シナリオ詳細
<青海のバッカニア>ブルー・アシードの底
オープニング
●海洋大号令より
先日、海洋において大号令が発せられた。
それは外洋征服という大事業の開始を告げる合図であり。
それは海洋の民が抱く期待と熱を膨らませる引き金である。
すでに祭りのような雰囲気を出している海洋。ここで出ずにいつ出るのだと船乗りへ職を戻す者、新たに船乗りとなる者もいる。もちろん常の仕事をこなしながら、吉報を待つ者もおり──そのような姿は海中に住まうディープシーにも見られた。
例えば、海洋の外縁に位置する海。
ブルー・アシードの広がる海底では、ある一族が変わらず遺跡を守り続けている。その高い戦闘能力により、遺跡は1度として破られたことはなかった。
けれど何度と返り討ちにして『あの遺跡は破れない』と広く伝わりながらも、立ち向かってくる者はいなくならない。それは海洋の民に多く見られる冒険心によるものだろうか。
大号令以降、遺跡に向かってくる輩が増えたことを考えれば──まあ、きっとそういうことなのだろう。
(ここには宝などないのですけれど)
【ク・リトル・リトルマーメイド】アリアは再び部族外の者が向かってくる気配を感じながら、小さく溜息を零す。此度の警告は聞き届けられるだろうか。
アリアの部族が守り続けるこの遺跡は、あるモノが封印されている。それは確かだ。けれどもそれは決して良いものではない。言うなれば、災厄そのものであろう。
──侵入者よ、立ち去りなさい。
──ここにお前たちの望む物はない。
──生きて帰りたくば、船を引き返しなさい。
海上へ顔を覗かせ、部族の者と共にやってきた船を囲む。その甲板にいるのはディープシーの青年十数名だが、警告を聞き入れるような様子ではない。
「うるせぇ、これでもくらえ!」
青年たちが掲げた腕輪に、アリアたちは体の変調を感じて瞠目した。
姿形が変わっているわけではない。
身動きが取れないわけでもない。
ただ、ひどく──体が重い。
「よし、効いてるぞ!」
「今のうちにやっちまえ!」
まるで子供のようなはしゃぎっぷりで、青年たちが海へ飛び込みアリアたちへ襲いかかる。使われた謎のアイテムは彼らを攻勢へ持ち込ませるに十分だった。
アリアたちとて遺跡をずっと守ってきた者たちだ。押されているとはいえ、そう易々と倒されるような者はいない。それでも──いつかそうなるであろうことは、想像に難くなかった。
●いざ、海洋へ
「──誰か!」
バンと勢いよくローレットの扉を開けたのは『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)。彼女が肩を貸しているアリアの様子にブラウ(p3n000090)が目を丸くして飛び跳ねる。
「ボロボロじゃないですか!」
「うん、フラフラしながらこっちに向かってきてて……あ、フレイムタンくん」
『焔の因子』フレイムタン(p3n000068)が焔に「代わろう」と告げてアリアを椅子まで運ぶ。ありがとうと告げる焔の傍ら、目を瞑っていたアリアがその睫毛を震わせ、視界に一同を映した。
「ああ……ここはローレット、なのですね。けれど休んでいる暇はありません。早く、皆の元へ行かなければ」
皆様にも、お力添え頂きたいのです。
アリアの言葉に、2人と1匹は顔を見合わせた。
「ええと、つまりこうでしょうか」
話を聞いたブラウが目を瞬かせながら口を開く。
アリアは遺跡を守る部族の1人。いつものように海域への侵入者と相対していた。しかし相手はマジックアイテムらしき物を持っており、アリアたちは防戦一方となっていた。
「私たちの部族は、水中において高い運動能力と戦闘能力を持ちます。それを無力化するような……いえ、どちらかと言うと動きを阻害するような、でしょうか」
酷く重たい体では思うような動きができない。このままでは突破されてしまうと、部族の者たちは防戦を続けながらアリアをローレットへ送り出したのだそうだ。
