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シナリオ詳細

<第三次グレイス・ヌレ海戦>島向こうの『シマ』

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●開戦5時間前
 『キャプテン』ネギール・トロスキーは、その日も当たり前のように漁に出ていた。
 にわかに鉄帝からの横槍が激しくなり、海賊達の動向も怪しさを増す中、しかし彼は全く意にも介せず漁に出る。どれだけ危険であろうと、それが当たり前で生活の糧となるならば多少の危険などどうでも良かったのだ。それに彼は引き際を弁えている。よほどの事が起きない限りは、(船員が犠牲になったとしても)彼は成果を挙げて戻ってこられる……そんな確信めいたものがあった。
 あったのだが、今回に限っては話が違った。たまさか潮の流れが早く、風が思いもよらぬ方向に吹き、いつもの海域から少し流された先が、ちょっと都合の悪い場所だった……そんな不幸。
「大変です、親分! こっちに近づいてくる船……ありゃシカーリオの連中でさあ!」
「あン? どこのチンピラかと思えばマグロ野郎の船か。ってこたぁ、この辺は奴の『シマ』かよ、面倒くせぇなあ……」
 船員から報告を受けたネギールは、波を割ってずんずんと向かってくる複数の海賊船を視界に収め、舌打ちをひとつ。彼らは漁師、奴らはマフィア。シマだかなんだか知らないが、役割が違うのだからちょっとくらいの目こぼしをすればいいだろう、と彼は鼻を鳴らす。
「俺達のシマにずかずか入ってくるとは見上げた根性だぜクソ漁師。シカーリオ・マフィアグループを知らねえで来たなら物知らずもいいとこのクソだ。知ってて入ってきやがったってんならなおのこと容赦は出来ねえ。
 俺達ゃメンツとシマが大事だし、好き勝手シマを荒らす奴と不機嫌な嫁さんが大ッ嫌いなんだよ。分かるか?」
「まあそういうなよケチ臭いチンピラのマグロ頭。今日の風と潮の具合はお前も知ってる筈だぜ? ちょーっと割って入った程度でプリプリしやがって、煮立っちまうぜ? なあ」
「誰がマグロ頭だよお前さんもマグロ頭じゃねえか!」
 ドンの脅しに一切動じず、ネギールは堂々と返す。メンツを鼻先からガッツリへし折られたドンは、素早く部下に指示を飛ばすとネギールの船に威嚇として砲撃を叩き込む。漁船すれすれを飛んでいった砲撃に、しかしネギールは怯えたりうずくまったりはしなかった。
「はン、脅しにしちゃあ甘っちょろいぜシカーリオの旦那。許しちゃくれねえなら逃げるしかねえが、それも駄目ってかい?」
「……マフィアにはコネとメンツが大事なんだよ。鼻っ柱折られてのうのうと帰しちまったら娘(アニモ)の目が痛々しくて仕方ねえ。丁度これからひと仕事だ、お前等にゃあ囮になって貰うぜ……?」
 ドンは獰猛に口角を――どの程度動くかは別として――吊り上げ、素早く船に指示を出し、ネギールの漁船を包囲する。マストを縛り付けた縄と突きつけられた砲口を前にして、ネギールはこれまでか、と思う反面、どうにかなるのでは、という謎の確信が頭の隅をもたげていた。

●開戦2時間前~開戦直後
「大変だ、ネギールの船が漁に出たっきり帰ってきてねえ!」
「大変っす、ドン・マグロ・シカーリオがファミリーを率いて海賊連合に合流するって噂が流れてるっす! 多分グレイス・ヌレ海域に着いてる頃っす!」
 海洋王国首都リッツパークの、とある酒場。ローレットの情報屋他、イレギュラーズが活発に出入りしているその場所にあわてて駆け込んできたのは、シラス(p3p004421)とレッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)の2人だった。それぞれ、今時海戦に絡んで問題になりそうな別々の人物について情報を持ってきたらしい。
「状況がキナ臭いのはあいつら分かってた筈だけど止まるワケもねえ! 潮の流れが特にヤバいこんな時に行かなくても……クソッ!」
「ドンは海域近くに『シマ』を構えてるっすが、海戦に一枚噛もうと向かってきている筈っす! もしかしたらその海路上もシマ認定して通った船にちょっかい掛けてるかもしれないっす!」
 2人は矢継ぎ早に言葉を並べて、それから隣に居る相手を見た。
「「……ん?」」
 そして居合わせた眼鏡の情報屋が取り出した海図に、シラスはネギールの採ったであろう航路を、レッドはシカーリオ達が海域に向かってくる航路を書き込む。
「「……んん?」」
 そして両者とも、人相書きを机上に広げた。

