シナリオ詳細
<鎖海に刻むヒストリア> 嘆きの海域、終わらない冬
オープニング
●二度と訪れぬ春を想い
「ねえねえ、ラニエロ! このままでいいの!?」
傍らの少女に、かつてヒトだったモノは「これでいい」と、押し殺したような調子で答える。
「あたしは嫌だよ、このまま黙って死んじゃうなんて! 冠位だかハイメツビョーだか、何だか知らないけど!」
初めて出会った頃から、彼女は、樹里はいつもそうだった。
どれだけ結果が分かり切っていても、足掻くことをやめない。
そんな彼女だからこそ、僕は、ラニエロは――
遠い昔だったか、つい最近の出来事だったか。
ローレットの依頼で海洋に出向いた旅人の少女、樹里は、ネオフロンティアの美しい海で軍人、ラニエロと出会う。
軍人というにはあまりにも――良く言えば優しく、悪く言えば頼りない彼と強気な樹里は、いつの間にか、ぴったりとお互いを補い合う関係となっていた。
「気ぃ弱過ぎて軍人向いてない、って言っちゃった事もあったっけ」
「……そんな事もあったな。懐かしいね」
「ラニエロ、身体弱かったもんねぇ。確か、お父さんに無理矢理入れられたんだっけ」
「そうだね……今はもうすっかりこの通り、死ぬ事も出来ない身体だけれど」
「だーかーらー! 死ぬなんて言っちゃダメ!」
転機は海での任務中。
予測できなかった魔種との遭遇に、ラニエロの部隊はほぼ壊滅し、彼自身もこの海に『堕ちた』。
きっかけは何だったか。彼にとって何か、決定的な一言を囁かれた――という事だけはよく覚えている。昨今の混沌では、さほど珍しくない話か。
「その時、私、一緒に行けなかったんだよね」
幸か不幸か。旅人である樹里は魔種の呼び声を受けず、ラニエロと同じ場所へ堕ちる事が叶わなかった。
「樹里。僕の事はもういいから、君は向こうに帰って。あの人たちなら、この病気も……きっと、何とかしてくれるから」
「お断りよ! ……私がどんな思いで、ずっとここに居たと思ってるの!?」
互いにはっきりと口にしないだけで、ラニエロとて、彼女と気持ちは全く同じ。
――ハナレタクナイ――
魔種に堕ちれば、そこに在るだけで世界を侵す。
堕ちてなお人を想うも、自ら命を絶つ事はこの身体と――樹里が許さず、出来るだけ人の寄り付かぬこの海で息を潜めていたが、樹里までもが廃滅の呪いに冒された今。大切な少女を想い、ラニエロも意を決する。
「……うん、分かった。僕も最期まで、足掻いてみるよ」
出会った時から、いつも一緒に。堕ちる前も堕ちてからも、それはずっと変わらない。
――けれど。
旅人と魔種。永遠に交わらない海と空のように、ボクタチハ、ヒトツニナレナイ。
――ドウシテ? ドウシテボクダケ? ボクタチダケドウシテ?
己の『魔』から湧き上がる醜い感情に、必死に蓋をする日々。
しかし今思えば、ラニエロの中にそういった感情の『種』は元々あって、気づかない振りをし続けたからこそ、ここまで堕ちてしまったのかも知れない。
この海域に光は差さず、たびたび吹雪が吹き荒れて、光や春は訪れない。
見上げる空はいつも黒々として、うねり荒れる海も、黒々として変わらない。
「……そろそろ、お客さんが来るのかな。最期に……全部。コワシチャオウカ」
「うん、一緒に行こう! ラニエロには指一本、触れさせないんだから!」
魔の海域に、ひときわ強い嵐が訪れる。
どす黒く捻じれた海域の主が、低くうねるような声を上げる。その『呼び声』と呼応するように、近くで座礁し朽ちた船に居る亡者たちが、そろりと起き上がった。
●無鉄砲から勇気へ/絶望の青、その先へ
「えーと、ただい……ま……」
ローレットの情報屋と、彼らと同行していた海洋の船乗り見習い、リーベ・ズィーマンが帰還し、得てきた情報の整理を始める。
「……例の海域はすっごい荒れてて、何でか分かんないけど吹雪が吹いてて……」
少年が見てきた光景は、彼が夢見たような、どこまでも広がる青や吹き抜ける風とはほど遠く。『絶望の青』とは言っても、青と言うより真っ黒で。絡みつくような重い空気が、呼吸さえ許さない。そんな恐ろしい場所だった。
「ふむ、ご苦労、よく無事で……少年。怖かったか?」
軍議に加わっていた鉄帝の将軍、ジェド・マロースがリーベに視線を向ける。
海は度々牙を剥く。年若いとはいえ、海洋の民で船乗りの子たるリーベはそれを充分に知ってはいたのだが、百聞は一見に如かず。
「……ああ、メチャクチャ怖かった……」
絶望の青に挑むと聞いて『海は男のロマン!』と、調査に無理矢理付いて行ったリーベだが、あの絶望とその中心、初めて見る『何か恐ろしいモノ』を思い出し、己の無謀を心より悔いた。
「勝手に飛び出して……ごめんなさいっ!」
情報に目を通していたジェドが、資料を捲る手を止めてリーベの方に視線を向ける。
「無事なら良い。しかし、随分と視界が悪かろう中で――ここまで鮮明な情報が得られるとは」
「……えと、それ、おれのギフトなんです! 人より目がいいみたいで、吹雪でも問題なかった……です」
「頼りになる目だ」
災い転じて、という所か。ローレットの情報屋だけでは、ここまで正確な情報は得られなかっただろう。彼が来てくれたら、と、ローレットの一員が声を上げる。
「否……少年の眼は頼りになるだろうが、危険な場だ。これだけの情報があれば、充分に足りよう」
至近に迫る廃滅の呪いに残された時間は少なく、前に進まねば、ただ死があるのみ。
まだ見習いとはいえ、リーベも海洋の民であり、軍の一員だ。
父親に友人、暖かく陽気な海洋の人々。
守りたい、守らなければ!
