シナリオ詳細
<YcarnationS>亀裂生じし悪徳商人達
オープニング
●
ラサ・深緑で発生していた『ザントマン』事件は、ラサの商人オラクルが真犯人だと判明した。
次いで行われたオラクル派への掃討作戦で打撃を与える事には成功した――が。
ラサに突如として出現した『謎の幻想種』により事態は些か予想外の方向へと進んでいく。
ある日、ローレットに並ぶ依頼はまたもラサの幻想種拉致、奴隷商人絡みの依頼。
そして、またも、褐色肌の幻想種の女性、イルナスが訪れて。
「ご無沙汰しております。お話をよろしいでしょうか?」
彼女は傭兵集団『レナヴィスカ』の頭領、イルナスはラサ傭兵商会連合、ディルクの実質的な補佐役でもある。
まだ一連の事件は解決を見ていないどころか、より厄介な事態を招いているとイルナスは話す。
確かに、オラクル派への打撃作戦は概ね成功に終わった。
しかしながら、『砂の魔女』カノンなる幻想種の女性が突如として現れ、オラクルの力によって制御されていた『グリムルート』の力を上書きしてしまったのだという。
これによってカノンは残存する未だ囚われの幻想種達を全て支配し、いずこともなく連れ去ってしまった。
現存するオラクル派は商品を奪われたことに激怒してカノン派を追いかけ、イルナスを含むディルク派もまた幻想種達を追跡する。
その結果、彼らが至ったのは、『砂の都』。
奴隷売買で栄え、遥か過去、砂に沈んだという伝説の地である。
『楽園の東側』の邪教徒も集結しつつあるその地は、死を切望する彼らの言っていた『始祖の楽園』でもある。
果たして、連れていかれた幻想種達がその後何をするのか。
巻き込みの死か、あるいは全てが魔物の狂気へと完全に飲み込まれてしまうのか……。
「穏やかではありません。オラクル派の殲滅もそうですが、カノンに与しようとする商人も現れており、早い対応が求められています」
すでに、イルナスの上司であるディルクも砂の都への出撃を決めている状況だ。
強力なカノンを含め、狂気の感染源となったグリムルートの影響で堕ちてしまった幻想種。また、オラクル派から鞍替えした悪徳商人など、魔種となってしまった者も多い。
「その狂気はオラクルを遥かに超えています」
オラクルを超える魔種の狂気。まるで、もう1人のザントマンを思わせる状況である。
これを放置すれば、『砂の都』にて大量の魔種の軍勢が生まれてしまいかねない。
滅びのアークが増大する見込みも高く、ローレットとしても放置できぬ状況の為、ラサからの協力要請を受けることとなる。
●
今回、イルナスが向かうのは、『砂の都』近くの遺跡だ。
そこは地上階が荒れ果てて壁も天井もない遺跡となっているが、地下は4~5mほどの広い空間になっていて、砂漠の暑さ寒さを凌ぐことができる空間だ。おそらく、7~80m四方程度の広さはあると思われる。
「地上からの突入は手前と奥にある2ヵ所の階段。それと、採光の為に地上の中央に3ヵ所空いた穴から可能です」
そこに、オラクル派の悪徳商人達が傭兵を引き連れて立てこもり、幻想種奪還の為に作戦会議をしていたはずだったのだが……。
どうやら、すでに半数の商人がカノンに従うことに決めており、カノン派を名乗ってオラクル派と争っている状況らしい。
「それだけなら、成り行きを見守ればよいのですが、どうやらすでにカノン派を名乗る1人が魔種化していたようです」
商人の中で最も若い青年アダーモが『嫉妬』の魔種となり、長い耳となって幻想種を思わせるような姿へと変貌しているようだ。
それだけでなく、高い魔力を持つようになっているのだが、現状は情報に乏しく、どんな攻撃を行ってくるかわからぬ状況にある。
「当面はこの男の討伐が最優先です。なにせ、その場の商人、傭兵が全て狂気に侵されてしまいかねません」
イルナスも20名いる部下のほとんどを地上に残して出入り口を封鎖、最低限の人数だけでの突入を考え、狂気の対策としていた。
内部の状況、配置がわからぬが、突入すれば内部にいる者全てがローレットに抵抗してくることだろう。
出来る限り、魔種アダーモを直接叩けるようスムーズに事に運ぶことのできる作戦を立てたいところだ。
そこまで話が進んだタイミング、ローレットへと1人の幻想種が現れる。
「その作戦、私も参加させてもらってもいいかしら?」
その女性は、前回の作戦において、魔種となった悪徳商人から救い出した幻想種の女性、アラーナ・アディ・アバークロンビーだ。
瞬く間に森への侵入する者を撃退する弓の腕から、『閃緑』とも呼ばれる彼女は、ローレットに所属するアレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)の実母でもある。
彼女もグリムルートを装着されていたこともあり、人事ではいられなかったという。
「最悪、ローレットが救出に来なかったなら、私もカノンに操られていたわけだし……ね」
