シナリオ詳細
ヒューナのアトリエ Lv2
オープニング
●ムキリョークをやっつけろ!
深緑、大樹ファルカウ。
深緑の首都的シンボルであり、多層構造のこの神樹内部には多くの村々が広がっている。
その下層、中心部より少し外れた場所に位置するテトラスの村に、その工房はあった。
ヒューナ・ミトロンドと言う名の少女が一人で切り盛りしている錬金工房。
錬金術師に取り組みだして数ヶ月。以前イレギュラーズに手を貸して貰ったことで、なんとか軌道に乗ることができたようだ。少しずつ依頼も増えて、日々忙しく過ごしていた。
そんなある日、頭を悩ませる依頼が舞い込んだ。
「ムキリョークの治療薬、ねぇ……」
ヒューナは頭を悩ませる。
ムキリョークとはその名の通り感染者を無気力にしてしまう原因不明の奇病だ。
発症例は少ないものの、感染するととにかく動けなくなってしまい、その内に食事も取らなくなり衰弱して死に至る危険な病でもある。
「ママの残してくれた錬金ノートに研究過程のレシピはあるんだけど……完成までは行ってないみたいなのよね。うーん、どうしたものか」
依頼された以上、何かしらの回答をだしたい。母親が大事にしていた工房を守る為、ヒューナは何としてもムキリョークのワクチンを作ってみせると意気込んだ。
とはいえ。
「あーん! また失敗だ-!」
錬金釜の爆発に咳き込みながら、ヒューナは頭を抱えてみせる。
何かが足りない。けれど、その何かが今ひとつ掴めない。
「……こうなったら、またラーシアちゃん達に頼んでみようかな?」
日曜学校時代の友達ラーシアとイレギュラーズには、以前にも助けて貰ったことがある。混沌各地で様々な依頼を受けるイレギュラーズであれば、なにかヒントになりそうなことを知っているかもしれない。
またレアな素材の在処もわかれば手に入れてくれるような気がする……!
「なんだか頼り切りになって悪い気もするけど……もうこれしか手がないのっ!」
そう言いながら、ヒューナはラーシアへと手紙を送る。
そして、それは依頼となってローレットへと持ち込まれるのだった。
●
「そんなわけで、ムキリョークの治療薬を作る手助けをしてほしいそうなのです」
『星翡翠』ラーシア・フェリル(p3n000012)はそう言って依頼書を提出する。
「原因不明の奇病だし、確固たる治療薬が存在してないのは問題よね。
これの治療薬を作るとなると、なにか面白い発想とそれに繋がる素材が必要になると思うわ」
『黒耀の夢』リリィ=クロハネ(p3n000023)の言葉通り、今回の依頼はイレギュラーズの発想力が重要になるだろう。
ベースとなる素材はヒューナの母が残したノートに記されている。そこにプラスアルファの要素を加えて治療薬を完成させたいところだ。
「どんな思いつきでも良いですし、今までの冒険の過程で見つけた使えそうな素材でも良いと思います。色々試して見て治療薬を完成させましょう!」
意気込むラーシアに頷きながら、イレギュラーズは依頼書を受け取るのだった。
- ヒューナのアトリエ Lv2完了
- GM名澤見夜行
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年02月27日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●素材候補
依頼を受けたイレギュラーズとラーシア・フェリルがヒューナのアトリエを訪れると、待ちに待ったと言うようにヒューナが歓迎してくれた。
「ラーシアちゃん久しぶり~! 来てくれてよかったよー。それにそっちは……クロバさんにシフォリィさん、それにユーリエさんも! 今回から手伝ってくれる人達もよろしくね!」
「元気そうでよかったです。今回も、お手伝い頑張りますね」
以前にも手伝ったことのある三名とラーシアが再会の挨拶を交わし、また新しく知り合った面々も和やかに握手を交わした。
「早速だけど、ムキリョークに対する効果が見込めそうな素材って検討つくかな? 私の方でも幾つか候補をだしたのだけれど――」
ヒューナはアトリエに置いてある大きなホワイトボードに、様々な素材名を書き記していく。山のように書き出される素材に、ヒューナがよく調べたのだと言うことがわかる。
「そうだな、俺達もムキリョークについて考えていくつか素材の候補を考えて見たんだ。確認してもらえるか?」
『真実穿つ銀弾』クロバ=ザ=ホロウメア(p3p000145)の言葉にヒューナが「おっけー」と手で丸をつくる。
