PandoraPartyProject

シナリオ詳細

犬よ、邪教の輩を放逐せよ。

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「おお。私は見た。第五の空に妖しく光る共棲の囁きを。極彩色の託宣が荘厳に香り私は加の絶望を味わい、ともに涙した。同士よ。我らは報いなくてはならない。キョウセイを生み出す罪深きモノを焼かねばならない。四つ足のケモノは不浄である、ゆえに、我らは自ら歩く。鳴く鳥は不浄である。ゆえに、我らは卵を食べない。ゆえに、長く鳴く四つ足のケモノは凶兆である。断固として火あぶりにしなくてはならない」
 託宣は常に正しい。けがれた獣にかまれた痕は殉教の試練だがとても痛む。この痛みを彼の穢れた地に報いねばならない。その過程で殉教できればどれほどの祝福であろうか。


「妄想の末に村焼かれるとか、どうしたらいいのって感じだよね」
『そこにいる』アラギタ メクレオ(p3n000084)が、茶と菓子を持っていない。
「あまり時間がないんだ。悪いけど。妄想と逆恨みで放火する一団を取り押さえてくれる? 出来るだけ殺さないで。彼は、激しくこの村を憎んでいる」
 え。なに。村を焼くとか。身内を殺されたとか?
「宣教師っていうか、もともとこの村の若者なんだけど、なんか突然怪しげな宗教を布教しようとしたから、村の男たちに追い出されたんだ。犬けしかけたってさ。噛みつかれたりしたんじゃないかな」
 問答無用と言ったところか。話をしようと居座るこっちの話の通じない相手には有効な手段だが、最善ではなかった。今にして思えば。
「だから、きっと祟ってくるって村人は思いこんじゃってるんだよ。というか、祟って、神罰を下してやるって捨て台詞投げていったらしい」
 それ、どう考えてもあかんやつ。これで凶作が出ても、家畜が死んでも、祟りに立ってしまう。土地にケチが付くともいう。
「まっとうな宗教だって宣教師は命がけの局面があるっていうのに、妄執と狂信の末に編み出された『宗教』なら余計だね。殺さず追い払うならまだ優しいさ」
 メクレオは、ああ、それにしても。と言った。
「こういう事態が想定されるから、最前線の宣教師は殺されがちなのかね? おっと、俺の所見はここまでだ」
 生まれ育った環境から犬をけしかけられて追い出される。普通に考えても恨みは買う。
「村はたいして広くない。家々に火を放ち、真ん中の広場で『神』を慰撫するためミサをする、らしい。犬を火あぶりにする気らしい」
 こういうところの犬は愛玩動物ではなく財産だ。
「大量に油やら、酒やら、それに使うものを購入した奴らがいたって証言までは手前の街で取れた。今言った内容もそいつらがぶつぶつ言ってたのを聞いたって話だ。いろいろ抜けてるかもしれないし、尾ひれがついてる可能性もある。」
 新鮮な情報は発酵してわやくちゃになるのはよくあることだ。いつもなら精査するが今回はその時間がない。
「今からすっ飛んでけば、準備段階で取り押さえられるから、火消し頼むわ。村の人は村の外にもう避難してるはずだ。話を聞ければ行動する選択肢は狭まるから無駄は減ると思うんだけどもな」
 なぜ、こんなことをするのか理由はわかるかもしれない。それが分かれば打つ手も絞られてくる。
「拙速を貴ぶというのもまた真理。悪いけど、現場に任す。相談して」

GMコメント

 田奈です。
 あんまり急ぎなもんだから、メクレオも情報あんまり持ってないよ、ごめんね!

