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シナリオ詳細

【Autumn color】香る金に集う

完了

参加者 : 17 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●秋の金

 今年もまた、屋敷にある金木犀が花開いた。
 濃い緑に、無数の星を散りばめて。
 くらりと眩暈さえ起こさせるような香りを放って。
 甘く心とろかす芳香から『初恋』『陶酔』、香りによって咲いていることを隠し通すことができないことから『真実』『真実の愛』、小さな花の可憐さから『謙虚』『謙遜』、それ以外にも多くの花言葉を持つ。
 花言葉のうち、『高潔』『気高い人』の由来は、一斉に開花し、しおれる前に潔く花を落としきる、そんな様子から生まれたものだといわれている。
 確かに潔いのは美しい。けれど、せっかく咲いたのだから、多くの人と楽しみたい、とも思う。
「これ、秋の催し物に使えるんじゃないかしら」
 金木犀咲く屋敷に住まうヘルミはしばし考えを巡らせた。


●金木犀のお誘い

「秋のパーティをするのですよー」
 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は集まったイレギュラーズにそう呼びかけた。
「ヘルミさんのお屋敷の金木犀がきれいに咲いたので、お庭でパーティをするんだそうです。ぜひイレギュラーズのみなさんもご参加ください、とのことですよー」

 時間帯は夕方から夜にかけて。花を見る、から、花の香を楽しむ、への移り変わりを感じる会になるだろう。
 金木犀にランプをともし、近くのテーブルで優雅に時を過ごす。
 テーブルに用意されるのは、金木犀を白ワインに漬け込んだお酒。金木犀の香を茶葉に移したお茶。
 使用される食器は金があしらわれたゴージャスなもの。
 スコーンにつけるのは、クロテッドクリームと金木犀のジャム。
 柔らかな透明のゼリーに浮かぶ金木犀の花。
 金木犀のシロップを使ったお菓子も豊富に並ぶ。
 お酒のつまみには、金木犀の花、あるいは金粉が散らされて。
 演奏される楽器は金のフルート。

「きらっきらのパーティなのです!」
 だから、参加には1つ条件があるとユリーカは告げた。
「今年は必ず、その催しで指定された『色』を纏うのがお約束なのですよ」
 金木犀のパーティに参加するためには、『金』を身にまとわなければならない。それはアクセサリーでもいいし、服装でも、髪や体毛の色でもいい。とにかく、1つでもいいから金色のものを身につけるのが、参加のための条件だ。
「ヘルミさんは、緑のドレスに金色の大きなリボンを結ぶ予定って言っていました。みなさんも金色のものを忘れずに、パーティを楽しんできてくださいねっ」
 ユーリカはそう言って、イレギュラーズたちを送り出すのだった。

GMコメント

 キラキラなパーティへのお誘いです。
 金木犀のお酒は成人してから。未成年の方はお茶をお楽しみくださいね。

 飲んだり、食べたり、おしゃべりしたり、演奏したり、ダンスしたり、金木犀を愛でたり、お好きにお過ごしくださいませ。
 どんな金色のものを身にまとってくださったのか、ぜひ教えてくださいね。

 では、金木犀の木の下でお待ちしております。

  • 【Autumn color】香る金に集う完了
  • GM名月舘ゆき乃
  • 種別イベント
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2019年10月29日 23時05分
  • 参加人数17/30人
  • 相談6日
  • 参加費50RC

参加者 : 17 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(17人)

透垣 政宗(p3p000156)
有色透明
燕黒 姫喬(p3p000406)
猫鮫姫
銀城 黒羽(p3p000505)
羽瀬川 瑠璃(p3p000833)
勿忘草に想いを託して
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
ディバイン・シールド
ヒィロ=エヒト(p3p002503)
瑠璃の刃
姉ヶ崎 春樹(p3p002879)
姉ヶ崎先生
藤野 蛍(p3p003861)
比翼連理・護
秋空 輪廻(p3p004212)
かっこ(´・ω・`)いい
桜咲 珠緒(p3p004426)
比翼連理・攻
クリスティアン=リクセト=エードルンド(p3p005082)
煌めきの王子
美咲・マクスウェル(p3p005192)
玻璃の瞳
イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)
キラキラを守って
一条 佐里(p3p007118)
砂上に座す
アルヴィ=ド=ラフス(p3p007360)
航空指揮
皇 雛乃(p3p007429)
お姉ちゃんと一緒
メリー・フローラ・アベル(p3p007440)
虚無堕ち魔法少女

