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シナリオ詳細

<第三次グレイス・ヌレ海戦>襲おうとしてるのが返り討ちされないように先に襲う

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


『そこにいる』アラギタ メクレオ(p3n000084)は、食べて食べて。と茶と菓子を差し出してきた。
「ローレット連名されちゃったよ。女王陛下の声明読んだ? 『遥か外洋を征服せよ。絶望の青を捻じ伏せ、我が国の、国民の誇りをそこに刻まん――』」
 世にいう『海洋王国大号令』だ。各国の官吏試験に太字で出てくるクラスだ。
「目下の課題を近海の平定――頼みとするイレギュラーズの海上での実戦訓練。壮大な夢に向けてできることからコツコツ型で好感が持てます」
 頼られるイレギュラーズ的に。
「で、そういうのに横槍入れてくる奴って絶対いるじゃん。この場合、船の舳先だけど」
 メクレオは、盃に飲み物を注ぎ入れてカプカプ飲み干し、こちらにも勧めてくる。酒でない辺り酩酊を理由に逃げられない。用意周到だ。
「一方の舳先にはどくろがついてる。近海掃討の主な的の一つとされた海賊連合。駆られちゃう方ね。討伐されちゃうぞーってどっかの誰かに煽られて、割と悲壮になってる感じ?」
 お菓子もおいしいよ。と、まりまり食べながら差し出されたのはこの辺りで割とはやりの店のものだ。
「で、もう片っぽはがちがちの鋼鉄製。ゼシュテル鉄帝国。広いけど条件悪くて使えないのとそもそも狭くて使えないのとどっちが辛いんだろうね?」
 どっちもそれなりに辛い。だから、外に出ようとする。
「持ち前の武力を活かし、外洋へ出んとする王国の事業に『一枚噛みに』やってきたというわけだ。いや、噛ませる余地ないから。海洋王国的に、ニトリ勝ちしないとガチやばいからってとこかな」
「そして今回の作戦においては――」
 ごっくん。メクレオは、ナプキンで口元のジャムをぬぐった。
「ローレットは海洋王国側の支援につく事を決めている。という訳で、よろしくね」


「『グレイス・ヌレ海域は大型の軍船が比較的動きにくい手狭な海域です』」
 メクレオは何やら紙を読み上げだした。がsすぐ放り出した。
「小型中型の木造船ばっかなんだよね。海洋王国。強烈な鋼鉄艦を投下してくる鉄帝国とまともにやり合えるわけないよね」
 船数を減らしたくない。広い海にばらまくなら船の数中藤正の数と直結だ。
「だから、意識してこの場で迎え撃ちます」
 もちろん、鉄帝国だってバカじゃない。もっと他の場所での決戦を望んでいた。
「でもね。航路上大回りのルートを取らざるを得なかった事、ソルベ卿の差配によるスパイがいち早く鉄帝国海軍の動きを察知していた事等から、結局はグレイス・ヌレに引きこまれる格好になったわけだ。あれだよね。事前のもにょもにょが結局色々変えちゃうんだよ」
 鉄帝国相手の話を終えたあと、ぐびりと紅茶を飲んだ。ンで、もう一つあって!と、メクレオは笑った。
「海賊掃討の方ね! こいつら、鉄帝国の軍艦からかっぱぎする気でいるから。剛毅が過ぎると思うんだけど、海賊だから仕方ないね!」
 海賊とはロマンにあふれた生き物である。
「んでまあ、ほっといても鉄帝国に粉みじんにされそうだけども、それで、『海賊掃討に力を貸したから一枚かませろ』とか既成事実を盾に鉄帝国にねじ込まれるのは困るので、その前に速やかにやっちまいます」
 手負いの軍艦が通りやすい岩礁のない海域で待ち伏せしてるところを奇襲です。
「小規模の海賊がゆるぅい同盟を結んで山分けしましょーね的な。分断して各個撃破でよろしく。海賊は掃討対象なので御用か海の藻屑と相場が決まってます。あ、でもそれぞれの頭目は賞金首だから、最悪死体はキープしてた方がいいかもね」
 手配書がテーブルに並べられる。
「海蛇シーナ」「猟犬バクシー」「ウツボゴーリキー」
 共通の何かを感じる。
「この辺りで隠れられる入り江は限られてるから、隠れ場所はわかるんだよね。ただ、狭い入り江の出口を船で蓋する感じだから、集中攻撃されるとこっちも沈んじゃう訳よ。とにかく、この海域で海賊を鉄帝国が掃討したって実績を上げられないうちに自分が獲物だなんてこれっぽっちも考えてない海賊を倒すの。ぼこぼこの鉄帝国の軍艦が何事もなく、一切の手土産なく、お国に帰ってくれるのが理想」
 被害甚大にして、成果ゼロ。これほど士気を落とさせる言葉はない。
 逆に底辺海賊の首だろうと、1はゼロより確実に多く、プロパガンダは小さな1を巨大な1にするのなんて訳はないのだ。
「よろしくね」