アリアはその時を思い出しているのか視線を伏せながら、呟くように言葉を零す。
「まだ戦いは続いているでしょう。……いえ、そうでなければならないのです。私たちはアレを守らなければなりません。
お願いします──どうか、お力添えを」
- <青海のバッカニア>ブルー・アシードの底完了
- GM名愁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2019年12月19日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●いざ、水の中へ
海風が頬を撫でる。海上は強い潮の香りがした。
「! これです」
ともに船で現地へ向かっていたアリアが声を上げる。体に重圧のかかるようなそれは、イレギュラーズたちが話に聞いていたもの。そしてアリアがすでに身を以て知っているもの。
「確かに体が重く感じるんだぞ」
『湖賊』湖宝 卵丸(p3p006737)が体を見下ろし、不思議そうな声を上げた。見えない何かがのしかかっているようだ。けれど船は変わらぬ速度で進んでいるようなので、生きているモノに影響があるのかもしれない。
(変な道具を使うとは聞いていたが……成る程)
海の中での戦いというだけで苦手なのに、と『白狼剣士』天之空・ティーザ(p3p007693) は心の中で小さく溜息をつく。しかし戦場がいかなる場所であれど、逃げることなどできはしない。そしてこの効力が残っているということは──侵入者たちもまだ、遺跡の元にいるのだろう。
イレギュラーズたちが海中戦闘用スーツの着用を確かめた頃、アリアが「このあたりです」と船を止めさせた。海中の様子は上から伺うことができないが──行くしかない。
イレギュラーズたちは真っ先に飛び込んでいったアリアに続き、海の中へとその身を潜らせた。
水に包まれる。それでも通常と同じく呼吸ができるというのは何とも不思議だ。見下ろせば薄ぼんやりと遺跡のような何かが見え、その手前に──いた。
真っ先に向かっていったのは卵丸で、その後をアリア、そしてイレギュラーズたちが追いかける。
「お待たせ、助けに来たんだぞ!」
卵丸の声に部族たちが、そして侵入者である海賊たちがはっと顔を上げる。彼が部族たちの元へ到着するとほんの少し遅れて『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)が緋色の斬撃を放ち気を引きつける。焔は卵丸に追いつくと部族たちを背に海賊を睨みつけた。
「そこまでだよ! これ以上傷つけさせないんだからっ!」
「お前達の相手は、卵丸達なんだからなっ!」
「ちっ、増援か」
「構わん、やっちまえ!」
敵の攻撃が焔たちへ向けられかというところで『海抜ゼロメートル地帯』エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)の放った衝撃波、それを纏う強い水の圧が彼らにかかる。なんだなんだとそちらへ視線が向く中、水圧を免れた海賊たちの元は一陣の風──この場合は水の流れか──を感じた。
「たとえ火の中水の中。サンディ様の登場だぜ!」
ニッと笑う『アニキ!』サンディ・カルタ(p3p000438)。一気に視線を集めた彼は、しかし心の片隅でふと考える。
(場合によっちゃ、俺も襲う側だったかもな……)
イレギュラーズでなかったら。スラムで生き続けていたら。
──全ては『もしも』の話だけれど。
海賊たちの攻撃がサンディと、そしてエイヴァンへ向けられる。そこへ飛び込んでいくのは、嬉々とした表情をした『無影拳』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)だ。
