シナリオ詳細
<虹の架け橋>迷宮内ゴブリン逃走中
オープニング
●ゴブリンたちの悪巧み
「ゴーッブッブッブ! これが虹の宝珠だゴブ!」
ゴブリンたちは、きらめく宝珠を手に入れて満足げであった。
大迷宮ヘイムダリオンで、たまたま拾い、持ち去ったものだ。
「なんだかよくわからないけど、こいつがあれば、妖精たちのとこに乗り込めるようになるんだゴブか?」
「そうだゴブ。こいつを集めれば、妖精たちの里に乗り込んで荒らし放題なんだゴブ! よくわからんけどゴブ!」
ゴブリンたちは、細かいところまではよくわかっていなかった。
ただ、宝珠と呼ばれるものを持っていると、妖精たちが暮らす妖精の里まで乗り込める、そのように信じている。
彼らにとって、繁栄というのは略奪によって潤うことである。
妖精たちは、お宝をたくさん貯め込んでおり、その里を襲撃すれば、自分たちのものにできる。そのように考えているらしい。
妖精郷アルヴィオンというところがどのような場所であるのか? そうした事情を、ゴブリンたちが気にすることはなかった。
奪えるものがあるなら、ともかく奪ってから考える。そういうシンプルな思考である。
「……おい、誰か来たコブ! ずらかるゴブ!!」
●虹の宝珠を取り返せ!
「ゴブリン退治の依頼が来たのです、皆さん!」
ギルド・ローレットでは、『新米情報屋』ユーリカ・ユリカ(p3n000003)がさっそくゴブリン退治の募集をかけていた。
「妖精さんたちのお話では、ゴブリンたちが虹の宝珠をもって迷宮内をうろちょろしているそうなのです。それを、取り返してほしいという依頼なのです」
ユーリカが、依頼の内容について説明する。
ゴブリンたちが、虹の宝珠という宝を持って、大迷宮ヘイムダリオンの中を逃げ回っているのだという。
「ゴブリンたちは、全部で15匹程度なんですか、迷宮の中を逃げ回っているらしくて捕まえられないのです。追い込んだのですが、ヘイムダリオンの中を駆け回っているってことなのです」
つまり、15匹のゴブリンたちのいずれかが虹の宝珠を持って、迷宮の中を逃げ回っている状況である。
ここで、ユーリカは妖精から預かった迷宮の地図を広げる。ゴブリンたちが逃げ込んだと思しき、広大な迷宮の一部だ。
「この地図は、ゴブリンたちが逃げ込んでいる“石の迷宮”ってところなのです。入り口は3ヶ所……ここから入れば逃さず追い込めるっていいます」
迷宮の地図と言っても、完全なものではない。小ぶりんたちが逃げ込んだ石の迷宮と呼ばれる区画は、完全には探索されていない場所だ。
冒険者たちが宝珠を取り返せるかは、迷宮の攻略も関わってくる。
- <虹の架け橋>迷宮内ゴブリン逃走中完了
- GM名解谷アキラ
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年05月08日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●まずはルートA
大迷宮ヘイムダリオン、“石の迷宮”部分――。
妖精郷アルヴィオンに続くという複雑怪奇な迷宮である。
「虹の宝珠かね? これが妖精郷へのキーとなっているのならば私が使いたいがね」
言いながら、迷宮のうちルートAを進む、『パンドラの匣を開けし者』ラルフ・ザン・ネセサリー(p3p004095)である。
このルートには、事前情報としてダークゾーンの噂がある。
ダークゾーンというのは、灯りをつけていても魔法などによってたちまち暗闇にしてしまうというものだ。
暗視のない者たちは視界を奪われ、致命的な事態へと追い込まれる。
「でも、さすがというか、どこにでもいるね、彼ら」
『魔風の主』ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562) は呆れつつも感心していた。
ゴブリンというのは、どこにでも湧いてくる。
村を襲い、略奪もする。
一匹一匹はさして脅威ではないが、徒党を組む程度の知恵は有している。
それが妖精郷を目指すとなると厄介である。
