PandoraPartyProject

シナリオ詳細

燃え盛りし朱
燃え盛りし朱

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●Danger!!
「誰か! 誰か天義へ向かえる方はいませんか!」
 まろぶように『新米情報屋』ユリーカ・ユリカがローレットへ飛び込んでくる。
 天義と聞けば、真っ先に思い浮かぶのは月光人形事件。事態が動いたのかとイレギュラーズの中に緊張が走る。
 けれども、ユリーカの叫びは別の緊張を促すものだった。
「月光人形とは別件で──魔種が現れたのです!」

「国境の警備をしていた騎士の方から早馬で届いたのです。魔種と思しき女の人が入ってきたって」
 羊皮紙の束をめくりながら、ユリーカが早口に告げる。
 騎士たちの制止を無視し、近くの町を目指して向かう女。止めようとした者は丸焼きにされたそうだ。
「止めようとした人の中にはおかしくなってしまった人……狂気に呑まれた人もちらほらいるそうなのです。その人たちを抑えているうちに、女の人は行ってしまったそうで」
 魔種の侵入を許してしまったことは大変に遺憾なことだ。そのままにしておくなど以ての外、一刻も早く魔種を殲滅せねばならない。
「今、騎士団の方が女の人の行方を追っています。居場所が分かったら住民の方を避難させながら、こちらにも連絡をくれるそうなのです。なのでボクは今のうちに──あっ、」
 言葉とともにユリーカの手が止まる。イレギュラーズはその手元を覗き込んだ。
 羊皮紙に書かれているのは人物の情報。どうやら、これまで見つかった犯罪者や魔種の情報がまとめてあるらしい。ユリーカが探していたのはその中の1枚。
「魔種の女の人、騎士の方から聞いた情報通りなら……きっと、この人なのです」
 テーブルに出された羊皮紙、そこに書かれた名は──砕宮 鳴。ブルーブラッドの女性であり、燃えた村や町の周囲で姿が見られていた魔種だ。
「以前、依頼で救助活動をお願いした際に遭遇した方もいるかと思います。あの時は魔種がどこへ向かうのか、はっきりとしませんでした」
 その心の内には何もなく。自由気ままにふらふらと、気分によって行き先を変えていたのだろう。それはきっとこれまでも、これからも。
「取り逃したらきっと面倒なことになるのです。絶対、絶対にここで倒さないといけない──」
 のです、というユリーカの言葉に被ってくる声があった。振り返ればローレットの入り口に立つ1人の騎士──その姿は天義の騎士のそれ。
「お待ちしてました! 魔種の場所はわかりましたか?」
「ああ。だが事態は一刻を争う」
 苦々しげに呟いた騎士はユリーカと、イレギュラーズたちへ告げた。
 既に赤は放たれた、と。


●Flame
 ぱち、ぱち、ぱち。

 火の粉の弾ける音に、女は恍惚とした表情を浮かべていた。
 嗚呼、なんて綺麗なんでしょう。でもまだまだ足りない。もっとこの美しい景色を、この熱さを、見せてあげないと。
 どこからか聞こえる悲鳴も、泣き声も、それが小さくなっていく様も心地よい。
 不意に、女は『妹』のことを思い出した。自らの名を継いだ子ども。過去を忘れてしまった、迷い子のような少女。
「まだ、思い出せないかしら?」
 だって、こんなにも綺麗な赤があるというのに──。

GMコメント

●Danger!
 当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
 また、純種のPCは原罪の呼び声を受ける可能性があります。
 予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。

●成功条件
 魔種『砕宮 鳴』の殺害

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、より詳細を突き詰めれば不明点もあります。

●砕宮 鳴
 狐のブルーブラッド。ボロボロの着物をまとった女性です。焔宮 鳴の姉です。
 炎の熱さ、美しさ、そして悲鳴などを好み、村や町を燃やしていました。
 その炎はひと度つけば中々消えず、身を苛むことでしょう。また、火の狐を使役します(下記スキル)。
 命中と特殊抵抗高め。しかし他のステータスも低いとは言えません。十分に気をつけてください。

