PandoraPartyProject

シナリオ詳細

Welcome to the MasteryPark!!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●招待状第2弾
「やあ、特異運命座標(アリス)。先日は楽しんで頂けたかな?」
 にこにこと笑う男、『Dr.』マッドハッター(p3n000088)。彼は再び『MasteryPark』の招待状を手にローレットへやってきた。
 このMasteryPark、練達に作られたテーマパークであるのだが──特に先日体験した8名はご存じだろう。練達製のテーマパークなどアレでソレである。詳しいことは以前の阿鼻叫喚報告書を読んでほしい。
 ちなみにこの報告書に載った出来事の間、マッドハッターは優雅にアフタヌーンティーを楽しんでいた。まだ先日の参加者にボコられた様子はなさそうである。
「次の招待状だよ、アリス。是非とも来てほしい」
 またか。
 差し出された招待状に目を白黒させたアイラ (p3p006523)は、いいの? と視線で問うてから招待状を開ける。外装からかのテーマパーク絡みであることは確かだが──。
「……夜の遊園地、ですか?」
 そうだよとアイラの言葉に頷くマッドハッター。特異運命座標(アリス)たちには夜間に来てほしいのだと言う。
(夜だけの催し物、ということでしょうか)
 ならばその日は早めに寝ておいた方が良いだろう。折角招待されるというのに、寝てしまったら申し訳ないというもの。
「アイラ。それどうしたの?」
「あ、ラピス。招待状をもらいました」
 ほら、とやってきたラピス (p3p007373)へ招待状を見せるアイラ。そこへマッドハッターの思わぬ発言が飛んで、2人は同時に顔を上げた。
「「……え?」」
 今、何と言った。ゾンビバスターズ?
「アリスたちなら楽しい楽しい遊戯となるだろう。
 ああ、けれど捕まらないよう気を付けてくれ、アリス。お仕置きはハートの女王より恐ろしいからね!」
 にっこり。それはもう楽しそうな笑みを浮かべ、マッドハッターは止める間もなくその姿を消す。
 残ったのはアイラと、ラピスと、その手に握った招待状。

「……どうしましょう、ラピス」
 震える声でアイラが招待状をガン見する。嗚呼、先日もお化け屋敷で肩を震わせてたと言うのに。
「どこかに捨てて見なかったことにしてしまおうか」
 などと言ってはみるが、きっとそんなことはできない。そんなことをしたらマッドハッターがまた招待状を手にやってくるのだろう。

 ホラーかよ。ホラーです。


●ダイナミックご入場どうぞ!
「な、なんでこんなものに乗るんですの!! マッドハッター! いるんでしょう!!」
 出て来なさいと声をあげるヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ (p3p001837)。けれどもかの男は姿を見せない。恐らく今日中──いや今夜中は決して彼らの前に姿を現さないだろう。
「多分言っても無駄だぜ……まあ気持ちはわからなくもないけど」
 サンディ・カルタ (p3p000438)はどこか諦めの目を正面の暗がりへ向けながらセーフティバーを下ろす。もはや逃れられないのなら、せめて最大限の安全を確保するのみ。幸いにもこのジェットコースターは以前数名乗ったというし、『練達の良心』なる存在が安全装置を付けているという。頼むぜ安全装置。
「あっははは! いいね、今度はゾンビと戦うのか! 楽しみだなー!」
 シキ・ナイトアッシュ (p3p000229)は相も変わらずからからと笑う。その後方ではニコ・マリオネッタ・ベルナールド (p3p005355)と瑪瑙 葉月 (p3p000995)が仲良く隣同士にならんでセーフティバーをがっちゃんこ。ニコの両手にはナッツとハチさんも一緒だ。
「準備ばっちりなの!」
「俺ももうちょっと……うん、バッチリやね」
 自分のセーフティバーを下ろしたブーケ ガルニ (p3p002361)がふんわりにっこり。8人ともこれで準備は万端だ。

 それでは再びの──Good luck★

GMコメント

●すること
 MasteryParkで遊ぶ!!!

