PandoraPartyProject

シナリオ詳細

蒼色世界の水底へ

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ヒュド・リュトン
 一人の男が、目を細め頭上の光を仰ぎ見ている。
 頭上から射す光はゆらゆらと蒼く揺れて、遠い記憶を呼び起こす。

 小さな頃、どこまで行けばあの『太陽』に届くのかと、たった一度だけ試したことがあった。
 地面を蹴って、空を『泳いで』、家も学校も街の広場も見渡して、海の灯台も小さく見えるまで高く『泳ぐ』――それでも、届かなかった。
 段々と灯りが小さくなって、夜になって。
 疲れ果てて地面へと沈んで、帰りを心配した両親にこっぴどく叱られたっけ。
 そんな思い出も、今となっては懐かしく微笑ましい話だけれど。
 
「よし、と」
 手に持った袋を点検し、穴が開いていないことを確認する。
 目の前に広がる『海』は、どこまでも広がり――ふよふよと漂う魚達(えもの)が、少し先に見える。
「いっちょ、獲るとするか!」
 そうして地面を蹴れば、羽もないのに男の身体はふわりと浮かび。
 両手でひと掻きしぐんと進むと、事も無げに魚を掴み、袋に入れていく。
 今日もきっと――この海も、空も。泳ぐのには最高だ!


●蒼の世界へ
 その日、集まった特異運命座標に案内人のシーニィ・ズィーニィが差し出したのは一冊の大きな本。
 ブルーの表紙に金色で書かれていた文字は見慣れないものであったが、『崩れないバベル』が作用すればその意味が頭に浮かぶ。
「ヒュド・リュトン?」
 誰かが読み上げたそれに、シーニィは「そう」と頷き、開いてみてと促す。
 促されるまま本を開いて目に飛び込んだのは、真っ青な街。
 幻想の街並みを描いた絵を、そのまま青く塗りつぶしたような。それでいて、どこか引っかかる違和感は一体。
「この世界はね、水で満たされているの」
 シーニィの言葉に、その街を眺めてみれば――描かれている人々が、まるで宙に浮いているではないか。
「私の故郷よ。平和な所だし、息抜きにでもどう?」

 ――不思議な蒼の世界へ、飛び込んでみない?

NMコメント

 飯酒盃おさけです。
 ライブノベルでもラリー開始!
 私自身初めての形になりますが、どうぞよろしくお願い致します。

●目標
 楽しく遊ぶ。

●舞台
<ヒュド・リュトン>と呼ばれる世界のとある街。
 レンガ造りの家が立ち並び、街路樹や石畳が広がり一見すると見慣れた幻想の街の雰囲気ですが――その空まで全てが水で覆いつくされ、全体が淡い蒼に染まっています。
 遥か頭上に輝く光は『太陽』と呼ばれ昼と夜を作り上げていますが、誰もそこまで辿り着けた人はいません。

●特殊ルール
 この世界では、地面を歩くのと同じように、宙を『泳ぐ』ことができます。
 地面を蹴れば、ふわりと身体は浮き上がります。泳げない人は、少し怖いかもしれませんね。
 世界を埋め尽くす水は、呼吸にも支障はありません。飲んでも安全。
 普段の服のままでも、水着でも構いませんが全裸はダメ絶対。

●第一章
『海』で泳ぶ。
 砂漠が広がっているように見えますが、この世界の人々は海と呼んでおり、色鮮やかな魚達もいます。
 時折風が波のようにやって来れば、あなたの身体を揺らすでしょう。
 ゆらゆらと浮かんで遊ぶもよし、海洋での戦いに向けて泳ぎの練習をするもよし、魚を捕まえてみるもよし。

●第二章(予定)
 カフェで一息。
 遊び疲れたら、蒼い光の射すカフェで一息つきましょう。
 水と混ざり合わない不思議なソーダに、何故か丸く浮かぶ珈琲に。
 貝殻型のマドレーヌに、魚介たっぷりのパスタやピザも絶品です。