火の狐:神遠範:遠方に火の狐を複数召喚し、範囲内の対象へ攻撃を浴びせる。【業炎】

●周辺環境
 燃える町の中での対峙となります。魔種がいるのは大きな広場であり、周りに障害物及び火の手が回りそうなものはありません。同時に隠れられる場所もないものとなります。
 前述したように広場で何かが起こる可能性はありません。しかし退路となる道はその限りではありません。

●友軍
・天義騎士団
 少しずつ狂気に呑まれながらも、住民の対処をしています。
 狂気に呑まれた者は騎士団内で取り押さえ、大きな被害は出ていません。彼らに魔種以外のことは任せてしまって構わないでしょう。
 ただし時間経過でできることが減っていきます。住民対処が間に合わなくなってくる、狂気に呑まれた者を取り押さえきれないといった事態が発生するかもしれません。

●ご挨拶
 愁と申します。こちらは焔宮 鳴さんの関係者依頼です。
 天義もあっちこっちで大変ですね。いえ、私もまさかここまでゴタゴタしてるとは思いもしませんでした。本当ですよ。
 殺さなければ失敗です。魔種に向ける想いも、姉に向ける想いも、吐き出すなら今ここで。
 それではご縁がございましたら、どうぞよろしくお願い致します。

  • 燃え盛りし朱Lv:12以上完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2019年07月07日 23時40分
  • 参加人数 10/10人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

焔宮 鳴(p3p000246)
炎嵐に舞う妖狐
アラン・アークライト(p3p000365)
勇者の使命
ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)
お道化て咲いた薔薇人形
アルテミア・フィルティス(p3p001981)
Righteous Blade
黎明院・ゼフィラ(p3p002101)
夜明け前の風
十六女 綾女(p3p003203)
毎夜の蝶
レスト・リゾート(p3p003959)
夢色観光旅行
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
緋道 佐那(p3p005064)
緋道を歩む者
チェルシー・ミストルフィン(p3p007243)
魅惑の魔剣

リプレイ



 ──彼女の決意が、一体どんな結果をもたらすのかしら?

 『レストおばさん』レスト・リゾート(p3p003959)はそんな思いを胸に、リボンをつけた鳥を飛ばす。未だ町の中にいるかもしれない住民が見つけられるように。
 避難を促す騎士たちの元へ寄った『毎夜の蝶』十六女 綾女(p3p003203)は、可能な限り騎士の面々を鼓舞して回った。
「危険だとは思うけども、気を付けて」
 力強く頷く彼らはきっと、どんなことがあっても『天義の騎士』であるのだろう。どうか狂気にも負けることがないように、と思いながらも綾女の足は、イレギュラーズの足は今尚燃える町へ向く。
 大元を叩かねば、この被害は収まらないのだから。
 両側を火に挟まれながら駆ける『勇者の使命』アラン・アークライト(p3p000365)は、隣を走る『緋焔纏う幼狐』焔宮 鳴(p3p000246)の横顔をちらりと見た。けれど、彼女が今何を思うのか伺い知ることはできないようで。
(……俺の相棒は炎に包まれちまった)
 それはアラン自身の無力さが招いたのだと、思っている。だからこそ再び繰り返すようなことはしない──させない。炎と悲鳴に世界が包まれる悲劇だってもう起こさせはしない。
 不意に炎の壁がなくなり、火に包まれた広場へとイレギュラーズたちは躍り出る。