リプレイ


 ほんのりと暮れてゆく空で、まだ沈み切らない太陽が金の輝きを放つ。
 そんな朱金の光を受けて、屋敷の金木犀は鮮やかに薫る。
 その下をゆく人々もまた、金の彩りを身にまとって。

「んふふ、キラキラしてんね。まぶしー」
 目を細めた姫喬は、雛乃と繋いでいた手がきゅっと握られるのを感じ、微笑を向けた。
「緊張してるのかな?」
 優しく指先を撫でると、雛乃ははにかむ。
「少し……でもききょうお姉ちゃんと一緒だから大丈夫です」
 それに、と雛乃は周囲に漂う金木犀の香をかぐ。
「ここはききょうお姉ちゃんの匂いがします」
「あたしの匂い?」
 姫喬は金木犀の枝に手を伸ばし、香りを鼻腔いっぱいに吸い込んだ。そして、いっひひひと笑う。
「ひなちゃんは、どんな匂い、纏っちゃおうかね」
 繋いだ手をじゃれるように振って、姫喬はふと雛乃の手首に目を留めた。
「お洒落なブレスレットね。ひなちゃんの?」
 大人っぽいしゃれたデザインのブレスレットは金。この催しのためにつけてきたものだろう。
「あのこれは……かか様のを借りて来ました」
 背伸びしたのを見抜かれたようで、雛乃は赤くなる。
「ききょうお姉ちゃんは、そのかんざし、とっても似合ってます!」
「ありがと」
 いつもは靡かせている姫喬の艶やかな黒髪は、大きな金のかんざしで結い上げられていて、それがよく似合っている。いつかは自分も姫喬のようなレディになれるようにと、雛乃は憧れの目で見上げるのだった。

「わぁ……! オフィーリア、木に星が咲いてるよ!」
 金木犀の樹を見上げ、イーハトーヴは腕に抱いたうさぎのぬいぐるみに話しかけた。うさぎの着ている金色のドレスは、イーハトーヴのリボンを模した刺繍ブローチとお揃いに仕立ててある。
「上を見てはしゃいでいると転ぶわよ」
 注意してくるオフィーリアの声が聞こえるのは、ないしょばなしのギフトを持つイーハトーヴだけだ。
 金木犀の香のお茶、美味しいスコーン。それも分け合えたらと思うけれど、おしゃべりできて、一緒にわくわくに会いに行けるだけでも嬉しい。
「しばらく金木犀の匂いがついちゃいそうね」
 オフィーリアはぼやくけれど、きっとそれも素敵なことだ。

 ドレスコードの金色は、珠緒は雫の形、蛍はハートの形のチトリーヌのペンダント。南の海の太陽の色に輝くその金は、互いが贈りあったきらきらの宝物だ。
「それじゃ珠緒さん、お手をどうぞ」
 くすっと笑いながら蛍が出した手に、
「蛍さんは、貴族の方々の様式がお気に入りです?」
 珠緒は楽しそうに自分の手を預け、エスコートされた。
 まずはお茶とお菓子でひと休憩。
 吹く風も、お茶もお菓子も金木犀の香に満ちて。
 見渡す場所は金色にきらめいて。
 蛍が掬い取ったジャムは、透明の中に金木犀の花が浮かんでいる。
「金木犀のジャムなんて初めてだけど……ん、美味し」
 さらりとした甘みのジャムが気に入って、今度ボクたちも作ってみよっかと、蛍は提案した。
「蛍さんは作り方をご存じですか? 桜咲、果物を煮詰めるジャムしか知らないのです」
「分からないものは学べばいいのよ。これこそが人の営みよね! ……ハイ、ボクも作り方知りません!」
 正直に言う蛍に、珠緒から笑みがこぼれる。
「レシピをお教えいたしましょうか?」
 背後からかかった声に珠緒が振り返ると、ヘルミが立っていた。
「ありがとう。お願いしたいわ」
 答える蛍にヘルミは頷く。
「あとで届けさせますわ。良かったら金木犀のお花も摘んでいってくださいな」
 にこやかに礼をして、ヘルミは会場を歩いて行った。

