PandoraPartyProject

シナリオ詳細

セークレートゥムの翼

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 鮮やかなる緑は曇る事無く白に粧い頬を赤くする。
 咲き綻ぶ春には遠いが、寝ぼけ眼で美しき空を見上げる花々は冬より春へ向けての歩みを始める事だろう。
 勢いよく踏み締めて、苛立ったように息を吐いた少女は移ろう季節を憂うかのように眉を寄せて若芽を握る。
「あーあ……」
 気怠げな彼女は『ゲート』があったであろう場所を見詰めていた。
 傍らには唾液を垂らし翼を生やした獅子が少女を眺めている。モンスターが少女を今すぐにでも喰らうてやろうと狙っているようにも見える。
 しかし、少女は焦る事無く獅子を横目で見た後にまたも苛立った様に若芽を握った。
「妖精だか精霊だか知らないけどさぁ、綺麗なおべべ来て、可愛い顔して『助けてー』っていや、助けが来るってのも気に入らないよね」
 ざくざくと音を立てて雪を蹴る。
 グルル――
 獣の声がしてから少女は振り返った。自身の翼に絡みついた妄執を指先で掴み上げてぽい、と投げ捨てる。
 グルル――
 獣は何かを語り掛けているのだろう。少女は「うるっさいなあ」と小さくぼやいてから、獣へと言った。
「は? サバンナでも同じこと言えんのかよ」


 アルティオ=エルムのアンテローゼ大聖堂。その場所で神妙な顔をしたのは『迷宮森林警備隊長』ルドラ・ヘス(p3n000085)と『灰薔薇の司教』フランツェル・ロア・ヘクセンハウス(p3n000115)であった。
「突然呼び出して済まない。『小さな精霊種』ストレリチアを知っているだろうか?」
 ルドラは御伽噺だと持って居た、と口にしていたが小さな精霊種――妖精とも称される彼女は『故郷』からゲートを潜ってたびたびアルティオ=エルムの迷宮森林を訪れているそうだ。
 彼女だけではない。小さな妖精たちがこっそりと出てきては霊薬の素材を集めて回っているらしい。
「ゲートを通らないと故郷に戻れない……そうなのだけど、逆にそのゲートを壊して回っているモンスターの姿も見られるようになったわ」
「ああ。突如として迷宮森林ではあまり見ないモンスターの姿が見られたことでこちらも対策に追われているのだが……」
 言葉を濁したルドラにフランツェルは頷いた。
 どうやらそうした『ゲート』の周りで確認されたモンスターと類似したモンスターを連れ歩く飛行種の少女の姿が見られているらしい。
「その飛行種の少女、なんだけど、そもそも此処は幻想種の森でしょう?
 私のような人間種(イレギュラー)はままあることではあるけれど、それでも目立つ存在である事には違いないわ」
「ああ、森で幻想種でないとなれば私達も把握はしている筈だ。
 しかし、彼女の姿を見た幻想種も――それからフランツェル司教も見た事がないという」
 フランツェルは頷き、何所か悩まし気な表情を見せる。
 ルドラの云う通り幻想種達や森に住まう者が知らないとなれば『外』の人間であるとも思われる。
『外』の人間がモンスターと共に居ると言うのが問題だ。ザントマンの一件からというものの『外』に対して警戒する幻想種も少なくはない。
「私達が声をかけても怪しまれる。済まないが、飛行種の少女について調査してはくれないだろうか」
「それから、ゲートを壊されるのも困ってしまうし……モンスターの姿が見られたら対策もお願いね」
 水色の髪の飛行種。果たして彼女は誰なのだろうか――

GMコメント

 夏あかねです。
 謎の飛行種。

●成功条件
 モンスターの撃退
 謎の飛行種の情報収集

●モンスター:2
 翼の生えた獅子。それなりの大きさです。魔力に反応して魔力を食べます。おいしい。
 神秘攻撃を半減させ、物理攻撃に対してのみ【棘】。
 防御面が厚いからか攻撃面にはあまり優れません。
 爪と牙を持って居ます。小さな少女が見た場合とても怖い存在でしょう。

●謎の飛行種
 目撃情報はモンスターを連れており、水色の髪に黒い瞳、茶色い翼に何か『茨』が絡みついた少女だそうです。
 常に怠そうな雰囲気で迷っているだとか、困っているようにも見えません。
 フランツェルとルドラ曰く『危険な相手な可能性もある為に気を付けろ』とのことです。
 遠目から見た限りは普通の少女ですが、どこか巧妙に隠した『秘密』があるのかも。
 尚、モンスターは彼女に従い、コミュニケーションが取れるのだとか……。