「水中戦なんてメッタに出来ないから楽しみだね! さあ、殴り合おうか!」
戦いが好きで仕方がない──そんなイグナートの戦い方は、敵にも全力を出してもらう一風変わったもの。強い者を求める彼らしい闘法だ。
その乱撃の最中、ふわりと海賊の頭上に影が差す。
「……気を引き締めてかかるとしよう」
舞うように、流れるように。ティーザのもつ刀が海賊へと差し迫る。
「──聞け、分からず屋共め!」
叫んだのは、『ラド・バウD級闘士』シラス(p3p004421)だ。
「この遺跡に宝なんて無いんだよ! アンタらが望むものは何1つ無い!!」
撤退を望む言葉。その言葉はしかし、聞き届けられない。確かに聞こえてはいるのだろう。けれど彼らは聞く耳を持たなかった。
(まあそうだろうな)
こうなることくらいは織り込み済み。それでも一心に声をかけ続ければ心変わりの可能性だってなくは無い。
「みんな大丈夫!?」
『この海に希望の花を』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)はずっと戦い続けていた部族の者たちへ近づきながら魔術を展開する。彼女を中心に白く小さな花が──花を思わせる魔力が広がり、零れ落ちて彼らの傷を癒していった。
●彼らを止めんが為
魔力拳銃から放たれた弾丸が敵のみを狙い飛んでいく。シラスは海賊たちを見ながら「厄介だな」と小さく呟いた。
手加減しても容易に倒せるほど弱い相手でもなく。しかしここではなるべく生かして帰したい相手だ。
(アリアたちの部族のためにも、デマだと納得させないとな)
倒してしまえば『宝を独占している』という嘘に信憑性が出てきてしまう。戦いや衝突が増えれば増えるだけ、アリアたちが犠牲になる可能性も上がるのだ。
なればこそ、彼らが話を聞き入れてくれると良いのだが。
「……っ、まだまだだぜ。もっとかかってこい!」
サンディが自らを回復しながら声を上げた。エイヴァンという頼もしい存在は不屈の心をサンディへと宿らせ、サンディへ攻撃すればするほどその代償は敵へ跳ね返る。完全なリカバリーができるわけではないが、アレクシアが戦線復帰するまでの辛抱だ。
「命までは取らないけれど、オレの手刀はちょっと痛いよ!」
イグナートが手を振り下ろす。その腕にはまっているのは、先ほど気絶した海賊より奪った腕輪だ。
(この腕輪があると、やっぱりカラダが軽いね!)
腕輪がない時とは大違いだ、とイグナートは小さく口角をあげる。
エイヴァンが爆裂する一撃を放ち、周囲にいた海賊たちを巻き込む。しかし一筋縄ではいかない相手だ。膝を降りかけた彼の前へ、1つの影が滑り込んだ。
「悪いが……これより先は私の相手をして貰おうか!」
ティーザがエイヴァンと海賊たちの間に入り、鋭い瞳で彼らを射抜く。そこへ回復を終えたアレクシアと部族の者たちが加勢に入った。
「お待たせ!」
その魔力が形取るは、白黄の花。アレクシアの生み出す調和の力がエイヴァンを癒す間にも、部族たちの援護射撃が敵を襲う。
部族の者たちも強者だ。けれど皆が前へ出ればそれだけ傷つき、倒れる。誰も死なせないためにとアレクシアが援護としての戦場復帰を願ったのだ。
「あいつが怪しいと思うんだな」
不意に卵丸が1人の男を視線で差した。最初に『やっちまえ』と仲間に号令をかけていた男だ。ティーダやイグナートが了解した、とその言葉に小さく頷く。
リーダーらしき男の周りには手下が幾人か。あの辺りにいる者を狙えば必然と注目を浴びるだろう。つまり、リーダーを狙うならあの辺り全てを相手取ることになる。
まず飛び込んだのはイグナートだ。拳を撃ち込む中、卵丸がリーダーと思しき男へソニックエッジで仕掛ける。
「卵丸は蒼蘭海賊団団長、湖宝卵丸! 正義の海賊だ! お前達の好きにはさせないんだからなっ」
「はっ。宝を横取りでもしようってか? 嬢ちゃんはさっさとお家にでも帰りな!」