「いやいやいやいや……これはねーだろ」
「珍妙っていうかトンチキっていうか、こんなことあるもんっすねえ……」
 で、まあ。
 お互いの話の俎上に上った人物が見事に、同じくらい個性的な顔立ちなことに両者ともに苦笑するしかなかった。
 俎(まないた)だけに。

GMコメント

 偶然ってあるものなんですねー。

●達成条件
・『キャプテン』ネギール・トロスキーの救出
・シカーリオ・マフィアグループの撃退

●ドン・マグロ・シカーリオ
 レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)から情報提供のあったマフィアのドン。立場上、海賊連合に手を貸す形となった。
 自分のシマに割り込まれることを非常に嫌い、相手が誰であろうと苛烈な報復を行うと噂の男。一応、利害が一致すればローレットに対して手を貸したり情報を持ってくることもあった、らしい。
 基本的には悪寄りの人間である。今回はグレイス・ヌレ海域に進行中にネギールの漁船と鉢合わせになり、彼らを囮というか人質というか、そういう扱いで拿捕した。
(ネギールの船は海域より離れた位置に繋留している。この依頼で破壊されることはない)
 指揮能力に長け、自分の船に乗っている船員は常時命中と抵抗にバフがかかる。
 本人は複数の返しのついた棘付きの鞭と投げナイフを用い、【麻痺】【致命】などの付随する中~遠スキルを多用する。時限10(抵抗・補正大)持ち。

●船員×19
 ドンの船に5名、他2隻に各7名の配置。
 基本的に【窒息】を伴うナイフ攻撃や名乗り口上、ダメージを伴う単体怒り付与スキルなど多彩な攻撃を仕掛けてくる。
 なお、ドンの船にのみ大砲が積んであり(物超単・高威力)、イレギュラーズがデフォルトで乗る船が繰り返し食らうと沈没の可能性も。

●ネギール・トロスキー(とその漁船員)
 シラス(p3p004421)さんと付き合いのある漁師。多少の危険は意に介さない胆力の持ち主。
 船員と分けられ、複数の船の船倉に拉致されている。
 先に探すも撃破後探すもよし。ただし、見つかる前にドンに撤退されると失敗になるので十分な注意を払うこと。
 人助けセンサーとかなら船越しでも引っかかる……はず。

●戦場
 グレイス・ヌレ海域南東部。
 潮の流れが特に速い為、船越しに狙う際は命中に下方修正が入る(シカーリオの海賊船砲弾も同様)。


●重要な備考
<第三次グレイス・ヌレ海戦>ではイレギュラーズ個人毎に特別な『海洋王国事業貢献値』を追加カウントします。
 この貢献値は参加関連シナリオの結果、キャラクターの活躍等により変動し、高い数字を持つキャラクターは外洋進出時に役割を受ける場合がある、優先シナリオが設定される可能性がある等、特別な結果を受ける可能性があります。『海洋王国事業貢献値』の状況は特設ページで公開されます。
 尚、『海洋王国事業貢献値』のシナリオ追加は今回が最後となります。(別途クエスト・海洋名声ボーナスの最終加算があります)

  • <第三次グレイス・ヌレ海戦>島向こうの『シマ』完了
  • GM名茶零四
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年01月05日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)
炎の守護者
レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)
赤々靴
シグ・ローデッド(p3p000483)
艦斬り
スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
リインカーネーション
マルク・シリング(p3p001309)
レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)
希うアザラシ
マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)
黒鎖の傭兵
シラス(p3p004421)
鳶指

