シナリオ詳細
<グラオ・クローネ2018>クローズドライブラリ
オープニング
●幻想大図書館
黴の香りが鼻先を擽った。前王――いや、もっと遠い話であるのかもしれない。
ある知識の権化たる王が己が叡智の結晶として作り上げた幻想図書館の前には手書きの看板が置かれていた。チョークで描かれているのはどこか愛嬌のあるドラゴンだ。幻想図書館の司書が竜種をイメージして描いたものだろうことが推測される。
ステンドグラスを設置した屋内に、硝子張りのスペースが存在している。冬であれど美しい花々の咲き誇る中庭には、花を愛でるためにと王妃が設置したという温室が存在していた。現王はあまり足を運ぶことがない場所ではあるがシャルロッテ・ド・ロレーヌは職務の合間を縫って訪れるほどにこの場所を気に入っていた。
きらりと光の雫が落ちるステンドグラス越しの空も美しければ、中庭から見上げる空中庭園とて普段より見上げる空よりより幻想的に思える。――嗚呼、この国が『幻想』という名で会ったことを思い返させるような静謐さだ。
アンティーク調の家具が並んだ館内をゆるりと歩みながら、一時心を落ち着けるために立ち寄る図書館内のカフェスペースへと足を運んだシャルロッテはぱちりと瞬いた。
そうだ――グラオ・クローネの季節なのだ。甘やかなチョコレイト。そのことを思えば心も華やぐというもの。肺の奥まで満たす贈物の香りにシャルロッテは大きな瞳を細めて柔らかに笑みをこぼした。
「よろしければ、図書館へと足を運んでは見ませんか?」
ゆるやかな時間を過ごすのも悪くはないでしょうとシャルロッテはギルド『ローレット』にて告げた。頬を擽った金の髪先を払い、少女のように首を傾げた女騎士はどこか楽しげである。
「混沌世界のグラオ・クローネ(バレンタイン)――旅人の方にはどのように聞こえているのかは分かりませんが、私は存外このイベントが好ましいのですよ。
いいえ、『花の騎士』とて女だから、という訳ではございません。感謝の気持ちを伝えるというのはどれ程尊いことか」
真面目な性質であるシャルロッテは常よりも饒舌に告げる。そんな彼女の誘いだからこそ図書館というのは妙にマッチしているようにも感じられた。
グラオ・クローネに合わせてチョコレイトメニューを展開しているという。折角の機会だ。チョコレイトを楽しみながら、静謐溢るる叡智の世界に浸ってみるのは如何だろうか――?
- <グラオ・クローネ2018>クローズドライブラリ完了
- GM名日下部あやめ
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2018年03月04日 20時45分
- 参加人数30/30人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 30 人
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参加者一覧(30人)
リプレイ
●
柔らかな陽光が降り注ぎ、大窓を照らしている。アンティーク調の家具が並んだそこは僅かに埃の香をさせていた。
背が高い本棚がずらりと並び、グラオクローネの喧騒からは遠く離れたその場所に冬の陽は柔らかに降り注いでいた。
冬の寒さとは僅かに離れた硝子の天空の下、咲き誇る花々に指先触れれば恋の日とも称される『ヴァレンタイン』を楽しむのに打ってつけだろう。どこかで誰かがそう呼んでいた――ヴァレンタインと。それは旅人たちの耳にはどう聞こえているのかは分からない。混沌世界に住まう者たちならば誰もが『グラオクローネ』とその日を呼んだ事だろう。