自分に厳しいアラーナは、前回の借りを自らの腕で返すべく、1人この作戦の参加を決めたのだ。
また、アラーナを捕らえた悪徳商人も含まれているらしく、直接お仕置きもしたいとの思惑もあるようだ。
ローレット、イルナス部隊、そして、アラーナ。
この混成部隊で、悪徳商人達の確保、及び魔種となった商人の討伐へと当たるべく、一行は改めてラサ、『砂の都』を目指すのである。
- <YcarnationS>亀裂生じし悪徳商人達完了
- GM名なちゅい
- 種別EX
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2019年11月03日 22時40分
- 参加人数10/10人
- 相談7日
- 参加費150RC
参加者 : 10 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(10人)
リプレイ
●
ラサ、「砂の都」付近の遺跡。
そこに、ローレットのイレギュラーズと幻想種の混成部隊が悪徳商人達、そしてそれらが連れている傭兵達を討伐、および拘束の為にやってきていた。
「誰かの為に悪さをするんなら、イッコーの余地も有るんだけどよ……」
赤い髪をリーゼントにしたやや強面の海種の少年、『幸運と勇気』プラック・クラケーン(p3p006804)が悪態づく。
「金とか快楽の為に拉致だとか、糞外道な真似は許せねぇなぁ……」
一方で、こんな考えをするメンバーも。
「野心が有るのを悪い事とは言わないが、時と場合と状況くらい読めん?」
歩きながらも毒づく戦士風の鎧着用、軽槍所有の些かナンパな青年、『一兵卒』コラバポス 夏子(p3p000808)。
先日の依頼で怪我を負っていたが、夏子はそれを引きずってまで依頼に参加してくれている状態だ。
「商人として流れ見えないとか、そりゃ~こ~なるでしょ~」
夏子が言っているのは、オラクル派の悪徳商人達が商品である幻想種達が連れ去られたことで、ここまでやってきた現状についてだ。
「悪事を重ねるための話し合いでよ、仲間割れして俺達に後始末させるとかふざけんじゃねえってんだ」
マイペースでポジティブ、金髪の青年、『空気読め太郎』タツミ・ロック・ストレージ(p3p007185)も今回ばかりは相手が許せず、悪徳商人を纏めてぶっ飛ばしたいところだと憤る。
タツミが言うように結局、悪徳商人達は内部分裂してしまい、片方は幻想種達を連れ去った黒幕、カノン・フル・フォーレに与しようとしている。
「少なくても、カノン派を合流させるわけにはいかないよね」
こちらも怪我を押しての参加、天義出身の貴族、銀髪オッドアイの『リインカーネーション』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)はこれ以上問題を大きくするわけにはいかないと語る。
なお、幻想種である為か、スティアは髪形を変えて尖った耳を隠していたようだ。
「オラクル派の人達は心を入れ替えてくれると良いんだけど」
「出来るだけ、穏便に済ませてぇな」
夏子がスティアの意見に同調するが、そう簡単に事が運ぶ状況でもない。
カノンに与した若者の1人が魔種となってしまったのだ。
「何故、カノン派などという発想が出てくるのかと思いましたが、なるほど」
霊視の眼を持つ元聖職者の女性、『黒のミスティリオン』アリシス・シーアルジア(p3p000397)は納得したように頷いて。
「魔種化してカノン・フル・フォーレに一方的に呼応し、周囲を呑み込んだという事ですか」
しかも、魔種化はごく最近のこと。
悪徳商人の若者は幻想種に憧れるあまり外見までそのように変化し、魔法を使うことが分かっているが、それ以上はまだ情報に乏しい。
「全く面倒だぜ、情報の無い魔種はよう」
幻想出身、ボブカットでやや擦れた価値観を持つ少年、『パッション・ビート』シラス(p3p004421)が嘆息する。
もう少し情報があればよかったのだが、何せこの敵が戦闘した記録もなく、突発的な事件とあって情報を集める時間もなかったのだ。
「幻想種への羨望、嫉妬……か」
その魔種化した若者に対し、自分と重ねる部分があることを感じていたのは、フード付きマント着用、赤茶色の髪の人間種の魔術師、『希望の聖星』ウィリアム・M・アステリズム(p3p001243)だ。
「俺も分かるよ。少しだけ。俺にも同じ気持ちがあったから。でも、今は――」
だが、魔種となってまでとは、ウィリアムも思わない。
そこが今回の相手と大きく違う点だ。
「仲間割れした上に魔種になるとか……。本当、身勝手な人がいたものですね」
ならば遠慮はいらないと、背中に大剣を背負った黒髪メイド少女、『大剣メイド』シュラ・シルバー(p3p007302)は本気で自らの怪力を振るう構えだ。
「魔種、怖いな。でも、メルトも、頑張るんだもん」