●第三章(予定)
<ヒュド・リュトン>を散策します。
 買い物をしたり、街を泳いで一望したり、どこまでも高く泳いでみたり。
 もう一度海に行ったり、カフェで長居することも可能です。

●NPC
・シーニィ・ズィーニィ
 この世界の出身です。案内がてら近場をふらついています。
 泳ぎやすいから、とあの服装のようです。
 お声がけ頂けた場合のみ登場します。

●ラリーシナリオについて
・概ね各章6~10名前後の執筆予定です。
 募集中人数が上記を超えていても、次章に移るまでは積極的に執筆していきますので、お気軽にどうぞ!

・途中章からの参加も歓迎です。
 ふらっと遊びに来てみてくださいね。

・数人まとめての描写になる可能性があります。
 ソロ希望の方はソロと、同行者がいる方は【】やID等記載してください。

 それでは、ご参加お待ちしております。

  • 蒼色世界の水底へ完了
  • NM名飯酒盃おさけ
  • 種別ラリー(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年04月06日 20時50分
  • 章数3章
  • 総採用数41人
  • 参加費50RC

第1章

第1章 第1節

ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣

(空を泳げるなんて、面白そうだな!)
『海』を眼前に『死力の聖剣』リゲル=アークライト(p3p000442)は、この世界と同じ鮮やかな蒼の瞳を輝かせる。今日の彼は、薄手の白いシャツに紺のカーディガンを羽織ったカジュアルな装いだ。
「リゲルは上まで泳いでみるのか? なら、上着は預かっておく」
 ほら、と手を差し伸べたのは、揃いの紺色ワンピースを纏った『優心の恩寵』ポテト=アークライト(p3p000294)。
「ああ、度胸試しにやってみようと思って。ポテトも一緒に来るか?」
「私はそこまでは難しそうだし……下の方でのんびり泳いでいるかな」
 下から見ているから、と笑うポテトにリゲルがカーディガンを脱いで渡し――シャツのカフスボタンを外し袖を折れば、準備は万端。
「それじゃあ行ってくるな!」
 とん、と地面を蹴りリゲルが飛び出せば、その身体はふわりと浮かび。
 眼下のポテトに手を振って、ゆっくりと手足を動かし泳いでいく。
(本当に落ちないものだなあ……)
 浮き上がる身体に感心していると、鮮やかな赤い魚がリゲルの元にやって来る。好奇心が強いのだろうか、その小さな体を指先で突くとすり寄って来る。
 その姿に愛らしいと頬が緩むも、そうだと目的を思い出す。
(さて、ここからが訓練だ!)
 肩慣らしを終え、大きく腕と足を動かし――リゲルは遥か頭上に見える『太陽』へと泳いでいく。ぐんぐんと身体は上っていき、しばらくして――
「おーい! ……聞こえない、か?」
 ジオラマのように小さくなった街に、人に呼び掛ける――ポテトは、この姿を見ているだろうか。
「よし、まだまだ行けるところまで!」
 この先、きっと海で厳しい戦いが待っている以上――根を上げるわけにはいかないから。
「いくぞ!」
 掌から下に向けて放った流星は――きっと魚達に降り注ぐ。
 反動で勢いづいたリゲルは、太陽目指して泳いでいく。

「あれは……リゲルか? 随分と高くまで泳いでいるんだな」
『海底』を歩くポテトが見上げてみれば、蒼く揺れる一面の水に、銀の流星が一筋流れてくる。彼はあんなにも高くもう泳いでいるのか、と思えば水着や愛用の作業着を持ってくればよかったかもと思いもして。
「あら、貴女は泳がないの?」
 近くを散歩していたシーニィがポテトに話しかければ、思い浮かぶのはこの世界への疑問。
「この世界の人は食事って何食べてるんだ?」
 例えば火は普通に使えるのか――
「使えるわよ?」
ほら、とシーニィが指したのは後方の――焚火。
 水の中でゆらゆらと揺れるその炎に、棒で刺してある魚は、こんがりと香ばしい匂いをさせていて。
「ご覧の通り、普通に火は使えるし――消す時は『水をかけて』消すわね」
「そういうものなのか……不思議だな、この世界は」
 混沌も不思議だけれど、境界図書館から繋がる世界も不思議だらけで。
 物は試しにとシーニィから差し出された魚に、ポテトは舌鼓を打つのだった。

