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シナリオ詳細

ゼシュテル美少女投げっぱなしジャーマンファイッ!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●いこうぜ向こう側ってやつへ
「なにゆえゼシュテルに熱帯雨林がありますの!!!」
 ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)はブチ切れた。
 んなこと気にしたら負けである。行くと決めた以上、どんな困難があっても乗り越える、それがイレギュラーズだ、ということにしておこう。
 どっかの探検隊そっくりの格好した一行は、ブッシュナイフでこんもり茂った下草を切り払い、ともすれば首へ絡まろうとする蔦を切り落とし、なんだおまえ最近流行りの錬金術絡みか? ってな感じの巨大食虫植物を撃退し、地味にうっぜえ蚊トンボをぱちぱちぺちんとやりながら奥へ奥へと進んでいた。
「……熱い。なんでやねん」
 思わずカンサイベンになった仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)。真顔だ。
「私の記憶が確かならば、鉄帝ことゼシュテル鉄帝国は零下の国、諸国を制圧して成り上がった軍事国家として名をはせているものの、一番の敵は厳しい気候というお国柄だ。なのにここ、まじで熱い。でもって、むしむしする」
 重ねて言うが真顔だ。不快指数はとんでもない値を叩きだしているだろうから計る気もしない。
「いったいなぜこのような場所がゼシュテルに……理解したくないでありますね」
 これまた真顔のエッダ・フロールリジ(p3p006270)。いい感じの切り株があったらそのまま腰をおろしたい。もうこの際、倒木でもいい。でかいキノコとか生えてないのここ。ほらいま妖精郷とか流行ってるじゃん? なのになんでこんなところでこんなことに。
 だが間髪入れず、先頭を歩いていた咲花・百合子(p3p001385)が振り返った。
「美少女の集落があるからだ」
「前後の脈絡がさっぱりであります」
「美少女だからだ」
 そうでありますか、としかエッダは百合子へ返せなかった。もちろんこの探検隊な一行にはちゃーんとわかっていた。だからあえて、ほんとにあえてだよ? 説明するとしたら、ジャングル奥地に巣食う美少女(種族)が、その覇気によって大地を活性化させ、熱帯に等しい環境を作り上げているのだと肌で理解していた。
「いうならばこれは結界の一種。覚悟もなくこのジャングルへ踏み込めば碌な結果が待っちゃいないってことかな」
 汗をぬぐうのはミルヴィ=カーソン(p3p005047)。ラサを拠点にしていた、いや、だからこそ砂漠の乾いた風に慣れた、それ以上に練達のエアコンとかいう文明の利器に慣れちゃった身にこの湿気はきっついもんがある。片手を扇子代わりにパタパタやりながら、ミルヴィは独り言のように確認した。
「あのさ、目的地ってただの集落だよね? 村って規模でもないんだよね? それでこれなの、油断してられないじゃない?」
「ああ、美少女の無限の可能性を目の当たりにしている思いだ」
 さすがに疲れてきた様子のマリア・レイシス(p3p006685)もうなずいた。ふたりは視線を交わして無言のうちに心を通わせた……やってらんねー、と。
 しかし百合子は意気揚々と左腕にはめていた登山用腕時計を指さした。
「見ろ。とうとう方位磁石が狂いだした。間違いない、吾らの目指す地は近いぞ」
「ああー、やっと拙者たち、休憩できるわけですね!」
 外見特徴イッパツ目が【可愛い】な夢見 ルル家(p3p000016)(実際ぐうかわ)が心底安堵して大きなため息をついた。気分はもうヴァルハラ、さっさと汗臭くなってきたこの探検服脱ぎたい、ついでに水浴びもしたい。おなかだって空いてきたし、お金持ちのいい男はいなさそうだし、死兆だって気になるし、さくっと目的達成したい!
 ところがどっこいと、リア・クォーツ(p3p004937)は眉を曇らせる。
「どうでしょうね~。なにせ美少女の集落だし。はたして突然の旅人を歓迎してくれるでしょうか?」
「大歓迎してくれるぞ! そこは間違いない!」
 百合子は上機嫌で言い切った。そこまで言うならと一行はまったりモードに入りかけていた脳内スイッチをもういっかい前に倒した。
 でも地図にも載ってない集落を勘だけで探すのはさすがに無理がある。せっかくだからとリアはギフトを使った。『クオリア』100m以内の感情を無差別に旋律として読み取るという……だいじょうぶ? たぶん絶対音感持ってるよね? 救急車のドップラー効果でイライラしたりしない? ……と、余計な心配をしたところで、話を前に戻そう。