天義出身の見習い騎士、ピンクの髪の『聖少女』メルトリリス(p3p007295)も、気合を入れる。
敬虔な彼女にとって、これ以上魔種が増える状況は神に誓って許せないとのことだ。
「何だかややこしそうだけど……、魔種を放っておくわけにもいかないね!」
そして、最後にこちらも幻想種、魔法使い風の見た目をした『さいわいの魔法』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)。
彼女は、母親である『閃緑』の二つ名を持つアラーナ・アディ・アバークロンビーと共に参加している。
母親の前とあってかっこ悪い姿を見せるわけにはいかぬと、アレクシアは人一倍張り切っていた。
「それでは、皆様、よろしくお願いいたします」
目的の遺跡が見えてきたこともあり、部隊を率いるイルナスが改めてイレギュラーズ達へと今作戦の協力を願うのである。
●
さて、敵は遺跡地下に広がる空洞内に潜み、どうやって幻想種を奪取するかと打ち合わせをしているうちに抗争を起こしているという。
入り口は手前と奥の階段。そして、空洞中央に開いた採光の為に開けられた3つの穴。
現状では、内部でどうオラクル派とカノン派が展開しているかがわからぬ為、アリシスが付近の蝶を使役し、妖精眼を合わせて使って内部の状況を探る。
「……奥にカノン派、手前にオラクル派ですね。手前から見て右側の壁による形で両者が話し合っています」
真ん中から突撃すれば、完全に両者の戦闘に巻き込まれる形。
アダーモは奥の階段付近。奥側の階段と中央の穴から飛び降りることで、カノン派を挟み撃ちにできそうだ。
問題は穴から飛び降りた場合、オラクル派も相手になる可能性があることだが……。
「よし、アリシス君の情報通り、奥の階段から突入しよう」
アレクシアに同意するメンバー達だが、改めてそこで、シラスが方針を確認する。
「方針は二つ。オラクル派との戦闘は避ける。そして、アダーモを優先して撃破、だね」
「問題ねえ、きっちり終わらせてやんよ!」
タツミも気合を入れて仲間の案に応じる。あとは、オラクル派を如何にして説き伏せるかだ。
オラクル派を利用できれば、彼らを壁の様にしてカノン派を挟み込み、一気に追い込むことができる。
「いつでもいいよ」
スティアは身構え、仲間達と突入のタイミングをはかる。
そして、皆で確認し合うように頷き合い、地下の空洞へと突入していく。
内部ではすでにオラクル派、カノン派の抗争が始まっていた。
「おおおおおお!!」
「ああっ、あああああっ!!」
後者は狂気を感じさせ、狂った叫びを上げて武器を振り回す。
「何だ、こいつら!?」
「なんて力だ……!!」
前者は理性を失ったカノン派に、かなり押されている状況だった。
「何だ!?」
そんな彼らが新たに駆け込んできた集団を確認し、一斉に争う手を止める。
「ローレットだ! 見たことある奴が何人もいるぞ」
「『レナヴィスカ』のイルナスもいやがるぜ!」
叫ぶのはほとんどがオラクル派と思われる商人が連れた傭兵達。
幻想出身者もいるらしく、こちらの面はすぐに割れてしまう。
とはいえ、それはそれで話が早い。
「さあ、お立ち会い! 解るかな? 解るよね! 商人なんだから!」
そこで、夏子がキャッスルオーダーを使いつつ、ギフトで爆音を鳴らす。
その間、狂気を感じさせるカノン派の面々は静観している。
「奴ら、何を狙っている……?」
魔種となったことで、リーダー格となったアダーモがローレットの出方を慎重に見ているからだ。
イレギュラーズ達もカノン派に対して、攻撃のタイミングを計る。
下手に手を出すと場が混乱し、オラクル派を刺激して敵に回してしまう為、ここは一旦、メンバー達は夏子に任せることにする。
「状況は一転! 君達が選べる選択肢は少なくない!」
夏子は演説、言いくるめといったスキルを使い、オラクル派達へと問う。
――我々と魔種を討ち 恩赦を得るか。
――悪徳犯罪クソ野郎として今、粉砕されるか。
――とりま、下手な手出しせず様子見るか。
――この場は逃げ追われ、野垂れ死ぬか。
声のトーンの大小を使い分け、セリフに迫力を持たせる夏子。
「……交渉の余地はあるよ? する?」
もちろん、その交渉はこの場の脅威を打倒してからではある。
「まあ、我々の部隊員が地上でこの遺跡を囲んでいますから、逃げる選択肢は与えませんが」
そこで、イルナスが一つこの状況について付け加える。
「おい、どうする!」
「カノンに従うよかマシだが……」
元々、幻想種を連れ去られたカノンに怒りすら抱くオラクル派。
ただ、悪徳商人である彼らは、ラサではお尋ね者であるのは間違いない。イルナスを恐れるのがその証拠だ。
オラクル派達がどよめく間に、イレギュラーズ数人がアダーモを狙う。
人間種ばかりのこの場では、幻想種に近い見た目の若者など目につく。
(乱戦状態は避けられそうか……?)
