも紆余曲折の末に帝という地位に至ったのだとか。
 ヤオヨロズは自ら達を『神の遣い』とも自負している。そう簡単に他者を上とは認めぬが、神に選ばれた神人達はその限りでもないのだろう。ただ、具体的に至った『経緯』に関しては智成誕生以前の話らしく、天香家にでも尋ねなければ分からないとの事だ。

 ――と。その時だ、ついに動いたのは『魔剣鍛冶師』天目 錬(p3p008364)で。

「さぁ、待たせたな。時間を貰って悪かった……が、おかげで力作が出来た」
 トリでいいと事前に述べていたのだ。
 その理由は二つ。一つは来たばかりの旅人であり、話の種が不足していた事。そしてもう一つは――だからこそ絶望の海での出来事を語りたく、その時胸中に火が付いたからだ。
 生半可な語りであれが再現できようか。いや、否である!
 智成も刮目せしは錬の一作。それは――

 海洋・鉄帝・ローレットの1/500スケールミニチュア艦船艦隊!

 鍛冶屋として職人技の粋を集めた。鉄腕を振るう巧の技をここに。
 それは精巧にして卓越された技術の結晶だ。
「そろそろ豊穣の人らも聞きたいところだろ。
 俺たちがここに来る前に『龍神様』との間に起こった事がな」
 ミニチュア艦隊を用いての説明は的確だ。この時何が起こっていたのか?
 視覚をもって説明しているのだから。
 語る。魔種と、冠位との戦いを。楽ではなかった一戦を――そして。

「ああ。こいつが、そっちで『龍神様』と崇めし奴の姿さ!」
「な、なんと!!? こ、これがかの、龍神様ッ――!?」

 同時。素早く繰り出したのは1/500スケールリヴァイアサン絡繰り竜形である!
 その姿は雄々しい。ミニチュアの枠に収めてもなお巨大さを誇るリヴァイアサンは、絶望も此処に。艦隊の出来が素晴らしいが故にこそかの竜が尚に映える。智成は思わず感激している様で。
「誇張じゃなく、同じ縮尺なんだぜ。はは、笑っちまうだろ? 俺たちは必死だったけどな」
 そこまで驚くなら作った甲斐もあったものだと。
 随所に交えた改造もより絢爛さを映し出したか――そして語る。あの戦いを、その顛末を。
 多くを乗り越えて此処へとやってきたのだ。
 強烈な体験を経て、しかし諦めず、絶望は今や静寂となり豊穣の地と繋がり。
 龍神の模型を乗り越え――船団は智成の下へと。
「おおおなんたる波乱万丈な……! これが外の者達の、歩んだ道のり……!」
 あるのだやはり外にも世界が。帝たちが語る――混沌の世が。
 これから如何に豊穣の大地と繋がっていくのだろうか。

 想い馳せ、イレギュラーズ達の語りはこの上なく智成の心に――響いていた。

成否

成功

MVP

天目 錬(p3p008364)
陰陽鍛冶師

状態異常

なし

あとがき

 お疲れさまでした、イレギュラーズ!

 海向こうでの様々なお話、とても素晴らしかったと存じます。
 MVPはヤオロヨズにとっても無縁ではない龍神の話を、更に様々な技能を用いて鮮明に伝えた貴方に。

 これからどのような物語が豊穣で行われるのでしょうか。
 全ては楽しみに――それでは、ありがとうございました!

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