●情報精度
 このシナリオの情報精度は……このシナリオに情報精度なんて必要なのか……??
 改めて、情報精度はCです。情報精度は低めで、(主に皆様が発起の)不測の事態が起きる可能性があります。

●MasteryPark
 練達にあるテーマパークです。まともなものはありませんが、辛うじて『練達の良心』なる存在が安全装置を付けてくれています。
・回せば回すだけ自家発電するコーヒーカップ
・振り回されるのちにお化け屋敷へ突入するジェットコースター
・VRシアター
・よくわからないものが売っている売店
 ……etc.
 その他の施設はプレイングにて創作して構いませんし、前作『Are you having fun??』をお読み頂いても構いません。(お読み頂かなくても楽しめる内容化とは思います。)

 いいですか? もう1度言うけれどまともなものはありません。ありませんからね!

●催し物『ゾンビバスターズ!』
場所:MasteryPark
時間:アリスたちの到着時間~夜明けまで。(凡そ6~7時間)
概要:
 イレギュラーズVSゾンビのガチンコ対決!
 逃げて! 退治して! 仲間を取り返して! 無事に朝を迎えよう!

 MasteryParkにある広場に牢屋があります。マジで牢屋があります。
 牢屋に鍵はかかりませんが、中に入ったら自ら開ける事ができません。牢屋にはマイクが付いているため、園内放送用のスピーカーで仲間を応援することが可能です。また、誰かが外から扉を開けば脱出可能です。
 さて、皆さんは朝までゾンビの魔の手を払い続けなければなりません。より詳しく言うと、後述するゾンビキャノンで。逆にゾンビに攻撃を当てられたら牢屋行きです。
 退治して逃げ切ったらMasteryParkの1日無料券がもらえます。やったね! 交渉次第では別の物にも変えられるかもしれない。
 ただし捕まった人にはケツバットが待っています。音は響くけどあまり痛くなさそうな感じの。でもゾンビにそれされるのシュール過ぎるし多分恥ずかしい。

・ゾンビ
 練達が作った玩具です。自我のない人型で、人語を解しませんが解したような動きをすることがあります。その素材にはやべーもんも含まれていますが、ひとまず非人道的なものではないようです。あとは企業秘密だそうです。
 この催し用にわざわざ改良したそうで、専用の武器も扱いますし適度に人を怖がらせます。追ってくるときは走りませんが凄い速足です。アトラクションの中にも潜んだりしています。

・専用武器『ゾンビキャノン』
 ゾンビバスターズ用の武器です。全員(イレギュラーズ・ゾンビともに)これを持たされています。
 引き金を引くとペイント弾が発射されます。これが付くと牢屋へ勝手に足が動き始め、牢屋の中へ着くと勝手にペイントが取れるという謎仕様です。ゾンビに当たると倒れてくれます。
 ペイントの補充弾は途中に挟まれるイベントでもらえます。

・イベントその1『回して回してピッカピカ!』
 イベントスタートから約2時間後に発生。園内放送でイベント開始が告げられます。参加自由。
 場所は回せば回すだけ自家発電するコーヒーカップです。
 このアトラクションで遊び、とんでもないくらいに発電するとペイント弾の補充が可能です。(発電量に応じて補充弾がもらえます)
 ただし遊んでいると光ってとても目立つため、ゾンビも寄ってきます。撃退する人を用意するか、捕まる前までに出来るだけ発電してさっさと逃げる必要があります。

・イベントその2『お化けを隠すならお化け』
 イベントその1からさらに2時間後に発生。園内放送でイベント開始が告げられます。参加自由。
 ジェットコースターに乗り、お化け屋敷へ突入してゾンビを倒しまくりましょう。
 乗り物から撃退できる範囲からしか向かってきませんが、ゾンビも攻撃してきますのでお気をつけて。
 倒したゾンビの数に比例してペイント弾の補充がもらえます。