そう期待をしながらも、シラスがまず牽制の為にと、強い振動を与える魔力弾をアダーモへと撃ち込もうとする。
さらに、瞬間的にその身に魔素を多量に取り込んだアレクシアはこれ見よがしに自らの尖った耳を見せつけながら、毒の魔術を行使する。
飛ぶ魔力の花弁は狙い違わずアダーモの身体を穿ち、魔力の残滓が毒の花の様に見えた。
「くっ……」
イレギュラーズ達の不意を突いた攻撃にも、敵は平然とこちらを睨みつけてくる。
「誰かを、何かを羨むのは別に悪くない。私だってそんなのいっぱいある」
この男の考えはある程度、依頼を受けた地点で察しはついていた為、推測を交えながらもアレクシアは呼びかける。
後ろからは、母、アラーナが魔力の矢を番えて弓を構えてくれていた。
それがアレクシアには、この上なく頼もしい。
「でも、だからって、そんな力に身を委ねちゃダメなんだよ!」
「知ったようなことを……!」
怒りを与えることはできないが、それでも相手の注意を引くには十分だ。
シラス、アレクシアの2人はカノン派の気を引きつつも、オラクル派に攻撃意志がないことも示して見せていた。
一方、そのオラクル派。
この場には新たな幻想種達もいるが、ローレットにイルナスの部隊。さすがに勝ち目がないとオラクル派の商人達は考える。
傭兵達もローレットの力は十分把握しており、勝てるかどうかはわからないと首を振る。
何より、目の前のカノン派に押されている状況。追い詰められている中だ。
「我々は最優先で魔種の討伐にやってきた。貴方たちの罪に目を瞑っている間に手を引きなさい」
メルトリリスが呼びかける。
彼女はすぐにでも仲間の回復に当たることができるよう構えたまま、アダーモを示して。
「魔種がいるのですよ! 命と意地、どっちが大切なのか考えて!」
オラクル派が逃げるなら、それはそれでと考えるメルトリリス。
ただ、イルナス部隊が外で包囲している状況も踏まえ、彼女は投降を呼びかける事にしていた。
「傭兵も、お金で雇われたのかわかりませんが、こんな所で死んではなりません!!」
ここにきて、保身を考えて応戦しようとイレギュラーズ達にも武器をつきつけようとしてくるオラクル派へ、ウィリアムも呼び掛ける。
「その先は破滅しか無いぞ」
前の戦いで、オラクル……魔種を討伐したイレギュラーズ達。
この状況を作ったメンバー達に一因はあり、オラクル派達はメンバー達にも少なからず憤りを感じている。
やぶれかぶれにもなりかねない彼らへ、ローレットの面々はこんな提案を持ちかけた。
「押されているみたいだし、一時的に共闘しない?」
まず、スティアがカリスマを働かせ、オラクル派へと声をかける。
最悪、相互不干渉でもいいと譲歩案も出しつつ、スティアはさらに提案を持ちかけた。
「邪魔されると私達もそっちに追い討ちしないといけなくなるし、お互い手を出さない方が良いんじゃないかな?」
カノン派の意識はローレット達へと向けられている。その間に、タツミもオラクル派へと声をかけて。
「ここで俺達と敵対すれば、そこのカノン派に殺される。外に出ればレナヴィスカがいる」
悪徳商人達へと、タツミは判断を迫る。
「人で商売するような奴に情けはかけたくねえが、命が惜しけりゃ俺達の邪魔すんな」
あくまで狙いは魔種だと示すことで、相手の敵意を削ごうとするのがローレット勢の狙いだ。
「敵対するなら容赦はしねぇ! 俺達に協力すれば手は出さねぇ!」
オラクル派の態度に煮え切らないプラックが叫ぶ。
「ディルクさん達に口利きして、裏切りの罪も減らす! 出来るならアンタラを傷付けたくも無いんだ!」
「何だって!」
普段はかけ引きが得意な商人達だが、さすがにこの修羅場では判断も鈍る。
「提案として悪くないのでは」
「だが、本当に恩赦があるとは限らんぞ」
悩む敵へ、プラックは詰め寄るように問いかける。
「頼む! 少しの間の共闘で良い! 力を貸してくれ!」
そこで、アダーモが攻撃を受けたことで、カノン派は徐々にオラクル派へと再び威嚇を始めて。
「やれ、纏めて切り刻め!」
オラクル派が刃を突き付けてくる状況で、オラクル派も腹をくくって。
「ええい、分かった!」
「お前達に攻撃せねばいいのだろう!?」
ともあれ、オラクル派との共闘が決まったとであれば、それまで状況を見ていたシュラも紅蓮の大剣を握って。
「もう少しでしょうか」
作戦は功を奏している。後は仲間がうまくカノン派を引きつけるのを、シュラはじっと待つのである。
●
オラクル派を上手くこちらへと取り込んだイレギュラーズ達。
確かに倒すべき当面の敵はカノン派のみとなったが、それを率いるのは魔種アダーモだ。
「面倒な奴らめ……」
狂気を振りまく敵は手にする杖を振るい、周囲へと炎を発してくる。
まさに嫉妬の炎といったところか。燃え上がる炎はしつこくメンバー達の身体へと残り、苛んでくる。
「全てを燃やし尽くしてやるよ……!」
それだけではない。アダーモは狂気を振りまき、自らの手勢を増やそうと自分達カノン派だけでなく、オラクル派、そしてイルナス達幻想種、さらにはイレギュラーズ達すらも堕とそうとしてくる。
「あなた達が命を失わないで済むように、私達が必ずなんとかする!」
