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シナリオ詳細

忘却された恍惚の天使

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ルナリア男爵VS恍惚天使ルナリア

――撰ばれてあることの恍惚と不安と二つ我にあり

――ポール・ヴェルレーヌ詩集

 幻想(レガド・イルシオン)辺境に位置する弱小男爵領は滅びの時を迎えていた。
 天使の襲撃に遭い阿鼻叫喚する街中。やがて男爵屋敷という牙城すらも崩されて……。

――なぜ、あなた方は永い年月、私のことを省みて下さらなかったのですか?
 月明りのような淡さを備えた美麗の天使は双剣を男爵の首元に突きつけて問うた。
「誠に申し訳ありませんでした、恍惚天使ルナリア様! もはや返す言葉もございません」
 満身創痍で苦虫を嚙み潰したように返答するのはルナリア男爵である。
 男爵の周辺には、既に動かぬ躯と化した騎士や使用人が転がっていた。

――この期に及んで白々しい。時に男爵。あなたがなぜ、『ルナリア男爵』と呼ばれているかはお忘れではないでしょうね? あなた方が私を選んでくれたという事実。それだけで私は幸せでした。ですが、もう、今は、只々狂おしい程の不安しかありません。
「全くもって遺憾であります。我らの名はルナリア様から頂いた名誉であり大変感謝しております。ですから、どうかお許しを!」
 もう何世代も前になる伝承だろうか。数代前の先祖の統治する地に恍惚天使ルナリアが舞い降りてから彼らは「ルナリア男爵」を拝命した。恍惚天使のご加護を授かる一貴族領として「ルナリア男爵領」は再出発したのであったが……。
 年月の経過と記憶の風化は残酷だ。数世代も経つと、近隣の山岳に恍惚天使を祀っていた事すら男爵と領の人々は忘却していたのだろう。

――最期の問いです。天使が人を選び、人が天使を選ぶという儚い契約。「恍惚」という感情の機敏を理解している上で私を祀って狼藉を働いたのですか?
 男爵はもはや正しい「解答」を返せるだけの精神的余裕がなかった。
 忘我の境を超えた天使は神気を発生させ、項垂れ謝罪する男爵に決別の一撃を――

●キャラバンの逃走劇
「皆さん、こちらに逃げて下さい! 小さな子どもや老人や足の悪い人は馬車に乗って行きましょう!」
 襲撃で荒れ狂う街中、『リスの冒険家』リース・ウォルナッツ(p3n000114)が男爵領の人々の逃走を助けていた。
 荷物を配達に来たら、男爵領がまさかの壊滅状態であったとは……。
 そんな最中、天使の配下達が逃走劇の邪魔を――
「旅の方、行って下され! この場は我ら騎士団が引き受けましょう!」
「ごめんなさい! お願いします!」
 恍惚の人魂と奮闘しながらも、騎士団長が勇気の剣を振るって道を開いてくれた。
 キャラバンは少なくない数の領人を連れて男爵領から命からがら脱出できたのであった。

――――――
―――


 逃げ延びたキャラバンと領の人々は名もなき遺跡に辿り着いた。
 古めかしくも半壊している遺跡だが身を隠す場所には最適だろう。
「ひとまず大丈夫かな? そうだ、通報しよう!」
 リースは子飼いの伝書鳩に救援信号を括り付けて大空へ飛ばした。
 旧知の間柄であるローレットに頼めば優秀なイレギュラーズを派遣してくれるだろう。
 天使の追跡が先か、ローレットの到着が先か――
 リースはお守りを強く握って天に祈った。

GMコメント

●目標
 恍惚天使ルナリアの討伐。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●ロケーション
 ルナリア男爵領からやや離れた古くて半壊状態の遺跡が今回の戦闘場所です。
 遺跡前は平原と森林が広がっています。
 遺跡の建物の残骸も戦闘では利用できます。(隠れたり、盾にしたり等)
 遺跡の中にも入れますが広くはなく暗いです。

●シチュエーション
 イレギュラーズが遺跡前に到着する頃に恍惚天使も出現します。
 NPCリースが男爵領の人達を連れて逃げると同時に皆さんが恍惚天使と戦闘します。
 戦闘の時間帯は昼過ぎ頃です。