●ご挨拶
 まさかまさかの第2弾! またのご指名、こんなに嬉しいことはありません。愁です。
 発注分を読んでいて逃○中っぽいなと思ったのでそんな感じになりました。
 リクエストのご希望通り、わちゃわちゃキャーッ! と楽しんで頂ければ幸いです。
 プレイングをお待ちしております。

  • Welcome to the MasteryPark!!完了
  • GM名
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年05月09日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談9日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)
私のイノリ
サンディ・カルタ(p3p000438)
金庫破り
瑪瑙 葉月(p3p000995)
怠惰的慈愛少女
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
ブーケ ガルニ(p3p002361)
兎身創痍
ニコ・マリオネッタ・ベルナールド(p3p005355)
パペットマスター
アイラ・ディアグレイス(p3p006523)
生命の蝶
ラピス・ディアグレイス(p3p007373)
瑠璃の光

リプレイ



 ──っ!!!!

 空に複数人の声なき悲鳴が響く。ギュルンギュルンとイレギュラーズたちを翻弄したジェットコースターは例の如くレールを脱し、飛んで園内へ到着した。
(とっても……ダイナミック? アグレッシブ……? な入り方、だった)
 『パペットマスター』ニコ・マリオネッタ・ベルナールド(p3p005355)は目をしきりに瞬かせながら、隣の『怠惰的慈愛少女』瑪瑙 葉月(p3p000995)へ視線を向ける。「楽しい~っ!」とにこにこしていた彼女はニコの視線に気づくと小首を傾げた。
「ん? 大丈夫かって? 三半規管? はつよつよなんだよっ」
 視線から読み取った疑問に答え、ふふんと得意げな葉月。前列の『宝飾眼の処刑人』シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)も楽しそうに声を上げていたので恐らくは彼女も同様なのだろう。
 目を回していた者も落ち着けば、一同はセーフティバーを上げて乗り物から脱する。降り場に用意されていた手持ちキャノン──ゾンビキャノンを各自が手に取るなり、見計らったように園内放送が流れ始めた。
『ようこそ、アリス(特異運命座標)』
 園内放送の声はまさかまさかの、招待状を押し付k……渡したかの帽子屋である。皆が思わず視線をくれたスピーカーからは改めて催しの詳細が解説された。
「あの時招待状を捨てておけばよかった……」
 どことなく目を虚ろにさせる『君に幸あれ』アイラ(p3p006523)に傍らの『君に幸あれ』ラピス(p3p007373)が苦笑を浮かべる。前回の彼女を見ていれば──いいや常日頃アイラを見ているのだから、このような類が得意でないことは分かり切っている。
「でも命の危険がある訳じゃないみたいだし、これも楽しい経験になるよ」
 きっとね、と告げる彼の瞳を「本当?」と言うようにアイラが見つめる。もちろん大好きなラピスを疑うわけではない。大好きな彼の言葉で、後押しが欲しいのだ。
「それこそ、お祭りみたいなものだと思って、ね?」
「……はい! 頑張りましょう、ラピス!」
 ぐっと気合を入れるように拳を握るアイラ。そんな背後から『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)が彼女の肩をぽんと叩けば、雰囲気も相まってかアイラの肩が可愛そうなくらい大きく跳ねた。
「わぁっ!?」
「ひゃっ!? ア、アイラ驚かさないでくださいまし!」
「驚かしてきたのはヴァレーリヤですよ!」
 2人揃って口を尖らせるも、ヴァレーリヤが差し出したものを見てアイラが目を瞬かせる。ヴァレーリヤがにんまりと笑みを浮かべた。
「私からの『とっておき』──特別製の弾ですわ。どうにもならない強敵に出会ったら使いなさい。きっと突破口が開けるはずでございますわ」
「どうにもならない強敵、ですね」
 受け取ってありがとうとはにかむアイラ。それを出し入れしやすい場所へ収納し、彼女はラピスの方を向く。
(くっくっく、これはアイラにお仕置きするいい機会ですわ!)