 どうしてまたこんな苦労してるかってーと、物事には経緯と言うものがあってな。

 数日前の話だ。
「聞いてくれ!」
 突然百合子に呼び出された付き合いのいいメンツは、ローレットのいつものたまり場で顔つき合わせていた。
「ゼシュテルにはいまだ手つかずの大地が残されているのは周知の事実だが、噂によればその一角に美少女(種族だってば)の集落があるらしい。さっそく情報屋を使い詳細を集めさせたところによると、そこの学級委員長(集落の主)は『マスター清楚』と呼ばれている。それだけではないぞ、仙人、つまり古代美少女である可能性が高い。ぜひこのまなこに映したい!」
「行ってみたいんだな?」
「然様」
 スパッと言ったマリアへスパッと百合子は返した。
「そこってどんなところだ?」
 もっともなマリアの問いへ百合子は涼やかな笑みをこぼす。
「美少女がいる」
「お、おう」
「はい、質問。美少女ってどんなタイプのでありますか? いろいろ居るでありましょう? ギャル派とか清楚派とか」
「人目につかないよう隠れ住んでいるから、九分九厘清楚派の美少女だ」
「清楚と聞いて」
「うむ、清楚だ。おそらく清楚派らしくEXAがあがる修行を積んでいる」
「EXAと聞いて」
「うむ、EXAだ。あと未開の地であるがゆえに珍しい酒もあるやもしれん」
「お酒と聞いて!」
「うむ、酒だ。清く正しい飲酒を行っているだろう」
「清廉潔白と聞いて」
「うむ、美少女だからな。稽古をつけてもらえれば立派な花嫁(支配者)も夢ではない」
「花嫁修業と聞いて」
 誰が誰やらわからんと思うので説明しておくけど、エッダ、ミルヴィ、汰磨羈、ヴァレーリヤ、リアの順。最後はわかるよね。
 その後、仲間から次々寄せられる質問を『美少女』『EXA』の二択で薙ぎ倒していく百合子。みんな百合子の性格はだいたいわかってるし、己の欲望が叶うなら手段は選ばないのもイレギュラーズってもんだ。結論から言うとものの10分もたたず、行ってみるべと相成った。

「まさかこんなに道が険しいなんて思いませんでしたわ!」
 ヴァレーリヤは頭を抱えた。過酷耐性持ちの身でも厳しいぞ、ここ。同じオールドワンのエッダですら、といいますか、さっきから真顔なのはストレスたまりすぎて無表情になってるからっぽい。飛んできた蚊をばちんっと聞いてるこっちが痛そうな音を立てて潰している。
 その時だった。
「みんな! 何か聞こえます、聞いたことのない旋律が……」
「ああ、うん、すまんが、私にも聞こえる」
 汰磨羈が申し訳なさそうに伝え、一同、神妙な顔でうなずいた。

