シナリオ詳細
暴れる機械化人狼の群れ
オープニング
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最近の幻想は比較的落ち着いた情勢であり、国内に住む幻想民も親高な生活を行っている。
とはいえ、それは都市部の話。
都市部であれば、幻想貴族の目が行き届いており、揉め事や突発的に出現した魔物討伐など、速やかに解決される。
ただ、他の国との国境に程近い場所であれば、なかなか事態の解決とは至らない。
幻想にとって鉄帝は侵攻もされてきた国であり、国境付近には幻想の警備隊の姿もある。
この近辺で魔物が出現しても、彼らは鉄帝の侵攻の備えもあって、すぐには動けない。
その為、一部幻想の騎士がこの近辺に別途詰めている。
『灰雪の騎士』スノウ・ダイン・スロウスもその1人だ。
白豹を思わせる獣種20代後半の男性であり、鍛えた剣技で近辺の治安を守っていた。
他にも幻想の騎士が近場の別家屋に詰めているが、スノウの腕には及ばぬ状況で、常日頃からしごかれているのだとか。
それでも、普段は穏やかな人物であり、スノウは他の騎士達にも尊敬される人格者であるとのこと。
「こんにちは。ご機嫌いかがかしら」
「また来たのか、アッシュ。余りこんな場所に出入りしているとスパイだと疑われるぞ」
鉄帝の貴族の娘、『白雷の貴人』アッシュ・クラウ・ラースは折を見てスノウへと会いに来ている。
スノウの知人のアッシュは一応、顔パスでこの近辺を歩いてはいるが、幻想民からすれば思うところがある人物ではある。
しかしながら、優れた武芸者でもあるアッシュはこの近辺の魔物退治にも一役買ってくれており、幻想の騎士達も少なからず助かっている状況なのは事実。
騎士達も何も言えず、スノウの元へと出入りしているのも黙認している。
「悪いが、これからまた魔物討伐に出向かねばならん。相手はしてやれんぞ」
「私も行くよ。どんな相手?」
すると、スノウは些か怪訝そうな表情をして。
「これまでに見たこともないような相手だ。俺は君でもどの程度相手になるか……」
話によれば、現れるのは人狼とのこと。
いわゆるワーウルフと言われる類の魔物なのだが、それだけではなく、体を鉄騎種のように一部機械化しているのだという。
混沌の地で進化を遂げたのか、今のところは分からないが、かなりの難敵であるようだ。
「あら、その程度の相手、私が負けると思っているの?」
「よせ、敵の強さを知らずして立ち向かうのは蛮勇でしかない」
それは、獣種の野生の勘のようなものだろうか。今回の相手はかなり危険な……そんな空気を感じていたのだ。
「……一つ頼まれてはくれないか?」
そこで、スノウがアッシュへとこう依頼する。
「王都まで行って、ローレットに助力を頼んできてほしい。……そうだな、アクセルという飛行種の男がいれば話は早い」
アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)については、アッシュも直接ではないが知っている相手だ。
貴族であるアッシュは、幻想王都にも行ったことはあるので、問題なくローレットに向かうことはできるが……。
「でも、鉄帝民の私が大手を振って、幻想国内を歩いて大丈夫なの?」
「この場の戦力は減らせん。頼めるのは君しかいない」
どうやら、状況は思ったよりも切迫しているようだ。
スノウが言うには、その魔物達には理性がなく、進化した身体能力を持て余すように暴れているのだという。
騎士達も防戦一方の状況であり、この場ではスノウが敵に切りこむことができる唯一の戦力。
しかし、そのスノウですら、危機を感じる状況となれば、アッシュも黙ってはいない。
「分かった。……急いでイレギュラーズを連れて戻ってくる」
真顔になったアッシュはすぐに外へと向かって。
「武運を願っているね。死んだらいやよ」
「こんなところに、俺も骨を埋めるつもりはない。……行け」
スノウの言葉に頷き、アッシュは騎士の馬を一頭借り、幻想王都メフ・メフィート目指して駆けていくのだった。