 ──などと思われているなんて、アイラは知る由もない。
「ぞんびなの!!」
 早速向かってきたゾンビに葉月が嬉しそうな声を上げる。ニコはパペットたちと共に──というよりかはパペットたちをはめた手で──キャノンを向けた。これで倒すのだったか。
「生きのこりゃあいいんだよな?」
 防具や武器の持ち込みに関して言われてねーしと『風の囁き』サンディ・カルタ(p3p000438)が左腕の袖口から覗くエア・デリンジャーへ視線をくれる。ヴァレーリヤは頷いて自らのキャノンをしっかりと持った。
「こうなってしまったものは仕方がありません。皆で協力して、この窮地を乗り切りましょう!」
 言葉と同時、ニコのキャノンがペイント弾を撃ちだす。見事ゾンビの胴体へ蛍光イエローをぶちまけたニコは、葉月とナッツ──片手に嵌ったパペットだ──から賞賛の嵐。一方のゾンビはと言うと実に『らしく』よろけて倒れ、ぴくりとも動かなくなった。
 だがしかしこれは今宵の始まりに過ぎない。『兎身創痍』ブーケ ガルニ(p3p002361)はちらと後方のジェットコースターを見やった。
 皆で悲鳴をあげ歓声を上げ、猛スピードダイナミック入園を楽しんでいた──そんな時期がブーケにもあった。だが今はどうだ。
(ゾンビ見てると、アトラクションの電飾も走馬灯みたいやんなあ)
 ぺかぺか光るカラフルなそれも何だか空しく不気味で。これから自分がどうにかなってしまいそうなフラグをひしひしと感じさせてくる。
 しかしそう簡単に捕まる訳にはいかない。イレギュラーズたちは散開し、各々動き始めた。
「銃器は扱いなれないんだけど……まぁ上手くやるさ」
 ケツバットは嫌だ。シキは広範囲を見渡せる建物の影に隠れ、姿を見せだしたゾンビへペイント弾を撃っていく。射線で居場所がバレそうなら次の場所へ。
「ニコくん! 頑張ろうね!」
「……うん、頑張ろっか、葉月ちゃん」
 元気に、けれどバレないようにひそひそと。葉月とニコは言葉を交わして頷き合う。その真ん中でナッツが『ゴーゴー!! せんめつ? じゅーりん? とりあえず倒すの!』と好戦的だ。
「あそこ……隠れよう」
「うん! 狙い撃ちなの!」
『狙い撃ち! ゾンビをばんばんばーん!!』
 近くを通りかかるゾンビを待ち、ニコと葉月は交互にキャノンで倒していく。ペイント弾の残弾数を確認し、ニコは葉月を小さくつついた。
 ここはスタート地点からほど近いためか、ゾンビも多くやってきているようだ。もう少し閑散とした場所まで移った方が良いだろう。弾切れしたら何もできなくなってしまう。
 最初は閑散としていた入園口付近も、今ではゾンビの影が絶えない。ちらりちらりと見える中、時折交戦する音が響く。
「俺を捕まえられるならやってみな!」
 高度なテクニックで華麗に舞い、空気砲を当てることによってペイント弾を回避していくサンディ。その身のこなしは風のようだが、練達製ゾンビも負けちゃあいない。数で押さんと仲間を増やしていく。
 そこへ、ピンポンパンポーンと園内放送が響き渡った。
『アリス(特異運命座標)たち、この催しは楽しんで頂けているかな?』
 再び帽子屋から。今度は第1イベントの開催が告げられる。参加自由のイベントであったが、イレギュラーズたちは示し合わせていた通りコーヒーカップの前へ集合した。
「じゃあ私、ゾンビで遊ぶから回すのよろしくー」
 シキはそろった顔ぶれを見てじゃ、と片手をあげ、その場を離れる。どこから来るかわからないが、ゾンビに沢山遊んでもらうのだ!
「回すぜ!」
「ええ! 私たちの力を見せてやりましょう!」
 コーヒーカップへ意気揚々と乗り込むサンディとヴァレーリヤ。残りは護衛や囮として動き始める。
「俺はスナイプやな」
 頑張るで、とブーケは不思議な香水を纏わせながら近くの建物へ潜む。隠れて黙って動かなければ新月の魔力は彼の味方だ。
 さしたる時間も置かず、アトラクション全体がぴかぴかと明滅し始める。その下でぐるぐると回り続けるコーヒーカップを照らして、だ。灯りに蛾が引き寄せられるように、ゾンビの影がちらほらと見え始める。
「やあやあ、私と遊んでくれるかい?」
 そこへ姿を現したシキは複数の視線を浴びてにんまり。作戦通りだ。
 ペイント弾を放って迎撃するシキとは別の場所で、アイラ&ラピスのタッグが囮としてゾンビを引き寄せ打ち倒す。どこからか飛来するのはブーケの放ったペイント弾だ。
 ……が。
「鬼さん此方、手の鳴る……やっぱりだめ、ヴァレーリヤの方に行って!」