GMコメント

田奈です。

●成功条件
 海賊の討伐。生死を問わず。
 鉄帝国の軍艦が現れる前に事を済ませること。
 戦闘状態を確認した鉄帝国の軍艦が入り江の入り口から大砲をぶっ放したら失敗です。

●地形。
 細い入り江の奥の方になります。
 三隻の海賊船が隠れています。船と船の間は、飛び移れるくらいの距離です。(有効なスキルがない場合、飛び移るだけで1ターンかかります。飛行などがある場合は移動の範疇とします)
 多少は揺れますが、戦闘行動に支障はありません。各船とも甲板はさほど広くありません。前衛後衛二人づつ以上だとそれぞれの行動に支障が出ます。
 船は旧式です。あちこちにロープが張り巡らされています。
 海賊は基本自分の船を離れません。味方が3人以下あるいは船が沈み始めたら比較的無事な船に飛び移ります。

●敵の情報
賞金首「海蛇シーナ」
賞金首「猟犬バクシー」
賞金首「ウツボゴーリキー」
 昨今の海賊掃討で親分格を失った海賊たちです。自分の船だけで立ちいかないので行動を共にしていますが、命令系統が確立しておらず、連携も今一つです。
 もともといた海賊団のスタイルで、カトラスと銃を使います。剣でえぐって銃でとどめを刺そうとします。手下ができることは全部できます。

海賊「それぞれの手下」5人×3
 こちらはカトラスで襲ってきます。まだ銃は持たせてもらえません。空いた手でつかんだり殴ったりしてきます。

海賊「ロープワーカー」二人×3
 各船にロープの扱いに長けた者が二人づついます。
 ネックハンギングや上から降ってくるものに注意が必要です。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • <第三次グレイス・ヌレ海戦>襲おうとしてるのが返り討ちされないように先に襲う名声:海洋0以上完了
  • GM名田奈アガサ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年01月02日 22時45分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

エンヴィ=グレノール(p3p000051)
ふわふわな嫉妬心
クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)
罪のアントニウム
コラバポス 夏子(p3p000808)
今日も良い日だ
レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)
前へ進み続ける森アザラシ
十六女 綾女(p3p003203)
毎夜の蝶
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)
氷雪の歌姫
彼岸会 無量(p3p007169)

リプレイ


 中破した船は、海賊にとっては据え膳だ。おいしくペロッと食べるものだ。ただ誤算と言えば、その船が鉄帝国の軍艦だということに尽きる。
 満身創痍なのは海賊の方とて同じだ。属していた海賊団はほぼ壊滅だ。彼らのお頭はそれなりの裁判の後、「公明正大に」晒し首にされるだろう。
「お頭を取り戻しに行くにはもっと強い船がいる」
「ぶんどってしまえばいいんだよぉ。壊れた船でも構やしない。女王様の鼻先にぶつけてやるには十分さ」
 マストと心が折れそうになろうとも、この先生きていくために、「海賊」をやらなくてはならない。
 できるだけ華々しく海賊をやりおおせなくてはいけない。