成否

成功


第1章 第2節

マルベート・トゥールーズ(p3p000736)
饗宴の悪魔
ソア(p3p007025)
雷虎

「ねぇねぇマルべートさん、ズルはだめだよ? よーいどんだからね!」
「あぁ、解っているよソア。私はルールを守って遊ぶ悪魔だからね」
『雷虎』ソア(p3p007025)と『饗宴の悪魔』マルベート・トゥールーズ(p3p000736)は、広がる海――否『漁場』を前に興奮が止まらない様子。
「どっちが大きなのを獲れるか勝負だよ!」
 腕をぶんぶんと回すソアの口元から涎が垂れそうなのはさておき。マルべートも、隣のソアほど判り易くはないものの、その胸の鼓動は高まるばかり。
(その地の事を知るのに一番いいのは、其処に生きる命を食べることだからね)
 生命とは歴史であり、食とは文化である――とは、美食家の彼女の自論である。
「そうだね、そして獲った魚で午餐会といこうではないか!」
「ごさんかい? よくわからないけど獲ったら食べよー! えへへ、負けない! ボクは生まれながらのハンターだもの!」
 食を愛する者二人、空腹は最高のスパイスとはいえここまで未知の世界の食からの誘惑を断ってきたが――そろそろ限界だ。
「それじゃあいくよ、よーいどん!」
 ソアの声に合わせて、二人同時に海へと飛び込めば――
「わ、わ、ほんとに浮いてる!」
「翼を使わずとも飛べるとは、奇妙な感覚だね」

(ん――あの砂の動き。きっと何かいるね)
 悠々と泳ぐマルべートは、優れた感覚をもって怪しげな場所を見つける。
「そうやって隠れてやり過ごそうとする小さく弱き姿は愛らしく――だからこそ、食べてしまいたくなるね」
 愛するが故に、食べる。マルベートは愛情を籠めて、砂へとディナーナイフをひと突きし――刺さった小さな煌めく緑の小魚を摘まみ、まじまじと見つめる。
「へぇ、これは見たことのない魚だ。香りからして、毒もなさそうだ」
 ひょい、とそのまま口に入れれば――ワインを持って来ていないことを、心底後悔した。

「あー、マルベートさんつまみ食い! いいなー……じゃなかった、ボクも負けないぞ!」
 ざぶん、と深い溝へと潜り込み――小魚にも惹かれるけれど、狙うはきっといる大物一択!
 何やら岩場の陰にもぞもぞと動く影を見つけたソアは、岩の隙間に頭を突っ込み大きく息を吸い込むと――
「がおー!!!」
 辺り一面に響く声で、雄叫びをひとつ。
 ぷは、と顔を上げたソアの目の前には、その声に驚いて出てきた魚達が沢山で――
「いただきまーす!」
 目を回した魚達は、一匹、また一匹とソアの爪の餌食になるのだった。


「へへ、見て! ボクこんな大きい魚を獲っちゃった!」
「私も負けてはいないよ? ほら、この通り」
 合流し獲物を比べてみるも、そのサイズは遜色なく。さて勝敗はどうしたものかと顔を合わせる二人に――大きな影がかかる。
 見上げてみれば、それは両手で抱えきれない大きさの鯨で。
「ねぇマルベートさん」
「皆まで言わずとも、だよ!」
 二人は爪とフォーク、ナイフを抱え――今日一番の大物に挑むのだった。