 ──ひらけたそこに、女はいた。

 女から発せられる並みならぬ殺気と圧が肌を粟立たせる。けれどそれに『緋道を歩む者』緋道 佐那(p3p005064)は小さく笑みを浮かべた。
(魔種との死合いはこうだから、たまらないわね)
 おまけに炎を扱う魔種だ。緋道の名を冠する者として闘争心が湧かない筈がない。ただひとつ述べるのならば──それだけを純粋に考えられないのは、良いとすべきか、否か。
 佐那が視線を向けた先、立ち止まった鳴は魔種の姿を見て顔を歪めた。
「姉上……っ」
 鳴へ魔種が口を開く前に、その眼前へと銀の軌跡が迫る。『青き戦士』アルテミア・フィルティス(p3p001981)の接近から間髪入れず飛んでくるのは炎の斬撃。緋燕を打ちこんだ『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)は魔種をひたと見据えた。
 魔種の女──砕宮 鳴。鉄帝で全焼した町にいた、焔とは絶対に相いれない考えを持つ者。
(そして……鳴ちゃんのお姉さん、なんだよね)
 ここで絶対に止めねばならない相手。しかし魔種が反転から戻った事例がない以上、止める手立ては限られている。それはオーダーに沿って──魔種を仕留めること。
 叶うならば、少しでも後悔の残らない結末を。
 対して、仕事以上の意味を持たぬと銃口を向ける『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)。その射撃が魔種の足元を乱し、止めにかかる。
(彼女には因縁などない身。……とは言え、仲間の都合を手伝っては行けないなどということもあるまい。全力でやるさ)
 魔種に因縁のある人物──鳴は、召喚した鳥を空へと舞わせて。その頭上で槍を魔力によって形作り始める。
「私は……鳴、は……痛いし、苦しいの……でも、」
 ローレットの鳴は、今ここにいる自身しかいない。その鳴は、目の前にいる姉ではない。
「そう自分が思えるなら……鳴はまだ、戦える」
 高速で射出された槍が魔種を襲う。破けた袖をふわりと翻して魔種はつと目を細めた。その先の言葉を聞くように。それはいつかの、昔に重なるようで。
 けれど、鳴はもう泣いているだけの子どもではない。昔の鳴ではない。
「最初は嫌だったとしても、自分自身の意思で「鳴」であることを、決めたんだから……!」
 その言葉にレストはにっこり笑って、パラソル・ステッキをくるりとひと回転。
「焔宮ちゃんが選択したのだもの。その道を歩めるよう、おばさん応援させて貰うわね~」
 くるりくるりと回るそれは、魔種の傍──焔と反対側へ。通せんぼをするような3人の立ち位置に魔種が眉をひそめた。
 不意にその足元が盛り上がる。石畳の下より膨れ上がった土塊が拳を握り、魔種に向かって躊躇いなく振り下ろされた。
 それを操る『お道化て咲いた薔薇人形』ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)の瞳は──人形のそれが、感情を映すことはないかもしれない。けれど人のものであったとしても、操った土塊と同様に躊躇いの色は存在しなかっただろう。
 魔種を止めるという決意。誰かがせねばならぬそれを、ヴァイスはもう固めている。
(鳴さんがそれをできたら、きっと最善なのでしょうけれど……きっと色々思う事があるのでしょうし)
 彼女ができぬのなら私が。離れたところに立つ鳴へ視線を送ったヴァイスの元に、音もなく火の狐が降り立つ。
「……っ!」
 纏わりつく業火。真白な姿が火に包まれる。火の狐が消えた後もヴァイスの体からはブスブスと煙が燻っていて。
(あの召喚スキルは持続性はないみたいね)
 敵を観察していた『魅惑の魔剣』チェルシー・ミストルフィン(p3p007243)は冷静にそう判断を下す。長く居座るのであれば対処を──そう思っていたが、どうやら必要はなさそうだ。
 チェルシーはアランが駆けだしたのを見て、自らの攻撃範囲へ魔種を収めるためチェルシーもまた石畳を蹴った。