リプレイ


 海洋には様々な海種が存在する。流石は海の国家、と言った所だが。
「2人ともマグロ頭の海種なの? こんなことってあるんだ……」
 マグロとマグロの諍いが丁度発生するなど『魔動機仕掛けの好奇心』チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)にとっては驚きであった。そんな偶然ある?
「まぁここは混沌だ……多分、人間的な感覚だと――そう。
 丸刈りとか髪とか頭の長さの違いくらいの差なんだろう」
 同様に『かくて我、此処に在り』マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)もあまりに似た人相書きに些か頭を抱えそうだった。初見の時は思わず目を剥いたモノである。まぁ服装なりが違うので実際で会えば見間違う事は無かろうが。
「兎も角、こんなてんやわんやの時期だし助けられる奴が助けに行かないとな」
 いずれにせよ海洋の軍勢はグレイス・ヌレ全域に展開しており、正規軍に余裕はない。
 急ごう。『自分と誰かの明日の為に』レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)の操船にて、マフィア――ドン・マグロ・シカーリオがいるであろう海域へ直行する。近付けばチャロロの人助けセンサーなり感情探知なりに反応もある筈だ、と。
「人命が掛かってるんきゅ……急いで救助しないと危険かもしれないっきゅ……!」
 決意と共にレーゲンは船を進める。目標はとにかくネギールの救助。
 誰も失わせない。自分や名も知らぬ誰かが大切な人と笑い合える尊き明日を――掴む為に!
 されば船団が見えて来る。情報にあった通り丁度三隻いる様で、あれがマフィア共の船だろう。
「行くっきゅ! 一気に接近するから、皆準備しておいてほしいきゅ……!!」
「うん、船はレーゲンさん任せた! ファイトー!」
 レーゲンが引き続き舵を取る。故に『リインカーネーション』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)は声援と共に行うは周囲の確認だ――レーゲンの目として、敵の砲弾方向の確認を行おう。
 ドンの船にのみ大砲が積まれている。流石にあれが直撃すれば負傷は免れまい。
 よしんば負傷は良いとしても船が沈没すれば最悪だ――
「だけどやりようはあるっきゅ!!」
 されど三隻あるのならそれを盾に出来る。まず接近するはドン以外の一隻。
 向こうもこちらに気付いて行動を行うが、レーゲンの巧みな操船技術は退避の前に接近を果たし。
「さて、行くとしようかな。まぁネギールは殺しても死なない様な奴だ。
 放っておいてもいつの間にか自分で突破して帰ってくる気がしてならないけれど……」
 恩を売れるべきなら売っておくべきか、と『ラド・バウD級闘士』シラス(p3p004421)は言葉を紡ぎながら乗り込む。と言っても、彼が乗り込む先は甲板上ではなく――船へ直へと。
 物質透過だ。壁をすり抜け内部へ直接。同時に行うのは透視であり、救助者達がいないか視線を巡らせる。拘束されている身なればすぐ分かるし、そうでなくとも敵の接近に気付く事も出来て。
「ネギール船長を救助して漁船員も救助して、その上でドンを撃退……やることが多いね」
「確かに、な。まぁやる事は実に多いが……1つずつ確実に済ませるしかあるまい」
 そしてマルク・シリング(p3p001309)と『『知識』の魔剣』シグ・ローデッド(p3p000483)もまた行動を開始する。マルクは甲板上へ、乗り込むと同時に放つは光。邪気を裁かんとする聖なる光を。
 迎撃せんと出向いてきた者達の目を潰す――早期の無力化を。制圧を目指して。
 シグはまた別の船へ。シラスやマルクが乗り込んでおらず、そしてドンの船ではない……三隻目だ。そちらで行うは攪乱の一手。
「ゲリラ戦というのは本来、遮蔽物や隠密が可能たる地の少ない海上では行いにくいモノだが……この世界の法ならば、な。策の活用次第で動きようはあるものだ」
 彼もまた物質透過にて壁から潜入。行うは己が身を剣とした破砕の一撃――
 船底へ向けて全霊を叩き込む。壁すら貫通する強靭なる撃は船の壁を軋ませて。
 センサーや感情の探知からこの船には要救助者がいないであろうことは確認済みだ。よしんば探知に掛かっていない者がいたのだとしても、ならばいるのは多数ではなく少数と推測できる。数が少ないのであれば混乱の最中にて救助出来るのは容易。
 あちらの船で、こちらの船で派手な音が鳴り響く。
 襲撃だ――迎撃に出ろ――かような声も飛ぶ中で。
「やれやれ……ドン・マグロさん海戦に何ちょっかい出そうとしてるんすか……金の為なのか面子の為なのか知らないっすけど」
 出て来た船員と刃を交わし『レッドが来たぞ』レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)は軽く吐息を一つ。マグロとマグロが争って、マグロ頭がマグロ頭を捕えたなどと――ええい!
「ただでさえ鉄帝なり海賊なりでややこしい状況なんす!
 ――さっさと退いてもらうとするっすよ!!」
 かような偶然、早く片してしまうが吉とばかりに。
 船を駆け抜け事態の解決を目指して往くのだった。