成否

成功


第1章 第3節

リズリー・クレイグ(p3p008130)
C級アニマル

「ねぇ、シーニィ。これホントに大丈夫なのかい?」
 腰を屈ませ、案内人へ聞く『荒熊』リズリー・クレイグ(p3p008130)。大柄な身体に似合わず小さな声で呟く彼女が、かつて『蛮愚部亜』と呼ばれる山賊団の頭目であり荒熊、と呼ばれていたと知る者はここには少ない。
「大丈夫よ、現にこうして私達も普通に過ごせているじゃない?」
 シーニィに「そうだけど」と溢すリズリーは落ち着かない様子。
 何せここは水中。歩くことも、呼吸もできているとはいえ、こうも周囲が青いと溺れ続けている錯覚がしてくるのだ。
「うーん、慣れないね、よっ……っと、うわわっ! 浮くんだった!」
 軽く跳ねたつもりの身体は、落ちることなくふわりと浮き。慌てて手をばたつかせて体勢を立て直せば――ふふ、とシーニィに笑われてしまい、気恥ずかし気に頭を掻いた。

(しっかし、この海はあったかいね)
 慣れればこの浮遊感も心地いいものだと、リズリーは大の字で波に身を任せる。その頭に浮かんだのは、故郷の海。彼女にとっての海はこうした穏やかなものではなく――凍て付いた白く、冷たいもので。
(あんなところ、迂闊に潜ったら死ぬよアレは)
 もうしばらくこのままでいるのも悪くはない、けれど。
 やはり『荒熊』、その本能は猛々しく。
「いっちょ魚捕りでもしてみるかね!」
 川と似たようなもんさ、叩けば獲れる――そんなリズリーの手に大ぶりの鮭が収まるのは、その数分後。

成否

成功


第1章 第4節

マルク・シリング(p3p001309)
かんな(p3p007880)
カピブタ好き

 揺れる太陽の光を浴び、マルク・シリング(p3p001309)はゆっくりと海を泳いでいた。
「すごいな、水の中でこんな風に泳げるなんて」
『ただの人間』であるマルクにとって、この世界は未知なる感覚ばかり。
 こうやって一人感想を零しても、息を大きく吸っても呼吸に支障はない。つまるところ、溺れること、はこの世界で気にする必要はなく。故に、水中への親和がないマルクにとっても、この水は怖くない、ということになる。
「そうなるとあとは、自由に動き回れる空間、ってことになるんだな」
 うんうん、と頷き手足を動かし深く潜れば、空を飛んでいるのとも違う、空気の中を泳ぐような感覚がする。
(溺れる心配が無いなら、泳ぐ練習をしよう)
 きっとこの先、この海とは真逆の荒れた海――絶望の青が戦場になる。あの海ならば落水する可能性もあるのだから。
「そうだ、どうせなら海面の方に上がってみようかな?」
 素肌に貼り付く衣服に悪戦苦闘しながら、マルクはゆっくりとその高度を上げていく。

「すごいわ、一面真っ青。ここも、素敵な世界ね」
『実験台ならまかせて』かんな(p3p007880)は、白いスカートをクラゲの様に靡かせながらふわふわと海を漂っていた。
(風に、波に身を任せて揺られてみるのも素敵だけれど……せっかくの機会だし、いろんな光景を見て回りたいわ)
 そうして上へと泳いでいけば――かんなの視線の先には、見知った幻想の街並みと似た世界が広がっていて。ただ一つ違うのは、それが水に満ちていること。
「なんだか新鮮ね、これは」
 足元はまるで砂漠にしか見えず、遠くの街にもずっと水が続いているのに――それでもここは『海』なのだというから不思議なものだ。それに、見渡せば周囲には赤に黄色に緑に、色とりどりの魚が太陽に照らされていて。
「あなたたちも、とっても素敵で不思議だわ」
 その言葉に喜ぶかのように、魚達はひらひらと揺れるかんなのスカートにじゃれつき、鮮やかな模様を咲かせていった。