 真っ赤な炎が魔種を取り巻き、アランへと伸びていく。肌が炙られる感触に眉をひそめるも、彼の体は『火炎』自体の被害を受け付けない。それは何故なら──。
「お前の狂気の炎なんかより、燃える俺の使命の方が、熱いんだよォォ!!」
 魔種を圧倒蹂躙せんと大剣を振りかぶるアラン。綾女がすかさず彼へ回復を施しながら、仲間たちに取り囲まれた魔種へ視線を向けた。
(彼女の目的が気になるところだけれど……)
 深い考えは持っていないのかもしれない。言うなれば衝動的。自らの望みのために動くだけ。
 レストのパラソル・ステッキを避ければ、間髪入れずに反対側の焔が高めた闘気を魔種へとぶつける。彼女は急所を庇うようにひらりと身を翻し──けれど身を貫く感触には瞬間、目を瞠った。
「焔術『魂喰ミ』……姉上も、似たものを知っているはずなの」
 鳴の手元では呪詛の炎が余韻のように燻っており、やがてふっと消える。全てが同じではないけれど、焔宮家に伝わる呪術であることに変わりはない。
 そんな鳴の背を見て、ヴァイスに続いてアースハンマーを振り下ろすチェルシーの内に疑問が浮かんだ。
(私の家族とも言える人が魔種になったらどんな気持ちで戦うのかしら?)
 近しい人が反転してしまうということは──辛い選択を迫られること。魔種が反転から戻った事例はないけれど、出来る事なら何とかしたいと思う事だろう。その先にある結末が、もしかしたら現状に当たるのかもしれない。
 佐那は火炎を纏わせる一撃を叩きこみながら、やはり戦闘以外へ意識が向いてしまう自らを自覚していて。
(……彼女の道は、彼女が決める事。自分の道である以上、自分のやりたい様に進むべきなのだから)
 どう転んだとしても──それが、彼女の選択であるのならば。
 頭を切り替えなければ、と佐那は小さく息を吸って、吐いて。そして自らよりも近い場所で魔種を押さえる仲間たちと、魔種自身を見遣った。
 幾らかの情報が分かっているとはいえ、それが全てだなどと断じることは出来ない。彼女の動き、仕草、足運び──特異な動作に気付けるように、今を確りと観察して。
「この手が届く限り、1人でも多く命は護る為に、全力で行かせてもらうわ!!」
 アルテミアの剣が青き炎を纏い、鮮やかに舞う。幾筋もの朱を肌へ走らせた魔種は、しかしその笑みを絶やすことはない。アルテミアの口上も時としてのらりくらりと躱される。
 ふと耳へ入った音にヴァイスが振り向き、同時に綾女の声が上がった。視線を走らせれば、広場へと躍り出てきた住民らしき人物が1名。すぐさま動いたのはゼフィラだ。
「こちらは任せてくれ。なに、可能な限り殺さないように気をつけるさ」
 手心を加えて被害が増えてしまう事態は避けたいが、言葉にした通りできるなら殺さず無力化させたい。攻撃の鋭さ、防御の硬さで仲間に1歩譲る形であると自負するゼフィラは、その拳銃を素早く構えて発砲する。
 様々な炎が舞い、狐が舞い。怒号と戦闘音、火の爆ぜる音が辺りを包んでいた。そこに違和感を感じ始めたのは、近くで魔種を見ていた佐那である。
(何……? 魔種の攻撃が、どこか……)
 言い表しがたいそれは、嵐の前の静けさの様な。その言葉を思い浮かべた佐那ははっと瞠目した。
「──気をつけて! 何か出してくるわ!」
 それが何であるかは分からない。けれど言葉を発すると同時──にぃと、魔種が嗤った。
 ドン、と腹に響く音。魔種を中心として火柱が立ち、囲んでいた4名が後方へと弾かれる。一瞬は火に包まれたものの、全員が火に耐性を持つ者であったが故に更なる被害はなさそうだ。
「黎明院! 緋道!」
 そして予期していた自体にアランが声を上げ、同時に佐那と住民対処を終えていたゼフィラが魔種を囲む。火柱を収めた魔種は1つ瞬きをして、楽しそうに微笑を浮かべた。
 綾女と受け身を取ったレストが弾かれた仲間へ回復を施す中、アランが燦然たる救済の光を魔種へと放つ。そこへ魔種へ足止を与えたゼフィラが一瞬、気配を途絶えさせた。
「どこへ──」
「──こちらだ」
 ゼフィラの奇襲攻撃が余裕を削り、そこへ佐那が深く間合いへと踏み込む。だらりと下がった腕から濃い赤が零れ落ちた。そこへ──同じくらいに濃い赤が、魔種の肌を傷つける。新たな赤が流れるのを見ながら、鳴はそっと口を開いた。
「どうして姉上が魔種になってしまったのか、鳴には解らない……でも」
 やらねばならないことがある。私は鳴だから。私は。
「鳴として──力無き民の為に成すべき事を。姉上を……ここで倒すの!」
「──まあ。貴女の為ではないの?」
 鳴の決意に、しかし魔種は至極不思議そうに首を傾げた。彼女の言葉に鳴は怪訝の色を瞳へと乗せる。
「私は『焔宮家の当主』であることをやめたわ。私の為に」
 彼女が望むものは、おそらくその座になかったのだ。だから、心の赴くままに手を伸ばした。
「貴女の為の『鳴』でないのなら──貴女は『鳴』にはなりきれないのではないかしら?」
 鳴はその言葉に瞠目する。
(私は、鳴になりきれていない……?)
 戦いは続いているはずなのに。火の粉がはぜる音がするはずなのに。決して近くから発せられているわけではない声は、やけに鳴の耳へ鮮明に届く。