 ドンの船は砲弾を使いあぐねていた。
 イレギュラーズ側の巧みな立ち回りは中々射線上に姿を現さないのだ。ドン側の船が三隻いる事も災いしていると言えるだろう……盾と出来てしまうモノがそこにあるのだから。
「ドン! 無理やりにでも撃ちましょう、このままじゃやられっぱなしですぜ!」
「馬鹿野郎テメェ、ウチの船ごと吹っ飛ばす気か!! それより船を寄せて救援に行きやがれ!」
 ならばとドンが部下へ指示を飛ばすのは、直接船へ援護に行く事だ。
 使い辛い砲弾に頓着し続けるよりも、いっその事殴り合いだと割り切った方が良い。
「――どうやらドンも判断したようだね。援軍来るまで時間がないかも」
「うん。でも、そろそろ下の方で決着が着くはず」
 甲板上で戦うマルクとスティアは船員達を相手しながら船の動きを伺っていた。
 向けられるナイフを躱し、再び全力なる光を齎して。多少の傷はスティアの癒しの術が治癒をする。今の所安定した戦いを繰り広げられているが――さて。ドン達の戦力がやってくれば流石に状況が変動すると言えるだろう。
 数の違いが如実に出てくるのだ。尤も、船が接舷するまで少しばかりまだ時間はありそうで、ならば。

「――んっ?」

 下の船倉に囚われていたネギールは気付いた。扉の前に、誰かがいると。
 直後に扉の鍵が解錠されて。扉の先から姿を現したのは――
「待たせたな、助けに来たぜ」
「シラスじゃねぇか。なんだこんな所に来るなんざ暇してんのか?」
「ハハハ礼はいいよ。貸しにしとくから」
「博打で負けてまたすぐゼロになるだけだろ」
 うるさいマグロ頭だな! 付けられていた枷を鳶なりし指の技量で即座なる解錠を果たし。
 往く。シラスは上の状況を把握出来てはいないが、ドンが座して待つとは思えない故に。
 侵入の折は物質透過で容易くここまで来れたが……救助者を連れての脱出は『そう』はいかない。真っ当な道を進む必要があり、まずもって上の騒ぎに見張りは引っ張られているとは思うのだが警戒は怠らず。
 さすれば。
「好き勝手してくれてたな、お前さんら……!」
 丁度甲板上まで辿り着いたと同時、ドンの射撃が甲板上に振舞われる。
 直後に飛び移るドン。更に続く配下達。誰も逃さぬとばかりに布陣して。
「ドン・マグロさん自らが来たっすか……! ここからが本番っすね……!」
 マストの影に咄嗟に身を隠したレッド。射撃と投げナイフの射角を潰し、さて。
「マグロさんのシマだからってここまでの横暴は許せないよ!
 本来海は皆の自由であるべきだ――支配するモノじゃない!!」
「年を取りゃ大人の事情ってヤツもあるのさ小僧!」
 チャロロの動きと合わせて一気に往く。初手にて彼の派手な名乗りが挙がれば視線が集中し、攻撃が寄せられるが――そこはチャロロの防御の力である。そう簡単に倒れはしない。
 直後。レッドが懐から石を取り出し、配下の一人の横っ面に直撃。
 更に跳び出し刺突と斬撃の組み合わせ。状況は変化させない。流れは依然こちらに引き寄せるべく。

