シナリオ詳細
<虹の架け橋>愛の香り
オープニング
●いざ、アルヴィオンへ
混沌と妖精郷アルヴィオンを繋ぐアーカンシェル──その正規ルート、大迷宮《ヘイムダリオン》。かの迷宮は果ての迷宮と同様に、進めば進むほど何もかもが変わっていく場所だ。
花粉に苦しみながら敵を倒したり。
砂糖菓子の世界に辿り着いたり。
語尾に『にゃん』をつけて誘惑から抗ってみたり。
出入り口となるアーカンシェルが異なれば辿り着く空間も異なるもの。イレギュラーズたちは虹の宝珠を手にする事で、先の道を切り開いていた。
さあ、次なる場所は──。
●Rose Garden
「……これは?」
『焔の因子』フレイムタン(p3n000068)は目の前の光景にこれまた目を瞬かせる。この迷宮は進むたびに驚きがいっぱいだ。
むせ返るような甘い匂い。しかし以前のような砂糖菓子の香りとは異なる。そして今回もまた、その匂いの元は目の前に広がっていた。
「バラの庭……と言ったところだろうか」
鮮やかにバラが咲き誇る庭園。見上げれば長閑な青い空が緩やかな時間の経過を教えてくれる。では左右を見渡すと、これまたバラだ。まるで壁のように高くそびえ立つバラの生垣は、たとえフレイムタンがジャンプしてもその向こう側を見ることができないようだった。
(迷路のよう……いや、迷路なのか)
イレギュラーズとともに数歩だけ歩き、探索したフレイムタンはそう判断する。
歩けば壁、曲がれば壁、さらに曲がれば曲がり角。別の道を進めば良いのだろうが、今のところはどのみちが正解なのかさっぱりだ。
ふとフレイムタンは顔を上げる。きゃらきゃらと笑い声をあげる光は、どうやら同胞(精霊)のものらしい。
『ようこそ、Rose Gardenへ』
『君たちは決められた通りに迷って戦って、進まなくちゃいけないのさ!』
楽しげに笑い、くるくるとイレギュラーズたちの周りを舞う光。フレイムタン以外の反応を見る限り、彼ら同胞の声は皆に聞こえているらしい。
『決められたこと以外はしちゃいけないよ』
『女王がお怒りになるからね』
『『ま、できやしないんだけれど!!』』
きゃーくすくす! とじゃれあい始める彼らは、人によって苛立つ存在であるだろう。しかし彼らからどうにか情報を聞き出さなければ──下手したら1歩も動けなくなりかねない。
「決められたこととは、何だ?」
『教えないとダメー?』
『でも君は何だか近い人だ! よぉし、君に免じて教えてあげよう!』
非常に勿体ぶられたが、フレイムタンが彼らを同胞だと見なすように彼らからもそう見えているらしい。教えてくれたことは次のようなことだった。
まず、バラの迷路を破壊しない。そもそも意図的でなければ破壊できないようになっているので、無闇に突っ切ろうとしない限りは問題ない。
次に、ここでは飛べないし地面にも潜れない。すり抜けるなどもできない。この辺りは空間やバラ自体に特殊な魔法がかかっているらしい。
そして、時間。あまりにも時間がかかり過ぎ、夕暮れとなったら閉園だ。皆ヘイムダリオンの外へ放り出されてしまうだろう。
『そ・れ・と!』
『もし何かしちゃったら、途端に女王からのお仕置きさ!』
こわーい! とくっつく光たち。ふむ、とフレイムタンが顎に手を当てて考える素振りを見せる。
「……要は、特殊なことをせず迷路を抜ければ良いのか」
『『そうでーす!』』
迷路は破壊してはいけないし、特殊なこともしてはいけない。女王とやらは純粋にこの迷路を遊んで欲しいのだろう。
「その女王はどこに。先ほどの話なら、こちらが何かしでかせば出てくるのだろうが」
その人物がこの空間のラスボス的存在だろうか、とフレイムタンが問うと光は『出てこないよ』と答えた。
『何かするとピカッ! ってするのさ』
『女王の居場所を教えるわけないだろ〜?』
光たちはさあ行った行った、とイレギュラーズたちを急かす。早く遊ぼうとでも言うような、そんな声音で。