●敵
 恍惚天使ルナリア×1体(ボス)
 月の明かりのように眩い光の天使です。
 ルナリア男爵領からの信仰が長い間絶え、苦しみ、狂い、忘我状態です。
 前衛タイプ。命中回避高。
 戦闘方法は以下。
・双剣の一撃(A):鋭い斬撃の一撃を与えます。物至単ダメージ。連。BS恍惚。
・恍惚の舞(A):双剣で舞を踊り攻撃。物自域ダメージ。BS恍惚、崩れ、ショック。識別。
・恍惚の月明り(A):眩い光を放ち、姿を隠します。奇襲したりします。神特レ。
・EX 神気(A):その場にいる全員に敵味方問わずCT特高を自付・付与します。神特レ。
・恍惚元気(P):恍惚の瘴気をまとい自動でHAが回復します。
・恍惚無効(P):BS恍惚が無効です。
・飛行(P):背中の翼で飛行できます。

 恍惚の人魂×20体
 恍惚天使ルナリアの配下であり浮遊する燃える魂です。
 忠誠心や統率力はまあまあ高いです。
 戦闘方法は以下。
・恍惚の射撃(A):魂の一部を飛ばして射撃します。物中単ダメージ。BS恍惚。
・崩壊の狙撃(A):隠れ潜み奇襲で狙撃します。物遠単ダメージ。BS崩れ、ショック。
・連携(A):周辺の仲間と連携攻撃(上記の射撃/狙撃)をします。
・恍惚元気(P):恍惚の瘴気をまとい自動でHAが回復します。
・恍惚無効(P):BS恍惚が無効です。
・飛行(P):魂で飛行できます。

●GMより
 お久しぶりです。あるいは初めまして。名前が魔物なGMのヤガ・ガラスです。
 さて、危うく狂った天使を相手に皆さんと共に純戦でもしたいですね。

  • 忘却された恍惚の天使Lv:15以上完了
  • GM名ヤガ・ガラス
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2020年02月13日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

銀城 黒羽(p3p000505)
武器商人(p3p001107)
闇之雲
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
祈りの先
リーゼロッテ=ブロスフェルト(p3p003929)
リトルリトルウィッチ
シラス(p3p004421)
ハッピー・クラッカー(p3p006706)
爆音クイックシルバー
彼岸会 無量(p3p007169)
回言 世界(p3p007315)
貧乏籤

リプレイ

●開戦
 幾ら祈れども救援は現れない。対して現れた恍惚天使の軍勢が無常にも狂刃を抜く。
 隊商や領の者達が死を覚悟したその刹那――

「我々が来たからにはもう安心!!!! イレギュラーズを敵に回した事、後悔するが良いわああああー!!!!ミ☆」
 爆撃が炸裂するかの如く『爆音クイックシルバー』ハッピー・クラッカー(p3p006706)が意気揚々と登場した。特異運命座標達が到着する様を見て人々は安堵の表情を浮かべた。
「天使とは、人々を守り導くもの。守るべき人々を手に掛けるなど、一体何を考えていますの! 仮にも天使を名乗るならば、今すぐ武器を収めなさい!」
『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)は到着と同時に戦棍を翳して敵勢へ宣告する。人々は紅の司祭に一礼し早々と逃走する。
「おい、大丈夫か? 俺に見せてみな?」
 人魂の射撃に逃走を阻まれて転倒した子を救助するのは『凡才の付与術師』回言 世界(p3p007315)だ。回復術式を施しながらもふと呟く。
「まったく、どいつもこいつも厄介な恍惚で燃えていやがる。まあいいさ、生憎そういうのには滅法強い方だ。やりたいようにやらせてもらおう」
 元気飲料を飲み干して己に活を注入した『一人アナタトイ』銀城 黒羽(p3p000505)は防波堤と成るべく敵勢の流れを遮断する。
「忘れられた天使共か……。人に忘れられるってのは苦しいだろうな。その気持ちは分かるぜ。だが、このまま放っておけば罪のねぇ奴等まで被害を受けることになる。だから、ここでアンタらを止めてやる!」
 黒羽が鉄壁の盾ならば彼岸会 無量(p3p007169)の方は必殺の剣だ。
 群がる魂共を深紅の妖刀で牽制する。
「恍惚とは年老いた者が大切な事すらはっきりと分からぬ様も意味しますね。其の状態では、もはや胸に穴が開く様な寂しさも禁じ得ぬ事でしょう」
 既に混戦状態にて開戦しているが必勝の布石は打たねばならない。
『慈愛の紫』リーゼロッテ=ブロスフェルト(p3p003929)は戦線離脱して子飼いの使い魔を使役する。遺跡高所へと飛翔させた鳥獣の眼力によって戦場配置の俯瞰を試みる。
「契約の不履行による罰かぁ。仕方ないと言えば仕方ないけどね。でもこのままだと無関係な人も巻き添えになりそう。善良な魔女としてここは止めないとね!」
 敵勢としても次の一手を封じるべく月呑み魔女に襲撃を仕掛ける。
 作業中の彼女の護衛には『ラド・バウD級闘士』シラス(p3p004421)が就いている。熟練の闘士らしい鋭敏な動きで襲撃をいなす。
「よう、化け物共、俺が相手だぜ? 祀りが絶えたから怒りのままに人を殺めているのか?」
 序盤戦において恍惚天使は後方から戦場を俯瞰し配下を指揮している。
 敵将の挙動を鋭利な紫の眼光で観察しているのは『闇之雲』武器商人(p3p001107)だ。
 ソレは明晰な分析力で半壊遺跡の配置を見切り、三対六枚の翼を駆使しながら華麗に舞う。敵の流れを回避し、蛇道や遮蔽物を横断して、ついに恍惚天使の背面に迫る。
「我(アタシ)はカミサマじゃあないけれど。嗚呼、それでもね、可哀想な恍惚の天使。儚き契約とわかっていてニンゲンを選ぶなら、ニンゲンに期待しないまま一方通行に愛するしかないんだよ。たとえ、忘れ去られてもね」
 己の迂闊さを省みた恍惚天使は双剣の怒りの矛先を武器商人へと向けた。