 激突。

 ドンの参戦とその指揮によりマフィア達の動きは見るからに向上している。
 ナイフ捌きが精密に。布陣の隙は消えて、連携し。確かなる陣は強固。
「たく、流石にそうそう楽にはいかないよな……! ネギール、あんま身を晒すなよ!」
 これは一度戦況を安定させねば救助者達を脱出させるのは難しそうだとシラスは判断し。
 跳躍。近場の船員を蹴り倒し、次の手では己に極限の集中を施さんとする。
 全てがスローに。感覚は鋭敏となり、幻惑の魔術と高速移動を重ねた術式を披露せん。
「やれ、ここで押さなきゃならんな……踏ん張り所だ」
 次いでマカライトの召喚せし眷属が敵を襲う。鎖の塊が金属音を鳴り響かせて。
 直撃した者の身を束縛せんとする。足を止め、痺れさせ。その身を乱さんとすれば。
「乱れるな! 落ち着け、海のマフィアが海の上で負けてたまるかよ!」
 それでも彼らもまた奮戦する。マフィアも舐められればお仕舞いである故に。
 一進一退。どちらが勝利の流れを握るのか。
 瀬戸際――その最中にて。
「んっ!?」
 ドンが感じた闘気は後ろから。放たれしは液体金属で構成された――鎖。
 馬鹿な、後ろはドンがやってきた船があるだけだ。そちらから誰が……!
「……こちらは少数なのでな。少数なりの戦法を、だ。」
 シグだ。三隻目で攪乱を行っていた彼は、ある程度の所でケリを付けこちらにやってきたのか。
 いやそれだけではない。視界の片隅にはドンの船に捉えていた船員達が自由の身となっていて。
「こっちもきゅ! 大丈夫、全員乗り込めるから安心してほしいきゅ!」
 それらはレーゲンの救出活動により船に乗りこんでいた。
 彼は常に大砲に当たらないように操船しつつ、やがてシグを回収してドンの船へと接近したのだろう。シグも水中で活動する心得を持っている。多少泳ぐに支障はなく、船で回収されれば移動も更にスムーズで。
「ぬぉ、お前さんら……!」
「向こうの船は穴を開けて来た。沈むとまで言わんが――こちらに来るには時間が必要だろう」
「さぁ救助は出来たっきゅ……! 終わらせにかかるっきゅよ!!」
 シグとレーゲンもまた参戦し、この戦いの終局を見据える。
 海での戦いでこれ以上仕損じるまいという強い決意と共にレーゲンは前を見据え。
「明日を……平穏な明日を奪わせる事なんて絶対にさせないっきゅ!」
 己が身に蓄えた力を、光線として――放出した。