とっとと見つけ出し、虹の宝珠を奪回せねばならない。
「やれやれ、荒事は苦手ですが、仕事であるならばやる他ありませんねぇ」
どこか妖しい気配を醸し出しながら呟くのは、『影を歩くもの』ヴァイオレット・ホロウウォーカー(p3p007470)である。
占い師を自称する少女で、ラルフ、ウィリアムとともにルートAの探索に乗り出した。
「精々足を引っ張らぬよう、尽くすといたしましょう……ヒヒヒ……」
不気味な笑い方をするヴァイオレットの声が響く。
3人がこのルートを選んだのは、それぞれに対策があるからだ。
さっそく、迷宮を進む暗闇が3人を包み込んでいった。ダークゾーンに差し掛かったようだ。
「問題ない、こちらにも備えがある」
ラルフが取り出したのは、ナイトゲイザーという目薬だ。
これを差しておけば、暗闇の中でも視界を失われず、動体視力も一時的に向上するという。
「では、僕も」
ウィリアムもまた、目薬を用意する。
月灯りの雫といって、これも数種の薬草を配合し、暗視を与えるものだ。
「ワタクシは暗視による夜目が効きますゆえ、暗闇こそ本分。闇の罠程度など恐るるに足りません」
ヴァイオレットは、闇を見通せる。
「ヒヒヒ……」と不気味な笑みを浮かべ、ふたりに対して呪文を唱えた。
「ちょっとしたおまじないですよ」
彼女は占い師を自称しており、多少の幸運がこれからふたりにもあるだろう。
逃げたゴブリンたちの行方も、占いによって追うつもりだ。
さっそく、闇の中でうごめく気配を察知した。
「さて、そろそろかな」
ラルフが予言めいた言葉を口にする。
発火の能力によって、指先に火を灯す。一瞬だけその灯りが漏れるが、あっという間に闇に戻る。
「死ねええ、ゴブゥゥゥゥゥッ!!」
ラルフの弦に違わず、暗闇に紛れるようにしてゴブリンが襲いかかってくる。
ラルフのともした光が、襲撃の呼び水となった。
ゴブリンたちは夜目が効く。ルートAに逃げ込んだのは、その有利があったからだ。
しかし――。
「ゴ、ゴブ……!?」
「闇を見通せると言っても、こちらと同じく完全ではないようだな」
ゴブリンたちは、極細のワイヤーによって絡め取られていた。
夜目が効くと言っても、完全に闇を見通せるわけではない。
闇に紛れやすい色合いの鋼線を感知することはできなかった。
ラルフは、式神に命じて罠を張っておいたのだ。
「もしかしたら、彼らが奪った宝珠はひとつつではないかもしれん。すべて逃さず討伐しよう」
「それもそうですね。さいわい、味方を巻き込む心配もありませんし」
ウィリアムがこともなげに言うと、暗闇に電光がほどばしった。
ワイヤーに引っかかったゴブリンどもを、その稲光がまとめて鞭打ったのである。
さらには、ラルフが放った光線が貫通した。
「ギギッ! コイツら見えてるゴブ!」
一度に三匹の仲間が絡め取られ、無残にやられている様子を目の当たりにしたのは、残る二匹のゴブリンたちだ。
仲間を見捨て、闇の中に逃れようとする。
しかし、その足元には放たれた式神がまとわりついている。
「ゴブ!? 離せっ!」
暴れるゴブリンたちの前に、いつの間にかヴァイオレットが姿を見せていた。
「宝珠を置いていかないと、不幸になりますよ」
含みをもたせた薄気味悪い笑いを、ゴブリンに向ける。
そんなヴァイオレットに向かって、二匹のゴブリンは短剣を振り回して斬りかかる。
「ああ、ワタクシはしがない占い師。正面きっての戦闘など恐ろしくてできません」
言いながら、闇の中をシャドウステップを踏んでいる占い師の少女に、ゴブリンたちは的を絞ることができない。
その間に、ダークゾーンを裂いてウィリアムの吸魂魔刃が飛来した。
「うぎゃああああっ!」
「ゴ、ゴブ!」
残る一匹が逃亡しようと背を向けると、ヴァイオレットのイーヴィルクローが切り裂いた。
「これで全部のようですね」
まだ月灯りの雫の効果があるウィリアムが、倒れたゴブリンたちの懐を探る。
どうやら、こちらのルートに乗り込んできたゴブリンたちは宝珠を持っていないようだ。
「おい、宝珠はどいつが持っている?