少年は恐怖を振り払い、改めて、あなた達の方に向き直る。
「……いや、待って。おれも行く! 行くよ!」
「いいのか。少年」
「うん! 今度は絶対気を付けて、足手まといにはならないから! みんなのできる事とか細かい事とかは分かんないけど、おれの目なら、問題なく遠くまで見通せるから……お願い! おれももっかい、連れてって!」
海に慣れた者が多いに越した事は無い。裏方に徹するならば、危険は少ないだろう。そう判断したあなた達とジェド、鉄帝と海洋の精鋭たちは改めて、海の少年を仲間と認めた。
「あ、ありがとう! よーし! 海の攻略はこのおれ、リーベにまっかせとけーい!」
「……さて、妙な海域と聞いてはいたが」
厳しい鉄の冬の化身たるジェドと、悲しみに凍える魔の海域。これは如何なる偶然か、それとも。
「旅人の少女が、気がかりといえばそうか」
樹里という少女が魔種を慕い、彼を守っていると聞く。
『冬将軍』と呼ばれているジェドだが、この海洋には愛する者が、彼を待つ者が居る。彼女に万一の事があってはと、要請に応え打って出た次第で。
少女の境遇に思う事はあろうが、守りたいもののため。成すべきはただひとつ。
「……春を侵す者よ、凍え、朽ち果てよ」
ゼシュテルの厳しい冬が今、嘆きの海域に迫り来る。
- <鎖海に刻むヒストリア> 嘆きの海域、終わらない冬完了
- GM名白夜ゆう
- 種別EX
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2020年05月23日 22時16分
- 参加人数10/10人
- 相談7日
- 参加費150RC
参加者 : 10 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(10人)
リプレイ
●この絶望に一矢報いろ
「嵐の前の静けさ、ってやつか」
注意深く前方を伺う『傍らへ共に』天之空・ミーナ(p3p005003)とその傍ら、同乗するのは海洋軍のリーベ。この海域に挑むのは、鉄帝をも含めた混成部隊だ。鉄帝の軍艦にも少数の海洋軍が同乗し、高い技術で操船を担っている。
ミーナによるこの配備で、道行きは至って順調。空は快晴、海は凪ぎ。
「分かってはいますがー、全然、絶望という感じ、しませんよねー」
『氷雪の歌姫』ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)はゆったりとした様子で、『理想のにーちゃん』清水 洸汰(p3p000845)も、心地よい潮風に伸びをする。
「兄ちゃん、油断は禁物だぞっ!」
「や、分かってるって!」
リーベと洸汰は友人同士。最初に出会った日から経験を積み、いくらか頼もしくなっただろうか。弟分の成長を、洸汰は素直に喜ばしく思う。
「いやまさか、キミが此処まで切り込んでくるとはね。『冬将軍』」
船べりに腰かけながら、鉄帝の船に向かって雑談に興じるのは『闇之雲』武器商人(p3p001107)。
「……」
彼の話し相手は、鉄帝の指揮官。厳格な冬将軍相手にこの調子とは、いったい何者か。配下の軍人が訝しむ。
「嗚呼、そうだね。海洋には『彼女』がいるもの」
「……」
彼、ジェドと武器商人の間には、共通の知人が存在する。『彼女』は武器商人のギルドに身を置く精霊種であり、冬の化身が愛してやまない春のひと。
「そういう事なら、力を貸さない理由はないさ」
いつもながら何というか、やり辛い相手だ。ジェドはごく小さな溜め息をつき、改めて、麾下の精鋭と作戦の共有を行う。鉄帝のジェド自身は優秀な指揮官だが、部隊間の連携についての懸念が少なくはなかった。
「む……風が強くなってきたな」
念には念をと、あらゆる感覚を用いて奇襲に備えていた『天穹を翔ける銀狼』ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)が、微細な変化に気づく。
気付いた瞬間、辺りが徐々に暗くなる。急に現れた分厚い雲が、みるみるうちに青空を覆い、光を閉ざし。吹き付ける風は急激に冷たく、雨が混じり、雪と変じて吹き付け始めた。
「――いよいよ『来た』か」
数秒前の穏やかな空から、状況は一転。遠くまで響く怨嗟の声が、嫉妬の海域への到達を知らせた。
「さてさて……敵は強大! 海は大荒れ! だけど、負けられないよね!」
暴風の中で凛と立つ『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)の紅いポニーテールが大きく大きくたなびく。
「うん! こんなところで躓くわけにはいかないよ!」
あと少し。『希望の蒼穹』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)は、願いの腕飾りにそっと触れる。腕飾りのようなソライロは、暗雲の向こうでも変わらず在る。
「だから、誰も。皆の事も、鉄帝の人も海洋の人も、ひとりだって犠牲にはさせないさ! 絶対にね!」
「ああ――ここを越えりゃ、いよいよあのクソ野郎に届くんだ!」
ミーナは幾度か、あの『クソ野郎』に煮え湯を飲まされてきた。誰一人として犠牲を出さず突破する事が、ミーナにとってもそれ以外の者にとっても、最高のやり返しとなる筈だ。つとめて静かに、烈火の如き怒りを燃やし。
「……そろそろ来るよ!」
いよいよ接敵か。リーベの目が敵影、前方より近づいてくる亡者の船と、先行して海面を突き進む幾らかの亡者の影を正確に捉えた。
●さあ、破滅が歩いてくるぞ
「――オオ……オ――!」
死ねない者たちの嘆きと、それよりも更に低く、うねるような声が一帯に響く。
あの低音は『呼び声』か。具体的な語り掛けかは、まだ分からないが。
「……湿っぽい声だねぇ。さて。天ノ空の方、船の位置取りは整ったよ」
各船の配置は、武器商人の指示通りに。風上の方角に配した海洋の船が、吹雪の勢いを多少なりとも弱めた。
「よし。『水兵さん』、状況は? 敵の密度とか、気になる事はあるか?」
猛吹雪の先を見通すリーベの目に、更に鮮明な状況が映る。
「えーと、あの変異種がいっぱい……11時の方向からくるけど、2時の方向がちょっと薄いぜ! 海洋軍の船から見て8時の方角に1体、海からくるヤツが居る! 気を付けて!」
「なるほど。――じゃあ」
ミーナが高く手を挙げる。鉄帝軍への砲撃指示だ。
「11時の方向!」
嵐の中でも真っ直ぐ届く、大音量の号令だ。至近に雷が落ちたか? 屈強な戦士らが錯覚する中、ジェドが静かに頷く。
「……承知した。砲撃準備!」
「いつでも行けます!」
「では――」
「てーーっ!」
「行けーーーっ!」
密集地帯への先制攻撃。暴風を切り裂き飛来する重い鉛玉が、死者達の群れをこれでもかと圧し潰た。
重く響く着弾音、死者たちの声にならない声、大きく砕け散る何かの破片。これだけでも状況は伺えるが、ゲオルグやリーベのように感覚の鋭い者には、非常にはっきりとその様子が見える。
「状況……バ、バッチリだぜ!」
「よし! ……そんなにびびるな、水兵さん。あいつらは、そうそうアンタには届かない」
「ご、ごめん……」
ひしゃげて潰れた、二度殺された者たちの姿。見慣れぬ者には、あまりにも凄惨。優れた視力の代償か。肩を震わせるリーベの背中を、洸汰がポンと軽く叩いて。
「負けんな、リーベ!」
「に、兄ちゃんっ!」
「ここでは『水兵さん』が頼りなんだぜ!」
コイツは絶対大丈夫。だから返事は待たない。洸汰はそのまま目標、樹里と戦うべく走り出す。
「兄ちゃん! 頑張れー!」
「よーし、フォロー頼むなー! ディフェンスは兄ちゃんに任せとけー!」
背中に声援を受けて、ピンチヒッターをしっかりと握る。嵐に負けじと、敵影を目指して。
「――それでは、参りましょうか」
ユゥリアリアも、樹里に挑むうちのひとり。魔力で編まれた薄い翅を伸ばし、滑るように低空を飛んで。全軍に見えるよう、氷の戦旗を大きく掲げた。