 戦闘の激しさは最高点に。幾重もの攻撃が交わって。
 前線で攻撃を受け止めるのはチャロロだ。防の構えを利用し、強烈な一撃を返しで放って。
「ここから先はぜったいに通さないよ! 倒れても通すもんか!!」
 意思と共に絶対の壁として敵の前に立ちはだかる。
 抵抗の力も高き彼は正に不沈艦。倒れずそこに在り続けて。
 しかし彼の様な抵抗の力でも無くば――マフィア達の攻撃は中々に脅威だ。多彩な負を撒き散らさんとしてくる奴らの攻撃。ともすれば動きが鈍った所から突破されかねない、故に。
「スティアさん、回復をお願い。今は効率的な範囲火力が必要な局面だから」
 マルクの分析が頼りになるのだ。彼の分析の一声が負を払い、正常なる身を取り戻さんとする。
 ドンもその辺りの動きを理解している故か、癒し手達へ攻撃を集中させる様に指示を。ぶつかり合うだけでは長期戦でイレギュラーズが有利と感じた故か。しかし治癒の担当となっているスティアもまたチャロロ同様に防へ優れし者であり。
「頭ってどうなってるのかな? その境目どうなってるの? 触ってみてもいい?」
「――な、舐めんな小娘!」
 彼女は崩れない。癒しの光を顕現させながら、引き寄せの為の軽口を叩いても尚――健在。
 同時にドンは、自らの娘と同じぐらいの年だからだろうか……スティアの言に多少動揺を。年頃の娘は気難しいモノである故にドンは最近嫌われ気味である。気安い態度は慣れぬか久しいモノであったか。
 ともあれ敵は敵、戦闘に手は抜けぬと頭を振って雑念排除。鞭を振るって。
「世知辛い事情が見えたような気もするが、さて手は抜かないぞ」
 言うなりマカライトは孔雀羽の装飾が施された魔弓の弦を。
 絞り上げて――放つ。さればその一撃はドンの肩を穿ち。
「ぐ、ぉ」
 一瞬、指揮が崩れる。その瞬時の空白を――
「人命がかかっているっきゅ! あと一歩、火力を集中させて押し込むきゅ!!」
「この辺りが手の引き所じゃないすかね――取り返しがつかなくなる前に」
 レーゲンとレッドが見逃さない。レーゲンの光線が更に彼を襲い、一気加担。
 レッドの鋭き剣撃もまた前衛を担うマフィアの一員を薙ぐのだ。同時に言うのは手を引け、と。
 これ以上続けて益はあるのか。致命的な不利益を被るよりも前に。
「賢明な判断を期待したい所だがな。続けるかね?」
「チィ……舐めるなよッ!」
 退いた方が良いだろうというシグの一言。空気を圧縮し、押し飛ばす一撃を彼らへ放ち。
 舌打ちながら抗戦する彼らをより追い詰める。
 落水させればそう簡単に復帰は出来まい。向こうもこちらの落水を狙うような動きはあるが、それに対する備えはある。レッドの酸素ボンベやシグの水中行動。全ての準備は万全で。
「ん、にゃろ――サビたらどうすんだよ、もう!!」
 チャロロもまた船体に剣を突き立て落ちるのを阻止。再び壁となりて脅威へと戻る。
 ドンが多少崩れてから一人、また一人とマフィア側は段々と戦況が悪くなりつつあった。
 未だその身は健在であるもののドンは己が劣勢である事は否めず。
「全く、マグロ頭って奴はどいつも諦めが悪いな……!」
 そこへシラスだ。かねてより続ける集中にもそろそろ限度が来ているが、力を振り絞り。
 ああクソっ――
「どいつもこいつもふざけた頭しやがって!」
 あっちを見てもマグロ。こっちを見てもマグロ……どういう偶然だ!!
 シラスは以前にネギールに博打で負けてコキ使われ――危険海域での漁に無理やり連行された事がある。あの荒波と魔物とやたら強い魚が跋扈する地へ平然と進むマグロ野郎……今思い出しても無茶苦茶な奴だ。この貸しはいつか高値で返してもらいたいものであり。
 だが今は目の前の別のマグロ野郎に集中する。飛び跳ね蹴りをその頭へ。
 様々な感情を――ここに!
「ぬ、ぅぅううう!!」
「ド、ドン! ご無事ですか!?」
「くっそッこれ以上は流石にやばいか……仕方ねぇ撤退するぞ!!」
 膝を付くドン・マグロ・シカーリオ。まだ戦える力はある、が――これ以上は命を懸ける必要がある。必要があれば『それ』を懸けるのもやぶさかではないが、立場上海賊連合に協力しただけの身でソレを天秤に掛けるには割が合わぬ。
 丁度浸水を排除しつつ近くまで来ている己が配下の最後の船がやってきた。その戦力をドンは用いる事は無く、撤退の指示を出し――飛び乗る。
「追撃は――いらないかな」
「ま、そうっすね。追えばドン・マグロさんもいよいよガチで命がけになると思うっすし……それに、殺せっていうオーダーじゃないっすからね」
 スティアの言葉に、レッドは撃退で充分と言葉を重ねる。
 無為な殺しはしない方が吉である。相手が退くならそれで良し。逃げた船には大砲もないので、対処せずとも砲弾がこちらに飛んでくる事もない。これで仕舞いだ。
「しかし……まぁ本当に良く似ている顔だった……」
「――そうか? 全然違うと思うが?」
「別種族の顔は判別し辛いモノなのだよ。それが他者を認識する生物の性だ」
 去っていくドン。そのマグロ顔はネギールの顔とよく似ていた気がマカライトはして……無事だったネギールが返答するも、シグが補足。同種でなければ判別は難しいモノなのだだと。
「ま、今回は礼を言っておく。アイツらをぶちのめす算段は一人じゃ難しかったんでな」
「枷を付けられてた癖に何言ってんだ……たく、相変わらず減らず口を……」
 知古のシラスはため息を一つ。ネギールはああ、全くこういうヤツだ。豪胆というかなんと言うか。
「ひとまず港まで行きましょうか。そこまで送りますよ」
「いや、大丈夫だ。奴らの残したこの船を使わせてもらって俺の船の所まで戻るさ。船員も無事だしな。それにここに居るって事はお前らの中には鉄帝との戦いに参加する奴もいるんじゃねぇか?」
 マルクへの言に、これ以上イレギュラーズの邪魔になるつもりはない、とネギールは返答し。
「……気を付けな。戦争ってのは何が起こるか分かんねえもんだ。
 漁もそうだが……無事に帰れなきゃ何も意味がねぇ。命だけは大事にしな」
「危険海域に連れ出す奴の言う事かよ」
「ま、肝に銘じておきますよ!!」
 ヘマはしないさとシラスは答え。チャロロは手を振りネギール一行と別れの挨拶を。
 されば船上から手を振る救出された船員達。それらの笑顔の様子を見て。
「……今度は守れたっきゅ」
 レーゲンは満足していた。
 己は誰かの明日とその笑顔を――守る事が出来たのだと。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

代筆を担当しました茶零四です。この度はお待たせしました。

ネギールさんは見事救出。船を取り戻し……また一息ついたら危険海域へGOする事でしょう。

ご参加まことにありがとうございました!

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