「それじゃ俺から。聞いた感じこの病は呪いみたいなものだ。
何もしたくない、でもきっと幸せだと思える事に出会えるのであれば――その切欠に成ればと思う」
無気力になるのは希望がない状態だからだとクロバは考える。
「だから俺は”幸福の種”を提案する。無(ゼロ)から始めるスタートってな」
それは以前に別の依頼で手に入れた、解呪の作用を持つ『幸運を呼ぶ種』だ。
「なるほど……聞いたことあるわねハッピーフラワーシード。錬金素材としての使用例は聞いたことないから、十分使える可能性がありそうね」
「ハッピーフラワーの種は私も候補にいれていました。
……この病、発生地域が絞れているなら、風土病の可能性も高いですし、その土地の書庫になんらかの断片情報がありそうな気もしているのですが――」
『蒼剣の弟子』ドラマ・ゲツク(p3p000172)が首を傾げなら考えると肯定するようにヒューナが頷く。
「発症例が少なすぎて、いまいち絞れませんが……ただ風土病という線は確かにありそうかも?」
「なるほど……であれば、別の地域の風土病に対する特効薬は参考になるかもしれませんね」
ドラマは幻想の地方集落で知った少し危険な薬草に心当たりがある。扱いは難しいが薬になることは確認されているので、レシピに採用できる可能性も高いだろう。また同時に知ることのできたマムシオンという蛇から作る精力剤も提案した。
「精力剤ということなら、俺もいくつかアテがある。練達の研究者は無気力とは無縁なようだからな。何か良い物をもっているかもしれないぜ」
そう言って、『『幻狼』灰色狼』ジェイク・太刀川(p3p001103)は口の端を吊り上げる。笑顔を見せているが、彼は今、廃滅病という死に至る病に罹患している。
命の刻限が迫る中、ジェイクは自らの痕跡を残すようにヒューナの治療薬完成を手伝うのだという。そう、それがジェイクの生きた証になるのだと。
「古くから使われる強壮剤は動物や植物の一部が使われますし、思いついたところだとアスタスという動物の尻尾が、魔除けにも使われていて良さそうな気がします」
『朝を呼ぶ剱』シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)が過去の依頼を思い出しながら言う。アスタスは独特の鳴き声を持つ亜人系のモンスターだ。前回は追い回したが、薬と交換で羽根をもらえるという話がある。ヒューナに良さそうな薬を見繕ってもらう約束をした。
「こころに元気がないなら、からだからから元気にしちゃいたいね。
というわけで、僕はタコを穫ります。元気を出すにはやっぱりタコ」
「タコ美味しいよねぇ……やっぱり母なる海から取れる海産物はそれだけで力が湧きそうだよー」
『海淵の呼び声』カタラァナ=コン=モスカ(p3p004390)の提案にヒューナが顔をニヤケさせる。どうやらヒューナは海産物が好物のようだった。考えて見ると、ムキリョークは最終的に食べることもやめてしまう病だ。何かを美味しく食べるというのは、それだけで活気に繋がるのかもしれない。
「私は魔力を高める素材を集めたいなって思ってる」
『希望の蒼穹』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)の提案にヒューナはポンと手を打った。
「なるほど魔力」
「うん。ムキリョークの原理はわからないけれど、私達ハーモニアが普段からマナプールで大気中の魔素を取り込んでいるように、魔力ってある程度人体に影響を及ぼすものだと思ってる。だから、その辺りを補強してみるのはどうかなって」
「確かに魔力的なアプローチ良いかも! 魔力の影響は多かれ少なかれ受けてるもんね」
納得するようにヒューナがうんうんと頷いた。
「最後は僕ですね。
無気力になるのを止めるには、進行を遅らせるだけではなく、やる気を出して頂く必要があるかと存じます。そのためには、感情を大きく揺らすことと目標を持たせることが重要だと思うのです」
『『幻狼』夢幻の奇術師』夜乃 幻(p3p000824)の言葉に「ほうほう」とヒューナが頷く。
「そこで提案したいのが惚れ薬で御座います」
「惚れ薬! なんだかちょっと危険な香りが……」
ヒューナの言葉に幻が笑って首を横に振るう。
「惚れ薬といってもそう危険なものでは御座いません。効果は一時間程度。愛を伝えるためのちょっとした勇気の一押しに使われるようなもので御座います」
「おー、それなら安心だね」
ホッと胸を撫で下ろしたヒューナに幻は続けてプレゼンする。