●対天使
 天使が恍惚を煌めかせて双剣で武器商人を斬り付ける。
 対する武器商人は斬撃の痛覚に耐えながらも天使の戦闘行動を抑制する。
 しかもソレは朱色の旗を構えて出鱈目な防御態勢を取りながらも油断を誘う。
 当然、天使の側は自らの優勢を確信して剣を振り続けるが――

 これは武器商人が敵将の囮となる事で味方の戦闘活動を維持させる作戦だ。
 敵の数は特異運命座標の戦力を凌いでいる為、まず総数を削らなければならない。
 さて頃合いか。怜悧に笑う武器商人が漆黒の残影を揺らめかせ破滅の呼び声を絶叫する。

――哀しきかな、忘れ去られて落ちぶれた神霊。カミサマに見放された天の御使いほど気の毒なモノはそうそう無い……。

 天使の霊体の底からソレの囁く声が響き渡る。

――キミたちにとって信仰は存在の根幹。消えゆくだけならまだしも人に仇成す祟りガミとなれば……。嗚呼、この上なく無様で愛しいね……。

 霊的な神経すらも逆撫でるソレの精神攻撃は天使に在りし日の記憶を呼び起こす。

――カミサマも、愛したニンゲンも、キミを助けることがないなんて。つい、拾ってしまいたくなるなァ?

 天使は苦悩と憤怒に震えていたが涙を拭うと恍惚の剣を構え直した。

――神子よ。死を以って贖いなさい!

 閃光を煌めかせた天使が神子の類であるソレを双剣で怒りのままに叩き伏せる。
 しかし策略に嵌ったのは天使の方だ。
 武器商人から付与された憤慨によってもはや彼女の視界にはソレしか映らない。
 しかも幾度倒してもソレは不屈にも何遍も起き上がるのだ――

●迎撃A
 武器商人が天使を相手取る頃、A班の黒羽、リーゼロッテ、シラスが人魂を迎撃していた。

 敵前衛から射撃されつつも、溢れ出る黄金が前衛の盾である黒羽を護る。
 敵勢があらぬ方角から砲弾する一方、黒羽も怒りの縛鎖で奴らを一網打尽する。
 反撃を纏めて撃たれた所で黒羽の黄金の気概は砲撃の一部すらも弾き返した。
「かなり巻き込めたな? これなら奴らの回避力を気にすることなく反射ダメージを蓄積させることが出来るぜ。しかも飛行して逃げることももう出来ねぇから好都合だ」
 もっとも敵と雖も統率の取れた精鋭揃いだ。
 一斉に連携した射撃で、狙撃で、黒羽を撃ち殺すべく躍動する。
「おらあ、それがどうした!?」
 攻勢が加速する為、黒羽の方も防御付与を強化する。
 瞬間的ではあるが過去の全盛を彷彿とさせるような姿となって盤石の防御態勢で臨む。
 流石に精鋭達の強襲攻撃を纏めて被弾すると鉄壁の英雄も吐血して膝をつくが……。
「……俺は死なねぇ。だから、好きなだけ攻撃してきな。全部受け止めてやる」
 恍惚の人魂達は不屈の英雄を前にして後退りする――