「ヒッ……!?」
まだ息のあるゴブリンに詰め寄り、ラルフが尋問を始める。
「ブフッ!? そ、それは――」
怯えきったゴブリンは、ラルフに白状した。
尋問の結果がどうであったのかは、後に回すとしよう。
あとは、正解のルートに向かった他の仲間がうまくやることを祈るばかりである。
●Bを飛ばしてルートCから
「さて……虹の宝珠求めて大捕物といこうじゃないか?」
『真実穿つ銀弾』クロバ=ザ=ホロウメア(p3p000145)は言った。
“石の迷宮”ルートCは、事前の情報ではもっとも長い回廊となっている。その中をゴブリンたちが駆け回っているはずだ。
「ええと、ゴブリンを追って、宝珠を取り戻せばいいのよね?」
『儚花姫』ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)は戸惑いながらも進んでいく。
人形のような少女(というよりは人形そのものだが)がゴブリンの逃げ込んだ回廊にいるというのは場違いな感もあるが、虹の宝珠によって妖精郷の安寧を脅かすなら放ってはおけない。
「ふーむ、長い回廊。貰えた情報の中ではココだけ楽な感じですけど……」
『脳筋名医』ヨハン=レーム(p3p001117)は呟きながら回廊の状況を確認する。
事前の情報と地図では、このルートはダークゾーンのがあるルートAやターンテーブルのあるルートBよりは簡単そうに見える。
「普通は罠とか付き物ですよね。ゴブリンが好き放題に走り回ったあとなので無い気もしますが」
ヨハンはセントエルモの火で周囲を照らす。
これにクロバも頷き、耳を澄した。
「そうだな。何か聞こえてくるだろう」
彼の超聴覚は、足音だけでなく息遣いや鼓動をも聞き取ってしまう。
ゴブリンたちが生命活動を続けている以上、何らかの音を立てているはずだ。
「何か聞こえるの?」
「……ああ、この先だ。4匹ばかりいるな」
ヴァイスに答えながら、クロバは足音の人数と距離も測る。
「追いかけられるのが趣味か? 構わないぞ。地の果てだろうと追い詰めてお前らは――皆殺しだ」
ゴブリンたちの戦意喪失を狙って脅しつつ、クロバは駆け出した。これにヴァイスもヨハンも続く。
回廊を走った先に、果たしてゴブリンたちがいた。
3人が追ってきたと気づくと、ゴブリンたちも背を向けて逃げ出していく。
長い回廊での追いかけっこだ。
「逃しませんよ! 皆さん、ダッシュです! さぁ始めよう、ゼシュテル鉄帝国の戦い方と言うものを教えてやる」
ヨハンの掛け声で、イレギュラーズたちは逃げるゴブリンたちを追いかけていく。
息が先に上がったのは、ゴブリンたちであった。
スピードで上回ったクロバが先回りして、ついに追い詰める。
「ゴ、ゴブ!? ぜぇっ、ぜぇっ……」
もうゴブリンたちも逃げるのは諦めたようだ。
「ねえ、もう諦めたなら宝珠をわたしてもらえないかしら?」
「うぐ……」
ゴブリンたちに、ヴァイスが交渉を持ちかける。
「渡してもらえないと、倒さなければならなくなるわ」
できれば、平和的に解決したいところだ。
ヴァイスの望むとおりにいくかどうかは、ゴブリンたちの出方次第だが。
クロバも、警戒を怠らずゴブリンたちの出方を見守る。
「わ、わわわわかったゴブ! 宝珠は渡すから、許してゴブ!」
ゴブリンたちが、揃って命乞いを始める。
が、そのときにヴァイスは気づいた。
「――うしろ!」
挟み撃ちにしようと、3匹のゴブリンが潜んでいたのだ。
彼女のエネミーサーチは、敵意を抱いた対象を察知する能力である。
潜んでいたゴブリンたちは、追跡してきた相手を待ち伏せにする敵意を持っていたのだ。
「先に警告はしたぜ?」
ヴァイスの警告に、クロバはすぐさま反撃に入った。
奇襲してきたゴブリンに対し、外三光の技が冴えた。
仕掛たはずのゴブリンたちが、あっという間に斬り伏せられる。
「こうなったら逃しちゃだめだよ。オールハンデッド」
「わかったわ。できれば、戦わずすませたかったのだけど」
ヨハンの指示によってヴァイスも動いた。
大きな消耗を余儀なくされるが、薔薇に茨の棘遂げるを放つ。
発生した暴風が、命乞いから一転して襲い来るゴブリンたちを吹き飛ばした。
さらには、不可視の刃が逃亡を試みるゴブリンを切り裂いていく。
「もう、おいたはだめよ? それがないと、私たちも困ってしまうんだから」
「場数が違うんです、お前らなどに負けるものか!」
「さて、俺たちを騙そうとした代償は高くつくぜ?」
三人が、残るゴブリンを脅しにかけた。