「こんにちは、きみも図書館からやってきたの?」
 マルクが街を見渡せる高さまでやってきた時、そこには先客のかんなが魚達と漂っていて。
「えぇ、無辜なる混沌と違う所も、同じ所も……まだまだ、見てみたいわ」
 かんなの言葉にマルクが微笑み、街を見ると――そこには一面蒼の街が沈んでいた。
「海種の人たちに見えてる景色って、こんな感じなんだろうか」
 そう疑問を口にすれば、かんなもふふふ、と少し弾んだ声を返し――ふと気付く。
(これが興味? 確かにこれは、尽きないわ)
 泳いだこともない自分でも、意外となんとかなったことも不思議だけれど。きっとまだまだ自分の知らない不思議なこと、が沢山あるはず。
「それじゃあ、ぼくはもう少し……行ける所まで、行ってみるね」
 片やマルクは、見果てぬその海面を目指し再び泳ぎ始める。
 疲れたら、ゆっくり沈んで戻ろう。ゆっくりと、漂うように――

成否

成功


第1章 第5節

ジョセフ・ハイマン(p3p002258)
異端審問官
沁入 礼拝(p3p005251)
足女

 『異端審問官』ジョセフ・ハイマン(p3p002258)と『足女』沁入 礼拝(p3p005251)は、『波打ち際』を並んで歩く。
「海遊びだなんて、久しぶりですね」
「ああ、しかもそれが水の底に……いや、水に満たされた世界とはなかなか新鮮だな!」
 楽し気に笑う――少なくとも礼拝には鉄仮面の下が「笑っていると」解るジョセフを眺め、礼拝は何よりですと甘やかに微笑む。
 水のようなこの空気の感触は、不可思議ながらも二人共に不快さは感じられず。
「ふふっ、ジョセフ様も御不快ではないみたいで良かった」
 礼拝が鉄仮面を指でちょこん、と突けばジョセフも「ああ」と納得する。
「仮面の内側も特に不快感は無い。最初は外さねばならないかと心配してしまったよ!」
「……外さねばならないようでしたら、私はジョセフ様の手を引いて図書館へ戻らねばなりませんでした」
 泡に溶けた礼拝の、小さな――ほんの少しだけ拗ねたような調子の言葉は、ジョセフの耳に届くことはなく。
「ただこの世界だと水責めが出来ないのだけは残念だが――ん? どうした礼拝殿?」
 普段通りの調子のジョセフに「いえ」と眉を下げ笑うと、礼拝は蒼い光を浴び一層美しさを増した爪先を地面にやり――とん、と水中に浮かび上がる。
 身に纏った淡い小花柄のロングスカートが水中で揺れれば、まるで蒼い世界の中に降る雪のようで。ジョセフがその光景に物も言わず見惚れていると、頭一つ分上から礼拝のころころとした笑い声が降ってきた。
「失礼しました、上からジョセフ様を上から眺めるなんて新鮮で。だって私はいつも見上げるばかりなんですもの」
「ああ、ああ!面白いなあ。僕もこうして礼拝殿を見上げることがあるなんて思いもしなかったよ」
 僕、とその呼び方を変えたジョセフの頭に礼拝が手を伸ばす。優しく、幼い子供相手にするように撫でれば、ジョセフはその手に傷だらけの自身の手を重ね――己の知りえなかった存在を思い起こす。
「……母というものは、こういう感じなのかなあ。私にはよく分からないが!」
「母……」
 ぴたりと手を止め、空いた手でその鉄仮面をつねろうとした礼拝は「全く」と呟き――重ねていた手を取る。
「さぁ、ジョセフ様。何処か行きたいところはありますか? 魚を捕まえるのも、はるか彼方に浮かぶ太陽に触れに行くのだって、私お供いたします」
 水の力か、簡単に引き上げられたジョセフは一瞬の思案の後、上を見上げる。
「そうだな……僕はあの太陽まで泳いでみたい。水面は無いのかな? そうか、天まで水で満たされているなら雲も無いのか」
「まぁ、私ジョセフ様のように体力はないですよ」
「疲れたら僕が運ぶよ。何処までも昇って、見たことのない風景を一緒に見よう」
 今度はジョセフが礼拝の手を引けば――二人はゆっくり、太陽へと泳いでいく。

 ――ああ、この世界は蒼に包まれているのに。不思議と薔薇色に見える!