フレイムタンは彼らもイレギュラーズを交互に見ると、小さく肩を竦めた。どうやら行くしかないようだ、と。
目の前にはバラの壁。広がる迷路のどこからかは人ならざるモノの気配もする。恐らく好意的反応は得られないだろう。
彼らにとっては遊びかもしれないが──こちらには妖精という急がねばならない理由がある。気を引き締めてかからねば。
- <虹の架け橋>愛の香り完了
- GM名愁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年06月06日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●
「この大迷宮は本当に色々なモノがありますね!」
『蒼剣の弟子』ドラマ・ゲツク(p3p000172)はその光景に目を輝かせる。以前の空間では街が1つ丸ごと入っていたが、今度の空間は女王の城に迷路ときた。
(まるで様々な世界を内包している、果ての迷宮のよう。あの場所と、何か繋がりがあるのでしょうか……)
幻想の王侯貴族よりもたらされる踏破依頼。その先が果ての迷宮と呼ばれる広大な地下迷宮だ。この大迷宮ヘイムダリオンとは何ら関係ないはずであるが、どこかで何か繋がっているのかもしれない。
「おい、大丈夫か?」
「! べっ、別に卵丸、見惚れてなんかいないんだからなっ」
『真実穿つ銀弾』クロバ=ザ=ホロウメア(p3p000145)の言葉にはっと目を瞬かせた『蒼蘭海賊団団長』湖宝 卵丸(p3p006737)。ツンとそっぽを向いて見せるものの、図星だったのだろう──その頬は赤く染まっている。
だがしかしそれを指摘するのは無粋というもの。クロバはそうかいと肩を竦め、視線を薔薇庭園へ移した。
「ズルを許さない迷路、か」
飛んで全景を見ることも、地下へ潜ってショートカットすることも不可。もちろん物質透過で薔薇の壁を抜けることもNG。女王なる存在は薔薇庭園を楽しんで欲しいということか。
「とりあえずは、真っ当に迷路を抜けれるように努力するのがいいかしらね?」
『儚花姫』ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)はかくりと首を傾げる。ステキな景観はなるべく壊したくないし、先方の望みとあらばそうすることが正しいのだろう。
そうだねと頷く『饗宴の悪魔』マルベート・トゥールーズ(p3p000736)は薔薇庭園に目を細めた。何とも優雅で美しい。こちらには──イレギュラーズには進まねばならない理由があるが、それはそれとして楽しい仕事になりそうだ。
「許されるのならゆったりと時を過ごしたいものだけど、効率よく迷路を抜けないとね」
「迷路を歩いて、迷って……本来的には非効率ですが……」
そんな非効率もここに置いては効率的。アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)はそのマナー──あるいはおもてなし──へ従うことこそ道理なのだろうと納得させる。この先には屹度、遊び心のある楽しい女王が待っているのだろうと考えながら。
「策らしい策はあまり考えられないが、引き受けた以上はやり遂げねばな」
二手に分かれるか、と『黒狼領主』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)は皆を見やる。視線を受けてちらりと『焔の因子』フレイムタン(p3n000068)が精霊たちを見やれば、光はクルクルと互いの周囲を回った。
『大丈夫!』
『ズルをしないのならば、女王はとても寛容なのさ!』
「……だそうだ」
「成程、純粋に迷路を攻略すれば良いと……単純に戦闘を行うよりも難しそうだが、不正は絶対にしないと約束しよう」