- 暴れる機械化人狼の群れ完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年06月17日 22時35分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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王都から北を目指すイレギュラーズ達は馬車を走らせ、幻想と鉄帝の国境を目指していた。
共に行動していた鉄帝貴族女性アッシュがローレットへと飛び込んで来た時は、ダッチラビットの獣種の青年、『兎身創痍』ブーケ ガルニ(p3p002361)はびっくりしたそうで。
「大変なことになってるんなら、助けに行かんとねえ」
救出対象の男性が同じ獣人のよしみもあるが、必死になって単騎で鉄帝国境から駆けてくるお嬢さんがいい人だと感じたからこそ、ブーケはこの依頼に参加したようである。
「がんばってスノウー! すぐ助けに行くよ!」
鷹の飛行種の青年、『猫さんと宝探し』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)は関係者である獣種の男性、スノウ・ダイン・スロウスの無事を信じ、進行方向を見つめる。
「アクセルの恩人さんか……」
こちらも旅人ではあるが、獣人の姿をした『ファニーファミリー』ウェール=ナイトボート(p3p000561)。
彼は友人であるアクセルが恩返しできるようしっかりサポートをと考えている。
「腕利きと名高いスロウス様が苦労されているという事態がもはや問題で御座いますね」
背に大きな蝶の翅を生やしたミステリアスな風貌の『『幻狼』夢幻の奇術師』夜乃 幻(p3p000824)は事態の深刻さを指摘して。
「優れた獣種の戦士だというスノウが、単なる推測だけでそこまで危惧することはないだろう」
秘境探検家の『特異運命座標』羽住・利一(p3p007934)も、スノウや騎士達の身を案じ、御者に急ぐよう促す。
「それにしても、機械化された人狼で御座いますか」
幻は改めて、問題の討伐対象となる敵は、体の一部を機械化して狂える魔物となっていることを指摘し、手術をしてそうなったと推察するが……。
「やれやれ。これがただの進化だったらいいんだが、人の手が入ってるとなったらな……」
普段、怠惰な態度の『天駆ける神算鬼謀』天之空・ミーナ(p3p005003)だが、今回の依頼にはかなりやる気を見せていて。
「正直、嫌いなんだよ。生命を弄ぶ奴らってのはな」
「それらを市街に放つこと自体、反社会的人物であることが予測されます」
ミーナに続き、幻も放置できぬ相手であることを指摘する。
違法手術に反社会的な活動を行う人物、もしくは組織があるなら、本当に捕らえるべきだと幻は語る。
「ですが、今は目の前の事態に対応しなければなりませんね」
確実に人狼を倒してから、その背後関係の調査を。
そう主張する幻の目に、鉄帝との国境が見えてきたのだった。
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国境付近に詰めている幻想の警備隊へとイレギュラーズ達は接触し、件の機械化獣人が現れるという場所を聞き出す。
「こんな場所で魔物が出てくるなんて」
ボーイッシュな炎の巫女、『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)は自分の住む場所から近いという理由もあり、やっつけないと安心できないと考えていた。
「今も戦ってくれてる人がいるみたいだし、急いで助けに行かないと」
「先に行ってるぜ。1人より2人の方が耐えれるだろうよ!」
すると、ミーナは場所さえわかればと、パカダクラの砂駆に乗って早駆けを敢行する。
そのミーナを追い、他のメンバー達はスノウと彼の部下である騎士達の姿を探す。
現場近くになると、焔が神の使いである鳥を飛ばして空から周囲を確認し、ウェールも超嗅覚を働かせた上でエネミーサーチによる索敵を行う。
「……こっちだ」
ウェールの言葉に焔が頷き、皆馬車を走らせて現場に急ぐ。
また、索敵を仲間に任せていたアクセルは情報交換を頻繁に行い、敵の奇襲、別動隊との接触に備えていた。
超視力を働かせていた利一が前方に小さく何かが交戦しているのを確認すると。
「僕は後ほど参ります」
幻は機動力を生かす戦法の為、少し離れた位置で馬車を降りる。