「ヒ、ヒィィィィ!? お、俺たち宝珠なんて持ってないんでゴブ!」
今更そんなことを言うゴブリンに、ヨハンも肩をすくめる。
「じゃあ、そうするとルートBかな?」
●実は本命だったルートB
「ゴブリンたちも大迷宮ヘイムダリオンに入ってきてるんだね」
『探究者』ロゼット=テイ(p3p004150)は言う。
他のルートにも逃げ込んでいるが、ここで虹の宝珠を取り返さないと妖精郷にまで侵入するだろう。
「参りましょうか。一体も残さず、逃さず。続く災いを起こされぬように」
『風韻流月』冷泉・紗夜(p3p007754)も進む。
虹の宝珠を奪ったことで、ゴブリンという災厄が広がってしまう可能性は大きい。
なるべく迅速に事態を解決しなければ、災禍は重なり、進み続ける火の波のごとく広がってしまうだろう。
「そうだね。ゴブリンが殺されて宝珠が奪われるなんてことが起こったら、輪をかけてめんどくさい状況になるし。でも、ウネウネした道だねえ」
「ええ、迷わないようにしないと」
言って、進んだタイミングであった。
「「……あっ!?」」
一瞬、めまいを感ると景色がぐるりと一転し、ふらつく。
今、ターンテーブルを踏んだとわかる。
「えっと、さっき来た道が左に入れ変わったね?」
「はい、そのようです」
ふたりとも、超方向感覚の持ち主なのでこのトラップはまったく効果がない。
意見も一致するので不安もなかった。
地図と照らし合わせれば、虱潰しに探索してゴブリンを追い詰めるのも容易である。
「あちらの方から、声が聞こえます」
「ゴブリンたち、トラップにはまって逃げられなくなったんだね」
紗夜が指差した方向に、ロゼットも向かった。
果たして、オロオロしている三匹のゴブリンが見つかった。
「ゴッ、ゴブ!? 追っ手だゴブ!」
ふたりの接近に気づき、二匹が錆びついた短剣を構える。
残る一匹が脱兎のように駆け出した……が、ターンテーブルを踏んで戻ってくる。
「な、なんでお前たちが?」
「バカッ!? 宝珠を持って逃げるんだゴブ!」
どうやら、虹の宝珠を持ったゴブリンが判明したようだ。
「なるほど。君が持ってるんだね。この者が逃さないよ」
熱砂でできた槍が、ゴブリンに命中した。
懐から、虹色の欠片が転がり落ちる。
「風と刃が、龍のように鳴く刹那を。この刃で」
慌てて拾おうとする二匹に、紗夜の向ける切っ先が揺らめいた。
「あ、あへ? きもち、いい……!」
「ほわああああ、ゴブ……」
即座に一閃、二閃――
恍惚に満ちた表情を浮かべながら、ゴブリンは倒れた。
紗夜の見せた魔性の変幻邪剣であった。
「これで、もう安心だね」
落ちた虹の宝珠を、ロゼットが拾い上げる。
「では、まっすぐ帰りましょうか」
紗夜も緋願刀「龍鳴」を収め、ゴブリンたちの骸に背を向けるのだった。
成否
大成功
MVP
なし
状態異常
あとがき
迷宮での追っかけっこ、お疲れさまでした。
ルートA、B、C、三つに分かれることになりましたが適材適所となったのはチームワークの結果でしょう!
おめでとうございます、大成功とさせていただきます。
宝珠を取り返したおかげで、ひとつの脅威は取り除かれました。
今後、また何かあるかもしれません。
それではまたお会いしましょう。
GMコメント
■このシナリオについて
皆さんこんちは、解谷アキラです。
ゴブリンが虹の宝珠を持って大迷宮ヘイムダリオン内を逃走中です。
彼らは、石造りの迷宮区画“石の迷宮”と呼ばれるところまで逃げ込みました。
この区画からまだ逃走してはいないようです。
なお、15匹程度いますが宝珠を持っているのはそのうちの1匹です。
区画への入り口は三つあります。
どこから入るかを決めてプレイングを送ってください。
・ルートA
明かりが消えるダークゾーンがあるという噂。ゴブリンたちは、5匹くらいが逃げ込んだとの情報あり。
・ルートB
曲がりくねったルート。ターンテーブルという方向感覚を狂わすトラップがあるらしい。3匹くらいの少数のゴブリンが逃げ込んだ。
・ルートC
“石の迷宮”の区画で、もっとも長い回廊を通るルート。7~8匹くらいのゴブリンが逃げ込んだ。
この区画で、ゴブリン以外の敵は出ません。
宝珠を取り戻せば、パーティ全体の勝利です。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
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