 金色のパーティの中、美咲は余裕の歩みを進めていた。最近したモデルの仕事で見繕ったドレスが、思いもかけずに役立った。色もサイズ感もとてもよくあっている上、美咲の物腰に見られる慣れと自信は人目を引いた。
 そんな美咲の腕にはしっかりと、ヒィロが抱き着いている。
「ね、せっかくのパーティだし踊ろうよ」
「あら、今日はお茶より踊りなんだ。でもここまであちこちキラキラだと、じっとしていたくない?」
 ヒィロの提案が意外で、美咲は会場を目で示した。
「えー。ここだからこそダンスしたいよ。優雅なお屋敷で、くらくらしちゃう甘い香りに包まれて、ドレス姿のすっごく綺麗な美咲さんとダンス……」
 うっとりした目でヒィロは美咲の腕を揺らす。
「絶対、キラッキラに輝く一生の思い出になるよ! ねねね、いいでしょ?」
 そういうヒィロの瞳こそ、キラッキラだ。
「いいよ、こういう場だから、ゆったりしたやつね」
 美咲はヒィロに踊り方を教えながら、流れるようにリードする。
「ワン、ツー、はい、ここでくるっと」
 その声に、その動作に、ヒィロは精いっぱい体を合わせた。くるん、と不思議なくらいスムーズに体が回る。
「その調子。踊るときは私の顔じゃなくて、左側の空間を見るのよ」
「……それは難しいかも」
 ヒィロは小さく笑った。だって、はじめて見た踊る美咲はとても綺麗で、いつまでも見ていたくなってしまうから。

 さざめき楽しむ人々と少し離れて、金糸で刺繍されたピナフォアを着たメリーが金木犀を眺めていると、ヘルミがどうかしましたかと声をかけてきた。
「元の世界にいたときのこと、思い出しちゃった。わたしね、元の世界ではやりたいことは何でもやったし、逆らう奴はみんなぶちのめしてきたんだけど」
 ある日、近所の老人に「そんな生き方をしていては、今は良くてもいずれ不幸になる」と言われた。
「まぁ」
 良い話なのかとヘルミはほほ笑んだが、この先は。
 メリーに「お孫さん、無事に小学校にあがれるといいね」と言われた老人が土下座して謝り、メリーは老人の庭の思い出深い金木犀を焼き払うだけで許してあげた、と続く。
「そ、そんなことが……」
 ヘルミはさりげなく金木犀を背にかばった。


「小洒落た菓子だなぁ」
 ゴリョウは金木犀を焼きこんだパンケーキの裏表を眺めてから、口に運んだ。花の香が強く感じられるが、入っている花そのものではなく、配合された酒から香っているようだ。和食洋食と料理経験はあるが、菓子類や酒、茶に関してはまだまだ学ぶべきところが多い。こうして普段は食べないものを味わうのは良い経験だ。
「ぶははははっ、食の道は奥が深いぜぇ」
 味見というには量が多いが、むさぼるのではなくじっくりとゴリョウはテーブルに並んだ菓子や料理、茶や酒を食べてゆく。明日あたり、ゴリョウからは甘い香りが漂いそうだ。
「ああそうだね。味と香りを楽しめるこんなパーティでは、お酒も食事もついつい進んでしまうよ。特にこのワイン!」
 クリスティアンはグラスを揺らし、ワインの香と溶け合う金木犀の香にうっとりと目を細めた。
 ゴリョウは両手両足の甲や瞳の色で、クリスティアンは金髪にくわえて装飾品をつけ、パーティのドレスコードを楽々クリアしている。
 赤いドレスを着た佐里は、ハート形の金色のイヤリングと、左手の人差し指にはめた金の指輪をつけてきた。スコーンにたっぷりとクロテッドクリームと金木犀のジャムを載せたものを食べ、金木犀のお茶を飲み……お酒は少し。と思っているが、口当たりが良いからつい酒は進んでしまう。
「おや、素敵な演奏が流れているね! 僕のぱーへくとで素晴らしいダンスをおひろめいたそうじゃないか! お手をどうぞ」
 酒に酔ったか、金木犀に酔ったか、ほわりと頬を紅潮させたクリスティアンが、佐里をダンスに誘った。
「えっと……ではよろしくお願いします」
 思わぬ誘いも、人が寄り集まるパーティならでは。
「よっ、いってら」
 ゴリョウに送り出されて、クリスティアンと佐里はダンスを楽しむ人々の中へと入ってゆくのだった。