 情報は正確、手配も完璧。後は海賊船の甲板に上がれば戦闘開始だ。
「鉄帝に海賊……厄介なことになっていますね」
『祈る者』クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)は頬に手を当てる。落ち着かない世界情勢にため息が出そう。
「なんで海賊も鉄帝も海洋の夢を応援せずに邪魔をするっきゅ?」
『自分と誰かの明日の為に』レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)森アザラシの素朴な疑問が、核心を突く。
「邪魔にならないよう別の海に行くか応援したり、夢のお手伝いがしたいなら普通にお願いしろっきゅ」
 残念ながら、世界は平和的棲み分けできるようにはできていない。他国の発展は自国の衰退。世界というホールケーキは有限なのだ。汝、スポンジに甘んじることなかれ。
「国と国だと、中々思うように行かないことが多いですわねー」
『氷雪の歌姫』ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)はそういうのに翻弄された口だ。今頃彼女の家でも船を仕立てている頃だろう。この海だって知らない海ではない。
「賞金首と言う事は、捕まえるないしは倒した証拠があれば報奨金が増えるんですかね」
『特異運命座標』彼岸会 無量(p3p007169)としては、暮らしに直結するのでその辺りの確認はきちんとしておきたい。一般論として、最良の結果なら色を付けてもらえることがなくもない。
「質も数も装備も鉄帝を相手にするには無謀よねぇ」
『毎夜の蝶』十六女 綾女(p3p003203)の損得勘定に合わない。
「傍から見てて、勝てる見込みのない相手に海賊行為をしに行くのは、それって自殺行為じゃないかしら……?」
『ふわふわな嫉妬心』エンヴィ=グレノール(p3p000051)は、素直に口にした。妬ましくないので長所じゃない。
『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)は、使い魔にした海鳥を入り江の入り口に飛ばした。鉄帝の船影が見えたら知らせるようにしてある。
「小さな海賊が手を組んで鉄帝相手に――って気概は素晴らしいわねぇ」
 強者に立ち向かう弱者はロマンである。勝てば華。砕けても華。もちろん、ローレットとしてはぶつかる前に捕縛が理想だが。
『一兵卒』コラバポス 夏子(p3p000808)は、そういう様々な意見を聞きつつ、潮風を浴びていた。
(良いよね。海洋ロマン……)
 今、この水平線の向こうのあちこちでドンパチやっている。しかし、夏子の資金では。
(水着美女美少女踊る汗、水しぶき、笑顔……何さ? ちがくはないでしょ?)
 スーパーエゴからの圧にうっかり反論するが、女性陣は完全武装であるし、これから飛び散るのは主に血飛沫だ。
(僕ぁ今回やる気強いんだ。美酒を傾けるかも知れんからね! 飲んだことないけど美味いでしょ。素敵な女性達と飲むんだもん。女性に囲まれテンション上がるなあ!!)
 女子ばかりの職場で委縮あるいは虚勢を張る男子よりはましだ。すごくましだ。環境に対抗しようと思わないところは評価されていい。
「グフフ。さー、世界平和、世界平和!」
 グフフも隠せればよかった。星三つ。今後の成長に期待しよう。
「なるたけ、殺さないように」
 