* 邪教の宣教師と信仰の徒×8人。
 *名もない神を奉じている「宣教師」になった村の若者とその崇拝者。大きな1と小さな8は最高の組み合わせなのです。
 *犬を試練だと思っています。
 *怪しげな術を使います。信徒はこの村や周辺の素行の悪かった者達です。
 *皆さんと戦うことより。、火をつけることを優先します。彼らには死が救済なのです。「だって、汚れたケモノ(犬と思われる)にかじられたんだもの。もう死ぬしかない(意訳)」って言ってるのを雑貨屋のおばちゃんが聞いていました。
*村で死なれては後味悪くて仕方がないので、ここで殺してはいけません。連中は喜んでしまいます。
*殺してしまったら、村人たちは住み慣れた村を放棄し、流浪の民になります。

*村
 夜になりかけです。星の輝くいい夜ですが、もう暗いところは見にくい時間帯に到着します。
 村人の避難は済んでいますが、村人に類が及んではいけないので、犬は自由にされましたが、村に置き去りです。
 犬はペットではないので、犬を追いかけて村に戻る子供はいません。
 広場は30メートル四方。足元は踏み固められた土です。
 家は石造りです。燃えにくくて幸いですが、悠長にしてはいられません。一定ターンが過ぎると村は物理的に炎上。村人たちは住み慣れた村を放棄し、流浪の民になります。

*犬
 全部で五頭います。
 中型犬です。普段は牧羊犬として使われています。
 羊泥棒対策として、よそ者には激しく攻撃するようにしつけられています。
 現在は村の中を歩き回っています。
 
*突入タイミング。
 村の入り口で、村人が皆さんに見聞きしたことを話そうとします。
 情報を聞くと選択した場合、そのPCが突入するのは6ターン後になります。
 聞いた場合、一味を取り押さえるための行動判定が有利になります。
 聞かないで突入する場合、事前付与しないで行けば放火前に追いつきます。
 事前付与すると1ターンづつ行動がおくれます。
 聞く聞かないは、各PCごとに判断してください。その部分がプレイングに書いていなかった場合、人数が多かった方に迎合したと判定します。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

  • 犬よ、邪教の輩を放逐せよ。完了
  • GM名田奈アガサ
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年04月24日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)
罪のアントニウム
アリシス・シーアルジア(p3p000397)
黒のミスティリオン
コラバポス 夏子(p3p000808)
今日も良い日だ
新道 風牙(p3p005012)
翡翠に輝く
ベルフラウ・ヴァン・ローゼンイスタフ(p3p007867)
戦神凱歌
リンディス=クァドラータ(p3p007979)
妖精譚の記録者
アカツキ・アマギ(p3p008034)
放火犯
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
ドゥネーヴ領主代行

リプレイ


「やるべきことは二つ!」
  『帰ってきた牙』新道 風牙(p3p005012)は、びしっと指を空に向けて立てた。
「放火を止める! 殺さず捕らえる! 犬は攻撃しない!」
 人幸指、中指、薬指。目視確認。
「……三つだ!」
 間違いに気付いたら、即訂正を入れる姿勢は美徳。
 沈む陽光のなごり。空が青を失う時分。村についた頃には闇に包まれているだろう。
 目的の村が見える丘の上。気ぜわし気な男が一人立っていた。
「あんたら、ローレットのヒトかい!?」
 そうだと言うと、相手は息せき切ってしゃべり出そうとする。
「お話は私がうかがいます」
『レコード・レコーダー』リンディス=クァドラータ(p3p007979)は、進み出た。
「此処はおまえに頑張って貰おう。現地に居る俺達に情報を届けてくれ」
『特異運命座標』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)に命じられた鳥は、リンディスの肩にとまった。迅速に情報を共有するための手段だ。
「我々は現地に急行する。彼女に話してくれれば全員に伝わるようになっている! リンディス、可能であれば犬の動かし方を聞いてくれ、頼む。出来れば犬は殺したくない」
 『金獅子』ベルフラウ・ヴァン・ローゼンイスタフ(p3p007867)は、言い置いた。
「そうなのかい――わかった。じゃあ、あんたに」
 男はリンディスに話し出した。
「大まかにはうかがっていますが、何があったのでしょう。先に、犬を放しているのであれば何か自分たちが敵ではないと伝える方法がありますか?」
 リンディスが、相手を落ち着かせるようにゆっくり問うた。
 男は、リンディスの様子にゆっくりと深呼吸した。
「知らない者には、死なない程度に噛みつくように訓練してあるんだよ――」