「黒羽さんが敵勢の気を引いてくれてる内にがんがん減らすのよ!」
 大壁の残骸を盾にしつつ、リーゼロッテは魔法の羽ペンを駆使して魔法陣を描く。
 慈愛神を象徴する女神の淡光が前方に固まる敵を貫通して狙い撃つ。
「回復とかで役に立てない分、きっちり火力で仕事をするわ!」
 黒羽と雖も永遠の囮ではないのだからリーゼロッテの後方支援攻撃は不可欠だ。
 もっともこの足場を共に確保してくれたシラスにも感謝はしたい。
 そして順調に神秘狙撃を続行していると、あろう事か遠方に潜む人魂が狙撃してきた。
「相手になるわ、はぐれ人魂め!」
 カウンタースナイプに応ずるリーゼロッテと人魂の壮絶な撃ち合いが始まる。
 精鋭達が狙い撃つ魔力の砲弾は彼女の防御態勢すら奇しくも挫き痛恨を与える。
 やがて魔女の運命の欠片は舞い散るが、神秘の秘技に裁かれ燃やされた魂は消滅した。
「ふう、危ない所だったのよ」
 潜伏している残党がリーゼロッテに照準を定める――

「おい、化け物? 背後がガチがら空きだぜ?」
 その諸手に魔の刃を宿らせたシラスが人魂に斬撃を浴びせて駆け抜ける。
 弱体化していた残党は最期の一撃が直撃すると消滅した。
「よう、元気か?」
 リーゼロッテへの襲撃を未然に防いだシラスが大仰に手を振る。
「ありがとね!」
 感謝されたシラスの方も礼を述べたい。
 序盤の配置確認の際に護衛をしたお陰で戦場配置を抜かりなく習っている。
 しかも敵勢は前衛の黒羽を包囲するか後衛のリーゼロッテと撃ち合いをしていた。
 それらの要因からシラスは自由自在に戦場の担当範囲を往復する事が出来た。
 黒羽が劣勢の時は治癒術式を送り届け、リーゼロッテが敵と交戦中の時には奇襲する。
 彼は忠実かつ着実に中衛としての役割を全うしていたのだ。
「おっと、今度は黒羽が危ねえ!」
 全力で戦場を駆け巡り交戦中の黒羽付近へ辿り着く。
 決して敵にも手を出さない我らが大盾はもはや満身創痍で各種異常に苦闘している。
「黒羽、負けんじゃねえ!」
 シラスは異常個所を的確に分析し解除術式を飛ばす。
「へ、この程度で負けるかよ?」
 黒羽が微笑しながら豪語していると裁きの雷が敵を粉砕した。
 リーゼロッテの後方支援も追随して戦局は終盤戦へ向けて加速する。

●迎撃B
 A班が迎撃を開始した頃、B班も交戦を開始していた。
 B班はハッピー、無量、世界、ヴァレーリヤの四名により構成されるが敵数も多勢だ。

 最前衛に立つハッピーは愉快に歌い踊りながら人魂の進撃を迎え撃つ。

―Hey Guys♪ どこに向けてんだGaze♪ 楽しもうGame♪ 今というDays♪ 私達の勝利へ掛け金をRaise♪~

 幽霊(クイックシルバー)の十八番であるCheck it out!! に呑み込まれて正気を保てるネームドは、この中に存在しない。
 激怒した人魂の数は眷属かのように着実に増加する。敵勢は一斉にハッピーを射撃し狙撃し集中砲火するという暴挙に出た。
 それでも騒乱演舞に情熱を傾けるこの幽霊を止める事は誰にも出来ない。
 今度は遠方に控えている後衛達に狙いを定めて悪戯を仕掛ける。
 Quicksilverの二つ名を轟かすかのようなスラップスティックの大技を叩き込んだ。
 鈴音の如き爆笑音、台風の如き暴風音、恐怖の如き水道音……。
 仕舞いには『Q』文字の巨大な入道雲すらも青空へ浮かぶ。
 敵勢はもはや状態異常の大嵐で支離滅裂だ。
 ハッピーの方も呑み込まれて滅茶苦茶になりながら何遍も消滅と再生を繰り返す。
「うらめしやぁおらぁ!!ミ☆」
 撃ちのめされながらも幸せいっぱいな笑顔のハッピーは狂乱する魂達を離さなかった。