「恋は、その人の為になら、なんでもしたいと望ませるものです。
そして、恋は感情を大きく揺さぶり、時には喜びに体を打ち震わせ、時には悲しみのあまり死にたいとすら思わせる病気で御座います」
不意に、幻はジェイクを横目に見る。
廃滅病へと罹患した恋人たるジェイク。完治の方法はわかっているが、それは口で言うほど容易いものではない。彼のことを思えば、日々奇術師として冷静に振るまう幻だとしても、感情の高ぶりを抑えられる物ではないだろう。そう、それこそが恋というものの力に他ならないのだから。
「物は幻想で売られているラブフラワーで御座います。僕が奇術でそれを薬にしてしまう、なんていうのも面白いかもしれませんが、今回はヒューナ様の錬金術を楽しみにさせて頂きましょうか」
「うん、頑張りますよ私は!」
目的の素材が出そろった所で、一行は行動を開始する。チームを分けて手分けして素材を集めるのだ。
「クロバさん、私がいないからって幻想種の綺麗な方が居ても口説いちゃダメですよ?」
「うっ……しないって。そっちも気をつけてな」
そんな二人のやりとりをヒューナが興味深げに見つめる。
「あの二人……前は仲が良さそうって感じなだけだったけど……」
「ふふ、色々とあったみたいで今は関係もより良く進んでいるみたいですよ」
ラーシアが微笑んで答えると、ヒューナは「まぁ素敵」と顔を赤らめた。
「私はヒューナさんとラーシアさんと一緒ですね。
大丈夫です。ヒューナさんなら絶対。
この病を治す薬を作成できるって私は信じてます!」
『慈愛の英雄』ユーリエ・シュトラール(p3p001160)が微笑みヒューナを勇気づける。
「ありがと! よーし素材集めるぞー!」
アトリエを飛び出した一行は、いざ、素材集めの冒険へと出発した!
●素材集め
ユーリエ、そしてヒューナとラーシアは深緑は迷宮森林で素材を集めていた。
「必要なのはピニャラの実にコラナラの葉、それとカチドキゼリーね。どれも入手難度はそれほど難しくないからすぐ集められるかも?」
ヒューナが言うと、ラーシアがこくりと頷く。
「ユーリエさんが手伝ってくれるので、とても助かりますね。植物系の素材はなんとか集められそうですがカチドキゼリーの元になるカチドキスライムは倒すのが結構大変で……」
「なんだか集団で襲ってきそうな厄介そうなスライムですね」
ユーリエはどんなスライムなのだろうかと想像しながら歩く。そこでふと思い出したことがあった。
「そういえばこの近くにハーモニアの隠れ里の一つ、ミルキーガーデンがあるのですが、その里で取れるミルキーボールが、ほんわりと優しい甘さで、喉を潤して気分を軽くする効果があるんです」
「聞いたことあるかも。完成品の薬は液体を考えていたけれど、キャンディタイプの持続性のある形は結構いいかも……ミルキーボールを主体にするのは良いアイデアかもしれないね」
素材集めの時間の都合もある。でも行ってみる価値はありそうだった。
「そうと決まれば、急いで集めましょう! あ、でも怪我はしないように注意しようね」
「ええ、頑張りましょう!」
深緑組の三人は順調に素材集めを進められるようだった。
幻想各地を行き来するのはドラマ、シフォリィ、幻の三人だ。
「さぁさ街ゆく皆様、ご覧あれ。色とりどりの花々が美しく咲き誇り踊るフラワーショーの始まりで御座います」
恭しく礼をした幻が魅惑的に腕を振るって指を鳴らせば、街一面に花々が咲き誇る。
奇術による花屋の宣伝を引き替えにラブフラワーを譲って貰う約束をした幻は、自慢の奇術で街ゆく人を魅了する。思わず花を買いたくなってしまう奇術ショーは、十分すぎる程の宣伝効果があったと言えるだろう。
「この辺りは前に熊に襲われたんですよね……」
次いでアスタスの棲息する森へ来た一行はシフォリィのそんな言葉に内心ドキッとする。
野生の熊は手強い。イレギュラーズと言えど、そう易々と倒すことのできない相手だ。
「って、言ってる傍から目と目が合っちゃうんですよね――!」
「致し方ありません。大人しくして頂きましょう!」
野生の熊との遭遇戦を戦い抜きながら、森の奥へと進むとアスタスを見つけることができた。
「この間は追い回してすみません。ほら、傷薬ですよ」
と、シフォリィが傷薬を渡すと、代わりに抜け落ちた尾を三つくれる。シフォリィ達は和やかにお礼をすると、熊との再遭遇を回避しながら次なる目的地へと向かった。
「風土病の特効薬になる薬草は……っと此処にあるのがそうですね」
ドラマが図鑑に示された絵と照らし合わせながら、指を指す。