 夜の帳がおりてくると、金木犀の樹にも明かりがともされた。
 甘い香が増したように感じるのは、他のものが闇に沈む所為か。

「さぁ、一緒に踊ろうか。お姫様?」
 黒羽が差し出す手に、瑠璃は恥ずかしそうに手を重ねた。
「踊りを習ったことがないので下手なんですけど……」
 それでも、この香る夜の思い出に黒羽とダンスが踊りたい。
「俺も正直、上手く踊れる自信はねぇけどな」
 言いながらも黒羽は、瑠璃をきちんとリードしてステップを踏みだした。
 奏でられるのは優雅なワルツ。
 ターンすれば瑠璃のドレスがふわりと広がり、金の髪飾りが光を受けて輝く。いつもの勿忘草の髪飾りを、今日は金銀花の飾りに変えてきた。
 金銀花の花言葉は『愛の絆』。そんなことまで見透かされているようで、瑠璃の頬はほんのり染まる。
 黒羽は踊りながら位置を変え、徐々に明かりから遠ざかっていった。そして闇に溶け込んだそのとき。
「あ……」
 金の光に包まれて、瑠璃は小さく声をあげた。
 黒羽から溢れる金の光が踊る2人を闇に浮かび上がらせたのだ。
「ちょっとしたサプライズだ」
 この祭りだからこそできる演出だと笑う黒羽から、瑠璃は目が離せなくなる。
 まるで魔法にかけられたような時間。
「お礼に……」
「ん、何だ?」
 聞き返され瑠璃は消え入りそうな声で囁いた。
「お礼に、頬にキスくらいなら……いいですよ」
 驚く黒羽から、金色の光が消える。
 再び闇にまぎれた2人を見る人は、誰もいない――。

 アルヴァは仮面をつけた輪廻の前に行くと、緊張の面持ちで誘った。
「るぅ……。僕と……一曲踊っていただけませんか?」
「あらアルヴァ君、私と踊りたいの? 良いわ。付き合ってあげる……けど、踊れるのかしら?」
 ダンスが得意そうには見えないと思いながらも、輪廻はクールに申し出を受けた。
 アルヴァは深呼吸してから、音楽にあわせて踊りだした。輪廻をリードしようと頑張ってはいるが、異性とのはじめてのダンスだから、その動きはぎこちない。そんなアルヴァに恥をかかせないよう、輪廻はこっそりと自分でリードして舞うように踊る。
「え、あ……り、輪廻さん……?」
 周りからは軽やかに踊っているように見えているだろうが、アルヴァは輪廻の足を踏まないように気を付けるので精いっぱい。余裕もなく、必死に足を動かした。
 何曲か踊って椅子に戻ったころにはアルヴァはへとへと。ダンスに疲れたというよりは、自分から誘ったのに恰好良いところを見せられなかった不甲斐なさに打ちのめされて。
 けれどそんなアルヴァを、輪廻は仮面の下から温かく見つめる。
「立派だったわよアルヴァ君。初めてで女の子の脚を踏まないのは立派なもの。だから……」
 輪廻はさっと周囲を見渡し、人目がないことを確認すると仮面を外し。
「これはご褒美……ねん♪」
 アルヴァの頬に口唇を触れされると、素早く元通りに仮面を付けた。

「折角のパーティーだ。若い頃を思い出して腕を奮うとしよう。政宗たん、付き合ってくれるか?」
「もちろん。姉ヶ崎先生が何か作るところを見てるの、僕好きなので。喜んでご一緒しますよぉ」
 そんなやり取りがあってやってきた金木犀の庭で、春樹はバーテンダーのユニフォーム、左胸に金のチェーンブローチをつけて、シェーカーを振る。
 普段は同人ショップの店主として働いている春樹だが、シェーカーを振るしぐさは実に様になっていて、政宗は見惚れてしまう。衣装の効果もあるのだろうか。普段の数割増しで恰好よく見える。少しだらしない普段の恰好とのギャップがたまらない。
 カクテルのベースは桂花陳酒。金木犀の花を白ワインに漬け込んだ、甘くて香り高いリキュールに、ブルーキュラソーやライチリキュールを入れてステアし、飾りに金木犀の花を浮かべると、春樹はそれを政宗の前にすべらせた。
「腕が鈍っちゃいなきゃいいんだが、味見してくれ。『楊貴妃』だ。」
「綺麗……」
 グラスの縁を愛でながら、政宗は口に含む。咲くように広がる上品な香り。
「美味しいから、味見じゃ終わらせられそうにないよぉ」
 お酒に強くないのに、と言う政宗に春樹はいたずらっぽく笑う。
「酔っちまったらそのときは、俺が介抱するから」
「じゃあ……貴方に酔ってもいいですか?」
 言ってしまってから恥ずかしくなって、政宗の頬がかぁっと熱くなる。
 その問いかけに答える春樹の口唇の動きを見るのにさえ照れてしまって、政宗は目を伏せた。

 きら、きら。
 金の夢、金の思い出、今宵香る。



成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

金木犀のどこまでも優しく甘い香りは、この季節の彩りですね。
金色の花の下でのひとときを楽しんでいただけたのなら嬉しいです。
ご参加ありがとうございました。

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