魔素を取り込むアレクシアは、アダーモ目がけて魔力の花びらを飛ばしながらも、周囲のオラクル派達へと呼びかける。
「だから、あいつの声に耳を傾けないで! 自分を大事にして!」
折角、こちらに協調の姿勢を見せてくれているのに、魔種に堕ちてしまったら元も子もない。
狂気にとらわれたカノン派を相手どるオラクル派は、やや身を固めながらも気を強く持って応戦を続けていた。
また、そんな我が子を背後から見つめるアラーナは我が子の成長を実感しながらも、カノン派を無力化すべく魔法の矢を飛ばす。
狙った通りに飛ぶ魔法の矢。『閃緑』の腕に、3人の部下と共に矢を射放つイルナスも目を見張っていたようである。
さて、ローレット、幻想種の混成隊の作戦はアダーモの討伐を最優先として動く。
作戦としては、アレクシアがアダーモを引きつけ、その間に他メンバー達がカノン派を叩くというもの。
現状、アダーモが怒るには至っていないが、敵の注意はアレクシアに向いている。
しかし、他メンバー達が攻撃を始めればそうはいかない。
オラクル派とカノン派の傭兵、商人達が再びぶつかり始めたこともあり、アリシスはオラクル派を巻き込まぬよう配慮しつつ、「ダークムーン」……闇の月でアダーモを含むカノン派だけを照らし出し、暗い運命へと導いていく。
多少、敵へと近づいていたアリシスをシラスが守りに当たる。
出来る限り、アダーモを状態異常をと考えるメンバーは、アリシスの攻撃も主軸の一つに置き攻撃を行う。
この為、存分にアリシスがダークムーンを使えるよう、シラスが彼女のカバーに当たる。
相手は自らの力に酔っている素振りもあり、自らの力を高めようとはしてこない。
シラスにとって、それは好都合。
カバーの合間に魔力弾を放ち、発する震動で相手に痺れを与えようとする。
そして、抑えに当たるメンバーを、スティアが支える。
「フォローできるように頑張るよ!」
彼女は魔力を優しい光に変えて傷つく仲間を包み込む。
序盤は乱戦模様とも見られる状況もあった為、スティアも気合を入れて仲間達の回復に力を入れる。
「下手な商いの責任とって貰うよ。反省し心入れ替え幻想種に尽くせ」
オラクル派の説得に貢献した夏子はさらに、カノン派達にも呼びかけを続けて。
「コラバポス 夏子だ。……いざ!」
名乗りを上げた夏子は本心から、悪徳商人や彼らに雇われて悪事に手を染めた傭兵達とて、やり直すチャンスはある筈と疑わない。
「頼りにしてるよ、鶏冠くん!」
彼は呼びかけたプラックと共に分担して対処へと当たる。
後は野となれ山となれ。全力丁寧に横薙ぎ払いを繰り出すのみ。
デカい発砲音と強い光には狂気など関係なく、勢いで吹っ飛んでしまっていた。
「プラック・クラケーンだ!」
夏子と同じく、名乗りを上げたプラックにも敵が集まる。
なるべく多く、かつ魔種を範囲に入れぬよう呼びかけを行うプラック。
狂気に捉われたカノン派の傭兵や商人が集まってくるなら、プラックも手足に流水を纏って殴り掛かっていく。
まだ優位になったわけではない為、プラックも防御をしながらの戦いを忘れない。相手は戦い慣れした傭兵で、魔種によって狂気にとらわれて力を高めているのだ。
また、プラックは交戦するオラクル派も庇い、共闘を態度で示す。
そうした態度は、オラクル派の心を少しずつ動かすことにも繋がっていく。
アダーモを直接狙いたい状況ではあるのだが、やはり商人、傭兵の数は多く、メルトリリスもその対処を行うことになる。
「天義の騎士見習い、メルトリリスと申します」
まだ敵を引くことができていないカノン派へと名乗り、気を引こうとするメルトリリス。
可能であれば、カノン派も不殺で捕らえることできるようにと、彼女は聖なる術式を行使して、無力化をはかっていたようだ。
そうして、仲間達が敵を上手く引きつけてくれれば、纏めて攻撃を行うメンバー達がカノン派を倒していく。
ウィリアムはできる限り炎の術式を使うアダーモを巻き込むようにカノン派複数を狙う。
「感電が入れば、怒りなどが入りやすくなる筈だ」
そう考え、ウィリアムは連なる雷撃を発して、纏めて敵を焼き払おうとする。
そのウィリアムの一撃に撃ち抜かれ、ライフルを手にしていた商人が崩れ落ちた。
タツミもまたアダーモの前に立ち、障害となる取り巻きを排除すべく、自身のアドレナリンを爆発させて最高のコンディションになるよう体調を整える。
その上で、タツミは渾身の力を込めて、仲間達が引きつけているカノン派目がけて双刀の片割れである『煌輝』を握って振るい、小さな竜巻を巻き起こす。
タツミの竜巻に巻き込まれた敵の内、槍を握っていた傭兵を卒倒させてしまっていた。
戦況を注視していたシュラもここぞと大剣を握り、敵の群れへと特攻していく。
狙うは狂気にかられたカノン派のみと識別し、シュラは乱撃を叩き込み、敵を鮮血に染めていく。
至近からカノンの大剣を受けた傭兵達は、1人、また1人と地に沈んでいくのだった。
●
ここまでは比較的、ローレット勢にとって順調に事は運ぶ。
ただ、戦いの中、魔種となったアダーモがついに本性を見せ始める。
「こんなものか、ローレット……!」