6人になった馬車がそのまま現場へと近づいていくと、幻想の騎士達が機械化した人狼集団を、そして、白豹を思わせる獣人が5体を相手に奮闘している姿が確認できた。
それがスノウに間違いないことを、メンバーは面識のあるアクセルに確認を取る。
「しかし……1人で5体相手にして持ちこたえられるってすごく強かったんだね……」
「っちゅうか、なんなん、この機械と獣の入り交じってん……」
そこで、改めてブーケは敵の姿を注視して。
「「グアアアアアッ!!」」
獣と油の臭いが入り混じり、自我もなく暴れる機械化人狼。
この敵は、旅人や秘宝種とは異なった印象を抱かせ、ブーケは気持ち悪さを感じていた。
「こういうのあれやろ、生命の冒涜? ちゅうやつやろ?」
「やれやれ……、どこにでもこの手の輩はいるものだな」
鍛えぬいた体で今回の事態も力任せに解決をと考える『筋肉最強説』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)は敵対勢力の存在を気にかけながらも、早急に介錯をと戦いに身を乗り出そうとする。
「この世界の騎士がどう戦うのかも気になるし、いい機会だ」
それに、是非とも直接、その戦いぶりを目にしたいともブレンダは考えていたらしい。
「他の騎士達も心配だが、まずはこちらを何とかしないとな」
すでにミーナが参戦してはいたが、かなり傷ついていたスノウを助け出すべく利一は駆け出す。
「戦略的にも重要な相手、逃がさずやっつけちゃうからね!」
仲間達と共に、アクセルもまた恩人の救出をと戦いに介入するのである。
●
少し時間を遡り、パカダクラに跨ったミーナがその戦場へと駆けつけて。
「間に合ったか……」
「ローレットの天之空・ミーナだ。こいつがいたから私だけ先に来たぜ」
救援が間に合ったと安堵するスノウは、アッシュが上手くやってくれたことを察する。
交戦を開始してさほど経ってはいないようだったが、それでも彼の身体に刻まれた傷は浅くない。
「さあ、知能無き狼達よ。この私を倒せるもんならやってみな!」
その彼の身体にかなり攻撃は集中していたことを見たミーナは、迷うことなく名乗りを上げて3匹を引きつけ、防御に集中していた。
他メンバー達が駆けつけたのは、それから程なくしてのこと。
「下がってください」
利一は目上と判断したスノウへと声をかけ、敵との間に割り込んで彼を庇う。
「援護、感謝だ」
利一へと礼を告げたスノウは顔見知りであるアクセル、アッシュの顔を確認し、小さく笑みを浮かべて前線から身を引く。
「彼の回復を頼む」
ミーナの呼びかけに応じて、ウェールが回復役としてスノウの回復の為に調和の力を賦活のそれへと転じて、癒しに当たる。
「「ウガアアアアアァァッ!!」」
狂ったように機械となった拳や蹴りを叩きつけてくる人狼どもは、毒やマヒの成分を含む鋭い爪を振り回し、噛みつきで相手を食い千切ろうとしてくる。
スノウを気にするアクセルだが、敵の殲滅が先とハガルのルーンを空中に描き、敵陣に雹を降り注がせて人狼達を凍り付かせようとしていく。
そこに、遠方から一気に幻が距離を詰めてきて、機械化された部位と生身の部位の付け根を狙う。
戦場において、動きの速い敵を相手にすると、針の穴を通すような攻撃ではあるのだが。
「僕の目には火の輪潜りをするライオンと同じぐらい容易いもので御座います」
部位の脆さによる高ダメージと機械の機能不全を狙い、幻は自身の高い命中力で狙い通りにステッキ『夢眩』を叩きつけた。
ブーケは後ろに下がってきたスノウの死角を補うよう逆方向を見ながら位置取る。
獣種は種族特性として不意打ちを受けないが、ブーケは増援に叩かれることを懸念したのだ。
「スノウさんが最初に相手してた5頭が優先して倒す目標やんな」
先に駆けつけていたミーナが無双の防御攻勢で3体を引き付けており、ブーケはそちらの1体を叩くべく見据えて。
「熱伝導良さそうな機械化部分と生身の獣部分、どっちが火炎に弱いやろかねえ」
情報としてまだ乏しい部分もあり、ブーケは探り探り自身の身体から血を流しつつ、その血を呪いに変えて敵へと浴びせかける。
「グワアアッ!!」