 全力でイレギュラーがのどかな牧草地を疾走する。
「村内の様子はどんな感じかのう、ベー君何か分かったかの?」
『放火犯』アカツキ・アマギ(p3p008034)にかかると、騎士もずいぶんかわいらしく呼ばれる。101歳にアニキカゼは柳に風だ。
 ああ。と、頷き、ベネディクトは意識をファミリアの方に移した。
『――でも、それじゃあ行商人とか旅人が危ないだろう。だから、ちゃんとした人なら絶対通る関所に知らせてあるんだ。符丁さ。手を叩くんだ。いいかい?』
 鳥の視界で男が手を叩く。
「犬の前で決まった拍で手を叩くと敵認定から外れるそうだ。それでも、攻撃したら応戦されるが。週替わりで変えるから、関所を通っていない宣教師たちは知らない。トラップとして、夜盗がやりがちなこと――犬の鳴き真似はよくないそうだ」
 ベネディクトがファミリアを通して得た情報を口にすると、え。と、 風牙は声を上げた。
「あっぶねー。するところだった」
 一瞬の無言。
「――いや違うんだよ。宣教師の方にするつもりだったんだよ。ほら、犬っぽく振舞うことで、相手にこちらを犬の化身みたいに感じさせて、放火よりこちらへの対処を優先させようという高度な駆け引きなんだよ!」
 一理あったが、犬と三つ巴の場面でやっていたら。となると、情報は非常に有益だった。
「村に入る前に知れてよかった。これで犬が敵に回ることはない。で、その拍子とは」
 ベルフラウが問うた。
「こう――」
 ベネディクトが手を叩いた。ぱん、ぱぱん、ぱん、ぱぱぱぱん、ぱん。
 「ぱん、ぱぱん、ぱん、ぱぱぱん、ぱん?」
「いや。ぱぱぱぱん、ぱん。だな」
 各々練習しながら走る。。確かにすぐできるようでは符丁にならない。
「――男たちは家々に押し入り、中央の広場に木でできた物を積み上げているそうだ。村の中を動き回っている――」
 ベネディクトがしゃべるのを聞きながら、練習。
 なかなか忙しかった。


「何故ここまでなってしまったのか……宗教、に近い何かとはいえ、何か切欠があるような気がするので」
 リンディスは、男に尋ねた。
 男は、長く息をついた。
「放牧が主な仕事なんだよ。この村は」
 男は言った。
「だから、犬は不可欠なんだ。ここは森との境目だから狼や熊を追い払える犬がね」
 そうなると、中型犬から大型犬だ。
「村の男は犬を従えなくちゃいけない。犬の主になれなければ、この村の収入源にはなれないってこった」
 その村々において、通過儀礼や取得推奨技能は確かにある。
「では、今、村で暴れている人は――」
 リンディスの頭の中には、さまざまな物語が渦を巻いた。
「犬の主になれなかったのさ。まあ、いるんだ。今までだってたくさんいたさ」
 宣教師だけが特別不幸という訳ではない。
「そういう奴らは職人やらになるんだ。それだって大事な仕事さ。まっとうにやってりゃあ頼りにもされる」
 そうだ。道は一つではない。極端な話、村を出ればいいのだ。そういう者は、それこそローレットには山ほどいる。
「だから、あいつが村を旅立っていった時はみんな安心したんだよ。どっかでうまくやってくれたらいいなって。犬がうまく使えないからって腐るこたぁねえ。そうだろう?」
 たった一つのつまづきが、すべての道を閉ざしたと錯覚してしまったのだ。
 挫折の象徴。障害の象徴。
 目に見えない制度や歴史に楯突くより、形あるものを壊す方がよほど簡単だ。何しろ、村は焼けばなくなるし、犬は殺せば死ぬ。
「なあ。あんたは宗教絡みかもって言ったけどさ。アイツの神様ってほんとにいるのかね。俺にはいないんじゃないかって思えるんだよ」