「ちょっとアイラ!?」
 躊躇なく敵へ売った仲間にヴァレーリヤの叫びが上がる。だがアイラの傍らで迎撃しているラピスも「あっちに行ってくれるなら別に」などと言い出す始末。だって仲間より愛する人の方が大事だもの。
「私の大事なおつまみを盗み食いしただけでは飽き足らず、私を売ると言うの!!」
「ヴァレーリヤのお家には、おつまみのお礼に胃に優しい薬草を置いていったじゃないですか」
 鋭い読者はお気づきだろう。おつまみを食べたことは否定していないのである。
「いりませんわよ私のおつまみぃぃっ!!」
 ヴァレーリヤがきぃぃ! と唸りながらガンガンにコーヒーカップを回す。眩しいばかりのアトラクションからはころんころんと補充弾の詰まったカプセルが零れ落ちてきていた。
「なるほど、補充は自分でってことか」
 サンディもそれを見ながらグルんぐるん回す。やる以上は目指せ歴代トップのハイスコア。ゾンビなど気にするものか!
「あれ、随分簡単に当たってくれるねぇ? もっと楽しませておくれ」
 あからさまなシキの挑発にゾンビの数が増える。全力ダッシュで逃げ出したシキだが、その身が纏う砂漠の呪いと割りに速足なゾンビたちでなかなか距離は縮まらない。そこへ身を躍らせたブーケが半数を誘き寄せ、二手に分かれて逃げる逃げる。
「健闘を祈るよ!」
「そちらもね」
 建物で道を隔たれ、互いの様子が見えなくなったシキとブーケ。2人はゾンビを引き離し撒いて、敵が過ぎるまでパーク内で息をひそめた。
 味方が少なくなったことで抑えが決壊しようとしている。ニコと行きぴったりの連携でゾンビを迎撃していた葉月は「どうしようニコくん!?」と悲鳴のような声を上げた。ニコは目の前の途切れぬゾンビたちと、後方の発電係2名へ視線を向け、小さく呟いた。
「……撤退、かな」
 見捨てるようになってしまうが、捕まる訳にはいかない。というか嫌だ。ケツバットは嫌だ。
 再び視線を巡らせればヴァレーリヤと合う。彼女はニコの視線と周囲の様子から察したようで、コーヒーカップを回す手を止めた。
「ごめんなさいサンディ。後で必ず、助けに行きますからね!」
「ああ、頼むぜ……!」
 止まったコーヒーカップから降り、沢山ドロップした補充弾を両手いっぱいに抱えるヴァレーリヤ。アイラたちにも声をかけ、サンディ以外のイレギュラーズは補充弾と共にアトラクション前から走り去る。
「これで……俺がトップだ!!」
 ひときわ明るくアトラクションが輝き、パンパカパーン! と音が響き割ったった直後──アトラクションは真っ暗になり、静謐を取り戻した。
 ヴァレーリヤの持ってきた補充弾を残っているメンバーで分け、再び散開する。ある者は囮になり、ある者は逃げて隠れ、ある者は牢屋へ向かうために。
「ラピスとボクで死角なしです。ね、ラピス!」
 背中に感じる温もりが力をくれる。怖い怖いゾンビにだって負けやしないとアイラはキャノンを構えて向かってくるゾンビへ放った。
「君は絶対に僕が守るからね、アイラ」
「はい。ボクもラピスのこと、絶対に守ります!」
 決意の固い2人。その耳にはパシーンッとケツバットの音が風に乗って届く。
「「……」」
 サンディだろう。恐らく。今ちょっと園内放送用のスピーカーから呻き声が聞こえたから。
(あれは嫌やなあ)
 気配を殺して潜むブーケはこっそり思う。皆の乱痴気騒ぎを見て聞いているのが良いのだと。別に勝たなくて良いのだ。
 一方、葉月とニコは逃げていた。その後方からは大量のゾンビ。一体どこから湧いたんだ。
 どこから増援が降って湧いてくるかもわからない状況、しかし後方を確かめるため振り返った葉月は「えっ?」と声を上げる。
 ゾンビが少しずつ減っている。倒されているわけではなく、別の標的へ流れているようだ。これはラッキーと言って良い、のだろうか?
「わ~っっだれかわかんないけどごめんなさい!! タイミングみて助けに行くなの!!」
『マスター達がごめんなさい!!! 後で機会を見て助けに行けそうなら行くね!』
 かくして2人は無事逃げおおせ、再び身を隠したのだが──ならゾンビたちはどこへ行ったのかと言うと。
「──助けに来ましたよ、お姫様」
「誰がお姫様だ」
 けらけら笑うシキに助け出されるサンディ。牢屋に入るのも決して初めてではなく、何とも奇妙な心地だったが助けは素直にありがたい。
「さ、逃げるが勝ちってゆーもんね?」
 いこうかとキャノンを携え、2人は感づいたゾンビたちが完全に戻りきるより早く夜闇へ消えたのだった。

