PandoraPartyProject

シナリオ詳細

Give me a curse of love

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●Because,I Want to mark of "Yours"
「娘を探し出して欲しい。そのうえで、『それが娘でなくなっていたならば』殺して欲しい」
 幻想北西に領を持つ小貴族の屋敷に呼ばれたイレギュラーズは、どこか曖昧な響きを持ったその言葉に首を傾げた。
「娘かそうじゃないか、ってそんなの肖像画でも見れば一発じゃんか。何、アンタの娘は夜な夜な人の肉でも食う化け物かなにか?」
「そんな化け物を飼ってはいない。だが、娘の『ありさま』は大差ないのかもしれんな」
 イレギュラーズの皮肉に応じた貴族の言葉は、娘を語っているとは思えないそれだった。まるで、娘が『そうでないもの』になっていることは確定しているかのようだ。
「娘……フランシスカは3ヶ月前に一度姿を消している。その時は、うだつの上がらない、つまらぬ占術師の男に連れ去られたのだがな。奴めの手際は何もかも悪かったので見つけて見せしめに惨たらしく殺してやった」
 胸糞の悪い口ぶりだが、貴族の未来を背負った一人娘が得体のしれない男に攫われたのだ。親として多少手荒な真似をすることは、ままある話だろう。やりすぎ感はあるが……。
「問題は、戻ってきた娘の体だ。全身に墨を彫られ、得体のしれない塗料を使って図絵を描かれたあれは見るに耐えぬものだった。八方手を尽くして目立たぬようにはしてやったが――傷物になった娘の噂は、隠し通せるものではない。そういうものだ」
 貴族は話を続けた。最終的に娘の姿は元通り……とはいかずとも、最小限の違和感を持つに留まるまでは治療したのだという。
 だが、それもまあ気休めのレベルである。彼女はほどなくして記憶の混濁をきたし、ついには2日前、姿を消したのだという。
「使用人がいなくなるまえのあれの言葉を聞いている。殺した占術師の男の名を口にしていた、とな。
 口惜しや、あれはあんな男に人生をいいようにされ、死してなお心まで……! だが、まだ間に合う。今連れ帰り、娘を改めて身綺麗にすればまだ間に合う!」
 熱っぽく語る男の姿を見て、イレギュラーズ達はどこか胃の腑に蟠っていた違和感の正体にようやく気付く。
 この男は、貴族は、『貴族』であって『父』ではないのだ。
 表沙汰の体面のために家族を、娘を求めているにすぎないのだ。
「娘には追跡兼護衛を付けている。どうにもならなければ奴らを殺すことも厭わぬ」
 つまり、その護衛とやらをつけてなお娘の足跡を追えない意味は――。
 焦燥感に駆られたイレギュラーズ達は、即座に行動を開始した。

●I'll beg your love(not fuel)
 私は彼を愛していました。
 彼も私を愛している、といいました。
 「あなたは不幸になる」と言い、「あの家から出る手伝いをする」と言ってくれたのです。彼の指先が、彼の持つ道具が、私にふれることのなんと甘美なことか!
 私はあの家から出たかった。でも、それはあの人の側にいたいと言うだけで彼を失いたいだなんて思っていなかった!
 彼はいなくなってしまった。
 私は二度とあの家から出られなくなってしまった。
 どこで間違えたのだろう。
 何を間違えたのだろう。
 私は彼の残り香に触れ、彼の痕跡をなで上げ、彼が好きと言ってくれた髪をくしけずってここに有る。
 私は、私のままだ。
 深い森の奥の奥。月の光は、もう見えない。

GMコメント

 適当英語だけどそれなりこう、色気をなんかできる意訳があればいいのにと思いました。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●成功条件
 敵勢力の殲滅

●フランシスカ
 幻想貴族の一人娘。占術師の男に攫われ、全身を弄られ傷物になったことで貴族の嫁入りの線は途絶え、自宅に軟禁状態にあった。今回脱走。監視兼護衛を付けているが定期連絡等はない状態。
 現在の外見はイブニングドレスにピンヒール、白手袋。動きが阻害されていない。
 なんやかんやで貴族が消したと思っていた入れ墨やらなんやらは全部健在。そしてその効果で肉体が超強化されている。徒手空拳、そして魔術を少々。
・EXAが非情に高い。次にHPがとても高い。スキルの一部に【反動X】を伴い、攻撃が自滅的なものと見受けられる。
・空打(物中単・飛・崩れ系BS・反動小)
・刻印侵食(神至単・Mアタック中~大、喪失、反動中)
・占術宣誓(神超扇・万能・猛毒・毒・ブレイク・呪殺。呪殺以外のダメージ判定は使用から3ターン後に発生)