嘲るような笑いに卵丸が真っ赤になる。
「らっ、卵丸、男なんだからなっ!」
「は? ……マジかよ」
ええ、と勝手に失望した顔をする男。マジです。
そこへなお言葉をかけ続けていたシラスが海賊たちへ語りかける。
「何度でも言うぜ、ここに宝なんてない! 俺たちはアリアたちの部族を助けに来ただけだ!」
彼の言葉により、少しのざわめきが海賊たちから起こり始めている。それが大きくなるのも時間の問題だ。
(全員倒すか、俺たちが倒れる前に心変わりしてくれたら良いんだが)
そう願うシラスの拳銃から、複数の魔力弾が放たれる。何人かはもうひと押しだ。
「投降する気になったらブキを捨ててね!」
「誰が!」
イグナートの言葉に反射で返したのだろう海賊はすっかりボロボロで、ティーザの拳により気絶する。ぱっと辺りを見回したティーザは同じような敵を見つけると、後方にも声が届くよう張り上げた。
「今だ! あの者を狙い澄ませ!」
その言葉に呼応して飛び道具が海賊を打つ。畳み掛けるようにサンディが「まだまだ俺はいけるぜ!」と勇猛果敢な様で味方を鼓舞した。
1つ、また1つと腕輪がイレギュラーズたちの元へ渡っていく。持っていなければ自ら、持っていればまだ持たぬ者へ。本来の力を取り戻すとともに、少しずつ力量の差は縮まっていく。あとは戦いが終わるまで、どちらが持つかの問題だ。
「散開しろ! 狙われるぞ!」
そう声を上げる男はやはり、この集団のリーダーらしい。とは言ってもすっかり敵視しているサンディたちから目を離すのは容易ではなく、その間に焔が緋燕を叩き込んだ。サンディたちが最後の粘りを見せ、しかし負けじと海賊たちが応戦する中、シラスの声が敵の士気を削ぐ。
そしてとうとう──卵丸が素早く背後を取り、リーダーの男を気絶させた。
「これ以上は無意味だ、大人しく投降するんだぞ」
卵丸の言葉に残っていたメンバーが辺りを見回す。
リーダーは倒された。残っているのは自分を含め数人のみ。相手はイレギュラーズと部族の者たち多数。
しかも誰1人として殺されていない。ある程度の手心が加えられているのである。それだけなら最後まで戦い抜いたかもしれないが──。
「いい加減諦めろよ。ここに在るのはただの遺跡と、アリアたちの部族だ」
シラスの言葉がようやく彼らへ届き、後押しとなる。本当に宝はないのだという実感を感じ始めながら、海賊たちは誰からともなく武器を手放した。
●冒険の心はいつも
「……ああ、その、なんだ。戦闘中はすまなかったな」
余計な口出しをしてしまったと気まずそうに言うティーザに、むしろ助かったと部族の者たちは返す。部族の者だけであればなくとも良いのだが、外部の者──今回ならばイレギュラーズ──が混ざっていたとき、連携するにも限度があるからと。
そうかとティーザがいくらか胸を撫で下ろしている、それより少し離れた場所で。
「冒険心が昂るのはいいが、狙うものすらまともに選別できないなら海賊の名折れだな」
「これからは心を入れ替え、正義の海賊になるんだぞ」
エイヴァンがそう告げながら肩を竦め、卵丸が腰に手を当てて海賊たちへ諭す。すっかり戦意喪失した海賊たちから不思議な腕輪は全て回収された。それをひとつ手に取って焔がむむむと眉を寄せる。
「こんな腕輪、どこで手に入れたの?」
マジックアイテムと呼ばれる類のものだ。特殊性の高いものを、そこらにいるような普通の海賊が簡単に用意できるとは思えない。
もし誰かに貰ったのであれば、誰でもこれを得る可能性があるということ。そうであれば、アリアたちが再び危険に晒されかねないのだ。
しかし、海賊たちは「お宝に混ざっていた」と告げた。エイヴァンが本当かと睨みを効かせてみても変わらない。
「ほ、本当だ! この前奪ったお宝のひとつなんだ」