●アルティオ=エルム
 迷宮森林。スタート地点はアンテローゼ大聖堂。ある意味セーブポイントです。
 神秘のゲートらしき地点は分かっていますがアンテローゼ大聖堂~神秘のゲートの間に少女は現れると想定されます。
 ゲートは現在とりあえず通行止め。モンスターの来襲に備えているそうです。
 モンスターに壊されるとちょっぴり精霊種が困ってしまうので護ってあげてください。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
 誰なのか分からない。それも困っちゃう話なのです。

  • セークレートゥムの翼完了
  • GM名夏あかね
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年02月20日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

クロバ=ザ=ホロウメア(p3p000145)
讐焔宿す死神
奥州 一悟(p3p000194)
彷徨う駿馬
サイズ(p3p000319)
妖精の守り手
アリシス・シーアルジア(p3p000397)
黒のミスティリオン
ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)
儚花姫
ウィリアム・M・アステリズム(p3p001243)
神威の星
ルルリア・ルルフェルルーク(p3p001317)
光の槍
メルナ(p3p002292)
揺らぐ青の月

リプレイ


 静謐溢るる大樹ファルカウを望む聖堂アンテローゼ。その場所を起点とし『妖精のゲート』を破壊して回っているという少女と獣を探すべくイレギュラーズ達は森林を行く。
 迷宮森林にま迷い込む旅人たちも多い。幻想種達にとっては親しんだ庭であり、家であり――自身らを守護してくれる場所であるそれは『部外者』にとっては脅威に他ならないのだ。
「迷い込んだ訳でもないなら、招かれざる来訪者という所でしょうね……」
『黒のミスティリオン』アリシス・シーアルジア(p3p000397)は悩まし気にそう呟いた。迷い込んでいるというならば幻想種達の目撃情報である『妖精のゲートを壊して回っている』『有翼の獅子を連れ歩いている』という事象は出て来る筈もない。
「聞いた限りの容姿は若い普通の少女のようですが、危険性の有無に外見など大した意味がある筈もない。傍にいるという……有翼の獅子は、様子からして連れという所ですか」
「うーん、妖精は襲われるって話ですし、少女が獣に襲われていないところを見ると獣をテイムしているのか特殊なスキルをもっているかのどちらかでしょうね!」
 首を傾げた『暗躍する義賊さん』ルルリア・ルルフェルルーク(p3p001317) にアリシスは重く頷いた。何にせよ、彼女の情報を持ち帰る事が深緑からのオーダーなのだ。
「妖精たちの道を壊して回るというだけでも随分と不審な上に、それが子の迷宮森林を『自由に歩き回っている』……不可解な行動の理由問い詰めていくとしますか」
 迷宮森林に迷い込んだならば『辿り着かないし出れない』というのが定石だ。そうなれば旅人たちは幻想種にヘルプを求めるであろうし、妖精のゲートをわざわざ壊して回らない――そして、モンスターを連れ歩かないものだ。『銀弾よ廃滅を穿て』クロバ=ザ=ホロウメア(p3p000145)が呟けば、『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)は以前、彼がともに行動したアルヴィオンの妖精『ストレリチア』がモンスターに追い回されていた事にも関連はあるのだろうと悩まし気に呟く。
「……ほったらかしにしてたら被害は増え続けるだろうし……」
「ああ。その女の子にとっても『理由』はあるだろうけど被害が生まれるのは見過ごせないな」
 敵性であるかも分からないならば相手の都合も聞かずに手を下すことを『彷徨う駿馬』奥州 一悟(p3p000194)は好まない。年端もいかぬ少女と言えども、警戒は解かずに相手の手の内を出来る限り知ることが定石であろうか。
「こんなところで彼女はいったい何をしているのかしら……?
 それにストレリチア以外の妖精さんも帰れなくなって困っちゃうわよね。なんとかしてあげないと!」
『お道化て咲いた薔薇人形』ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)は拳に力を込めてそう言った。魔獣を斃すのが第一ではあるがそれと少女の関係性にも気を配りたいと『希望の聖星』ウィリアム・M・アステリズム(p3p001243)は呟いた。
「ゲートに行けばモンスターに会えるだろうが、モンスターと少女が友達だといわれてしまえば……?」
「うん。それは悩ましいよね。情報だけならば敵に思えるんだけれど……けど……。
 詳しいことは何も分からないし決めつけもよくない、かな。お兄ちゃんもきっとそう考えるはず……!」
 まずは現場へ向かおうと『青の十六夜』メルナ(p3p002292)は歩き出す。美しき白き翼は人工物を思わせる。そこに存在する有翼の獅子は妖精たちのゲートを見下ろして喉を鳴らしていた。


