シナリオ詳細
<Despair Blue>果てよりの手紙
オープニング
●父からの手紙
『息子よ。
思えば俺はお前に対し、父親らしいものは何も残してやれなかった。
だが、俺が何も残さぬのならば、お前は俺から奪えばいい。何故なら俺は海賊で、お前は海賊の息子だからだ。
だからお前が俺の兄弟をぶん殴ったと聞いた時、俺は腸が煮えくり返るような怒りと共に、まるで前の俺がそうしただろうように、遂にお前もそこまで育ってくれたかという喜びさえ感じたことを憶えている。
無論、だからと言って俺はお前に、俺の邪魔などさせやしない。海賊は海の上では自由だが、船長には従うものなのだ。お前が俺に歯向かうならば、鮫の餌にしてやるのが船長の責務。それはお前の仲間たちとて同じことだ。
が……見込みある者にはチャンスを与えることもまた、やはり船長の義務だろう。先日、お前たちローレットの特異運命座標らが『海洋』の奴らとともに、『絶望の青』に向けた航海を始めたという情報を耳にした。ならば俺とお前たちとは、既に一蓮托生の運命共同体だと言える。
息子よ。
もしもお前が死すら恐れぬ、真に勇敢な男に育ったと言うのであれば、同封の海図に示した海域まで来い。俺はお前に、耳寄りな話を聞かせてやろう。
だが、そうでないならば……青二才に、『絶望の青』に挑む資格はない。『海洋』の船団ともども逃げ帰ることだ。その時は、この手紙こそがお前に残す最後のものになるだろう』
●海洋貴族からの依頼
「流石は海賊団の船長と言ったところでしょうか、『運命の手紙瓶』なんてレア物を持っているなんて」
ひとしきり妙なところに感心した後で、『海洋』――ネオフロンティア海洋王国の『貴族派筆頭』ソルベ・ジェラート・コンテュール(p3n000075)は、あたかも今思い出したかのように特異運命座標たちに向き直ってみせた。
「この小瓶、中に手紙を入れて海に流すとまるで運命に導かれたかのように人手を渡って必ず宛先に届くとされる優れた魔法道具なのですが……実は私の部下の中に、ローレット宛のそれを拾った者がいましてね」
そう言うと彼は一度は広げた手紙を元通りに瓶に詰め直し、『蛸髭 Jr.』プラック・クラケーン(p3p006804)へと渡す。
「ご覧の通り、『絶望の青』へのお誘いですよ、プラック君。貴方のお父様――今や反転して魔種となってしまった、蛸髭海賊団の『蛸髭』オクト・クラケーン(p3p000658)船長からのね」
手紙を文字通り読めば、オクトは特異運命座標らに何かを伝えるために、『絶望の青』近辺の海域に招いているようだった。
だが彼は、かつて魔種として現れた義兄弟、スクイッド・クラケーンとの戦いの最中、彼の「また共に『絶望の青』の先を目指そう」という原罪の呼び声に応えることでローレットと袂を分かった男だ。オクトが、まるで抜け駆けするかのように『絶望の青』を目指そうという『海洋王国大号令』のことを疎ましく考えその協力者たちを罠にかけようとしているのではないなどと、誰が断言できるだろうか?
「正直、私としてもこの招待にどう応じるのが良いのか、決めあぐねているところはあるのですが……」
ソルベはお手上げのポーズをしてみせた。
何故なら怪しさを感じる部分には事欠かないのだ……何故手紙に“耳寄りな話”とやらの内容を書かなかったのか。手紙ではなく会って話す必要があるのだとしても、どうして向こうから訪ねてこなかったのか。『死すら恐れぬ勇敢な男なら』という言葉は、『来れば死ぬかもしれない』という危険を仄めかすものではないのか……。
オクトが有益な情報を提供してくれると信じる理由が乏しい一方で、罠だと判断する理由なら幾らでもあった。そればかりか軍の先遣隊による偵察によると、オクトのものと思しき海賊船の周囲には、巨大な触手の影が幾つも浮かび上がっていたというのだ……もしその触手に船を搦め取られてしまえば、最悪で全滅さえありうることだ。
「まあ、こうやって判断しかねる時には特異運命座標に判断を仰げばいいというのが、最近解ってきた経験則なわけですよ。船は用意しますから、その後の判断はお任せしましょう」
ソルベはしれっと言いのけはしたが、それが強ち間違いでもないような気もするから厄介なのだった。何故なら特異運命座標のパンドラ収集は、全てが世界を救う鍵。たとえ君たちがどちらの選択をしても、世界は少しだけ滅びから遠ざかるように動くことだろう……もちろん選択肢次第では、その多寡くらいはあるかもしれないけれど。
- <Despair Blue>果てよりの手紙完了
- GM名るう
- 種別EX
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2020年02月09日 22時15分
- 参加人数10/10人
- 相談7日
- 参加費150RC
参加者 : 10 人
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参加者一覧(10人)
リプレイ
●嵐の前の……
珍しく晴れ上がった海原の先に、海賊船は浮いていた。海賊旗にしてはひょうきんな蛸の顔の描かれているはずの帆を閉じて、海中深くにまで錨を下ろし。晴天の割には高めのうねりに翻弄されながら、船は揺り籠の中の赤子のようにすやすやと寝息を立てている。
甲板にお目当ての人物がいるのかまでは、まだ見えたという報告はない。けれどもそれがオクトの船で間違いないことは、『蛸髭 Jr.』プラック・クラケーン(p3p006804)は見紛うはずもない――船は幼き記憶にあるものよりも、汚れ、傷ついていたようには見えたけれども。
あまりにも何事もない航海だった。危惧した狂王藻(タイラント・サルガッスム)も遠巻きに見かけただけで、こちらに気付いた様子はない。
海中に潜んでいるはずの巨大な触手も、暴れ出すことなく静寂を保ち続けている……あたかも、主君の客人にかしずく従者のように――しかし。
それらが幸先の良さの証であるなんて楽観に浸れる者なんて、この平穏な海を進む特異運命座標たちの中にはいなかった。
(むしろ、最悪だ……)
『紅鷹丸』改を操る『鳥種勇者』カイト・シャルラハ(p3p000684)の羽根が、突き刺すような冷たい海風にもかかわらずべったりと脂汗に濡れる。
(あれだけワケありげに脅しておいて、何もありませんでした、なんて話があるか?