●ようこそ花組へ

 ズンドコズンドコズンドコズンドコ――。

 線の細い美少女が獣の大腿骨を握り、巨大な太鼓を打ち鳴らしている。さらさらと髪をなびかせる様子は、あくまで箸より重いものを持ったことがないといった風情だ。
「ああああああファイヤアアアアアアアア!」
 これまた巨大な焚火の前で天使のような歌声を響かせる美少女。そのまわりではおしとやかに、肉を食らい酒を呑み獲物を自慢しあう美少女。うん、この程度でGMのゲシュタルトはクラッシュしない。大丈夫だ、かかってこい。さておき、皆おそろいの白の半そでブラウスに青いワンピース風の制服を着ていた。……そのスカートの丈は長く、膝下まである。
「……あれは」
「うん、おそらくは強烈な足技を繰り出すため。相手に予備動作を悟られないための戦闘服に違いないね」
 ひそひそと声を交し合うマリアとミルヴィ。一行の進入に気づいた美少女たちは立ち上がり警戒する。百合子が進み出て誰もを包み込むように両手を広げた。無手、すなわち敵意はないという美少女の仕草である。
「頼もう! 三千里の彼方より貴殿らの噂を聞き馳せ参じた者だ。マスター清楚はいずこ?」
 しばらく美少女たちは値踏みするように百合子たちを見つめていたが、そのうちのひとりが一際大きな高床式の家へ駆け込んでいった。やがてそこから、意外なほど小柄な美少女が姿を現す。おお、と百合子は武者震いした。
「血しぶきから視野を守るメガネ、きっちり分けた前髪と三つ編みおさげ、何よりその長袖の黒セーラー服、貴殿こそマスター清楚とお見受けした」
「私をそのように呼ぶ方もいらっしゃることは認めます」
 しゃらしゃらと輝くようなウィスパーボイスがおさげの美少女の唇からこぼれおちた。
「では単刀直入に、吾らに稽古をつけていただきたい」
 ざわり、周囲に緊張が走る。稽古をつける、それはつまり、静かに暮らす美少女たちにとって道場破りに来たと宣言するも同義である。四つの人影が、マスター清楚を守るように一行の前へ立った。
「日下部ユナ」
「新野辺カナメ」
「初雪マクラ」
「雲雀ヶ丘ネムル」
 短くアイサツをする四人。鋭い視線が一行をねめつける。マスター清楚はぺこりとお辞儀をした。
「申し遅れました、わたくしは花組学級委員長の『七津枷ヒデコ』。これなるは、いきものがかり(四天王)の美少女たち。稽古を、とおっしゃいましたね。実践に勝る稽古はありません。そうではないでしょうか?」
 ヒデコがそう言うなり、美少女四人は戦闘態勢へ入った。
「いきなりバトルですか! 拙者、聞いてないんですが! 歓迎してくれるんじゃなかったんですか、百合子殿!?」
「応、これぞ美少女流の歓迎、互いの持てるすべてをぶつけ語り合い友情を築く『慈己掌壊(じこしょうかい)』の儀! 血沸き肉躍る宴を始めようではないか!」
「お酒は!?」
 ヴァレーリヤの悲鳴に、そういえばとヒデコは口元へ手をあてた。
「蜜酒のことでしょうか。この森でしか手に入らない蜜酒ならあります」
「それでお願いしますわ!」
 ふふ、とヒデコは微笑んだ。
「ええですが、蜜酒は花組の祭りに供されえるもの。あなたがたをお客様と呼べるかどうかに祭りはかかっています。まずはあなたがたの清楚の限りを尽くして見せてくださいな」
 一見地味なメガネ越しの瞳が妖艶に輝いた。