「何があっても、歌いましょう。私にできる、精一杯を」
さあ、銃を構えて。道征く者へ宛てた一節が、名も無き兵士を英雄に変える。戦旗のひと振り、高らかな祝歌が、戦士たちを大きく鼓舞し高揚させた。
無数の死者と猛烈な吹雪が壁となり、仲間同士の分断や、『先が見えなくなる』事も恐らくはある。その中でも変わらず輝く勇気の旗は、暴風の中で響く透明な歌声は、凛と立つ歌姫の存在を戦場に示すだろう。
「――――!」
吹雪のベールの向こうよりひとつ。小さな影が、猛烈な速さで近づいてくる。朽ちた船、海の上、近くの死者。あらゆるものを蹴り飛ばしながら、ローレットの船へと肉薄する。
「邪魔、しないでよっ!」
影は跳躍しながら、衝撃波を伴う蹴りを放った。その一撃は、真っ先にと朽ちた船――ラニエロの元に向かおうとするアレクシアを切り裂いた。確かな痛打。だが、まだこれからだ。
誰が相手だろうと、守らなければ。痛みに怯まず、白い星型の花を幾重にも展開。純白のオーニソガラム。害悪に染まらぬ無垢の花が、仲間の周囲に咲き誇る。
やがて甲板へと着地を果たした侵入者は、アレクシアやマリアよりひと周りほど年下の少女。
「樹里!」
紅い殲姫は瞬時に雷を纏って少女へと迫り、負けじと蹴りを繰り出す――ように見せかけて、もう一度跳躍移動を行い、横合いから二連の蹴りを叩き込む。よろめく樹里の体内、時間差で炸裂する紅色の雷撃。
誰よりも疾く。初動こそ遅れは取ったものの、鳴りやまぬ瞬雷は魔種の加護にも迫る。
「君にも同情はしない! お互い譲れない物があるからこそ、お互い此処に。立っているのだろう?」
「そうだよ! 相手があなた達、ローレットの人でもね!」
樹里の言い切りに応じるように、死者たちが船へ、樹里と対峙するマリア達のもとへと押し寄せる。数えきれないほどの朽ちたカットラスやフリントロックピストルが、少女たちへと襲い掛かった。
「恋に憂き身を窶すか。愚かだな」
この世は舞台で、人はみな役者。せいぜい踊れと『二人一役』Tricky・Stars(p3p004734)のうち『稔』の人格が言う。自分『達』の役割は、状況を注意深く見る事だ。その為には倒れる訳にも、不吉に圧される訳にもいかない。
きわめて注意深く、万年筆のインクを拡げる。ペンは剣よりも強し。インクは英霊の力を帯びて、二人一役の演者を守る。――さて、舞台の準備は整った。
『状況はどう?』
「友軍含め、傷そのものは浅い。ならば、ここは――」
もう片方、『虚』と併せて一枚ずつ。背に生やした一対の翼は光り輝き、戦場一帯に光が降り注ぐ。敵対者には光の裁きを、味方には癒しと加護を。生者たちの間に蔓延していた不吉の呪いを、この一撃で打ち払った。
『なるほどなるほど、死者の一人一人は、そこまで強い奴は……居なさそう?』
「そのようだな。しかし何と言っても、厄介なのは数――」
生者たちは精鋭揃いだが、全体的な火力や突破力にはやや不安が残る。この顔ぶれでほぼ無尽蔵の死者に囲まれては。御しきれないだろう。
「それも、無策であるならの話だが――な」
見える筈のない月明かり。樹里とその周辺に、突然の動揺が広がった。
ラニエロの傍でさえ感じた事のない不吉な予感が、樹里の胸をざわつかせる。
――この人たちの中に、在ってはいけない”ナニカ”が、いる――!
心無き死者たちも、そう感じたのだろうか。少し離れた『ナニカ』、其処に無い筈の月へ、不吉な予感を放つソレへと向きを変え、殺到する。
コワサナケレバ。アッテハナラナイ。亡者たちが、その月に向け武器を次々と振るう。
しかし。そのほぼ全てが環状の何かに阻まれ、不吉の月に届かない。彼を取り囲む環は二つ。金色の環が打撃を受け流し、銀色の環が放たれた雑霊を阻む。
「……まずは上々、だね。我(アタシ)の呼び声も、負けてないでしょ」
「ああ、実に大漁! 流石は、我が麗しの――」
不吉を掻き立てる者、銀色の月の傍らには、緋き壁もが並び立つ。『満月の緋狐』ヴォルペ(p3p007135)が武器商人へと向かう死者の群れと距離を詰め、華奢な手甲に魔力を込めた。刻まれた破魔の術式が光り出し、自身の周りに障壁を展開する。
「さてさて。ジメジメしてるそこの皆! おにーさんとも遊んでよ!」
ピクニックに誘うかのような口調で『おにーさん』はそう言うと、残った死者のうち幾らかが、誘いに応じて吸い寄せられる。この障壁では、離れた位置から放たれる雑霊の類までは防げない。しかし、この程度。低級な怨念如きに怯むようでは、銀の盾は務まらないのだ。
「そんなにも……私達の、光ある生が憎いのか」
友軍の状態を含め周辺をを警戒するゲオルグが、後方からの敵を察知する。直ちに皆と共有せねば。全域を見渡すリーベとも、相互に状況を確かめ合う。
「うん! たしかに、ゲオルグ兄ちゃんの近く! 水の中……後ろの方からも来てるよ!」
後方、水中から乗り込んできた死者が至近の鉄帝軍人に切り掛かるが、知ってさえいれば防ぐのは容易い。返し様、鋼の腕で叩き潰した。
「鉄の皆も、海の皆も。言うまでもないが、引きずり落とされないように気を付けてくれ。出来るだけ、船の端側へは行かないように。動き難くなったり、異常を感じたらすぐに言って欲しい」
「ああ! サンキューな! 助かるぜ」
背中の方から目を配り、支える者が在ればこそ、目の前の敵に全力で挑める。誰一人として独りにはしないし、欠けさせもしない。
すべての生命に光あれかし。ゲオルグの、癒し手としての矜持と願い。どの世界に在っても変わらず、彼はそういう男なのだ。
「さて。だいぶ引っ張れたが、流石にまだ結構居るか」
『濁りの蒼海』十夜 縁(p3p000099)も、武器商人やヴォルペと共に多数の死者を引き受けている。吹雪の向こうでは、マリア達と樹里が一足先に戦っている。ユゥリアリアが掲げる光旗と、アレクシアが携行したランプの光でそれと知れる。
「しかし……やり辛いねぇ、どうにも」
我先にと飛び込んできた旅人の少女は、操られている訳でも、脅されている訳でもなく。そして恐らくは至って正気のままで、魔種と共に在る。つまりは”そういうこと”だ。
あの日、『彼女』の首を絞めた感触と。つい先日、思いがけぬ再会の折に触れ合った手の感触が、今も生々しく――廃滅の予兆を伴って、その手に残り続けている。
「ほらほら、十夜の旦那。お客さんはまだおいでだよ」
武器商人とヴォルペが既に死者の多くを引き受けているが、それでもなお、罠にかからぬ者も多い。それらを引き受けるおが縁の役割だが、彼の様子はどうにも覇気が無く。
「ああ、悪ぃ。ちょっと考え事をな……」
「全くもう。しっかりしてよ」
武器商人やヴォルペと比べて、縁から感じる『気』はどうか。二人の旅人の人間離れしたそれと打って変わり、この男はすぐにでも切り伏せられそうだ。
ではどうして、彼は此処に居るのだろう? 死者たちにそれを図る術はなく、命憎しとただ迫り。
「よっ、と」
死者の繰り出す朽ちた大剣を、龍の刀でごく軽くいなす。思いがけぬ守りの技術に、様子を伺った樹里が驚く。
「まったく。十夜の旦那ったら、人が悪いねぇ」
欺瞞に偽証。嘘を嘘と見抜けない者に、海を渡るのは難しい。鮮やかな騙し打ちに、武器商人はくすくすと笑う。
「武器商人の旦那ほどじゃねえさ。……それじゃあ、何とか時間を稼ぐとしようか」
こうして、絶望の海に三枚の強固な盾が盾が立つ。
状況は一巡。ラニエロの嘆きが生者たちを呪い、死者たちを癒し。自分とは違う『呼び声』の枷をも外していく。
「あらら。おにーさん、また頑張らないと」
「へこたれるなよ、ヴォルペの旦那。まだまだ先は長ぇんだ」
強敵、樹里と戦うユゥリアリア達の場所に死者が押し寄せれば、厄介な事になる。縁とヴォルペは再び、死者たちを引きつけようと誘いをかけるが。
――邪魔ヲ、しないデ……!