「貴女が『ローレットの焔宮鳴』でいられなくなってしまう前に、思い出したいとは思わない?」
 ──本当の、名前を。
 吐息のような声が、けれど確かに鳴の耳へ忍び込んだ。回復を受けてすぐさま魔種の目の前へと戻ったアルテミアの瞳が苛烈に煌めく。
 これは鳴に対しての呼び声だ。無き記憶をトリガーに心を揺さぶる声。
「確かにあの子は……鳴ちゃんは過去と”本当の名前”を忘れているのでしょう」
 けれど、それがどうしたというのか。それは酷く些細ではないか。
「あの子が記憶を思い出そうが忘れたままであろうが、私達にとってあの子は『ローレットに所属している焔宮 鳴という名の大切な仲間』であって、それ以上でもそれ以下でもない!!」
「それはあなたたちにとって、でしょう?」
 どんな鳴であっても変わらないというアルテミアの想いに、魔種は冷たい笑みを浮かべた。そしてその視線は彼女の妹へ──鳴へと向けられる。
 周囲の炎がいつかの、夢の中の業火と重なって見えて。その前で、姉が手を伸ばしていた。
「ねえ──思い出したいと思わないかしら?」
 他ならぬ、自分の為に。
 鳴は小さく吐息を零して、目を伏せた。
 痛いのも、苦しいのも。どれも思いは本当だ。いつか。"まだ戦える"という意思の果てにはそんな言葉が待っていて、『ローレットの焔宮鳴』ですらなくなってしまう未来も有り得るだろう。
「鳴は『鳴になりきれていない』かもしれない。──けれどそれは『いつか』であって、『今』ではないのっ!」
 前を、姉を見つめた鳴の瞳は確固たる意志を宿していた。それは魔種の放つクリミナル・オファーをも拒む思いだ。
「鳴は鳴がそうしたいから民を守りたいの、『焔宮家の当主』であることをやめないの! 他ならぬ、私の為に!」
「──そう」
 鳴の言葉に対する返答は、酷く冷めていて。魔種はもう──そこに微笑を浮かべていない。
 魔種を取り巻くイレギュラーズたちは再び衝撃と熱に襲われた。後方へと弾かれる仲間たちを一瞥し、魔種へ視線を向けたヴァイスは小さく言葉を漏らす。
「不便よね、争うしかないって。言葉って、通じ合うためにあると思ってたのに」
 彼女らは言葉を交わして──今この瞬間、決別した。
 けれどもそれを更にどうこうしようという時間は残されていない。交代だ、とアランがゼフィラとすれ違いざまに告げて魔種を押し留める。回復が少しずつ回らなくなってきていたとしても、ここで通す訳にはいかなかった。
「退きなさい」
「はっ。どうしても通りたいなら──俺らを倒してから通りな!」
 鼻で笑ったアランは大剣を構えて。三度舞い戻ってきたアルテミアもまた、剣に青い炎を纏わせる。
「生憎と、貴女が生み出す炎には嫌悪しか無いの。だから、代わりにこの炎で焼かれてくれるかしら?」
「本当に嫌悪だけかしら? この炎にもっと触れていれば、嫌悪以外の感情もきっと湧くわ」
 青と赤の炎がぶつかり合い、せめぎ合う。止んだ瞬間に、緋色の軌跡が魔種へと向かって行った。
「──欲に生きる人を、私が責められる筈もないけれど……魔種である以上、貴女も……その炎も、止めるわ」
 レストのミリアドハーモニクスを受けて、佐那が魔刀を構え直す。そこへ2つの土塊が盛り上がって。
「狐の火遊びはそこまでにしときなさい!」
「そうよ──あなたはここで死ぬのっ!!」
 チェルシーとヴァイスの声が響く。そして正面から切り開かんと華やかなる一撃を向けたのは焔だ。その視線は魔種を真っすぐ見つめた後、燃える周囲へと移される。
「……火は、こんな風に何もかも焼き尽くしちゃう怖くて危ない面も持ってるけど。人の生活を助けたり、暗闇を照らしてくれたり、寒さ和らげてくれたりするとっても大切なものなんだ」
 力の使い方はそれぞれだ。少なくとも焔の父である炎の神は、その力を多くの者が幸せに、笑顔になれるよう使っていた。
 だからこそ、許せない。
「お父様(炎の神)の娘として、炎で多くの人を傷つけたり悲しませたりするアナタを放っておくわけにはいかない!」
「……嗚呼、嗚呼。本当に……どうしてわからないのかしら」
 ねえ? と向けられた言葉は、火の狐と共に鳴の元へと降り立って。咄嗟に腕を交差させた鳴の元へアランが駆け寄り庇う。
 交戦するだけでなく、見ていても分かる。魔種の力は底が見えてきているのだ。だからこそ標的を鳴へと定め、執拗に狐を召喚する。
(なら、ここを凌げば俺らの勝ちってことだ)
 魔種を囲み、その底へ届かせんと攻撃を浴びせ。けれども最後の一手を下すべき人物は──決意を表した、1人の少女だ。
「行けよ、ここで決めなかったら一生後悔するぜ……! ぶちかませ!!」
 アランの声が鳴を後押しする。かばう彼の背中越しに鳴が放つのは焔宮家に伝わる呪術。鳴自身に合わせて調整されたソレは、真っすぐに魔種の元へと向かって行く。
「──本当の名前が思い出せなくたっていい。私(鳴)は……鳴(私)で有り続けたいの!」
 炎が形作った矢は、魂を貫いて。魔種の唇が震えて何かを紡いだけれど──それは音にならなかった。