ああ、“確実に”あのタコは何かを仕掛けてくるつもりなんだろう。俺たちとの“交渉”の中でな!)
それでもカイトの風読みの羽根は、この晴天がいましばらく続くであろうことを感じ取っていた。そればかりか『求婚実績(ヴェルス)』夢見 ルル家(p3p000016)がどれほど敵意察知感覚を広げても、こちらを狙わんと目論む存在が、一行を妨害せんとしている気配は感じられない――いや。
その後一度だけ、狂王種と化した巨大イワシが、海上に浮かぶ“餌”に惹かれてやって来たことがあった。けれども起こったことはそれだけで、狂王イワシは一度海中で暴れた後に、どこか深いところへと沈んでゆく……その一部始終はルル家には詳しいことまでは判らなかったが、『五行絶影』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)は船の下に控えさせた魚のファミリアの目を通じ、海上からは細波に隠されていた全てを目の当たりにしてしまった――オクトの船の方角よりより巨大な触手が伸びてきて、狂王イワシを喰らい深淵へと引きずり込んだ様子を。
汰磨羈がその時見たものを包み隠さず語ってみせたなら、冒険の予感に綻んでいたはずの『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)の口許さえもが、真剣に噤まれてしまわねばならなかった。
「あの触手……ただの狂王種には思えないね」
あんな蛇のような触手など、ゼフィラの知識の中には存在しない。その上で、今のが狂王種同士の命の営みなどではないことは明らかに思える……すなわち、この“触手”はオクトの明確な意思の下、船が目的地に辿り着くまでの危険を排除してくれているのだろう!
「ケッ、あの野郎。俺らを、アンタに守られなきゃお使いもできねえ腰抜けだとでも思ってやがるのか!」
『盗賊ゴブリン』キドー(p3p000244)は憤慨し……それから自らの怒りの中にとうに忘れ去ったと信じていた感傷があることに気付いて、どことなく半泣きを思わせる引き攣った笑いを緑色の顔に浮かべた。
(『盗賊』『山賊』『海賊』の『三賊』は、あの時、確かに解散したはずなんだ……だが、プラックの野郎――ああ、いまだにあれほどのクソ親父をぶん殴ってやって改心させてやろうなんていう、妬ましいほど真っ直ぐな情熱に満ちてやがる――を見ていると、俺までまた一緒に馬鹿騒ぎしたい気分にさせられちまう)
『紅鷹丸』改が海賊船の傍まで寄ると、甲板では白銀の鎧に身を包んだ人物が、まるでかつてのように気さくに片手を上げて挨拶をしてみせた。
(俺が捕まってる間にキャプテンが海に出たっつーから慌てて追いかけてきたってのに、なんでキャプテン、こんな格好をしてるんだ?)
『風の囁き』サンディ・カルタ(p3p000438)の頭上には疑問符が浮かんでいたが、あたかもオクトはこの格好こそが彼にとって自然であるかのように、手際よくロープを手繰ってこちらへと投げてくる。
そんな理由、『山賊』グドルフ・ボイデル(p3p000694)にだってさっぱり解らない。いいや――解ろうはずもない。見ない間にすっかり様変わりしてしまった海賊の様子に、真っ先にロープを掴んで彼の船に飛び込んだ彼の口からは、開口一番、皮肉のひとつも転び出た。
「随分と元気そうじゃねェか、ええ?」
何だって? 別に積もる話をさせるために俺様を呼びつけたんじゃないって?