GMコメント

みどりです。リクエストありがとうございました。
美少女なのでまずは拳で語りましょう。

やること
1)いきものがかり(四天王)をキャイン言わせる
2)収奪……じゃなかった、宴だヒャッハー

プレは半々くらいがいい感じです。

●いきものがかり(四天王)
 全体的に高EXAです。FBは標準装備。

日下部ユナ
 清楚な美少女の多い花組では派手なほうだが実力は確か
高命中BS型
・スケフィントンの娘
・ショウ・ザ・インパクト
・イーヴィルクロー

新野辺カナメ
 強烈な足技を得意とする花組の武闘派 といってもみんな美少女なので武闘派
高回避物理型
・戦鬼暴風陣
・外三光
・アデプトアクション

初雪マクラ
 花組のアイドル 癒しの使い手でもあるがゆえに保険委員も兼ねている
高神秘回復型
・アースハンマー
・ライフアクセラレーション
・光翼乱破

雲雀ヶ丘ネムル
 ヒデコ大好きのガチユリ いつか寝込みを襲うべく着々と腕を磨いている
高命中MATK型
・至単 MATK大 必殺 ブレイク 恍惚

●戦場
更地
戦闘に十分な広さ
足元ペナルティなし

●補足
四天王をキャイン言わせたら勝ちです。
終わったら焚き火を囲んで飲めや歌えをするもよし。
希望者はヒデコから稽古をつけてもらえます。

  • ゼシュテル美少女投げっぱなしジャーマンファイッ!完了
  • GM名赤白みどり
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年05月12日 22時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

夢見 ルル家(p3p000016)
夢見大名
咲花・百合子(p3p001385)
白百合清楚殺戮拳
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
リア・クォーツ(p3p004937)
願いの先
ミルヴィ=カーソン(p3p005047)
剣閃飛鳥
エッダ・フロールリジ(p3p006270)
フロイライン・ファウスト
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫

リプレイ

●( * ̄ω ̄*)
 ――名前聞かせてくれるかな?
「……リアです」
『清楚メルトダウン』リア・クォーツは、ほんのり頬を染めて視線をそらした。
 ――いつもひとりでしてるの?
「……は、はい……」
 ――この程度平気って本当?
「……慣れてますし」
 ――いまどんな感じ?
「……そこまで嫌な音色じゃないです」
「清楚!!!!!!!!!爆発!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
 なんの前触れもなくにょっきり生えてきたインタビュアーへ際どい衣装からハイキックを決めて『チャイナがえっちでよろしおすなあ!』ミルヴィ・カーソンは、笑顔を振りまくと二回転半からきゃるん♪とポーズをとったと思ったら、えらいドスの聞いた声でせりふをはいた。
「アタシは最強のアイドルになる……。そのためにここへ来たンだ…ローレット最強のアイドルになってライバルを全員倒して、アタシこそがアイドルの頂点になるために!」
 立派だ。お父さんもきっと泣いている。いろんな意味で。そこへ。
 ――遠い昔、遥か彼方の鉄帝で(てーんててーんてれててててて(略))
 ナレーションと例のファンファーレをバックに響かせ『騎士と呼べ騎士と』エッダ・フロールリジが、おもむろに右斜め45度の角度で現れた。威圧感を感じさせる下からのアングル。エッダはやがて静かに言い捨てた。
「いや、自分こんなダゴバってる辺境なんて知らんであります」
 一蹴! それもまた清楚!
「鉄帝民として言わせてもらえば、もっと世界観というものを大事にですね。あといいかげん“てつみかど“で変換するのはよすであります、辞書登録するであります」
 ハイソウシマス。でもセリフとかコピペに見えてじつは手打ちしてるから許してそのほうがPCさんの特徴が頭に入って来やすいアナログ人間なんです。まじめにごもっともなことを言っているエッダの隣では『絡み・オイル・アドリブ歓迎』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤが、すでに一杯入った赤ら顔で両手を頬にあてヤンデレポーズ。
「えへへへ、タダ酒の時間でございますわー! 後悔するくらいに飲み干してあげるから覚悟なさい! 勝利の暁にはそこの鍋に辛味オイルをしこたまぶちこんだうえで、一気飲みを強要……お勧めさしあげますのでお覚悟!」
 軽く拷問だそれ。己の勝ちを確信した声にいきものがかりたちは戦意を高め、今にも飛びかからんばかり。しかしヒデコは軽く首を振ってそれを制した。
「なんとよく躾けられていることか。下克上を狙う気概もないとは犬も同然よの!」
 そう挑発した『祝EXA81』咲花・百合子に、いきものがかりの威圧的な視線が集まる。そんな彼女が普段レオンからほねっこをほーらとってこーいされているのは内緒にしておく。
「それにしても土着の美少女の集落であるか!! いやはや、存在を予想はしておったが実際に来てみれば何とも懐かしい空気! 吾も昔はキャンプファイアー(収奪の限りを尽くし草の根も残らず焼き払うことで上下関係を叩き込むとともに焦土から新たな命が芽吹き更なる戦闘力の美少女が地へ降り立つことを祈願する行為)を皆で囲んでフォークダンス(殺戮した敵対者の中でも特に美少女力の高い個体の生皮を剥ぎ炎に翳して乾かし勲章へ加工する行為であり時間をもてあますことをよしとしない美少女たちが己の覇気を高め作成中の勲章へ篭める様子をそう呼ぶ)を踊ったものよ!」
「ヒデコさん、まさか彼女は……」
 カナメが百合子から視線をはずさず水を向けた。
「ええ、伝説の生徒会長です。御覧なさい、あの白セーラー。まちがいありません。お連れの方も百戦錬磨の美少女たち。けれどあなたたちなら立派に勤めを果たしてくれるものと信じています」
「ヒデコさまあ! わたしがんばりますう!」
 すかさず抱きつこうとしたネムルがヒデコの背後の地面につっぷす、表情一つ変えずヒデコは同じ場所に立っているように見えるが……『ヤる時はヤる』夢見ルル家にはわかっていた。
「すり足での高速移動。なるほど、その一瞬でネムルの攻撃を回避したと。……花嫁修業を受けるにはまずは門弟3人を退ける必要があるとKOKINWAKASHUにもあります。流石マスター清楚、サービスで今なら1人プラスという訳ですね」
 ルル家はこくりと唾を飲み込んだ。口元には愛くるしい(獲物を前にした獣の)笑みを浮かべている。
「出会い頭に拳で挨拶、やはり、美少女はそうでなくてはな! 私も思い出すぞ、かつて居た世界での熱き闘争の日々を!」
闘争どころか命がけの修羅の道を歩んできただけあって『これがハイバランスってやつだ』仙狸厄狩 汰磨羈は、ヒデコの突然の提案にもかかわらず、くかかっと清楚に笑った。凄みがオーラとなって立ち上り、二本あるかわいい尻尾がふりふり揺れてハートマークを作った。ラブ&ピース、つまりこれから貴様らを粛清する、という意味のケモ美少女しぐさである。ケモ美少女について説明せねばなるまい。なるまいし私はこの美少女群について真に驚くべき証明を発見したが、リプレイに記すには余白が狭すぎる。
 汰磨羈(辞書登録しました)は腰に履いた一対の双刀『煌輝』をすらりと抜いた。
「いきものがかりか、ヒデコほどではないがよい面構えだな。ふむ、味見し甲斐があるというもの」
 ぺろりとキュートに舌を出して見せる。今から貴様を獲って食らうという意味のケモ美少女しぐさである。
 やる気満々の面子の中で、『一般人だと思った?かかったなアホが!』マリア・レイシスは一歩離れて乾いた笑みを浮かべていた。
(清楚ってなに……? ごめん訳わかんない。……私の故郷の概念とは随分違うんだね……所変わればってやつかな。そうなのかな。あ、あはは……)
 うつむき、仲間といきものがかりたちの一触即発の空気に備える。彼女はぐっと拳を握り締め、気持ちを切り替えた。
(で、でも、強敵と戦えるのはとても良い修行になるから、がんばるよっ!)
なお、ここまでの称号は脊椎反射で考えた。