口にした両方にかかった血が炎へと変わり、機械化人狼は火傷を負って苦しむ。また、僅かだが全身に強いショックを受けて体を若干硬直させてもいたようだ。
しばし、交戦を行う中、アクセルはふと思う。
「こうした場所での警備の大変さ、自分が戦う立場になるとわかることもあるねー……」
これが冬の山なら雪に埋もれて大変だったろうと思うし、鉄帝での兼ね合いもある。
そこはアッシュが少し苦々しい顔をしつつも、機械化した腕で人狼を殴りつけてくれていた。
また、スノウからスイッチする形で人狼の相手を引き継いだ利一は2体を相手にする形に。
利一は敵の挙動を超視力で注視しながらも、片方へと因果を歪める力の残滓を指弾で飛ばして撃ち込み、その感覚に異常をきたす。
「ガアア、アアアア……ッ!?」
利一に続き、焔もそれら2体を纏めて、炎の槍によって斬撃を浴びせかけていく。
「スノウくん、大丈夫?」
敵の身体が炎で燃え上がるのを横目で見つつ、焔が気にかける。
ただ、他人を気にしてばかりもいられない。素早い動きの機械化人狼達の毒性を持つ爪が焔の体を掠ってしまう。
すぐにウェールが超分析による治癒に当たってはくれるが、油断しているとあっさり意識を持っていかれかねない相手だ。
仲間を傷つける敵が両腕を振り下ろしたその瞬間、ブレンダがそれぞれ風と炎を刀身に宿す2本の長剣を両手に握り、乱撃を浴びせかけていく。
「まずは、数を減らさないとな」
依然として5体の機械化人狼は健在。
素早くタフな相手に、ブレンダは一層気を引き締めて討伐の手を強めるのである。
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仲間達の回復を続けるウェールは、増援の存在がいないかと獣の鼻をひくつかせる。
「今のところ、騎士達が抑える分のみだが……」
情報では、現在、ウェールの嗅覚で感知する分のみこの場には敵がいる状況だ。
焔も時折、上空の鳥と視覚情報を共有し、新手が来ないかと監視を行うが、やはり戦闘区域外から迫ってくる敵勢はいないようだ。
そんな中、ミーナが抑えていた内の1体をイレギュラーズ達は集中して攻撃を加えていく。
ウェールがしばしスノウを回復していた間に、ミーナが防御態勢を取る間もなく思わぬ一撃を立て続けに腹へと受けてしまう。
人狼の機械の足による蹴りが痛打となっていたが、彼女はパンドラを砕いて交戦を続けていた。
その間に、遠方から迫って相手を叩き、叩いてから距離を取るといった行為を幻は繰り返す。
彼女は攻撃に奇術を使っており、理性が無くなったはずの人狼達に想い人の夢を見せつける。
「貴方は何度も見ることになるでしょう。貴方の想い人の姿を」
「ガ、アア……ッ」
元の人格として残っていた意識へ、幻が見せつける夢。
その人狼はその場へと倒れてしまい、昏睡したまま果ててしまった。
傍では人狼2体とイレギュラーズ3人がメインとなって交戦を続けている。
騎士達がしっかりと人狼を抑えている状況もあり、こちらへと増援が流れてくる状況は現状ない。
それもあって、ブーケは目の前の相手へと虚無の剣で切りかかり、呪殺の一撃でその身を深く裂いていく。
一見すれば、こちらも順調に敵を攻め立てているようにもみえるが、機械化人狼は一撃が非常に強力であり、素早く敵の攻撃を避けていたはずの焔が鋭い人狼の爪に抉られてしまう。
だが、彼女の燃える炎はパンドラをくべることで強く燃え上がり、なおも交戦姿勢を崩さず、槍を振り回して炎の斬撃を飛ばし続けていた。
あちらこちらで仲間が危険な状態に陥り始めており、ウェールは回復に追われている状況だ。
奇襲こそないものの、交戦中の人狼の強さはかなりのもの。騎士達も数体は何とか撃破していたが、倒れる者も出始めていてかなり苦しそうだ。
「すまない。部下の援護に行かせてもらう」
「私も手伝います」
休んではいられないと部下の方に向かうスノウと、ついていくアッシュ。
2人が駆けつけたことで、騎士達の士気も高まっていたようだ。
少しずつ、押し返す状況を見ながら、ウェールはミーナや焔を中心に仲間の回復へと当たる。
アクセルも序盤は神聖の光で攻撃を行っていたが、ウェールが体力回復に徹することができるように集中して仲間達の恐怖を振り払う。
「回復系スキルもクリティカルすれば、回復量が増すってわかったのは大きいし!」