知ってるさ。だったら、とっとと“耳寄りな話”とやらを聞かせて貰おうか――けれども当のオクトは凄んだ彼へと鷹揚に構えてみせて、それから甲板の上に設えた鉄板を指差して嗤った。
「くかかっ、そんなに慌てるな。どうせ長い話になるんだからな。どうだ、久しぶりにたこ焼きでも食ってくといい。なぁに、毒なんて入っちゃいないとも……まさか解ってなかったなんて話はないだろう、俺がお前たちに危害を加えるつもりなら、そんな回りくどい罠なんぞ張らなくたって、当の昔に船ごと沈めてやってる、ってなぁ!?」
●交渉のはじまり
抜き身の刀のような緊迫が両者の間に流れ、プラックの拳が固く握り締められた。
もしも、早くもこの場で交渉が決裂するようなことになったなら、反転することなき旅人の我が身は、魔種を宥めるための人身御供たれるだろうか? 『血吸い蜥蜴』クリム・T・マスクヴェール(p3p001831)の銀と紅の瞳が、オクトの出方を凝視する……もっとも人身御供と言っても命までくれてやるつもりなど、自分のものも他人のものも含めて毛頭ない。だから許容できるのはせいぜい人質になることくらいまでだ……もっともオクトがもし人質で手を打ってくれるのだとしても、オクトは人質に『原罪の呼び声』を放つ前提でいるかもしれない。だとすれば旅人の彼女は人質として不適格とされかねない……それが先ほどのクリムの心配事だ。
オクトはしばらく訪船者たちを睥睨し、訪船者たちも微動たりせずに視線を返した。はたして、そうしていた時間はどれほどのものか……しかし実際には全てが一瞬の出来事で、ただならぬ緊張の雰囲気は、ひとつの声によって一挙に音を立てて崩れていったのだ。
「あっ、これ美味しいね」
あまりに天真爛漫すぎた『リインカーネーション』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)の感想が、骸骨船員らが遠巻きに見守る中で洩れた。
「外はカリカリ、中はトロトロ。海藻の香りとコリコリした大粒のタコが、熱くて火傷しそうだけど早く次を食べたい気分にさせるね」
「くかかかかっ、火傷は勘弁してくれ! 危害は加えないって言ったのが嘘になっちまうだろう?」
どことなくひょうきんなオクトの笑いが返る。その声は、以前の彼とさほど変わらないようにも聞こえる……責任感なんてものをさっぱり感じさせようとせぬ、プラックの大嫌いだった父の笑いだ。
昔は家族を。今は仲間を。全てを置き去りにした憎らしい父。ぶん殴って全員に頭を下げさせるまで彼の腹の虫は収まらない――のだが、悔しいことに今はそれより、彼の話を聞き、皆を護り海洋じゅうの人々の悲願の実現に近づくことのほうが遥かに重要なのだ。全てはその後にしなくちゃならないんだ。
「なあキャプテン」
サンディが、まるで諭すかのようにオクトへと訊いた。
「あまり意地悪をしてやるなよ……そんなことよりキャプテンにゃ、何か伝えたいことがあったんだろ?」
くかかかっ。するとオクトはまたもや笑った。
「そうだ、その通りだサンディ。だが、こうしてしばしの再会を喜ぶくらい、しても悪くはないだろう……お前にだって、俺に言いたいことが幾つかあったんじゃあないか?」
オクトがそう訊き返した直後、東から強い海風が吹いた。
まるで何かが大量に腐ったかのような、言葉にできぬ悪臭が船の周囲を取り巻く。
「ぐわあっ、臭ぇ! とっとと寄越すもん寄越して俺を帰させてくれ!」
カイトが思わず悲鳴を上げた。この場に長居すればするほど、今後も幾度も東風は吹いて、その度にこの船を腐臭と死臭で覆うことだろう。今はまだ穏やかな天候は、次第に崩れゆく予兆を感じる。もしも、それまでに話が纏まらず、一晩もこの悪臭の中に繋ぎ止められる羽目になったとしたら――?
「解ってるんだぜキャプテン」
もう一度サンディが詰め寄った。
「俺には、キャプテンが何か焦ってるように見えるぜ……なのに、なんでこんな時間稼ぎをしてるんだ?」
「そうですなぁ……もしかしてこの異臭について、何かタコ殿はご存知だとか? わざわざこの風を待つことで、拙者らにこれに関する重大な話だと思わせるように仕向けた。ただ『絶望の青には危険な魔種がいるぞ』なんて情報を出すよりは、こうして物事の片鱗くらいは見せておいたほうが信憑性が増すでしょうから」
すかさずルル家が鎌をかけてみたならば、オクトはまるで参ったとでも言いたげに、片手を頭に遣って掻く。
「そこまで察されてるなら話は早いなルル家! そうだとも……俺がわざわざお前たちを呼びつけたのは、この悪臭とその黒幕の魔種のことだ。
『絶望の青』の先に行く……それが俺たち蛸髭海賊団の悲願。だというのにそいつを邪魔しやがる、腐れ『嫉妬』どもの話だ!!」
●海賊の思惑
魔種船長が声を荒げれば、まるでそれに呼応するかのように、周囲で波が飛沫を上げた。
それは……しかし自然のものじゃない。かといって先ほどの風が立てたものでもないようにゼフィラには見える。
海の下では例の“触手”が、まるでオクトを肯定するかのごとく荒ぶっているのだ。噂ばかりはよく聞こえども、直接会ったのはこれが初めて……それでも、この様子では簡単に見抜くことができる。
(『嫉妬』の魔種どもがこの御仁を邪魔していて、自分にはそれを排除する力がないことが、嘘偽りなく悔しいのだろう。そして全く同じ感情を、この奇妙な触手は共有している、というわけだね)
そこで感じたものを素直にぶつけてみれば、いかにも、とオクトは頷いた。
「そうだな……知ってる奴は知ってるだろう。俺には兄弟――実際に血縁があるわけじゃあないが、紛うことなき真の兄弟だ――スクイッド・クラケーンという家族がいたことを」
互いに契った彼方の昔。かつての皆での大暴れ。
それもあの『絶望の青』への船旅を境に、何もかもが失われてしまった。
正体不明の海賊船――今思えば魔種どもに惹き寄せられた幽霊船だったのかもしれない――に襲われて、あわや今生の別れになるはずだったあの日。瀕死だったオクトだけが仲間たちを置いて特異運命座標として空中神殿に召喚されたのが、はたして幸か不幸かは誰にも判らない。
「ああ、その兄弟が反転して戻ってきた時には動揺したとも。当然だろう? 大切な家族が、不倶戴天の敵になっちまったんだからなぁ?