朽ちた船より飛来する魔の哀哭が、吹雪よりも冷たく、心まで凍てつかせるような災厄となって、広域の生者たちに襲い掛かる。その衝撃にローレットの船は大きく傾き、鉄帝、海洋の船にまで衝撃は及んだ。
死者は当然、待ってはくれない。朽ちた刃や幾つもの雑霊が、ヴォルペの元へと迫り来る。あらゆる攻撃を『無かった事に出来る』武器商人に対して、ヴォルペは『耐える』者。霊体による攻撃や付随する悪影響までは、防ぎきれるとは限らない。まして此処は、災いの領域――
(あ、これ、マズいかも)
不吉な予感が当たってしまう。刃や弾丸で傷つかずとも、衝撃までは受け流せない。傾いた船。一瞬、バランスを崩したその瞬間。骨だけとなった死者の腕が、ヴォルペを海へと叩き落とした。
その一方。樹里と交戦するアレクシア達にも生者の呪いと冷たい災厄の効果は及び、思ったように動けず、死者の攻撃ですら捌き切れない。
(ラニエロが助けてくれた……よし!)
海魔の呪いに縛られた洸汰に、その加護をひときわ強く受けた樹里の多段攻撃が、無数の残像を伴って襲い掛かる。
「なんのっ!」
幾度となく繰り出される拳を、蹴りを、キャッチャーミットで受け止める。今、何打目だ? こんなに動きは軽いのに、一打一打が重い。卓越したディフェンスを誇る洸汰でさえ、あと一撃受けていたら、どうなっていたか分からない。
でも大丈夫、まだまだ元気だ。
「……ぜってー、ここで……沈んでなんか、やらねーもんね!」
攻守交替、洸汰が攻勢に回る。魔種に迫る連打の勢いを、それを受けきった洸汰自身のタフネスを、そのままバットに乗せて。ピンチヒッターを思い切り振るった。
「嫉妬の罪、ですか」
朽ちた船から聞こえる歌は確かに禍々しく、恐ろしい。しかし、その旋律の水底に深い悲しみが秘されている事も、ユゥリアリアは感じ取る。優しさを知る歌姫ゆえに。
「その罪を肯定し、乗り越える事ができるなら――」
自らの地を媒介に氷の槍を生成し、樹里へと放つ。肩に突き立った槍が花のように開き、薄闇の中で輝く。
「超える? ……何を言ってるの? 犯してしまったモノは、壊れてしまったモノは、もう戻る事は無いのに……白い髪の君だって、何度も見てきたでしょう?」
これまでの魔種と同様に、彼もまた歪んで捻れて、もう戻れない。でもそれは、本当に?
「それは勇気と呼べるでしょうから」
「勇気――」
歌姫が口にしたその言葉は、どう手を伸ばしても、自分が持てなかった、今も持てずにいる輝きで。
「黙ってよ! 黙りなさいよ!」
至近の樹里が激昂し、藍色の残像を伴う拳をユゥリアリア目掛けて何度も、何度も打ち込んだ。煌びやかな白いドレスが、ユゥリアリアが吐いた血と、樹里が流した血で赤く染まる。
「あんたにあいつの、ラニエロの何が分かるって言うの!?」
「分かりません。……だからこそ、ラニエロさま。改めて、お聞きしたいのです」
――貴方は、何を望みますか?
●雷光、暴風/死者へ手向けを
(あー……これは、おにーさんの身でも結構クるねえ)
黒く冷たい海の中も、あの『呼び声』で満ちている。旅人のヴォルペが『堕ちる』事は無いにせよ、呪いに囚われた身体は重く。そのまま底へ、底へと――
(――――んな訳、無いでしょっ!)
荒れ狂う海流をどうにか掻き分け、薄明かりの海面を目指す。海種の兵士がひとりヴォルペの方へ向かい、その手を掴み、海上へと引き上げた。
「サンキューな! 海の人!」
この采配は洸汰の指示だ。Tricky・Starsを始めとした複数の回復手が常に警戒していた事もあり、さほど間を置かず、ヴォルペは戦線への復帰を果たす。途中振り下ろされた刃は、瞬時に展開した障壁が受け流す。
「……残念!」
入れ替わるようにして甲板に着地。元の場所、武器商人の横に並び立つ。
「おにーさんを靡かせることが出来る声は、世界でただお一人なんだ」
「ほら、馬鹿言ってないで手伝って? まだまだ数が多いんだからサ」
「りょーかい!」
並外れた抵抗力を火力に換えて、迫る死者を殴り飛ばした。自分の手では殺し切れない。それを知って、仲間に託す。
「ゲオルグ君、頼む!」
「了解だ!」
味方を傷つけないよう注意深く、浄化の翼を大きく広げる。破邪の光が死者たちを照らし包み込む。光の中で何体かが崩れ落ち、灰と消え去った。
「……ヤット……」
望まぬ不死から解き放たれる。彼らが戻ってくる事は、もう無いだろう。
安らかに。ゲオルグは少しの間だけ瞑目をした。
殺しきれない者も多く、動く死者はそう減らない。初撃の大砲に引き潰された者がゆらりと起き上がり、樹里の加勢に動き出す。
「そこの鉄帝、出過ぎだぞ! 向こう側を手伝ってやれ、右回りでな!」
「りょ、了解!」
数の暴力に辛うじてでも圧し負けないのは、吹雪の先をも見通せるリーベの視界を伴った、ミーナの指揮があってこそ。三つもの勢力から成る混成部隊において、指揮系統の統一がもたらす恩恵は大きい。
蹴散らせ、踏破せよ。シンプルに下される号令のもと、三様の強者は一丸となった。
「そういうこった。まぁ諦めな」
縁の周りに、ぼんやりとした火が現れる。ひとつ、ふたつ。呼び寄せた死者の魂が、無数の火の玉に変じて燃える。
「死者には死者を――って訳でもねぇが」
海龍の間に伝わる秘術。揺らめく燈が、心無き死者をも狂気へと誘い――完全に取り込まれた者を跡形も無く、その魂ごと焼き尽くし、海の底へと引き摺り堕ろす。二度と浮かび上がれないほど、深く、深くへ。
「俺も、いつくたばってもおかしくねぇ身なんでな。大人しく眠ってくれや」
せめてもの手向けのように、その灯りは吹雪や水の中でも変わらず、赫々と燃え続けていた。
変異した死者のうち『それなり』の個体は多少混じるが、多くの者は数に頼るのみで、その殆どは取るに足らない。絶えず響く月の呼び声や赤の誘い、海龍の欺きは多くの者を捉え続けているが、この場には生者を呪う声が絶えず響く。三枚の壁をすり抜ける者は、どうしても出てしまう。
そんな中。囂々と吹き荒れる吹雪の中で、一発の渇いた銃声が響く。
「痛ぇ、っ……!」
死者の凶弾が生者の間を掻い潜り、リーベの元へと到達し――避けきれず、被弾。その衝撃に、小さな体が大きく仰け反る。
「水兵さん! ……すまん、私の注意不足だった」
凶弾に倒れたリーベを、ミーナがそっと抱き起こす。
「だいじょ、ぶ……こういう事もあるって、覚悟はしてきたもん……」
かなりの深手だ。出血が多い。直近の情報から察するに、あと何体か、死者のすり抜けが予想される。
「……拙いな」
樹里にラニエロ、鬱陶しい呼び声もいまだ健在。視界を阻む吹雪も止まず。自分はともかく、リーベが持たない――
『何でもかんでも、思い通りになると思うなよ!』
嵐の中でも決して負けない、明るい声が響き渡る。二人一役の役者が歌う福音の調べが、周りの者ごとリーベを癒した。
「いいタイミングだ! ……手の空いてる奴! 向こう、分かるな! 死に損ない共が固まってるぞ!」
「アイアイサー!」
体勢を立て直した海洋軍の一斉掃射に、船からの援護射撃が重なる。寸での所で、戦線を保ち切った。