 ハッピーが盾と囮の役を引き受ける一方で、無量は隙を突いて人魂を斬り殺す。
 敵勢の多数が幽霊に憤怒して踊っている訳であるから遣り易い事この上ない。
 しかしハッピーだけに数を抑え込ませるのも酷な話だ。
「暇そうですね? 私が相手を致しましょうか?」
 無量が遠方に余る敵を第三の眼で睥睨する。
 憤怒した人魂は引き寄せられると即座に射撃体勢に移る。
 接近戦が専門である無量に対して銃撃戦が専門である恍惚の人魂。
 どちらも己の間合いで雌雄を決したいと臨むが良い勝負になる。
 自己修復しながら未だに倒れぬ魂に感化されたのか仲間も迎撃に加勢する。
「多勢に無勢ではないですか? ですが、此処を抜かれる訳には……」
 後衛にこの敵勢を委ねるのも酷かと思い至った無量は必殺の凶刃を構える。
 集中砲火で運命の欠片を喪失しながらも敵勢を斬り伏せて消滅させた。

 猛攻に驚愕している時でもなく、世界は前衛を支援するべく妖精の回復術式を詠唱する。
「おっと? 彼岸会の方が負傷しているな?」
 柱の残骸を盾に利用しつつ、後方から的確な分析の下に前衛を治癒する。
「今度はハッピーか? 状態異常がきつそうかな?」
 別の柱に駆け移り、即座に解除術式を送り届けて援護する。
 最後尾から冷徹に観察している妖精遣いだが、一点、腑に落ちない事があった。
「えっと? ヴァレーリヤは? ……ふむ、なるほどな」

 策士のヴァレーリヤはB班の迎撃が始まると同時に隠密行動に出ていた。
(敵勢は今、最前線の戦いで必死ですわ! やるなら今ですわね!)
 半壊遺跡の裏側を駆け抜けるが幸運にも人魂と遭遇はしなかった。
 さて、この地点から旋回すれば最前線の丁度斜め後ろに出られる。
 ヴァレーリヤが慎重に窺うと敵勢は見事に怒り踊っていた。
 紅の司祭が聖句を臨機応変に引用詠唱すると太陽の如き魔炎が戦棍に宿った。

――主よ、天の王よ。この炎は恍惚の悪を燃やし滅する為の断罪の炎です。どうか、この炎を以って彼女らの罪を許し、その魂に安息を与え給え!

 まるで黙示録の終末を象徴するかのような神罰の炎が敵勢を襲撃して焼き払う。
 苦闘していたハッピー周辺の恍惚の悪共は裁きが下り灰燼に帰した。
 ハッピーも黒焦げの丸焼きになったがこれは標準誤差だ。
「最悪の場合、殺さない程度であれば巻き込んで攻撃して良いよ!!」
 と、事前に承諾があったので仲間割れは杞憂である。

 奇襲は奇襲であるが故に奇襲であり、居場所がばれた次の段階は正面衝突の激闘となる。
 迫りくる人魂の残党達が魔弾に魔力の限りを込めてヴァレーリヤを狙い撃つ。
 フィジカルアデプトの異名が伊達ではない紅の司祭の方も全力で戦棍を振るい突撃だ。
「どっせえーーい!!! ですのよー!!」
 その神技の名の如き掛け声を上げながらヴァレーリヤは果敢に迎え撃つ。
 激突は熾烈を極め、ついに運命の欠片を靡かせながらも紅の司祭が最後には立っていた。
 もっとも激闘を制したのは彼女の強靭さだけではなく仲間の支援もあったからだ。
「まあ、俺の回復が間に合ってよかったな?」
 世界は奇襲戦術を察するや否や別の経路を駆け抜けてヴァレーリヤの後方まで到着していた。
 機転の良さは流石であり見事に後方支援としての役目を果たしていた。

 時に、何故か恍惚天使が猛烈な勢いで飛翔しているようだ――

●決戦
 度重なる破滅の囁きから醒めてふと正気に返ったルナリアは驚愕した。
 二十体もの配下達は既に全滅していたからである。
 思えば武器商人は満身創痍になって何遍も再起しながらもこの天使を抑制していたのだ。

――お退きなさい。私には成すべき事が在ります。

 恍惚の逆光を武器に掲げて天使が奇襲戦法に出る。
 武器商人の眼を潰しそうな眩い閃光が消え果てた時、天使の姿は消失していた。
「嗚呼、ひとまず役目は果たせたかなァ……」
 奇襲の技巧にかけては恍惚天使の方が一枚上手だったかもしれない。
 だが終盤戦まで敵将を抑制したソレの功績は大きい。