けれども――だ。それは結局は俺自身が、兄弟のことを信じてやれてなかったってだけの話だ。たった一人の肉親さえも信じきってやることのできなかったほど、“前の俺”はあまりにも弱すぎただけだ。
それに対して、兄弟は違った。俺と俺たちの夢のために世界さえ敵に回すことを選び、このままでは敵を利すると判れば家族同然の船員たちまで手にかけて、特異運命座標たちに瀕死の重傷を負わされた時も――そうだ息子よ、お前たちが以前に会った時のことだ――気力ひとつで俺の処まで戻り、命を永らえるためには化け物と化すことさえ厭わなかった。
ここまで語れば判るだろう? この船を水底で護る影。それこそが俺の大切な兄弟、スクイッド・クラケーンの成れの果てだ。
いいや、『兄弟だからこそまだこの程度残っている』。だが『兄弟だからこそまだ苦しみは続いてる』。
兄弟をそんな目に遭わせた元凶とも言える魔種――『冠位嫉妬』アルバニアをぶちのめしたいのは当然だろう? 兄弟がまだ兄弟でいられるうちに『絶望の青』の向こう側を見るためならば、俺だって兄弟と同じこと――不倶戴天の敵のローレットと手を結ぶことさえ願う。
どうだ? これでひとまずは、お前たちの疑問の幾つかには答えられたはずだ。残りは順を追って説明しよう……俺が話したいことも、お前たちが訊きたいことも、まだ幾らでもある」
「御託はいい。『ローレットに何をさせたいのか』を掻い摘んでくれ。俺はまだるっこしいことよりも、派手で単純明快な話のほうが好みな性質なのでな」
どっかりとマストの根元のベンチに腰掛けて、驕慢そうに足を組んでみせたクリムの様子は、オクトを怒らせてしまいやしないかとスティアをひやひやさせた。こっそりと視線を走らせて、逃げ出すならどんな経路が最適だろうかと確かめてみる。骸骨船員たちは特異運命座標たちを刺激せぬためか、いつの間にか船室に篭もってしまったり、そうでない者も遠巻きにして見守っている。あとは、『紅鷹丸』改まで戻った後に、どうやってスクイッドの触手を躱すかだけだ……つまりは、結局は穏便に交渉を終えて別れない限り、無事に撤退する目なんて期待できそうにない。
だが、そんなスティアの心配をよそに、オクトは物怖じせぬクリムを厄介がるどころか、あたかも興味を抱いたかのように同じくベンチに向かい、彼女から1人分ほど空けた隣にどっかりと腰を下ろしてみせた。
「なるほど、確かに話の落としどころが判ってからのほうが、これからの話も理解しやすくなることもあるだろうな!
だったら、まずは俺からの要求を伝えておこう……なぁに、話にすれば簡単なことだ。
『俺たちがアルバニアを殺しに行く時には協力しろ』
……ってなぁ!」
●廃滅の結界
それは確かに単純明快な要求ではあったが、同時に、この上ない無理難題であることも間違いなかった。
「おいおいおい!」
想像を遥かに超えた途方もなさすぎる要求に、グドルフの馬鹿笑いが船上に轟く。
「お前さん、自分が何を言ってんのか解ってンのか!?