彼らもこれに苦しめられ、しかし辛くも強奪に成功したのだという。その口調には真実味があるが──念には念を入れて。
「この腕輪は全部預かるよ。船の中も確認させてもらうね」
「ウィッス……」
きっぱりと宣言した焔に海賊一同ががっくりと肩を落とす。あまり悪い者たちではないのかもしれないが、今回のことがあった以上アリアたちには対抗手段があった方が良い。
船の中に腕輪の予備がないか確認した焔たちは、アリアたちへ腕輪を渡した。
「アリアちゃん、これがあれば効果は防げるんだよね?」
「そのはずです」
ありがとうと微笑むアリア。それを見ていたイグナートが自分も1つ欲しいと声を上げる。
「オミヤゲにしたいんだ。駄目かな?」
便利で面白そうだから、という彼にアリアは頷く。部族だけでは余ってしまう数だったようで、エイヴァンもならばと1つ頂いた。これだけ数があるということは、この腕輪もどこぞの部族や一族が揃って身につけるものだったのかもしれない。
「あと、遺跡って近付くのもNGかな? ちょっと見るだけとかもダメ?」
そわそわキラキラと『興味津々です!!』という目を向けるイグナート。しかしアリアはしっかりと、そして申し訳なさそうに首を横へ振った。
残念そうに肩を落としたイグナートは、しかし無理に見ようという様子はない。それをしてしまったらこの海賊たちと同じになってしまう。
その海賊たちは、他の皆に「ここには宝などない」と説明をされていた。
「少なくとも、この腕輪のような宝はここにはないぞ」
エイヴァンの言葉を聞いた海賊たちが顔を見合わせる。その口から出てきたのは「宝自体はあるのでは?」というような疑問で。
それに否と返事をしたのはそばで聞いていたイグナートだ。
「ここにある宝は、アリアのブゾクが宗教的な理由で大切にしている遺跡だよ。シサンテキな価値は一切なし!」
「そう。それにここには人が住んでるんだよ」
イグナートの言葉を引き継いだアレクシアが癒しの力で海賊の傷を治す。アレクシアの行動に海賊たちがぽかんとした表情を浮かべる中、彼女はにっこりと笑った。
「だからね、迷惑を掛けたお詫びとして……ちゃんとここに財宝はないって事実を広めてもらえないかな?」
「いいね! さっきオレが話したようなナイヨウでどうかな?」
宝を目的としてここへ来る輩は多い。その目的自体がないと知れれば、向かってくることもないだろう。
アレクシアの提案に海賊たちは、しかし神妙な顔になる。
「姐さんたちよぉ。海は広い、俺たちだけじゃ広めきれねぇ。絶対にここへ誰もこない、なんてことにはならないぞ」
「それでも少なくなるならいいと思う。ね、アリア君たちはどうかな? それで見逃してあげてほしいって私は思ってるんだけど」
振り返ったアレクシアにアリアが柔和な笑みを浮かべる。彼女たち部族としても、向かってこないのなら戦う理由はない。そもそもの理由だって追い返したいというだけだ。
それじゃあ決まり、というところで不意にサンディが海賊たちへ近づいた。なあ、と声をかけられた彼らは一様にサンディを見上げる。
「今の海洋の情勢知ってんだろ?」
「あ、ああ。大号令だろ」
お陰でやりづらくて仕方がねぇ、とぼやく彼らにサンディはニッと笑みを浮かべた。
「ああそうだろうよ。このタイミングで海賊をやる旨みはねーし、ここまで普通の人が守ってる宝なんてのはたかがしれてる」
裏を返せば、どんな宝であれど狙わねばならない海賊事情ということかもしれない。だがそれも失敗した彼らは海賊としてやっていけるのかと言われれば──苦しいだろう。
だから、とサンディは彼らを誘った。
「アテがねーなら、どーせなら『絶望の青』目指さねーか?」
海図と、私掠許可証がここにある。儲けが出るかはその時まで──或いはその先までわからない。だが冒険心の満たされるような面白い瞬間が少しくらいはあるだろう。
「な、どうだ?」
「絶望の、海……」