 ピンポンパンポーン。

 三度の園内放送で第2イベントの開催が告げられる。場所は──。
「ん゛ん゛っ、ボクの嫌いなところだ……」
 ──ジェットコースターandお化け屋敷。
 任せてもいい? とラピスを見れば優しく微笑まれる。ジェットコースターばかりは一緒に乗ってもらう他ないが、お化け屋敷に入ったら彼女には指一本触れさせない。
「僕の彼女に手を出さないでよ?」
 迫りくるゾンビを容赦なく撃っていくラピス。頼もしく格好良い背中に守られ、アイラもまたゾンビへ応戦する。
「ボクらの愛の前にはお化けもゾンビも滅ぶのです。滅びろ!」
 2人の見事なタッグに殲滅されていくゾンビたち。後方ではヴァレーリヤが弾幕の如く派手に乱射している。
「ええい、これでも喰らいなさい! 出し惜しみはしませんわよ!」
「あはは、銃もなかなか楽しくなってきた! 私もぜーんぶお見舞いしてあげるっ!」
 シキもヴァレーリヤ同様にペイント弾を空にするような気持ちで打ち出す。ゾンビだけではなくあちこちが蛍光色だ。
 今度は自身も応戦だとキャノンを手にするサンディは、しかしふと悪寒を感じて振り返る。