精霊たちへ頷くベネディクト。次いで彼の視線は仲間へ向き、グループごとに名を呼びあげる。
「同班の皆サマは改めてよろしくデスヨ!」
仲間たちへ挨拶した『シャウト&クラッシュ』わんこ(p3p008288)はくるりと向き直り、薔薇庭園へ。色鮮やかな花弁によって道は隔たれ、その先がどのようになっているのか見通すこともできない。待ちに待った迷宮探索が眼前で待ち受けていた。
「さてさて、宝珠目指してれっつらごーデスヨー!!」
拳を突き上げるわんこ。進み始めればすぐに最初の分岐点が現れる。丁度二手に分かれたそこで、2グループはそれぞれの道を進み始めた。
「次はこっちだな」
がりがりと地面へ武器で目印を付けるクロバ。後方に仲間たちがついてきていることを確認し、敵の襲撃に備えながら先頭を進んでいく。その顔つきは至極真面目だが──実の内心、遊んでいる気分で楽しかったりするのだ。
(まぁ、生死をかける程の敵もいないのであればそこそこ気楽にやれるしな……。楽しんで迷路を攻略できるならなんと良い話か)
この空間は『モンスターを討伐する』より『迷路を探検・踏破する』ということに重きを置いているような気がする。何の考えも無しに突き進むのはただの無謀だが、ある程度決められたように迷って戦って進まねばらならないのだろう。
「古き友の住む妖精郷に危機に、先を急ぎたいのは山々ですが……ズルには罰則もありますしね」
「小細工せずに攻略しろという事ならばやるだけやるしかないという事だろうな……」
城の方向を確かめながらメモで道順を書き起こすドラマ。虹の宝珠がどこにあるかもわからないが、急いても仕方がない。地道に堅実に、最善をつかみ取らねば。
「女王様がこの薔薇の迷路を考えたのですよね。どんな素敵な方なのでしょうか?」
ドラマは視線を移すと行く手を阻み、惑わせる薔薇たちへ問うてみる。花はお喋りなようで、複数からの返答があった。
怖い人。けれど花や正しい人には優しい人。毎朝花の1つ1つに挨拶をしてくれる人。
薔薇たちからの断片的な情報を繋ぎ合わせるに、そこまで常識を欠いた存在とも思えない。夕暮れになれば閉園だというのだから、女王は恐らく開園前に花たちへ挨拶しているのだろう。
「こちらには、何もなさそうです」
冒険者の勘に引っかかるものなく、さらにそっと覗き込むことで確かめたアッシュはドラマへ肩越しに告げる。冒険のいろはや心得を胸に、さあ先へ。
(なんだか急にわたしは熟練の経験豊富な冒険者になった気分になってきました)
そこに実力が伴うかと言えば、彼女が『なった気分』というようにまだまだなのだろう。けれど自覚があるのならあとはただ精進するのみ。
そんな彼女の片手は常に薔薇の壁──とはいえ、完全につかないよう少し間を開けている。先ほど手をついた時、薔薇のトゲで怪我してしまったのだ。
血も出ないほどのかすり傷。けれど塵も積もれば山となるように、傷も増えれば支障が出る。壁へ手をつけるのは確実に沿っていくためなのだから、壁の気配が感じられる程度でも良いのだ。
迷路を往くセオリー──壁に手をつき添って歩けば、いつか確実に出口へ辿り着く。最もどれほどの時間がかかるのか、夕暮れまでに辿り着くことができるのかと言うと定かではないかもしれない。
(けれど、小細工はなしに自分の足で結果を出せ、と。それこそが真理の様な気がしてならないの、です……たぶん)
他人の──仲間以外の手を借りてはいけない。それ以外はきっと『ズル』だと言われてしまうのだ。あまりズルというズルも思い浮かばないけれど、とヴァイスは仲間たちについて行きながら精霊を見上げる。
「どっちに向かうとたどり着けるか、教えてもらえるかしら。それとも教えちゃダメだって言われているかしら」
『そりゃあ勿論……あ、いないんだった。教えなーい!』