キセルを片手に灰霞を吐き出して桜火は息をつく。花にも灰を被らせぬようにと細心の注意を払った彼は温室に咲き誇る花にぱちりと瞬く。
「俺も、長く生きちゃいるが見た事ねぇ花がここまであるたぁな」
並ぶ花々は何時か、誰かが愛した景色を彷彿とさせるのだろうか。くるりと振り仰いだ桜火はシャルロッテへと「お前さんの好きな花を教えてくれるかい」と声かけた。
「私でよろしければ」
花の騎士の柔らかな一声に「一つで言い、教えてくれるかいな」と彼は王宮勤めの騎士を手招いた。
グラオ・クローネの雰囲気にのまれそうになりながらも黒羽は小さく笑う。この空気は嫌いじゃないと小さく欠伸を噛み殺した。
ぼんやりと眺めた空は何処までも鮮やかで――何も気にすることなくこの甘い空間に浸って居よう。
楽しそうに笑う人々が、嬉しそうに微笑む人々が、何よりも素敵に見えるから。
並ぶ書架はチョコレイト。ステンドグラスは飴細工。庭園には菓子を彩る花々が。グラオ・クローネの甘やかな香りで図書館もチョコレイトの様だと心を躍らせて。
灰色の王冠について書かれた文献を探したいとゆるりと歩いたシーヴァに手招かれたシャルロッテは「お探ししましょう」と柔らかに微笑んだ。
「図書館を建てた故君は、知識を充たすことが出来たのかしら? 飽くなき欲求に従う姿は好ましいの」
最初の少女のようにあるが儘を受け入れるのも素晴らしく尊い――ビター、スイート、ミルク、ホワイト、世界はどんな味だろうか。
「ねえ、シャルロッテ嬢? よければ甘いものは如何かしら?」
余り訪れない場所だからと雪はぱちりと瞬いた。
「見て回るか……本揃えとか、中庭とか。この時期、ここまで咲き誇るのも珍しいと思う」
摩訶不思議というのだろうかと口にして、雪はゆっくりと静かな図書館の中を歩み始めた。
「知識に貪欲な王様、ね。この世界なら混沌肯定で作用しない理の知識とかも、多く集まったことでしょうね……」
ロスヴァイセは本を手にしながらくるりと振り返る。混沌世界が是とせぬ知識も多く集まっているであろう書物は何よりも心を充たす。
赤い瞳がゆらりと動き、楽し気に細められた。たくさんの書物に溺れる様に知識を蓄える彼女はゆっくりと振り仰ぐ。
「ところで、シャルロッテはどんな本を読んだりするの?」
「私は、様々な物を読みますよ。御伽噺も、実用書も……すべて、好ましいですから」
花の騎士は笑みを綻ばせる。何処か照れた様に笑った彼女にロスヴァイセはつられて笑みを見せた。
図書館の中を散策し、ブローディアは契約者たるサラが丁寧にページをめくっているそれを見下ろして想いを巡らせる。
は、と顔を上げたサラは職員の視線を受けて慌て、首を振った。ナイフで本を傷つけるのはご法度だと、そうい注意されたその言葉に慌てた様に頬に熱が上がっていく。
ブローディアはそうじゃないとその場をとりなす様に職員へと向き直った。
「いや、誤解を与えてしまって申し訳ない。こんな姿をしているが私も旅人でな。
サラ……この娘にこうして見せて貰わないと自分で本を読むことも出来ないのだ。どうか容赦して貰えると助かる」
「旅人の方だったんのですね――こちらこそ勘違いをして。どうぞ、ご容赦を」
柔らかに告げられた言葉に胸を撫でおろす様にサラはゆっくりと頷いて見せた。
ゆっくりと本を捲るララをちらりと見やってリオンは口元に笑みを讃える。
「今日はバレンタインか。恋人との甘い日。素敵じゃない?」
その言葉にちら、と顔を上げたララは僅かに頬を染めた。何時も通りに見える――それどころかグラオ・クローネの話題を口にする。
今なら渡せるのだろうか。そ、と口元に緊張の色を滲ませながらララはリオンの世界の言葉を口にした。
「は、ハッピー……ば、バレンタイン」
そう言ってチョコを渡すのだ。日頃の感謝と愛をこめて――そうしたら、彼は小さく笑うのだ。