●(ノ)・ω・(ヾ)
「招かれざる転校生の皆さん、花組へようこそ!」
 いきものがかりの四人が地を蹴る。先陣を切るのはカナメだ。だがその前に、エッダとミルヴィが立ちはだかった。
「練鉄徹甲拳のエッダ=フロールリジ、一手頂戴仕るでありますよ」
「あなたの相手はアタシたちよ! 屍山血河の頂点アイドルへの道、その死者の列へ加えてあげる!」
「私の実力を高く評価してくださるのね。けっこう、新野辺カナメ、お相手いたします!」
 ミルヴィからの援護を受け、さらに自らを頑強に仕立て上げたエッダがカナメの両肩を抑えつける。かまわず苛烈な蹴りを叩き込むカナメ。しかし。
「……固い!」
「防技抵抗3桁を舐めるなであります」
 エッダの装甲へ蹴りをいれるつど硬質すぎる鋼が逆にカナメの足を傷つける。
「……なんとも優雅なおみ足(厄介な腿法)でありますな。だが如何な連撃と云えど、この距離は脚でなく拳の間合いであります」
 至近距離を維持し鋼で固めた拳で殴りつけ、かつカナメの注意を逸らせない。その器用さを維持し、カナメへダメージを与えていくエッダ。
 ミルヴィも負けてはいない。今も胸に残る初恋の一欠片を増幅させ神力にまで達する。
 ――テメェは危なっかしくて見てられ、いやほんと何してんの?
「黙ってアル兄さん!(///)」
 動きを抑えたエッダの代わりに自己強化し、競うような足さばきでカナメへ十六連キック。さすがにパンチドランカー状態になったカナメの様子に、エッダはにやりと笑う。
「ではフラウ・ミルヴィ。仕上げはお願いしますであります」
「了解、必殺! 清楚爆発!!!」
 決して奪わず鎮める為のイノリが炸裂した。
「……キャインッ」
 カナメが崩折れる。
 ――夢があるの、アタシには。アイドルになってみんなにこにこと笑って暮らせるように笑顔を振りまいて誰も死なせないって大きな夢……どんなに清楚芸人と、そにっくえっちと笑われようが!

「ぶちまわすどワレェ!」
 星の煌めきをまとったリアは開幕ドロップキックをユナへかました。爆心地にはあひる座りしているユナがいた。
「受け身をとらされるなんて……それにあれは清楚美少女にのみ伝わるヒロシマベン。まさか使い手がいたとは!」
「これじゃけえ美少女はたいぎいんじゃ! ええ声で鳴かせちゃるけえ覚悟しいや! のう、たまきち!」
「ふふ、リアめ、相当にやる気だな? ならば。美少女コンビ『ねこシスター』のクール担当として、冷静沈着峻厳冷徹に、御主を! キャインと言わせる!」
 にゃーんv 荒ぶってみせる汰磨羈。
「その余裕、打ち壊してみせるわ!」
「やれるもんならやってみせえ! 言うは易し行うは難しじゃ!」
 行くぜ鉄砲玉娘! 蒼剣使いも見ているぞ! 回復は捨てて攻撃一択、べらぼうに高くした反応で息もつかせぬ勢い、麻痺や呪縛を叩き込む。
「くうっ!」
 怒りで我を失ったユナが反撃するも、高い抵抗に弾かれる。
「ふふっ、防御も一流じゃけんのう。そうせんとあん人の背中にゃ追いつけんでえ!」
 頭も冷え、無駄を悟ったユナは娘からショウで(この略し方は語弊があるな)汰磨羈へ不調を植え付ける。入った、と油断がその目に生じる。だがフレンチネイルで襲いかかるユナへ汰磨羈は余裕の笑みを見せる。
「勝負はここからよ、秘技・仙狸肉球蛇烈鬼掌!」
 ふにふにふにふにっ!
「ああっ! 極楽だわ!」
「もうひといきだ! パワーを清楚に!」
「いいですとも!」
 二人とも空へ舞い上がり、流星墜ちるが如く大気を引き裂いてWドロップキック。
「キャイン!」
「ハッ、くやしいのうくやしいのうユナ! ……っと、いけないいけない、貞淑かつ清楚にいきましょう」