そりゃあ確かに俺たちゃ、同じ冠位魔種のベアトリーチェをぶち殺したさ! 同じことをもう一度やれと言われて、怖気づくようなグドルフさまじゃねえ。
だがよ……あの時は奇跡に奇跡が重なった末に、どうにか必死に掴んだような勝利だ。
恐れはしねえが慢心もしねえ。わざわざ来てやった価値くらいはある面白ェ言葉は聞かせちゃ貰ったが、そんな『俺のために死ね』同然の要求を通そうと思ったら、それこそお前の手紙の言葉じゃねえが、海賊らしく力ずくで奪う以外の道はねえってくらい解ってンだろうな?」
すると、どうせローレットには受ける道しか残されてないさ、と、オクトはどこか身の毛がよだつような猫撫で声で囁いたのだった。
「どういうことだ?」
汰磨羈の眉間に皺が寄る。
「仮に私たちがこの場で拒否し、それを御主が見せつけのために殺してローレット全体に言うことを聞かせようと思っても、それでローレットの怒りを買えば、御主は要求を通すどころか総力を賭けて滅ぼされるのが関の山だろう。
だが……まさか御主も、そんな愚などは犯すまい。だとすれば御主はその総力をも覆せる戦力に宛てがある――すなわち、この海域の他の魔種なり、眷属どもなりとも繋がっていると我々は考えねばならないな。つまり……。
御主の返答次第では、私はファミリアーを通じて、事は相応に重大だと報告せねばならなくなるぞ?」
そんなふうに釘を刺してやったなら……船長は確かに事は重大なんだ、とは肯定した後に、けれども他の魔種との繋がりに関しては、まるでそれがどれほどおぞましい考えであるかと言いたげに小刻みに首を振ってみせた。
「冗談じゃねえ。この海域にゃ、アルバニア麾下の連中ばかりだ……手を組みたくとも組めなんてしねえ。
くかかかっ、だがそんなことを言ったところでお前たちは信じられないだろう……だからここからは、奴らと敵対してるからこそぶちまけられる話を、順を追って説明することにしよう。数多の海の男を、数多の希望を――。
――それから俺たち蛸髭海賊団の航海を阻んだ、『廃滅の結界』についての話をな」
オクトが語るところが真実であるならば、『廃滅の結界』とは冠位魔種アルバニアが『絶望の青』に用意した、恐るべき罠だという。
他者を妬み、変化を嫉み、停滞を愛し、『おまえばかり』の変化を嫌うという大魔種の精神世界を表現したかのような領域は、踏み入れる者をひそやかに蝕む、この海最大の危険であるらしい。ある意味ではこの結界こそが、『絶望の青』そのものであるのだと言えるかもしれない。
この『絶望の青』に敗れ、海底に沈んでいった者たちは『見れなかった明日』を呪い、無念の重石とともに海面を見上げたことだろう。嫉妬の魔種は彼らのその強烈な感情を喰らい、増幅し、澱の世界に廃滅の病を生み出したのだという。
幸運にも死の宿命が訪れることなく、今も未来も人生を謳歌し続ける者たちへの羨望を拗らせたそれは、海原を行く勇者を静かに蝕み、しめやかに喰らいつき、やがて水の下へと引きずり込む……。
「ああ、そうだ。アルバニアのクソ野郎に煽られた“連中”は、生きとし生ける全ての者の幸運を奪い、自分たちと同じ場所に落ちてこいと手ぐすね引いてやがるわけだ。そして不用意に奴らの領域に踏み込んでいったなら……当然、どうなるかなんて解るだろう? 突然、“謎の病気”に罹患して、心身を蝕まれながら数十日も苦しんで、最後には絶望の海に溶けてスープになる。
その後は――ぞっとするがな。つまりは、奴らの“新しいお仲間”にさせられちまうんだ」
その病の名をオクトは、『廃滅病(アルバニア・シンドローム)』と呼んだ。
この広大な海域に人為的な疫病を蔓延させ、自在に操作する――それは絶句するほどの恐ろしさ、おぞましさであると言えよう。
魔種とはいえ、それを可能にするのは決して人智の領域にはない。
されど、一笑に付すことなど出来はしない。その言葉を疑う意味さえない。特異運命座標らはすでに知っていただろう……同じ『冠位』を称したベアトリーチェ・ラ・レーテなる女が、あの悪夢のごとき暗黒の海が、権能が、どれほどに規格外であり、どれほどに悪辣であったのか!