 ベネディクトの口から語られた宣教師の過去は、イレギュラーズにアドバンテージを与える。
「誰かが優しく出来たなら……って?」
『一兵卒』コラバポス 夏子(p3p000808)は、誰に言うでもなく呟いた。ぱん、ぱぱん。と打ち鳴らす手の音に紛れて仲間の耳には届いていないかもしれない。
「う~ん話し合いの余地は確かにあったよね。お互い擦れ違いが生んだ軋轢とか摩擦ってヤツかも。一度拗れっと結構引きずるモンなのかも知れないね」
 村の中に入ると、思いのほか静かだった。
「まだ、火の手は上がっていないか……さて、何処だ……?」
 ベネディクトはカンテラをともす。しゃべりながら走ったので声がかすれ気味だ。
『黒のミスティリオン』アリシス・シーアルジア(p3p000397)は、感情を探り当てる網を広げた。
「彼らが村に火を放つ際に抱く感情としては……そうですね……恨み、不安、緊張、興奮……。大方この辺りでしょうか」
 簡素ながらもこぎれいな村だった。まだ、建物に引火していない。
 ベランダに置かれた鉢には花がほころんでいる。
「火を起こそうと動く者が通らなかったかしら」
『祈る者』クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)が植物に問いかける。
 かそけき花々の囁きに頷いて、クラリーチェは村の中央を指す。
「そうですね……いくつかは広場で感じます。とりわけ強い感情……教祖……いえ宣教師でしたか。彼は広場の中央でミサの準備という所でしょうか」
 アリシスの探知と合致した。
「やはりそうだな。直行しよう! 今は犬は無視だ!」
 金色のポニーテールが夜道に光を引く。
 ぎゃあっという悲鳴が、物陰から上がった。


 ベルフラウは広場にひた走る。放射状に延びた道に沿って走れば、そこが広場だ。
 砕かれた樽。引きはがされた戸板。
 広場の中央に積み上げられた木製の椅子や机。生活に直結した燃えそうなものが積み上げられている。
「主はかく仰せられた。私に燃える座を用意せよ。使徒たちは私の周りに座すがよい――」
 目から光を失いながら興奮した男達が、たいまつ片手に無人の家の中を覗き込む。
 燃やさなくては。炎の座を作り、おそばに侍らなくては。
「言葉は通じるのに理解はできない、って、ほんと面倒というか、疲れるというか……
……いけないいけない」
 ギフトを以てしても、風牙のキャパを越えた信徒のオーラは見ているとよいそうな色合いだ。お友達になれない。
『戦いの場に迷いや悩みを持ち込んではならない』という師匠の教えが風牙の頭をクリアにする。
「犬は任せろ」
 請け合うベルフラウとは別の方向。テーブルを抱えた信徒は突然目の前に現れた掌底に声を出すこともできない。
「もう少し骨があったら五月雨の予定だったんだけどなぁ。やりすぎる訳にいかないから、寝ててもらうぜ……っと!」
 締め上げるべきところを締めれば、ヒトの意識などすぐ摘み取れるのだ。
「で。宣教師はどこに行ったんだ? ここにいるもんだと思ってたんだけどな?」


 神は言い給う。と、広場から逃げ出した宣教師はうめいた。
 犬は不吉だ。神に背くケモノだ。今も、同士を踏みしめてよだれを垂らす汚らわしい生き物だ。焼かなくてはならない。不浄の血と不浄のケモノを焼かなくてはならない。
「いと高きとこにをおわす方はおっしゃる。べナットより来る者に気をつけなさい。それは緑の方からくる。トヘンドはもろく強いものである」
 がくがくとひざを震わせる宣教師は犬が入れない場所に逃げ込んだ。
 世界をつなぐ翻訳機能は、音の煩雑さよりはるかに端的な文意をもたらす。
『犬を殺せ。村を焼け』
 宣教師はそれだけを繰り返している。長々としゃべっているほとんど全てが意味不明のノイズで修飾語句だ。
 犬が吠えている。
 宣教師もこの村の出身なのだから、いくつかパターンがあったとしても、全部試してみれば犬を無力化する方法に行きついたんじゃないか。
 イレギュラーズは知る。本当に犬が苦手な者は、そもそも犬と物理的に正面から向き合うことができない。犬の視線を浴びることすら苦痛なのだ。犬が自分に注目していると認識した瞬間に逃げ出すのだ。
 だから犬に術を駆使することはできない。凝視もしないで力を行使できるほど宣教師に才はない。そして、本当に苦手なので自分で殺すこともできない。
「見つけた……ここじゃ! ここに居るぞー!」
 アカツキが声を上げ、明るさを上げた火球を打ち出す。手のひらほどの大きさの球が村中を白く染め上げるほどの光を放つ。
「まあ。このような――家と家の隙間に」
 これでは見つけられませんねぇ。と、クラリーチェは言った。