もうしばらくは、アクセルは仲間達が十全に戦えるよう立ち回る構えだ。
そんな中、ミーナが引き付けていた1体の人狼の足がふらついて。
「―――斬り捨てるッ!!!」
間合いの2体を両手の刃で切り裂いていくブレンダ。
直後、片方が事切れ、地面へと崩れ落ちていく。
そこで、ブレンダがふと騎士達の方を見れば、仲間の手当てを受けて多少の傷を残してなお、部下を鼓舞して戦うスノウの姿があった。
(ふむ……)
今後の為にもと考え、ブレンダは見られる範囲でスノウの戦いを観察していた。
数が減ってきた人狼3体が満足に戦えぬ異常状態となれば、利一は個別に仕留めようと因果を歪める力の残滓を利用し、追撃を与えて肉体的にも、精神的にも追い込む。
そいつへと、ブーケが再度生み出した虚無の剣で切りかかると、動きを止めた人狼は白目をむいて倒れていく。
続いて、傍で弱っていた敵目がけ、ミーナが全身の力を雷撃へと変換して。
「やられたら、やり返すぜ!」
手にする剣で一閃させることで機械化人狼の身体を感電させ、そいつは黒煙を吐きながら崩れ落ちていった。
少しして、焔もまた倒れかけたお返しにと、攻撃性を高めて。
「そうだね、お返しだよ!!」
闘気を火焔へと変え、彼女は一気に目の前の敵を攻め落とし、地面へと伏してしまう。
刹那炎に包まれたその人狼はその身を燃やし、前のめりに倒れる。
こちらが5体を倒したところで、騎士達の相手にしていた人狼達も数体を倒されたことで恐れをなし、一斉に走り去ってしまう。
なんとか撃退に成功し、皆安堵の息を漏らすのだった。
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機械化人狼達を撃退して。
焔は騎士達が相手にしていた人狼達が逃げるのを、神の使いで追跡する。
「巣みたいなところが見つかればいいんだけど」
もっとも、焔はそう言いながらも巣の存在すら疑問視してはいたが……。
「それにしても、何だか変わった魔物だったね」
混沌では自然にこういう姿へと変貌することはあるのかと焔が仲間達へと尋ねるが、皆それについては否定的だ。
「敵の死骸を王都に持ち帰れないだろうか」
分析すれば、敵の能力、発生源が分かるかもしれないと言う利一と同じ考えだった幻が、人狼の死体から機械化した足を切り離そうとしていて。
「ラース様、見覚えのある機械だったりしませんか?」
幻に差し出された足を見つめていたアッシュは、大きく首を横に振る。生憎と機械工学などの類は専門ではないのだとか。
「そうですか、でしたら、スロウス様にお任せ致します」
「ああ、預からせてもらおう」
受け取ったスノウが部下を労う中、アクセルがブレイクフィアーを使い、恩人と騎士達に平静さを取り戻させる。
スノウは部下へと休息を取りつつ現場の状況報告、王都への遺体部位の運搬などを指示していた。
その最中、幻想騎士がスノウの尻尾に着目していたのをブーケは見て。
「なぁん、幻想騎士さんたちもスノウさんのモフフカしっぽ気になるん?」
ウェールの尻尾はかなりのモフモフ具合だが、ブーケはスノウの尻尾に着目して。
「俺も誘惑に使うくらい被毛には自信あるのに、嫉妬するくらいフワフワで、ほんま羨ましいわあ!」
人間種の騎士達ももふもふには興味はあるものの、嫉妬するかと言われると共感できずに苦笑していたようだった。
スノウはブレンダの肩を借りつつ、アッシュとイレギュラーズを連れて自宅へと招く。
特に、知人であるアクセルは喜んでその招待に応じていた。
「何か飲む?」
勝手知ったるといった態度で、アッシュはスノウ宅の台所で人数分の飲み物を用意し始める。
家に戻ったところで、ウェールが天使の歌を響かせて手当てを行うと、スノウも安堵の息を漏らして。
「しかし、助かった。改めて感謝させてもらう」
イレギュラーズ達もその礼を受けはするが、アッシュが助けを買うたからこそ駆けつけたにすぎないと口を揃えて。
「ピンチの時に助けを呼んできてくれて、一緒に戦ってくれるとはいいお嫁さんだなー」
笑顔を浮かべるウェールはいつ式を挙げるのかとド直球に尋ねる。
鉄帝の貴族なら、政略結婚などで他の男と結婚式を挙げているときに迎えに来たと殴り込みを……とドラマのような展開をウェールは口にする。