●護衛×6
 フランシスカの護衛。彼女の境遇を理解しており、その上で追跡と護衛の任についている。
 全員そこそこの実力を有し、小型マシンガンとサーベルを装備している。反応高め。
 1~3レンジで痺れ系BSをばらまいてくる。

●戦場
 森の外れにある拓けたスペース。戦闘に支障をきたすギミックはない。
 戦場内に小屋が存在するが……。

●注意事項
 この依頼は『悪属性依頼』です。
 成功した場合、『幻想』における名声がマイナスされます。
 又、失敗した場合の名声値の減少は0となります。

  • Give me a curse of love完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常(悪)
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年11月09日 22時40分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

極楽院 ことほぎ(p3p002087)
悪しき魔女
ニエル・ラピュリゼル(p3p002443)
性的倒錯快楽主義者
グリムペイン・ダカタール(p3p002887)
わるいおおかみさん
赤羽・大地(p3p004151)
彼岸と此岸の魔術師
シラス(p3p004421)
超える者
梯・芒(p3p004532)
実験的殺人者
彼岸会 空観(p3p007169)
ジョージ・キングマン(p3p007332)
絶海

リプレイ

●You'll got a unluck
 フランシスカは、自らを追って現れた護衛達にするりと手を伸ばす。湧き上がる殺気のほどは、彼ら全員が死を覚悟するに足りるレベル。だが、殺気はそのままに彼女は一同の頭を軽く撫で付けるだけに終わり。
「私がしたいことは一つだけなの。邪魔を『させない』でもらえるか知ら」
 柔らかい笑みとともに問いかけたその姿に、一同は往時の彼女の姿を見出し。静かに頭を垂れるしかなかった。