「マクラ殿、清楚しましょう!」
「このいきものがかり兼保健委員、初雪マクラ、微力ながら手を尽くします……」
 ルル家の挑発にマクラが同じ事を返す。
「そう……やはり貴女、保健委員でしたのね。けれど私は敬虔かつ貞淑かつ超絶清楚な司祭。癒やしオーラ指数は、あなたよりも遥かに上! 私の美少女力を前に絶望なさい、げはははははは!」
「ウォッカ、ラッパ呑みしながら言うセリフじゃないです」
「ああん、私に説教する気ですのルル家? うるさいですわ、貴女も呑みなさい!」
 言うなりヴァレーリヤはルル家へ飛びかかる。と、見せかけて、ルル家がすばやくしゃがんだ。射線上にはマクラが。完全に虚を突かれたマクラは初撃を許してしまった。
「どっせえ―――い!!!」
 ウォッカの瓶でツラをべちこーんとはりとばされる。
「うう、もしや貴女、酔拳の使い手では……」
「あーらそういう拳法もあるとお聞きしましたけど私のこれは清楚! 清楚ったら清楚(物理)ですのよ!」
「ならばわたくしも清楚にてお返しいたします……」
 マクラがアースハンマーを連打。次々と地面から生える巨大な槌を神がかった動きで避けるルル家。そのまま最適なポジションを取る。戦場において、己の得意レンジへ相手を捉えるのは勝利への方程式である。
「見るが良いです! 宇宙に煌めく我がパワー! 全にして一! 一にして全! それが我が清楚力(CT)です! 淑女らしく切り刻んで差し上げます!」
 スーパーノヴァ、暴力の奔流がマクラを襲う。圧倒的な爆発力でハンドガンから飛び出す星が弾幕じみて輝き、その中でマクラは踊った。
「きゃいん……」

(土着美少女って何? 清楚とは!?)
 溢れ出そうなマリアの疑問が口を突く前に、百合子が清楚に高笑いした。
「是非もなし! 吾こそは白百合清楚殺戮拳の咲花百合子なり! ヒデコ殿に吾の実力を見ていただく良い機会である! いざ尋常に勝負!」
「その言葉、いきものがかりとして見過ごせないですっ!」
(いきものがかりじゃなくて個人的にじゃないかな!?)
 マリアは心の中でそう叫んだ。精神の自由は大事だ。KENPOにも載っている。
「いきますよー、雲雀ヶ丘ネムル、ヒデコさまのためなら火の中水の中!」
 ダッシュしてくるネムルを相手取り、百合子はすっと利き手を掲げた。背景に百合の花が咲きこぼれる。ネムルはとまどったように足を止めた。
(ガチ百合と言えば百合派の対策をガチガチに固めたものを指す言葉……この百合子、全力にて貴殿を打ち破らん!)
 だがしかしネムルが立ち止まったのはそれだけだっただろうか。現在、百合子はクラスで一番レベルの美少女である。それがさらに高まれば……。
「ネムル君、隙ありだよ!」
 いろいろ吹っ切ったマリアが、最大戦速でネムルへ接近する。ネムルが正気づいたときには遅かった。顎を狙った一撃がまともに入る。さらにマリアはサイドステップで脇へ逸れ、瞬速の蹴りを繰り出す。ネムルが対抗しようと身を捩るたびに、正中線をランダムに突く攻めが入り、ダメージだけでなく気力も削がれていく。
「このっ!」
 振り回したネムルの拳がすかった。マリアが一気に飛び退いたのだ。紅の雷に打たれ、ネムルが歯を食いしばる。
「さぞ辛かろう、ネムル殿」
 百合子がネムルをぎゅっとハグした。そのままなでなでしてぽんぽん、ほっぺをすりすり。いい感じにゆりんゆりんしているが……こう見えて強烈な連続攻撃である。マーキングであり、貴様は格下であるとの宣言を意味する美少女しぐさだ。基本動作が一番強い、白百合清楚殺戮拳の教えである。
「なんてっ、屈辱!」
 ネムルが百合子を振りほどく。けれどそこへ滑り込む影。マリアだ。百合子の影に隠れ、次の動きをうかがっていたのだ。
「人誅!」
 ボディへ突き刺さった蹴り。
「きゃいーん! ヒデコさまあ!」
 ネムルは吹き飛ばされた。