『ここに居る人たちは、誰一人死なせないからな!』
ひとつのカラダにふたつのココロ。反目し合っている二人だが、目指す場所と、ココロの在り方は非常に近しい。
「反撃開始だ。……さあ、通らせて貰うぜ」
死神が小鎌を大きく掲げ、前方に、闇より深い闇を生み出す。その闇を目印として、ジェドが再び主砲を放つ。
「――お前達に、どんな事情があろうともな!!」
凍て付く暗闇と飛来する鉛玉が、生者の道を切り開いた。
「何がそこまで君を追い詰めたのかは分からない。けれど――」
紅雷を纏うマリアはジグザグの軌道で樹里へと迫り、加速の勢いを乗せて蹴りを放つ。瞬時に放たれる何発もの蹴りはまさに電光石火、雷そのもの。
「っ……あなたも速いね!」
「負けてはあげられないからね!」
樹里も大きく跳躍、あちこちを蹴って軌道を変えながらの蹴りをマリアへ打ち込む。両者の動きは、周りの死者には到底追い切れる筈もなく。この瞬間は事実上、マリアと樹里との一騎打ちとなった。
「足掻いてやるって、決めたから!」
体内の紅雷が残る中、樹里は大きくステップを踏み。
「――沈みなさい!」
洸汰やユゥリアリアをも射程に捉えた、ぐるりと大振りな回し蹴りを繰り出す。滅茶苦茶な蹴りは風圧を伴い、周りすべてを破壊し吹き飛ばす。
「まだ……いけます!」
「何のこれしき!」
体勢を崩しながらも踏み止まる、ユゥリアリアと洸汰。
「頑張りましょう……!」
白の歌姫が奏でる福音の音色が、洸汰や巻き込まれた者を立て直す。
「リーベ達だって頑張ってんだ! 沈んでなんてやらないもんね!」
痛みや寒さに負けて居られない。寧ろ温まってきた位だ。どんな過酷な環境であっても、洸汰のメンタルは強靭でしなやか、いつだって元気。その明るい様子が、友軍までをも勇気づけた。
戦っているのは自分達だけじゃない。リーベは勿論、他の兵士たちだって守るべきトモダチだ。理想の兄として、小さな守護神は最前線に粘り立つ。
今、この瞬間も平等に。廃滅の足音は、刻一刻と近づいている。
●――が、ふたりを別つとも
鉛玉が死者を纏めて圧し潰し、海と鉄の精鋭がその力を存分に振るい、ゲオルグや縁が纏めて打ち祓い、ユゥリアリアやミーナが一体ずつを確実に再殺していく。
死者の数はだいぶ減ったが、全てを殺しきるまでには至らず。時折、死者の船から新たな死者も生まれ来る。
武器商人の至近で数体の死者が蘇り、彼の周周辺が密集地帯となる。
それと同時に、主砲の準備が整った。ミーナは素早く指示を飛ばす。目標は、武器商人その人へ。
「い、いいんすか? 本当に」
確かな視界と判断を伴う砲撃は、戦線維持に貢献し続けている。あらゆる攻撃を遮断する彼ゆえに当てても問題は無いが、気持ち的なやり難さに装填手は戸惑う。
「構わん。仮に護りが無かったとして、簡単に倒れるようなモノではない」
どんなに殺そうがアレは死なぬと、ジェドが砲撃を促して。
「わ、分かりました……撃ちます!」
炸裂する火薬、飛来する鉛玉。何度目だろうか。ぐちゃぐちゃに潰れた死体の中で、紫の月は何事も無かったかのように立っている。金銀の護りが途切れた時とて、御伽噺を殺し切るのは、雲を掴む程に難しいのだ。
海中からの不意打ちは気づき難く、不意を突かれる事もある。海中で揺らめく海龍の灯りが、死者を深い場所へと沈める。
海中の敵もそれなりに多い。縁は少しの間水中に留まり、死者を引き付ける事にした。
呪いで荒れ狂う海の中、海龍と海魔の眷属は、互角以上に渡り合う。
「こっちにも、加護とやらはあってな」
墨を流したような海の中、青く透き通る水の流れが、縁の周辺を回り巡る。海の祝福は死者を退け、落とし子の縁には力を与える。
「……こんなもんかな」
そろそろ良いだろう。すい、と泳いで海を出る。脇腹から流れ出る血が、暫し海中に尾を引いた。
戦況は長引く一方。手厚い回復を以ても環境は厳しく、生者に疲労の色が滲み出す。
百戦錬磨の精鋭といえど、苦境が長引けば心も折れよう。死者たちをなぎ倒し、ラニエロに迫るにつれて呼び声はより近く、強くなってくる。
『ねえねえ。あの鉄帝のふたり……何かおかしくない?』
後方支援に徹していたTricky・Starsが、最前線の異変に気付く。屈強な鉄騎の兵士が二人ほど、ラニエロを向いてぼんやり立ち尽くしていた。
『……これって、ヤバいやつ?』
「言うまでもない」
ふわりと浮いて、天使の歌を。続いて叱咤と激励を。優しさは片方が、足りないものはもう片方で。
「己の怠慢を棚に上げて被害者ぶる。挙句、何の罪もない他人を傷つけて愉悦に浸る――そんな者の声に、耳を傾けるのか?」
包み込む優しさよりも今、この場に必要なものを。
「鉄の戦士とあろう者がこの体たらくとは。馬鹿馬鹿しい、ここで堕ちたら末代までの恥だぞ」
「……!!」
稔が紡ぐのは、心の奥まで突き刺さるナイフの如き叱咤の言葉。それを受けた戦士の目に光が戻る。広域に及ぶこの激励は生者たちの不安を払い、戦う力を呼び戻した。
『あと少しなんだから、頑張ろうぜ!』
「……おう! 鉄の意志、この海に刻んでやらぁ!」
アレクシアの放った魔力の矢が樹里に炸裂し、致死の毒花がその身を食い破って花開く。身体の内から蝕む炎が、ラニエロの治癒魔術を相殺する。二人の仲を引き裂くような仕打ちに、胸がちくりと痛むけれど。
「ごめんね。でも、止まれないから!」
一瞬咲かせた毒の花も、海魔の加護が散らしてしまう。死者を使って作られる盾が樹里を強固に守り、攻めあぐねる間にも、与えた傷が癒えてしまう。
そんな中でも、廃滅の病だけは止まらず確実に樹里を蝕んでいる。
水中より復帰した縁が降り立った位置は、丁度樹里とぶつかる場所で。
「っと。お嬢さんか。結構”来てる”みてぇだな」
「うん。お兄さん”も”ね。言っとくけど、お情けなんて要らないからね」
「ああ、勿論。手加減してやる気はねぇさ。そんな余裕もねぇ。ただ……」
思ったままに、ぽつりと零す。
「お前さんが少し、羨ましくてな」
あの時、自分はその手を放してしまった。けれど、目の前の少女は違う。当たり前のように、己が出来なかった事をやって見せるから。
「これもまた嫉妬、ってやつか。……しかし、まだ。俺は、堕ちる訳にはいかなくてな」
「私も。まだ、もう少しだけ……ラニエロと、生きたいもん!」
種族や立ち位置に関わらず、廃滅の呪いは平等に蝕む。前へ往くなら絶望が、後ろに退くなら確実な死が。残された時間はお互い同じで、ごく僅か。
(――今だ!)
その一瞬。樹里が縁と打ち合う事で『二人』の間に隙が生まれる。機を伺っていたアレクシアが朽ちた船――その主に向かって一直線に走り出す。
「ラニエロ!」
咄嗟に気付いた樹里が、ラニエロを守るべくアレクシアを追う。海魔の呪いに阻まれたアレクシアの動きは重く、樹里はあっという間に距離を詰めてくる。
死者全てを殺しきるのは難しく、ラニエロとの連携や加護がある限り、樹里を倒すのもまた難しい。
二人を分かつなら、まさに今。今しかないのに、樹里のスピードは凄まじく。
(間に合わない、か――!)