相方の言葉を待ったらしい精霊は、その相方がもう一方のグループについて行ったことを思い出したようだ。慌てたように付け足された言葉にヴァイスは頷き、視線を庭園の薔薇へ向ける。
(ならきっと、薔薇たちも同じね)
精霊たちがダメだというのならば、恐らく無理に聞き出すと女王の雷が落ちる。花たちも女王の命を受けて話そうとはしないだろう。
「これで印をつけるのはどうかしら? これもダメ?」
ヴァイスがチョークをポケットから出すと、精霊はその周りをくるくると回る。どこに目があるのかわからないが、観察をしているようだ。
(庭園を一部を汚す事実に変わりはないから、ダメでも仕方ないわね)
と思っていたのだが、これには精霊がOKを出した。目を瞬かせるヴァイスへ精霊はチョークの上で跳ねてみせる。
『ズルじゃないでしょ? それに花を傷つける訳じゃないなら大丈夫さ!』
「そうなの? なら、使わせてもらうわね」
どうぞ! という言葉と同時にクロバが引き返してくる。行き止まりだったようだ。
「虹の宝珠もなかったな」
「次はあっちへ行ってみましょうか」
仲間たちと戻り、分岐点でクロバは自らの印をかき消すと次向かう方向へ武器で地面に印をつける。その隣に、ヴァイスはチョークで行き止まりだった道にバツマークを書いたのだった。
少し時を遡りて、もう一方のグループ。
「海賊センサーにはとくに引っかからないぞ」
遠くの方で響く音は仲間たちの者だろう、と卵丸は仲間へ告げる。その視線はあっちへウロウロ、こっちへウロウロ。正義の海賊としては薔薇迷路の冒険を放っておけるはずもない──というのが理由だが、ここを訪れた当初の反応からしても、卵丸個人にとってこの場所は大変魅力的な場所なのだということが手に取るようだ。
「ならばあちらも向かったようだ、こちらも進むとしよう」
「ああ。俺は何かが出来る訳でもないし……先頭に出て不意打ちなどが無いか警戒してみようか」
フレイムタンの言葉に頷き、一同の前を進むことになったベネディクトはついてきた精霊の片割れを見る。『答えを教えてくれとは言わないが、一緒に攻略しないか』と誘ったところ付いてきたのだ。残る片割れはもう一方のグループについて行ったはずである。
「どれくらいなら女王に許されるのか、分かれば良いんだが。それは教えてもらえないか?」
『具体的にはなー。あ、でもあれだ。花を傷つけるようなことをすると女王の雷が落ちるよ』
女王は殊更薔薇を好み、大切にしているらしい。迷路を楽しめないような行為、そして薔薇を傷つける行為でなければ比較的寛容なようだ。
「地図を描くのも大丈夫みたいデスネ!」
ぴこん、と狼耳を立てたわんこは鋭い方向感覚で正確に地図を書き出していく。文房具の用意もバッチリだ。
迷宮・迷路を進むのならば迷ったが最後時間切れ──なんて事態も十分起こり得る。ショートカットの類が禁止である以上漠然と進むしかないのだが、少しでも時間ロスの危険を減らすための努力だ。
わんこのそれは確実に実を結んでおり、一同は何度も同じ場所を通らずに済んでいる。加えてマルベートが地面へ矢印を付けているのだから、迷ったとしても万全の状態だ。
(迷路の行き止まり、分かれ道。やはり作り手の癖が出ているね)
迷路を進みながら観察していたマルベートは規則性に気づいて目を細める。こればかりは作り手の思想が混じるものだから、どれだけ隠そうとしても仕方がない。どんな作品にもあるものだ。
「抜け道や隠された道はなさそうだけれど……ああ、」
分岐点に差し掛かったベネディクトを呼び止め、マルベートはあちらへ行かないかと指し示す。小さな規則性から確実とまでは言えないが、傾向を伝えれば彼は1つ頷いた。
そして。
「は、」
「っ、」
ばったり出くわしたクロバとベネディクトは互いに敵の急襲かと武器へ手を添え、そして相手を認識して固まる。後続の仲間たちも目を丸くするが、幸いにしてこれにより道が定まった。自分たちと、相手のグループが向かってきた道。それを除けば残る進路は1つだけだからだ。