 猛速度で戦場を飛翔して抜けようとする彼女をハッピーが正面から遮断する。
「絶対に逃亡させないからね!!」
 天使の飛行逃走に対しては幽霊も飛行妨害で応対する。
 天使が双剣を抜刀して斬り付ければ幽霊は再構成してまでも阻害する。
 天使が奇襲の逆光を翳すと、今度は無量が鬼殺しの太刀筋で剣戟を挑む。
「嘗て人は貴女を求め、貴女は人を求めた。然し今や人は貴女を忘れ、貴女だけが人を求めている。憐れな、狂って仕舞うのも仕方ない」
 再度の激怒に溺れる事態を警戒してか天使は無言で冷徹に剣を交えてくる。
 命中回避に長けた者同士の接戦になるが、ネームドの技倆に無量が僅かに押されていた。
「盾役が他にもいることは忘れるなよ?」
 同じく満身創痍であるが、決戦に間に合った黒羽が無量を庇って重厚な刃を受け止める。

 速攻で治療して黒羽を見送ったシラスが後方では武器商人を治癒していた。
「アンタも無理するなよ? でも嫌いじゃないぜ、その戦法」
「シラスの旦那、悪いなァ。さて、我(アタシ)も戻るとするかァ……」
 一方、これまた満身創痍の司祭も妖精遣いに支えられて戦場後方に追いついた。
「なあ、アンタら? 天使を殴り殺しに行こうぜ?」
 シラスの勇敢な提案に対して世界が素敵な名案を追加する。
「あのさ、俺が……」

 決死の恍惚天使は起死回生の大逆転を狙うべく神気(切り札)を戦場一帯に誘発させた。
 まるで選民思想と不安感情の双方に引き裂かれそうな危うい瘴気が場を充たす。
 戦術的に言い換えれば、今、この場にいる全員にクリティカルが特高確率で付与された。
 恍惚天使が双剣の踊りを舞い、斬撃の嵐を繰り出して、特高威力で斬り殺しに掛かる――

――永眠なさい、怨敵共よ。

 恍惚天使が前衛三人を無惨にも斬り捨てた時、確実に始末したという手応えがあった。
 冷笑する天使が「斬殺した残骸共」に振り返った時、ありえぬ情景に困惑した。

 満身創痍という熟語すらもはや生易しい姿の黒羽が、武器商人が、ハッピーが爆笑する。
 恍惚天使が「斬殺した」屈強な前衛三人は咄嗟に囮役を買って出て仲間達を庇ったのだ。

 天使が動揺して双剣を落す様をリーゼロッテは瞬く間もなく見逃さなかった。
 彼女は遺跡遠方に潜伏して千載一遇の刹那を狙い定めていたのだ。
「これ以上狂ってしまう前に、眠ると良いのよっ」
 遥か遠方から召喚された特高威力を誇る熾烈な炎帝の剛腕が天使を叩き潰す。
「今だ、行け、仲間達!」
 妖精遣いの祝詞をシラスとヴァレーリヤに授けた世界が後方から全力で叫ぶ。
「終わりだな! まあ、アンタとなら丸一日でも殴り合いたかったけど!」
 神気と祝詞で限界威力を超えたシラスの暗い刃が天使を深紅に染める。
「救済し給え、紅の十字架よ!」
 ヴァレーリヤが同効果を秘める戦棍に聖火を灯して神罰の一撃を与える。
 最期の一太刀は、解脱の境地に立った無量が一刀両断の如く無常に断ち切った。
「敵ながら天晴れでした。私が貴女の伝承を後世に伝えましょう」

 淡麗な光と化して消滅していくルナリアの幻影を黒羽が急いで追う。
 彼は天使の哀れな事情に憐憫の情すら抱いていたのであろう。
 僅かでも苦痛を肩代わり出来ないかとギフト(苦難上等)を通じて祈祷を捧げた。

――忘れねぇ……。俺達が忘れねぇよ。どんなことがあっても俺達が覚えてる……。だから、ゆっくり休みな。

 了

成否

成功

MVP

武器商人(p3p001107)
闇之雲

状態異常

銀城 黒羽(p3p000505) [重傷]
武器商人(p3p001107) [重傷]
闇之雲
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837) [重傷]
祈りの先
ハッピー・クラッカー(p3p006706) [重傷]
爆音クイックシルバー
彼岸会 無量(p3p007169) [重傷]

あとがき

シナリオ参加ありがとうございました。
実は初HARDでした。
皆さんと共に戦えて光栄です。

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