 ゾンビと 目が 合った。

「っぅお!?」
 至近距離からのペイント弾を回避し、小窓から出てきていたゾンビの顔面へペイント弾を撃ち込むサンディ。引きつった表情はなかなか解けない。
「あ、危なかったぜ……」
 もう暫しすれば夜も明けるだろうが、長時間の対決に集中力が欠け始めているのかもしれない。気を引き締めなければ。
 そんなサンディに対して、真夜中も過ぎテンションの上がってきた者もいる。
「あはははっ! なんか楽しくなってきたなの! 敵はみんなみーんなバイバイなの!! ニコくんフォローお願いするの!」
「了解。えっと……こういう時なんて言うんだっけ……ナッツ?」
『背中はマスターに任せてー!』
 パペットに助けを求めれば、ナッツがニコの代わりに──喋っているのは結局ニコなのだけれど──台詞を言う。超早撃ちでゾンビを掃討していたブーケはあわや仲間へ向けて弾を発射しかけ「おっと」と小さくこぼした。
(あかんあかん、フレンドリーショットしかけたぁ)
 反射的に武器を引いたブーケ。その足元に何かがベチャリと付着する。
「ん?」
 見下ろせば暗がりでも鮮やかなペイント弾が足にべったり。途端武器を下ろして勝手に移動し始めたブーケの体は、いつの間にやら牢屋の中へ納まっていた。おやまあと言わんばかりに目を瞬かせるブーケの前へ1人のゾンビが進み出る。
「……死んだじいちゃん!?」
 その姿に目を丸くするブーケ。いやいやそんなわけはない。こんな感動の再開的なイベントがあるだなんて聞いてないぞ!
 などと思っている間にもゾンビは懐から何かを取り出した。広げられたそれは手紙で、書かれた文字をゾンビはゆっくりと読み上げる。
(えっなにこれ、泣かせに来てるやん)
 死んだ祖父(に似たゾンビ)が「特異運命座標じゃなくても自慢の家族」「お前が生きてるだけでじいちゃんは嬉しいよ」などと語ってくれるのである。あかん涙腺にくる。
「だからこれからもお前らしく生きるんだよブーケ……」
「じいちゃん……」
 何やら謎の感動シーンが見られたところで──。

「……タイキック」

 \デデーン!/

「いやナンデ!?」
 ぶち壊された雰囲気に突っ込むブーケ。しかしそこへ返す言葉はなく、代わりにじいちゃんゾンビがバットを握る。え、じいちゃんマジで?
 間もなくして、MasteryParkの空にパシーンッとケツバットの音が響き渡ったのだった。

 さあイベントも終了してあとは夜明けを待つのみ。こうなれば双方に引けぬ戦いとなる。
 どうせ最後なのだからと守りをすて、ゾンビへペイント弾をぶちかましていくシキ。サンディが人助けセンサーを感知してシキと別れ、別の場所へと疾風の如き速さで向かっていく。
 そこでは──。
「アイラ、あれを!」
 迫りくるゾンビたちにヴァレーリヤが叫び、アイラが『とっておき』を投げる。それは予兆のように一瞬光って。
「眩しっ、照明弾!? ぐっ……」
 目をぎゅっとつぶるアイラとラピス。白い光の中で酔いどれ宗教徒の高笑いが聞こえた。
「次はお酒ごと持ってってレオンくんに渡してやりますから!! 覚えてなさい!!」
 思わず言った矢先、すぐ傍にラピスがいたことを思い出すアイラ。途端に視線を彷徨わせ、ゾンビの壁を見て小さく悲し気に息をつく。
「……ごめんね、ラピス。ボクらもう、ダメみたい。それと、さっきのボクは忘れてね? お淑やかじゃないし……」
「死ぬ時も一緒だよ、アイラ。それに僕はああいうアイラも嫌いじゃない」
 最後(not最期)だからと言わんばかりにいちゃつく2人。2人へキャノンが向けられ──。

 ──光が差した。

「……終わりなの?」
「……みたい、だね」
 葉月とニコは朝日に目を瞬かせる。思い返せばお化け屋敷もゾンビも怖かったとか、いや人間の方が怖くないかとかあるけれど──ともかく、夜通しゾンビゲームは終わりを告げたのだ。

成否

成功

MVP

サンディ・カルタ(p3p000438)
金庫破り

状態異常

なし

あとがき

How was it?

 文字数が足らなくてびっくりしましたどういうことなの。
 MVPは最後までピッカピカに輝かせていたサンディさんに。
 この度もありがとうございました!

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