「これで行き止まりとかやめてくれよ……」
太陽の位置は大分動いた気がする。ここで大間違いなどと言われたらどうしようもない。
──かくして。彼らの眼前に広がったのは薔薇で出来た兵隊だった。近未来予測をしたマルベートが真っ先に動き、因果律を歪ませる。それは彼女を愉しませるための『悪魔のルーレット』。
「バラに擬態じゃなかったんだな」
卵丸は敵を見ながら腕の回転式衝角を構える。地を駆けだす体は軽やかだ。
「虹を超え、今蒼き彗星になる……貫け轟天GO!」
放たれる虹色斬撃に追随し、クロバは肉薄しながら弾丸へ魔力を込める。爆炎に包まれた薔薇兵隊は次いで放たれた槍に貫かれた。
「綺麗な庭園が傷ついたら困っちゃうものね」
可能性の力を纏ったヴァイスは薔薇を傷つけぬように、と敵の懐へもぐりこむなり自らから茨を伸ばす。棘が持つのは冷たい毒だ。ドラマから蒼の三日月を思わせる斬撃が飛び、それよりほんの少し離れた場所からアッシュの魔法が薔薇兵隊を幻惑させんとする。
その上空に影が差し、鋭角に降ってきて──。
「ドカンと一発カマしてやりマショウ!!」
わんこのダイナマイトキックが敵を討つ。ぼろりと花をもがれた兵隊の体から一瞬煌めきが見えたが、それはすぐに体内へ収められて見えなくなってしまった。
だが、イレギュラーズたちは察する。あれは、あれこそが虹の宝珠だと。
薔薇兵隊たちはこの庭園を護る者として配置されているのだろう。いくらかの阻害を受けながらもイレギュラーズたちへ立ち向かってくる。クロバの無想刃が薔薇の蔓を刻み、その上をヴァイスの茨が這い。アッシュによってちりちりと焼かれても退却の兆しは見えない。
だが虹の宝珠の存在を確認したイレギュラーズとしては逃げられたら困る。好都合だ。
「まだまだ負けませんヨ!」
棘に傷つけられながらも素早く身を起こしたわんこへドラマはミリアドハーモニクスで癒す。直後、蒼き彗星のような卵丸の攻撃が敵を沈めた。別の場所ではクロバへ向かう敵へマルベートの双槍が向く。
「この薔薇は食べられるのかな?」
恐らくは、きっと。動物の血肉ではないけれど、食べてみるのが楽しみだと悪魔は笑う。
彼ら兵隊は脆く、儚く、それでいて強烈に鮮明に痛みをもたらす。肌を垂れる赤を拭ったクロバは「まだだ」と笑みを浮かべた。薔薇で象られた槍を振り上げる兵隊の背後からベネディクトが素早く踏み込む。基本であり基礎である槍術の1つ──疾風槍。貫かれた兵隊は強固に絡まっていた薔薇の蔓を緩め、その原型をなくしたのだった。
「キャヒヒ! 虹の宝珠ゲットデスネ!」
傷だらけになりながらもわんこは薔薇の残骸から虹の宝珠を取り出し笑う。疲れ知らずに動き続ける機械の体は、世界からの贈り物(ギフト)で元気いっぱいな様子を見せた。
「もう話すことはできないみたいね」
薔薇の花を掬い上げたヴァイスは視線を下げて、その花を踏まれないような場所へ移動させる。そのうち庭園の養分となっていくだろう。
恐らくはこの先にも兵隊たちが待ち構えているのだろうが、ゴールの鍵を手に入れたことは心強い。一同は更に先へと足を踏み入れた。
後半もまた迷路が続き、ドラマやわんこのマッピングを元に探索し、時に小さな交戦をする。長丁場、持久戦だと考える者も少なくないためすぐさまガス欠という事態にはならなそうだ。
「精霊さん、精霊さん。ゴールはまだですか」
『それは内緒~』
ふわりと漂う光にアッシュは小さく口を尖らせる。そろそろお茶の時間を過ぎてしまいそうだ。女王だってアフタヌーンティーがなければ具合悪いだろう。
(あ、そういえばマシュマロを持ってました)
せめて摘まんで食べようか。白いふわふわを口元へ持って行ったアッシュは再び光をちらりと見る。彼らは食べるのだろうか──いや、食べられるのだろうか?