 敵が地に伏せたとて、危険がないわけではない。イレギュラーズの周囲には、なお炎が燃え盛っていた。
「助けを求められないか、やってみるわね~」
 緊迫したこの場にそぐわぬ、おっとりとした声と共にレストの元から鳥が飛び立つ。けれど待ってばかりではいられないとイレギュラーズは町の外へと向かいだした。戦闘中に気絶させた乱入者もアランが担ぎ、殿を進む。
「罠のある場所には気をつけて」
 道中罠を仕掛けていたチェルシーが仲間へ声をかけた。自分たちが引っかかって助からなかった、なんて笑い話にもならないのだから。
 火の粉を払い、傷を庇い、赤に照らされながら影が駆けて行く。不意に、焔が止まるよう声を上げた。同時に倒壊した家が前方の道を塞ぐ。
「レストさん、救助の方は」
 アルテミアの言葉に首を振るレスト。こちらへ向かうとのことだが、向こうも少なくない被害ではあるようだ。
「なら、こっちでどうにかしちゃおう!」
「なの! 最後の瞬間まで、全力全開なのっ!」
 焔と鳴が互いに頷く。高められた闘気は火焔に、焔宮の呪術は魔力の槍を模って、町の外へ通ずる道を塞ぐそれを吹き飛ばす。
 道を切り開いた鳴の背中に、アランは「焔宮」と声をかけた。
「……お前の事情はよくわからんがな。ここからだ。まだイレギュラーズとしての、お前の物語は始まったばかりだ」
 『焔宮 鳴』としてのリスタート。その言葉に鳴は振り向いて、頷いてみせて。
「帰るの──ローレットに!」
 その言葉と共に鳴は、イレギュラーズは、再び町を駆け抜け始めた。