回り込まれるかという、寸での所。
「ストップストップ!」
もうひとつ。小さな影が、少女の間に割って入る。
「洸汰君!」
あと一歩という所で足止めを喰らう樹里。その間に、アレクシアは目標近くへと至り。勢い任せに衝術を放ち、ラニエロを孤立に追いやった。
「樹里!」
互いの声はまだ届く。それでも、開いた距離は不安を煽る。
「邪魔を、するなッ――!」
海から現れた魔氷の槍が、足場の甲板ごとアレクシアを貫く。
耐久力には自信があった。それでも魔種の、それも渾身の一撃は重い。足りない分は迷わず、可能性を砕いて踏み留まる。
「まだまだ……!」
諦めない心の光が、ラニエロの濁った視界に映る。その光は、想い人のそれと何処か似ていて――
「ああ――」
多様な旋律で死線を支えたユゥリアリアも、なお足掻く樹里の一撃でついに力尽き倒れる。
暗転する意識の中、あの『声』がはっきりとした言葉となって脳裏に響く。
ドウシテジブンダケ?
「――あ」
かつて、歌姫には将来を誓い合った者が居た。今は遠い、いとしいあの人。
とっくに飲み込んだはずの想いが、塞いだはずの傷跡が、じくじくと痛み出す。ドウシテ? 納得はしたはずなのに。
否。魔種の言葉のように想った事も、一度や二度ではない
――――でも。
『ああしなきゃ、俺は俺でなくてね』
歌姫の指先で、指輪が光る。
(……そうですよね)
この指輪は、婚約者からの贈り物だ。
(私も、私でありますから――見守っていて下さいね)
もう大丈夫。さあ、今を奏で続けましょう――歌姫は再び、舞台へと舞い戻る。
紅雷の勢いは、呪いの海でなお殺せず。特に激しく樹里と打ち合うマリアは幾度となく落水したが、その都度素早い復帰を果たす。
「お互い結構ボロボロだね。……ねえ、樹里。退く気はないの?」
「聞かなくても分かるでしょ? あなたなら」
「……そうだね!」
国の柱として在った殲姫も、恋をした日はあっただろうか。あったとて、責任感の強い彼女が、樹里と同じ道を選ぶのだろうか。
分かり合えないならば。分かり合えても、彼女達はぶつかる事しか出来ない。
Tricky・Starsやミーナ、ゲオルグらが揃って癒しを奏でても、完全な立て直しはそう敵わない。多数の敵を引き付け続けたヴォルペや縁、武器商人らの消耗も著しい。
「んー……そろそろ辛そうか」
死者に武器商人は殺せないが、ヴォルペと縁はまた違う。ならばと月は一声、ひときわ広くへ声を響かせ、より多くを破滅へと誘う。
「さぁ通りゃんせ? 通れるものなら、だけれどね」
あの子『達』も言っていたけど、この舞台では誰しも役者。ならばしっかり、自分の役割を演じようじゃないか。その口元に、変わらぬ余裕の笑みを浮かべて。
紅い雷光と残像を伴って駆けるマリアの傍ら、アレクシアが咲かせた棘の花が、死者の盾ごと樹里を捕らえた。魔を退ける戒めの棘が、強固な護りを粉々に砕く。
「マリア君、今だよ!」
「ああ!」
標的に向けてレールを繋ぐ。この雷を阻む盾はもう無い。あとは、全力で加速あるのみ――!
「ここで、決める!」
一点目掛けて炸裂する光速の蹴り。無数に飛び散る紅雷は、鮮やかな花のように。
この瞬間、一瞬だけ。殲姫の速度が、光のそれを上回り。
「雨垂れ岩をも穿つ、ってね!」
生者と死者とがぶつかり合う中、ひときわ大きな華が咲いた。
「……樹里?」
●最初で最後の、根競べ
魔種が愛した少女の姿が、眩い紅雷の中に消えた。
まだ息はある。直ちに癒しの力を送るも、傷を癒すには至らない。
「ラニエロ、ごめ、ん……」
死者たちでは、生者を止める事は敵わず。生者たちはまさに今と、ラニエロの元へ押し寄せる。光り輝く氷の旗と紅色の雷は、見間違える筈も無く。
「樹里をやったのは、キミ達、カ……!」
――――ユルサナイ――――!
広がる悪意と哀哭の叫びが、質量さえ伴って生者を圧し潰す。
可能性を削って仲間を癒し続けたゲオルグが、ここでついに膝を折る。友軍が援護を申し出るも、今は打って出るべきと断った結果。
癒し手は自分ひとりではない。大丈夫だ。最後の力を振り絞り、声援へと変えて仲間に託す。
「ゲオルグさん、ありがとう! あとは任せてくれ!」
全ての生者を支え続けた彼の献身は、いつの間にか、国を超えての連帯を生んでいた。鉄騎の兵が我先にと切り込み、海洋の兵がそれに続いて、
「――凍え、果てよ」
鉄の冬がやって来るだ。遠方より降り注ぐジェドの氷弾が、寒さを知らぬ死者をも凍り付かせた。
「マダ奪ウノカ……オマエ達ガ……樹里ヲ返セ!」
悪意の汚泥が広がり、生者を絡め取るの背後、蘇った死者たちが迫る。後先考えぬ魔種の攻勢は、一体だけとて相応のもの。
「こいつはそろそろ、おにーさんも行った方が良さげか」
ラニエロを攻める間も死者は蠢く、援護に向かうヴォルペに対し、死者の刃が、弾丸が、矢が容赦なく突き刺さる。
「はは、楽しくなってきた!」
それでも『おにーさん』は平常運転。死地にあって、更に輝きを増してゆく。
「オレは……オレ達は、アンタみたいにはならない、いや……なっちゃいけなからっ!」
可能性が一度砕けても、洸汰はまだまだ『元気』だ。ピンチの時こそ笑って見せろ。気合で呪いを吹き飛ばす。次に繰り出す全力の一手は――
「!?」
嫉妬の海魔が狼狽える。バットでもグローブでもなく、素手による、親愛さえ感じさせるハイタッチ。仲間にするのとほぼ同じそれに、ラニエロの思考が一瞬止まる。
『大人になっても』間違う事は、友人含め未だ多く。自分の判断も彼の判断も、正しいかどうかのジャッジはし切れず。
それでも。ただ、仲間と共に帰りたい。その一心で、洸汰は不滅へと至る。
「さて、着いた着いた。皆、大丈夫?……ラニエロ君も、諦めが悪いなぁ」
「そう、かナ。……だとシタラ、嬉しいナ!」
合流したヴォルペに対してラニエロが見せたのは、紛れもない笑顔。
そう、これは後先何も考えない、純然たる只の悪あがき。
臆病だった青年が、少女の後押しがあったとはいえ初めて、自分の意志で足掻くと決めて。今この瞬間まで、受ける傷と迫る呪いを耐え抜いてきたのだ。
「本当、粘るねぇ……俺の身体もいつまで保つか」
海龍の加護に護られる縁も、とうに限界は超えている。どう足掻いても、どんな道を辿っても、ラニエロの破滅は確実。しかし、秘めた覚悟も引けない事も、破滅が近い事もお互い同じ。――嗚呼まったく、なんて泥仕合だ。
「さぁ、根競べと行こうや」
あの海の向こうにはまだ『あいつ』が居るから。
「樹里――」
今、イマ助けるかラネ。
どうか、どうかそれまで持っテクレ。
僕の/俺の、このカラダ。
「はいどうも。お邪魔します、と」
いつの間に辿り着いたのだろう。ラニエロの至近に、前触れなく銀の月が現れる。
「そろそろ頃合いだね。『ソレ』の噺を始めよう」
気まぐれな欲望から始まった、星を墜とす愛(まほう)の末路。紫銀の月が語る結末。狂気に満ちた月の光が、予言めいてラニエロを照らした。
如何なる結末を囁かれたのか。必死に否定せんと、アレクシアに痛手を負わせた呪いの魔氷を武器商人へと放つ。全身全霊で放つ魔氷は、歩く破滅すら打ち砕き――
「……おっと!」
武器商人に魔氷は届かず。ヴォルペが代わって腹を貫かれ、大量の血を吐く。
「やれやれ。無茶するねェ」
「我が麗しの銀の君、美しき俺のトモダチ。君が傷つき倒れる姿は、見たくないからね」
これがおにーさんのお仕事で、生き甲斐だから。そう言って、満月の緋狐はぐったりと動かなくなる。
「まあ、よくやってくれたよ」
彼もまた、殺しても死なない男。随分な血を流してはいるが、心配はないだろう。
「しかし。その気持ちは、託されておくとしようか」
蘇った死者がラニエロの元へ集まり始めるが、既に其処は死神の領域。
「私が後ろでモノ言うだけの、ひ弱な小娘に見えたのか?」
残念、私は元死神だ。死神の闇が海魔の闇を侵食し、闇を闇で上書きしていく。
「もう此処は私、元人間、元堕天使、元死神の一般人Bの領域だ。アンタ達の自由は、もう無いぞ」
ラニエロは闇に耐えきったが、死者の群れはひとたまりもなく。闇へと引き摺り込まれて行く。
「さあ、恐れ慄け。そして食われろ」
――その闇は、貴様自身の闇だ!