そんな時間もありながら、一同は大きな大きな門の前へ辿り着いた。向こう側にはこれまた巨大な城が待ち構えている。
「ゴールはこのお城、でしょうか」
ドラマが門を見上げる。固く閉ざされた扉は来るものを拒むようだ。その先にある豪勢な城には女王がいるのだろうか。
(謁見が叶うようであればこの迷路の感想や、楽しませて頂いたお礼を告げたいですね)
大迷宮の中にまさかこのような庭園が現れるとは思わなかったのだ。進む前にひとことでも感謝を表せれば良いのだが。
仲間が持ってきた虹の宝珠をかざすと、金属製の扉はゆっくりと両開きで開いてイレギュラーズを招きいれる。クロバはその光景を見ながら小さく呟いた。
「で、四苦八苦する様を見れて満足したかい、女王様?」
女王にこの言葉は間違いなく聞こえている。そうでなければ罰など下せないのだから。
クロバの言葉に反応したのか、それとも虹の宝珠による影響か。イレギュラーズの背後で突如生物の動く気配が生じる。
まさか敵が残っていたのか──すぐさま振り向き武器へ手を駆けたイレギュラーズだが、目の前の光景にその動きはぴたりと止まった。誰かの茫然とした声がやけに大きく聞こえる。
「庭園、が」
それは一瞬のうちの出来事だったらしい。迷路のような庭園は跡形もなく、スタートからゴールまで直線の道が出来上がっていた。あれほど視界を阻害していた薔薇たちは脇へ避け、美しい花を咲き誇らせている。
「すごいデスネ! あっという間に変わりマシタ!」
目を輝かせるわんこはたーっと駆けて、スタート地点まで行くとまたたーっと駆けて戻ってくる。これならば今後更に先へ進むにも苦労しなくて済みそうだ。
先にある城の扉もまた開け放たれ、その中は違和感を感じるほどに暗い。恐らくその中はヘイムダリオンの別空間が待っている。
──さあ、遊びの時間は終わりだ。この先へ進もう。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
お疲れさまでした、イレギュラーズ。
女王は皆様のことを気に入ったようですね。この先にはどのような空間が待ち受けているのでしょうか。
またのご縁がございましたら、よろしくお願い致します。
GMコメント
●成功条件
ヘイムダリオンのさらに奥へ進む
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。提示された情報は正確ですが、提示されていない情報もあるでしょう。
●Rose Garden
ヘイムダリオンの1空間。長閑なバラ庭園かと思いきや、バラの迷路です。とても良い匂いに誘惑されてしまいそう。しかしバラの棘は痛そうです。
遠くにお城が見えるため、ゴール地点はそこになるでしょう。
この空間において、空中と地面における干渉はできません。要するにズルするなよってことです。
またこの空間において、迷路のショートカットはできません。要するにズルするなよってことです。
基本的に女王は普通に迷路を楽しんでもらいたいようです。ある程度非戦スキルに制限のかけられた探索となります。皆のプレイング力にかかっている!
あまりにも意図的な違反行動が多い場合、ヘイムダリオンから放り出されます。
要所にモンスターが配置されており、辿り着くと戦闘開始です。この戦闘において、周囲のバラを気にする必要はありません。保護結界に準ずる防壁が張られています。
モンスターの詳細は掴めませんが、精霊たちの話によると『兵隊に似ている』とも『この迷路の一部である』とも言われています。
迷路のどこかには虹の宝珠があり、それを持って最奥(城)へ到達する必要があります。
●精霊
ふわふわ漂う光たち。なんだかご機嫌です。何か聞けば答えてくれるかもしれませんし、答えてくれないかもしれません。
●NPC
・『焔の因子』フレイムタン(p3n000068)
精霊種の青年。そこそこの動きをします。
指示があれば従います。
●ご挨拶
愁と申します。協力プレーというやつです。
迷路は皆様のプレイング力に任されています。戦闘はボコボコにしてしまいましょう。
ご縁がございましたら、よろしくお願い致します。
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