「あ、気をつけて下さい。風土病には特効薬ですが、それ以外の人には幻覚や幻聴が生じて依存性も非常に強い草ですから。しっかり密閉袋に入れて保管していきましょう」
「毒にも薬にもなるという典型で御座いますね。気をつけて保存致しましょう」
「あとは……マムシオンでしたっけ。どの辺りにいるんでしょう?」
シフォリィの問いかけに、ドラマは改めて図鑑を開いて、
「生息場所はこの近くのようですね。向かいましょう」
と、薬草をバッグに入れて立ち上がった。
場所は戻って深緑南部。
今、クロバは追い詰められていた。
「くっ……周辺の集落には種が残ってないっていうし、仕方なしに取りに来たらハッピフラワー大増殖してるじゃねぇか……! 春先を前になんで元気に咲き誇ってるんだよ!」
以前よりも数が多く、そしてなんだか丈夫そうになったハッピーフラワー達がクロバを警戒して助走する。
「数が多くなった分、逃げるスペースはなくなってる感じだな……好都合だ。一匹なんとしてでも捕まえて種を奪ってやるぜ……!」
両手に愛用のガンエッジを握りしめ、全身に力を入れて集中する。
クロバの殺意(やる気)を感じ取ったハッピフラワー達が、防衛反応でオプションを召喚した。
目の前に映るオレンジ色のオプションの群れ。飛び込めば、それはそれはすごく痛いトゲが乱射されるだろう。
「だがな、やるぜ俺は――別のところで頑張ってるヒューナと他の皆とあとシフォリィに無様な結果見せられねぇからなぁ!! うおおお!!!」
飛び込んだクロバとハッピフラワー達との死闘が始まった――!
「ぷはっ」
そんな死闘とは裏腹にカタラァナは海から顔をだし可愛く呼吸をした。海種であるからその必要はないのだが、なんとなくだ。
「ちゅう、ちゅう、たこさん、どこかいなっと」
コン=モスカへと里帰りして、そのまま海へとやってきて目当てのタコを探す。海の中に潜っては擬態し、岩場の影に隠れるタコを隈無く探す。
タコもタコで、見つかれば墨を吐いて必死に逃げる。海中での壮絶な捕物帖の始まりだ。
「あ、ナマコはっけーん。これも栄養あってすっごいよね。持っていこう」
なんだかカラフルなナマコも捕まえてカタラァナはご機嫌だ。
しかし絶望の青にも繋がるこの海は、そう平和なだけではいられないのだ。
タコを探すカタラァナの背後に忍び寄る不吉な影。不意の殺気を感じ取ったカタラァナが振り向くと、そこには餌を求めて今にも襲いかかろうとするメカジキシャークが凶悪な口を開けているのだった――
「――手ぶらじゃ帰れねえ。わりぃがその精力剤を譲ってほしい」
練達へと赴いたジェイクとアレクシアは、過去の依頼で関わった人物を頼りに、研究中の精力剤を入手する交渉を行っていた。
事情を説明すると、研究員はそう言うことならと了承するが、肝心の精力剤の在庫がないらしい。
材料さえあればすぐ作れると言うことだったので、二人はその材料を集めにいくことになった。
「すまんな、付いて来てもらって」
「気にすることはないよジェイク君。元々互いにサポートしあう組み合わせだったからね。それに練達(こっち)の材料集めは特に危険はなさそうだしね。手早く集めて精力剤を貰うとしようよ!」
まるでゲームのお使いクエストのように、二人は指定された場所へいってはいくつかの材料を入手していく。
アレクシアの言うようにほとんどが練達の街中で済ませられたことは幸いだろう。難なく材料を集め、精力剤を入手することができた。
二人は休む間もなく、鉄帝へと向かい銀の森へと向かう。
「スキルを駆使して情報を集めてみたけど、ここにはマナタケって言う魔力を溜め込む性質のキノコがあるみたいだね。結構なレア素材になりそうだからぜひ穫りたいところだけど……どうやら魔物達の住処でもありそうだ」
「なら、手早く片してしまおうか。なに、鼻に突く危険性はそう多くはない。すぐに終わらせて見せるぜ!」
二人は武器を構えて、迫る魔物達の対処を始めた。
こうして、様々な冒険を経て――一行はヒューナのアトリエへと帰ってくるのだった。
●完成品は
カタラァナの歌に合わせてヒューナが考え抜いたレシピに沿って材料を投入していく。
それをカタラァナは興味深げに見つめている。なんとも理不尽な手順で作っているのに、これが様々なものに変わるというのだから、カタラァナにしてみれば御伽噺のようだった。
「最後は蓋をして……」
祈るように蓋をして様子を見守れば、軽い爆発音とともに煙があがる。
蓋を取り出して中を見れば――
「できた! ミルキー味の特製ムキリョーク減衰キャンディ!」