海賊たちの顔にじわじわと浮かんでくるのは──興味と期待、だろうか。
「……行ってみようじゃねぇか! 絶望の海!」
おお! と海賊たちが盛り上がる。その様子を見れば、彼らがその冒険を心から楽しみにしていることは疑いようがない。
「さ、ボクたちは帰ろっか! またね、アリアちゃん!」
彼らの拘束を解き、焔がアリアたちへ手を振る。アリアとその部族たちはイレギュラーズへ手を振り返して見送った。
かの部族が何を守っているのかは語られないまま。これからもあそこは守られて続けるのだろう。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
お疲れ様でした、イレギュラーズ。
無事に遺跡は守られ、海賊たちは遺跡に何も無いことを広めてくれたようです。
言葉を尽くした貴方へ。海賊たちが最後まで戦わなかったのは貴方のおかげです。今回のMVPをお送りします。
またのご縁がございましたら、よろしくお願い致します。
GMコメント
●重要な備考
<青海のバッカニア>ではイレギュラーズ個人毎に特別な『海洋王国事業貢献値』をカウントします。
この貢献値は参加関連シナリオの結果、キャラクターの活躍等により変動し、高い数字を持つキャラクターは外洋進出時に役割を受ける場合がある、優先シナリオが設定される可能性がある等、特別な結果を受ける可能性があります。
『海洋王国事業貢献値』の状況は特設ページで公開されます。
●成功条件
海賊たちの撃退
●情報精度
当シナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は起こりません。
●海賊×15人
近接武器を持った海種の男たち。大号令によって冒険心が大きくなっているようです。
遺跡には宝が眠っていると強く信じており、アリアたちの部族を『宝を独占するずるい奴ら』と認識しています。倒して戦意喪失すれば、話を聞いてくれるかもしれません。
反応と回避に優れていますが、個々の攻撃力は比較的低め。数人で1人を集中攻撃する傾向があります。
●マジックアイテム
海賊たちが使用した物であり、腕輪の形状をしています。
その効力は体を鈍重にさせるもののようですが、海賊たちは支障なく動いていたとのことです。全員がそれを所持していることから、『腕輪を持たない者全て』に効力があると考えられます。
●友軍
・部族の者×6
・アリア
イレギュラーズたちが現場に着くまで海賊を押さえてくれている海種たちと、アリアが友軍として参加します。傷を負っていますが致命傷ではありません。
戦いにおいてはイレギュラーズに数段劣りますが、マジックアイテムの効力をどうにかできるならその限りではありません。
彼らに関しての扱いはイレギュラーズに一任します。明記がなければ『合流後も引き続き頑張って戦う』となります。
また、彼らの生死に関しては成功度に影響しません。
全体的なステータスは比較的高めですが、マジックアイテムによって特に反応・機動力・回避が鈍いようです。
●ロケーション
海中です。遥か下には遺跡らしきものが見えます。
現地までは船で送ってもらえますが、現地では敵味方共に水中戦を繰り広げているため、イレギュラーズも必然と水中戦を求められます。
●特殊
この戦いにおいて、練達製の海中戦闘用スーツが貸し出されます。
<泡渦カタラータ>で使用されたものと同じであり、着用することで水中適性を持たない人も水中行動を行えます。海種は着用する必要がありません。
●ご挨拶
愁と申します。
こちらは炎堂 焔様の関係者依頼となります。
アリアたちのためにも、遺跡への侵入を試みる海賊たちを撃退しましょう。
ご縁がございましたら、よろしくお願い致します。
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