「死兆……」
船長の説明に対してその言葉を最初に連想した者は、はたして誰であっただろうか? だが、幾人かが口々にその言葉を呟いたのならば、オクトはあたかも求める答えが返ってきたとでも言いたげに、しきりに深く頷いてみせる。
「そうだ……『死兆』だ。廃滅病は罹った者に、避け得ぬ死の宿命を与える呪詛だ。罹った奴が強ければ強いほど、その宿命が訪れる時は遅くなる“可能性はある”。それでも、所詮は時間稼ぎだ……廃滅病は純種だろうと旅人だろうと、そればかりか魔種さえもを蝕んで、いつしか色濃い死臭に包むようになる――よーく俺の周囲の匂いを嗅いでみるといい――周囲の者を同じく廃滅病に感染させる、糞ったれな呪いになぁ!」
「さっき食べたのを吐き出せ!!!」
その時、辺りの風が凪いでもオクト周辺にわだかまり続ける仄かな悪臭に気が付いて、カイトが血相を変えてスティアに駆け寄っていった。するとその様子を眺めてオクトは、面白い出し物でも見ているかのようにくかかと嗤う。
「言っただろう、毒なんぞ入れるつもりはないってな! 食わせたのは正真正銘安全なはずの部分だ……だがまあ、万が一って可能性までは俺にも判らんがな。
……が、あんなものなんて食わなくったって同じことだ。お前たちは俺に会いにこの海域まで来た。そしてこの胸糞悪い匂いを嗅いだ。それだけで、発症する“かもしれない”資格は満たしちまってるわけだ。
いいや、それだけじゃねえ……大号令を出した海洋王国の連中も、手伝うローレットも、俺に関係なく同じことだ。
さあ……そろそろ誰かしら、得体の知れない痛みに苦しめられ始める頃かもしれない。治す方法は簡単だ……元凶たるアルバニアが滅ぶこと。
どうだ? 最初の結論に戻っただろう? 結局のところ俺の要求はこうだってことだ――『可能な限りの協力はしてやる、俺と一緒にアルバニアを倒すか、次々に仲間が斃れてゆくのを指を咥えて眺めるかを選べ』、ってな」
「糞親父ィ!!!」
ついに助走をつけて跳び上がり、目一杯まで引いた拳を突き出してゆくプラックを、汰磨羈は止めようとは思わなかった。たとえその結果こちらの立場が不利になるのだとしても、彼にはこの卑劣な父に、一発くらいお見舞いする権利くらいはあるだろう。
そりゃあ汰磨羈だって一度は刃を交えた仲だ。殴りつけて馬鹿めと告げてやりたいところだが……それは、あの息子が必要な分を叩き込んだ後までお預けされておくのが義理というやつだ。
だが……その最初を飾るべき一発は、いつまで経ってもオクトの顔面に触れることはなかった。
「ほら、どうした?」
自らの眼前で止まった拳へと、船長はおどけた挑発をしてみせる……すると。
「いいや、やっぱりまだ殴ってなんてやらねえ。俺はそう心に決めたんだ」
プラックは怒りと悔しさで震える拳を、苦労して抑えて引っ込めてみせた。
「だから、全てが終わったら……その後に気が済むまでぶん殴らせろ!!」
●海賊の真意
「つまりタコ野郎。アンタが今回仕組んだことは、つまりはこういうカラクリなんだろう」
プラックが大切そうに腰に提げていた『運命の手紙瓶』をくすねると、キドーはそれを顔の前で揺らし、まるで見てきたかのようにオクトの思惑を語ってみせた。
「アンタは他に遣り方はあるだろうに、わざわざ誰に読まれるかも判らないコイツを使って、俺らをこの場所まで誘き寄せてみせた。
そいつは大方、『確実に届くから』ってだけじゃねえ……ああいう手紙の書き方をして、俺たちには『あたかも直接会わなくちゃ語れない重大な秘密がある』ように、アルバニアには『馬鹿なタコが助けを求めるつもりで、餌を誘き寄せてくれた』ように見せかけたわけだ」
「くかかっ、実際、俺にゃ他の遣り方なんてなかったんだがな!」
「そういうことにしとこう。
で……アンタは俺たちに死兆というタイムリミットを見せつけて、共闘以外の選択肢を奪ったって寸法だ」
「なるほど。これでは拙者らが『持ち帰って検討』なんて申し出をしたところで、結局はOK以外の選択肢は出せないわけですな」
「くかかっ、別に拒否したって俺は一向に構わんとも」
ルル家が合点したように頷けば、オクトはまるで何もかもが勝手に自分の手の中に収まるのが当然といった風の、強欲魔種のにやにや顔で返すのだった。
「心を鬼にして『死兆を受けた仲間を見殺しにする』なんて選択をしない限りは、どうせお前たちは廃滅の結界を――アルバニアを打ち破らなくっちゃならんワケだ。お前たちが共闘を拒否したならば、その時は俺たちは悠々と高みの見物をするだけだ……その後、俺たち蛸髭海賊団は、お前たちが多くの犠牲を払って得た海を、我が物顔で悠々と通り抜ければいいだけの話。だったらお前たちにとっても、共闘したほうが都合がいいだろう?」
(もしもこの話がただの利害の一致に過ぎないのだとしても、拙者は――)
高笑いするオクトはルル家にはどこか寂しそうに見え、彼が反転して失踪する前の、予期せぬ義兄弟との再会に気を滅入らせた彼の姿を思い出させた。
(――タコ殿の心根の奥底は変わっておらずに、拙者の頼もしい友人として肩を並べられることを願っていますよ)
今の彼の姿がちょっとした偽悪趣味にかぶれただけにすぎないと、どうして信じたくないことがあろうか?
たとえ、ローレットの総意として共闘が否決されるのだとしても、個人的な思惑として協力したい。それは決してルル家ばかりの話に留まらず、サンディだって同じ想いだ。
「キャプテンは、さっき自分で言ってたよな? 『俺の周囲には廃滅病の匂いが漂ってる』って。
だとしたら、時間がないのはキャプテンも同じだ。やっぱりキャプテンは焦ってるんじゃないのか?