「おぉー」と拍手と共にイレギュラーズが喜びを表す。
「ミルキーボールの蜜をベースに、皆が集めてくれた素材の効果を出来るだけ凝縮して飴にしてみたの。即効性の効果はないけれど、これを舐めていれば徐々にやる気が出てくるはず!」
強すぎる効果の物は、別の素材を使って引き算で効果を薄めつつ調整したそうだ。なるほど一年前に比べて錬金術の腕は上がっているようだった。
「すぐに効果を見たいけど……もう一つ作らないと!」
そういってヒューナは再度錬金釜に材料を入れていく。何が出来るのかと様子を見ていたイレギュラーズはできた完成品に驚いた。
「これは……お弁当?」
タコさんの入ったお弁当が弁当箱と共に完成している様は錬金術の不思議さを現しているが、それはともかくなぜお弁当と首を傾げるとヒューナはこう言った。
「やる気が戻って目標が出来たとき、やっぱり身体を動かすエネルギーが必要だと思ったの。それにはやっぱり美味しいお弁当が一番かなって。タコやナマコも一杯もらったし綺麗な魔力が溜まったキノコもあったし、コレが一番かなって」
「うーにっ! もあるしね」
「なるほど、道理だ。よくやったな」
ジェイクが褒めるとヒューナは照れくさそうに笑った。
「一年前とは見違えたな。
どうだ? 自分のやり方、見つけられたかい?」
クロバの問いかけにヒューナは考えて答える。
「どうだろう? まだママのレシピに頼り切りだし、工房の経営も余裕があるわけじゃないし……自分らしくできてるかはちょっとわからないかな?」
「そうか。なら――そうだな、まだまだ芽吹きは先ってところか」
「精進します。えへ」
和やかに笑うヒューナは、しかしどこか自信を持っていた。
その後、完成した飴とお弁当をムキリョーク患者に食べて貰うと、口にした患者全てが無気力症状の改善を示したという。
即効性の特効薬というわけにはならなかったが、未だかつて改善を齎す薬はなかったことから、ムキリョーク撲滅の一歩を踏み出せたようだった。
十分な結果をだせたことで、ヒューナのアトリエはこれまで以上に繁盛していくに違いないと、イレギュラーズは若き錬金術師の成長を期待し、ローレットへと帰るのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
大変遅くなりまして申し訳ありませんでした。
依頼お疲れ様です。
MVPはカタラァナさんに送ります。おめでとうございます。
素敵なプレイングと共に、ご参加頂きありがとう御座いました。
GMコメント
こんにちは。澤見夜行(さわみ・やこう)です。
深緑の新米錬金術からの二度目のヘルプです。
治療薬完成に繋がるアイデアと素材を提供してあげましょう。
●依頼達成条件
ムキリョークの治療薬を完成させる
■オプション
ヒューナに二人以上(ラーシア含む)付き添う
●情報確度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は起きません。
●依頼について
ムキリョークは原因不明の奇病です。
どうすれば治るのか、手探り状態がスタートラインです。
進行を遅らせる程度の効果をもつベースの薬は作れていますが、そこに手を加えていき治療薬を完成させるのが目的です。
必要なのはとにかく無気力状態になって動けなくなってしまうムキリョークを、どうすれば治せるかというアイデアと、そのアイデアを実現できるような素材が必要です。
イレギュラーズはアイデアと素材の在処を宣言し、集めに行ってください。
但し、どのような素材もきっと一筋縄ではいかない場所にあり、戦闘もあったりするので注意してください。
●ベース薬の素材について
ヒューナが担当します。
深緑の迷宮森林での素材集めとなります。魔物が多めで一人では危険でしょう。
手助けするとクオリティの高い素材が手に入るかもしれません。
●同行NPC
ラーシア・フェリルが同行します。
友達の手助け、また故郷からの依頼ということで張り切っています。
特に指示がない場合、ヒューナと共にベース素材を集めに行きます。
●戦闘地域
混沌各地になります。
時刻は朝から夜。様々な天候の元で行われるでしょう。
戦闘は、障害物はなく視界も良好。自由に立ち回れます。
そのほか、有用そうなスキルやアイテムには色々なボーナスがつきます。
皆様の素晴らしいプレイングをお待ちしています。
宜しくお願いいたします。
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