 海賊たちに今のところ動きはない。
 エンヴィ・クラリーチェ・夏子・ユゥリアリアが右側から、アーリア、無量、綾女、レーゲンが左から。
 真ん中は早い者勝ちだ。
「もし逃げるようなそぶりがあれば操舵手か帆を張ろうとする人を狙っていきましょう」
 エンヴィの提案に、遠距離手段を持ったものがみな頷いた。
『ドーナツを食べればパワー倍増だよ!』 そんな謳い文句の甘味の余韻がクラリーチェの舌に残っている。今頃こちらに向けて航行中の鉄帝国軍艦を目指して飛ぶのは無理としてもこの戦場での戦いで移動に困らないくらいの飛行力は手に入れた。
 先陣を切って、ユゥリアリアが絶望の青い海を歌う。
 どこまで行ってもどこにも届かぬ絶望。何もなしえずただ板子一枚の地獄に脅えて人生の砂時計の最後の一粒が虚無に飲まれるのを見ていることしかない絶望。ルバイヤートの歌声は瓦解した海賊団の残党の脳裏にことのほかよくしみ込んだ。
「残~念! もうバレてる~」
 夏子は、甲板に降り立ち、大音声をかました。へらへらと笑う青二才。
「ササっと投降すりゃ良厚遇を約束するが~?」
 槍を手にし、そう言ってのける姿に殺到しようとする海賊共。だが、隙がない。自分たちの船の上だというのに、青二才の間合いだけ完全に向こうの「城」になっている。
 その頭上に影が差す。夏子の城壁が「肌」で感じる。何かが波打ち、がらりと崩れる気配がする。
 マストが夏子の上に降ってきた。
「オラオラ、ぺしゃんこになりやがれ」
 ひょろりと細長い男「猟犬バクシー」がけらけら笑う。直撃は免れるが砕けた機変や波打つ帆布に吹っ飛ばされる。構えていなければ序盤で戦線瓦解だ。
「この状況で笑えるの。豪胆なのね。妬ましいわ」
 引き金の感触がエンヴィのふわふわした魂の輪郭に一定のカタチでいるよう命じるのだ。
 嫉妬の力は弾丸となり、猟犬のどてっぱらに躊躇なく撃ち込まれる。吹きあがる炎。火傷に染み入る妬みの毒。出血を強いるそねみの呪い。痛みと衝撃ですぐそばにいるはずの手下の呼ぶ声を聞こえない。
「まだ船長を気遣えるの。絆があるのね。妬ましいわ」
 銃声は忌まわしき叫びをあげて怨霊を呼び、標的に襲い掛かるようけしかける。
 ウツボゴーリキーが手下を二手に分けようと口を開こうとした瞬間、その耳元で女の声がした。
『2人分首を持って帰ればいいの、あなたは見逃すからそこで大人しくしてね』
 宙に浮かぶ女が裏切りを示唆する。囁きに酒精の香りがする。
『もし動き始めたら――あなたの首の保障はないわぁ!』
 ゴーリキーの動きが止まった。
「頭」
「いつでも飛び込めるようにしとけ」
 今は動くな。ゴーリキーはそう言った。


「嫌がらせ程度にはなるでしょう」
 夜に飛ぶ蝶々はヒトの魂なのだ。綾女がするすると袖を振ると、海賊たちの顔から血の気が引いていった。賭け外のない大事ななにかが抜け落ちていった感覚が残滓となって海賊たちの首の裏に残る。
 モリアザラシを抱えた獣人――もとい、獣人に自分を抱えさせたモリアザラシが、海賊船の舳先を滑る。
「鉄帝のせいで時間制限があるし」
 レーゲンは口をもぎゅもぎゅ動かした。まだ、鉄帝国の船の気配はしない。
「速攻っきゅ!」
 遍く世界の様々な場所で自分を投げさせ続けて幾星霜。熟練の技をその骨身で受けるがよい。というか、「お前に危害を加えるが死なせてやらねえ」という神聖な暴力をまき散らす森アザラシが吹っ飛んでくるというのはそうあることではない。
 床に激突して苦鳴を漏らすレーゲンを間髪入れずにグリュックが拾う。
「何やってんだい、おまえたち!」
 女海賊「海蛇シーナ」の怒声が響く。うめいていた海賊たちがあたふたと立ち上がり始めた。
「ローレットのコウモリ共が。今回は女王の犬かい。あっちにもこっちにもいい面しやがって! あんた達みたいなやつを見ると、こっちゃあ――」
 突進してくる。抜き放たれるカトラス。
「虫唾が走るんだよぉっ!」
 グリュックに突き立てられる白刃。傷をえぐるようにぶっ放される銃弾。
 一手待っていた無量が「錫杖」の鯉口を切った。ずらりと引き出される大太刀の銘は斬られた鬼の名、振るうは鬼。
 息を吸って吐くように殺す鬼は刃を当てなくとも殺意で斬る。血がしぶかなくても命が遠のく。斬られていないのに殺されたと叫ぶ魂が凶器を呼び、場は断末魔の狂乱に満ちる。
 劣勢の戦場に転機を与えるため縄を繰り出そうとしたロープワーカーの背後に忍び寄る酒の気配。
「まずは厄介そうなあなた達からぁ」
 キリキリと神経を研ぎ澄ましても、アーリアの声はふわりと柔らかい。
 黒い手袋の指先に触れる唇がひそやかな音を立てる。酒の香りと一緒に発生したとろりと甘ったるい力場はロープワーカーを包み込んだ。
「ドキドキしてくれると嬉しいんだけどぉ?」
 酩酊を振り払うように振り回した腕に縄が絡まる。普段ならあり得ない事態だ。
「術のかかりを待っていました」
 無量の足が板子を蹴る。
 アーリアが身をひるがえした影から湧き出でるように、深海から顔を出す人魚のように、余りにもあっけなく訪れるのが死の刃だ。
 何をしても無駄な一撃がある。
 次の瞬間、ぞるりとロープワーカーの首が飛んだ。
 甲板に血しぶきが落ちるときには、もう無量は次のロープワーカーに向けて走っている。