成否

成功

MVP

アラン・アークライト(p3p000365)
勇者の使命

状態異常

アラン・アークライト(p3p000365) [重傷]
勇者の使命
アルテミア・フィルティス(p3p001981) [重傷]
Righteous Blade

あとがき

 お疲れさまでした。被害は大きいものでしたが、無事に魔種を止める事ができました。
 前回、そして今回に関係された皆様に。そして魔種と関係のあった鳴さんに。お気に召していただければ幸いです。

 鳴さん。貴女の決意に、称号をお贈り致します。
 勇者の貴方へ。強敵と戦うにあたり仲間との連携力を最も感じさせる、熱のあるプレイングでした。今回のMVPをお贈り致します。

 またのご縁がございましたら、どうぞよろしくお願い致します。



原罪の呼び声はこちら。(アンサーは拒否です)

 お世話になっております。合同会社Re:versionです。

 お客様の参加中のシナリオ『燃え盛りし朱』において特殊判定が発生しました。
 お客様のキャラクターは『原罪の呼び声』を受けています。

////////////////////////////////////////////

「貴女の為ではないの?」
 痛いのに、苦しいのに。それを誰かのために、なんて。
「私は『焔宮家の当主』であることをやめたわ。私の為に」
 魅せられてしまったのだ。
 自らの役目が違うものだと気づいたのだ。
 だから、心の赴くままに手を伸ばした。
「貴女の為の『鳴』でないのなら──貴女は『鳴』にはなりきれないのではないかしら?」
 "まだ"戦えるという言葉は──"いつか"という終わりの可能性を思わせるようで。
「貴女が『ローレットの焔宮鳴』でいられなくなってしまう前に、思い出したいとは思わない?」
 本当の、名前を。
 吐息のような声が、けれど確かに鳴の耳へ忍び込んだ。
 周囲を取り巻く業火は、夢に見るあの時を思い起こさせる。大事な記憶のはずなのに、詳細はもどかしい程思い出せない。
「思い出せないのでしょう?」
 そう、思い出せない。自分の名前。
「でも、思い出しそうだとは思わない?」
 何をと問う必要はなかった。姉の視線は、真っ直ぐに外周の炎へ向けられていたから。
 その炎が、いつかの、夢の中の業火と重なって見えて。その前で、姉が手を伸ばしていた。
「ねえ──思い出したいと思わないかしら?」
 他ならぬ、自分の為に。

////////////////////////////////////////////

 この呼び声の属性は『強欲』です。
 原罪の呼び声は魂を揺さぶり、その者の在り方自体を改変する危険な誘惑です。
 お客様はこの声に『応える』か『拒否する』かを任意に選ぶ事が可能です。
 6/29一杯までにこのアドレスに答えをご返信下さい。(一緒に台詞等を書いてくださってもOKです)
 返信がない場合『拒否した』とみなして進行されますのでご注意下さい。

 尚、原罪の呼び声に応えた場合、キャラクターは魔種となりキャラクターの管理権がお客様から離れます。不明及び死亡判定に準ずる『反転状態』にステータスが変化しますので予めご了承の上、ご返答下さいますようお願いいたします。

※メール自体の他者への公開は構いません。
 また応じた場合、まず間違いなく簡単に戻れるような状態にはなりません。

 以上、宜しくお願いいたします。

PAGETOP