利一も最初は表情に出さないようにとしていたが、そんな展開を想像してしまって思わずニヤニヤしてしまっていた。
「……で、式はいつだ?」
重ねて問いただすウェールの姿にスノウは呆れ、アッシュはそそくさと台所に引っ込んでしまう。
「2人の仲がいいと嬉しいね。……えへへ」
そんな命の恩人とその知人の微笑ましい光景にアクセルも頬を緩める。
スノウと剣技談義をしたいと思っていたブレンダ。
だが、どうも話が切り出しにくい状況となり、ブレンダは後で改めて伺おうと考えていたようだ。
「正直、国とか人種とかって気にしすぎてもいけないと思うんだよな」
特に、体裁を気にするアッシュを見て、お茶を口にするミーナが呟き、自身が人間でなくなったから言えることかもしれないと、悟ったように語る。
国や種族のしがらみというのは、なんとも面倒なものだと、改めてその場のメンバー達は一様に感じていたのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPはいち早く現場へと駆けつけ、救助対象を守った貴方へ。
関係者のご参加もありまして、続編も想定しておりますので、
しばらくお待ちくださいませ。
今回はご参加、ありがとうございました!
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
こちらは、アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)さんの関係者依頼ですが、どなた様でも参加可能です。
鉄帝にほど近い幻想辺境に現れる魔物討伐を願います。
●敵……魔物
○サイボーグワーウルフ(機械化人狼)×5体(+α)
身体の一部を機械と化した狂える魔物達です。
鉄騎種と獣種のハーフにも思える見た目ですが、すでに自我はありません。
毒やマヒの効果がある鋭い爪、噛みつきを使う他、機械となった四肢で強烈な打撃を繰り出すこともあります。
距離を取れば素早く接近して来るため、遠距離でも油断はできない相手です。
●NPC
○『灰雪の騎士』スノウ・ダイン・スロウス
幻想に属する騎士で、鉄帝に近い幻想の辺境に住む獣種の男性です。
争いを好まぬ穏やかな性格ですが、真面目さも合わせ持ち、日々鍛錬は欠かさず、剣技を磨いております。
以前、行き倒れていたアクセルさんを助けたことがあり、彼にとっては命の恩人に当たります。
戦闘面でも卓越した剣術で魔物と対しますが、さすがに1人では今回は相手が悪いようです。
○『白雷の貴人』アッシュ・クラウ・ラース
鉄帝の貴族の1人。金髪に赤と青のオッドアイが印象的な女性です。
華奢な見た目に見えますが、機械化した腕部は細腕ながらに中々の威力を叩き出すパワータイプ。
鉄帝の民らしく、強い相手の力を認める価値観を持っております。
戦いでもその細腕を直接叩きつける肉弾戦を好みます。
あまり好みませんが、中、遠距離用に気弾を飛ばす技も習得しているようです。
○場所
幻想と鉄帝の国境近くに、人型の魔物が出現しており、体の一部が機械化した人狼が数体出現しております。
理性なく襲い掛かる集団を騎士達が別途集団で相手していますが、スノウさんが単騎で5体を相手にしております。
相手の力量も高い上、数もあって、さすがに分が悪いのか、スノウさんは劣勢に陥っております。
アッシュさんの情報提供もあり、急いで現地に向かい、魔物の討伐へと当たります。
現場は岩場で、身を隠せる場所も多数あり、見通しは良くありません。
荒ぶるままに襲い来る魔物達ですが、本能的に連係プレイも行ってくるので、確実に叩いて討伐したいところです。
スノウさんの相手する5体を倒せば、騎士達の相手する集団は恐れをなして逃げていきます。
事後は、スノウさんの家でアッシュさんが傷の手当て、飲み物を提供してくれます。
それほど描写量は多くはありませんが、ささやかながらに交流を楽しんでいただければと思います。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
それでは、よろしくお願いいたします。
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