「野郎ども。飛んでる魔女を叩き落せ!」
 ゴーリキーの限界だった。
「シーナ! バクシー! まだ生きてやがるならこっちへ来い! 手下連れて乗り移れ!」
 ロープからロープへ飛び移りながら、海賊達の反撃。
 あらぬ方向から振るわれるカトラスに、ゴーリキーの大口径の銃弾がばらまかれる。
「 『一兵卒』コラバポス 夏子たあ、俺のこと。お前ら前にも後ろにも行けなくしてやっからそう思え!」
 右側の船では高らかに名乗り続ける夏子に攻撃が集中する。祖の守りは堅く、それでも負った傷はクラリーチェが隙もなく癒していく。
「潮時が読めないんじゃあ 海賊としちゃおしまいでしょ」
 煽りとも説得ともつかない言葉の下に、自分以外は傷つけさせないという決意が見える。夢は打ち上げを駆け巡る。
 ドッカンドッカンと轟音を上げさせながら、いい感じに後衛たちが巻き込める位置に海賊どもを吹っ飛ばす。
 それもかなわないほど、徐々に苛烈になる攻撃に夏子は言葉少なになり、防御に専念する頻度が上がる。
 それでも、名乗り続けることはやめなかった。敵の怒りを自分に向けさせるために。
「だから、『一兵卒』コラバポス 夏子だってえの! ごめんね、わかりにくくて!」
 夏子めがけて飛んでくるハンギングロープとカウンターでユゥリアリアの氷の鎖がロープワーカーの首に絡みつき、見る見るうちに巻き取られる。
「集中攻撃お願いします!」
「もちろん」
 エンヴィの銃口が向けられる。
 銃弾を追いかけるように怨霊が跋扈する。
「命を無下にする気はありませんが、容赦する気はもっとございませんわー」
 容赦したら、夏子の首が絞めあげられてしまう。それは看過できない。
 凝結する氷の突剣。ユゥリアリアがほほ笑む。
「大丈夫。痛くないですよー」
 本当にちくっともしないのに、その鋭さに、刹那、心が生きるのをやめてしまうのだ。


 先に左側が片付いたのは、中央からの支援も右側の船に引きつけられたのが一因だろう。
 丁寧に確実にそぎ落とされ、甲板に突っ伏していく海賊たちのほとんどはどうにか息はある状態だった。
「あらごめんなさぁい、やっぱり欲が出たからあなたも倒しちゃう!」
 アーリアの声がはしゃいでいる。いい女にはちょっとくらいの嘘はスパイスだ。
 ウツボゴーリキーは何も言わずにたっぷりの銃弾をアーリアめがけてぶち込んだ。
 ダメージを回復する手段があり、接敵せずに攻撃する手段が潤沢な方に勝利の女神は微笑んだ。降伏勧告できる程度に。