此処で一気に攻め立てんと、アレクシアが魔法の矢を放つ。
「誰かを妬んだり羨むのなんて、もうとうの昔にやめたんだ!」
ラニエロの胸に突き刺さった矢は、樹里と同種の花を咲かせる。何度も撃って、ようやく届いた。何度も何度も挑んでいけば、魔種にだってこうして届く。
「あの子みたい……真っ直ぐなんだね。でも、ソレは本音ナノ?」
「そうだよ! だってそうでしょう? 妬んだって羨んだって、自分の世界は広がらないんだから!」
――本当ニ?
脳裏に直接響く声。『呼ばれている』のだとすぐに分かった。
『ねえ、花のお嬢さん。僕も”そうだった”から、何となく分かるんだけど』
なんで私は家から出られないんだろう、なんでみんなは外で自由に遊べるんだろう。
どうして私は何も『持ってない』んだろう?
――ドウシテ?
『そう、ミンナノヨウニ――羨ましかったよね、歯がゆかったよね』
「ええ! 誰かを羨ましいって思うなんて、いくらでも! 今だってそう!」
『ソウダ、イインダヨ? ありのまま、正直二――』
――キミノ『コエ』ヲ、ボクニキカセテ?
深く暗い海の底、暗く深い心の底から、嫉妬の魔種がアレクシアに問う。
「未だに身体は強くないんだ。これだけ沢山のお花で固めて、やっと前に立てるぐらい……最初から持ってる人たちは、正直羨ましいよ」
『そうだろう? こんな不平等、許せるワケガナイ』
「……でもね。その人の足を引っ張るんじゃない。追いついて、同じ景色を見たい!」
『余計に傷つくダケナノニ? ドウシテキミダケガキズツクノ?』
「世界には、無限の色があるからね。苦しい事があっても、全部ひっくるめての世界だから……見たいのは、そんな景色(セカイ)だから!」
ここまでの想いに至るまでにも、無数の涙を流してきた。けれど。それでもなお。
その向こうを見たいんだろう? 進め。倒れてる場合じゃない。ちゃんと立って進むんだ。
だってそうでしょう?
私は一度だって、自分を押し殺してなんかいないじゃないか!
「――ラニエロ、これはね」
『憧れ』っていう、大事な気持ちでもあるんだよ!
光に影が伴うように、この痛みはきっと消せない。憧れの光が形作る影。この影が在る事が光の存在証明で、影の部分だって己の一部だ。
ぱりん、と何かが割れる音。それと同時に声は鳴り止み、意識は戻る。
目を開けても景色は変わらず、深手を負った身体は自由に動かず、海は絶望に閉ざされたまま。
それでも戻れて良かったと、花の娘は心から思った。
誰一人堕ちては来ず、残る手近な死者を盾に凌げど、ラニエロはいよいよ孤立無援。
「……樹里……」
受け続ける傷や異常に、生者たちの諦めない心に、魔種の再生能力が徐々に追い付かなくなる。悪あがきをするうちに、廃滅の病も随分と進んだ。
さあ、いよいよ終局(フィナーレ)か。舞台の中心へと進み出るのは、白氷の歌姫。
「終わりにしましょう」
彼女の名前を呼べるなら、貴方はまだ大丈夫だから。
「終わりにしましょう」
貴方が貴方であるうちに。
氷の刃より放つのは、ごく単純な軌道の刺突。
「ぐ……ガ……」
その鋭い一撃に、海魔はいよいよ崩れ落ちる。痛みは全く感じない。
その氷刃は、慈愛に満ちた鎮魂歌。海魔だった青年が崩落するその瞬間、分厚い雲がすうっと引いて、青空が徐々に広がっていく。
沈んでいくラニエロの見上げる空は、とても明るくて――
「……久しぶりの、海日和だね……」
海で生まれた青年が最期に見た景色は。大切な少女とあの日見上げた、鮮やかな青色の空だった。
●やがて、雪解けの日が来たら
死者の船が倒壊を始める。残された樹里を救わんと、マリアが手を伸ばす。その手を樹里は、やんわりと拒んだ。
「ちょっともう、無理、だから……ごめんね、手間かけさせちゃって」
「そっか、分かった。譲れなかったんだろ?」
旅人の少女はこくりと頷く。誰よりも激しく、真っ直ぐに打ち合ったからこそ分かる。
「納得ずくなら、言う事はねぇ」
「海龍のお兄さんも、ありがとね。……ん、訳分かんないビョーキで死ぬより、ずっといい」
彼女と彼は、やりきったのだ。幸せにな、とだけ言葉を交わし、生者たちは崩れる船を後にした。
すっかり凪いだ蒼海に、ふたつの影が、手を繋いだまま沈み往く。その様子を、ジェドは無言で見届ける。死ねなかった者たちも、海や空へと還って行く。
「――貴方の望みは、叶いましたか?」
透き通る深海に向けて、氷雪の歌姫は葬送曲を奏でる。
瞼の裏側に、青年と少女の最期を思い描く。二人の表情はとても安らかに、晴れ晴れとして――
「……問うまでも、ありませんでしたね」
無駄な問いかけはやめて、代わりにこの歌を贈りましょう。
嵐の海も、厳しい鉄の冬も、悲しみでさえも、永遠には続かないのですから。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
やる事多めで字数の制約も多い中、本当にお疲れ様でした!
判定理由などはリプレイにも記載しましたが、ご自身の得手不得手をきちんと踏まえた上で
NPCを含めた役割分担をしっかりとされていた事が非常に大きかったです。
MVPは戦場全体を的確に見極め、細かい指示をガンガン飛ばしてくれたミーナさんへお贈りします。
混成部隊の指揮系統に一本の芯が通ったからこそ、多数の変異種に圧されず済みました。
結構怖い状況ですが、皆様ご無事で戻られますよう……!
また機会がありましたら、よろしくお願いいたします!
※以下運営より補足します。
本シナリオでは『原罪の呼び声』判定が発生しています。
公平性を期す為、アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)さんに送付された特殊判定を下記に記載します。
////////////////////////////////////////////
妬んでも、羨んでも、自分の世界は広がらないって?
……ねえ、キミ。本当にそう思う?
本心から、そう思ってる?