 ゲートを破壊させぬ様にとクロバはまっすぐに滑り込む。魔獣の出方が分からない以上、『撃破』してしまわぬ様にと気を配る。
 ぐるると喉を鳴らし突進戦とする魔獣を受け止めた一悟はこつこつと削らんと翼をもつ獣を相手取る。二体の獣の狙いは妖精郷へのゲートであるらしい。
 クロバは自身の身体と魔力を極限まで高めていく。それは捨て身と呼ぶにも相応しい。自身の体の消耗など気にせずに全火力を集中させた爆炎の傍より剣戟が飛び込み続ける。
 ぐるると喉を鳴らし翼を開いた獅子を切り裂くようにメルナが剣を握りしめる。殺さず生かすため、無垢なる正義の焔を纏わせた霊樹の大剣をメルナは振り上げる。
 漆黒魔銃テンペスタを手に少女の影を探すルルリアは何かの気配を鼻先感じて顔を上げた。放たれた不可視の悪意が周囲へと広がり、それに合わせてウィリアムは創造した蒼き心剣を振り上げる。
 強き意思で獅子を切り裂いたその向こう、小鳥が彼へと告げたのは何者かの乱入であった。
「やーっぱり、居るじゃん。おっさんの言う通りだな」
 木の上より顔を覗かせたのは件の飛行種であった。空色の髪に、何かを面倒がるような素振りを見せた彼女はイレギュラーズを見まわしてから盛大なため息を吐く。
「この森は、森の主であるアルティオ・エルムの民以外が気軽に出歩く場所ではありませんよ」
 窘めるアリシスの言葉に少女は頷く。それは承知の上のようだ。何処まで少女と会話を成立できるかが情報収集の鍵であることを皆は理解している。
「ご機嫌よう。この子の飼い主かしら?
 お話しの時間よ。貴方はちゃんと会話してくれると嬉しいわ」
 ヴァイスが朗らかに声かければ、先ほどまで牙を剥き出しにしていた獅子がつられて顔を上げ、尾をゆらりと揺らす。
「じゃ、武器下げてくんない? 危なっかしくって話せないじゃん。
 あたしも、そこのバカ猫にお座りさせるから」
 指さされたのば獅子である。モンスターを猫と呼んだ彼女にクロバはやけに堂々とした様子だと瞬いた。
 ひとまずは言われた通りにしようと武器を下げたルルリアは緊張したようにその様子を眺める。飛行種であろう少女が降り立ったのを確認して、一悟は一歩踏み出した。
「オレ、奥州一悟。君たち名前は?」
 モンスターを警戒した儘、一悟は少女を見遣る。モンスターは『傍らの彼女の様子を眺めた後』ゆっくりとその傍らに座った。
(……彼女に従ってるように見える)
 ウィリアムがまじまじとその様子を眺める。クロバはモンスターから一気に敵性が失せた様子にも注意を配りながら少女と獅子を見比べた。
「まるで飼い猫だな。……よく飼いならされている」
「ええ。それに彼女に絡んだ茨――あれも装備であるか、彼女の能力か。旅人であるかあるいは――」
 アリシスの言葉にクロバは少女をじいと見た。これだけの武装したイレギュラーズを前にしても怯えたそぶりも見せぬ彼女は『可愛い少女』ではない。
 一瞥し、イレギュラーズが攻勢に転じないことを確認してから少女はゆっくりと口を開いた。
「『ブルーベル』、あたしの名前。そう呼ばれるの好きじゃないから『Bちゃん』でいいよ。
 で? お前ら、また『妖精』だか何だか知らないけどそういうのの味方なわけ?」
 苛立ったようにそう言ったブルーベルの視線はサイズへと向いていた。ストレリチアが自身らの仲間と誤認した彼の体躯はギフトにより小さなフェアリー体となっている。
(やっぱり妖精が嫌いなのか……?)
 妖精が嫌いだからゲートを壊して回っているという子供染みた理由であろうかとサイズが警戒した儘にブルーベルを見る。どうやら彼方から攻撃してくる様子もないらしい。
「そ、そこのキュートな獅子のそばにいる子、えっと、Bちゃんさんでいいですか?
 最近このあたりでゲートがこわされているらしーのですが何か知りませんかっ? ほらっ、ルルも狐さんです! そこの獅子さんと同じ? ですよ? 獣仲間のルルに教えてくださいっ」
「知ってるよ。あと、この馬鹿猫はヤバいおっさんがくれただけ――けど、うん。獣仲間、くふ、面白いじゃん。知ってる。知ってるも知ってる。あたしが壊せって言ってるからね」
 ルルリアはぱちり、と瞬く。どうやら対話をする気はあるのだろう。ブルーベルが穏やかな調子で笑って話すそれは『普通の少女と何ら変わりない』のだ。
「じゃあ、『B』。ゲートを壊そうとしてるんだろ? どうして壊す? 理由を聞かせてくれ。
 例えば……門が使う膨大なエネルギーのせいで君の世界が砂漠化しているとか?」
 一悟の言葉にブルーベルは一瞬きょとんとした後、「くふ」と笑みを漏らした。唇を釣り上げて、おかしい事を言われたかのように獅子の体をばしりと叩く。
「はー? すっげーメルヘンじゃん。いーね、それ今度から使う! あたしの世界砂漠化してる!」
「嘘……だな」
 クロバが溜息を洩らせばブルーベルは「まあね」と悪気もなく行った。周囲の精霊や獣へとこっそりとコンタクトをとるアリシスと一悟――どちらも『少女を恐れている』様子を感じてならない。
「……精霊種、あなたが妖精と呼ぶ子たちが困っていても壊すの?」
「まーね。そもそも、あたし、アイツら気に入らないんだよね。
 小さくてかわいいおべべ着て助けてって言えば救ってもらえるんでしょ? サイキョーじゃん」
 ふい、と顔をそらしたブルーベルにウィリアムは彼女の手首や首元に絡んだ茨がその肌を傷つけていることに気づく。
「よければ、回復を施そうか。俺達も冒険者だ。無理とは言わないが――」
「やってみれば分かるよ」
 自身の事だというのにおざなりなブルーベルにウィリアムはそっと回復を施す――が、すぐにその傷は消えない痕のように再生した。アリシスはまじまじとその茨と彼女の様子を見ていた。
(跡が消えない……? 茨に何らかの神秘的作用があるのか――それとも……?)
 じっくりとそれを眺めたアリシスは何となく悟った。そして、一歩足を引く。それはクロバも同じだ。モンスターがおとなしくしている様子、そしてアリシスが頷いたその意味を理解したのだった。