 まずは放火の阻止が優先だ。
「これで延焼が進まなければいいのだけれど……」
 アリシスは、建物に保護結界をかけて回った。
 火付けそのものは明確な意図によって行われる以上防げないが、そこからの延焼に意図は介入しないはず。さして広くない村だ。被害を最小限に食い止める術があるなら、やらない手はない。
「制圧したら、急ぎ消火の手はずを……」
 角を曲がると、そこに犬がいた。
 大きさが聞きしに勝る。立ち上がったらアリシスより大きいかもしれない。
 万一の時には魔法に頼らざるを得ない。そうならないことを祈りつつ、手拍子をうつ。
 犬は、アリシスを値踏みするように眺めた後、地面に伏せた。
 よく、しつけられている。
「犬め!」
 その背後から、目を血走らせてた男がたいまつをめちゃくちゃに振り回しながら突進してくる。とっさに避けたが火の粉がアリシスの肌を焦がす。
 犬は、たいまつを振り上げた腕に飛びかかった。アリシスの放った殺しはしない魔力弾が男を襲う。
 男が動かなくなったのを確認した犬が再び伏せた。
「あなたに使わないで済んでよかった……」
 アリシスは再び走り出した。その背を守るように犬が追った。


 魔人の指環に怪しげな書物を携えて武装しようとも、クラリーチェは敬虔な聖職者なのである。
「本来、信仰とは尊いものです。求道者とは他者を思いやり、日々の糧に感謝し、目に映るもの映らないもの全て『自らを生かすものである』と自覚し、祈りの道を歩むもの」
 噛んで含めるような説法。修道女としての言葉。
「信仰は害を成す相手を排除する理由にはなりませんし、殉教などと、軽々しく口にするものではありません」
 只一人遺された者の言葉に背負ってきた分の重みが乗る。
 宣教師は耳をふさいだ。クラリーチェの言葉に耳を傾けてはいけないと思った。
 代わりに、神の言葉を聞かせようと思った。神の言葉を語ると仲間ができるのだ。自分と一緒に生きてくれようとするのだ。だから、この村に来て、忌まわしい獣と決別して生きようと説いたのに、ケモノをけしかけられて傷を負う羽目になった。
 もう、こんなケガれた村はいらない。
「なんじゃ、気持ち悪くなってきたぞ」
 アカツキは口元を押さえて顔をしかめた。頭の中でめちゃくちゃにたくさんの鐘が鳴らされているようで集中が途切れそうだ。
 しかし、隠者であるクラリーチェの心はうつし世の些事には揺れない。
「――恥を知りなさい」
 クラリーチェの、普段は猫を撫でる柔らかな指先が宣教師のあごをつかんだ。
 アカツキはほっと息をつき、いささか大きな黒い外套の裾をさばいた。
「妾の炎を拝めぬ不運を嘆くがよい。本当にかわいそうな奴らじゃ。憐憫に値する」
 わが身に置き換えるとめまいがする。と、元素支配者は言う。
「その身には恐怖を刻み込んでやろう。炎を愚弄した罪におののき、永劫に眠れぬ夜を過ごすがいい」
 幻想種が語る永劫には、定命の者とは違う重みがある。文字通り、言霊が信者の臓腑をえぐった。死にそうだと思うのに死ねない。
 死に逃げられない者の重みに潰されて、宣教師はうめいた。
「故郷を追い出されることについては妾も覚えがあるので同情するが……それでも恨みで放火はいかんのじゃ、美学がないしの」