●.+:。 ヾ(◎´∀`◎)ノ 。:+
「皆~、辛味オイルペペロンチーノだよー」
 ミルヴィが作りたてのパスタを配っている。後ろでヴァレーリヤが鍋へしこたま辛味オイルをいれている。一口食べた美少女たちは「あら」とか「まあ」とか言いながら倒れ伏していく。ヴァレーリヤは倒れた美少女のおとがいを持ち上げると。
「ぐへへ、この程度で音を上げるとはまだまだ清楚が足りてないようですわね! ほーら気つけにはお酒! おらおら呑みなさい死ぬまで呑みなさい!」
 むりやり蜜酒を流し込んだ。
「美少女力とはアル中力! 吐くまで飲んでこそ真の美少女と言えるのでございますわー! うっぷ」
 深酒してるのに大声出すから。マリアはそう思った。
「修行にはなったけど、正直どういうことなのか全然分からない! 私がおかしいのかな!?」
「そんなことないよマリア、さあすべて忘れてペペロンチーノ食べて?」
「ありがとうミルヴィ。私、ヘンじゃないよね? 普通だよね? からっ! お水お水、お水ちょうだい!」
「辛い時にお水飲むとよけいつらくなるかダーメ」
「鬼いい、悪魔ああああ!」

「負け犬のわたしに何か用?」
 ユナに、リアは小首をかしげ、頬へ手を添えて微笑みかけた。手打ちの提案を意味する美少女しぐさであることを彼女は知っていただろうか。
「ごめんねユナ、大丈夫? なんか、貴女達の音色、嫌いじゃないですよ」
「うむ、清楚なる美少女にとってメリハリはとても大事なものだ」
 汰磨羈はユナの腰へ手を回した。ぼっと顔を染めるユナ。
(密林の奥で暮らしてきただけあって生娘の反応、これは期待できる)
 顎クイしながら汰磨羈は語りかける。
「敗者は勝者のすべてを受け入れねばならんのだぞ」
「……くっ、ころ……」
「なぁに。蜜酒を交わしつつ語り合いたいだけさ……さぁ。もう一度君をキャインと鳴かせてあげよう(イケボ)」
「そうですよ! 今日は皆でとことん清楚について語り合いましょう!」
 なんかお耽美なふいんきをリアがナチュラルにぶっ壊していった。

「あー……いかにも自分はここへ案内せいとフラウ・百合子に申しつかりましたが、果たして宴席を同じゅうしてよいものか。というわけで自分は帰いや離して自分も酒がいいであります修行は結構!」
 エッダの悲鳴が響き渡る。が、百合子に「よいではないか」とガッチリヘッドロックかけられている。ヒデコは静かに微笑みながらそれを見つめていた。
「大体なあEXAなんて上げたところで確実に発動するわけじゃないんだからやっぱよぉ固定値は神なんだよ! 鉄装魔騎士のエスプリ見たか! 防技を崇めろ!」
「聞き捨てならんであるなあ……」
 ルル家はパーペキにヤる気だった。
「多勢とはいえマスター清楚に挑むは無謀なる事と世の人は言うでしょうか。二つ二つの場にては、死ぬ方に片付くばかりです。別に子細なし。図に当たるを狙う事は及ばざる事です。諸人は生くる方が好きです。ならば2つの場を天秤に賭ければおそらく生くる方に針が傾きましょう。無益な事です。図に当たらず生き残れば恥、図に当たらず死ねば犬死、犬死は恥にはならず。すなわち之清楚也。清楚とは、死ぬことと見つけたり、マスター清楚、いざ勝負!」
 ヒデコがメガネをはずした。その手からメガネが落ちる。――ズガン! 落下の衝撃でヒビが入り、砕け散った。メガネではない、大地がである。そして何より。百合子は拳を握り込んだ。
「――メガネをはずせば更に美少女!」
「裸眼は久しぶりです」
「本気で清楚道を示してくれるのだな。ありがたし……!」
 百合子は強敵の予感に犬歯を見せて笑った。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

リクシナありがとうございましたー!楽しんで書かせていただいたらいつもどおり字数がオーバーして泣く泣く削りました。

物理もCTも反応もMアタックも極めればみんな清楚、美少女には無限の可能性がある!輝け美少女!

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