 フランシスカが何を企図しているのか測りかねるまま、イレギュラーズ達は森の中を駆けていた。概ねの目的地が貴族から示されていたのは有難い。晩秋の風は、思いの外冷たいのだから。
「つまりアレだろ? 貴族様は『娘の捜索を頼んだが、まさか死んでいたとは……!』みてーな結果がお望みなんだろ?」
「しかシ、救われねぇ話だよなァ、本当ニ。
 貴族というのはこう、どうも命よりも面子をとる方が多いように感じるな」
 『瓦礫の魔女』極楽院 ことほぎ(p3p002087)と『彼岸に根差す』赤羽・大地(p3p004151)は、貴族の口ぶりから何を求めているかを会話の中から正しく把握していた。
 あからさま、といえばそのとおりだが、普通に考えて『娘を殺してくれ』という貴族がいるだろうか?
「言葉を尽くして片付く仕事なら助かるんだけど、そうはならないんだろうなあ」
「『それが娘でなくなっていたならば』殺して欲しい、かあ」
 『パッション・ビート』シラス(p3p004421)が呆れ気味に呟けば、『実験的殺人者』梯・芒(p3p004532)も首をひねる。芒は殺人行為に忌避感の無いタイプの人間ゆえに『人』の境目に敏感だ。だが、概念の境目を見極めよと言われれば容易ではないだろう。その辺り、シラスの方が道理を弁えているフシがある。
「フランシスカに父親の言葉を伝えても戦いに発展するなら、それはもう『娘でなくなっていた』として説明がつくだろうよ」
「はっはっは、笛吹き男の笛についていって夜を明かした子供なんていうのはもう『その家の子供』ではなくなるものだよ! 親の声を忘れて聞こえる声だけに従った末路はごまんとあるのだからね!」
 『わるいおおかみさん』グリムペイン・ダカタール(p3p002887)はシラスの結論に笑いを交えつつ返答する。父の言葉に従っていたなら、占術師なる怪しい男についていくはずもない。御伽噺や寓話というやつは大抵、『家族でない者』と『夜を明かす(または戻らない)』ことを以て死とみなすことが多い。『取替子(チェンジリングス)』が最たる例だ。
「私、交渉、説得は興味ないからぁ、ターゲットの観察でもしてるわぁ。勿論、依頼は手伝うわよぉ」
「……占術師なる者、この事態に陥る事を見越して墨を入れたのか」
「さぁ? 入墨は『区別』や『己のモノ』の証明でしょぉ? 効果にも意味があるんじゃないかしらぁ」
 『性的倒錯快楽主義者』ニエル・ラピュリゼル(p3p002443)は彼岸会 無量(p3p007169)から投げかけられた問いにざっくばらんに答えながら、原則として無理に立ち入るつもりはない、と断言する。
 彼女はフランシスカに興味はあれど、フランシスカが置かれた現状、その背景にまでは興味がない。ごくごく当たり前に好奇心を満たしたいが為に居るのである。……表向きには。
「半信半疑だが、本当にただの貴族の娘だったんだろうな? 占術師のせいなのか、はたまた……いや、止そう。何れにしても、男共の心根は大差ない」
 『絶海武闘』ジョージ・キングマン(p3p007332)は暗に、貴族の血筋を――もっと直截的な表現をするなら『フランシスカの血筋の由来』を問うているようにも取れた。占術師の入墨がニエルの言う『証明』なら、貴族も占術師も、彼女を人として見ておらず、記号としてカウントしているのではないか。そのような懸念が浮かぶことも当然と言えた。
「本当にナ。父親も占い師モ、本当は何を愛していたんだろうなァ?」
「なに、そんな事を考える前にお互い『何も考えられなくなる』さ。……そら、お相手だ」
 ジョージの言葉を受け、大地は諦めたような声を上げる。グリムペインは気にした風でもなく木々の切れ間を指差した。
 一同がそこを抜け、姿を見せるのと護衛であった男達が一斉にマシンガンを向けるのとは同時だった。引金を引かずに動きを止めたところをみるに、牽制のつもりらしい。
「このまま連れ戻されるのと、占い師に殉じるのじゃどっちが良い?」
「どちらもお断りね。あの人を想ったまま生きるわ」
 ことほぎがへらへらとした様子で問えば、フランシスカは断固として拒否した。それに笑い声を上げたのはグリムペイン。
「フハハ!! いけないなあ、いけない。一体何処へ行こうと言うのか。親の言う事が聞けないのかい?」
「貴方達、父の遣いでしょう? 私がこれからやることを見逃すつもりもない。逃がす気もない。そうでしょう?」
 フランシスカの決意は固い。この回答は、居合わせたイレギュラーズの過半を喜ばせる結果となり、一部のものは明確にほくそ笑んですらみせた。
「つまり、情け容赦なく殺しちまってOKってこった!」
「うんうん、嘘は言ってないね。……心得もないのに戦うはずがないんだけどね」
 ことほぎの声を合図にして、芒はフランシスカ達の背後に回り込んでいる。シラスと大地にどこか諦めに近い表情が垣間見えたのは、間違いであるまい。