共闘しなくたっていいだなんてのは嘘っぱちだね……反転した今じゃ俺たちを追い込んで了承させる方法しか思いつかなかったってだけで、本当は今すぐにでもローレットの全員を呼び寄せて、一緒にアルバニアをぶっ潰しに行きたいんだろう!」
「……だとしたら!」
オクトは一度聖剣を持ち上げると、力いっぱいその先端を甲板へと叩きつけた!
「お前たちは……どうする?
なぁサンディ。特にお前なんぞは俺に対して、さぞかし負い目があることだろうよ。だが……だからってお前とて、“前の俺”への情にほだされて、魔種の手足になって働くつもりはないだろう? 利害関係での共闘って形にしといたほうが何かと都合がいい。
くかかっ、そりゃあ俺のほうは、お前たちが人情にほだされて助けてくれるのでも構いやしない……だが、元・特異運命座標のよしみだ、お前たちまで“裏切り者”の烙印を押されない程度には俺は配慮してやってるんだ」
「そんなこと――」
関係ないとしかし、スティアは答える。
「困っている人がいたら、善人でも悪人でも助けるのが特異運命座標でしょう? だから、もし助けた相手が魔種だからといって、それを裏切りだと思う人はそんなにいないと思う」
「くかかかかっ、そいつは楽観が過ぎるなお嬢ちゃん! だったらお前は俺たちに……『共闘する』以上のことを慈悲深く提供してくれるって言うのか?」
「それは――」
絶句したスティア。もしかしたら本当にオクトが言うとおり、特異運命座標は彼に何もしてやれないのかもしれない。
でも――彼女はそんな悲観は信じない。
だから、こう説いてみる。
「私たちだって、死兆のことは何とかしたい……だから、アルバニアを倒す以外に廃滅病を治す方法がわかったら教える、とかは……?」
●交渉の報酬
「くかかかかかっ、どうやら俺は、お前たちを見くびっていたようだな!」
船長の笑い声はどこか吹っ切れたかのように、晴れ渡った『絶望の青』の空の彼方にまで響いていった。
「お前たちはどうやら“前の俺”以上にお人好しらしい! 自分たちが何を言ってるのか解ってんのか! ま、俺にとっちゃあ有り難い限りの話だがな!」
そんなオクトに負けぬよう大笑いを響かせた後、グドルフはオクトの胸を拳で打つ。
「もしも本当に俺たちが正気じゃないように思えたのなら……お前は自らを雁字搦めにしちまったんだな、オクト。おれさまにゃ、浪漫(ゆめ)と自由を謳って絶望の青に挑んだはずのお前が、七罪に縛られて、途方もない夢物語ってもんを忘れちまったように見えるぜ」
ああ。キドーも同じ気持ちだ。せめて原型がないほど変わっていれば、まだ哀れみもなかったっていうのに。もし、今のオクトが、そんな指摘をされて激昂してしまう程度の奴ならば……さあ、プラックを――息子をぶん殴るなり半殺しにするなりしてみやがれ! お前をボコボコにしたいほど憎んでる息子が、約束どおり、一度も反撃することなくそれを受けきってやろう!
「くかかっ、お前たちには随分と面白い話ばかり聞かせて貰った。確かに俺は強欲の魔種だが、その俺が貰いすぎて申し訳なくなるくらいには、な」
オクトは気を悪くした素振りも見せずに、いつまでも楽しげに笑い続けた。
「礼として、帰り道の安全は保障してやろう……いいや、お前たちが無事に今回の話を持って帰るのは、俺にとっても都合のいい話で礼にはならんか。
なら、そうだなぁ……まだ何か聞き足りない話はあるか? 何か宝を寄越せって言うのなら、俺には要らんやつを持ってったっていい」
そうやって気分良さそうにオクトが構えていると、だったら、とカイトが彼の前に立った。
「アンタを、一発殴らせろ……でどうだ? 理由はどうあれ、アンタは一度、俺たちの航海の途中で船を降りやがったんだ! まさかぶん殴られたくらいで文句は言わねえよなぁ?」
「くかかっ! その程度で済むなら安いもんだ!」
なら……体を反らせてからの渾身の一撃! オクトはしばしたたらを踏んで、満足か、とカイトへと問う。たったのこれっぽっちで満足なはずなどないが、ひとまずの禊としては十分だ。
そうしたら次は……ゼフィラの番だ。
「お初にお目にかかる身で恐縮ではあるが、私も構わないかな? 実のところ私は冒険者にして研究者でね、折角この海に来たのだから実のところ狂王種とやらさえ楽しみにしていたのだが……キミの兄弟氏にエスコートされてしまったお蔭で、知的好奇心を満たせず終いなんだ。キミがこれまでこの海で見聞きしたものを、もう少し教えて貰っても構わないかい?」
「こいつぁ随分と強気に出たもんだ! だが、そういう態度は嫌いじゃない。その大胆さに免じて、航海日誌の写しくらいはくれてやるとも」
●一旦の別れ
そんな船上の一幕があって、しばらくした頃――。
晴れていた空が急に曇りがちになり、カイトが天候悪化の警告を発した。どうやら退くべき時が来たようだ、と、汰磨羈も空を見上げて呟く。
訪船者たちが『紅鷹丸』改に戻ったならば、オクトは繋いでいた縄を解き、それから大きく手を振ってみせる。
「俺は、お前たちが動くのを見てから動いてやる! なぁに、いつ誰に邪魔されるか判らん便りを待つよりは、この海とは長い付き合いになった俺が、勝手にやっといたほうが余程手っ取り早い!」
かくして特異運命座標たちは、この不気味な悪臭漂う海域を再び後にした。
次にオクトと会う時は……アルバニアとの決戦の最中になるのか? それともまた別の機会があるのだろうか?