ありがとう、これからもよろしくね、と優しく抱きしめて。
ガラス張りの中庭をゆっくりと歩きながらポテトはリゲルの手を引いた。呆然とした彼に小さく浮かんだ笑みは只、優しい。
「まだ外は寒いがここはあったかいな」
天義が如何に無機質な場所だったのかと呆然としていたリゲルは「雪が解けて春がやってきたら色々な場所に足を運べそうだな」と柔らかに微笑んだ。
「サンドイッチにおにぎり、空揚げ、卵焼き、野菜は何が良いかな……。そうだな……。春になったら、一緒にお弁当津kつて遊びにいこう」
ぎゅ、と手を握り締めるポテトにリゲルは大きく頷いた。
「綺麗だな……綺麗な花に囲まれて、好きな人と一緒に綺麗な物を見る。すごく贅沢だな」
はにかんで、頬に一つ口づけて――ああ、リゲルはそれだけで満足なのだ。「ポテトの笑顔が、何よりもキレイだよ」とそっと、頬にひとつ口づけを。
図書館に足を運ぶのは何時振りだろうか。緩やかに歩みながら縁は静かに息をつく。
書物は独特の香りをさせる。それは嫌いではないが――緩く襲い来る眠気には中々に打ち勝てないもので。
「ま、折角だ。うちの店の新メニューの参考でも探すとするかね。っと、この本は……ほー、海の中の写真集か」
蒼の中、水面へと差し込む光はステンドグラス越しに見る景色にも似ている。膚を撫でる水の感触を思い返し、彼は息をつく。
ページを捲るたびに郷愁が胸を打ち、囚われる。グラオクローネにこんな本を見つけてしまうとはと縁は一人で自嘲の笑みを浮かべた。
――あの日から、ずっと、海が怖い。
未だに奥底、恨んでいるだろうか。波の様な耳鳴りを掻き消すように本を閉じて。
●
読書のお共に美味しい飲み物と食べ物。とても素敵だね、とレンジーは楽し気に歩み出す。
「まさにわたしの為にある施設と言っても過言ではないよ!」
読みかけのホント、積んであって本を纏めて手に死、隅のスペースでレンジーは至福の時を過ごす。ぺらり、とページをめくりつつカフェモカを口に含めば心は楽し気に踊った。
クリームをたっぷり乗せたパンケーキの上で僅かに白の軌跡が揺れ動く。暖かさはクリームを僅かに溶かし始めていたのだろう。
「はぁ、幸せ!」
こんな場所があったなんて、と口元に含んだ笑みの色は何処までも優しい。
美しく荘厳であり、蔵書数も素晴らしいとヴェッラは深く息を飲む。ソファに沈み込む様に座った彼女はお勧めの物をと口元に笑みをたたえた。
ページをめくる指先は優しく、静かなものだ。流れる空気の穏やかさに身を委ね乍らフォンダンショコラの香に鼻先を擽られたことに顔を上げた。
「そうか……本日はグラオ・クローネと呼ばれる風習の陽であったか……」
感じる空気の甘やかさに、素敵な日だったのだと小さく笑って。
次に読む本はその類にしようかと顔を上げる。風習の学びは交流をする面で良い話題作りになるだろうとヴェッラはチョコレイトのかおりに只、微笑んで。
「……図書館の中に……カフェか……すごくおしゃれだな……いいね」
ぱちりと瞬いたグレイルは紅茶を飲みながらソファでゆったりとした時間を過ごすのはリラックスできるなと深く息を吐いた。
メニュー表に並んだ文字はどれも心が躍るもので。柔らかな座り心地の椅子に深く身を沈めたグレイルは折角だから、と本を閉じた。
机の上に積んだそれに視線を送り、折角だから――と注文したそれはグレイルに甘やかな香りを届けた。
カフェモカ、の文字を見てアニーはこれは何かしらと小さく首を傾げた。図書館で借りた本の持ち込みは許可されている。
本を胸に抱えて、初めて口にしたカフェモカの味わいにアニーはぱちりと瞬いた。
(これは……大人の味というのでしょうか……?)