「鉄帝相手に海の藻屑になるぐらいなら捕まった方が助かる可能性が高いと思うのよね。今ならいい事もしてあげるわよ?」
 アーリアによる勧告。
「大人しく投降すれば命までは取りません。…私は聖職者です。貴方が『天へ還る為の祈り』を聞きたいのならば躊躇しませんが…。どうなさいますか?」
 クラリーチェによる天へのお誘い。
 生かしておいてはやるけど、別に死んでも構わない。
 無量は生きていようが死んでいようがお題は変わらないというのを納得したので、割と澄み切った心だ。変わらないなら、斬らせてくれたらもっとよかったが。
 海賊たちは互いに傷だらけの顔を見合わせ、顔をゆがませるようにして笑い合い、何やら、手真似でいくつかやり取りした後、ぽいぽいと手にしていた獲物をほおり出した。
 この国出身で色々仕込まれたユゥリアリアにはわかったが、船乗り特有の符丁で「クジラに飲まれた」という種類のものだった。何もかもご破算になった時に使う。
「降参。降参だよ」
「あんた達みたいなのにお祈りされるのはまっぴらだ」
「野郎ども。団長と同じ台にくくられっとしようぜ」
 ゲラゲラゲラと哄笑が沸き上がる。
 血しぶきと不幸と呪いが撒き散らかされた甲板の上。死の淵をのぞいてのぞいて、あとは真っ逆さまに落ちるだけなことに気が付いてしまったのだ。
 生きてはいる。心が死んだのだ。
「いいか。俺らの船を焼こうが、一族郎党まで縛り首にしようが、海賊はなくならねえ。国中から海賊を全部狩り尽くしたってなくなったりしねえ」
 縛り上げられながら海賊達は笑う。
「女王様が海賊になるって大宣言したんだからな。これからは国が海賊をやるのさ。そうだろう? 海の向こうのお宝を力づくでかっさらってくるってんだろう? 海賊じゃねえか。俺達と同じだよ」
 猟犬が吠えたてた。
「誰が女王様を捕まえるってんだい? あんたたちかい? そん時は別の奴らにやとわれたあんた達だよ。傑作だ。笑いが止まらないねえ」
 海蛇が身をよじらせる。
「縛り首にされたら絞首台で笑ってやらあ。見に来いよ。俺らが女王様の名の元に広場でぶら下げられるのをな!」
 海賊のデッドオアライブは、海で殺されるか陸で縛り首かの二択だ。生きて許されるということはない。
「そのヤル気は俗世との関係修復に使うんだよ」
 夏子がぼそっと言った言葉に海賊たちは更に笑った。
「俗世は俺らが嫌いで厄介払いしたいんだとよ。まあ、嫌がらせに死ぬまでは生きてて女王の財布の中身を減らしてやらあ」


「……賞金で飲みに行くの、だめかしら?」
 アーリアが言った。
「賞金で祝杯、いいと思うわ。どうせなら派手にやりたいわね」
 綾女がふわりと笑った。
「勿論良い…といいますかご相伴に預かりたいぐらいですがー……色々引き渡しとか書類とか面倒なこと、きちんとやってからにしましょうねー?」
 ユゥリアリアはきちんとしつけられたのでその辺りに抜け目がない。そこを怠ると面倒事が多いのはサルベージも傭兵も一緒だ。
 たった今、水平線の向こうを鉄帝国の軍艦が通っていくのを各々が放った使い魔たちが教えてくれる。
 ほんのわずかの間だけ静かにしていよう。入り江の奥は軍艦からは陰に入って見えない。
 海賊狩りが行われたが、鉄帝国とは何の関係もないまま終わった。
 入り江の奥には何もなかった。

成否

成功

MVP

アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯

状態異常

なし

あとがき

お疲れさまでした。賞金首三人は生かしたまま逮捕となりました。
海賊掃討は更に進んでいくでしょう。
みなさんの今後のご武運をお祈りいたします。

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