「まさか、彼女は」
「ええ。しかし、ここまで友好的ならば話を聞いてみるのもよいでしょう。
 不躾でしょうけれど、聞かせてください。貴女は――『飛行種』なのですか?」
 ウィリアムの回復を受け付けず、モンスターを傅かせる彼女にアリシスが問いかける。愛らしい風貌であれど警戒を解くわけにはいかぬとしたクロバとアリシスを見守ってヴァイスは「旅人かもしれないし、ね? 教えてくれるかしら」と口を開いた。
「――――っくりしたァ! ああ、そうだね。うん、まあ、人は見かけによらないからね」
 聞かれるとは思っていなかったという様にブルーベル入ってから翼を開き、枝へと腰かけた。上空へと離れた彼女はイレギュラーズの傍に立つことは得策ではないとでも考えたのだろうか。
「で? 恐れ入るんだけどあたしのことは何に見える?」
「……妖精が嫌いな少女だ。俺はアルヴィオンの妖精のサイズ。だから、気になる」
 サイズがそう言えばブルーベルは「あいつ食っていいよ」と魔獣をサイズへとけしかける。どうやら、アルヴィオンの妖精が嫌いなのは本当であることが分かる。突然、攻勢に転じた魔獣を受け止めてサイズが全力で耐えるその中で、ブルーベルは「うーん」と悩まし気に声を漏らしてから口を開く。
「デモニア」
「―――え?」
 メルナが顔を上げ、サイズへと群がる獅子を食い止めんと攻撃を放ったヴァイスのその少女をまじまじと見る。
「魔種(デモニア)……?」
「そう言ってんじゃん。あたしは、まあ、可愛いからね。それらしくない顔してふらついてりゃ『飛行種の少女』だよ」
 ブルーベルが笑う。ウィリアムは彼女が敵であると認識した。絡みつく茨が彼女を蝕み、赤き血潮を流すがそうであることを是とするそれが体の一部だというならば『旅人』でないならば『魔種』と言うしかないではないか。
「あ、あたし、今日は戦う気ないんだよね。めんどうじゃん。寝てたいし。猫とでも遊んでなよ。見ててあげるから、さぁ」
 おざなりな態度の彼女がデモニアだというならば、その性質は分かり易い。彼女は『怠惰』――そして、自身が『見ている』と言ったところから相当の実力者であることが伺えた。
 満を持して『デモニアの手から離れて庇護もなくなったモンスター』はイレギュラーズへと襲い来る。詰まる所、ブルーベルはモンスターには「連れて帰ってほしいならあいつらを倒してゲート壊しなよ」という態度を見せたわけである。
 ぐるる、と喉を鳴らした獅子に猫のようだとクロバは再度感じる。獅子の意識はブルーベルへ。しかし、冷たい視線を投げかけた彼女はため息を漏らしてから自身に体んだ茨を地面へと投げ捨てた。
「甘えたら妖精と一緒だろーが。サバンナでも同じこと言えんの?」
 ゆらりと揺らぎ、それは鎖のように獅子へと絡みつく。藻掻いた獅子は茨より解放されてから一目散にサイズに、そしてそれを防がんとした一悟へと飛びついていく。
 癒しを送ったルルリアと共に、サイズをサポートするウィリアムはブルーベルの動向が気がかりと顔を上げた。
「魔種として『嫌だから』ゲートを壊して回っている。そういう存在だと認識するぞ」
「いーんじゃない。あたしもそれを否定しない。まあ、これからは故郷が砂の海に化すから妖精が嫌いって話にするけど」