●"We"believe for you
「それじゃ、アンタの相手は俺がするぜ。いいだろ?」
「男の道理はいつもそう。聞いているようで何一つ選択肢を与えてくれないの」
 シラスはフランシスカの間合いへ一足で飛び込むと、炎を叩き込み、憎しみの波長を瞬く間に増大させる。捌くも避けるも、その精度の前では空振りに終わって当然といえた。
「俺はジョージ・キングマン。憶えなくてもいい。じき、思い出せなくなる」
 ジョージは堂々たる名乗りとともに無造作に護衛達の間合いへ踏み込み、相手の視線を引きつける。そうでなくとも、護衛は狙える位置に踏み込んだ彼に一斉射を向けていたわけで、必然的に軽くないダメージを負っているのだが……。
「大切なのですね、彼女が」
 無量は鋭い踏み込みで護衛の間合いへ入るや否や、狙うべき場所へ与えるべき力で、大太刀を振り抜く。サーベルがその威力を減じることは許されず、相応の深手を負うものの、護衛の目の力に衰えの色は見えない。
 彼女の第三の眼は、次に狙うべき位置を示している。そして、痛みは伴わない――経緯はどうあれ、彼らは『善良ではない』という証左になる。
「ひゃあ、怖い怖い。あんなの食らって全然無事とか、護衛の奴らも大概じゃねえの? だから嫌がらせに回るんだけど」
 ことほぎは、こう言ってしまうのもなんだが『分を弁えた女』である。己の欲には忠実で、相手の望まぬことに全力を尽くす。さりとて、己の無事には一際敏感だ。体力面で不安が残る自身が、全力の嫌がらせで仲間に及ぶ被害を削る。臆病に見えかねないが、その実非常に効率的だ。
「お前達も、染まってしまえ。赤く紅く朱く、血の海に沈め。 二度と死ねない俺の代わりに、皆、狂い死んでしまえ」
大地は演技じみた恨み節を連ね、護衛達に向けて呪詛を撒き散らす。威力もさることながら、恐ろしいのは個々人に宿った不調が大きな傷を生む瞬間火力と、同士討ちすら引き起こす催眠効果にある。
「君達の末路は選ぶならステーキとミンチだな。どっちが良い?」
 グリムペインは呪力を剣に変えてフランシスカの胴を貫き、次いで芒が連続して彼女の胴を穿ちに行く。速度、精度ともに正確性の高い個々の打撃は、しかし体力を大幅に強化されたフランシスカを倒すに至らない。あまつさえ、芒の乱打を受けこそすれ、芯を外してみせたのだ。
「ああいうのって大抵ろくなものではないんだけどねぇ……あなた達、占術師についてなにか知ってるんじゃないのぉ?」
「……あの男が胡散臭いたぐいの人間であったことは、否定しない。するつもりもない」
 ニエルの非殺の一撃を受け止めつつ、護衛は淡々と返す。なるほど、『胡散臭い』が『ろくでもなくはない』、と?
「大旦那様がお嬢様に目をかけていらっしゃったのは事実だ。旦那様はそれを黙認しておいでだった。つまりは、お嬢様の先行きなど物を知らぬ子供でも薄々勘付くというものだろう」
「――止めなさい」
 護衛の言葉に、フランシスカは絞り出すように声を上げる。これ以上はいけないと、それ以上告げてはならないと、彼女の本能と理性が強い拒否を示している。
「ああ、止めさせるつもりはないよ。何か面白いこと考えてるんだろうと思ったけど、面白いね、ニエル。もうちょっと聞かせてよ」
「……この、出歯亀がッ……!」
 シラスは軽口を叩きながら、次々と連撃を叩き込み、フランシスカから視線を切らない。持続に莫大な魔力を要する自己暗示と、強烈な精度を持った魔術の組み合わせで押していく。彼女の全身の刻印が、足から腕へと連動して灯り、シラスに突き込まれる……尋常ならざる身のこなしに追いつき、打ち込まれた打撃は『精度』というよりは『偶然の産物』だ。馬鹿げた連続行動力が、そのまま偶然の確率を高めているのだ。
「お嬢さんは、随分と占術師と弄られたようだが、それでも、護るか?」
「ああ、そうだな。私達はフランシスカ様を如何様に扱うか悩みあぐねた。だが、お前達は考えなかったか? 経緯がどうあれ、『お嬢様がそれを望まれた』と」
 ジョージは大地の治療を受けつつ、頑然と護衛達の猛攻を凌ぐ。彼の問いに返した護衛の表情は、明らかに……そう、諦めと許容を織り交ぜたそれだった。