いずれにせよアルバニアを倒しさえしたならば、ローレットと蛸髭海賊団は、再び袂を分かたねばならぬだろう。そうしたらその後は……クリムの大好物の――きっとアルバニアとの戦いではそんなに簡単にはゆかぬ――、単純明快な力と力のぶつかり合いの時間だ。
「さらばだ、オクト! 決着は、絶望の青を制覇する時までお預けとしよう!」
汰磨羈が手を振り返して呼びかける中で、海賊船は錨を上げて、蛸顔印の帆を大きく広げ、ゆっくりと、ゆっくりと『絶望の青』の奥へと向かって旋回していった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
以上が、魔種オクト・クラケーンとの再会でした。
特に重要な情報を纏めると、以下の通りになります:
・絶望の青に君臨しているのは冠位魔種、『嫉妬』を司るアルバニアである
・既に数人に発生している『死兆』の正体は、冠位魔種アルバニアにより仕組まれた呪詛『廃滅病』である
・廃滅病の治療法は『アルバニアを倒す』以外にはない(少なくともオクトは知らない)
・オクト・クラーケン及び蛸髭海賊団は絶望の青における叛逆勢力であり、アルバニア打倒の共闘を模索している
今後、ローレットはこれらの情報を元に、次の行動に移ることでしょう。プラック君には携行した『運命の手紙瓶』を一旦お返ししておきますので、シナリオ中以外で蛸髭海賊団に連絡をお望みの際には、手紙内容を沿えてお問い合わせよりご連絡ください。蛸髭海賊団は、それを踏まえた上で今後の行動を決定します。
ただし手紙は必ず届きますが『蛸髭海賊団以外が絶対に見ないとは限りません』。
予めご理解の上、ご使用をお願いいたします。
GMコメント
魔種からの手紙。そこに秘められた真意は果たして、どのようなものなのでしょうか?
本シナリオは、皆様の選択次第で実質難易度も危険度も変わります。以下の3つの選択肢の中から、為すべきことを慎重にお選びください。
●情報精度
このシナリオの情報精度はDです。
多くの情報は断片的であるか、あてにならないものです。
さまざまな情報を疑い、不測の事態に備えてください。
●選択肢一覧
・選択肢【1】:手紙を信じ、オクトに会いにゆく
オクトが本当に何かを伝えたがっていると信じて、オクトの船に向かいます。
手紙の内容が真実ならば、オクトの話は『絶望の青』攻略の際に重要な情報となるでしょう。ただし……手紙は特異運命座標を誘き出すための罠で攻撃を受けるかもしれませんし、仮に手紙が真実だったとしても、情報を教える代価として、彼の指示に従う(場合によっては反転する)ことを強要されるかもしれません。撤退判断が遅れれば、大きな犠牲が生じる危険もあります。
・選択肢【2】:手紙を疑い、奇襲攻撃を仕掛ける
オクトの呼び出しに応じたと見せかけて油断させた後、オクトや海中の触手を奇襲します。
もっとも、オクトは魔種ですし、触手も正体不明ながら極めて危険な存在と考えられます。両方を撃破しようと思えば難易度はVERYHARD以上まで跳ね上がるでしょう。片方だけでも撃破するか、撃破に近い痛手を与えることができればシナリオ成功となります。
オクトはCTが高めで、拳と触手を使った【連】を好みます。海中の触手は、先端が蛇の頭になったものが3本、先端が吸盤のついた鉤爪になったものが3本で、それぞれが別個体であるかのように行動します。
・選択肢【3】:手紙を無視し、別の敵を掃討する
『絶望の青』周辺の脅威は、当然ながらオクトだけではありません。オクトが寄越した海図の中には、『タイラント・サルガッスム』と呼ばれる海藻の集まる危険な領域が示されていました。
浮遊する海藻の群体でありながら意思を持ち、船や遊泳者を追いかけて覆い、喰らい尽くすこの海藻は、放置すると思わぬ事故に繋がりかねません。これを取り除いておくだけでも有益です……その際は、なるべく触れずに遠距離から攻撃するのをお勧めします。
なお、いずれの選択肢においても、海洋政府より機動力4相当の船が貸与されます。参加者間で意見が分かれた場合には選択肢ごとに貸与されますが……当然ながら、人数が減ればその分、事態への対処能力は落ちてしまうでしょう。
●Danger!
本シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定があり得ます。
予めご了承の上、ご参加下さるようお願いいたします。
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