 やけに饒舌な彼女にサイズは妖精嫌いは他の理由があるのだろうとぼんやりとも考えた。ストレリチアを相手にしてもブルーベルは苛立ち攻撃を繰り返すのだろうとも思わせる。
 植物たちの怯えがブルーベルが遠ざかった事で薄れたことで彼女が魔種であると宣言した言葉が真実であることをヴァイスはより確信する。
(獅子はこちらとお話しする気はないみたいね。どれだけ話しかけたって、『B』という子が怖い事しか分からないわ……)
 ヴァイスは自身と対話をせずとにかくイレギュラーズを倒してゲートを破壊するという目的に意識を向けている獅子への攻撃をやめることはない。
 モンスターの撃退が為、すべての力をぶつけるイレギュラーズをブルーベルは見ているだけであった。魔種というからには横やりを入れて来るかと思いきや、彼女はそれをエンタメのように見ており、そして『怠惰』という性質を体現しているのだろう。
 のんびりと過ごしている彼女は獅子が怯えたように顔を上げたそれにひらひらと手を振るだけだ。
「あーあ、お前。負けるの。あーあ。ま、いいんじゃない? おっさんも試作品みたいなもんだつってたし」
「その、『おっさん』って誰の事?」
 メルナが剣を構えたままブルーベルへと問いかければ彼女は「あー」と呟いてから空を見る。何かを考える仕草をした後に枝へ腰かけていた彼女は「まあ、知り合いのおっさんだよ」とそう言った。
「良いこと教えると、その『おっさん』。相当キモ……あー、いや、ヤバいから気を付けてよね。
 まあ、普通のアルティオ=エルムの観光をしてるだけの冒険者なら気を付けることもないか」
 ずん、と斃れるモンスターを眺めてから、ブルーベルは「あ、死んだ」と手を叩く。
「あんまり知らないけど流石だね。んじゃ、猫も死んだから、あたし、帰るわ。もう会わないね」
「それローレットでも同じこといえんの? です。 ……なんとなく言ってみたかっただけですよっ?」
 獅子に「サバンナでも同じこと言えんの?」と問いかけていたブルーベルを真似たのであろうルルリア。ブルーベルはその言葉にぴたりと拍手を止め、イレギュラーズをまじまじと見つめた。
「『ローレット』? くふ、あー、なるほど! 冒険者じゃなくてローレットか。
 なら話は違うや。『また会おう』。うんうん、猫嗾けるのも面倒だったけど、いいこと知れたじゃん」
「『いいこと』?」
 クロバが問いかければブルーベルは愛らしく笑った。「おっさんと可愛い主サンへのお土産」と楽し気に声を弾ませて。
 くふくふ、と特徴的な笑みを零して、ブルーベルが姿を消す。それを見送ってから、ウィリアムは彼女は斃さねばならない存在であるのだと、強く認識した。
 どこかへと通じるという妖精の門――そして、それを狙う魔種。
 今、アルヴィオンの妖精たちに思惑絡む魔の手が迫ってきていることは確かなようだ。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

サイズ(p3p000319) [重傷]
妖精の守り手

あとがき

 お疲れ様でしたイレギュラーズ!
 何者か分からぬ飛行種の少女、その正体は魔種『ブルーベル』でございました。

 これから彼女とは何やら関わることも多くなりそうです。
 それではまた、お会いしましょう!

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