一層強い魔力を解き放つ敵は、アレクシアの攻撃にもあまり気にする素振りをみせない。
アダーモは自らの杖を振るって様々な炎を使いこなし、この場のメンバー達を攻めてくる。
戦いの中、ウィリアムは隙をついてそんなアダーモへとリーディングを試みる。
(読み取るのは難しく、魔種の心を覗くなんて生きた心地がしなさそうだ)
でも、一瞬なら。そして、それが好機に繋がるのなら。
ただでさえ、敵の情報が少ない状況で臨んだ今回の依頼。
何か情報が得られたならとウィリアムは考えたのだ。
まして、幻想種に憧れ、嫉妬したというこのアダーモという若者。
それは、かつて幻想種に対し羨望の心を抱き、己には無い神秘への適性、そして知識を追うに適した長命の種族である彼らに対する思いは自らに重なる部分が多分にある。
――今は、その嫉妬は俺にとっては過去の話だ
だが、ウィリアムは今、仲間の為だけに魔術を振るう。
その違いはあまりに決定的で、ウィリアムでさえもあまりに深い相手の心の闇を読み取ることはできない。
「お前に何がわかる……!」
自らの心の中を読み取ろうとしてきたウィリアム目がけて杖を突き出し、業火の炎を解き放つアダーモ。
ウィリアムはその身を焼かれながらも運命の力を砕き、その身が燃え尽きるのを堪えてみせた。
「…………っ!」
なかなか敵の気を引くことができない状況に、アレクシアにも若干焦りが見える。
仲間のバックアップはあるが、敵の業火をなかなか自分に集めることができない。
「今度は、お前か……!」
魔素を消費して自然発火させるような業火だけでなく、渦巻く火炎やピンポイントに立ち上る火柱など、様々な形状の炎を使うアダーモ。
彼は次に自らを闇の月で照らしてこようとするアリシスに狙いを定め、火柱を立ち昇らせようとする。
「させるかよ」
すかさず、シラスがカバーに当たり、彼女の代わりに火柱を浴びる。防御無視で身体を焦がしてくる炎に、シラスもパンドラを使う羽目となってしまっていた。
息つく彼へ、スティアが月虹で……魔力を癒しの光へと転化して振りまいていく。
厳しい戦いだが、ここでこの魔種を止めねばならない。
アダーモだけでもこれだけの苦戦を強いられるのだ。ならば、彼を魔種へと堕としたカノンはどれだけの敵なのか。
そう考えるだけでも、寒気が走るというものだ。
そうしている間にも、カノン派の商人や傭兵達が次々に倒れていく。
そうなれば、さすがに魔種相手では力になるどころか足を引っ張ると判断したオラクル派は身を引いていった。
「うう、うあああっ……!」
ただ、彼らも時折、アダーモの発する原罪の呼び声を耳にしてしまい、苦しむものが出始めていた。
カノン派を相手にしていたプラックはそいつへと呼び掛ける。
「気張れ! 大事なもんと捨てたく無い者を思い浮かべろ!! 堕ちたら戻れねぇぞ!!」
ただ、プラックがオラクル派へと意識を向けていた一瞬の隙。カノン派の雇った傭兵の凶刃がプラックの喉元を切り裂く。
一瞬の隙とて、狂気にとらわれた者の前では油断となってしまい、命を奪われかねぬ状況となるから恐ろしい。
プラックは水流を纏わせた拳で、その傭兵に止めを刺してしまう。
「コレが最後のチャンスだからな!」
夏子もプラックと敵の数をうまく分担して敵を引きつけに当たっていた。
「幻想種に許してもらって……! 人としてやり直す……! 最後の!」
仲間がうまく攻撃をしてくれることを願いつつ、夏子は敵に槍を薙ぎ払い、爆音と強烈な光を発する。
ただ、彼もまた離れた商人の発砲したライフルの銃弾を頭に受けてしまう。
頭から血を流す夏子だが、パンドラを使うことで致命傷を逃れて。
「幻想種の幸せ勝ち取るまで 寝てらん ねーから」
強い決意を抱き、彼はカノン派を叩きのめし、目を覚まさせようとしていく。
プラック、夏子が苦しそうな戦いを繰り広げる中、茨の鎧を纏ったタツミも彼らを庇いに向かう。
残念ながら、タツミのカバーは間に合わなかったが、夏子が吹っ飛ばした敵を纏めて巻き起こした竜巻で薙ぎ倒すことで、結果として仲間にそれ以上の負担を強いることがなくなったようだ。
そんな中、アレクシアが抑えるアダーモ。
敵は戦場を炎に包み、笑い声をあげて。
「なんだ。最初からこうなっていれば……」
嫉妬の炎に己をも焦がす彼は、思った以上の力に恍惚とした表情を浮かべる。
ただ、ふとした時、そこにいる幻想種のアレクシア。
この場の誰よりも強力な魔力を得たにもかかわらず、彼女の存在によって嫉妬の炎が強まる。
「いけません。距離をとってください」
イルナスも幻想種に対する羨望、憎しみといった感情を感じ取り、矢を射かけつつ配下に、そしてアラーナに下がるよう促す。
「アレクシア……!」
敵の標的とされた自らの娘を案じる母。その想いは……。
立っているカノン派が減ったことで、攻撃の対象が徐々にアダーモへと集まる。
メルトリリスは無数の見えない糸を放っていき、切り裂くアダーモの動きを奪おうとする。
だが、敵は強力な力でその身を包み、なかなか動きが止まらない。
仲間の援護を受けながらも、アリシスも闇の月で照らし、アダーモを抑えようと躍起になる。
これで5度。後は、別のスキルで攻め落とそうとアリシスは動く。