僕も『そうだった』から、何となくだけど、花のお嬢さん。キミの事、何となく分かるんだ。
こんなにもたくさんの術にお花。身体もココロも、これだけの守りを固めて、ようやくキミはここに立てる。
世界を広げる? そんな必要ってあるの? 広げてどうするの?
キミ自身のことすら、自分だけでは守れないのに?
――うらやましくは、ないの? 本当に?
キミのように頑張らなくても、何もしなくても強くて、幸せで。大きな力や折れない心、大切な人がすぐ傍にいること。そんな風に、すべて。すべてを持っている人が居ることが。友達や、今まで会った人の中にも。それもひとりじゃない、何人もが『持っている』ことが。
それでもキミは無理をして、自分を殺して、前に立つの?
どうして自分は? ドウシテジブンダケ?
本当に? 一度も? そう思った事はナイ? ソウ、イイキレルノ?
キミが殺し続けてきたキミ自身がいま、誰も知らない所で、泣いてはいないのかな?
イインダヨ?
今なら誰にも聞こえない。この嵐が掻き消してくれるから――
――キミノ『コエ』ヲ、ボクニキカセテ?
////////////////////////////////////////////
この呼び声の属性は『嫉妬』です。
原罪の呼び声は魂を揺さぶり、その者の在り方自体を改変する危険な誘惑です。
お客様はこの声に『応える』か『拒否する』かを任意に選ぶ事が可能です。
5/15一杯までにこのアドレスに答えをご返信下さい。(一緒に台詞等を書いてくださってもOKです)
返信がない場合『拒否した』とみなして進行されますのでご注意下さい。
尚、原罪の呼び声に応えた場合、キャラクターは魔種となりキャラクターの管理権がお客様から離れます。不明及び死亡判定に準ずる『反転状態』にステータスが変化しますので予めご了承の上、ご返答下さいますようお願いいたします。
※メール自体の他者への公開は構いません。
また応じた場合、まず間違いなく簡単に戻れるような状態にはなりません。
以上、宜しくお願いいたします。
GMコメント
ご無沙汰しております。わらわらもりもり!
・・・・・
●目標
魔種・ラニエロと変異種の全滅(樹里の生死は問いません)
●情報精度:B
敵や場所の情報・傾向は正確なものですが、『こういった状況での不確定要素』には
充分にご注意ください。
●フィールド情報
嵐の海での船上、および水上・水中戦になります。
猛吹雪で視界は悪く、海も荒れており足場は不安定。
特に敵の本陣・朽ちた船は極めて足場が脆くなっています。
基本的に海洋貸し出しの軍用船で移動しますが、自前の乗り物も使用可能です。
吹雪については、対策をしない限り、ターゲットとの距離が開くほど
命中率が大きく低下していきます。
●敵
〇ラニエロ(魔種/海種)
ふとした事で堕ちてしまった元海洋軍人。
彼が場に存在する限り、すべての変異種と樹里に以下の魔的な加護を、
イレギュラーズ側には弱体の呪いをもたらします。
★嘆きの海域(P)
・視界、水場の環境ペナルティを大きく軽減+機動力を向上させます
・毎ターン開始時、HPとBSを小~中回復
・低確率で変異種を1~2体召喚
★『呼び声』(P)(ターン開始時に発動)
・毎ターン開始時、機動力低下、不運、魔凶のいずれかを確率付与(重複あり)
低くうねるような、心をざわつかせる音として心に直接響きます。
嫉妬の魔種であるラニエロの『原罪の呼び声』であり、押し込めた嫉妬心を
強く揺さぶります。普段強く抑圧している者ほど反応が大きくなるようです。
ラニエロ本人のスペックは以下です。
本人の反応と回避はやや低いですが、HPと特殊抵抗がかなり高くなっています。
・望まぬ生(P):ターン開始時、HP回復中【棘】
・棺牢の盾:R4以内単付【防技・特抵強化】※変異種を1体消費
・中~遠距離で妨害型の神秘/範囲攻撃を行ってきます【停滞や体制不利・災厄】
・至近の範囲で極大ダメージ・【必殺・呪殺】付きの攻撃も所持しています
〇樹理(旅人)
ラニエロを慕って行動を共にしている、異世界「現代日本」から来た少女。
少しでも彼と二人で生きたいと願い、その決意はとても固く説得は困難です。
機動力、反応、EXA、連撃に優れ、加護によってで魔種に迫る戦闘力を発揮します。
・海魔の守護+(P):嘆きの海域の効果に加え、身体能力を大幅強化します
・残影百手・藍:物至単/極大ダメージ【崩れ・必殺/反動あり】
・それ以外も至近距離での挌闘がメインですが、中距離の貫通攻撃も使用します。
〇変異種×30(初期)
絶望の海に散った者たちの成れの果て。光ある生を憎み、妬んでひきずり下ろしにかかってきます。
武器や傾向、強さにはバラつきがあり、銃やボウガンを装備した者が3割います。
基本は朽ちた船(敵の本陣)上に居ますが、初期配置の1割ほどが海上/海中に潜んでいます。
・望まぬ不死(P):ラニエロが場に存在する限り、必殺or対アンデッド攻撃で
とどめを刺さなかった場合、偶数ターンに無条件で復活します。しぶといです。
・海へ引きずり下ろしたり、叩き落としたりしてきます。【飛】を伴う事があります
・近距離攻撃が多めですが、中・域に【暗闇】を伴う雑霊を飛ばす事もあります
・射撃武器持ちは超射程、【苦鳴】付きの遠距離攻撃も行ってきます。
●友軍
〇【冬将軍】ジェド・マロース(精霊種)
武器商人(p3p001107)さんの語る鉄帝の冗談話、その化身。
海洋に居る大切な人のため、皆さんと共に絶望の海域に挑みます。
指示も聞いてくれますが、自己判断での戦闘・友軍の指揮も可能です。
・彼が自軍船上に居る時のみ、彼か友軍の誰かが1ターンに1回
遠範攻撃の主砲【致命】を使用できます。再装填には1ターン必要です。
・本人は【凍結・氷結・氷漬のいずれか】を伴う複数攻撃と
斬撃・射撃スキルを使い、戦闘力も相応です。
〇ジェドさん麾下の鉄帝海軍×10(鉄騎種6:その他4)
力自慢の精鋭揃い。単純な戦闘力は海洋軍を大きく上回ります。
海上での技術は基本のレベル。傾向は雑多ですが、直接的な攻防寄りです。
〇海洋軍×12(海種7:その他5)
海洋軍の精鋭です。近接、射撃、支援とバランスよく揃っています。
全員が高い操船技術を有し、海種以外でもある程度の水中行動が可能です。
〇【青に焦がれる船乗り見習い】リーベ・ズィーマン(飛行種)
元気いっぱい夢いっぱい、飛行種の少年。清水 洸汰(p3p000845)さんの遊び友達。
戦闘能力は皆無ですが、ある程度の操船技術と航海術・水泳スキル、
ギフトによる非常に強い視力を持ち、唯一、ペナルティなしで戦場全体を見渡せる存在です。
基本的な初期配置は前衛に自軍船・そのすぐ後ろに海洋と鉄帝の船が控えて
ラニエロや変異種の居る朽ちた船と対峙しています。
前衛の自軍船と朽ちた船の距離は10m、朽ちた船と友軍船の距離は20mです。
●重要な備考
<鎖海に刻むヒストリア>ではイレギュラーズが『廃滅病』に罹患する場合があります。
『廃滅病』を発症した場合、キャラクターが『死兆』状態となる場合がありますのでご注意下さい。
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色々要素があって友軍も精鋭が揃っていますが、切り札はあくまで『可能性』を持つあなた達です。
……という訳で、皆様のご参加、心よりお待ちしております!
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