大人の気分を味わいながら本を読むって素敵です、とアニーは笑みを溢す。天窓から差し込む光の暖かさに柔らかなソファーは豪奢な寝台にでも寝ているかのような気持ちを味わえた。
「こんな環境が揃ってしまったら……ふぁ……欠伸が……」
ぱちりと幾度も瞬いて。すぅ、とアニーは深く眠りの中に。穏やかな時間は彼女を柔らかな毛布のように包み込んで。
「図書館は良い。静かな空間の中で、寛げるからな」
汰磨羈は歴史に関する書物をチョイスし、カフェモカとフォンダンショコラを口にしていた。おすすめという看板を下げているだけあってその味は甘美なものだ。
次は、と汰磨羈がセレクトしたのはシュークリーム。大好物のそれを口にできるというのは何よりもうれしい事だ。
チョコレイトのかかったものやカスタードだけではない、様々な甘味が其処には並んでいる。
「よっし、そろそろ昼寝に入るとするか」
腹が満たされたならば次はこの場所での昼寝を楽しもう。よく陽があたる場所を選んで、早速の時間を楽しもう。
日向の所でふあ、とあくびを漏らし汰磨羈はゆっくりとその身を丸めた。
穏やかな時間を穏やかに過ごしたいとルーニカは憧れていた時間にその身を鎮める様にソファでうんんと一つ伸びをする。
「はは。みんな笑顔かなあ。笑顔だといいなあ。
そうじゃなかったら? んー……寝てたら顔が見えないな。頭で想像しよう。皆が笑っている所を。幸福幸福」
ゆっくり休んだらこれからに向けて頑張ろう、とルーニカは大きく伸びをした。その持ち前の明るさが――内面の特徴がポジティブで埋め尽くされるほどのものだ――彼女の眠りを幸せなものにしてくれるだろう。
注文したのはブラックコーヒーとパンケーキ。妙に気に入ったのだとMorguxはそれを手にし、楽し気に笑みを溢す。
メインは本だ。色々と探していると面白いものがあったのだとソファに身を沈め乍らMorguxは気に入った本をぺらりと捲った。
空を飛ぶ鮫、喋る猫、変な生物はたくさんいるが、載っているものはそれよりもさらに珍しい。『混沌の絶滅生物・絶滅危惧生物図鑑』はMorguxの心にフィットする。
「……面白ぇな。これは読み切るまでに時間が結構かかりそうだ」
変色が過ぎて絶滅した巨大無視――その食事対象が害悪存在の為に、一部では守神とされていた。
巨大ダンジョンの最奥に住まう黄金龍は通常の方法では死なないらしい。子孫を残すよりも強敵に挑む事を優先した結果、滅んでいった魔獣の話。
嗚呼、どれも心を躍らせるものだから!
「ん……図書館は本がいっぱいだと思ってた、けど」
こうしてゆっくりと過ごせる場所があるのだとチックは顔を上げる。席についてメニューを決めようと迷うチックは悩まし気に手書きのメニュー表を見下ろした。
パンケーキとおすすめのカフェモカ。ふわふわと温かいもの。二つ合わせれば心もほかほかになるはずだとチックはその陽色の瞳を細める。
「いつか。……友達、とも。一緒に、食べれたら……いいな」
昼寝のできるスペースでゆっくり過ごそうとチックはごろりと横になる。また着たときに海とサーカスと、歌に関する本を見つけられたらと穏やかに差し込む光を受け止めて。
知識の宝庫である図書館から本を数冊。カフェに持ち込んだリュグナーはソフィラの手を引いた。
盲目の少女は「おすすめのメニューは何かしら?」と首を傾ぐ。盲目の彼女に丁寧に教えたリュグナーは「ほう、フォンダンショコラか。知識を蓄える前に糖分を摂取するのも良いやもしれんな」と小さく笑った。
「おすすめのカフェモカを頂きたいわ!」
楽し気に笑った彼女に読み聞かせるリュグナーの声は心地よい。新たな知識を楽しむ様に頬を緩ませたソフィラは「異世界の冒険譚?」と首を傾ぐ。どんなものなのだろうか、と彼女の好奇心は大いに刺激されて。
「この本は、異種族と共に大いなる脅威に立ち向かった異世界の偉人の冒険譚だと聞いた。ふむ……モモ、タロウ。昔々――」
御伽噺に目を伏せって。楽し気に笑ったソフィラはリュグナーが居るであろう方向にくるりと向き直る。