成否

成功


第1章 第6節

秋月 誠吾(p3p007127)
虹を心にかけて
ソフィリア・ラングレイ(p3p007527)
地上に虹をかけて

「そもそも、呼吸ができる時点で海とは? ってなるんだが…」
 顎に手を当て思案しながら、ぶつぶつと困惑を露にする『虹を心にかけて』秋月 誠吾(p3p007127)。学校帰り、トラックに轢かれる――と思ったら異世界に、なんて漫画の世界かよなんて出来事から数ヶ月。目の前に広がる蒼い砂漠はどうやら『海』らしい。
 自分が住んでいた世界の常識から外れた事にも大分慣れはした、はず。喋って殴ってくるチラシだって、頭が三つあるサメだって見てきた。しかし、だ。
「いや、これには驚いた」
 明らかに水中にいるにもかかわらず、こうやって普通に話せる状況を隣の友人は気にならないのだろうか――と見れば。
「おぉ……水の中なのに水の中じゃないみたいな、変な感じなのです!」
むむむ、と首を捻っている『地上に虹をかけて』ソフィリア・ラングレイ(p3p007527)も、どうやら自分と同じ気持ちのようで。手を握っては開き、その感覚を確かめている。
 足は地面に着いている。呼吸もできる。じっとしていれば地上のようだけれど――ぽん、とその足に力を籠めればソフィリアの身体はふわり、その銀色の羽を動かしていないにもかかわらず浮かび上がる。
「うわ!?」
「んー……でも、やっぱり水の中なのです」
 かつて暮らしていた世界では『飛べる』ことが当たり前だったとはいえ――これはやはり、今まで飛んでいた空とは違った感覚。それでも自在に飛べるのは心地いい、と首を傾げつつ飛んでいると、誠吾がソフィリアを見上げてそういえば、と問う。
「言われてみれば、お前さん鳥だっけ?」
 羽がある生物など見慣れたが、初めて会った時ソフィリアは自身が鳥だと言っていたではないか。
「うん、うちは鳥にもなれるのです!」
 くるり、羽をはためかせて一回転し指でVサインを作るソフィリア。そういえば、空を飛ぶには鳥が楽でも、日常生活には手を使う分こちらの姿が便利だと誠吾の前で変化をしたことはなかった気がする……が。
 自在に動くソフィリアをまじまじと見つめ、誠吾は彼女の鳥の姿を想像するが――どうにも、脳裏に浮かぶのはまんまるの小鳥たち。
(俺の中じゃぷくぷく丸い鳥のイメージなんだよな……普段から食ってばっかりだし)
 思わず笑みが零れそうになっていると、そんな考えを見透かしたのだろうか、降りてきたソフィリアがむぅ、と誠吾を見据えていて。
「そのうち誠吾さんにも見てもらうのです! 神鳥と褒められたうちの、華麗に空を飛ぶところを!」
 それを見たら、彼は何と言うだろうか。
「そか。気が向いたらそのうち見せてくれな」
 返ってくるのは、そのうちなんて気のないような――それでいて、それを期待する、楽し気な声色。
(まぁ、あんまりせっつくものじゃないだろうし)
 今は、のんびり散歩するとしよう。
 そうして二人、歩いて時々漂って。蒼の世界を満喫するのだった――

成否

成功

PAGETOPPAGEBOTTOM