その時、シュラも残るカノンは商人と傭兵を纏めて捉えて。
「かかりましたね。一気に仕留めますっ!!」
大きく大剣を振り回し、彼女は鮮血に染めた敵を次々に倒してしまう。
残る最後の商人には、夏子が迫って。
「負けを認めりゃ後は償え! クソッタレがーッ!」
地下に響き渡る発砲音。地上にまで漏れ出すほどの強烈な光。
夏子が吹っ飛ばしたカノン派の商人は壁まで吹っ飛び、がっくりと崩れ落ちていったのだった。
●
もはや、オラクル派はこの場の戦いを見守ることしかできない。
狂気に耐えながらも、敵であるはずのローレット勢の勝利を信じるのみ。
イルナスと配下、そして、アラーナは攻撃のチャンスさえあれば弓を構えて、矢を射かけていく。
されど、戦いの中炎に包まれたそいつは己の身を焦がしながらも、戦場で自らの力を示し、その一方で幻想種に執着し続けた。
ウィリアムはそんなアダーモに複雑な思いを抱きながらも、己の心より生み出した蒼く輝く剣を射出し、アダーモの体を切り裂いていく。
その一撃は魔種化に伴って尖った耳に命中したのはたまたまだったが、あだーもは当てつけとも捉えたのかもしれない。
「カノン様はこれだけの力を与えてくれた……。それに応えなければならない……!」
杖を翳すことでさらなるスキルを行使するアダーモは立ち上る複数の炎を円周上に飛ばし、この場全てのメンバーを焼き払おうとしていく。
近づけば、力を持たぬものは一瞬で灰になりかねない。
オラクル派はできる限り巻き込まれまいと、反対側の壁に張り付いていた。
ただ、強力な術を放てば、それだけ隙ができる。
アリシスは好機と見て、『神』の呪いをアダーモへと与えていく。
これまで、イレギュラーズ達は幾多の状態異常で敵を苛んでいる。
抵抗力を削がれてきていたアダーモだ。
ここぞと、アレクシアは魔力の花弁を飛ばして敵を撃ち抜く。
その一撃を受けたアダーモの様子に変化が見られて。
「おのれ、幻想種……お前達は、お前達なんて……!」
この若者もまた悪徳商人として、幻想種を捕えていた男だ。
彼は劣等感を抱く相手を奴隷とし、使役しようとしてわけだ。
決して自分には手が届かない存在を羨み続けたアダーモ。なんとも寂しい男である。
「うおおおおおっ!!」
魔種となったことで、幻想種を思わせる姿となっていた彼だが、身を焦がす炎はその偽りの姿を剥がしてしまうかのようで。
特攻してくる彼はアレクシアの体を掴み取り、自らの嫉妬の炎で焦がそうとしてくる。
「今回の私の役目は耐えること!」
これまで、中途半端ではあったが、相手を引き付けてはいた。
だが、この相手を追い込むタイミングだけは、絶対に仲間を危険にさらすまいと、敵の意識を自信から離さぬようにして。
「みんなを信じて、きっちり支えてみせるよ!」
激しい炎によって、パンドラを無意識に使っていたアレクシア。
だが、これ以上は仲間達が癒しの力で支えてくれる。
飛び交う攻撃は大切な仲間達が敵を倒すべく繰り出してくれているし、その中には母親の一撃もある。
調和の力を癒しとなして、アレクシアは自身を癒して耐えきろうとする。
「全力で、アレクシアさんに癒しを」
これ以上倒れさせはしないとスティアは彼女へと魔力を注ぎ、体力の維持に努める。
ここが正念場だ。スティアはアレクシアへとさらに癒しをもたらし、火傷すら残さぬようにと魔力を使い続けていた。
メルトリリスは、アレクシアの抑えがアダーモから外れた場合に備える。
現状は問題ないと判断したメルトリリスは代わりに、無数の見えない糸を放つ。
先程は大きな効力を発揮できなかったが、今なら。
今度こそ、敵の体を絡めとり、その動きを封じてしまう。
「なんだと……!?」
糸から逃れる隙など与えぬと、攻め込むシラスは、嫉妬の炎で化けの皮が剥がれかけたその姿を嗤う。
「偽物臭えツラしやがって。俺がブッ飛ばして整えてやるよ」
シラスは同じ人間種だからこそ、その姿があまりに滑稽に映ったのだろう。
アダーモの背後に立ったシラスは敵の至近から拳を叩き込み、近術と格闘術式を組み合わせた連打を浴びせかけていく。
そして、シラスは炎を燃え上がらせてさらに殴り掛かり、相手の杖を狙い真っ二つにへし折ってしまう。
異質の炎がアダーモの体を包んでいく中、タツミが渾身の力を込め、濃い黄色のオーラを立ち上らせた『煌輝』の刃を縦一閃に振り下ろし、直接斬撃のみを相手の身体へと叩き込んでいく。
「ぐ、ああっ……」
そのダメージによろけたアダーモ。
絶好のタイミングと見たシュラが飛び込み、「紅蓮の大剣【飛炎】」を燃え上がらせたシュラ。
「これが……最後です!」
シュラは憎悪の爪牙をもって、目の前の敵を蹂躙していく。
幾度も斬撃を浴びせかけていき、流れ出す血がその度に炎で焦げて蒸発していた。
その嫌な臭いもやがて止まる。
「く、そぉ……」
まがい物の幻想種と皮を破られた人間種の男は力尽き、爆ぜ飛ぶようにしてその姿をかき消してしまったのだった。
●
魔種が倒れたことで、外にいたイルナスの部隊員達も地下へと入ってくる。
事後処理に当たる彼女達は倒れたカノン派を拘束。
メルトリリスやシュラも手伝いを行い、念の為にと魔種に堕ちていないか確認も行う。