 殺意を持っている相手を、殺さないで制圧するのが一番難しい。
 宣教師という核を失い、烏合の衆と化した信徒は
 ベルフラウには、主人としてふるまう才能がある。
 視線、指先、態度、声色。
 決められた拍子を叩きながら、きびきびと犬にメソッドを刻み込んでいく。
「よし、いい子だ」
 しつけられた犬は幸いだ。よき主に従う幸せに包まれる。
「けがれた獣を燃やせえええ!」
 どこかの家で物色していた信徒が飛び出してくる。図らずも、ベルフラウは囮を担うことになった。
「火はダメですよ、火は。たくさんの本がなくなっちゃいます。 ね?」
 その前に、ローブを着込んだ少女――リンディス。
 その行く手を阻む。
「……ね?」
「よっし、リンディス。動くなよ!」
 背後から近づいた風牙が、信徒を締めあげた。
「風牙。火を消しましょう。ね?」
 友には、明確に守るものがあった。
「え、あ、おう」
 風牙は、頷いた。

「実はさ、君達のこと聞いてるんだ――君達の神からね!」
 そのための時間を作るため、信徒の耳目を自分に集中させるため、夏子が名乗りを上げた。
 「嘘だっ!」
「嘘なんかじゃないさ。君たちが穢れた獣に接触した贖罪として殉教しようとしていることを知っているよ」
 信徒たちは自分たちの様子のおかしさに、店にいた者が聞き耳を立てていたなど思いもよらない。
 彼らしか知らないはずの秘事を知る夏子への恐れが信徒の脳を真っ赤に染める。
「そう。僕は話を聞けるよ」
 数多の神の恵み降る世界で、いるかいないかも疑わしい「神」に傾倒するモノは、心に付け込まれる隙を持っている。そういう迷いをつつきまわすのは軍師の仕事だ。
「どう? 話してみない?」
 争いの神は気まぐれで、こういう局面になって初めて夏子に手を差し伸べる。
「僕さ、君等の神様の身内なんだけど、別に火とか慰めにも何にもなんない」
 争いを制することの第一に武勇を用いない者。
「するなら村民と犬と和解せよ……って言ってるよ。ホラ、今も」
 火種に水をかけるのではなく、そもそも火種を舞台からほおり出す男は、確かに面白い存在なのだろう。
「聞こえない? へ? なんで?」
 熱に浮かされていた教本劇からいつの間にか別の舞台にあげられた信徒は、答えられない問いに身を凍らせる。だって、神様の声なんて聞いていないから。聞いたという男の熱量に浮かされただけだから。
「待たせた、夏子」
 ベルフラウは、大きく息を吸った。
「ならず者を探し出せ。火をつけさせるな。殺してはいけない」
 犬達が広場から村の隅々に飛んでいく。
「私が立っている内は容易には燃やさせぬぞ、さあどうする!」

 制圧自体に大した時間はかからなかった。戦闘職でもない地方の若者が暴れていただけなのだから。
 綺羅星のごとく立ち回るベネディクトが蹴りで片をつけていった。
 放火された納屋が幾分燃えたが、迅速な処置により延焼は免れた。
 犬は、何匹かがやけどを負ったが命に別条はなかった。


「村の外に連行して……さて?」
 アリシスが意味ありげに目配せする。
 戦闘後、倒した敵は縛り上げ、官憲に突き出す仕事が待っている。
「どうせやるなら、人に危害を加える野犬や狼を狩る仕事とかしろよな!」
 風牙は言った。実際、前向きに昇華はしている。
 済み上げられた家財を元に戻すのは骨だろうが、犬と村人は流浪の民にならずに済みそうだ。
 炎の座に座り損ねた「神」は、また誰かに啓示を与えるかもしれない。
 ベルフラウにねぎらわれている犬たちは高らかに遠吠えをした。神を追い払うように。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れさまでした。なんで、皆さん、そんなピンポイントなスキルを。
村は無事です。次のお仕事も頑張ってくださいね。

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