「ふふ、今日はご一緒してくれてありがとう。私からのプレゼント……と、言うよりはお礼ね。良かったら受け取って?」
「人の髪に咲いた花とは、興味深い。申し分ない報酬だ、クハハハハ!」
今日はありがとう、とスティアはフランチェスカへと視線を送る。その視線を受けて、フランチェスカは小さくぱちりと瞬いた。
「私の方こそお誘いありがとうございます。……と、こういう時は言うのでしょうか?」
こくり、と頷くスティアにフランチェスカはへらりと笑った。何を食べる、と問い掛けるスティアにフランチェスカは迷うように指先を揺れ動かした。
「私はパンケーキとフォンダンショコラにしようかな。あとはお勧めのお茶とか……」
「私はカフェモカとチョコレートパフェを。あ、後はクロックムッシュを……」
未だ分からないけれどとグラオ・クローネの様子に戸惑うフランチェスカにスティアは小さく微笑んだ。
視線を受け止めて、人が食べている物は何だか美味しそうに見えるとフランチェスカがじゅるりと唾を飲み込んだ。
「フランチェスカさん、よければシェアしない? 私は色々なものをちょっとずつ食べれたら嬉しいタイプだから不都合なかったら! って感じだけど」
「人と何かを共有するのは、悪い気はしません」
どうぞ、と差し出されたチョコレートパフェのスプーン。何だか恥ずかしいけれどと小さく笑みを溢してスティアは「はい、あーんして」と首を傾げた。
●
グラオ・クローネ。元板世界ではバレンタインと呼べばいいのだろうかとクロウディアはぱちりと瞬いた。
紛争地帯で明日をも知れぬ身であった彼女にとってバレンタインという華やかなイベントはあまり縁がないものだったと小さく呟く。
(それでも……奇異の縁にてこちらの世界に招かれ、今こうして安寧の一時を過ごせているのであれば……)
その催しに興じてみるのだってありかもしれない――日当たりのよい椅子に腰かけて世界の歴史を学ぶ視線はゆっくりと動く。
傍らのカフェモカのかおりは柔らかにその鼻孔を充たしていった。
「……実に、悪くないのであります」
何の因果化、いつしか自分がこの世界に招かれた日が分かるはず――きっと、いつか。いつかだ。だから、今は何も知らず穏やかに時を過ごして。
「……ふぅ。静かなのは良いですね」
肩を竦めたパティはグラオ・クローネの喧騒から逃げる様に図書館へと訪れていた。
グラオ・クローネの喧騒は悪いものではないが、裏家業を生業とするパティにとって明るい喧騒は少し居心地が悪く感ぜられた。
珈琲が自慢だというカフェのメニューの中でも彼女が選んだのは紅茶。砂糖は一匙。添えるのはシンプルなドライフルーツのスコーン。
数冊の本を重ね合わせ、パティは深く椅子に腰かけた。
読むべき本は少女には余りに難しく感じられるものだ。幻想に限らぬ多数の判例たち。彼女の職務に係る其れを指先なぞり無知ではいけないのだと小さく呟いた。
「これから他国に訪れる事も増えるでしょうし……勉強させて頂きましょう」
甘党には天国のような季節だとノースポールは瞳を輝かせる。傍らのルチアーノは折角だから共に楽しもうと彼女を手招いた。
「フォンダンショコラ……ルークは食べた事はある?」
首を傾げたノースポールにルチアーノは大きく頷いた。自身の居た世界でも人気のお菓子だったと語ったルチアーノに『どんなものだろう』とノースポールの瞳はきらりと輝く。
先ずは、見た目は固そうに見える……。そして、甘やかな香りを感じさせるそれは――フォークを差し込めば一気に姿を変えた。
「わっ」
蕩けるチョコレートが溢れ出る。慌ててぱくりと口に含んだノースポールの瞳が輝いたことにルチアーノは楽し気に笑みを漏らした。
焼き立てを提供されているからか口の中に感じるチョコレイトは熱い。照れ笑いを重ねて、水を差し出すノースポールと視線を交わらせる。
「ポーって喜びを何時も全身で表すから面白いよ。そんな姿を見てられるなら、グラオ・クローネも悪くないね」
だから、ここは奢りだよ、と微笑んだルチアーノにノースポールは喜びをその表情に浮かべる。さて、次は何を食べようか?