●But,you said "NOT FOR YOU". And...
「お父様よりも彼女を想っておられるなら、それを伝えるべきではなかったのですか」
「護るべき御方を想って行動するのは当然の道理だ。彼女はあの胡散臭い男を選んだ。奴は『お嬢様の為に』ことを為した。――我々や屋敷の者がいて、あの手の有象無象が何故、お嬢様を拐えた?」
 無量の斬撃をマシンガンで受け止めた護衛は、しかし『線』を断ち切られ、蓄積した傷により命尽きかけていた。それでも会話に応じたのは、フランシスカの境遇を儚み、彼女を助け、その事実を暗にイレギュラーズに伝える為か。だとしたら、なんと哀しい献身か。
「なんだよ、ならよりシンプルじゃねぇか! お前達もお嬢様もあの貴族サマには不要な存在になったってこった! ラッキーだぜ、誰も傷つかない幸せなオチってワケだ!」
「ハ、ハ、ハ、ハ! 彼女の想いの為に君達揃って地獄を選ぶのかい、善意の舗装はまったくもって綺麗に仕上がっている!」
 ことほぎとグリムペインが当を得たりと喜ぶのは当然だろう。ことほぎは、貴族に名を売りつつ己が悪しきとアピールすることに余念がなく、グリムペインは悪意もまた意なりと喜んで飛び込むタイプだ。人の感情の動き、怒りと悲しみが彼の喜びとなりうる。
 そういう意味では、不幸な現実や哀しい真実といったたぐいを叩き潰して楽しむ趣味もまたあり方なんだろう。
「そう、貴方達は『そういう』人達なのね」
「今更気付いたのぉ? ちょっと遅すぎじゃなぁい?」
 腹の中の怒りを隠さぬフランシスカに、ニエルはにやりと笑みを返した。事情は十分にわかった。彼女の怒りも頂点に達しつつある。……シラスを含め、抑えに回った者達も粘ってはいるが、長丁場には出来ない事は明らかだ。
「私は生も、死も無駄にするつもりはないわぁ。……護衛さん達、死ぬ覚悟はあるかしらぁ?」
 ニエルの問いかけは余りに唐突だった。戦いを続けながら、イレギュラーズも護衛も、そしてフランシスカも続く言葉を待った。手抜きのない激戦は、双方の傷を露わにするが……次の言葉、そして結論が出るまでにそう時間はかからなかった。
「フランシスカさん、あなたがここに来たのは埋葬のため、添い遂げるため。お父様の願望はじゆうにならないあなたの排除。……埋葬まで待ってあげなぁい。『フランシスカは死なねばならない』」
 ニエルの言葉に芒はなるほど、と頷く。フランシスカは死んだ、と示さねばならない。殺せないのは嫌だなあ、と感じた彼女は、笑みを浮かべてするりと令嬢の間合いに踏み込む。
 振り上げられた道路標識は、その金属部分を刃としてフランシスカの腕を宙に跳ね上げた。
「あ――っぐ、ぅう……!」
 ぎりぎりと歯噛みしたフランシスカの全身の文様が明滅する。生き物のようにうごめいた墨は、腕を縛り上げ出血を止めた。ニエルが結論を告げ、芒がいち早く動き、状況が進むまでの間に護衛は全員、戦えぬほど消耗している。死んでいる者が殆どだが。
「占術師の後を追うつもりだったんだろ? ならそうさせればいいじゃんか」
「なー、殺しちゃダメなのか? 貴族様に目をつけられるのは厭だぜ、オレ」
 シラスはどこか煮え切らない表情で、ことほぎは強い不満を示す。貴族を欺くのは避けたい。だが、敵対する者すべてを撃滅するという依頼の条件を考えれば解釈の余地はある。
「悪魔はいつも甘い言葉で誘惑をする。だが悲しいかな、誑かされた肉も味は変わらないのだよ。……どっちにしてもその腕は『殺した証明』で持ち帰るのだが」
「それじゃあ……私は精一杯抵抗するわ。『その後で死ぬわ』」
 グリムペインの言葉を聞き、フランシスカは笑みを深めた。覚悟を決めた。どちらの意味での覚悟かは――その後熾烈な戦いに身を投じた者達の心の中にあり。

「……はハ、なんて素敵な恋文ダ」
 小屋の中から半ば白骨化した占術師の遺体を引っ張り出して一同が埋葬する傍ら、大地は小屋の中からいくらかの資料と手紙とを手に出てきていた。
 それはフランシスカに向けた手向けの遺書であり、彼が覚悟の上だったことを示すもの。読んだ跡から彼女は目を通したことが分かるだろう。

 貴族には、フランシスカを殺した証明として腕が送りつけられた。
 占術師の小屋の軒先には、小盛りになった土が2つ。標識もないそれが墓であるかどうかなど、見た者の主観にしかなるまい。

 そして、フランシスカは――。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

極楽院 ことほぎ(p3p002087)[重傷]
悪しき魔女
ニエル・ラピュリゼル(p3p002443)[重傷]
性的倒錯快楽主義者
グリムペイン・ダカタール(p3p002887)[重傷]
わるいおおかみさん

あとがき

 大変な遅れにより多大なご迷惑をおかけしたこと、まずお詫びいたします。
 その上で、お疲れ様でした。
 結末は皆様の心のなかに。

 それはそれとして、パンドラは使わないと損ですよ。

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