すでに戦意を失っていたオラクル派には、イルナスが改めて投降を促す。
さすがにこの場から逃れる手段はないと判断した彼らは命あっての物種と判断したらしく、両手を上げて降伏。
アリシスも彼らへと再度呼びかけを行うのを是とはしていなかったので、仲間達やイルナスの呼びかけによって降伏し、安堵の表情を浮かべていたようだ。
「まあ、無理に命を奪うことはしないと思っていたけれど」
とは、スティアの談だ。
自ら降伏という選択をしたことで、彼らにも多少の恩赦は与えられるだろう。
もっとも、幻想種達が許せば、ではあるのだが……。
「悪徳商人どもはぶん殴りたいが、怒りを示すのは俺達じゃねえ。彼女らに任せるべきだろうからさ」
捕らえたイルナス達もまた幻想種だ。
彼女達がきっと今回の1件も考慮した上で、しかるべき裁きを彼らに与えてくれるだろう。
「本当に、お疲れ様でした」
傷つく皆には、メルトリリスが治療に回る。
ただ、魔種を相手にしていたアレクシアやシラス、ウィリアムなどは安静にする必要があるほど深手を負っていたようである。
砂漠にあって地下の一室であるこの部屋からようやく魔種による炎の影響が和らぎ、少しだけひんやりとした空気を感じさせるようになってきていたのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPは母親の前で、魔種の抑えに当たっていたあなたへ。
今回はご参加、ありがとうございました!
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。なちゅいです。
前回の依頼で、関係者であるアラーナさんを連れ去った悪徳商人の討伐シナリオです。
どうやら、相手は仲間割れを起こしているようですが……。
●目的、状況
ラサ、『砂の町』傍の遺跡の一つで悪徳商人達がオラクル派、カノン派(を名乗っている)に分かれて争っています。
その中へと突入し、両者をできるだけ捕らえたいところですが、カノン派の中に魔種となった者がいますので討伐を願います。
●敵……悪徳商人達
幻想種を奴隷として連れ去り、オラクルにつき従っていたものの、カノンに商品……幻想種を奪われて憤慨している者達です。
ほぼ半数に分かれて争っていますが、カノン派のアダーモが魔種化していたことで、カノン派が圧倒的に優勢な状況です。
◎カノン派(を名乗る者達です)
○アダーモ
魔種。カノン派が使うグリムルートの影響により、『嫉妬』の魔種となった元人間種、20代の若者です。
オラクルの討伐を受け、いち早くカノンへと服従を決めた若い商人。
幻想種のような見た目に変貌したのは、カノンや幻想種に対する羨望、嫉妬があったものと思われます。
2mほどもある長い木の杖を使って強力な魔法を操り攻撃してきますが、事前情報に乏しく、どういった攻撃を行ってくるかが不明です。
○商人×4人
オラクルが倒れたことで、カノンに服従することを決めた商人達です。やや狂気の影響を受けております。
いずれも人間種、30~50代男性。
刀とライフルで武装していますが、そこまで強くはありません。
○傭兵×10体
いずれも人間種。雇われ主の鞍替えに応じた傭兵達です。こちらもやや狂気の影響を受けております。
長剣×5体。槍×5体。
いずれも、小回りの利くリボルバー銃も合わせて所有。
◎オラクル派
○商人×5人
前回の戦闘から生き延びている者達。
一連の依頼で、捕らえた幻想種が連れ去られ、困っている者達です。
カノンへの服従を拒み、幻想種を取り返そうともくろんでおります。狂気の影響は軽微ですが、アダーモの狂気が伝達する可能性は否めません。
こちらも全員が人間種、30~50代男性。
中国刀と自動拳銃を所持していますが、戦闘力はそれほどありません。
○傭兵×10体
いずれも人間種。手練れの傭兵達です。
オラクル派の商人に雇われ続けている状況です。現状、狂気への影響は軽微です。
格闘×5体。ナイフ×5体。
いずれも広域を攻撃できる散弾銃も合わせて所有。
●NPC
◎イルナス+部隊員
ラサ傭兵商会連合・ディルクの副官的ポジションにおり、幻想種の傭兵集団『レナヴィスカ』の頭領。
イルナス自身も、砂漠の弓手と知られた名手で、幻想種で構成された部隊を率いています。
今回は、部下のほとんどを遺跡の包囲に当たらせ、イルナスは、弓、精霊、魔術各1名、計3名のみ直接内部まで同行させています。
●関係者
◎アラーナ・アディ・アバークロンビー
幻想種の女性。年齢不詳。外見は20代後半。
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)さんの母親です。
通常の矢だけでなく、魔力を矢に変換して放つ事のできる特殊な弓を使っています。
前回の依頼で、グリムルートから助け出して出されている事、自分を捕らえた悪徳商人の捕り物撃とあって、参加を志願しております。
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
それでは、よろしくお願いいたします。
Tweet