チョコレートは食べられないけれど、沢山の人々の姿をその目に焼き付けたい、と。
アニエルは周囲をきょろりと見回した。文化風俗に関する知識というものはその文化に密接に関連しているから。
後は、この渾沌で活動するにあたり知識があるに越したことはない――此処で知識を入力することはさして重要ではないのかもしれないが、折角のグラオ・クローネだ。
こういう機会だと思えばそれでいい。
(―――……)
落ち着ける場所はアニエルにとっても酷く好ましかった。嗚呼、この場所にまた来たいとそう胸に抱きながら。
飲食しながら本を読むのは行儀が悪いだろうか、とマルクは小さく笑みを溢した。けれど、こんな日位はのんびりしたっていいだろう。
それでも汚れた手で本には触らぬように細心の注意をを払いながら頁をめくる。
カフェモカにクロックムッシュ。腹を満たせば次は世界の歴史や伝承に関する本で知識を学習しようとマルクは心躍らせる。
カフェの中でゆったりと腰掛け、珈琲を飲んでいるシャルロッテの姿に気付きマルクはゆっくりと笑みを浮かべた。
「今日は素敵な機会をありがとう。ゆっくり過ごせているよ。
でも、ずっと一人というのも何なので、良かったらお茶をご一緒させていただけませんか?」
「私でよければ喜んで」
へらりとわらったシャルロッテにマルクは紅茶を淹れるのには自信があるだ、と胸張って微笑みかけた。
コーヒーとフォンダンショコラ。その組み合わせは絶妙なものだなと文は微笑む。素敵な場所を紹介してくれたシャルロッテには感謝しなくては、と心の中で礼を一つ。早速見上げたのは高い天窓から差し込む冬の陽光。
ずらりと並んだ蔵書に埃のかおりをさせた館内はアンティーク調であることを感じさせた。グラオ・クローネの日である事が手伝ってか、感謝し合っている人々や恋人たちを見ると胸に温かな思いが過る。
今日は優しい一日だ――グラオ・クローネの穏やかな時間はゆっくりと流れていく。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
ご参加ありがとうございました。
皆さまのグラオ・クローネが素敵なものでありますように。
GMコメント
菖蒲(あやめ)と申します。どうぞ、よろしくお願いいたします。
グラオ・クローネを少し変わったカフェで過ごしてみませんか?
★幻想図書館『クローズドライブラリ』
王都の端に存在する図書館です。その名は通称。昔、知識に貪欲であったという王が建てたという逸話の残された由緒正しき建築物です。
図書館の名の通り、蔵書は幅広く、普段は市民の憩いの場として使用されています。
幻想図書館の中にはカフェが存在し、今回はグラオ・クローネに合わせてちょっとしたバレンタインメニューが展開されています。
★できること
・【1】【2】のいずれかからお選びください。
・同行者様に関しましては 【グループタグ】【同行者名前※愛称可(id)】でご指定ください。ご指定がない場合はお一人参加と判断する場合がございます。迷子防止。
【1】図書館・図書館中庭を散策
図書館の中を散策、または、図書館の中庭・温室を散策します。
図書館の司書たちの育てた花々は冬であれど、ファンタジー的なあれそれで美しく咲き誇っています。
ちょっとしたデートスポットと幻想庶民の間ではささやかれております。
【2】図書館カフェ
本を持ち込むことも可能な図書館カフェです。ソファ席でゆったりと。
一部、靴を脱いで寛ぐことができるスペースもございます。クッションなどが置いてあるので時々お昼寝をしてる方も……?
この時期のおすすめメニューはカフェモカ。フォンダンショコラ。
カフェの定番メニューはクロックムッシュ、パンケーキ。アサイーボウルです。
軽食もございます。こんなメニューはある?とリクエスト擦ることも可能です。
★NPC
既存のステータスシートのあるNPC及びシャルロッテに関しましてはお声掛けくださいませ。
ただし、『ざんげちゃんは空中庭園からおりてきません』こと、予めご了承ください。
その他、NPCはお声掛けいただいてもお顔出しできない場合がございます。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
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